以下に、本発明を詳細に説明する。
1.ゴム組成物
本発明のゴム組成物は、ゴム成分100質量部中に、ジエン系ゴムの主鎖が置換ピリダジン基で変性されており、該置換ピリダジン基をジエン系ゴム1分子中に平均2個以上含む変性ゴムを30〜100質量部含み、ゴム成分100質量部に対して、充填材を35〜150質量部含有している。
本発明のゴム組成物の、0℃、1%歪で測定される損失正接(tanδ)は0.25〜1.3、60℃、5%歪で測定されるtanδは0.05〜0.35、且つ、25℃、5%歪で測定される貯蔵弾性率(G’)は0.2〜7MPaである。
ゴム成分
本発明のゴム組成物に配合されるゴム成分としては、特に制限はなく、例えば、天然ゴム(NR)、合成ジエン系ゴム、及び天然ゴムと合成ジエン系ゴムとの混合物等のジエン系ゴム、並びにこれら以外の非ジエン系ゴムが挙げられる。
天然ゴムとしては、天然ゴムラテックス、技術的格付けゴム(TSR)、スモークドシート(RSS)、ガタパーチャ、杜仲由来天然ゴム、グアユール由来天然ゴム、ロシアンタンポポ由来天然ゴム、植物成分発酵ゴムなどの天然ゴムに加えて、エポキシ化天然ゴム、メタクリル酸変性天然ゴム、スチレン変性天然ゴムなどの変性天然ゴム等が挙げられる。
合成ジエン系ゴムとしては、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)、スチレン−イソプレン−スチレン三元ブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレン三元ブロック共重合体(SBS)等、及びこれらの変性合成ジエン系ゴムが挙げられる。変性合成ジエン系ゴムとしては、主鎖変性、片末端変性、両末端変性などの変性手法によるジエン系ゴムが挙げられる。ここで、変性合成ジエン系ゴムの変性官能基としては、エポキシ基、アミノ基、アルコキシ基、水酸基、アルコキシシリル基、ポリエーテル基、カルボキシル基などのヘテロ原子を含有する官能基を1種類以上含むものが挙げられる。また、ジエン部分のシス/トランス/ビニルの比率については、特に制限はなく、いずれの比率においても好適に用いることができる。また、ジエン系ゴムの平均分子量および分子量分布は、特に制限はなく、平均分子量500〜300万、分子量分布1.5〜15が好ましい。また、合成ジエン系ゴムの製造方法についても、特に制限はなく、乳化重合、溶液重合、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などで合成されたものが挙げられる。
非ジエン系ゴムとしては、公知のものを広く使用することができる。
本発明のゴム組成物に使用するゴム成分は、転がり抵抗性の観点から、ジエン系ゴムの主鎖が置換ピリダジン基で変性されており、該置換ピリダジン基をジエン系ゴム1分子中に平均2個以上含む変性ゴム(以下、「変性ゴム」ともいう。)を含むことが好ましい。
前記変性ゴムは、置換テトラジン化合物とジエン系ゴムとの反応生成物であり、前記置換ピリダジン基は、置換テトラジン化合物とジエン系ゴムの二重結合との反応により形成されたものである。
変性ゴムを製造するための原料は、ジエン系ゴム及び置換テトラジン化合物を含んでいる。原料となるゴム成分には、ジエン系ゴムの他にジエン系ゴム以外のゴムを含んでいてもよい。ジエン系ゴムは、例えば、使用されるゴム成分100質量部中に、70質量部以上含まれていることが好ましく、80質量部以上含まれていることがより好ましく、100質量部がジエン系ゴムであることがさらに好ましい。
ジエン系ゴムとしては、上記ゴム成分で挙げたジエン系ゴムを、1種単独で、又は2種以上を混合(ブレンド)して用いることができる。
ジエン系ゴムとして、天然ゴム、イソプレンゴム、及び1,3−ブタジエンモノマーを含むモノマーを重合させたゴムが好ましい。1,3−ブタジエンモノマーを含むモノマーを重合させたゴムとしては、SBR、BR、NBR等が挙げられ、SBR及びBRが好ましい。
中でも、好ましいジエン系ゴムとしては、天然ゴム、IR、SBR、BR又はこれらから選ばれる2種以上の混合物であり、より好ましくは天然ゴム、SBR、BR又はこれらから選ばれる2種以上の混合物である。また、これらのブレンド比率は、ジエン系ゴムを含むゴム成分100質量部中に、SBR、BR又はこれらの混合物を70〜100質量部の比率で配合することが好ましく、75〜100質量部で配合することが特に好ましい。SBR及びBRの混合物を配合する場合には、SBR及びBRの合計量が上記範囲であることが好ましい。また、このときのSBRは50〜100質量部であり、BRが0〜50質量部の範囲であるのが好ましい。
置換テトラジン化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物又はその塩(以下、「置換テトラジン化合物(1)ということもある。)が挙げられる。
一般式(1):
[式中、X1及びX2は、置換基を有していてもよい複素環基を示す。]
本明細書において、「複素環基」としては、特に限定はなく、例えば、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−ピラジニル基、2−ピリミジル基、4−ピリミジル基、5−ピリミジル基、3−ピリダジル基、4−ピリダジル基、4−(1,2,3−トリアジル)基、5−(1,2,3−トリアジル)基、2−(1,3,5−トリアジル)基、3−(1,2,4−トリアジル)基、5−(1,2,4−トリアジル)基、6−(1,2,4−トリアジル)基、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、2−キノキサリル基、3−キノキサリル基、5−キノキサリル基、6−キノキサリル基、7−キノキサリル基、8−キノキサリル基、3−シンノリル基、4−シンノリル基、5−シンノリル基、6−シンノリル基、7−シンノリル基、8−シンノリル基、2−キナゾリル基、4−キナゾリル基、5−キナゾリル基、6−キナゾリル基、7−キナゾリル基、8−キナゾリル基、1−フタラジル基、4−フタラジル基、5−フタラジル基、6−フタラジル基、7−フタラジル基、8−フタラジル基、1−テトラヒドロキノリル基、2−テトラヒドロキノリル基、3−テトラヒドロキノリル基、4−テトラヒドロキノリル基、5−テトラヒドロキノリル基、6−テトラヒドロキノリル基、7−テトラヒドロキノリル基、8−テトラヒドロキノリル基、1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−チエニル基、3−チエニル基、1−イミダゾリル基、2−イミダゾリル基、4−イミダゾリル基、5−イミダゾリル基、1−ピラゾリル基、3−ピラゾリル基、4−ピラゾリル基、5−ピラゾリル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、2−チアゾリル基、4−チアゾリル基、5−チアゾリル基、3−イソオキサゾリル基、4−イソオキサゾリル基、5−イソオキサゾリル基、3−イソチアゾリル基、4−イソチアゾリル基、5−イソチアゾリル基、4−(1,2,3−チアジアゾリル)基、5−(1,2,3−チアジアゾリル)基、3−(1,2,5−チアジアゾール)基、2−(1,3,4−チアジアゾール)基、4−(1,2,3−オキサジアゾリル)基、5−(1,2,3−オキサジアゾリル)基、3−(1,2,4−オキサジアゾリル)基、5−(1,2,4−オキサジアゾリル)基、3−(1,2,5−オキサジアゾリル)基、2−(1,3,4−オキサジアゾリル)基、1−(1,2,3−トリアゾリル)基、4−(1,2,3−トリアゾリル)基、5−(1,2,3−トリアゾリル)基、1−(1,2,4−トリアゾリル)基、3−(1,2,4−トリアゾリル)基、5−(1,2,4−トリアゾリル)基、1−テトラゾリル基、5−テトラゾリル基、1−インドリル、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、2−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、1−ベンゾイミダゾリル基、2−ベンゾイミダゾリル基、4−ベンゾイミダゾリル基、5−ベンゾイミダゾリル基、6