JP2018169220A - 積層体 - Google Patents

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豊 片山
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Abstract

【課題】低電圧でも基質濃度の定量に十分な酸化電流が得られ、ノイズ電流が抑制された測定結果が得られる、高い電気化学的活性と導電性が両立された積層体を提供する。【解決手段】高分子化合物からなら基材103上に、アンダーコート層104を形成し、さらにその上に、イオン性高分子材料を分散剤として用いカーボンナノチューブが分散された導電層105が積層された積層体101を形成する。この積層体を電極として用いた際、自然電位における電荷移動抵抗率は2.0×10−9Ωcm3以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、高い電気化学的活性と導電性を両立したカーボンナノチューブとカーボンナノチューブの分散剤とを含む導電層を基材上に有する積層体に関するものである。
生体試料などに存在する特定成分を、試料の希釈および攪拌などを行うことなく簡易に定量しうるバイオセンサーが提案されている。その一例として、特許文献1には、絶縁性基板上に金属スパッタリングを施した後に広領域電界レーザー除去を行うことによって電極および電極配線を形成し、この電極上に酵素および酸化還元体を含有する試薬層を形成したバイオセンサーが開示されている。このバイオセンサーは、以下のようにして試料中の基質濃度を定量する。
まず、試料液をバイオセンサーの試薬層上に滴下することにより、試薬層が溶解し、試料液中の基質と試薬層の酵素との間で酵素反応が進行する。この酵素反応に伴い、酸化還元体が還元される。一定時間後、センサーの電極に一定の電圧を印加して、この還元された酸化還元体を電気化学的に酸化し、このとき得られる酸化電流値を測定する。この電流値は、基質濃度に直接比例するので、試料液中の基質濃度を定量することができる。このようなバイオセンサーはすでに血液中のグルコース濃度を測定するセンサーとして実用化されている。
再現性の高い測定を行うために、試料液中の夾雑物質が反応することによるノイズ電流を抑制する必要がある。夾雑物質との反応を抑制する手段として、酸化還元体の酸化をより低い電圧で行う方法があるが、低電圧で基質濃度の定量に十分な酸化電流値を得るためには、電極が酸化還元物と良好な電気化学的活性を有すことが好ましい。
また、印加する電圧を常に一定にするためには、導電層が形成する電極の配線抵抗による電圧降下の影響を考慮する必要がある。配線抵抗は製造ロットや外環境によりばらつくことが想定されるが、導電層の導電性が高いほど電圧降下量が小さくなり、相対的に配線抵抗のばらつき、すなわち印加する電圧のばらつきが低減されるため、導電層は高い導電性を有すことが好ましい。
その他、電極面積を常に一定にすることも再現性の高い測定を行うためには重要である。均一な電極を形成する代表的な方法として、基板上に形成された導電層に対しレーザーエッチングを施す方法があるが、エッチング時のバリや短絡の発生を抑えて均一なレーザーエッチングが可能となる前提として導電層が薄膜である必要がある。
良好な電気化学的活性と高い導電性のポテンシャルを有する材料として、カーボンナノチューブが注目されている。例えば特許文献2〜4では、カーボンナノチューブを利用したバイオセンサー用の電極が報告されている。
特開2011−203268号公報 特開2016−212067号公報 特開2005−172770号公報 特表2012−511714号公報
しかし、特許文献2ではカーボンナノチューブとして直径100nm以上の多層カーボンナノチューブが使用されており、同厚み換算では直径が小さく層数の少ない単層および二層カーボンナノチューブと比較して電気化学的活性および導電性ともに十分ではなかった。
特許文献3ではカーボンナノチューブを絶縁体で封入し、カーボンナノチューブの一部を絶縁体から露出させた構成の電極が提案されているが、絶縁体で封入されたカーボンナノチューブ部分には試料液が侵入されず、電気化学反応を起こすことができないため電気化学的活性が十分ではなかった。
特許文献4はカーボンナノチューブの分散剤なしにカーボンナノチューブ導電層を形成しているが、通常カーボンナノチューブは疎水性であり、試料液との親和性が低くなるために電気化学的活性が低い。電気化学的活性を高めるために触媒ナノ粒子として金属粒子を堆積させる方法も提案されているが、金属粒子はカーボンナノチューブと比較してバックグラウンド電流によるノイズの発生量が多いため、低い基質濃度を測定するバイオセンサーの使用には適さない。
上記のように、カーボンナノチューブの特性は層数や外環境、純度など多数の要因により大きく変化することが知られている。電気化学的活性は電極と試料液の界面における反応であり、カーボンナノチューブの表面状態に極めて敏感である。一般的に高い導電性を有するカーボンナノチューブの条件として純度が高いことが挙げられるが、一方で純度の高いカーボンナノチューブの表面は電気化学的活性が低く、導電性と電気化学的活性はトレードオフの関係であった。
本発明は、かかる課題を解決する為に、次のような特徴を有する。すなわち、
(1)基材上にカーボンナノチューブおよびカーボンナノチューブの分散剤を含む導電層を有する積層体であって、5mmol/lの濃度でフェロシアン化カリウム、5mmol/lの濃度でフェリシアン化カリウムおよび0.5mol/lの濃度で塩化カリウムを含む水溶液に浸漬させた際の銀/塩化銀電極基準で自然電位における電荷移動抵抗率が2.0×10−9Ωcm以下であることを特徴とする積層体。
(2)前記導電層の電気抵抗率が5.0×10−4Ωcm以下であることを特徴とする(1)に記載の積層体。
(3)前記導電層全体を100質量%としたとき、以下の第1のカーボンナノチューブを1.0質量%以上、かつ第2のカーボンナノチューブを1.0質量%以上含むことを特徴とする(1)または(2)に記載の積層体。
第1のカーボンナノチューブ:共鳴ラマン散乱測定により、1,560〜1,600cm−1の範囲内で最大のピーク強度をG、1,310〜1,350cm−1の範囲内で最大のピーク強度をDとしたとき、G/Dが30以上である
第2のカーボンナノチューブ:前記G/Dが10以下である
(4)前記カーボンナノチューブが二層カーボンナノチューブを含むことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の積層体。
