JP2018168079A - アルドステロン合成酵素発現阻害剤 - Google Patents

アルドステロン合成酵素発現阻害剤 Download PDF

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Abstract

【課題】これまでアルドステロン合成酵素発現阻害作用について知られていなかった化合物を有効成分とする新規のアルドステロン合成酵素発現阻害を提供すること。
【解決手段】ボルテゾミブ又はその塩を含有する、アルドステロン合成酵素発現阻害剤
【選択図】なし

Description

本発明は、アルドステロン合成酵素発現阻害剤に関する。
本邦における高血圧患者数は約4,000万人と推定されているが、そのうち降圧薬を内服していても降圧不十分な患者数は約1,000万人存在すると想定されている。また、3種類以上の降圧薬を内服しても降圧目標に達しない治療抵抗性高血圧患者数は、高血圧全患者の約2割に上ると考えられている。従って、既存の降圧剤、より具体的には、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、ACE阻害剤、Ca拮抗剤等の公知の降圧剤とは違う作用を示す新規降圧薬の開発は、いまだ必要であると思われる。
降圧薬の探索研究に関するスクリーニング方法が数々報告されているなか、アルドステロン合成酵素遺伝子の発現量を指標に用いる方法が報告されている(非特許文献1)。この報告の中では、アルドステロン合成酵素遺伝子のプロモーター領域下流にルシフェラーゼ(Luc)遺伝子が連結された遺伝子を導入した細胞株を用意し、当該細胞株をいくつかのARBの存在下で培養に供し、培養後に当該細胞におけるLuc遺伝子の発現の計測することで、スクリーニング方法として確立していることが示されている。しかし、このスクリーニング方法だけでは、ヒット化合物のもたらすアルドステロン合成酵素遺伝子の発現抑制がARBに代表されるようなレニン−アンジオテンシン系に作用して観察されるものなのか、レニン−アンジオテンシン系とは独立した系に作用した結果なのかを判定することはできず、公知の降圧剤とは違う作用を有する新規降圧剤の探索研究に供する手技としては課題が残されている。
また、レニン−アンジオテンシン系が関与すると考えられる高血圧が大動脈の肥厚やリモデリングを引き起こしているとされ、これら症状を緩和する観点からの創薬研究もおこなわれている(例えば、非特許文献2)。しかし、こうした研究報告もレニン−アンジオテンシン系が関与する現象に焦点を絞ったアプローチであるため、有望な効果を示す物質が特定された場合でも、当該物質の作用はARBのようにレニン−アンジオテンシン系の中に存在する分子に対するものである可能性が高い。
以上から、ARB、ACE阻害剤、Ca拮抗剤等の公知の降圧剤とは違う作用を示す新規降圧薬の開発が待望されながらも、その探索に関する創薬研究開発は未だに多難を極めているといえる。
特許第3717934号 特許第5261488号 特許第5736314号 特表2010-539183
Matsuda et al.(2014) Mol Cell Endocrinol 383, 60-68 Shuai Li, et al.(2013) PLOS ONE e78564
本発明は、これまでアルドステロン合成酵素発現阻害作用について知られていなかった化合物を有効成分とする新規のアルドステロン合成酵素発現阻害を提供することにある。
かかる状況の下、本発明者らは数千種類の化合物について検討した結果、ボルテゾミブ又はその塩が、アルドステロン合成酵素の発現を抑制することを見出した。本発明は、かかる新規の知見に基づくものである。
従って、本発明は、以下の項を提供する:
項1.ボルテゾミブ又はその塩を含有する、アルドステロン合成酵素発現阻害剤。
項2.CYP11B2の発現を抑制するための、項1に記載のアルドステロン合成酵素発現阻害剤。
項3.Ca2+下流の因子に作用する、項1又は2に記載のアルドステロン合成酵素発現阻害剤。
項4.ボルテゾミブ又はその塩を含有する、アルドステロン合成酵素の発現阻害により処置し得る疾患の予防又は治療剤。
本発明によれば、これまでアルドステロン合成酵素の発現阻害効果について知られていなかった化合物であるボルテゾミブ又はその塩を有効成分として用いることによって、新規のアルドステロン合成酵素発現阻害剤を提供することができる。
ここで、本発明の有効成分であるボルテゾミブは、プロテアソーム阻害剤としての機能またはそれに基づく各種抗がん剤としての用途が知られている化合物である(特許文献1〜4)。
