JP2018036061A - 積層体 - Google Patents

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豊 片山
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【課題】導電体と酸化還元体とを含む試薬導電層を基材上に有する積層体に関するものであり、体積あたりの電荷量密度の絶対値が0.50C/cm3以上である積層体を提供する。【解決手段】導電体105がカーボンナノチューブで、試薬導電層102の表面抵抗値が1,000Ω/□以下で、カーボンナノチューブが二層カーボンナノチューブで、試薬導電層中にカーボンナノチューブの分散剤が含み、分散剤がカルボキシメチルセルロースを含む積層体。【選択図】図1

Description

本発明は、導電体と酸化還元体とを含む試薬導電層を基材上に有する積層体に関する。
生体試料などに存在する特定成分を、試料の希釈および攪拌などを行うことなく簡易に定量しうるバイオセンサーが提案されている。その一例として、特許文献1には、絶縁性基板上にスクリーン印刷などの方法によって導電層を形成し、この電極上に酵素および酸化還元体を含有する試薬層を形成したバイオセンサーが開示されている。このバイオセンサーは、以下のようにして試料中の基質濃度を定量する。
まず、試料液をバイオセンサーの試薬層上に滴下することにより、試薬層が溶解し、試料液中の基質と試薬層の酵素との間で酵素反応が進行する。この酵素反応に伴い、酸化還元体が還元される。一定時間後、センサーの電極に電圧を印加して、この還元された酸化還元体を電気化学的に酸化し、このとき得られる酸化電流値を測定する。この電流値は、基質濃度に直接比例するので、試料液中の基質濃度を定量することができる。このようなバイオセンサーはすでに血液中のグルコース濃度を測定するセンサーとして実用化されている。
また、特許文献2には、上記特許文献1のバイオセンサーの試薬層にあたる構成がなく、代わりに酵素および酸化還元体等の試薬をカーボンペースト中に練り込んだ試薬導電層を電極に用いたバイオセンサーが開示されている。このバイオセンサーは、試薬が導電層中に固定されているために、滴下された試料液の流動の影響により発生する試薬の濃度ムラを軽減可能であり、測定値の再現性が高める狙いがある。
その他、特許文献3は特許文献1と同様に電極上に試薬層を形成する構成であるが、試薬層としてリンカー分子を使用して酸化還元体を固定化させた導電性高分子を用いており、上記酸化還元体の流動を防ぐことに加え、酸化還元体から電極への電子の受け渡しを、導電性高分子を介することで効率的に行うことを狙いとしている。
特開平3−202764号公報 特開平2−75949号公報 特表2016−500447号公報
しかし、前述の通り特許文献1では電極上に試薬層が形成されており、試料液に溶解すると、試料液中に酵素および酸化還元体が電極から遊離してしまう。そのために測定値の再現性が低いという課題があるが、試薬の遊離が多少起こっても再現性の低下を抑える目的で、過剰量の試薬を電極上に配する対策が取られている。試薬はバイオセンサーの構成部材の中でも高価な材料であり、試薬の量に対して電極で反応に寄与する試薬の割合が小さい該構成は高コストである。さらに、導電層と試薬層をそれぞれ別工程で形成する必要があることからも、該構成は生産性が低いと言える。
また、特許文献2において、特許文献1にあった試薬の遊離や、導電層と試薬層が別工程で形成されることによる低い生産性の課題はない。しかし、導電層として用いられているカーボンペーストはバイオセンサーとして利用する際に十分な導電性を持たせるためにはμmオーダーの厚い膜を形成させる必要がある。一方で、酵素電極反応は試料液が接することができる電極の表層でしか起こらないため、電極の表層を除いた大部分の試薬が酵素電極反応に寄与せず、高コストな試薬を過剰に消費していることになるため生産性が低い。
特許文献3では、導電性高分子を使用しているが、導電性高分子は貴金属やカーボン電極と比較して電気化学的な活性が低く、さらにバックグラウンド電流によるノイズの発生量も多いため、低い基質濃度を測定するバイオセンサーの使用には適さない。
本発明は、かかる課題を解決する為に、次のような特徴を有する。すなわち、
(1)基材上に導電体と酸化還元体とを含む試薬導電層を有する積層体であって、0.9質量%の塩化ナトリウム水溶液に浸漬し、銀/塩化銀電極基準で自然電位から負に0.2Vの電位を5秒間印加した場合に、体積あたりの電荷量密度の絶対値が0.50C/cm以上であることを特徴とする積層体。
(2)前記導電体がカーボンナノチューブであることを特徴とする(1)に記載の積層体。
(3)前記試薬導電層の表面抵抗値が1,000Ω/□以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の積層体。
(4)前記カーボンナノチューブが二層カーボンナノチューブであることを特徴とする(2)または(3)に記載の積層体。
(5)前記試薬導電層中にカーボンナノチューブの分散剤が含まれていることを特徴とする(2)〜(4)のいずれかに記載の積層体。
(6)前記分散剤がカルボキシメチルセルロースを含むことを特徴とする(5)に記載の積層体。
(7)(1)〜(6)のいずれかに記載の積層体を用いてなることを特徴とする電極式センサー。
本発明によれば、試薬と電極とが効率的に反応する積層体を提供することができる。
基材上に試薬導電層を有する積層体の断面の概念図である。 カーボン欠陥の概念図である。 二層カーボンナノチューブの概念図である。 血糖値センサー配線の概念図である。 クロノクーロメトリーの例である。
以下、積層体の実施形態を説明する。
[基材]
本発明に用いる基材は、低コストで大量生産を行う目的を達成するためには、高分子化合物であることが好ましいが、特に限定するものではなく、ガラス、石英、サファイア、シリコン、金属等幅広い範囲から選ぶことができる。高分子化合物としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ−ρ−フェニレンスルファイド、ポリエーテルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、アセテート系、ポリ乳酸系、フッ素系、シリコーン系等が挙げられる。また、これらの共重合体やブレンド物、さらに架橋した化合物を用いることができる。