(5)前記カーボンナノチューブの分散剤がカルボキシメチルセルロースを含むことを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の積層体。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の積層体を用いてなることを特徴とする電極式センサー。
本発明によれば、高い電気化学的活性と導電性を有した積層体を提供することができる。
基材上に導電層を有する積層体の断面の概念図である。 カーボン欠陥の概念図である。 二層カーボンナノチューブの概念図である。 血糖値センサー配線の概念図である。 等価回路の概念図である。
以下、積層体の実施形態を説明する。
[基材]
本発明に用いる基材は、低コストで大量生産を行う目的を達成するためには、高分子化合物であることが好ましいが、特に限定するものではなく、ガラス、石英、サファイア、シリコン、金属等幅広い範囲から選ぶことができる。高分子化合物としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ−ρ−フェニレンスルファイド、ポリエーテルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、アセテート系、ポリ乳酸系、フッ素系、シリコーン系等が挙げられる。また、これらの共重合体やブレンド物、さらに架橋した化合物を用いることができる。
さらに上記高分子化合物の中でも、ポリエステル、ポリイミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ−ρ−フェニレンスルファイド、ポリ(メタ)アクリル酸エステルなどからなるものが好ましく、作業性や、経済性などを総合的に勘案すると、ポリエステル、中でもポリエチレンテレフタレートよりなる合成樹脂が好ましく用いられる。また、これらの基材に、発明の趣旨を損ねない範囲で、UVオゾン処理などの各種前処理やアンダーコート層の積層などがなされていてもよい。
なお、基材がフィルムであればフレキシブルな積層体を得ることができ、電子機器の曲面部分に使用できたり、屈曲が必要な電子部品に使用したりすることができるため好ましい。さらに、ロール状に巻かれたフィルムを用いると、ロールツーロールで連続的に本発明の積層体を生産することにつながり、コスト面でメリットがあるため好ましい。特に、フィルムとしてポリエステルフィルムを用いることが好ましい。
また、血糖値センサーとして用いる場合は、血液の視認性を良くするため、基材として白色のものが用いられることが好ましい。白色というのは、JIS L1015(2010)で定められた、ハンター法によって測定される白色度によって規定され、少なくとも70%以上、好ましくは90%以上の値を示す色を指す。基材の厚みは、ハンドリングの観点やフレキシブル性の観点から1μm〜500μmの範囲が好ましく、30μm〜300μmの範囲がより好ましく、50μm〜250μmの範囲がさらに好ましい。
[表面親水化処理]
本発明においては、後で述べるように水系溶媒を含む塗料組成物(以下、水系アンダーコート液ということもある)を基材上に塗工することが好ましい。水系アンダーコート液の基材上への塗布性(はじきなく塗工する)を向上させるため、表面親水化方法としてコロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理などの物理処理、酸処理やアルカリ処理などの化学的処理を実施することが好ましい。この中でもコロナ処理、プラズマ処理が好ましい。これらの処理により、例えば基材表面の水接触角を5°以上55°以下にすることができ、水系アンダーコート液を基材に効率良く塗布することが可能となるため好ましい。
[アンダーコート層]
後述するカーボンナノチューブ分散液の基材上への塗布性向上、およびカーボンナノチューブを含む導電層と基材の密着性を向上させるため、前記基材上にアンダーコート層を設けることが好ましい。また、アンダーコート層は有機バインダーと粒子とを含むことが好ましい。アンダーコート層の詳細を以下に説明する。
<アンダーコート層のぬれ張力、厚み、粗さ>
アンダーコート層はISO8296(2003)で規定されている、ぬれ張力が76mN/m以上105mN/m以下であることが好ましい。ぬれ張力を76mN/m以上とすることで、アンダーコート層上にカーボンナノチューブ分散液を塗布した際に、塗布はじきを生じにくくし、カーボンナノチューブ分散液を均一に塗布することが可能となるため好ましい。またアンダーコート層のぬれ張力が105mN/m以下であると、塗布時の塗液の塗れ広がりによる塗布ムラや、乾燥時の風の影響を受けた塗布ムラを生じにくくし、カーボンナノチューブ分散液を均一に塗布することが可能となるため好ましい。塗布ムラの観点から、ぬれ張力は76mN/m以上105mN/m以下であることが好ましく、76mN/m以上90mN/m以下であることがより好ましい。
アンダーコート層のぬれ張力は、アンダーコート層を形成する塗料組成物中の有機バインダーに含まれる親水性官能基の共重合量を多くしたり、アンダーコート層の膜厚を厚くしたりすることにより大きくすることができる。よって、アンダーコート層のぬれ張力は、有機バインダーに含まれる親水性官能基の共重合量、親水性官能基の種類、アンダーコート層の膜厚によって、適宜調整することができる。
アンダーコート層の厚みは積層体としたときにカール等の現象が発生しにくく、アンダーコート層表面のぬれ性が前記の好ましいぬれ張力の範囲に入っていれば、任意に設定することができる。
<有機バインダー>
カーボンナノチューブとカーボンナノチューブの分散剤とを含む導電層と基材の密着性を向上させるため、アンダーコート層には有機バインダーを含むことが好ましい。有機バインダーの組成としては、例えばフェノール、シリコン、ナイロン、ポリエチレン、ポリエステル、オレフィン、ビニル、アクリル、セルロースなどが好ましい。
前記有機バインダーは、基材への塗布性の観点より親水性官能基を有する有機バインダーであることが好ましい。また、前記有機バインダーは、基材への塗布性の観点より親水性官能基を有するポリエステル樹脂および/または親水性官能基を有するアクリル樹脂であることがより好ましい。すなわち、有機バインダーが親水性官能基を有するポリエステル樹脂または親水性官能基を有するアクリル樹脂のいずれかであってもよいし、親水性官能基を有するポリエステル樹脂および親水性官能基を有するアクリル樹脂の両方であってもよいが、親水性官能基を有するポリエステル樹脂および親水性官能基を有するアクリル樹脂の両方であることが、基材との密着性向上、カーボンナノチューブ水分散液の塗布性向上の観点から好ましい。