−ベンゾイミダゾリル基、7−ベンゾイミダゾリル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、3−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、6−イソベンゾフラニル基、7−イソベンゾフニル基、2−ベンゾチエニル基、3−ベンゾチエニル基、4−ベンゾチエニル基、5−ベンゾチエニル基、6−ベンゾチエニル基、7−ベンゾチエニル基、2−ベンゾオキサゾリル基、4−ベンゾオキサゾリル基、5−ベンゾオキサゾリル基、6−ベンゾオキサゾリル基、7−ベンゾオキサゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、4−ベンゾチアゾリル基、5−ベンゾチアゾリル基、6−ベンゾチアゾリル基、7−ベンゾチアゾリル基、1−インダゾリル基、3−インダゾリル基、4−インダゾリル基、5−インダゾリル基、6−インダゾリル基、7−インダゾリル基、2−モルホリル基、3−モルホリル基、4−モルホリル基、1−ピペラジル基、2−ピペラジル基、1−ピペリジル基、2−ピペリジル基、3−ピペリジル基、4−ピペリジル基、2−テトラヒドロピラニル基、3−テトラヒドロピラニル基、4−テトラヒドロピラニル基、2−テトラヒドロチオピラニル基、3−テトラヒドロチオピラニル基、4−テトラヒドロチオピラニル基、1−ピロリジル基、2−ピロリジル基、3−ピロリジル基、2−テトラヒドロフラニル基、3−テトラヒドロフラニル基、2−テトラヒドロチエニル基、3−テトラヒドロチエニル基等が挙げられる。中でも、好ましい複素環基としては、ピリジル基、フラニル基、チエニル基、ピリミジル基又はピラジル基であり、より好ましくはピリジル基である。
複素環基は、置換可能な位置に、1個以上の置換基を有していてもよい。該置換基としては、特に限定はなく、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、アミノアルキル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルボキシル基、カルボキシアルキル基、ホルミル基、ニトリル基、ニトロ基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、水酸基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基等が挙げられる。該置換基は、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個有していてもよい。
本明細書において、「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられ、好ましくは塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子である。
本明細書において、「アミノ基」には、−NH2で表されるアミノ基だけでなく、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、s−ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、1−エチルプロピルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、ネオペンチルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基、イソヘキシルアミノ基、3−メチルペンチルアミノ基等の炭素数1〜6(特に炭素数1〜4)の直鎖状又は分岐状のモノアルキルアミノ基;ジメチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の炭素数1〜6(特に炭素数1〜4)の直鎖状又は分岐状のアルキル基を2つ有するジアルキルアミノ基等の置換アミノ基も含まれる。
本明細書において、「アミノアルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、アミノメチル基、2−アミノエチル基、3−アミノプロピル基等のアミノアルキル基(好ましくはアミノ基を有する炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状アルキル基)が挙げられる。
本明細書において、「アルコキシカルボニル基」としては、特に限定はなく、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
本明細書において、「アシル基」としては、特に限定はなく、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ピバロイル基等の炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状アルキルカルボニル基が挙げられる。
本明細書において、「アシルオキシ基」としては、特に限定はなく、例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、n−ブチリルオキシ基等が挙げられる。
本明細書において、「アミド基」としては、特に限定はなく、例えば、アセトアミド基、ベンズアミド基等のカルボン酸アミド基;チオアセトアミド基、チオベンズアミド基等のチオアミド基;N−メチルアセトアミド基、N−ベンジルアセトアミド基等のN−置換アミド基;等が挙げられる。
本明細書において、「カルボキシアルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシ−n−プロピル基、カルボキシ−n−ブチル基、カルボキシ−n−ブチル基、カルボキシ−n−ヘキシル基等のカルボキシ−アルキル基(好ましくはカルボキシ基を有する炭素数1〜6のアルキル基)が挙げられる。
本明細書において、「アルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、1−エチルプロピル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基等の炭素数1〜6(特に炭素数1〜4)の直鎖状又は分岐状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル等の炭素数3〜8(特に炭素数3〜6)の環状アルキル基等が挙げられる。
本明細書において、「ヒドロキシアルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシ−n−プロピル基、ヒドロキシ−n−ブチル基等のヒドロキシ−アルキル基(好ましくはヒドロキシ基を有する炭素数1〜6のアルキル基)が挙げられる。
本明細書において、「アルコキシ基」としては、特に限定はなく、例えば、直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、例えば、メトキシ、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基の炭素数1〜6(特に炭素数1〜4)の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基;シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基等の炭素数3〜8(特に炭素数3〜6)の環状アルコキシ基等が挙げられる。
本明細書において、「アリール基」としては、特に限定はなく、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ジヒドロインデニル基、9H−フルオレニル基等が挙げられる。
本明細書において、「アリールオキシ基」としては、特に限定はなく、例えば、フェノキシ基、ビフェニルオキシ基、ナフトキシ基等が挙げられる。