さらに上記高分子化合物の中でも、ポリエステル、ポリイミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ−ρ−フェニレンスルファイド、ポリ(メタ)アクリル酸エステルなどからなるものが好ましく、作業性や、経済性などを総合的に勘案すると、ポリエステル、中でもポリエチレンテレフタレートよりなる合成樹脂が好ましく用いられる。また、これらの基材に、発明の趣旨を損ねない範囲で、UVオゾン処理などの各種前処理やアンダーコート層の積層などがなされていてもよい。
なお、基材がフィルムであればフレキシブルな積層体を得ることができ、電子機器の曲面部分に使用できたり、屈曲が必要な電子部品に使用したりすることができるため好ましい。さらに、ロール状に巻かれたフィルムを用いると、ロールツーロールで連続的に本発明の積層体を生産することにつながり、コスト面でメリットがあるため好ましい。特に、フィルムとしてポリエステルフィルムを用いることが好ましい。
また、血糖値センサーとして用いる場合は、血液の視認性を良くするため、基材として白色のものが用いられることが好ましい。白色というのは、JIS L1015(2010)で定められた、ハンター法によって測定される白色度によって規定され、少なくとも70%以上、好ましくは90%以上の値を示す色を指す。基材の厚みは、ハンドリングの観点やフレキシブル性の観点から1μm〜500μmの範囲が好ましく、30μm〜300μmの範囲がより好ましく、50μm〜250μmの範囲がさらに好ましい。
[表面親水化処理]
本発明においては、後で述べるように水系溶媒を含む塗料組成物(以下、水系アンダーコート液ということもある)を基材上に塗工することが好ましい。水系アンダーコート液の基材上への塗布性(はじきなく塗工する)を向上させるため、表面親水化方法としてコロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理などの物理処理、酸処理やアルカリ処理などの化学的処理を実施することが好ましい。この中でもコロナ処理、プラズマ処理が好ましい。これらの処理により、例えば基材表面の水接触角を5°以上55°以下にすることができ、水系アンダーコート液を基材に効率良く塗布することが可能となるため好ましい。
[アンダーコート層]
後述するカーボンナノチューブ分散液の基材上への塗布性向上、およびカーボンナノチューブを含む導電層と基材の密着性を向上させるため、前記基材上にアンダーコート層を設けることが好ましい。また、アンダーコート層は有機バインダーと粒子とを含むことが好ましい。アンダーコート層の詳細を以下に説明する。
<アンダーコート層のぬれ張力、厚み、粗さ>
アンダーコート層はISO8296(2003)で規定されている、ぬれ張力が76mN/m以上105mN/m以下であることが好ましい。ぬれ張力を76mN/m以上とすることで、アンダーコート層上にカーボンナノチューブ分散液を塗布した際に、塗布はじきを生じにくくし、カーボンナノチューブ分散液を均一に塗布することが可能となるため好ましい。またアンダーコート層のぬれ張力が105mN/m以下であると、塗布時の塗液の塗れ広がりによる塗布ムラや、乾燥時の風の影響を受けた塗布ムラを生じにくくし、カーボンナノチューブ分散液を均一に塗布することが可能となるため好ましい。塗布ムラの観点から、ぬれ張力は76mN/m以上105mN/m以下であることが好ましく、76mN/m以上90mN/m以下であることがより好ましい。
アンダーコート層のぬれ張力は、アンダーコート層を形成する塗料組成物中の有機バインダーに含まれる親水性官能基の共重合量を多くしたり、アンダーコート層の膜厚を厚くしたりすることにより大きくすることができる。よって、アンダーコート層のぬれ張力は、有機バインダーに含まれる親水性官能基の共重合量、親水性官能基の種類、アンダーコート層の膜厚によって、適宜調整することができる。
アンダーコート層の厚みは積層体としたときにカール等の現象が発生しにくく、アンダーコート層表面のぬれ性が前記の好ましいぬれ張力の範囲に入っていれば、任意に設定することができる。
<有機バインダー>
カーボンナノチューブと酸化還元体とを含む試薬導電層と基材の密着性を向上させるため、アンダーコート層には有機バインダーを含むことが好ましい。有機バインダーの組成としては、例えばフェノール、シリコン、ナイロン、ポリエチレン、ポリエステル、オレフィン、ビニル、アクリル、セルロースなどが好ましい。
前記有機バインダーは、基材への塗布性の観点より親水性官能基を有する有機バインダーであることが好ましい。また、前記有機バインダーは、基材への塗布性の観点より親水性官能基を有するポリエステル樹脂および/または親水性官能基を有するアクリル樹脂であることがより好ましい。すなわち、有機バインダーが親水性官能基を有するポリエステル樹脂または親水性官能基を有するアクリル樹脂のいずれかであってもよいし、親水性官能基を有するポリエステル樹脂および親水性官能基を有するアクリル樹脂の両方であってもよいが、親水性官能基を有するポリエステル樹脂および親水性官能基を有するアクリル樹脂の両方であることが、基材との密着性向上、カーボンナノチューブ水分散液の塗布性向上の観点から好ましい。
<粒子>
本発明において、アンダーコート層は粒子を含むことが好ましい。粒子を含むことで、カーボンナノチューブ分散液の塗布性をさらに向上させることができる。また、アンチブロッキング性もアンダーコート層に付与することができるため好ましい。すなわち、積層体をロールツーロールで製造する際、アンダーコート層形成後にアンダーコート層が形成された基材を巻き取る必要が生じる場合があり、その際、アンダーコート層に粒子を含むことで、アンダーコート層がブロッキングしにくくなるため好ましい。
粒子の含有量はアンダーコート層全体を100質量%としたとき、5質量%以上95質量%以下が好ましい。5質量%未満となると、アンダーコート層表面の凹凸が不足し、アンチブロッキング性が発揮できない場合がある。また、95質量%より大きくなると、バインダーに対して粒子が過剰となり、粒子の脱落が起こる場合がある。粒子の粒径の好ましい範囲としては5nm〜500nmである。より好ましくは、15nm〜100nm、さらに好ましくは15nm〜40nmである。なお、ここでいう粒径とは動的光散乱法により測定された平均粒径をいう。
