以下に、本発明を詳細に説明する。
1.低発熱化剤
本発明の低発熱化剤は、下記一般式(1)で表される化合物又はその塩(以下、「テトラジン化合物(1)」ということもある。)を含む。
[式中、X1及びX2は、前記に同じ。]
本明細書において、「アルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、1−エチルプロピル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシ基、3−メチルペンチル基等の炭素数1〜6(特に炭素数1〜4)の直鎖状又は分岐状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の炭素数3〜8(特に炭素数3〜6)の環状アルキル基等が挙げられる。好ましいアルキル基としては、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状アルキル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、又はn−ペンチル基であり、特に好ましくはメチル基、又はエチル基である。
本明細書において、「複素環基」としては、特に限定はなく、例えば、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−ピラジニル基、2−ピリミジル基、4−ピリミジル基、5−ピリミジル基、3−ピリダジル基、4−ピリダジル基、4−(1,2,3−トリアジル)基、5−(1,2,3−トリアジル)基、2−(1,3,5−トリアジル)基、3−(1,2,4−トリアジル)基、5−(1,2,4−トリアジル)基、6−(1,2,4−トリアジル)基、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、2−キノキサリル基、3−キノキサリル基、5−キノキサリル基、6−キノキサリル基、7−キノキサリル基、8−キノキサリル基、3−シンノリル基、4−シンノリル基、5−シンノリル基、6−シンノリル基、7−シンノリル基、8−シンノリル基、2−キナゾリル基、4−キナゾリル基、5−キナゾリル基、6−キナゾリル基、7−キナゾリル基、8−キナゾリル基、1−フタラジル基、4−フタラジル基、5−フタラジル基、6−フタラジル基、7−フタラジル基、8−フタラジル基、1−テトラヒドロキノリル基、2−テトラヒドロキノリル基、3−テトラヒドロキノリル基、4−テトラヒドロキノリル基、5−テトラヒドロキノリル基、6−テトラヒドロキノリル基、7−テトラヒドロキノリル基、8−テトラヒドロキノリル基、1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−チエニル基、3−チエニル基、1−イミダゾリル基、2−イミダゾリル基、4−イミダゾリル基、5−イミダゾリル基、1−ピラゾリル基、3−ピラゾリル基、4−ピラゾリル基、5−ピラゾリル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、2−チアゾリル基、4−チアゾリル基、5−チアゾリル基、3−イソオキサゾリル基、4−イソオキサゾリル基、5−イソオキサゾリル基、3−イソチアゾリル基、4−イソチアゾリル基、5−イソチアゾリル基、4−(1,2,3−チアジアゾリル)基、5−(1,2,3−チアジアゾリル)基、3−(1,2,5−チアジアゾール)基、2−(1,3,4−チアジアゾール)基、4−(1,2,3−オキサジアゾリル)基、5−(1,2,3−オキサジアゾリル)基、3−(1,2,4−オキサジアゾリル)基、5−(1,2,4−オキサジアゾリル)基、3−(1,2,5−オキサジアゾリル)基、2−(1,3,4−オキサジアゾリル)基、1−(1,2,3−トリアゾリル)基、4−(1,2,3−トリアゾリル)基、5−(1,2,3−トリアゾリル)基、1−(1,2,4−トリアゾリル)基、3−(1,2,4−トリアゾリル)基、5−(1,2,4−トリアゾリル)基、1−テトラゾリル基、5−テトラゾリル基、1−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、2−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、1−ベンゾイミダゾリル基、2−ベンゾイミダゾリル基、4−ベンゾイミダゾリル基、5−ベンゾイミダゾリル基、6−ベンゾイミダゾリル基、7−ベンゾイミダゾリル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、3−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、6−イソベンゾフラニル基、7−イソベンゾフニル基、2−ベンゾチエニル基、3−ベンゾチエニル基、4−ベンゾチエニル基、5−ベンゾチエニル基、6−ベンゾチエニル基、7−ベンゾチエニル基、2−ベンゾオキサゾリル基、4−ベンゾオキサゾリル基、5−ベンゾオキサゾリル基、6−ベンゾオキサゾリル基、7−ベンゾオキサゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、4−ベンゾチアゾリル基、5−ベンゾチアゾリル基、6−ベンゾチアゾリル基、7−ベンゾチアゾリル基、1−インダゾリル基、3−インダゾリル基、4−インダゾリル基、5−インダゾリル基、6−インダゾリル基、7−インダゾリル基、2−モルホリル基、3−モルホリル基、4−モルホリル基、1−ピペラジル基、2−ピペラジル基、1−ピペリジル基、2−ピペリジル基、3−ピペリジル基、4−ピペリジル基、2−テトラヒドロピラニル基、3−テトラヒドロピラニル基、4−テトラヒドロピラニル基、2−テトラヒドロチオピラニル基、3−テトラヒドロチオピラニル基、4−テトラヒドロチオピラニル基、1−ピロリジル基、2−ピロリジル基、3−ピロリジル基、2−テトラヒドロフラニル基、3−テトラヒドロフラニル基、2−テトラヒドロチエニル基、3−テトラヒドロチエニル基等が挙げられる。中でも、好ましい複素環基としては、ピリジル基、フラニル基、チエニル基、ピリミジル基又はピラジル基であり、より好ましくはピリジル基である。
アルキル基及び複素環基は、それぞれ置換可能な位置に任意の数及び種類の置換基を有していてもよい。該「置換基」としては、特に限定はなく、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、アミノアルキル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルボキシル基、カルボキシアルキル基、ホルミル基、ニトリル基、ニトロ基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、水酸基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基等が挙げられる。
本明細書において、「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられ、好ましくは塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子である。
本明細書において、「アミノ基」には、−NH2で表されるアミノ基だけでなく、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、s−ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、1−エチルプロピルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、ネオペンチルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基、イソヘキシルアミノ基、3−メチルペンチルアミノ基等の炭素数1〜6(特に炭素数1〜4)の直鎖状又は分岐状のモノアルキルアミノ基;ジメチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の炭素数1〜6(特に炭素数1〜4)の直鎖状又は分岐状のアルキル基を2つ有するジアルキルアミノ基等の置換アミノ基も含まれる。
本明細書において、「アミノアルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、アミノメチル基、2−アミノエチル基、3−アミノプロピル基等のアミノアルキル基等が挙げられる。
本明細書において、「アルコキシカルボニル基」としては、特に限定はなく、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
本明細書において、「アシル基」としては、特に限定はなく、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ピバロイル基等の炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状アルキルカルボニル基が挙げられる。