本明細書において、「アルキルチオ基」としては、特に限定はなく、例えば、直鎖状、分岐状又は環状のアルキルチオ基が挙げられ、具体的には、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、s−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、1−エチルプロピルチオ基、n−ペンチルチオ基、ネオペンチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、イソヘキシルチオ基、3−メチルペンチルチオ基等の炭素数1〜6(特に炭素数1〜4)の直鎖状又は分岐状のアルキルチオ基;シクロプロピルチオ基、シクロブチルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基、シクロヘプチルチオ基、シクロオクチルチオ基等の炭素数3〜8(特に炭素数3〜6)の環状アルキルチオ基等が挙げられる。
本明細書において、「アリールチオ基」としては、特に限定はなく、例えば、フェニルチオ基、ビフェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。
一般式(1)で表される置換テトラジン化合物の「塩」としては、特に限定はなく、あらゆる種類の塩が含まれる。このような塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、メタンスルホン酸塩等の有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;ジメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム等の第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
好ましい置換テトラジン化合物(1)は、X1及びX2が、同一又は異なって、置換基を有していてもよいピリジル基、置換基を有していてもよいフラニル基、置換基を有していてもよいチエニル基、置換基を有していてもよいピラゾリル基、置換基を有していてもよいピリミジル基、又は置換基を有していてもよいピラジル基である化合物である。
より好ましい置換テトラジン化合物(1)は、X1及びX2が、同一又は異なって、置換基を有していてもよい2−ピリジル基、置換基を有していてもよい3−ピリジル基、置換基を有していてもよい4−ピリジル基、置換基を有していてもよい2−フラニル基、置換基を有していてもよいチエニル基、置換基を有していてもよい1−ピラゾリル基、置換基を有していてもよい2−ピリミジル基、又は置換基を有していてもよい2−ピラジル基である化合物であり、具体的には、置換基を有していてもよい2−ピリジル基、置換基を有していてもよい3−ピリジル基、置換基を有していてもよい4−ピリジル基、又は置換基を有していてもよい2−フラニル基である化合物が特に好ましい。
置換テトラジン化合物(1)の具体例としては、
3,6−ビス(2−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、
3,6−ビス(3−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、
3,6−ビス(4−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、
3,6−ビス(2−フラニル)−1,2,4,5−テトラジン、
3,6−ビス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)−1,2,4,5−テトラジン、
3,6−ビス(2−チエニル)−1,2,4,5−テトラジン、
3−メチル−6−(2−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、
3,6−ビス(2−ピリミジニル)−1,2,4,5−テトラジン、
3,6−ビス(2−ピラジル)−1,2,4,5−テトラジン等が挙げられる。
中でも、好ましいテトラジン化合物(1)は、3,6−ビス(2−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、3,6−ビス(3−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、3,6−ビス(2−フラニル)−1,2,4,5−テトラジン、及び3,6−(4−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジンであり、さらに好ましいテトラジン化合物(1)は、3,6−ビス(2−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、3,6−ビス(3−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、及び3,6−ビス(4−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジンである。
ゴム成分に転がり抵抗性を付与する観点から、置換テトラジン化合物(1)の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、0.1〜10質量部である。置換テトラジン化合物(1)の好ましい配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して0.25〜5質量部であり、0.5〜2質量部がより好ましい。
置換テトラジン化合物(1)が粉体である場合、その体積平均径は特に制限されない。低転がり抵抗性発現の観点から、体積平均径が300μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがさらに好ましく、75μm以下であることが特に好ましい。
なお、体積平均径は、レーザー光回折法等による粒度分布測定装置を用いて、体積基準粒度分布から積算分布曲線の50%に相当する粒子径として求めることができる。
また、取り扱い時のハンドリング性及び着火性又は爆発性リスク低減の観点から、粉体をオイル、樹脂、ステアリン酸などで表面処理したものを使用してもよく、又は粉体を炭酸カルシウム、シリカなどの充填剤などと混合して使用してもよい。
変性ゴムの置換ピリダジン基は、置換テトラジン化合物(1)とジエン系ゴムの二重結合との反応により形成されたものである。
置換ピリダジン基として、具体的には、下記式(2−1)〜(2−11)で表される構造が挙げられる。
[式中、X1及びX2は、前記に同じ。Rは、アルキル基又はハロゲン原子を示す。]
上記式(2−1)〜(2−11)において、X1及びX2は、複素環基であることが好ましい。すなわち、置換ピリダジン基は、複素環基で置換されたピリダジン基であることが好ましく、ピリジン基で置換されたピリダジン基であることがより好ましい。
該置換ピリダジン基は、変性ゴム1分子中に平均2個以上、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上含まれる。なお、変性ゴム1分子中に含まれる置換ピリダジン基の個数は、下記式により求めることができる。
1分子中の置換ピリダジン基個数(個/変性ゴム分子)=
{(ジエン系ゴムの数平均分子量)/(添加した置換テトラジン化合物の分子量)}×{(添加した置換テトラジン化合物の添加質量部数)/100}
変性ゴムは、置換ピリダジン基で変性されており、該置換ピリダジン基が窒素原子を有している。この窒素原子が充填材と強く相互作用をすることから、ジエン系ゴム成分への充填材の分散性を高めて、配合されるゴム組成物に高い低転がり抵抗性を付与することができるとともに制動性能及び操縦安定性を維持することができる。
変性ゴムの製造方法としては、特に制限はない。変性ゴムは、例えば、ジエン系ゴムを含むゴム成分、及び置換テトラジン化合物(1)を含むゴム混合物を用いて作製される。変性ゴムは、バンバリーミキサー、ロール、インテンシブミキサー、ニーダー、二軸押出機等の公知のゴム混練ミキサーを用いて製造することができる。
なお、本明細書において、用語「混合」には「混練」の意味も含まれる。