本発明に用いられる粒子としては有機粒子であっても無機粒子であっても、その両方を用いても構わない。本発明に用いることのできる無機粒子の組成としては、例えばシリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、セリア、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、ゼオライト、酸化チタン、各種金属酸化物からなる微粒子などが好ましい。特に、親水性官能基を有するポリエステル樹脂への分散性の点から無機コロイド粒子が好ましく、特にコロイダルシリカが好ましい。さらには、コロイダルシリカ表面に−SiOH基や−OHイオンが存在し、負に帯電した状態で電気二重層が形成され、コロイダルシリカ間の静電反発により溶媒中で分散安定しているコロイダルシリカであることが好ましい。コロイダルシリカ表面に−SiOH基や−OHイオンが存在し、負に帯電した状態で電気二重層が形成され、コロイダルシリカ間の静電反発により溶媒中で分散安定しているコロイダルシリカとしては、日産化学工業(株)社製の“スノーテックス”(登録商標)シリーズや日揮触媒化成(株)社製の“カタロイド”シリーズなどが好ましく用いられる。
本発明に用いることのできる有機粒子の組成としては、例えばアクリル酸類、スチレン樹脂、熱硬化樹脂、シリコーンおよびイミド化合物等を構成成分とする粒子が挙げられる。ポリエステル重合反応時に添加する触媒等によって析出する粒子(いわゆる内部粒子)も好ましく用いられる。特に、親水性官能基を有するポリエステル樹脂への分散性、汎用性の観点から、スチレン/アクリル粒子が好ましい。液中で安定的に分散しているスチレン/アクリル粒子としては、日本合成化学工業(株)製 “モビニール”(登録商標) 972などが好ましく用いられる。
<アンダーコート層の形成方法>
前述した有機バインダー、並びに必要に応じて、添加剤や溶媒を含有する塗料組成物を基材上へ塗布し、必要に応じて溶媒を乾燥させることによって、基材上にアンダーコート層を形成することができる。
また、塗料組成物の溶媒として水系溶媒を用いることが好ましい。水系溶媒を用いた塗料組成物を水系溶媒を含む塗料組成物ということもある。水系溶媒を用いることで、乾燥工程での溶媒の急激な蒸発を抑制でき、均一なアンダーコート層を形成できるだけでなく、環境負荷の点で優れているためである。
ここで、水系溶媒とは水、または水とメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類など水に可溶である有機溶媒が任意の比率で混合されているものを指す。
塗料組成物の基材上への塗布方法は、既知のウェットコーティング方法、例えば吹き付け塗装、浸漬コーティング、スピンコーティング、ナイフコーティング、キスコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、ロールコーティング、バーコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、パット印刷、他の種類の印刷などが利用できる。また、ドライコーティング方法を用いてもよい。乾式コーティング方法としては、スパッタリング、蒸着などの物理気相成長や化学気相成長などが利用できる。また塗布は、複数回に分けて行ってもよく、異なる2種類の塗布方法を組み合わせてもよい。好ましい塗布方法は、ウェットコーティングであるグラビアコーティング、バーコーティング、スロットダイコーティングである。
前記塗布工程の後、乾燥工程にて塗布された分散剤を含むアンダーコート塗料から分散媒を除去する。溶媒の除去方法としては、熱風を基材に当てる対流熱風乾燥、赤外線乾燥装置からの輻射で基材に赤外線を吸収させて熱に変え加熱し乾燥させる輻射熱乾燥、熱媒体で加熱された壁面からの熱伝導で加熱し乾燥させる伝導熱乾燥、などを適用することができる。中でも対流熱風乾燥は乾燥速度が大きいため好ましい。
なお、以下で基材上にアンダーコート層が形成されたフィルムをアンダーコート積層フィルムということもある。
[試薬導電層]
図1に基材103上に試薬導電層102を含む積層体101の断面の概念図を示す。試薬導電層102とは、導電体105と酸化還元体104とを含む層であり、本発明において、前記導電体105がカーボンナノチューブであることが好ましい。試薬導電層102は導電体105と酸化還元体104とを含む組成であれば特に限定されるものではなく、例えばカーボンナノチューブの分散剤、酵素、粘度調整剤、乳化剤、pH調整剤などが含まれていてもよい。また、試薬導電層102の形態は特に限定されるものではなく、例えば図1aのように導電体105と酸化還元体104とが混合して同一の層に存在する形態、図1bのように導電体105を含む導電層107上に酸化還元体104を含む試薬層108がある形態、図1cのように試薬層108上に導電層107がある形態も含まれる。また、前記アンダーコート層や基材103に導電体105および/または酸化還元体104が含まれ、アンダーコート層が導電層107および/または試薬層108と同一となる形態も含まれる。中でも特に、図1aのように導電体105と酸化還元体104とが混合して同一の層に存在する形態が好ましい。なお、本発明では導電層107および試薬層208を合わせて試薬導電層102という。
[導電体]
本発明において用いられる導電体は、導電性を持つ材料であれば特に限定されず、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラック、黒鉛、フラーレンなどに代表されるカーボン材料、金、白金、パラジウム、ニッケルなどに代表される金属またはこれらの酸化物、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリンなどに代表される導電性ポリマーなどが挙げられる。中でもカーボン材料や金、白金、パラジウム、ニッケルは電気化学的活性が高く、電気化学的に安定であるため電極式センサーの電極として好ましく、特にカーボンナノチューブはより優れた電気化学的活性、電気化学的安定性を持つためより好ましい。
[カーボンナノチューブ]