本明細書において、「アシルオキシ基」としては、特に限定はなく、例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、n−ブチリルオキシ基等が挙げられる。
本明細書において、「アミド基」としては、特に限定はなく、例えば、アセトアミド基、ベンズアミド基等のカルボン酸アミド基;チオアセトアミド基、チオベンズアミド基等のチオアミド基;N−メチルアセトアミド基、N−ベンジルアセトアミド基等のN−置換アミド基;等が挙げられる。
本明細書において、「カルボキシアルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシ−n−プロピル基、カルボキシ−n−ブチル基、カルボキシ−n−ブチル基、カルボキシ−n−ヘキシル基等のカルボキシ−アルキル基(好ましくはカルボキシ基を有する炭素数1〜6のアルキル基)が挙げられる。
本明細書において、「ヒドロキシアルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシ−n−プロピル基、ヒドロキシ−n−ブチル基等のヒドロキシアルキル基(好ましくはヒドロキシ基を有する炭素数1〜6のアルキル基)が挙げられる。
本明細書において、「アルコキシ基」としては、特に限定はなく、例えば、直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基の炭素数1〜6(特に炭素数1〜4)の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基;シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基等の炭素数3〜8(特に炭素数3〜6)の環状アルコキシ基等が挙げられる。
本明細書において、「アリール基」としては、特に限定はなく、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ジヒドロインデニル基、9H−フルオレニル基等が挙げられる。より好ましいアリール基としては、フェニル基又はナフチル基であり、より好ましくはフェニル基である。
本明細書において、「アリールオキシ基」としては、特に限定はなく、例えば、フェノキシ基、ビフェニルオキシ基、ナフトキシ基等が挙げられる。
本明細書において、「アルキルチオ基」としては、特に限定はなく、例えば、直鎖状、分岐状又は環状のアルキルチオ基が挙げられ、具体的には、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、s−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、1−エチルプロピルチオ基、n−ペンチルチオ基、ネオペンチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、イソヘキシルチオ基、3−メチルペンチルチオ基等の炭素数1〜6(特に炭素数1〜4)の直鎖状又は分岐状のアルキルチオ基;シクロプロピルチオ基、シクロブチルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基、シクロヘプチルチオ基、シクロオクチルチオ基等の炭素数3〜8(特に炭素数3〜6)の環状アルキルチオ基等が挙げられる。好ましいアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、イソプロピルチオ基、又はイソブチルチオ基であり、より好ましくはメチルチオ基又はエチルチオ基である。
本明細書において、「アリールチオ基」としては、特に限定はなく、例えば、フェニルチオ基、ビフェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。
一般式(1)で表されるテトラジン化合物の「塩」としては、特に限定はなく、あらゆる種類の塩が含まれる。このような塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、メタンスルホン酸塩等の有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;ジメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム等の第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
これらテトラジン化合物(1)の中でも、好ましい化合物は、X1及びX2が、同一又は異なって、基−OR1(R1は、アルキル基を示す)、基−NR2R3(R2及びR3は、いずれも水素原子を示す)、基−NR2R3(R2は水素原子を示し、R3は、置換基を有するアルキル基を示す)、又は基−NR2R3(R2及びR3は、同一又は異なって、置換基を有するアルキル基を示す)である化合物である。
より好ましいテトラジン化合物(1)は、X1及びX2が、同一又は異なって、アルコキシ基、アミノ基、水酸基を有するアルキル基で一置換されたアミノ基、又は複素環基を有するアルキル基で一置換されたアミノ基である化合物である。
さらに好ましいテトラジン化合物(1)は、X1及びX2が、同一又は異なって、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、アミノ基、2−ヒドロキシエチルアミノ基、又はピリジン−2−イルメチルアミノ基である化合物である。
具体的に、テトラジン化合物(1)としては、例えば、
1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボン酸、
ジメチル 1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキシラート、
ジエチル 1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキシラート、
ジ−n−プロピル 1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキシラート、
ジ−n−ブチル 1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキシラート、
ジ(ピリジン−2−イル) 1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキシラート、
ジ(ピリジン−3−イル) 1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキシラート、
ジ(ピリジン−4−イル) 1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキシラート、
ジ(ピリジン−2−イルメチル) 1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキシラート、
ジ(ピリジン−3−イルメチル) 1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキシラート、
ジ(ピリジン−4−イルメチル) 1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキシラート、
N,N’−ビス(ヒドロキシメチル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、
N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、
N,N’−ビス(3−ヒドロキシプロピル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、
N,N’−ビス(ピリジン−2−イルメチル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、
N,N’−ビス(ピリジン−3−イルメチル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、
N,N’−ビス(ピリジン−4−イルメチル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、
N,N’−ビス(1−(ピリジン−2−イル)エチル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、
N,N’−ビス(1−(ピリジン−3−イル)エチル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、
N,N’−ビス(1−(ピリジン−4−イル)エチル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、