一方、従来、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、ACE阻害剤、Ca拮抗剤等の種々の作用を示す種々の降圧剤について報告があるが、これらの降圧剤のうち、アルドステロン合成酵素の直接的な発現阻害効果について報告されているものはない。従って、上記本発明の驚くべき効果は、従来技術から予想し得ないものである。(ARBやACE阻害剤も間接的には発現を阻害する。)
実施例1の各試験の結果を示す。 実施例2の各試験の結果を示す。 実施例3の各試験の結果を示す。 実施例4の各試験の結果を示す。 実施例5の各試験の結果を示す。
アルドステロン合成酵素発現阻害剤
本発明は、ボルテゾミブ又はその塩を含有する、アルドステロン合成酵素発現阻害剤を提供する。本発明の有効成分であるボルテゾミブ[CAS No.179324−69−7、{(1R)−3−メチル−1−[(2S)−3−フェニル−2−(ピラジン−2−カルボキサミド)プロパンアミド]ブチル}ボロン酸)({(1R)−3−Methyl−1−[(2S)−3−phenyl−2−(pyrazine−2−carboxamido)propanamido]butyl}boronic acid)]は、下記構造を有する公知の物質である:
本発明の有効成分であるボルテゾミブの塩は、酸付加塩と塩基との塩を包含する。酸付加塩の具体例として、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酢酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩等の有機酸塩、及びグルタミン酸塩、アスパラギン酸塩等の酸性アミノ酸塩が挙げられる。塩基との塩の具体例としては、ナトリウム塩、カリウム塩又はカルシウム塩のようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、ピリジン塩、トリエチルアミン塩のような有機塩基との塩、リジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸との塩が挙げられる。
本発明の有効成分であるボルテゾミブ及びその塩は、水和物又は溶媒和物の形で存在することもあるので、これらの水和物及び溶媒和物もまた本発明の有効成分である化合物に包含される。これらの溶媒は、1種単独で、又は2種以上の混合溶媒として用いることができる。
溶媒和物を形成する溶媒としては、エタノール、プロパノール等のアルコール、酢酸等の有機酸、酢酸エチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類、アセトン等のケトン類、DMSO等が例示される。
本発明においては、本発明の有効成分であるボルテゾミブ又はその塩そのものをアルドステロン合成酵素発現阻害剤として用いても、薬学的に許容される各種担体(例えば、等張化剤、キレート剤、安定化剤、pH調節剤、防腐剤、抗酸化剤、溶解補助剤、粘稠化剤等)と組み合わせた医薬組成物として用いてもよい。
等張化剤としては、例えば、グルコース、トレハロース、ラクトース、フルクトース、マンニトール、キシリトール、ソルビトール等の糖類、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等の無機塩類等が挙げられる。これらの等張化剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
キレート剤としては、例えば、エデト酸二ナトリウム、エデト酸カルシウム二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、エデト酸カルシウム等のエデト酸塩類、エチレンジアミン四酢酸塩、ニトリロ三酢酸又はその塩、ヘキサメタリン酸ソーダ、クエン酸等が挙げられる。これらのキレート剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
安定化剤としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム等が挙げられる。
pH調節剤としては、例えば、塩酸、炭酸、酢酸、クエン酸等の酸が挙げられ、さらに水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩又は炭酸水素塩、酢酸ナトリウム等のアルカリ金属酢酸塩、クエン酸ナトリウム等のアルカリ金属クエン酸塩、トロメタモール等の塩基等が挙げられる。これらのpH調節剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
防腐剤としては、例えば、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等のパラオキシ安息香酸エステル、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム等の第4級アンモニウム塩、アルキルポリアミノエチルグリシン、クロロブタノール、ポリクォード、ポリヘキサメチレンビグアニド、クロルヘキシジン等が挙げられる。これらの防腐剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