<粒子>
本発明において、アンダーコート層は粒子を含むことが好ましい。粒子を含むことで、カーボンナノチューブ分散液の塗布性をさらに向上させることができる。また、アンチブロッキング性もアンダーコート層に付与することができるため好ましい。すなわち、積層体をロールツーロールで製造する際、アンダーコート層形成後にアンダーコート層が形成された基材を巻き取る必要が生じる場合があり、その際、アンダーコート層に粒子を含むことで、アンダーコート層がブロッキングしにくくなるため好ましい。
粒子の含有量はアンダーコート層全体を100質量%としたとき、5質量%以上95質量%以下が好ましい。5質量%未満となると、アンダーコート層表面の凹凸が不足し、アンチブロッキング性が発揮できない場合がある。また、95質量%より大きくなると、バインダーに対して粒子が過剰となり、粒子の脱落が起こる場合がある。粒子の粒径の好ましい範囲としては5nm〜500nmである。より好ましくは、15nm〜100nm、さらに好ましくは15nm〜40nmである。なお、ここでいう粒径とは動的光散乱法により測定された平均粒径をいう。
本発明に用いられる粒子としては有機粒子であっても無機粒子であっても、その両方を用いても構わない。本発明に用いることのできる無機粒子の組成としては、例えばシリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、セリア、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、ゼオライト、酸化チタン、各種金属酸化物からなる微粒子などが好ましい。特に、親水性官能基を有するポリエステル樹脂への分散性の点から無機コロイド粒子が好ましく、特にコロイダルシリカが好ましい。さらには、コロイダルシリカ表面に−SiOH基や−OHイオンが存在し、負に帯電した状態で電気二重層が形成され、コロイダルシリカ間の静電反発により溶媒中で分散安定しているコロイダルシリカであることが好ましい。コロイダルシリカ表面に−SiOH基や−OHイオンが存在し、負に帯電した状態で電気二重層が形成され、コロイダルシリカ間の静電反発により溶媒中で分散安定しているコロイダルシリカとしては、日産化学工業(株)社製の“スノーテックス”(登録商標)シリーズや日揮触媒化成(株)社製の“カタロイド”シリーズなどが好ましく用いられる。
本発明に用いることのできる有機粒子の組成としては、例えばアクリル酸類、スチレン樹脂、熱硬化樹脂、シリコーンおよびイミド化合物等を構成成分とする粒子が挙げられる。ポリエステル重合反応時に添加する触媒等によって析出する粒子(いわゆる内部粒子)も好ましく用いられる。特に、親水性官能基を有するポリエステル樹脂への分散性、汎用性の観点から、スチレン/アクリル粒子が好ましい。液中で安定的に分散しているスチレン/アクリル粒子としては、日本合成化学工業(株)製 “モビニール”(登録商標) 972などが好ましく用いられる。
<アンダーコート層の形成方法>
前述した有機バインダー、並びに必要に応じて、添加剤や溶媒を含有する塗料組成物を基材上へ塗布し、必要に応じて溶媒を乾燥させることによって、基材上にアンダーコート層を形成することができる。
また、塗料組成物の溶媒として水系溶媒を用いることが好ましい。水系溶媒を用いた塗料組成物を水系溶媒を含む塗料組成物ということもある。水系溶媒を用いることで、乾燥工程での溶媒の急激な蒸発を抑制でき、均一なアンダーコート層を形成できるだけでなく、環境負荷の点で優れているためである。
ここで、水系溶媒とは水、または水とメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類など水に可溶である有機溶媒が任意の比率で混合されているものを指す。
塗料組成物の基材上への塗布方法は、既知のウェットコーティング方法、例えば吹き付け塗装、浸漬コーティング、スピンコーティング、ナイフコーティング、キスコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、ロールコーティング、バーコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、パット印刷、他の種類の印刷などが利用できる。また、ドライコーティング方法を用いてもよい。乾式コーティング方法としては、スパッタリング、蒸着などの物理気相成長や化学気相成長などが利用できる。また塗布は、複数回に分けて行ってもよく、異なる2種類の塗布方法を組み合わせてもよい。好ましい塗布方法は、ウェットコーティングであるグラビアコーティング、バーコーティング、スロットダイコーティングである。
前記塗布工程の後、乾燥工程にて塗布された分散剤を含むアンダーコート塗料から分散媒を除去する。溶媒の除去方法としては、熱風を基材に当てる対流熱風乾燥、赤外線乾燥装置からの輻射で基材に赤外線を吸収させて熱に変え加熱し乾燥させる輻射熱乾燥、熱媒体で加熱された壁面からの熱伝導で加熱し乾燥させる伝導熱乾燥、などを適用することができる。中でも対流熱風乾燥は乾燥速度が大きいため好ましい。
なお、以下で基材上にアンダーコート層が形成されたフィルムをアンダーコート積層フィルムということもある。
[導電層]
図1に基材103上にアンダーコート層104が形成されたアンダーコート積層フィルム102と、さらに導電層105が積層された積層体101の断面の概念図を示す。本発明において、導電層105とは、カーボンナノチューブ106とカーボンナノチューブの分散体109とを含む層であれば特に限定されるものではなく、例えばバイオセンサーとして用いる酵素や粘度調整剤、乳化剤、pH調整剤、イオン伝導補助剤、導電補助剤、電気化学活性剤などが含まれていてもよい。
[カーボンナノチューブ]
本発明において用いられるカーボンナノチューブは、実質的にグラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状を有するものであれば特に限定されず、グラファイトの1枚面を1層に巻いた単層カーボンナノチューブ、多層(3層以上)に巻いた多層カーボンナノチューブいずれも適用できるが、中でもグラファイトの1枚面を二層に巻いた特に二層カーボンナノチューブが100本中に50本以上含まれているカーボンナノチューブであると、導電性ならびに塗布用分散液中でのカーボンナノチューブの分散性が極めて高くなることから好ましい。さらに好ましくは100本中75本以上が二層カーボンナノチューブ、最も好ましくは100本中80本以上が二層カーボンナノチューブである。なお、二層カーボンナノチューブが100本中に50本含まれていることを、二層カーボンナノチューブの割合が50%と表示することもある。また、二層カーボンナノチューブは酸処理などによって表面が官能基化されても導電性などの本来の機能が損なわれない点からも好ましい。