変性ゴムの具体的な作製方法としては、ジエン系ゴムを含むゴム成分が固体の場合は、該ゴム成分と置換テトラジン化合物(1)とを混合する方法(固体混合方法);ジエン系ゴムを含むゴム成分が液状(液体)である場合は、該ゴム成分の溶液又は乳液(懸濁液)と、置換テトラジン化合物(1)とを混合する方法(液状混合方法)等が挙げられる。
混合温度としては、特に制限はなく、例えば、上記固体混合方法の場合は、ゴム混合物の温度が、80〜180℃であることが好ましく、90〜160℃であることがより好ましく、100〜150℃であることがさらに好ましい。液状混合方法の場合は、液状ゴム混合物の温度が、80〜180℃であることが好ましく、90〜160℃であることがより好ましく、100〜150℃であることがさらに好ましい。なお、置換ピリダジン基は、80〜180℃の範囲にあるゴム混練ミキサー中で、置換テトラジン化合物(1)とジエン系ゴムとの反応が進行することにより形成される。
混合時間としては、特に制限はなく、例えば、固体混合方法の場合は、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、60秒間から7分間であることがさらに好ましい。液状混合方法の場合は、10秒間から60分間であることが好ましく、30秒間から40分間であることがより好ましく、60秒間から30分間であることがさらに好ましい。液状混合方法による混合反応後は、例えば、減圧下において、混合物中の溶剤を飛ばし(取り除き)、固形の反応生成物を回収することができる。
変性ゴムの製造方法において、ジエン系ゴムを含むゴム成分は、ゴム成分の70質量%以上が、天然ゴム、イソプレンゴム、及び1,3−ブタジエンモノマーを含むモノマーを重合させたゴムからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。ジエン系ゴムを含むゴム成分には、ジエン系ゴム以外のゴムが含まれていてもよい。ジエン系ゴム以外のゴムとして、例えば、ブチルゴム(IIR)等の非ジエン系ゴムが挙げられる。ゴム成分中のジエン系ゴムの含有量は、80質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることがさらに好ましい。置換テトラジン化合物(1)の配合量としては、特に制限はなく、例えば、ジエン系ゴムを含むゴム成分100質量部に対して、通常0.1〜10質量部であり、好ましくは0.25〜5質量部であり、より好ましくは0.5〜2質量部となるよう適宜調整して用いればよい。
ここで、置換ピリダジン基は、以下の反応メカニズムによって得られるものと考えられる。
具体的には、置換ピリダジン基は、次の反応式−1〜4に示すような反応が進行することにより、ジエン系ゴムの二重結合部位に置換ヒドラジン化合物(1)が結合して六員環構造を形成することにより製造される。
[式中、X1及びX2は、前記に同じ。]
反応式−1においては、式(A−1)で表されるジエン系ゴムの二重結合部位と置換テトラジン化合物(1)との逆電子要請型Aza−Diels−Alder反応によって、式(B−1)で表されるビシクロ環構造を形成する。このビシクロ環構造中の−N=N−部は、脱窒素化が容易に進行し、式(C−1)、(C−2)又は(C−3)で表される六員環構造を形成するが、更に空気中の酸素によって酸化され、式(2−1)で表される置換ピリダジン基が製造される。
[式中、X1及びX2は、前記に同じ。]
反応式−2においては、反応式−1と同様に、式(A−2)で表されるジエン系ゴムの二重結合部位と置換テトラジン化合物(1)とから、式(B−2)又は(B−2’)で表されるビシクロ環構造、次いで式(C−4)乃至(C−9)で表される六員環構造を形成した後、式(2−2)又は(2−3)で表される置換ピリダジン基が製造される。
[式中、X1、X2、及びRは、前記に同じ。]
反応式−3においては、式(A−3)で表されるジエン系ゴムの二重結合部位と置換テトラジン化合物(1)との逆電子要請型Aza−Diels−Alder反応により、式(B−3)又は(B−3’)で表されるビシクロ環構造を形成した後、脱窒素化により式(2−4)乃至(2−7)で表される置換ピリダジン基が製造される。なお、式(A−3)で表されるジエン系ゴムの二重結合部位上のRがハロゲン原子である場合は、そのハロゲン原子の脱離が生じることがあり、その場合は、酸化反応により式(2−1)で表される置換ピリダジン基が製造される。
[式中、X1、X2、及びRは、前記に同じ。]
反応式−4においては、反応式−3の反応と同様に、式(A−4)で表されるジエン系ゴムの二重結合部位と置換テトラジン化合物(1)との反応により、式(B−4)又は、(B−4’)で表されるビシクロ環構造を形成した後、式(2−8)乃至(2−11)で表される置換ピリダジン基が製造される。
以上のように、製造された変性ゴムは、窒素原子等のヘテロ原子を有しており、このヘテロ原子が充填材(特に湿式シリカ)と強く相互作用をすることから、ゴム組成物中の分散性を高め、高い低転がり抵抗性を付与することができる。
変性ゴムの製造方法において、ゴム成分及び置換テトラジン化合物(1)以外に、湿式シリカ、その他の充填材等が同時に存在していてもよい。
本発明のゴム組成物には、上記変性ゴムに加えて、充填材、及び必要に応じて加硫剤が含まれる。
前記ゴム組成物の、0℃、1%歪で測定される損失正接(tanδ)は0.25〜1.3、好ましくは0.3〜1であり、60℃、5%歪で測定されるtanδは0.05〜0.35、好ましくは0.07〜0.3であり、且つ、25℃、5%歪で測定される貯蔵弾性率(G’)は0.2〜7MPa、好ましくは0.6〜2.5MPaである。
なお、0℃、1%歪で測定される損失正接(tanδ)は、粘弾性測定装置(Metravib社製)を使用し、温度0℃、動歪1%、周波数15Hzで測定されるtanδである。
60℃、5%歪で測定されるtanδは、粘弾性測定装置(Metravib社製)を使用し、温度60℃、動歪5%、周波数15Hzで測定されるtanδである。
25℃、5%歪で測定される貯蔵弾性率(G’)は、粘弾性測定装置(Metravib社製)を使用し、温度25℃、動歪5%、周波数15Hzで測定される値である。
本発明のゴム組成物は、ゴム組成物の損失正接(tanδ)及び貯蔵弾性率(G’)が上記の範囲であることが特徴である。ゴム組成物の0℃における損失正接(tanδ)、60℃における損失正接(tanδ)、及び25℃における貯蔵弾性率(G’)が上記の範囲に設定されていることにより、湿潤路面における制動性能、操縦安定性、及び転がり抵抗性能をバランスよく発揮できるゴム組成物を得ることができる。
充填材の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、通常35〜150質量部であり、好ましくは40〜110質量部であり、より好ましくは50〜100質量部である。
充填材として、BET比表面積が50〜240m2/gの範囲にある湿式シリカを配合することが好ましい。
本発明のゴム組成物に該湿式シリカが含まれることにより、制動特性、特に湿潤路面での制動性能を向上させることができる。前記湿式シリカは、ゴム成分との親和性を向上させるために、その表面がシランカップリング剤、界面活性剤等で有機処理されていてもよい。
湿式シリカのBET比表面積は、50〜240m2/gの範囲である。BET比表面積がこの範囲であるシリカは、ゴム補強性及びゴム成分中への分散性を両立できるという利点がある。該BET比表面積は、ISO 5794/1に準拠して測定される。
この観点から、好ましい湿式シリカとしては、BET比表面積が100〜230m2/gの範囲にある湿式シリカであり、より好ましくは、BET比表面積が110〜210m2/gである湿式シリカである。
このような湿式シリカの市販品としては、Quechen Silicon Chemical Co., Ltd.製の商品名「HD165MP」(BET比表面積 =165m2/g)、「HD115MP」(BET比表面積 =115m2/g)、「HD200MP」(BET比表面積 =200m2/g)、「HD250MP」(BET比表面積 =250m2/g)、東ソー・シリカ株式会社製の商品名「ニップシールAQ」(BET比表面積=205m2/g)、「ニップシールKQ」(BET比表面積 =240m2/g)、デグッサ社製の商品名「ウルトラジルVN3」(BET比表面積 =175m2/g)、ソルベイ社製の商品名「Z1085Gr」(BET比表面積=90m2/g)、「Z Premium200MP」(BET比表面積=215m2/g)、「Z HRS 1200MP」(BET比表面積=200m2/g)等が挙げられる。