本発明において用いられるカーボンナノチューブは、実質的にグラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状を有するものであれば特に限定されず、グラファイトの1枚面を1層に巻いた単層カーボンナノチューブ、多層(3層以上)に巻いた多層カーボンナノチューブいずれも適用できるが、中でもグラファイトの1枚面を二層に巻いた特に二層カーボンナノチューブが100本中に50本以上含まれているカーボンナノチューブであると、導電性ならびに塗布用分散液中でのカーボンナノチューブの分散性が極めて高くなることから好ましい。さらに好ましくは100本中75本以上が二層カーボンナノチューブ、最も好ましくは100本中80本以上が二層カーボンナノチューブである。なお、二層カーボンナノチューブが100本中に50本含まれていることを、二層カーボンナノチューブの割合が50%と表示することもある。また、二層カーボンナノチューブは酸処理などによって表面が官能基化されても導電性などの本来の機能が損なわれない点からも好ましい。
カーボンナノチューブは、例えば次のように製造される。マグネシアに鉄を担持した粉末状の触媒を、縦型反応器中、反応器の水平断面方向全面に存在させ、該反応器内にメタンを鉛直方向に供給し、メタンと前記触媒を500〜1,200℃で接触させ、カーボンナノチューブを製造した後、カーボンナノチューブを酸化処理することにより、単層〜5層のカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブを得ることができる。カーボンナノチューブは製造した後、酸化処理を施すことにより単層〜五層の割合を、特に二層〜五層の割合を増加させることができる。酸化処理は例えば、硝酸処理する方法により行われる。硝酸はカーボンナノチューブに対するドーパントとして作用するため、好ましい。ドーパントとは、カーボンナノチューブに余剰の電子を与える、または電子を奪ってホールを形成する作用をなすものであり、自由に動くことのできるキャリアを生じさせることにより、カーボンナノチューブの導電性を向上させるものである。また、酸化処理を行うことで、二層カーボンナノチューブ外層の欠陥、官能基数を増加させることができる。硝酸処理法は本発明のカーボンナノチューブが得られる限り、特に限定されないが、通常、140℃のオイルバス中で行われる。硝酸処理時間は特に限定されないが、0.5〜50時間の範囲であることが好ましい。
カーボン材料電極の反応活性は、図2で示されるような、カーボングラファイト構造の欠陥201、Sto−wales欠陥202、−OH基や=Oなどの官能基203が存在する部位で特に高いとされている。図3で示すように、二層カーボンナノチューブ電極は、前述したカーボンナノチューブの酸化工程で外層に意図的に欠陥や、−COOH基や−OH基などの官能基を導入し、内層は欠陥を生じない構造とすることができる。このことにより、導電性が高く、かつ電気化学的活性の高いカーボン材料を得ることができる。
[分散剤]
導電体としてカーボンナノチューブを用いる場合、試薬導電層にはカーボンナノチューブとともにカーボンナノチューブの分散剤(以下、単に分散剤ということもある)を含むことが好ましい。
カーボンナノチューブの分散剤としては、界面活性剤、各種高分子材料(水溶性高分子材料等)等を用いることができるが、イオン性高分子材料が分散性が高いことから好ましい。イオン性高分子材料としてはアニオン性高分子材料やカチオン性高分子材料、両性高分子材料がある。カーボンナノチューブ分散液を基材に塗布後、分散剤は例えばカーボンナノチューブ間に存在するバインダーとしての役割を果たす。後述する電荷量密度の絶対値を測定する際、電解液である水溶液に浸漬して測定される。イオン性高分子材料は水との親和性が高いため、疎水性であるカーボンナノチューブと水溶液との親和性を高め、電極反応面積を高くすることができ、電荷量密度の絶対値を向上させることができる。イオン性高分子材料としては、水との親和性が高く、かつ、カーボンナノチューブ分散能が高く、酸化還元体と安定的に共存することができ、分散性を保持できるものであればどの種類も用いることができるが、例えばカルボキシメチルセルロースを含む物質やポリスチレンスルホン酸の塩等を用いることができる。なかでも、カルボキシメチルセルロースを含む物質が好ましく、カルボキシメチルセルロースを含む物質のなかでも特にカルボキシメチルセルロースおよびその塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩等)がカーボンナノチューブ分散液においてカーボンナノチューブを効率的に分散することができ、好ましい(以下、カルボキシメチルセルロースおよびその塩をカルボキシメチルセルロース塩、ポリスチレンスルホン酸の塩をポリスチレンスルホン酸塩ということもある)。
本発明において、カルボキシメチルセルロース塩、ポリスチレンスルホン酸塩を用いる場合、塩を構成するカチオン性の物質としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属のカチオン、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属のカチオン、アンモニウムイオン、あるいはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、エチルアミン、ブチルアミン、ヤシ油アミン、牛脂アミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ポリエチレンイミン等の有機アミンのオニウムイオン、または、これらのポリエチレンオキシド付加物を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
[酸化還元体]
本発明における酸化還元体とは、電子伝達反応を担う化合物の総称であり、電子を受け取る酸化型の電子受容体と、電子を放出する還元型の電子供与体との2つの状態を取ることが可能な物質である。電極式センサーにおいて、酸化還元体は酵素から電極への電子移動を仲介する役割を持ち、一般的には酸化型の電子受容体が酵素から電子を受け取って還元型の電子供与体となり、電極へ電子を放出して酸化型の電子受容体に戻る一連の反応により電子伝達が行われる。