カーボンナノチューブは、例えば次のように製造される。マグネシアに鉄を担持した粉末状の触媒を、縦型反応器中、反応器の水平断面方向全面に存在させ、該反応器内にメタンを鉛直方向に供給し、メタンと前記触媒を500〜1,200℃で接触させ、カーボンナノチューブを製造した後、カーボンナノチューブを酸化処理することにより、単層〜5層のカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブを得ることができる。カーボンナノチューブは製造した後、酸化処理を施すことにより単層〜五層の割合を、特に二層〜五層の割合を増加させることができる。酸化処理は例えば、硝酸処理する方法により行われる。硝酸はカーボンナノチューブに対するドーパントとして作用するため、好ましい。ドーパントとは、カーボンナノチューブに余剰の電子を与える、または電子を奪ってホールを形成する作用をなすものであり、自由に動くことのできるキャリアを生じさせることにより、カーボンナノチューブの導電性を向上させるものである。また、酸化処理を行うことで、二層カーボンナノチューブ外層の欠陥、官能基数を増加させることができる。硝酸処理法は本発明のカーボンナノチューブが得られる限り、特に限定されないが、通常、140℃のオイルバス中で行われる。硝酸処理時間は特に限定されないが、0.5〜50時間の範囲であることが好ましい。
カーボン材料電極の反応活性は、図2で示されるような、カーボングラファイト構造の欠陥201、Sto−wales欠陥202、−OH基や=Oなどの官能基203が存在する部位で特に高いとされている。図3で示すように、二層カーボンナノチューブ電極は、前述したカーボンナノチューブの酸化工程で外層に意図的に欠陥や、−COOH基や−OH基などの官能基を導入し、内層は欠陥を生じない構造とすることができる。このことにより、導電性が高く、かつ電気化学的活性の高いカーボン材料を得ることができる。
さらに、本発明においては、後述する欠陥が少なく導電性の高い第1のカーボンナノチューブと、意図的に欠陥を多く導入して電気化学的活性を高めた第2のカーボンナノチューブとを混在させることでより導電性が高く、かつ電気化学的活性の高い導電層を得ることが可能となる。導電層全体を100質量%としたとき、第1のカーボンナノチューブを1.0質量%以上、かつ第2のカーボンナノチューブを1.0質量%以上含むことが好ましく、さらに高い導電性と電気化学的活性を有するには、第1のカーボンナノチューブを10.0質量%以上、かつ第2のカーボンナノチューブを2.0質量%以上含むことがより好ましく、第1のカーボンナノチューブを20.0質量%以上、かつ第2のカーボンナノチューブを4.0質量%以上含むことが特に好ましい。
<第1のカーボンナノチューブ>
本発明において用いられる第1のカーボンナノチューブは、共鳴ラマン散乱測定により、1,560〜1,600cm−1の範囲内で最大のピーク強度をG、1,310〜1,350cm−1の範囲内で最大のピーク強度をDとしたとき、G/Dが30以上であることが好ましく、60以上であることが導電性の観点からより好ましい。
<第2のカーボンナノチューブ>
本発明において用いられる第2のカーボンナノチューブは、前述のG/Dが10以下であることが好ましく、5以下であることが電気化学活性の観点からより好ましい。
[カーボンナノチューブの分散剤]
導電層にはカーボンナノチューブとともにカーボンナノチューブの分散剤(以下、単に分散剤ということもある)を含むことが好ましい。
カーボンナノチューブの分散剤としては、界面活性剤、各種高分子材料(水溶性高分子材料等)等を用いることができるが、イオン性高分子材料が分散性が高いことから好ましい。イオン性高分子材料としてはアニオン性高分子材料やカチオン性高分子材料、両性高分子材料がある。カーボンナノチューブ分散液を基材に塗布後、分散剤は例えばカーボンナノチューブ間に存在するバインダーとしての役割を果たす。後述する電荷量密度の絶対値を測定する際、電解液である水溶液に浸漬して測定される。イオン性高分子材料は水との親和性が高いため、疎水性であるカーボンナノチューブと水溶液との親和性を高め、電極反応面積を高くすることができ、電気化学的活性を向上させることができる。イオン性高分子材料としては、水との親和性が高く、かつ、カーボンナノチューブ分散能が高く、酸化還元体と安定的に共存することができ、分散性を保持できるものであればどの種類も用いることができるが、例えばカルボキシメチルセルロースを含む物質やポリスチレンスルホン酸の塩等を用いることができる。なかでも、カルボキシメチルセルロースを含む物質が好ましく、カルボキシメチルセルロースを含む物質のなかでも特にカルボキシメチルセルロースおよびその塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩等)がカーボンナノチューブ分散液においてカーボンナノチューブを効率的に分散することができ、好ましい(以下、カルボキシメチルセルロースおよびその塩をカルボキシメチルセルロース塩、ポリスチレンスルホン酸の塩をポリスチレンスルホン酸塩ということもある)。
本発明において、カルボキシメチルセルロース塩、ポリスチレンスルホン酸塩を用いる場合、塩を構成するカチオン性の物質としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属のカチオン、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属のカチオン、アンモニウムイオン、あるいはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、エチルアミン、ブチルアミン、ヤシ油アミン、牛脂アミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ポリエチレンイミン等の有機アミンのオニウムイオン、または、これらのポリエチレンオキシド付加物を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
[導電層の作製方法]