湿式シリカの配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、通常25〜130質量部であり、好ましくは30〜100質量部であり、より好ましくは40〜90質量部である。
通常、ゴム組成物にシリカを添加することで操縦安定性能が向上するが、大量に添加することで耐発熱性が悪化する傾向にある。しかしながら、変性ゴムを用いることによって、前記湿式シリカを大量に配合しても優れた低転がり抵抗性を発現する。これは、ジエン系ゴムと置換テトラジン化合物(1)とが反応して生成した変性ゴムは、置換ピリダジン基に含まれる置換テトラジン化合物(1)由来の窒素原子の存在により、シリカとの親和性が改善され、それによりゴム成分中にシリカがより一層分散されるためと考えられる。
特に操縦安定性能と低燃費性能との両立を図る場合の湿式シリカの配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、通常30〜120質量部であり、好ましくは60〜115質量部であり、70〜110質量部である。
BET比表面積が50m2/g未満の湿式シリカ、及びBET比表面積が240m2/を超える湿式シリカも、本発明の効果を阻害しない範囲内で使用することができる。
また、例えば、大粒径シリカと小粒径シリカとの組合せ等のBET比表面積が異なる2種類以上のシリカを組み合わせて配合することも効果的である。
本発明のゴム組成物は、上記変性ゴム、加硫剤、及び湿式シリカに加え、さらに前記湿式シリカ以外の充填材を含んでもよい。
前記湿式シリカ以外の充填材として、前記湿式シリカ以外の無機充填材、カーボンブラック等が挙げられる。本発明のゴム組成物は、充填材として、湿式シリカに加え、さらに前記湿式シリカ以外の充填材として、前記湿式シリカ以外の無機充填材及び/又はカーボンブラックを含むことが好ましい。
湿式シリカと湿式シリカ以外の無機充填材の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、通常20〜150質量部であり、好ましくは30〜120質量部であり、より好ましくは40〜90質量部である。湿式シリカと他の無機充填材とを併用する場合には、両成分の合計量で、例えば、ゴム成分100質量部に対して、通常10〜150質量部となり、湿式シリカの配合量が通常30〜120質量部となるように、湿式シリカ以外の無機充填材の配合量を上記配合量の範囲内で適宜調整すればよい。
カーボンブラックの配合量は、ゴム成分100質量部に対して、通常2〜150質量部であり、好ましくは4〜120質量部であり、より好ましくは6〜100質量部である。
なお、本発明のゴム組成物において、湿式シリカ、並びに湿式シリカ以外の無機充填材及び/又はカーボンブラックは、全成分の合計量で、例えば、ゴム成分100質量部に対して、通常35〜140質量部、好ましくは40〜130質量部、より好ましくは45〜100質量部となるよう各成分の上記配合量の範囲内で適宜調整すればよい。
湿式シリカ、並びに湿式シリカ以外の無機充填材及び/又はカーボンブラックの合計の配合量が、35質量部以上であれば、ゴム組成物の操縦安定性の観点から好ましく、140質量部以下であれば、転がり抵抗低減の観点から好ましい。なお、湿式シリカ、並びに湿式シリカ以外の無機充填材及び/又はカーボンブラックを配合するときは、予めジエン系ゴムと湿式または乾式で混合されたマスターバッチポリマーを用いてもよい。
無機充填材
無機充填材としては、ゴム工業界において、通常使用される無機化合物であれば、特に制限はない。使用できる無機化合物としては、例えば、前記湿式シリカ以外のシリカ、γ−アルミナ、α−アルミナ等のアルミナ(Al2O3);ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al2O3・H2O);ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)3];炭酸アルミニウム[Al2(CO3)2]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n−1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al2O3)、クレー(Al2O3・2SiO2)、カオリン(Al2O3・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al2O3・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al2O3・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5、Al4・3SiO4・5H2O等)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3等)、ケイ酸カルシウム(Ca2・SiO4等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al2O3・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2・nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO3)2]、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩等が挙げられる。これらの無機充填材は、ゴム成分との親和性を向上させるために、該無機充填材の表面が有機処理されていてもよい。
カーボンブラック
カーボンブラックとしては、特に制限はなく、例えば、市販品のカーボンブラック、 Carbon−Silica Dual phase filler等が挙げられる。
具体的に、カーボンブラックとしては、例えば、高、中又は低ストラクチャーのSAF、ISAF、IISAF、N110、N134、N220、N234、N330、N339、N375、N550、HAF、FEF、GPF、SRFグレードのカーボンブラック等が挙げられる。中でも、好ましいカーボンブラックとしては、SAF、ISAF、IISAF、N134、N234、N330、N339、N375、HAF、又はFEFグレードのカーボンブラックである。
カーボンブラックのDBP吸収量としては、特に制限はなく、好ましくは60〜200cm3/100g、より好ましくは70〜180cm3/100g以上、特に好ましくは80〜160cm3/100gである。
また、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA、JIS K 6217−2:2001に準拠して測定する)は、好ましくは30〜200m2/g、より好ましくは40〜180m2/g、特に好ましくは50〜160m2/gである。
カーボンブラックを配合するゴム組成物において、置換テトラジン化合物(1)を配合することにより、カーボンブラックの分散性が大幅に向上し、ゴム組成物の低転がり抵抗性が著しく改良できる。
本発明のゴム組成物には、必要に応じて、加硫剤が配合される。加硫剤としては、硫黄、パーオキシド化合物等が挙げられる。加硫剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましく、より好ましくは0.3〜3質量部である。
本発明のゴム組成物が加硫剤を含む場合には、さらに加硫促進剤又は加硫遅延剤を含むことが好ましい。加硫促進剤として、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、1,3−ジフェニルグアニジン、2−メルカプトベンゾチアゾール、テトラメチルチウラムジスルフィド、トリメチルチオ尿素、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛等が挙げられる。加硫遅延剤としては、例えば、N−シクロヘキシルチオフタルイミド等が挙げられる。加硫促進剤又は加硫遅延剤の配合量は、本発明の効果を阻害しない範囲内で適宜調整することができる。