N,N’−ビス(2−(ピリジン−2−イル)エチル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、
N,N’−ビス(2−(ピリジン−3−イル)エチル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、
N,N’−ビス(2−(ピリジン−4−イル)エチル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、
N,N’−ビス(1−(ピリジン−2−イル)プロピル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、
N,N’−ビス(1−(ピリジン−3−イル)プロピル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、
N,N’−ビス(1−(ピリジン−4−イル)プロピル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、
N,N’−ビス(3−(ピリジン−2−イル)プロピル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、
N,N’−ビス(3−(ピリジン−3−イル)プロピル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、
N,N’−ビス(3−(ピリジン−4−イル)プロピル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、
N,N’−ジ(ピリジン−2−イル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド
N,N’−ジ(ピリジン−3−イル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、
N,N’−ジ(ピリジン−4−イル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、
1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド
等が挙げられる。
中でも、好ましいテトラジン化合物(1)は、ジメチル 1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキシラート、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、N,N’−ビス(ピリジン−2−イルメチル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、及び1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミドであり、さらに好ましいテトラジン化合物(1)は、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、及びN,N’−ビス(ピリジン−2−イルメチル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミドである。
テトラジン化合物(1)のうち、下記一般式(2):
[式中、Rは、前記と同じ。]
で表されるテトラジン化合物(以下、「テトラジン化合物(2)ということもある。)は、文献未記載の新規化合物である。中でも、置換基Rが、ピリジル基が置換した炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状アルキル基であるテトラジン化合物が好ましく、置換基Rが、ピリジル基が置換したメチル基であるテトラジン化合物が特に好ましい。テトラジン化合物(2)の具体例として、N,N’−ビス(ピリジン−2−イルメチル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、N,N’−ビス(ピリジン−3−イルメチル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、N,N’−ビス(ピリジン−4−イルメチル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、N,N’−ビス(1−(ピリジン−2−イル)エチル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、N,N’−ビス(1−(ピリジン−3−イル)エチル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、N,N’−ビス(1−(ピリジン−4−イル)エチル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、N,N’−ビス(2−(ピリジン−2−イル)エチル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、N,N’−ビス(2−(ピリジン−3−イル)エチル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、N,N’−ビス(2−(ピリジン−4−イル)エチル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、N,N’−ビス(1−(ピリジン−2−イル)プロピル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、N,N’−ビス(1−(ピリジン−3−イル)プロピル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、N,N’−ビス(1−(ピリジン−4−イル)プロピル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、N,N’−ビス(3−(ピリジン−2−イル)プロピル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、N,N’−ビス(3−(ピリジン−3−イル)プロピル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド、N,N’−ビス(3−(ピリジン−4−イル)プロピル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド等が挙げられる。
これらテトラジン化合物(2)も、低発熱化剤として使用することができる。テトラジン化合物(2)は、例えば、後述する実施例の製造例3に記載の製造方法、又は該方法に準じた製造方法により製造することができる。
テトラジン化合物(1)が粉体である場合、その体積平均径は特に制限されない。粘度低減効果発現の観点から、体積平均径が300μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがさらに好ましく、75μm以下であることが特に好ましい。
なお、体積平均径は、レーザー光回折法等による粒度分布測定装置を用いて、体積基準粒度分布から積算分布曲線の50%に相当する粒子径として求めることができる。
また、取り扱い時のハンドリング性及び着火性又は爆発性リスク低減の観点から、粉体をオイル、樹脂、ステアリン酸などで表面処理したものを使用してもよく、又は粉体を炭酸カルシウム、シリカ、カーボンブラックなどの充填剤、又は酸化亜鉛などの配合剤等と混合して使用してもよい。
テトラジン化合物(1)をゴム成分に添加することで、ゴム成分に低発熱性を付与することができる。このようなテトラジン化合物(1)を含むゴム組成物から作製(製造)されたタイヤは、低発熱性を付与できることから、転がり抵抗が低減され、その結果、低燃費性能を発現する。
ゴム成分
本明細書において、ゴム成分としては、特に制限はなく、例えば、天然ゴム(NR)、合成ジエン系ゴム、及び天然ゴムと合成ジエン系ゴムとの混合物、並びにこれら以外の非ジエン系ゴムが挙げられる。
天然ゴムとしては、天然ゴムラテックス、技術的格付けゴム(TSR)、スモークドシート(RSS)、ガタパーチャ、杜仲由来天然ゴム、グアユール由来天然ゴム、ロシアンタンポポ由来天然ゴム、樹脂成分発酵ゴムなどが挙げられ、さらにこれら天然ゴムを変性した、エポキシ化天然ゴム、メタクリル酸変性天然ゴム、スチレン変性天然ゴムなどの変性天然ゴムなども、本発明の天然ゴムに含まれる。
合成ジエン系ゴムとしては、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)、スチレン−イソプレン−スチレン三元ブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレン三元ブロック共重合体(SBS)等、及びこれらの変性合成ジエン系ゴムが挙げられる。変性合成ジエン系ゴムには、主鎖変性、片末端変性、両末端変性などの変性手法によるジエン系ゴムが包含される。ここで、変性合成ジエン系ゴムの変性官能基としては、エポキシ基、アミノ基、アルコキシ基、水酸基、アルコキシシリル基、ポリエーテル基、カルボキシル基などの各種官能基が挙げられ、これら官能基は1種又は2種以上が変性合成ジエン系ゴムに含まれていてもよい。