本発明において導電層の作製方法は特に限定されないが、カーボンナノチューブ分散液を基材に塗布する塗布工程と、その後分散媒を除去する乾燥工程とを経て作製されることが好ましい。
本発明において、分散液を基材上またはアンダーコート層上に塗布する方法は特に限定されない。既知の塗布方法、例えば吹き付け塗装、浸漬コーティング、スピンコーティング、ナイフコーティング、キスコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、バーコーティング、ロールコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、パット印刷、他の種類の印刷などが利用できる。また塗布は、複数回に分けて行ってもよく、異なる2種類の塗布方法を組み合わせてもよい。最も好ましい塗布方法は、グラビアコーティング、バーコーティング、ダイコーティングである。
前記塗布工程の後、乾燥工程にて塗布された分散剤を含むカーボンナノチューブ分散液から分散媒を除去する。溶媒の除去方法としては、熱風を基材に当てる対流熱風乾燥、赤外線乾燥装置からの輻射で基材に赤外線を吸収させて熱に変え加熱し乾燥させる輻射熱乾燥、熱媒体で加熱された壁面からの熱伝導で加熱し乾燥させる伝導熱乾燥、などを適用することができる。中でも対流熱風乾燥は乾燥速度が大きいため好ましい。
[カーボンナノチューブ分散液]
本発明において用いるカーボンナノチューブ分散液の調製方法は、特に限定されないが、例えば次のような手順で行うことができる。分散時の処理時間が短縮できることから、一旦、分散媒中にカーボンナノチューブを0.003〜0.30質量%の濃度範囲で含まれる分散液を調製した後、溶媒で希釈することで、所定の濃度とすることが好ましい。本発明において、カーボンナノチューブに対する分散剤の質量比(分散剤/カーボンナノチューブ)は10以下であることが好ましい。かかる好ましい範囲であると、均一に分散させることが容易である一方、導電性低下の影響が少ない。カーボンナノチューブに対する分散剤の質量比は0.2〜9.0であることがより好ましく、0.4〜6.0であることがさらに好ましく、カーボンナノチューブに対する分散剤の質量比が0.6〜2.5であれば、高い分散性と導電性を得ることができるので特に好ましい。本発明において、適切なG/Dを持った第1のカーボンナノチューブと第2のカーボンナノチューブを混在させるために、両者を別々のカーボンナノチューブ分散液として調製した後、両カーボンナノチューブ分散液を混合させることでカーボンナノチューブ分散液を調製してもよい。
また、本発明において、カーボンナノチューブ分散液には種々の添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては例えば、酸化還元体、酵素、粘度調整剤、乳化剤、pH調整剤、イオン伝導補助剤、導電補助剤、電気化学活性剤などが含まれていてもよい。
調製時の分散手段としては、カーボンナノチューブと分散剤と添加剤とを分散媒中で塗装製造に慣用の混合分散機(例えばボールミル、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超音波装置、アトライター、デゾルバー、ペイントシェーカー等)を用いて混合することが挙げられる。また、これら複数の混合分散機を組み合わせて段階的に分散を行ってもよい。中でも、超音波装置を用いて分散する方法が、得られる塗布用分散液中のカーボンナノチューブの分散性が良好であり、G/Dのコントロールが容易であることから好ましい。
[溶媒]
本発明において用いられる溶媒は、前記分散剤を容易に溶解できる点、廃液の処理が容易である等の観点から、水が好ましい。
[電荷移動抵抗率]
図4に電極式センサーの一例として血糖値センサーの一般的な構成を示す。導電層105上に試薬層を設けて試薬導電層401が形成される。グルコースから電子を引き抜く酸化反応を生じ、電気化学反応の作用極の役割を果たす試薬導電層401、試薬導電層401で起きた酸化反応によって生じた電流を図示されない測定部へ伝える作用極配線402、試薬導電層401で生じた酸化電流に対して、還元反応を生じて、電気化学システムのバランスを保つ対極403、図示されない測定部から対極に電子を供給する対極配線404、上記を支持する基材103からなる。
試薬導電層401は、通常、グルコースから電子を奪う酵素と、これら酵素から電子を受け取り試薬導電層中の導電層に電子を伝える酸化還元体、作用極として電極反応を起こす導電層からなる。
血糖値の測定原理は以下の通りである。
測定したい血液を試薬導電層、対極上に滴下すると、血液中のグルコースが、グルコースのみに特異的に作用する酵素(グルコースデヒドロゲナーゼなど)に電子を奪われる。奪われた電子は直接試薬導電層中の導電層に移動することはできず、酸化還元体に電子を受け渡す。電子を渡された酸化還元体が試薬導電層中の導電層まで移動し、導電層に電子を受け渡す。
この一連の反応を通して、導電層に電子が伝えられる。この際生じる電流値は、グルコース濃度に応じて増減するため、血液中のグルコース濃度を測定することが可能となる。作用極配線402、対極配線404は、作用極、対極で生じる電流を測定部に伝える役割を果たす。
以上のように、酸化還元体は導電層である作用極において電極反応を起こし、その電極反応性は精度の高い測定に重要な要素の一つである。しかし、電極反応性を高めるために、電極となる導電層を過剰にすることはコストの面で好ましくない。また、導電層からなる作用極が過剰な面積を持つ場合、血液採取の苦痛を低減するため、測定に必要な血液量を少なくできるよう電極反応部のサイズダウンが行いにくい。さらに、電極反応を起こすために設ける作用極や対極などのパターニング手法の一つとしてレーザーパターニングがあるが、導電層が過剰な厚みを持つ場合にレーザー加工性が低下する場合がある。こうしたセンサーの設計自由度が狭まる点でも、導電層が過剰な体積を持つことは好ましくない。すなわち、より小体積でかつ電極反応性が高い導電層が好ましい。本発明では、小体積でかつ電極反応性が高いことの指標として、導電層の電荷移動抵抗率を用いた。求められる電荷移動抵抗率は2.0×10−9Ωcm以下であると、電極反応性、コスト面、センサーの設計自由度の観点から好ましい。
[電気抵抗率]