その他の配合剤
本発明のゴム組成物には、上記充填材、及び加硫剤以外にも、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、老化防止剤、オゾン防止剤、軟化剤、ワックス、樹脂、発泡剤、オイル、ステアリン酸、亜鉛華(ZnO)等をさらに配合してもよい。これら配合剤は、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
また、湿式シリカなどの充填材が配合されたゴム組成物においては、湿式シリカによるゴム組成物の補強性を高める目的、又はゴム組成物の転がり抵抗性と共に耐摩耗性を高める目的で、シランカップリング剤を配合してもよい。
充填材と併用可能なシランカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなシランカップリング剤として、例えばスルフィド系、ポリスルフィド系、チオエステル系、チオール系、オレフィン系、エポキシ系、アミノ系、アルキル系のシランカップリング剤が挙げられる。
スルフィド系のシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(3−モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−モノエトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−モノエトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−モノメトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−モノメトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−モノメトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−モノエトキシジメチルシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2−モノエトキシジメチルシリルエチル)トリスルフィド、ビス(2−モノエトキシジメチルシリルエチル)ジスルフィド等が挙げられる。これらの内、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが特に好ましい。
チオエステル系のシランカップリング剤としては、例えば、3−ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2−ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3−ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2−ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
チオール系のシランカップリング剤としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等を挙げることができる。
オレフィン系のシランカップリング剤としては、例えば、ジメトキシメチルビニルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルエトキシビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−(メトキシジメトキシジメチルシリル)プロピルアクリレート、3−(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート、3−[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、3−[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、3−(トリエトキシシリル)プロピルメタクリレート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート等を挙げることができる。
エポキシ系のシランカップリング剤としては、例えば、3−グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、ジエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、トリエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)シラン、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
アミノ系のシランカップリング剤としては、例えば、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−エトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、3−アミノプロピルトリエトキシシランが好ましい。
アルキル系のシランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、メチルトリエトキシシランが好ましい。
これらシランカップリング剤の中でも、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドを特に好ましく使用することができる。
本発明においては、シランカップリング剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のゴム組成物のシランカップリング剤の配合量は、充填材100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、3〜15質量部であることが特に好ましい。0.1質量部以上であれば、ゴム組成物の転がり抵抗性の効果をより好適に発現することができ、20質量部以下であれば、ゴム組成物のコストが低減し、経済性が向上するからである。
ゴム組成物に湿式シリカが配合されている場合には、シリカ粒子の分散及び/又は遮蔽、凝集の抑制、粘度の低下、及びスコーチ時間の増加を補助するために、シリカ加工助剤を使用するのが好ましい。一般的に、シリカ加工助剤は、ゴム分子と実質的に相互作用しない。シリカ加工助剤としては、シリカ粒子上の表面シラノール基と化学的に反応するがエラストマーとは反応しない単官能性の化合物、シラノール基を物理的に遮蔽してシリカ粒子の再集合又は凝集を抑制する遮蔽剤等が挙げられる。これらのシリカ加工助剤は、二官能性シリカカップリング剤の全て又は一部に代えて使用することができる。また、シリカ加工助剤は、配合粘度を下げ、スコーチ時間を増加させ、シリカの再集合を低下させることによって、シリカを充填したゴム組成物の加工性を改善することができる。
これら加工助剤は、1種単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
加工助剤の配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、通常1〜10質量部であり、好ましくは2〜6質量部であり、より好ましくは2〜5質量部である。
ゴム組成物の用途
本発明のゴム組成物の用途としては、特に制限はなく、例えば、タイヤ、防振ゴム、免震ゴム、コンベアベルト、これらのゴム部分等が挙げられる。中でも、好ましい用途は、タイヤである。
ゴム組成物の製造方法
本発明のゴム組成物の製造方法としては、特に制限されない。本発明のゴム組成物の製造方法は、例えば、ゴム成分、置換テトラジン化合物(1)、及び充填材を含む原料成分を混練する工程(I)、並びに工程(I)で得られる混合物、及び加硫剤を混練する工程(II)を含んでいる。
工程(I)
