JP2018171329A - マイクロニードル - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、薬剤の円滑な投与を可能としたマイクロニードルを提供することを目的とする。
[マイクロニードルの全体構成]
図1(a)および(b)が示すように、マイクロニードル10は、支持面11Sを有する基体部11と、支持面11Sから突き出た突起部12とを備えている。
図2および図3を参照して、主流路15mおよび副流路15sの詳細な構成について説明する。図2(a)は、主流路15mおよび副流路15sの外形を実線で示し、突起部12の外形を二点鎖線で示す図であり、図2(b)は、主流路15mの中心を通る直線を境界として各副流路15sの延びる方向に沿った突起部12の断面を示す図である。
図4を参照して、本実施形態のマイクロニードル10の作用について説明する。
図4が示すように、マイクロニードル10は、注射筒30の備える外筒31の筒先に取り付けられる。薬剤の投与に際しては、マイクロニードル10が薬剤の投与対象の皮膚に押し当てられることによって、突起部12が皮膚を刺す。そして、突起部12が皮膚を刺した状態で、押子32がマイクロニードル10に向けて押し込まれる。押子32が押し込まれることによって、外筒31に充填されている液状の薬剤lmが、突起部12の主流路15mに供給され、さらに、薬剤lmは、主流路15mから副流路15sへ流れる。そして、薬剤lmは、突起部12の側面14Dの開口から出て皮内に入る。
上述の説明においては、2つの副流路15sを有する突起部12を例示したが、副流路15sの数は2以上であれば、限定されない。図5〜図11を参照して、副流路15sの数が3つである形態、および、副流路15sの数が4つである形態について説明する。
図8(a)および(b)が示す突起部18は、4つの副流路15sを有している。4つの副流路15sの各々は、4つの側面14Dのうちの互いに異なる面に開口している。
上記マイクロニードル10の材料および製造方法について説明する。
突起部12,17,18を形成するための材料は特に限定されず、突起部12,17,18は、シリコンやステンレス、チタン、コバルトクロム合金、マグネシウム合金等の金属材料から形成されていてもよい。また、突起部12,17,18は、汎用のプラスチック、医療用のプラスチック、および、化粧品用のプラスチック等の樹脂材料から形成されていてもよい。樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、アクリル、ウレタン樹脂、芳香族ポリエーテルケトン、エポキシ樹脂、および、これらの樹脂の共重合材料等が挙げられる。
基体部11の材料は特に限定されず、基体部11は、例えば、上述の突起部12,17,18の材料として例示した材料から形成されればよい。
あるいは、複数の可動金型の組み合わせによって、射出成形のみを利用して、マイクロニードル10が形成されてもよい。
主流路15mや副流路15sを形成するために用いられる機械加工方法としては、例えば、レーザー加工が挙げられる。
(1)突起部が、1つの主流路15mと複数の副流路15sとを有しているため、突起部から皮内の複数の箇所に分散して薬剤が放出される。したがって、薬剤が1箇所に集中して放出されるよりも、薬剤が皮内に広がりやすい。また、副流路15sは、突起部の長さ方向とは異なる方向に延びて突起部の周面に開口しているため、穿孔の過程で副流路15s内に皮膚の組織が入り込みにくい。したがって、薬剤の円滑な投与が可能である。
上記実施形態は、以下のように変更して実施することが可能である。
・突起部の形状は、上記実施形態の形状に限られない。例えば、突起部の形状は、柱体の上面に錐体の底面が接続された立体を、その延びる方向に対して斜めに切断した形状であれば、尖端面14Tにおける最も基体部11に近い頂点は、柱体と錐体との境界よりも突起部の先端側に位置してもよいし、突起部の基端側に位置してもよい。
・突起部が、突起部の周面に開口する複数の副流路15sを有していれば、副流路15sの開口の位置や副流路15sの延びる方向は限定されない。
突起部が、突起部の周面に開口する複数の副流路15sを有している構成であれば、上記(1)の効果は得られる。
上述したマイクロニードルについて、具体的な実施例および比較例を用いて説明する。
<実施例1>