前記の通り、作用極配線402、対極配線404は、作用極、対極で生じる電流を測定部に伝える役割を果たすため、ある程度以上の導電性が必要となる。また、電極反応を起こす際に作用極と対極との間に電圧が印加されるが、作用極配線402および対極配線404の導電性が低い場合、電圧降下が生じるために得られる電流量が小さくなる場合がある。また、前記と同様の理由により小体積で導電性が高い導電層が好ましい。本発明では、小体積でかつ導電性が高いことの指標として電気抵抗率を用いた。求められる電気抵抗率は5.0×10−4Ωcm以下であると、電圧降下の抑制、コスト面、センサーの設計自由度の観点から好ましい。
[用途]
本発明の積層体は、小体積においても高い電気化学的活性と導電性を両立するため、電流を測定する電気化学デバイス向けの電極等に好ましく用いることができる。また、本発明の積層体は電極式センサーに好適に用いることができる。さらに、本発明の積層体は血糖値センサーに特に好ましく用いることができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。
[測定法]
本実施例で用いた測定法を以下に示す。特に断らない限り、測定値から数値を求めるときは、測定の数を2回とし、その平均値を数値として採用した。
<電荷移動抵抗率>
各サンプルの導電層を作用極としてインピーダンススペクトロスコピーを行い、電解液中のフェロシアン化カリウムの電荷移動抵抗を測定した。電荷移動抵抗は電気化学的活性を表す。
電解液として、5mmol/lの濃度でフェロシアン化カリウム、5mmol/lの濃度でフェリシアン化カリウムおよび0.5mol/lの濃度で塩化カリウムを含むように調製した水溶液を用いた。参照電極としてAg/AgCl電極(BAS株式会社製:RE−1B水系参照電極)を用い、対極としてPt電極(BAS株式会社製:Ptカウンター電極5.7cm)を用いた。作用極は各サンプルを10mm×20mmにカットし、さらに直径3mmの円形の孔を空けた絶縁テープを導電層上に貼合することで作用極面積を一定の0.071cmとしたものを作製して用いた。ポテンショスタット(北斗電工株式会社製:HZ−7000)にFRAボードを追加して、インピーダンススペクトロスコピーを実施した。測定電位は自然電位、電位振れ幅は10mV、周波数1Hz〜10kHzで実施した。このようにして得たインピーダンススペクトロスコピーのコールコールプロットを解析ソフト(北斗電工株式会社製:EIS Version 1.0.23)で解析し、電荷移動抵抗を導出した。その際に用いた等価回路は図5と同様である。フィッテイング方法としてはLevnberg−Marquard法を用いた。探索条件は以下である。
・計算点生成:メッシュ
・フィッテイング計算:1回につき1回
・探索打ち切り回数:10,000
・絶対許容誤差:1.0×10−15
・相対許容誤差:1.0×10−15
・最大繰り返し回数:100
・差分:前進差分
・差分ステップ幅:0.0001。
前記により導出した電荷移動抵抗に作用極面積(0.071cm)を乗算し、さらに後述の導電層の厚みを乗算することにより電荷移動抵抗率を算出した。
<導電層の厚み>
レーザーエッチングを行うことにより導電層を除去して段差を形成させ、該段差部分をAFM(Bruker社製:Dimension Icon)により80μm×80μmの範囲で走査して高さの3次元プロファイルを取得し、該高さの3次元プロファイルにおいて、基板領域の高さの最頻値(A)と導電層部分の高さの最頻値(B)の差(B−A)を導電層の厚みとして各サンプルを評価した。
<電気抵抗率>
5cm×10cmの大きさにした、積層体の導電層側の中央部にプローブを密着させて、4端子法により室温下で導電層の表面抵抗値を測定した。使用した装置は、ダイアインスツルメンツ(株)製の抵抗率計MCP−T360型、使用したプローブはダイアインスツルメンツ(株)製の4探針プローブMCP−TPO3Pである。測定された導電層の表面抵抗値に前記導電層の厚みを乗算することで電気抵抗率を算出した。
<G/D>
後述のコロナ処理を施して親水性を向上させた基材上に後述のカーボンナノチューブ分散液をバーコート番手10番で塗布、その後100℃で1分間乾燥させることでG/D測定用のサンプルを作製した。各サンプルを20mm×20mmの大きさにカット後、レーザーラマン顕微鏡(ナノフォトン株式会社製:RAMANtouch)にて、励起波長532nm、出力1.5mW、露光時間300秒、グレーティング600gr/mm、スリット幅50μmの条件で測定しラマン分光スペクトルを得た。得られた各ラマン分光スペクトルの1,560〜1,600cm−1の範囲内で最大のピーク強度をG、1,310〜1,350cm−1の範囲内で最大のピーク強度をDとし、GからDを除算することでG/Dを導出した。
[サンプル作製法]
本実施例で用いたサンプルの作成法を以下に示す。
<基材>
各実施例及び比較例の基材として、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製 “ルミラー”(登録商標)E20、厚み250μm、白色度91.7%)を使用した。
<コロナ処理>
コロナ表面改質評価装置(春日電機(株)製TEC−4AX)を用いて、E値100W・min/m、放電電極−アース板の放電ギャップ間隔1mmでコロナ処理を実施した。
<アンダーコート液>
親水性官能基を有するポリエステル樹脂と親水性官能基を有するアクリル樹脂を含む有機バインダー(高松油脂(株)製 A647−GEX 固形分濃度20質量%、水溶媒)と、コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製 “スノーテックス”(登録商標)ST−O、粒径10nm〜15nm、固形分濃度20質量%)を混合し、水及びイソプロパノール(以下、IPA)で希釈し、最終的に、水とIPAとの比率が質量比で7:3、樹脂とシリカを合わせた固形分濃度が2.5質量%、樹脂とシリカの質量比が9:1となるように調整した。
<カーボンナノチューブ合成触媒調製>
約24.6gのクエン酸鉄(III)アンモニウム(和光純薬工業社製)をイオン交換水6.2kgに溶解した。この溶液に、酸化マグネシウム(岩谷社製MJ−30)を約1,000g加え、撹拌機で60分間激しく撹拌処理した後に、懸濁液を10Lのオートクレーブ容器中に導入した。この時、洗い込み液としてイオン交換水0.5kgを使用した。密閉した状態で160℃に加熱し6時間保持した。その後オートクレーブ容器を放冷し、容器からスラリー状の白濁物質を取り出し、過剰の水分を吸引濾過により濾別し、濾取物中に少量含まれる水分は120℃の乾燥機中で加熱乾燥した。得られた固形分は篩い上で、乳鉢で細粒化しながら、10〜20メッシュの範囲の粒径を回収した。左記の顆粒状の触媒体を電気炉中に導入し、大気下600℃で3時間加熱した。かさ密度は0.32g/mLであった。また、濾液をエネルギー分散型X線分析装置(EDX)により分析したところ鉄は検出されなかった。このことから、添加したクエン酸鉄(III)アンモニウムは全量酸化マグネシウムに担持されたことが確認できた。さらに触媒体のEDX分析結果から、触媒体に含まれる鉄含有量は0.39質量%であった。