合成ジエン系ゴムの製造方法は、特に制限はなく、乳化重合、溶液重合、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などが挙げられる。また、合成ジエン系ゴムのガラス転移点においても、特に制限はない。
また、天然ゴム及び合成ジエン系ゴムの二重結合部のシス/トランス/ビニルの比率については、特に制限はなく、いずれの比率においても好適に用いることができる。また、ジエン系ゴムの数平均分子量および分子量分布は、特に制限はないが、数平均分子量500〜3000000、分子量分布1.5〜15が好ましい。
非ジエン系ゴムとしては、公知のものを広く使用することができる。
ゴム成分は、1種単独で、又は2種以上を混合(ブレンド)して用いることができる。中でも、好ましいゴム成分としては、天然ゴム、IR、SBR、BR又はこれらから選ばれる2種以上の混合物であり、より好ましくは天然ゴム、SBR、BR又はこれらから選ばれる2種以上の混合物である。また、これらのブレンド比率は、特に制限はないが、ゴム成分100質量部中に、SBR、BR又はこれらの混合物を50〜100質量部の比率で配合することが好ましく、75〜100質量部で配合することが特に好ましい。SBR及びBRの混合物を配合する場合には、SBR及びBRの合計量が上記範囲であることが好ましい。また、このときのSBRは50〜100質量部であり、BRが0〜50質量部の範囲であるのが好ましい。
2.変性ポリマー
本発明の変性ポリマーは、ジエン系ゴム、及び上記本発明の低発熱化剤を含むゴム混合物を用いて作製される。
つまり、本発明の変性ポリマーは、ジエン系ゴムに、テトラジン化合物(1)を用いて処理された変性ポリマーである。
また、エポキシ基、アミノ基、アルコキシ基、アルコキシシリル基、水酸基、ポリエーテル基、カルボキシル基等で変性されたジエン系ゴムに、テトラジン化合物(1)を作用させることで、さらに変性することができる。
本発明の変性ポリマーを製造するための原料は、上記テトラジン化合物(1)、及びジエン系ゴムを含んでいる。該テトラジン化合物(1)の配合量としては、特に制限はなく、例えば、後述するゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、通常0.1〜10質量部、好ましくは0.25〜5質量部、より好ましくは0.5〜2質量部となるように適宜調整すればよい。
本発明の変性ポリマーは、窒素原子、酸素原子等のヘテロ原子を有しており、このヘテロ原子がシリカ及びカーボンブラックと強く相互作用をすることから、ジエン系ゴム成分へのシリカ又はカーボンブラックの分散性を高めて、変性ポリマーに高い低発熱性を付与することができる。
本発明の変性ポリマーは、好ましくは下記式(3a)〜(3k)で表される化合物構造から選ばれる少なくとも1つを有している。
[式中、X1、X2、及びR4は、前記に同じ。]
ここで、本発明の変性ポリマーは、下記の反応メカニズムにより得られるものと考えられる。
[ゴム成分と本発明の低発熱化剤との反応メカニズム]
テトラジン化合物(1)は、一般的に炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合と、逆電子要請型Aza−Diels−Alder反応が進行することが知られている。例えば、ゴム成分として、ジエン系ゴムは二重結合を有しているため、テトラジン化合物(1)は、まず、ゴム分子中の二重結合と逆電子要請型Aza−Diels−Alder反応が進行する。実際に、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)中にテトラジン化合物(1)を添加して、約150℃でゴム混練を行うことで、テトラジン化合物特有の紫色が消失し、薄黄色の変性SBRになる。よって、テトラジン化合物(1)とゴム成分とを混練することで、該Aza−Diels−Alder反応が進行し、つまり変性されたポリマー(変性ポリマー)が得られていると考えられる。
具体的には、次の反応式−1乃至4に示すような反応が進行することにより、ジエン系ゴムの二重結合部位にテトラジン化合物(1)が結合して六員環構造を形成し、変性ポリマーが製造される。
[式中、X1及びX2は、前記に同じ。]
反応式−1においては、式(A−1)で表されるジエン系ゴムの二重結合部位とテトラジン化合物(1)との逆電子要請型Aza−Diels−Alder反応によって、式(B−1)で表されるビシクロ環構造を形成する。このビシクロ環構造中の−N=N−部は、構造上脱窒素化が容易に進行し、式(C−1)、(C−2)又は(C−3)で表される六員環構造を形成するが、更に空気中の酸素によって酸化され、式(3a)で表される六員環構造を有する、変性ポリマーが製造される。
[式中、X1及びX2は、前記に同じ。]
反応式−2においては、反応式−1と同様に、式(A−2)で表されるジエン系ゴムの二重結合部位とテトラジン化合物(1)とから、式(B−2)又は(B−2’)で表されるビシクロ環構造、次いで式(C−4)乃至(C−9)で表される六員環構造を形成した後、式(3b)又は(3c)で表される六員環構造を有する、変性ポリマーを製造する。
[式中、X1、X2、及びR4は、前記に同じ。]
反応式−3においては、式(A−3)で表されるジエン系ゴムの二重結合部位とテトラジン化合物(1)との逆電子要請型Aza−Diels−Alder反応により、式(B−3)又は(B−3’)で表されるビシクロ環構造を形成した後、脱窒素化により式(3d)乃至(3g)で表される六員環構造を有する、変性ポリマーを製造する。なお、式(A−3)で表されるジエン系ゴムの二重結合部位上のR4がハロゲン原子である場合は、そのハロゲン原子の脱離が生じることがあり、その場合は、酸化反応により式(3a)で表される六員環構造を有する、変性ポリマーが製造される。
[式中、X1、X2及びR4は、前記に同じ。]
反応式−4においては、反応式−3の反応と同様に、式(A−4)で表されるジエン系ゴムの二重結合部位とテトラジン化合物(1)との反応により、式(B−4)又は、(B−4’)で表されるビシクロ環構造を形成後、式(3h)乃至(3k)で表される六員環構造を有する、変性ポリマーを製造する。
変性ポリマーの製造方法
本発明の変性ポリマーの製造方法としては、特に制限はない。本発明の変性ポリマーは、例えば、天然ゴム及び合成ジエン系ゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種のゴム成分、及びテトラジン化合物(1)を含むゴム混合物を用いて作製される。
本発明の変性ポリマーの具体的な作製方法としては、ゴム成分が固体の場合は、該ゴム成分とテトラジン化合物(1)とを混練する方法(混練方法);ゴム成分が液状(液体)である場合は、該ゴム成分の溶液又は乳液(懸濁液)と、テトラジン化合物(1)とを混合する方法(液状混合方法)等が挙げられる。
排出温度としては、特に制限はなく、例えば、上記混練方法の場合は、80〜190℃であることが好ましく、90〜160℃であることがより好ましく、100〜150℃であることがさらに好ましい。液状混合方法の場合は、80〜190℃であることが好ましく、90〜160℃であることがより好ましく、100〜150℃であることがさらに好ましい。
混合(又は混練)時間としては、特に制限はなく、例えば、混練方法の場合は、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、60秒間から7分間であることがさらに好ましい。液状混合方法の場合は、10秒間から60分間であることが好ましく、30秒間から40分間であることがより好ましく、60秒間から30分間であることがさらに好ましい。液状混合方法による混合反応後は、例えば、減圧下において、混合物中の溶剤を飛ばし(取り除き)、固形の変性ポリマーを回収することができる。
本発明に変性ポリマーの製造方法において、テトラジン化合物(1)の配合量としては、特に制限はなく、例えば、ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、通常0.1〜10質量部であり、好ましくは0.25〜5質量部であり、より好ましくは0.5〜2質量部となるよう適宜調整して用いればよい。
3.ゴム組成物
本発明のゴム組成物は、ゴム成分、上記本発明の低発熱化剤、並びに必要に応じて無機充填材及び/又はカーボンブラックを含んでいる。
また、本発明のゴム組成物は、上記変性ポリマー、並びに必要に応じて無機充填材及び/又はカーボンブラックを含んでいる。
該ゴム成分、本発明の低発熱化剤、及び変性ポリマーは、上述したとおりである。