マイクロニードルの材料としてポリカーボネートを用い、射出成形によって、板状の基体部とともに、底面が正方形である四角柱の上面に接続された四角錐をその延びる方向に対して斜めに切断した形状の構造体であって、内部に主流路となる孔を有する構造体を形成した。さらに、レーザー加工によって、上記構造体に副流路となる2つの孔を形成することにより、突起部を形成した。これにより、実施例1のマイクロニードルを得た。
実施例1と同様の工程によって、副流路の構成以外は実施例1と同様の形状を有する実施例2のマイクロニードルを得た。
実施例2のマイクロニードルにおける突起部は、3つの副流路を有し、実施例2の突起部は、図5〜7に示した形状を有する。3つの副流路の高さHsは、小さい方から順に、350μm、430μm、510μmである。突起部の尖端点Pに近い2つの側面に跨る位置には、最も大きい高さHsを有する副流路が開口しており、支持面と対向する方向から見て、3つの副流路は、突起部の尖端点Pから遠い側面の1つから右回りに高さHsが大きくなるように配置されている。3つの副流路のいずれについても、副流路の延びる方向と直交する断面にて副流路が区画する領域の形状は円形であり、その直径は58μmである。
実施例1と同様の工程によって、副流路の構成以外は実施例1と同様の形状を有する実施例3のマイクロニードルを得た。
実施例3のマイクロニードルにおける突起部は、4つの副流路を有し、実施例2の突起部は、図8〜10に示した形状を有する。4つの副流路の高さHsは、小さい方から順に、350μm、400μm、450μm、510μmである。突起部の尖端点Pから遠い2つの側面には、最も小さい高さHsを有する副流路と、2番目に小さい高さHsを有する副流路とが開口しており、突起部の尖端点Pに近い2つの側面には、最も大きい高さHsを有する副流路と、2番目に大きい高さHsを有する副流路とが開口している。支持面と対向する方向から見て、4つの副流路は、突起部の尖端点Pから遠い側面の1つから右回りに高さHsが大きくなるように配置されている。4つの副流路のいずれについても、副流路の延びる方向と直交する断面にて副流路が区画する領域の形状は円形であり、その直径は50μmである。
実施例1と同様の工程によって、副流路の構成以外は実施例1と同様の形状を有する比較例1のマイクロニードルを得た。
比較例1のマイクロニードルにおける突起部には、1つの副流路が形成されており、この副流路の高さHsは、450μmである。副流路は、突起部の尖端点Pに近い2つの側面に跨る位置に開口している。副流路の延びる方向と直交する断面にて副流路が区画する領域の形状は円形であり、その直径は100μmである。
実施例1と同様の工程によって、流路の構成以外は実施例1と同様の形状を有する比較例2のマイクロニードルを得た。
比較例2のマイクロニードルには、副流路が形成されておらず、さらに、先端側の端部が閉塞された主流路に代えて、突起部の基端から先端に向かって突起部および基体部を貫通する貫通孔が形成されている。こうした貫通孔は、実施例1の製造工程において、射出形成によって形成される構造体の内部の孔の長さを調整することによって形成される。貫通孔の延びる方向と直交する断面にて貫通孔が区画する領域の形状は円形であり、その直径は100μmである。
副流路が形成されている実施例1〜3、および、比較例1のマイクロニードルについて、液体の放出能力の評価を行った。各マイクロニードルを、純水が充填された注射筒に取り付け、この純水を0.2MPaの力で押圧し続けて突起部の副流路から大気中に純水を放出させ、1000μLの純水の放出が完了するまでに要する時間を計測した。計測は、各実施例および比較例について、3回ずつ行った。純水の押圧は、圧力計を接続したチューブを注射筒の外筒に押子の代わりに挿入し、チューブ内に、チューブ内が0.2MPaになるようにガスを供給することにより行った。
実施例1〜3、および、比較例1,2のマイクロニードルを用いて、薬剤の投与量の評価を行った。
各マイクロニードルを、薬剤として生理食塩水が充填された注射筒に取り付け、12週齢のウィスターラットから摘出した皮膚に突起部を刺した後に、0.2MPaの力で薬剤を突起部に向けて押圧した。薬剤の押圧は、圧力計を接続したチューブを注射筒の外筒に押子の代わりに挿入して、チューブ内に、チューブ内が0.2MPaになるようにガスを供給することにより行った。ウィスターラットの皮膚を観察しながら薬剤の押圧を300秒間継続し、皮内への薬剤の投与量、すなわち、皮膚の表面や皮下に漏れ出すことなく注入できた薬剤の最大量を計測した。ただし、薬剤の投与量の上限を600μLとし、投与量が600μLを超えた場合にはその時点で投与を終了した。