<カーボンナノチューブの合成>
前記の触媒を用い、カーボンナノチューブを合成した。固体触媒132gをとり、鉛直方向に設置した反応器の中央部の石英焼結板上に導入することで触媒層を作製した。反応管内温度が約860℃になるまで、触媒体層を加熱しながら、反応器底部から反応器上部方向へ向けて窒素ガスを16.5L/minで供給し、触媒体層を通過するように流通させた。その後、窒素ガスを供給しながら、さらにメタンガスを0.78L/minで60分間導入して触媒体層を通過するように通気し、反応させた。メタンガスの導入を止め、窒素ガスを16.5L/min通気させながら、石英反応管を室温まで冷却して触媒付きカーボンナノチューブ組成物を得た。この触媒付きカーボンナノチューブ組成物を129g用いて4.8Nの塩酸水溶液2,000mL中で1時間撹拌することで触媒金属である鉄とその担体であるMgOを溶解した。得られた黒色懸濁液は濾過した後、濾取物は再度4.8Nの塩酸水溶液400mLに投入し脱MgO処理をし、濾取した。この操作を3回繰り返し、触媒が除去されたカーボンナノチューブを得た。
<加水分解カルボキシメチルセルロースの製造>
10質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬(株)社製、セロゲン5A(重量平均分子量:80,000、分子量分布(Mw/Mn):1.6、エーテル化度:0.7))水溶液500gを三口フラスコに加えて、1級硫酸(キシダ化学(株)社製)を用いてpH2に調整した。この容器を120℃に昇温したオイルバスに移し、加熱還流下で攪拌しながら9時間加水分解反応を行った。三口フラスコを放冷後、28質量%アンモニア水溶液(キシダ化学(株)社製)を用いてpH10に調整し反応停止して加水分解カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液を得た。加水分解カルボキシメチルセルロースナトリウムの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法を用い、ポリエチレングリコールによる校正曲線と対比させて分子量を算出した。その結果、重量平均分子量は約35,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。
<カーボンナノチューブ分散液の調製>
各実施例および比較例に用いたカーボンナノチューブ分散液の製造方法を以下に示す。
(1)カーボンナノチューブ分散液A
前記合成したカーボンナノチューブを約300倍の質量の濃硝酸(和光純薬工業社製 1級 Assay 60〜61質量%)に添加した。その後、約140℃のオイルバスで24時間攪拌しながら加熱還流した。加熱還流後、カーボンナノチューブを含む硝酸溶液をイオン交換水で2倍に希釈して吸引ろ過した。イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、カーボンナノチューブと水とを含んだカーボンナノチューブウェットケークを保存した。このカーボンナノチューブの平均外径を高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、1.7nmであった。また二層カーボンナノチューブの割合は90質量%であり、燃焼ピーク温度は725℃であり、加熱送風オーブンで200℃・2時間加熱送風乾燥後の質量より求めたカーボンナノチューブウェットケークのカーボンナノチューブ濃度は3.4質量%であった。
3.0質量%となるようにイオン交換水で希釈した前記カーボンナノチューブウェットケーク0.5gと、0.5質量%となるようにイオン交換水で希釈した前記加水分解カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液4.5gと、2.0質量%となるようにイオン交換水で希釈した炭酸アンモニウム(和光純薬工業(株)社製)水溶液1.5gと、水3.5gとを混合し、10.0gのカーボンナノチューブ混合液を調製した。該混合液を超音波ホモジナイザー(家田貿易(株)社製、VCX−130)にて出力75%、30秒周期(30秒間出力後に30秒間出力停止の繰り返し)の条件で6分間、分散中に液温が10℃以下となるように冷下分散処理した。得られた分散液をカーボンナノチューブの濃度が0.075質量%となるようにイオン交換水で希釈しカーボンナノチューブ分散液Aを得た。該分散液より作製された導電層のG/Dは80であった。
(2)カーボンナノチューブ分散液B
前記カーボンナノチューブ分散液Aの調製において、超音波ホモジナイザーによる分散処理時間を6分間ではなく30分間となるようにする以外は同様の方法で作製してカーボンナノチューブ分散液Bを得た。該分散液より作製された導電層のG/Dは44であった。
(4)カーボンナノチューブ分散液C
前記カーボンナノチューブ分散液Aの調製において、超音波ホモジナイザーによる分散処理時間を6分間ではなく1,440分間となるようにする以外は同様の方法で作製してカーボンナノチューブ分散液Cを得た。該分散液より作製された導電層のG/Dは2であった。
(5)カーボンナノチューブ分散液D
単層カーボンナノチューブ(OCSiAl社製、TUBALL)0.3gと、5.0質量%となるようにイオン交換水で希釈した前記加水分解カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液9.0gと、2.0質量%となるようにイオン交換水で希釈した炭酸アンモニウム(和光純薬工業(株)社製)水溶液30gと、水60.7gとを混合し、100gのカーボンナノチューブ混合液を調製した。該混合液に直径1.0mmのジルコニアビーズ(東レ(株)製、トレセラムビーズ)400gを加え、ボールミル(FRITSCH社製、遊星型ボールミルP−6)を用い、回転数400rpmに設定して4時間攪拌処理を行ったのち、50メッシュのフィルター((株)シンキー製、ナイロンメッシュ50)と自転・公転ミキサー((株)シンキー製、NRE−250)を用いて前記ジルコニアビーズを除去して0.30質量%の単層カーボンナノチューブスラリーを調製した。該単層カーボンナノチューブスラリー5.0gとイオン交換水5.0gを混合して10.0gのカーボンナノチューブ混合液を調製した。該混合液を前記超音波ホモジナイザーにて出力75%、30秒周期の条件で6分間、氷冷下分散処理した。分散中液温が10℃以下となるようにし、カーボンナノチューブ分散液Dを得た。該分散液より作製された導電層のG/Dは47であった。