上記本発明の低発熱化剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、通常0.1〜10質量部であり、好ましくは0.25〜5質量部であり、より好ましくは0.5〜2質量部である。
無機充填材及び/又はカーボンブラックの配合量は、特に限定はなく、例えば、ゴム成分100質量部に対して、通常2〜200質量部であり、好ましくは30〜130質量部であり、より好ましくは35〜110質量部である。無機充填材及びカーボンブラックの両方を配合する場合には、両成分の合計量が上記範囲となるように適宜調整すればよい。
無機充填材及び/又はカーボンブラックの配合量が、2質量部以上であれば、ゴム組成物の補強性向上の観点から好ましく、200質量部以下であれば、転がり抵抗低減の観点から好ましい。 なお、無機充填材及び/又はカーボンブラックを配合するときは、予めポリマーと湿式または乾式で混合されたマスターバッチを用いてもよい。
上記無機充填材又はカーボンブラックは、通常、ゴムの補強性を向上させるために用いられる。なお、本明細書においては、無機充填材にカーボンブラックは含まれない。
無機充填材
無機充填材としては、ゴム工業界において、通常使用される無機化合物であれば、特に制限はない。使用できる無機化合物としては、例えば、シリカ;γ−アルミナ、α−アルミナ等のアルミナ(Al2O3);ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al2O3・H2O);ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)3];炭酸アルミニウム[Al2(CO3)2]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n−1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al2O3)、クレー(Al2O3・2SiO2)、カオリン(Al2O3・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al2O3・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al2O3・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5、Al4・3SiO4・5H2O等)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3等)、ケイ酸カルシウム(Ca2・SiO4等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al2O3・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2・nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO3)2]、アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩等が挙げられる。これらの無機充填材は、ゴム成分との親和性を向上させるために、該無機充填材の表面が有機処理されていてもよい。
無機充填材の配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、通常10〜200質量部である。
無機充填材としては、ゴム強度を付与する観点からシリカが好ましく、より好ましくはシリカ単独で、又はシリカとゴム工業界で通常使用される無機化合物の1種以上とを併用することができる。無機充填材として、シリカ及びシリカ以外の上記無機化合物を併用する場合には、無機充填材の全成分の合計量が上記範囲となるように適宜調整すればよい。
シリカは、ゴム強度を付与することができるため添加することが好ましい。シリカとしては、市販のあらゆるものが使用できる。中でも、好ましいシリカとしては、湿式シリカ、乾式シリカ、又はコロイダルシリカであり、より好ましくは湿式シリカである。これらのシリカは、ゴム成分との親和性を向上させるために、シリカの表面が有機処理されていてもよい。
シリカのBET比表面積としては、特に制限はなく、例えば、40〜350m2/gの範囲が挙げられる。BET比表面積がこの範囲であるシリカは、ゴム補強性及びゴム成分中への分散性を両立できるという利点がある。該BET比表面積は、ISO 5794/1に準拠して測定される。
この観点から、好ましいシリカとしては、BET比表面積が80〜300m2/gの範囲にあるシリカであり、より好ましくは、BET比表面積が100〜270m2/gであるシリカであり、特に好ましくは、BET比表面積が110〜270m2/gの範囲にあるシリカである。
このようなシリカの市販品としては、Quechen Silicon Chemical Co., Ltd.製の商品名「HD165MP」(BET比表面積 =165m2/g)、「HD115MP」(BET比表面積 =115m2/g)、「HD200MP」(BET比表面積 =200m2/g)、「HD250MP」(BET比表面積 =250m2/g)、東ソー・シリカ株式会社製の商品名「ニップシールAQ」(BET比表面積=205m2/g)、「ニップシールKQ」(BET比表面積 =240m2/g)、デグッサ社製の商品名「ウルトラジルVN3」(BET比表面積 =175m2/g)、ソルベイ社製の商品名「Z1085Gr」(BET比表面積=90m2/g)、「Z Premium200MP」(BET比表面積=215m2/g)、「Z HRS 1200MP」(BET比表面積=200m2/g)等が挙げられる。
シリカの配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、通常20〜120質量部であり、好ましくは30〜100質量部であり、より好ましくは40〜90質量部である。
無機充填材、特にシリカを配合するゴム組成物において、テトラジン化合物(1)を配合することにより、シリカの分散性が大幅に向上し、ゴム組成物の低発熱性が著しく改良できる。つまり、本発明の低発熱化剤は、無機充填材及び/又はカーボンブラックの分散剤、発熱防止剤、又は発熱抑制剤として利用でき、好ましくは、ゴム用分散剤、ゴム用低発熱化剤、ゴム用発熱防止剤、又はゴム用発熱抑制剤として利用できる。
カーボンブラック
カーボンブラックとしては、特に制限はなく、例えば、市販品のカーボンブラック、Carbon−Silica Dual phase filler等が挙げられる。ゴム成分にカーボンブラックを含有することにより、ゴムの電気抵抗を下げて、帯電を抑止する効果、さらにゴムの強度を向上させる効果を享受できる。
具体的に、カーボンブラックとしては、例えば、高、中又は低ストラクチャーのSAF、ISAF、IISAF、N110、N134、N220、N234、N330、N339、N375、N550、HAF、FEF、GPF、SRFグレードのカーボンブラック等が挙げられる。中でも、好ましいカーボンブラックとしては、SAF、ISAF、IISAF、N134、N234、N330、N339、N375、HAF、又はFEFグレードのカーボンブラックである。
カーボンブラックのDBP吸収量としては、特に制限はなく、好ましくは60〜200cm3/100g、より好ましくは70〜180cm3/100g以上、特に好ましくは80〜160cm3/100gである。
また、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA、JIS K 6217−2:2001に準拠して測定する)は、好ましくは30〜200m2/g、より好ましくは40〜180m2/g、特に好ましくは50〜160m2/gである。
カーボンブラックが配合されたゴム組成物では、テトラジン化合物(1)が、又はゴム成分とテトラジン化合物(1)との反応物が、カーボンブラックと強く相互作用をすることが考えられる。したがって、本発明のゴム組成物によれば、特にカーボンブラックの分散性が大幅に向上し、ゴム組成物の低発熱性が著しく改良できる。
カーボンブラックの配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、通常2〜150質量部であり、好ましくは4〜120質量部であり、より好ましくは6〜100質量部である。
カーボンブラックでの配合量が2質量部以上であれば、静電気防止性能及びゴム強度性能を確保する観点から好ましく、150質量部以下であれば、転がり抵抗低減の観点から好ましい。
その他の配合剤
本発明のゴム組成物には、上記低発熱化剤、並びに無機充填材及び/又はカーボンブラック以外にも、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、硫黄等の加硫剤を配合することができる。本発明のゴム組成物には、さらに、別の配合剤、例えば、老化防止剤、オゾン防止剤、軟化剤、加工助剤、ワックス、樹脂、発泡剤、オイル、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、亜鉛華(ZnO)、加硫促進剤、加硫遅延剤等を配合してもよい。これら配合剤は、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