抗酸化剤としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、乾燥亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、濃縮混合トコフェロール等が挙げられる。これらの抗酸化剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
溶解補助剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、グリセリン、D−ソルビトール、ブドウ糖、プロピレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、D−マンニトール等が挙げられる。これらの溶解補助剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
粘稠化剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルメロースナトリウム、キサンタンガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。これらの粘稠化剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
医薬組成物の実施形態において、組成物中のボルテゾミブ又はその塩の含有量は特に限定されず、ボルテゾミブの含有量換算で、例えば、90質量%以上、70質量%以上、50質量%以上、30質量%以上、10質量%以上、5質量%以上、1質量%以上等の条件から適宜設定できる。
製剤形態は、特に限定されず、例えば錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤等の経口投与剤;注射剤(静脈注射、筋肉注射、局所注射等)、含嗽剤、点滴剤、外用剤(軟膏、クリーム、貼付薬、吸入薬)、座剤等の非経口投与剤等の各種製剤形態を挙げることができる。上記製剤形態のうち、好ましいものとしては、例えば、注射剤(静脈注射、筋肉注射、局所注射等)、経口剤(錠剤、カプセル剤等)等が挙げられ、より好ましくは、経口剤等が挙げられる。
本発明において、ボルテゾミブ又はその塩の投与量は、投与経路、患者の年齢、体重、症状等によって異なり一概に規定できないが、ボルテゾミブの投与量として、成人に対する1日投与量が通常、約5000mg以下、好ましくは約1000mg以下になる量とすればよい。ボルテゾミブ又はその塩の投与量の下限も特に限定されず、例えば、ボルテゾミブの投与量として、成人に対する1日投与量が通常、0.1mg以上、好ましくは0.5mg以上の範囲で適宜設定できる。1日1回投与する場合は、1製剤中にこの量が含まれていればよく、1日3回投与する場合は、1製剤中にこの3分の1量が含まれていればよい。
本発明のアルドステロン合成酵素発現阻害剤は、哺乳動物等の患者に投与される。哺乳動物としては、ヒト、サル、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ等が挙げられる。
本発明によれば、ボルテゾミブ又はその塩の作用により、アルドステロン合成酵素発現を抑制することができる。アルドステロン合成酵素としては、例えば、CYP11B2によりコードされる酵素等が挙げられる。CYP11B2は、アンジオテンシンII及びカリウムにより制御されるだけでなく、コルチコトロピン(ACTH)及びcAMPによっても制御されると言われている(非特許文献1、60頁、右欄、11〜14行目)。また、後述の実施例に示すように、本発明によれば、ボルテゾミブ又はその塩は、細胞内カルシウム濃度の上昇後に変動するCYP11B2の発現制御因子に作用するものと考えられる。本発明において、細胞内カルシウム濃度の上昇後に変動するCYP11B2の発現制御因子を、Ca2+下流の因子と示すことがある。
アルドステロン合成酵素の発現阻害により処置し得る疾患の予防又は治療剤
本発明は、また、ボルテゾミブ又はその塩を含有する、アルドステロン合成酵素の発現阻害により処置し得る疾患の予防又は治療剤を提供する。
アルドステロン合成酵素の発現阻害により処置し得る疾患としては、アルドステロン合成酵素の発現阻害により処置し得る高血圧症、原発性アルドステロン症、腎血管性高血圧症、腎性高血圧等が挙げられる。