(5)カーボンナノチューブ分散液E
多層カーボンナノチューブ(巴工業(株)製、NC7000、3層以上のカーボンナノチューブが100本中に50本以上含まれているカーボンナノチューブ)0.75gと、イオン交換水25gを混合し、ブレンダー(大阪ケミカル(株)製、ワーリング J−SPECブレンダー 7010JBB)を用い、回転数22,500rpmに設定して3分間攪拌処理を行い3.0質量%の多層カーボンナノチューブウェットケークを調製した。
前記カーボンナノチューブ分散液Bの調製において、3.0質量%となるようにイオン交換水で希釈した前記カーボンナノチューブウェットケークの代わりに前記多層カーボンナノチューブウェットケーク0.5gを使用する以外は同様の方法で調製と分散と希釈とを行い、カーボンナノチューブ分散液Eを得た。
<アンダーコート積層フィルム製造例>
基材上にアンダーコート層を下記に示す方法で作製した。
基材に、前記コロナ処理を実施して基材の親水性を向上させた。この基材上に前記アンダーコート液をバーコート番手6番で塗布し、その後、熱風オーブンを用いて125℃で1分間乾燥させ、アンダーコート積層フィルムを作製した。
(実施例1)
前記アンダーコート積層フィルム上に前記カーボンナノチューブ分散液Aとカーボンナノチューブ分散液Cを質量比9:1の割合で混合・攪拌させた分散液をバーコート番手8番で塗布、その後100℃で1分間乾燥させて、導電層を有する積層体を作製した。
(実施例2)
前記アンダーコート積層フィルム上に前記カーボンナノチューブ分散液Aとカーボンナノチューブ分散液Cを質量比3:1の割合で混合・攪拌させた分散液をバーコート番手8番で塗布、その後100℃で1分間乾燥させて、導電層を有する積層体を作製した。
(実施例3)
前記アンダーコート積層フィルム上に前記カーボンナノチューブ分散液Aとカーボンナノチューブ分散液Cを質量比1:1の割合で混合・攪拌させた分散液をバーコート番手8番で塗布、その後100℃で1分間乾燥させて、導電層を有する積層体を作製した。
(比較例1)
前記アンダーコート積層フィルム上に前記カーボンナノチューブ分散液Aをバーコート番手8番で塗布、その後100℃で1分間乾燥させて、導電層を有する積層体を作製した。
(比較例2)
前記アンダーコート積層フィルム上に前記カーボンナノチューブ分散液Bをバーコート番手8番で塗布し、その後100℃で1分間乾燥させて、導電層を有する積層体を作製した。
(比較例3)
前記アンダーコート積層フィルム上に前記カーボンナノチューブ分散液Cをバーコート番手8番で塗布し、その後100℃で1分間乾燥させて、導電層を有する積層体を作製した。
(比較例4)
前記アンダーコート積層フィルム上に前記カーボンナノチューブ分散液Dをバーコート番手8番で塗布し、その後100℃で1分間乾燥させて、導電層を有する積層体を作製した。
(比較例5)
前記アンダーコート積層フィルム上に前記カーボンナノチューブ分散液Eをバーコート番手8番で塗布し、その後100℃で1分間乾燥させて、導電層を有する積層体を作製した
各々の導電層を有する積層体について行った評価の結果を、表1に示す。
Figure 2018169220
本発明は、例えば電流を測定するための電極として好適に用いることができる。特に電気化学デバイスや血糖値センサーの電極として好適に用いることができる。
101:積層体
102:アンダーコート積層フィルム
103:基材
104:アンダーコート
105:導電層
106:カーボンナノチューブ
107:第1のカーボンナノチューブ
108:第2のカーボンナノチューブ
109:カーボンナノチューブの分散剤
201:カーボングラファイト構造の欠陥
202:Sto−wales欠陥
203:−OH基や=Oなどの官能基
401:試薬導電層
402:作用極配線
403:対極
404:対極配線
501:電荷移動抵抗
502:ワールブルグインピーダンス
503:CPE(constant phase element)
504:回路抵抗

Claims (6)

  1. 基材上にカーボンナノチューブおよびカーボンナノチューブの分散剤を含む導電層を有する積層体であって、5mmol/lの濃度でフェロシアン化カリウム、5mmol/lの濃度でフェリシアン化カリウムおよび0.5mol/lの濃度で塩化カリウムを含む水溶液に浸漬させた際の銀/塩化銀電極基準で自然電位における電荷移動抵抗率が2.0×10−9Ωcm以下であることを特徴とする積層体。
  2. 前記導電層の電気抵抗率が5.0×10−4Ωcm以下であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
  3. 前記導電層全体を100質量%としたとき、以下の第1のカーボンナノチューブを1.0質量%以上、かつ第2のカーボンナノチューブを1.0質量%以上含むことを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
    第1のカーボンナノチューブ:共鳴ラマン散乱測定により、1,560〜1,600cm−1の範囲内で最大のピーク強度をG、1,310〜1,350cm−1の範囲内で最大のピーク強度をDとしたとき、G/Dが30以上である
    第2のカーボンナノチューブ:前記G/Dが10以下である
  4. 前記カーボンナノチューブが二層カーボンナノチューブを含むことを特徴とする請求項請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
  5. 前記カーボンナノチューブの分散剤がカルボキシメチルセルロースを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層体。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の積層体を用いてなることを特徴とする電極式センサー。
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WO2024071293A1 (ja) * 2022-09-30 2024-04-04 日東電工株式会社 電極および電気化学測定システム

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