酸化還元体の具体例としてはフェリシアン化カリウムなどを含むフェリシアン化物塩、フェロセンおよびその誘導体、メチレンブルー、フェナジンメトサルフェート、チオニン、ベンゾキノンやナフトキノンを含むキノン類およびその誘導体、塩化ヘキサアンミンルテニウム(III)などを含むルテニウム錯体などを挙げることができる。血糖値センサー用途として特にフェリシアン化カリウムが好ましい。
[酵素]
酵素は、血液、尿、唾液、汗、涙などの生体試料、食品原料や製品、環境中に由来する基質(特定成分)に対し特異的に作用し、それらを酸化もしくは還元する役割を果たすものである。例えば、グルコースオキシダーゼ、ウリカーゼ、ザルコシンオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、アルコールオキシダーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、コレステロールオキシダーゼ、コレステロールデヒドロゲナーゼ、NADH オキシダーゼ、ジアホラーゼ、ウレアーゼ、フルクトースオキシダーゼ、フルクトースデヒドロゲナーゼ、アスコルビン酸デヒドロゲナーゼなどが、測定物質に応じて用いることができる。一般的な血糖値センサー測定用途には、グルコースオキシダーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼが好ましく用いられる。
[試薬導電層の作製方法]
本発明において試薬導電層の作製方法は特に限定されないが、カーボンナノチューブ分散液を基材に塗布する塗布工程と、その後分散媒を除去する乾燥工程とを経て作製されることが好ましい。カーボンナノチューブ分散液を含む層の形成の前および/または後に、別の工程で酸化還元体を含む試薬層を形成することで試薬導電層を形成してもよいが、酸化還元体を含むカーボンナノチューブ分散液を用いて、一つの工程でカーボンナノチューブと酸化還元体とが混合して同一に存在する試薬導電層を形成することがより好ましい。
本発明において、分散液を基材上またはアンダーコート層上に塗布する方法は特に限定されない。既知の塗布方法、例えば吹き付け塗装、浸漬コーティング、スピンコーティング、ナイフコーティング、キスコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、バーコーティング、ロールコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、パット印刷、他の種類の印刷などが利用できる。また塗布は、複数回に分けて行ってもよく、異なる2種類の塗布方法を組み合わせてもよい。最も好ましい塗布方法は、グラビアコーティング、バーコーティング、ダイコーティングである。
前記塗布工程の後、乾燥工程にて塗布された分散剤を含むカーボンナノチューブ分散液から分散媒を除去する。溶媒の除去方法としては、熱風を基材に当てる対流熱風乾燥、赤外線乾燥装置からの輻射で基材に赤外線を吸収させて熱に変え加熱し乾燥させる輻射熱乾燥、熱媒体で加熱された壁面からの熱伝導で加熱し乾燥させる伝導熱乾燥、などを適用することができる。中でも対流熱風乾燥は乾燥速度が大きいため好ましい。
[カーボンナノチューブ分散液]
本発明において用いるカーボンナノチューブ分散液の調製方法は、特に限定されないが、例えば次のような手順で行うことができる。分散時の処理時間が短縮できることから、一旦、分散媒中にカーボンナノチューブを0.003〜0.30質量%の濃度範囲で含まれる分散液を調製した後、溶媒で希釈することで、所定の濃度とすることが好ましい。本発明において、カーボンナノチューブに対する分散剤の質量比(分散剤/カーボンナノチューブ)は10以下であることが好ましい。かかる好ましい範囲であると、均一に分散させることが容易である一方、導電性低下の影響が少ない。カーボンナノチューブに対する分散剤の質量比は0.3〜9.0であることがより好ましく、0.7〜6.0であることがさらに好ましく、カーボンナノチューブに対する分散剤の質量比が1.0〜3.0であれば、高い分散性と導電性を得ることができるので特に好ましい。本発明において、カーボンナノチューブ分散液には種々の添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては例えば、酸化還元体、酵素、粘度調整剤、乳化剤、pH調整剤などが含まれていてもよい。特にカーボンナノチューブ分散液には、前記試薬導電層の作製方法を実施するために、酸化還元体が含まれていることが好ましい。
調製時の分散手段としては、カーボンナノチューブと分散剤と添加剤とを分散媒中で塗装製造に慣用の混合分散機(例えばボールミル、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超音波装置、アトライター、デゾルバー、ペイントシェーカー等)を用いて混合することが挙げられる。また、これら複数の混合分散機を組み合わせて段階的に分散を行ってもよい。中でも、超音波装置を用いて分散する方法が、得られる塗布用分散液中のカーボンナノチューブの分散性が良好であることから好ましい。
[溶媒]
本発明において用いられる溶媒は、前記分散剤を容易に溶解できる点、廃液の処理が容易である等の観点から、水が好ましい。
[体積あたりの電荷量密度の絶対値]
図4に電極式センサーの一例として血糖値センサーの一般的な構成を示す。グルコースから電子を引き抜く酸化反応を生じ、電気化学反応の作用極の役割を果たす試薬導電層102、試薬導電層102で起きた酸化反応によって生じた電流を図示されない測定部へ伝える作用極導線402、試薬導電層102で生じた酸化電流に対して、還元反応を生じて、電気化学システムのバランスを保つ対極401、図示されない測定部から対極に電子を供給する対極導線403、上記を支持する基材103からなる。
試薬導電層102は、通常、グルコースから電子を奪う酵素と、これら酵素から電子を受け取り試薬導電層中の導電体に電子を伝える酸化還元体、作用極として電極反応を起こす導電体からなる。
血糖値の測定原理は以下の通りである。
測定したい血液を試薬導電層、対極上に滴下すると、血液中のグルコースが、グルコースのみに特異的に作用する酵素(グルコースデヒドロゲナーゼなど)に電子を奪われる。奪われた電子は直接試薬導電層中の導電体に移動することはできず、酸化還元体に電子を受け渡す。電子を渡された酸化還元体が試薬導電層中の導電体まで移動し、導電体に電子を受け渡す。