ここで、腎血管性高血圧症及び腎性高血圧症において、アルドステロンは、レニン−アンジオテンシン系で産生されるアンジオテンシンIIの作用により、副腎皮質から分泌されるが、原発性アルドステロン症においては細胞内カルシウム代謝異常によりアルドステロン合成・分泌が亢進される。さらに、アルドステロン合成酵素CYP11B2は、アンジオテンシンII及びカリウムにより制御されるだけでなく、コルチコトロピン(ACTH)及びcAMPによっても制御されると言われている(非特許文献1)。従って、アンジオテンシンII受容体拮抗剤(ARB)を投与しても改善されない高血圧等の疾患については、レニン−アンジオテンシン系とは別の経路によりアルドステロン合成が促進されていることも予想される。かかる状況の下、本発明の有効成分であるボルテゾミブ又はその塩はアルドステロン合成酵素の発現を阻害するため、本発明は、レニン−アンジオテンシン系とは別の経路によりアルドステロン合成が促進されている疾患の治療に対しても有効であり、非常に有用である。
本発明のアルドステロン合成酵素の発現阻害により処置し得る疾患の予防又は治療剤の有効成分、製剤形態、投与量等は、アルドステロン合成酵素発現阻害剤と同様である。
本発明のアルドステロン合成酵素の発現阻害により処置し得る疾患の予防又は治療剤も、本発明のアルドステロン合成酵素発現阻害剤と同様に、有効成分であるボルテゾミブ又はその塩そのものを予防又は治療剤として用いても、薬学的に許容される各種担体(例えば、等張化剤、キレート剤、安定化剤、pH調節剤、防腐剤、抗酸化剤、溶解補助剤、粘稠化剤等)と組み合わせた医薬組成物として用いてもよい。
また、上記医薬組成物は、ボルテゾミブ又はその塩以外に、降圧剤、原発性アルドステロン症の治療剤をさらに含んでいてもよい。かかる降圧剤としては、例えば、ARB、Ca拮抗剤等が挙げられる。かかる原発性アルドステロン症の治療剤としては、例えば、アルドステロン拮抗薬(スピロノラクトン、エプレノロン等)が挙げられる。
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
1.試験方法
1−1.化合物
化合物スクリーニングに用いたValidated Compound Libraryは東京大学創薬機構より分与された。アンジオテンシンII(Sigma)は0.1% Bovine serum albumin(BSA,Sigma)を含むPhosphate buffered saline(PBS)に、塩化カリウム(Wako)は水に、ボルテゾミブ(Cell signaling technology)、ベラプロスト(Cayman)はDimethyl sulfoxide(DMSO)に溶解した。
1−2.細胞培養
H295R細胞の培養は維持培地としてDulbecco’s modified Eagle’s medium(DMEM)/Ham’s F−12(Wako)に10% Fetal bovine serum(FBS、Life Technologies)、1.25 mg/mL BSA(Sigma)、1 x Insulin−Transferrin−Selenium Solution(Life Technologies)、1 x ペニシリン−ストレプトマイシン(Wako)、5.35μg/mL リノール酸(Sigma)を加えたものを使用した。なお、FBSは非働化処理(55℃、30分)を行ったものを使用した。また、アンジオテンシンII及びカリウム刺激時は刺激培地としてDMEM(Wako)にチャコール処理を行ったFBSを終濃度1%になるように加え、培養を行った。293T細胞、及びHeLa細胞の培養はDMEMに10% FBSを加えたものを使用した。すべての細胞培養は37℃、5%のCO雰囲気下において行った。細胞の継代培養にはTrypsin/EDTA(Life Technologies)を用いた。
1−3.マウス飼育、in vivo 解析
C57BL/6マウス及びツクバ高血圧マウスは室温、湿度をコントロールした室内で飼育し、12時間ずつの明暗照明下で飼育した。つくば高血圧マウスはヒトレニンを発現するトランスジェニックマウスhRN8−12系統とヒトアンジオテンシノーゲンを発現するトランスジェニックマウスhAG2−5系統を交配することで作出した。これらのトランスジェニックマウスは理化学研究所バイオリソースセンターより分与された。
6週齢の野生型もしくはつくば高血圧マウスに400μg/kgのボルテゾミブをPBSに溶解し4日に1回腹腔内投与を行った。10週齢の時点で血圧を測定し、副腎を摘出した。なお、化合物投与の前後で体重を測定した。マウスの血圧は非観血血圧測定装置BP−98A−L(ソフトロン)によるテールカフ法を用いて測定した。屠殺後、摘出した副腎はRT−PCRによるmRNA発現解析及び免疫組織染色に供した。
1−4.ルシフェラーゼアッセイ