また、シリカなどの無機充填材が配合されたゴム組成物においては、シリカによるゴム組成物の補強性を高める目的、又はゴム組成物の低発熱性と共に耐摩耗性を高める目的で、シランカップリング剤を配合してもよい。 無機充填剤と併用可能なシランカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなシランカップリング剤として、例えばスルフィド系、ポリスルフィド系、チオエステル系、チオール系、オレフィン系、エポキシ系、アミノ系、アルキル系のシランカップリング剤が挙げられる。
スルフィド系のシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド 、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(3−モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−モノエトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−モノエトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−モノメトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−モノメトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−モノメトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−モノエトキシジメチルシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2−モノエトキシジメチルシリルエチル)トリスルフィド、ビス(2−モノエトキシジメチルシリルエチル)ジスルフィド等が挙げられる。これらの内、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが特に好ましい。
チオエステル系のシランカップリング剤としては、例えば、3−ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2−ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3−ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2−ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
チオール系のシランカップリング剤としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等を挙げることができる。
オレフィン系のシランカップリング剤としては、例えば、ジメトキシメチルビニルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルエトキシビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、 3−(メトキシジメトキシジメチルシリル)プロピルアクリレート、3−(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート、3−[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、3−[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、3−(トリエトキシシリル)プロピルメタクリレート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート等を挙げることができる。
エポキシ系のシランカップリング剤としては、例えば、3−グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン 、ジエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、トリエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)シラン、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
アミノ系のシランカップリング剤としては、例えば、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン 、3−エトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、3−アミノプロピルトリエトキシシランが好ましい。
アルキル系のシランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン 、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、メチルトリエトキシシランが好ましい。
これらシランカップリング剤の中でも、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドを特に好ましく使用することができる。
本発明においては、シランカップリング剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のゴム組成物のシランカップリング剤の配合量は、無機充填材100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、3〜15質量部であることが特に好ましい。0.1質量部以上であれば、ゴム組成物の低発熱性向上の効果をより好適に発現することができ、20質量部以下であれば、ゴム組成物のコストが低減し、経済性が向上するからである。
また、制動特性を特に重視するケースにおいては、樹脂などを添加してもよい。樹脂として、具体的には、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂などの天然樹脂、石油系樹脂、フェノール系樹脂、石炭系樹脂、キシレン系樹脂等が挙げられる。ロジン系樹脂としては、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、及び変性ロジン、並びにこれらのグリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル等が挙げられる。テルペン系樹脂としては、α−ピネン系、β−ピネン系、ジペンテン系等のテルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペン樹脂等が挙げられる。
また、加工性を重視するケースにおいては、加工助剤として、ミネラルオイル、ペトロラタム、パラフィンワックス、石油樹脂、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪アルコール、金属石けん、脂肪酸アミド、フェノール樹脂、ポリエチレン、ポリブテン、ペプタイザ、再生化剤、オルガノシロキサン等を添加することができる。
ゴム組成物の用途
本発明のゴム組成物の用途としては、特に制限はなく、例えば、タイヤ、防振ゴム、免震ゴム、コンベアベルト、ゴルフボール、これらのゴム部分等が挙げられる。中でも、好ましい用途は、タイヤである。
ゴム組成物の製造方法
本発明のゴム組成物の製造方法としては、特に制限されない。本発明のゴム組成物の製造方法は、例えば、ゴム成分、本発明の低発熱化剤、並びに必要に応じて無機充填材及び/又はカーボンブラックを含む原料成分を混練する工程(I)、並びに工程(I)で得られる混合物、及び加硫剤を混練する工程(II)を含んでいる。
工程(I)
工程(I)は、ゴム成分、本発明の低発熱化剤、並びに必要に応じて無機充填材及び/又はカーボンブラックを含む原料成分を混練する工程であり、加硫剤を配合する前の工程であることを意味している。
工程(I)では、さらに必要に応じて、上記のその他の配合剤等を配合することができる。
工程(I)における混練方法としては、例えば、ゴム成分と、本発明の低発熱化剤と、必要に応じて無機充填材及び/又はカーボンブラックを含む原料成分とを含む組成物を混練する方法が挙げられる。この混練方法においては、各成分の全量を一度に混練してもよく、粘度調整等の目的に応じて、各成分を分割投入して混練してもよい。また、ゴム成分と無機充填材及び/又はカーボンブラックとを混練した後、本発明の低発熱化剤を投入して混練するか、ゴム成分と本発明の低発熱化剤とを混練した後、無機充填材及び/又はカーボンブラックを投入して混練してもよい。各成分を均一に分散させるために、混練操作を繰り返し行ってもよい。