この一連の反応を通して、導電体に電子が伝えられる。この際生じる電流値は、グルコース濃度に応じて増減するため、血液中のグルコース濃度を測定することが可能となる。作用極導線402、対極導線403は、作用極、対極で生じる電流を測定部に伝える役割を果たす。
以上のように、酸化還元体は作用極である導電体との電極反応を起こし、その電極反応性は精度の高い測定に重要な要素の一つである。しかし、電極反応性を高めるために、過剰量の導電体および酸化還元体などを含む試薬導電層を使用するのはコストの面で好ましくない。また、試薬導電層が過剰な体積を持つ場合、血液採取の苦痛を低減するため、測定に必要な血液量を少なくできるよう電極反応部のサイズダウンが行いにくい。さらに、電極反応を起こすために設ける作用極や対極などのパターニング手法の一つとしてレーザーパターニングがあるが、試薬導電層が過剰な体積を持つ場合にレーザー加工性が低下する場合がある。こうしたセンサーの設計自由度が狭まる点でも、試薬導電層が過剰な体積を持つことは好ましくない。すなわち、より小体積でかつ電極との反応性が高い試薬導電層が好ましい。本願では、小体積でかつ電極との反応性が高いことの指標として、試薬導電層の体積あたりの電荷量密度の絶対値を用いた。求められる体積あたりの電荷量密度の絶対値は0.50C/cm以上であると、電極反応性、コスト面、センサーの設計自由度の観点から好ましい。
[表面抵抗値]
前記の通り、作用極導線402、対極導線403は、作用極、対極で生じる電流を測定部に伝える役割を果たすため、ある程度以上の導電性が必要となる。また、電極反応を起こす際に作用極と対極との間に電圧が印加されるが、作用極導線402および対極導線403の導電性が低い場合、電圧降下が生じるために得られる電流量が小さくなる場合がある。本願では、この導線部の導電性を表す指標として表面抵抗値を用いた。求められる表面抵抗値は血糖値センサーの回路設計に依存するが、1,000Ω/□以下であることが好ましく、500Ω/□以下であることがより好ましく、200Ω/□以下がさらに好ましい。
[用途]
本発明の積層体は試薬と電極が効率的に反応することから、電流を測定する電気化学デバイス向けの電極等に好ましく用いることができる。また、本発明の積層体は電極式センサーに好適に用いることができる。さらに、本発明の積層体は血糖値センサーに特に好ましく用いることができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。
[測定法]
本実施例で用いた測定法を以下に示す。特に断らない限り、測定値から数値を求めるときは、測定の数を2回とし、その平均値を数値として採用した。
<体積あたりの電荷量密度の絶対値>
各サンプルの試薬導電層を作用極としてクロノクーロメトリーを行い、試薬導電層の面積あたりの電荷量密度の絶対値の測定を行い、試薬導電層の厚みを測定することで体積あたりの電荷量密度の絶対値を算出した。体積あたりの電荷量密度の絶対値が大きいほど、電極反応が効率的であると判断できる。
電解液として、0.9質量%の濃度で塩化ナトリウムを含むように調製した水溶液を用いた。参照電極としてAg/AgCl電極(BAS株式会社製:RE−1B水系参照電極)を用い、対極としてPt電極(BAS株式会社製:Ptカウンター電極5.7cm)を用いた。作用極は各サンプルを10mm×20mmにカットし、さらに直径3mmの円形の孔を空けた絶縁テープを導電層上に貼合することで作用極面積を一定の0.071cmとしたものを作製して用いた。ポテンショスタット(北斗電工株式会社製:HZ−7000)を用いて、10秒間自然電位測定を行い、続けて測定された自然電位を10秒間保持した後、5秒間自然電位よりも負に0.2V印加した際の面積あたりの電荷量密度の絶対値を測定した。クロノクーロメトリーによる時間対面積あたりの電荷量密度の絶対値の測定例を図5に示す。
試薬導電層の厚みは、ミクロトームにより試薬導電層に対して垂直になるようにサンプルを切削し、その断面を電界放出型走査電子顕微鏡(日本電子(株)「JSM−6700F」)を用い、試薬導電層の厚みが500nm未満であれば20万倍で、500nm以上5μm未満であれば2万倍で、5μm以上であれば2,000倍でそれぞれ観察し、厚みを測定した。上記面積あたりの電荷量密度の絶対値に厚みを除することにより体積あたりの電荷量密度の絶対値を算出した。
<表面抵抗値>
5cm×10cmの大きさにした、積層体の試薬導電層側の中央部にプローブを密着させて、4端子法により室温下で表面抵抗値を測定した。使用した装置は、ダイアインスツルメンツ(株)製の抵抗率計MCP−T360型、使用したプローブはダイアインスツルメンツ(株)製の4探針プローブMCP−TPO3Pである。
[サンプル作製法]
本実施例で用いたサンプルの作成法を以下に示す。
<基材>
各実施例及び比較例の基材として、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製 “ルミラー”(登録商標)E20、厚み250μm、白色度91.7%)を使用した。
<コロナ処理>
コロナ表面改質評価装置(春日電機(株)製TEC−4AX)を用いて、E値100W・min/m、放電電極−アース板の放電ギャップ間隔1mmでコロナ処理を実施した。
<アンダーコート液>
親水性官能基を有するポリエステル樹脂と親水性官能基を有するアクリル樹脂を含む有機バインダー(高松油脂(株)製 A647−GEX 固形分濃度20質量%、水溶媒)と、コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製 “スノーテックス”(登録商標) ST−O、粒径10nm〜15nm、固形分濃度20質量%)を混合し、水及びイソプロパノール(以下、IPA)で希釈し、最終的に、水とIPAとの比率が質量比で7:3、樹脂とシリカを合わせた固形分濃度が2.5質量%、樹脂とシリカの質量比が9:1となるように調整した。
<カーボンナノチューブ合成触媒調製>