工程(I)は、ゴム成分、置換テトラジン化合物(1)、及び充填材を含む原料成分を混練する工程であり、加硫剤を配合する前の工程であることを意味している。
工程(I)では、さらに必要に応じて、上記のその他の配合剤等を配合することができる。
工程(I)における混練方法としては、例えば、ゴム成分と、置換テトラジン化合物(1)と、湿式シリカ等の充填材とを含む組成物を混練する方法が挙げられる。この混練方法においては、各成分の全量を一度に混練してもよく、粘度調整等の目的に応じて、各成分を分割投入して混練してもよい。また、ゴム成分と、充填材とを混練した後、置換テトラジン化合物(1)を投入して混練するか、ゴム成分と置換テトラジン化合物(1)とを混練した後、充填材を投入して混練してもよい。工程(I)は複数回にわたり繰り返し混練されてもよい。
工程(I)におけるゴム組成物を混合する際の温度としては、特に制限はなく、例えば、ゴム組成物の温度が120〜190℃であることが好ましく、130〜175℃であることがより好ましく、140〜170℃であることがさらに好ましい。
工程(I)における混合時間としては、特に制限はなく、例えば、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、2分間から7分間であることがさらに好ましい。
工程(I)において、置換テトラジン化合物(1)は、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜10質量部配合される。置換テトラジン化合物(1)の配合量として、ゴム成分100質量部に対して0.25〜5質量部が好ましく、0.5〜2質量部がより好ましい。
工程(I)において、充填材としてBET比表面積が50〜240m2/gの範囲にある湿式シリカを配合する場合、その配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、通常25〜130質量部であり、好ましくは30〜110質量部であり、より好ましくは40〜100質量部である。
工程(I)において、充填材として無機充填材を配合する場合、その配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、通常20〜150質量部であり、好ましくは30〜120質量部であり、より好ましくは40〜100質量部である。
工程(I)において、充填材としてカーボンブラックを配合する場合、その配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、通常2〜150質量部であり、好ましくは4〜120質量部であり、より好ましくは6〜100質量部である。
なお、工程(I)において、無機充填材及び/又はカーボンブラックは、両成分の合計量で、例えば、ゴム成分100質量部に対して、通常30〜150質量部となるよう各成分の上記配合量の範囲内で適宜調整すればよい。
また、工程(I)における別の混練方法としては、ゴム成分と置換テトラジン化合物(1)とを混練する工程(I−1)、並びに工程(I−1)で得られた混合物(変性ゴム)と、充填材とを混練する工程(I−2)を含む二段階の混練方法を挙げることができる。
工程(I−1)において、ゴム成分と置換テトラジン化合物(1)とを混練する方法としては、ゴム成分が固体の場合は、該ゴム成分と置換テトラジン化合物(1)とを混練する方法(混練方法);ゴム成分が液状(液体)である場合は、該ゴム成分の溶液又は乳液(懸濁液)と、置換テトラジン化合物(1)とを混合する方法(液状混合方法)等が挙げられる。
混練温度としては、特に制限はなく、例えば、上記混練方法の場合は、ゴム組成物の温度が、80〜190℃であることが好ましく、90〜160℃であることがより好ましく、100〜150℃であることがさらに好ましい。液状混合方法の場合は、液状ゴム組成物の温度が、80〜170℃であることが好ましく、90〜160℃であることがより好ましく、100〜150℃であることがさらに好ましい。
混合時間又は混練時間としては、特に制限はなく、例えば、混練方法の場合は、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、60秒間から7分間であることがさらに好ましい。液状混合方法の場合は、10秒間から60分間であることが好ましく、30秒間から40分間であることがより好ましく、60秒間から30分間であることがさらに好ましい。液状混合方法による混合反応後は、例えば、減圧下において、混合物中の溶剤を飛ばし(取り除き)、固形のゴム組成物を回収することができる。
工程(I−1)において、置換テトラジン化合物(1)の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、通常0.1〜10質量部であり、0.25〜5質量部が好ましく、0.5〜2質量部がより好ましい。
このゴム成分と置換テトラジン化合物(1)とを混練する工程(I−1)により、ゴム成分中のジエン系ゴムの二重結合と置換テトラジン化合物(1)とが反応して、ジエン系ゴムの主鎖が置換ピリダジン基で変性された変性ゴムを形成する。
工程(I−2)における、工程(I−1)で得られた混合物(変性ゴム)と充填材とを混合する際の温度としては、特に制限はなく、例えば、混合物の温度が120〜190℃であることが好ましく、130〜175℃であることがより好ましく、140〜170℃であることがさらに好ましい。
工程(I−2)における混合時間としては、特に制限はなく、例えば、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、2分間から7分間であることがさらに好ましい。
工程(I−2)において、充填材としてBET比表面積が50〜240m2/gの範囲にある湿式シリカを配合する場合、その配合量としては、工程(I−1)で得られた混合物(変性ゴム)100質量部に対して、25〜130質量部であり、好ましくは30〜100質量部であり、より好ましくは40〜90質量部である。
工程(I−2)において、充填材として無機充填材を配合する場合、その配合量としては、工程(I−1)で得られた混合物(変性ゴム)100質量部に対して、通常20〜150質量部であり、好ましくは30〜120質量部であり、より好ましくは40〜90質量部である。
工程(I−2)において、充填材としてカーボンブラックを配合する場合、その配合量としては、工程(I−1)で得られた混合物(変性ゴム)100質量部に対して、通常2〜150質量部であり、好ましくは4〜120質量部であり、より好ましくは6〜100質量部である。
なお、工程(I−2)において、無機充填材及び/又はカーボンブラックは、両成分の合計量で、例えば、工程(I−1)で得られた混合物(変性ゴム)100質量部に対して、通常30〜150質量部となるよう各成分の上記配合量の範囲内で適宜調整すればよい。
工程(I)により、ゴム成分(ジエン系ゴム)の二重結合部と置換テトラジン化合物(1)とが反応して変性ゴムを形成し、充填材が好適に分散された混合物を得ることができる。
工程(II)
工程(II)は、工程(I)で得られる混合物、及び加硫剤を混合する工程であり、混練の最終段階を意味している。
工程(II)では、さらに必要に応じて、加硫促進剤又は加硫遅延剤を配合することができる。
工程(II)の混合(又は混練)温度としては、特に制限はなく、例えば、60〜140℃であることが好ましく、80〜120℃であることがより好ましく、90〜120℃であることがさらに好ましい。
混合(又は混練)時間としては、特に制限はなく、例えば、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、60秒間から5分間であることがさらに好ましい。
工程(I)から工程(II)に進む際には、前段階の工程終了後の温度より、30℃以上低下させてから次の工程(II)へ進むことが好ましい。
本発明のゴム組成物の製造方法において、通常、ゴム組成物に配合されるステアリン酸、亜鉛華、老化防止剤等の各種配合剤を、必要に応じて、工程(I)又は工程(II)において添加することができる。