また、工程(I)における別の混練方法としては、ゴム成分と本発明の低発熱化剤とを混練する工程(I−1)、並びに工程(I−1)で得られた混合物(変性ポリマー)と無機充填材及び/又はカーボンブラックを含む原料成分とを混練する工程(I−2)を含む二段階の混練方法を挙げることができる。
工程(I)におけるゴム組成物を混合する際の排出温度としては、特に制限はなく、例えば、ゴム組成物の排出温度が60〜190℃であることが好ましく、80〜175℃であることがより好ましく、100〜170℃であることがさらに好ましい。
工程(I)における混合時間としては、特に制限はなく、例えば、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、2分間から7分間であることがさらに好ましい。 工程(I−1)におけるゴム成分と本発明の低発熱化剤とを混合する際の排出温度としては、80〜190℃であることが好ましく、90〜160℃であることがより好ましく、100〜150℃であることがさらに好ましい。排出温度を上記の範囲内にすることにより、ゴムを劣化させることなく反応を進行させることができる。
工程(I−1)における混合時間としては、10秒間〜20分間が望ましく、30秒間〜10分間であることがより好ましく、60秒間〜7分間であることがさらに好ましい。混合時間を上記の範囲内にすることにより、生産性を低下させることなく反応を十分に進行させることができる。
工程(I−2)における工程(I−1)で得られた混合物(変性ポリマー)と、必要に応じて配合される無機充填材及び/又はカーボンブラックを含む原料成分を混合する際の排出温度としては、特に制限はなく、混合物の排出温度が60〜190℃であることが好ましく、80〜175℃であることがより好ましく、100〜170℃であることがさらに好ましい。
工程(I−2)における混合時間としては、特に制限はなく、例えば、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、2分間から7分間であることがさらに好ましい。
工程(I−1)で得られた混合物(変性ポリマー)を排出することなく、工程(I−2)を行うことも可能である。
工程(I)において、本発明の低発熱化剤であるテトラジン化合物(1)の配合量としては、特に制限はなく、例えば、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜10質量部であり、好ましくは0.25〜5質量部であり、より好ましくは0.5〜2質量部である。
工程(I)において、ゴム成分(ジエン系ゴム)の二重結合部と本発明の低発熱化剤とが反応して変性ポリマーを形成し、無機充填材及び/又はカーボンブラックが好適に分散された混合物を得ることができる。
工程(II)
工程(II)は、工程(I)で得られる混合物、及び加硫剤を混合する工程であり、混練の最終段階を意味している。
工程(II)では、さらに必要に応じて、加硫促進剤、酸化亜鉛等を配合することができる。
工程(II)の排出温度としては、特に制限はなく、例えば、60〜140℃であることが好ましく、80〜120℃であることがより好ましく、90〜120℃であることがさらに好ましい。
混合(又は混練)時間としては、特に制限はなく、例えば、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、60秒間から5分間であることがさらに好ましい。
工程(I)から工程(II)に進む際には、前段階の工程終了後の温度より、30℃以上低下させてから次の工程(II)へ進むことが好ましい。
本発明のゴム組成物の製造方法において、通常、ゴム組成物に配合されるステアリン酸、亜鉛華、加硫促進剤、老化防止剤等の各種配合剤を、必要に応じて、工程(I)又は工程(II)において添加することができる。
上記の工程工程(I)及び工程(II)により、ゴム成分に本発明の低発熱化剤を処理して得られた変性ポリマー、並びに無機充填材及び/又はカーボンブラックを含有するゴム組成物を製造することができる。
本発明におけるゴム組成物は、バンバリーミキサー、ロール、インテンシブミキサー、ニーダー、二軸押出機等を用いて混合又は混練りされる。その後、押出工程において押出して加工され、例えば、トレッド用部材、又はサイドウォール用部材として成形される。続いて、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、タイヤが得られる。
4.タイヤ
本発明のタイヤは、上記本発明のゴム組成物を用いて作製されたタイヤである。
本発明のタイヤとしては、例えば、空気入りタイヤ(ラジアルタイヤ、バイアスタイヤ等)、ソリッドタイヤ等が挙げられる。
タイヤの用途としては、特に制限はなく、例えば、乗用車用タイヤ、高荷重用タイヤ、モーターサイクル(自動二輪車)用タイヤ、スタッドレスタイヤ等が挙げられ、中でも、乗用車用タイヤに好適に使用できる。
本発明のタイヤの形状、構造、大きさ及び材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明のタイヤにおいて、上記ゴム組成物は、特にトレッド部、サイドウォール部、ビードエリア部、ベルト部、カーカス部及びショルダー部から選ばれる少なくとも一つの部材に用いられる。
中でも、空気入りタイヤのタイヤトレッド部、又はサイドウォール部を当該ゴム組成物で形成するのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
トレッド部とは、トレッドパターンを有し、路面と直接接する部分で、カーカスを保護するとともに摩耗及び外傷を防ぐタイヤの外皮部分であり、タイヤの接地部を構成するキャップトレッド及び/又はキャップトレッドの内側に配設されるベーストレッドをいう。
サイドウォール部とは、例えば、空気入りラジアルタイヤにおけるショルダー部の下側からビード部に至るまでの部分であり、カーカスを保護するとともに、走行する際に最も屈曲の激しい部分である。
ビードエリア部とは、カーカスコードの両端を固定し、同時にタイヤをリムに固定させる役目を負っている部分である。ビードとは高炭素鋼を束ねた構造である。
ベルト部とは、ラジアル構造のトレッドとカーカスとの間に円周方向に張られた補強帯である。カーカスを桶のたがの様に強く締付けトレッドの剛性を高めている。
カーカス部とは、タイヤの骨格を形成するコード層の部分であり、タイヤの受ける荷重、衝撃、及び充填空気圧に耐える役割を果たしている。
ショルダー部とは、タイヤの肩の部分で、カーカスを保護する役目を果たす。
本発明のタイヤは、タイヤの分野において、これまでに知られている方法に従って製造することができる。また、タイヤに充填する気体としては、通常の又は酸素分圧を調整した空気;窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
本発明のタイヤは、低発熱性を有し、タイヤの転がり抵抗が小さくなることから、自動車の低燃費化を図ることができる。
以下、製造例及び実施例を示して、本発明について具体的に説明する。ただし、実施例はあくまで一例であって、本発明は、実施例に限定されない。
製造例1:ジメチル 1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキシラート(1a)の製造
窒素雰囲気下で、3L四つ口フラスコの中にグリシンエチル塩酸塩300g(2.15 モル)及び水530mLを加えて混合し、内温を−5℃に冷却しながら撹拌した。これに亜硝酸ナトリウム178g(1.2当量)を水530mLに溶かした溶液を氷冷して滴下した。さらに内温を−9℃に下げ、5%硫酸200g(5モル%)を滴下した。混合物を−9℃で10分間撹拌した後、分液漏斗で中間体である黄色液体と粗ジアゾ酢酸エチルとを分離した。
2L四つ口フラスコに水酸化ナトリウム356g(4.1当量)及び水480mLを加えて撹拌し、50℃まで加熱した。これに上記で得た粗ジアゾ酢酸エチルを内温が50〜70℃になるように滴下した。滴下後、混合物を60℃で1時間半加熱した後に室温まで冷却し、スラリーを5%含水エタノール2.2Lに注ぎこんだ。混合物を室温で5分間撹拌して、スラリーが沈降するまで静置し、上澄みを取り除いた。スラリーにエタノール1.1Lを加えて撹拌し、静置してスラリーを沈降させた後、上澄みを取り除いた。同様にエタノールによる洗浄を5回行った後、これをろ過し、エタノール1L、次いでジエチルエーテル1Lで洗浄し、減圧乾燥することで中間体であるジカルボン酸ジナトリウム塩176g(淡茶色、粉体)を得た。