約24.6gのクエン酸鉄(III)アンモニウム(和光純薬工業社製)をイオン交換水6.2kgに溶解した。この溶液に、酸化マグネシウム(岩谷社製MJ−30)を約1,000g加え、撹拌機で60分間激しく撹拌処理した後に、懸濁液を10Lのオートクレーブ容器中に導入した。この時、洗い込み液としてイオン交換水0.5kgを使用した。密閉した状態で160℃に加熱し6時間保持した。その後オートクレーブ容器を放冷し、容器からスラリー状の白濁物質を取り出し、過剰の水分を吸引濾過により濾別し、濾取物中に少量含まれる水分は120℃の乾燥機中で加熱乾燥した。得られた固形分は篩い上で、乳鉢で細粒化しながら、10〜20メッシュの範囲の粒径を回収した。左記の顆粒状の触媒体を電気炉中に導入し、大気下600℃で3時間加熱した。かさ密度は0.32g/mLであった。また、濾液をエネルギー分散型X線分析装置(EDX)により分析したところ鉄は検出されなかった。このことから、添加したクエン酸鉄(III)アンモニウムは全量酸化マグネシウムに担持されたことが確認できた。さらに触媒体のEDX分析結果から、触媒体に含まれる鉄含有量は0.39質量%であった。
<カーボンナノチューブの合成>
前記の触媒を用い、カーボンナノチューブを合成した。固体触媒132gをとり、鉛直方向に設置した反応器の中央部の石英焼結板上に導入することで触媒層を作製した。反応管内温度が約860℃になるまで、触媒体層を加熱しながら、反応器底部から反応器上部方向へ向けて窒素ガスを16.5L/minで供給し、触媒体層を通過するように流通させた。その後、窒素ガスを供給しながら、さらにメタンガスを0.78L/minで60分間導入して触媒体層を通過するように通気し、反応させた。メタンガスの導入を止め、窒素ガスを16.5L/min通気させながら、石英反応管を室温まで冷却して触媒付きカーボンナノチューブ組成物を得た。この触媒付きカーボンナノチューブ組成物を129g用いて4.8Nの塩酸水溶液2,000mL中で1時間撹拌することで触媒金属である鉄とその担体であるMgOを溶解した。得られた黒色懸濁液は濾過した後、濾取物は再度4.8Nの塩酸水溶液400mLに投入し脱MgO処理をし、濾取した。この操作を3回繰り返し、触媒が除去されたカーボンナノチューブを得た。
<加水分解カルボキシメチルセルロースの製造>
10質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬(株)社製、セロゲン5A(重量平均分子量:80,000、分子量分布(Mw/Mn):1.6、エーテル化度:0.7))水溶液500gを三口フラスコに加えて、1級硫酸(キシダ化学(株)社製)を用いてpH2に調整した。この容器を120℃に昇温したオイルバスに移し、加熱還流下で攪拌しながら9時間加水分解反応を行った。三口フラスコを放冷後、28質量%アンモニア水溶液(キシダ化学(株)社製)を用いてpH10に調整し反応停止して加水分解カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液を得た。加水分解カルボキシメチルセルロースナトリウムの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法を用い、ポリエチレングリコールによる校正曲線と対比させて分子量を算出した。その結果、重量平均分子量は約35,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。
<カーボンナノチューブ分散液の調製>
各実施例および比較例に用いたカーボンナノチューブ分散液の製造方法を以下に示す。
(1)カーボンナノチューブ分散液A
前記合成したカーボンナノチューブを約300倍の質量の濃硝酸(和光純薬工業社製 1級 Assay 60〜61質量%)に添加した。その後、約140℃のオイルバスで24時間攪拌しながら加熱還流した。加熱還流後、カーボンナノチューブを含む硝酸溶液をイオン交換水で2倍に希釈して吸引ろ過した。イオン交換水で濾取物の懸濁液が中性となるまで水洗後、カーボンナノチューブと水とを含んだカーボンナノチューブウェットケークを保存した。このカーボンナノチューブの平均外径を高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、1.7nmであった。また二層カーボンナノチューブの割合は90質量%であり、波長532nmで測定したラマンG/D比は80であり、燃焼ピーク温度は725℃であり、加熱送風オーブンで200℃・2時間加熱送風乾燥後の質量より求めたカーボンナノチューブウェットケークのカーボンナノチューブ濃度は3.4質量%であった。
3.0質量%となるようにイオン交換水で希釈した前記カーボンナノチューブウェットケーク0.5gと、0.5質量%となるようにイオン交換水で希釈した前記加水分解カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液4.5gと、2.0質量%となるようにイオン交換水で希釈した炭酸アンモニウム(和光純薬工業(株)社製)水溶液1.5gと、0.33質量%となるようにイオン交換水で希釈したフェリシアン化カリウム(和光純薬工業(株)社製)水溶液3.5gとを混合し、10.0gのカーボンナノチューブ混合液を調製した。該混合液を超音波ホモジナイザー(家田貿易(株)社製、VCX−130)出力20W、1.5分間(2kW・min/g)、氷冷下分散処理した。分散中液温が10℃以下となるようにし、カーボンナノチューブ分散液を得た。その後0.06質量%となるようにイオン交換水で希釈して、カーボンナノチューブ分散液Aを得た。
(2)カーボンナノチューブ分散液B
前記カーボンナノチューブ分散液Aの調製において、0.33質量%ではなく0.66質量%となるようにイオン交換水で希釈したフェリシアン化カリウム(和光純薬工業(株)社製)水溶液3.5gを使用する以外は同様の方法で調製と分散と希釈とを行い、カーボンナノチューブ分散液Bを得た。
(3)カーボンナノチューブ分散液C
前記カーボンナノチューブ分散液Aの調製において、0.33質量%ではなく1.32質量%となるようにイオン交換水で希釈したフェリシアン化カリウム(和光純薬工業(株)社製)水溶液3.5gを使用する以外は同様の方法で調製と分散と希釈とを行い、カーボンナノチューブ分散液Cを得た。
(4)カーボンナノチューブ分散液D
単層カーボンナノチューブ(巴工業(株)製、KH SWCNT ED)0.75gと、イオン交換水25gを混合し、ブレンダー(大阪ケミカル(株)製、ワーリング J−SPECブレンダー 7010JBB)を用い、回転数22,500rpmに設定して3分間攪拌処理を行い3.0質量%の単層カーボンナノチューブウェットケークを調製した。