上記の工程(I)及び工程(II)により、ゴム成分中のジエン系ゴムに置換テトラジン化合物(1)を処理して得られた変性ゴム、充填材及び加硫剤を含有するゴム組成物を製造することができる。
なお、本発明のゴム組成物には、ゴム成分、置換テトラジン化合物(1)、充填材及び加硫剤が配合された組成物、並びに、ゴム成分中のジエン系ゴムに置換テトラジン化合物(1)を処理して得られた変性ゴム、充填材及び加硫剤を含有するゴム組成物の両方が包含される。
2.タイヤ
本発明のタイヤは、上記本発明のゴム組成物を用いて作製されたタイヤである。
本発明のタイヤとしては、例えば、空気入りタイヤ(ラジアルタイヤ、バイアスタイヤ等)、ソリッドタイヤ等のタイヤが挙げられる。
タイヤの用途としては、特に制限はなく、例えば、乗用車用タイヤ、高荷重用タイヤ、モーターサイクル(自動二輪車)用タイヤ、スタッドレスタイヤ等が挙げられ、中でも、乗用車用タイヤに好適に使用できる。
本発明のタイヤの形状、構造、大きさ及び材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明のタイヤにおいて、上記ゴム組成物は、特にトレッド部、サイドウォール部、ビードエリア部、ベルト部、カーカス部及びショルダー部から選ばれる少なくとも一つの部材に用いられる。
中でも、空気入りタイヤのタイヤトレッド部、又はサイドウォール部を当該ゴム組成物で形成するのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
タイヤトレッド部とは、トレッドパターンを有し、路面と直接接する部分で、カーカスを保護するとともに摩耗及び外傷を防ぐタイヤの外皮部分であり、タイヤの接地部を構成するキャップトレッド及び/又はキャップトレッドの内側に配設されるベーストレッドをいう。
サイドウォール部とは、例えば、空気入りラジアルタイヤにおけるショルダー部の下側からビード部に至るまでの部分であり、カーカスを保護するとともに、走行する際に最も屈曲の激しい部分である。
ビードエリア部とは、カーカスコードの両端を固定し、同時にタイヤをリムに固定させる役目を負っている部分である。ビードとは高炭素鋼を束ねた構造である。
ベルト部とは、ラジアル構造のトレッドとカーカスとの間に円周方向に張られた補強帯である。カーカスを桶のたがの様に強く締付けトレッドの剛性を高めている。
カーカス部とは、タイヤの骨格を形成するコード層の部分であり、タイヤの受ける荷重、衝撃、及び充填空気圧に耐える役割を果たしている。
ショルダー部とは、タイヤの肩の部分で、カーカスを保護する役目を果たす。
本発明のタイヤは、タイヤの分野において、これまでに知られている方法に従って製造することができる。
また、タイヤに充填する気体としては、通常の又は酸素分圧を調整した空気;窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
以下、製造例及び実施例を示して、本発明について具体的に説明する。ただし、実施例はあくまで一例であって、本発明は、実施例に限定されない。
製造例1:3,6−ビス(3−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン(化合物(1a))の製造
200mL四つ口フラスコに、3−シアノピリジン24g(0.23モル)、水加ヒドラジン15g(1.3当量)、及びメタノール48mLを加え、室温で撹拌した。次いで、この混合物に、硫黄3.6g(15重量%)を加え、還流管を装着して外温70℃にて一晩加熱撹拌した。この反応液を氷冷し、結晶を濾過して少量の冷メタノールで洗浄した。粗結晶を減圧下乾燥し、橙色のジヒドロテトラジン粗結晶19gを得た。
得られた粗結晶17.8gを、酢酸178g(40当量)に溶解し、硫黄を濾去した。1L四つ口ナスフラスコに、ジヒドロテトラジン酢酸溶液、及び蒸留水178mLを加え、氷冷下撹拌した。亜硝酸ナトリウム15.5g(3当量)を蒸留水35mLに溶解し、反応液に1時間程度かけて滴下し、室温で一晩撹拌した。析出した結晶を濾過し、結晶を10%重層水で中和し粗結晶とした。該粗結晶をシリカゲルカラム(酢酸エチル)にて精製し、表題のテトラジン化合物(1a)8.4g(赤紫色、針状結晶)を得た。
融点:200℃、
1H−NMR(300MHz,CDCl3,δppm):
7.59(ddd,J =0.9,5.1,7.8 Hz,2H),8.89−8.96(m,4H),9.88(dd,J =0.9,2.4Hz,2H)
実施例1〜4、及び比較例1〜4
下記表1の工程(I)に記載の各成分をその割合(質量部)で混合し、バンバリーミキサーで混合物の最高温度が160℃になるように回転数を調整しながら5分間混練した。混合物の温度が80℃以下になるまで養生させた後、表1の工程(II)に記載の各成分をその割合(質量部)で投入し、混合物の最高温度が110℃以下になるよう調整しながら混練して、各ゴム組成物を製造した。なお、各ゴム組成物の、変性ゴム1分子中の置換ピリダジン基個数、0℃、1%歪で測定されるtanδ、60℃、5%歪で測定されるtanδ、及び、25℃、5%歪で測定される貯蔵弾性率(G’)を、表1に示す。
転がり抵抗試験
実施例1〜4及び比較例1〜4で得られたゴム組成物をタイヤキャップトレッドとして用いて作製した各タイヤ(供試タイヤ)を、JIS K d4234に準拠してフォース法にてドラム試験により転がり抵抗値を測定し、下記式により転がり抵抗指数を算出した。なお、比較例2で得られたゴム組成物を用いて作製したタイヤを対照タイヤとした。結果を表1に示した。
転がり抵抗指数={(対照タイヤの転がり抵抗値)/(供試タイヤの転がり抵抗値)}×100
WET制動試験
各供試タイヤについてISO23671の実車法により制動距離を測定し、下記式によりWET制動指数を算出した。なお、比較例2で得られたゴム組成物を用いて作製したタイヤを対照タイヤとした。結果を表1に示した。指数値が大きい程、湿潤路面での性能に優れることを示す。
WET制動指数={(対照タイヤの制動距離)/(供試タイヤの制動距離)}×100
操縦安定性試験
各供試タイヤについて、乾燥路面でのテストコースにて、テストドライバーによるフィーリングに基づき、操縦安定特性を評価した。比較例2で得られたゴム組成物を用いて作製したタイヤを対照タイヤとし、対照タイヤのドライ性能を100として表1に指数表示した。
指数値が大きいほど、ハンドリング特性が良好で、操縦安定性が優れることを示す。
[表中の記号の説明]
表1において使用する原料を以下に示す。
※1: 旭化成株式会社製、商品名「タフデン2000R」
※2: 中化国際社製、商品名「RSS#3」
※3: 東ソー・シリカ株式会社製、商品名「Nipsil(銘柄AQ)」
※4: Evonik Industries AG製、商品名「Si75」
※5: 東海カーボン株式会社製、商品名「シースト3」
※6: ヤスハラケミカル株式会社製、商品名「YSポリスターUH115」(軟化点115℃)
※7: 川口化学工業株式会社製、商品名「Antage 6C」
※8: 堺化学工業株式会社製、酸化亜鉛 銘柄「1種」
※9: Sichuan Tianyu Grease Chemical Co., Ltd. 製
※10: ストラクトール社製、商品名「HT254」
※11: 三共油化工業社製、商品名「SNH220」
※12: 3,6−ビス(3−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン(製造例1で製造した化合物)
※13: 3,6−ビス(2−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、東京化成工業株式会社製
※14: 3,6−ビス(4−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、東京化成工業株式会社製
※15: 細井化学工業株式会社製、商品名「HK200−5」
※16: 大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクセラーD」
※17: 大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクセラーCZ-G」