3L四つ口ナスフラスコに、ジカルボン酸ジナトリウム塩174g(0.81モル)、水191mL、及び砕いた氷191gを加えて撹拌した。このスラリーを−10〜0℃に冷却しながら、濃塩酸161.2mL(2当量)を1時間かけて滴下した。滴下後、ジエチルエーテル290mLを加えて混合し、ジエチルエーテル層を取り除いた。同様にジエチルエーテル290mLによる洗浄を5回行った後、スラリー水溶液をろ過し、減圧乾燥することでジヒドロテトラジン化合物(4a)87.29g(黄色、粉体)を得た。
融点:142−146℃、
1H−NMR(500MHz,d6−DMSO,δppm):
8.30(brs,2H),7.36(s,2H)
窒素雰囲気下、2L四つ口フラスコにメタノール1350mLを加え、−30℃で塩化チオニル73.8mL(2等量)を滴下した後、−30℃で30分間撹拌した。次に、得られたジヒドロテトラジン化合物(4a)87g(0.51モル)を30分かけて加えた後、室温で1時間、35〜40℃で2時間撹拌した。この反応液を−30℃で1時間撹拌した後、析出した固体をろ過することで固体を得た。これをジイソプロピルエーテル500mLで洗浄し、得られた固体を塩化メチレン4Lに溶かして、不溶物をろ過で取り除いた。その後、ろ液を減圧濃縮することでジヒドロテトラジン化合物(4b)46.6g(黄色固体)を得た。
融点:171−172℃、
1H−NMR(500MHz,CDCl3,δppm):
7.46(s,2H),3.93(s,6H)
3L四つ口フラスコに、得られたジヒドロテトラジン化合物(4b)22g(0.11モル)及び塩化メチレン2000mlを加えて撹拌し、氷冷しながら亜酸化窒素ガスを1.5時間バブリングした。15分間窒素をバブリングした後、反応液を濃縮し、減圧乾燥することで、目的のテトラジン化合物(1a)21.7g(赤色固体)を得た。
融点:173−175℃
1H−NMR(500MHz,CDCl3,δppm):
4.23(s,6H)
製造例2:N,N’−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド(1b)の製造
2L四つ口フラスコに、製造例1に記載の方法で製造したジヒドロテトラジン化合物(4b)24g(0.12モル)及びテトラヒドロフラン600mlを加えて混合し、そこに2−アミノエタノール27.8g(3.8等量)を滴下した。これを一晩室温で撹拌した後、析出物をろ過してテトラヒドロフラン1Lで洗浄し、減圧乾燥することで淡黄色のジヒドロテトラジン化合物(4c)30gを得た。
2L四つ口フラスコに、ジヒドロテトラジン化合物(4c)30g(0.116モル)及びテトラヒドロフラン580mLを加え、亜酸化窒素ガスを1.5時間バブリングした。15分間窒素をバブリングし、反応液を濃縮した後、塩化メチレン1Lで洗浄し、減圧乾燥することで目的のテトラジン化合物(1b)29.2g(淡赤色固体)を得た。
融点:147℃
1H−NMR(500MHz,d7−DMF,δppm):
9.48(brs,2H),5.14(brs,2H),3.96(t,J =6.0Hz,4H),3.85(t,J =6.0Hz,4H)
製造例3:N,N’−ビス−(ピリジン−2−イルメチル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド(1c)の製造
1L四つ口フラスコに、製造例1に記載の方法で製造したジヒドロテトラジン化合物(4b)22g(110モル)及びテトラヒドロフラン440mlを加えて撹拌し、そこに2−ピコリルアミン45.2g(3.8等量)を滴下した。これを一晩室温で撹拌した後、析出物をろ過して塩化メチレン1Lで洗浄し、減圧乾燥することで淡黄色のジヒドロテトラジン化合物(4d)35.1gを得た。
2L四つ口フラスコに、得られたジヒドロテトラジン化合物(4d)35.1g(0.1モル)及びメタノール470mLを加え、10分間撹拌した後、亜硝酸イソアミル182.2g(15.7当量)を1時間かけて滴下した後、室温で一晩撹拌した。その後、原料が消失するまで亜硝酸ガスをバブリングした。15分間窒素をバブリングし、析出物をろ過して塩化メチレン2Lで洗浄し、減圧乾燥することで目的のテトラジン化合物(1c)27.3g(淡赤色固体)を得た。
融点:172℃
1H−NMR(500MHz,d7−DMF,δppm):
10.21(t,J=5.0Hz,2H),8.81(d,J =4.5Hz,2H),8.06(m,2H),7.76(d,J =8.0Hz,2H),7.56(m,2H),5.09(d,J =5.0Hz,4H)
製造例4:1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド(1d)の製造
1L四つ口フラスコに、28%アンモニア水400mL(38.7当量)及び塩化アンモニウム3.4g(0.4当量)を加え、10分間氷浴上で撹拌した後、製造例1に記載の方法で製造したジヒドロテトラジン化合物(4b)34g(0.17モル)を加えた。混合物を一晩室温で撹拌した後、析出物をろ過してメタノール2Lで洗浄し、減圧乾燥することで淡黄色のジヒドロテトラジン化合物(4e)26.2gを得た。
3L四つ口フラスコに、得られたジヒドロテトラジン化合物(4e)26.2g(0.14モル)及び水1.8Lを加えた後、氷冷下で撹拌しながら、亜酸化窒素ガスを原料が消失するまでバブリングした。反応終了後、窒素を15分間バブリングし、析出物をろ過してメタノール2Lで洗浄し、減圧乾燥することで目的のテトラジン化合物(1d)21.3g(淡赤色固体)を得た。
融点:243−245℃
1H−NMR(500MHz,d6−DMSO,δppm):
8.83(s,2H),8.45(s,2H)
実施例1〜3:変性ポリマーの製造
表1に記載の各ゴム成分及びテトラジン化合物をその割合(質量部)で、バンバリーミキサーを用いて混練した。混合物の温度が130〜150℃に達した時点から、その温度を維持するよう調整しながら約2分間混練し、その後ロールミルで冷却して変性ポリマーを製造した。
実施例4〜6及び比較例1
下記表2の工程(I)に記載の各成分をその割合(質量部)で混合し、バンバリーミキサーで混合物の最高温度が160℃になるように回転数を調整しながら5分間混練した。混合物の温度が80℃以下になるまで養生させた後、表2の工程(II)に記載の各成分をその割合(質量部)で投入し、混合物の最高温度が110℃以下になるよう調整しながら混練して、ゴム組成物を製造した。
低発熱性(tanδ指数)試験
実施例4〜6で作製したゴム組成物(試験組成物)について、粘弾性測定装置(Metravib社製)を使用し、温度40℃、動歪5%、周波数15Hzでtanδを測定した。ジカルボニルテトラジン化合物(1)を添加しない以外は、実施例と同じ配合内容及び同じ製法でゴム組成物(リファレンス)を作製し、下記式に基づいて、低発熱性指数を算出した。
なお、低発熱性指数の値が大きい程、低発熱性の効果が優れていることを示し、ヒステリシスロスが小さいことを示す。
式:低発熱性指数={(リファレンスのtanδ)/(試験組成物のtanδ)}×100
[表中の記号の説明]
表1及び2において使用する原料を以下に示す。
※1: PetroChina Dushanzi Petrochemical Company製、商品名「RC2557S」
※2: Sinopec Qilu Petrochemical Co., Ltd.製、商品名「BR9000」
※3: Quechen Silicon Chemical Co., Ltd.製、商品名「HD165MP」
※4: Evonik Industries AG社製、商品名「Si69」
※5: Cabot社製、商品名「N234」
※6: Kemai Chemical Co., Ltd.製、商品名「6−PPD」
※7: Rhein Chemie Rheinau GmbH社製、商品名「Antilux 111」
※8: Dalian Zinc Oxide Co., Ltd.製
※9: Sichuan Tianyu Grease Chemical Co., Ltd.製
※10: Kemai Chemical Co., Ltd.製、商品名「DPG」
※11: Hansen & Rosenthal社製、商品名「Vivatec 700」
※12: Kemai Chemical Co., Ltd.製、商品名「CBS」
※13: Shanghai Jinghai Chemical Co.,Ltd.製
※14: ジメチル 1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキシラート(製造例1で製造した化合物(1a))
※15: N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド(製造例2で製造した化合物(1b))
※16: N,N’−ビス(ピリジン−2−イルメチル)−1,2,4,5−テトラジン−3,6−ジカルボキサミド(製造例3で製造した化合物(1c))
※17: 実施例1で製造した変性SBR−BR
※18: 実施例2で製造した変性SBR−BR
※19: 実施例3で製造した変性SBR−B