表2は、各実施例および比較例のマイクロニードルについて、副流路の数と、上記皮内への薬剤の投与量の計測結果とを示す。なお、比較例2のマイクロニードルを用いた試験では、摘出皮膚における薬剤を投与した面とは反対側の面からの薬剤の漏れが確認された。比較例2にあっては、薬剤の総投与量は600μLであり、皮下へ薬剤が漏れた量を概算することにより、皮内への薬剤の投与量を100μLと算出した。
実施例1と同様の工程によって、副流路の構成以外は実施例1と同様の形状を有する実施例4のマイクロニードルを得た。
実施例4のマイクロニードルにおける突起部には、2つの副流路が突起部の長さ方向に並ぶように形成されている。すなわち、支持面と対向する方向から見て、2つの副流路は主流路から同一の方向に延びている。2つの副流路の高さHsは、小さい方から順に、360μm、510μmである。2つの副流路は、突起部の尖端点Pに近い2つの側面に跨る位置に開口している。2つの副流路のいずれについても、副流路の延びる方向と直交する断面にて副流路が区画する領域の形状は円形であり、その直径は70μmである。
実施例1と同様の工程によって、副流路の構成以外は実施例1と同様の形状を有する実施例5のマイクロニードルを得た。
実施例5のマイクロニードルにおける突起部には、3つの副流路が、高さHsが同一となるように形成されている。すなわち、3つの副流路は、突起部の幅方向に沿った平面上に並んでいる。3つの副流路の高さHsは、いずれも、400μmである。3つの副流路は、突起部の尖端点Pから遠い2つの側面の各々と突起部の尖端点Pに近い2つの側面に跨る位置とに1つずつ開口している。3つの副流路のいずれについても、副流路の延びる方向と直交する断面にて副流路が区画する領域の形状は円形であり、その直径は70μmである。
副流路が形成された実施例1〜5、および、比較例1のマイクロニードルについて、突起部の強度の評価を行った。
各マイクロニードルを、注射筒に取り付け、12週齢のウィスターラットから摘出した皮膚に突起部を刺した後に、マイクロニードルを皮膚から引き抜いた。皮膚への穿孔の前後について、各マイクロニードルを実体顕微鏡で観察し、形状の変化の有無を確認した。
Claims (6)
- 支持面を有する基体部と、
前記支持面から突き出た突起部と、を備え、
前記突起部は、前記突起部の内部において前記突起部の基端から先端に向けて延びる1つの主流路と、前記主流路から前記突起部の周面に向けて延びて前記周面に開口する複数の副流路とを有し、
前記主流路における当該主流路の延びる方向の両端部のうち、前記突起部の基端側の端部は前記支持面を貫通する開口端であり、前記突起部の先端側の端部は閉塞されている
マイクロニードル。 - 前記副流路の前記開口が区画する領域の重心から前記支持面までの前記支持面と直交する方向に沿った長さが、当該副流路の高さであり、
各副流路における前記高さは他の前記副流路における前記高さと互いに異なる
請求項1に記載のマイクロニードル。 - 前記支持面と対向する方向から見て、各副流路は、他の前記副流路が前記主流路から延びる方向とは異なる方向に、前記主流路から延びている
請求項1または2に記載のマイクロニードル。 - 前記突起部の周面は、前記支持面に対して傾斜した尖端面と、前記尖端面に繋がる複数の側面とを含み、
各副流路は他の前記副流路と異なる前記側面に開口する
請求項1〜3のいずれか一項に記載のマイクロニードル。 - 前記突起部は、前記支持面から延びる柱体形状を有する柱状部と、前記柱状部の頂部から延びて前記突起部の先端に向かって尖る錐状部とを有し、
前記副流路は前記錐状部の周面に開口している
請求項1〜4のいずれか一項に記載のマイクロニードル。 - 前記主流路内を流れる流体が単位長さあたりにおいて受ける抵抗が主流路抵抗であり、
前記副流路内を流れる流体が単位長さあたりにおいて受ける抵抗が副流路抵抗であり、
すべての前記副流路についての前記副流路抵抗の合計は、前記主流路抵抗と等しい
請求項1〜5のいずれか一項に記載のマイクロニードル。
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