前記カーボンナノチューブ分散液Bの調製において、3.0質量%となるようにイオン交換水で希釈した前記カーボンナノチューブウェットケークの代わりに前記単層カーボンナノチューブウェットケーク0.5gを使用する以外は同様の方法で調製と分散と希釈とを行い、カーボンナノチューブ分散液Dを得た。
(5)カーボンナノチューブ分散液E
多層カーボンナノチューブ(巴工業(株)製、NC7000、3層以上のカーボンナノチューブが100本中に50本以上含まれているカーボンナノチューブ)0.75gと、イオン交換水25gを混合し、ブレンダー(大阪ケミカル(株)製、ワーリング J−SPECブレンダー 7010JBB)を用い、回転数22,500rpmに設定して3分間攪拌処理を行い3.0質量%の多層カーボンナノチューブウェットケークを調製した。
前記カーボンナノチューブ分散液Bの調製において、3.0質量%となるようにイオン交換水で希釈した前記カーボンナノチューブウェットケークの代わりに前記多層カーボンナノチューブウェットケーク0.5gを使用する以外は同様の方法で調製と分散と希釈とを行い、カーボンナノチューブ分散液Eを得た。
<アンダーコート積層フィルム製造例>
基材上にアンダーコート層を下記に示す方法で作製した。
基材に、前記コロナ処理を実施して基材の親水性を向上させた。この基材上に前記アンダーコート液をバーコート番手6番で塗布し、その後、熱風オーブンを用いて125℃で1分間乾燥させ、アンダーコート積層フィルムを作製した。
(実施例1)
前記アンダーコート積層フィルム上に前記カーボンナノチューブ分散液Aをバーコート番手10番で塗布、その後100℃で1分間乾燥させて、試薬導電層を有する積層体を作製した。
(実施例2)
前記アンダーコート積層フィルム上に前記カーボンナノチューブ分散液Bをバーコート番手10番で塗布、その後100℃で1分間乾燥させて、試薬導電層を有する積層体を作製した。
(実施例3)
前記アンダーコート積層フィルム上に前記カーボンナノチューブ分散液Cをバーコート番手10番で塗布、その後100℃で1分間乾燥させて、試薬導電層を有する積層体を作製した。
(実施例4)
前記アンダーコート積層フィルム上に前記カーボンナノチューブ分散液Bをバーコート番手5番で塗布、その後100℃で1分間乾燥させて、試薬導電層を有する積層体を作製した。
(実施例5)
前記アンダーコート積層フィルム上に前記カーボンナノチューブ分散液Bをバーコート番手20番で塗布、その後100℃で1分間乾燥させて、試薬導電層を有する積層体を作製した。
(比較例1)
前記アンダーコート積層フィルム上に前記カーボンナノチューブ分散液Dをバーコート番手10番で塗布、その後100℃で1分間乾燥させて、試薬導電層を有する積層体を作製した。
(比較例2)
前記アンダーコート積層フィルム上に前記カーボンナノチューブ分散液Eをバーコート番手10番で塗布し、その後100℃で1分間乾燥させて、試薬導電層を有する積層体を作製した。
(比較例3)
前記基材に対し、マグネトロンスパッタリング装置を用いて、膜厚50nmの金膜を基材の一方の面上に形成し、金膜を有する基材を作成した。ターゲットは、純度99.99%の金(田中貴金属工業(株)製)を用いた。スパッタガスにはアルゴンを用いた。
0.5質量%となるようにイオン交換水で希釈した前記加水分解カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液4.5gと、0.66質量%となるようにイオン交換水で希釈したフェリシアン化カリウム(和光純薬工業(株)社製)水溶液3.5gと、イオン交換水2.0gを混合し、10.0gの試薬混合液を調製した。
前記金膜を有する基材上に、前記試薬混合液をバーコート番手10番で塗布、その後100℃で1分間乾燥させて、試薬導電層を有する積層体を作製した。
(比較例4)
前記アンダーコート積層フィルム上に、フェリシアン化カリウムが含有されたカーボンペースト(Gwent Electronic Materials社製、C2070508D4)をバーコート番手10番で塗布し、その後80℃で30分間乾燥させ、試薬導電層を有する積層体を作製した。
各々の試薬導電層を有する積層体について行った評価の結果を、表1に示す。
Figure 2018036061
本発明は、例えば電流を測定するための電極として好適に用いることができる。特に電気化学デバイスや血糖値センサーの電極として好適に用いることができる。
101:積層体
102:試薬導電層
103:基材
104:酸化還元体
105:導電体
107:導電層
108:試薬層
201:カーボングラファイト構造の欠陥
202:Sto−wales欠陥
203:−OH基や=Oなどの官能基
401:対極
402:作用極導線
403:対極導線

Claims (7)

  1. 基材上に導電体と酸化還元体とを含む試薬導電層を有する積層体であって、0.9質量%の塩化ナトリウム水溶液に浸漬し、銀/塩化銀電極基準で自然電位から負に0.2Vの電位を5秒間印加した場合に、体積あたりの電荷量密度の絶対値が0.50C/cm以上であることを特徴とする積層体。
  2. 前記導電体がカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
  3. 前記試薬導電層の表面抵抗値が1,000Ω/□以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
  4. 前記カーボンナノチューブが二層カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項2または3に記載の積層体。
  5. 前記試薬導電層中にカーボンナノチューブの分散剤が含まれていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の積層体。
  6. 前記分散剤がカルボキシメチルセルロースを含むことを特徴とする請求項5に記載の積層体。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の積層体を用いてなることを特徴とする電極式センサー。
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