CYP11B2遺伝子プロモーター(−1521〜+2)とホタルルシフェラーゼのキメラ遺伝子を組み込んだH295R細胞株(Matsuda et al., Mol Cell Endocrinol. 2014 Mar 5;383(1−2):60−8.)は3.33x10個ずつ384穴プレートに播種し、二日間培養後に所定の化合物を10μM含む培地に交換し24時間培養した。その後、1μM アンジオテンシンIIを含む培地に交換し、6時間培養後に等量のONE−Glo Reagent(Progmega)を加えPherastar(BMG Labtech)を用いて発光強度を測定した。
1−5.細胞増殖アッセイ
H295R細胞を2.5x10個ずつ96穴プレートに播種し、24時間後に10μMの化合物を含む維持培地に置換した。さらに24時間培養後、WST−1 Cell Proliferation Assay System(Takara)を用い、説明書に従って細胞増殖解析を行った。
1−6.RNA抽出(細胞、副腎)、逆転写、定量PCR
スクリーニング実験においては(図1D)、H295R細胞に所定の化合物を10μM含む維持培地で24時間処理し、その後、1μMアンジオテンシンIIを含む刺激培地で6時間処理した後にSepasol−RNA I Super G(ナカライテスク)を用いて定法通りRNA抽出を行った。ボルテゾミブ効果の検証実験では(図2C, D,E)、H295R細胞を0.1μMボルテゾミブを含む維持培地で12時間培養した後、0.1μMアンジオテンシンIIを含む刺激培地で6時間処理した後に上記と同様にRNA抽出を行った。ベラプロスト効果の検証実験では(図5B)、2もしくは20μMベラプロストを含む維持培地で12時間H295R細胞を培養した後、0.1μMアンジオテンシンIIを含む刺激培地で6時間処理したRNA抽出を行った。また、マウスより摘出した副腎からのRNA抽出にはISOGEN(日本ジーン)を用いた。得たRNAはPrimeScript reverse transcriptase(Takara)を用いて逆転写し、その産物を用いて定量PCR法による発現量解析を行った。ヒトGAPDH、ヒトNurr1、ヒトNGFIB及びマウスGapdhの解析にはKAPA SYBR Fast qPCR kit(KAPA)を用い、ヒトCYP11B2、マウスCyp11b2の解析にはTHUNDERBIRD probe qPCR mix(東洋紡)を用いた。これらの測定にはThermal Cycler Dice Real Time System(Takara)を使用した。用いたプライマー及びプローブは表1に示した。
1−7.アルドステロン抽出、ELISA
0.1μMボルテゾミブを含む維持培地で12時間培養したH295R細胞を0.1μMアンジオテンシンIIを含む刺激培地で24時間処理し培養上清を回収した。Aldosterone ELISA kit(CAYMAN)の説明書に従い、ジクロロメタン(和光純薬)を用いて培養上清からアルドステロンの抽出を行った。得た試料をAldosterone ELISA kitに供し、培養上清中に含まれるアルドステロン濃度を測定した。
1−8.免疫組織染色
ホルマリン固定を行ったマウス副腎はパラフィン包埋した後、薄切した。脱パラフィン後、抗原賦活化を行い、CYP11B2抗体と反応させた。さらに、ヒストファインシンプルステインMAX PO(ニチレイ)を用いてペルオキシダーゼ標識二次抗体を結合させ、ジアミノベンジジンを用いて発色させた。また、薄切した連続切片はヘマトキシリン染色にも供した。免疫組織染色に用いたCYP11B2抗体はミシシッピ大学Gomez−Sanchez博士より分与された。
実施例1 CYP11B2の発現変動を指標にしたスクリーニング
Validated Compound Libraryに由来する1979種類の化合物を用い、前記「1−4.」に記載の方法に従い、ルシフェラーゼアッセイを行った。結果(各化合物のInH(InH=
(1−((化合物処理時の実測値−無刺激時の平均値)/(刺激時の平均値−無刺激時の平均値)))x100)の分布)を図1Aに示す。InH50%を閾値としてスクリーニングした結果、174種類の化合物が選抜された。次に、174種類の化合物を用いて、再度同様のルシフェラーゼアッセイを行い、66種類の化合物が選抜された(図1B)。次に、既存のアンジオテンシンII受容体拮抗薬を除く59種類の化合物を用い、前記「1−5.」に記載の方法に従い、細胞増殖アッセイを行った。結果を図1Cに示す。DMSOコントロールに対する相対viabitlity90%を閾値としてスクリーニングした結果、23種類の化合物が選択された。次に、当該23種類の化合物を10μMの濃度で24時間化合物処理を行ったH295R細胞について、「1−6.」に記載の方法に従って、H295細胞からのRNA抽出、逆転写を行い、CYP11B2並びにGAPDHの発現量解析を定量PCRにて行った。結果(各化合物のInHの分布)を図1Dに示す。InH 40%を閾値としてスクリーニングした結果、15種類の化合物が選抜された。15種類の化合物を下記表2に示す。以下の実施例については、これら15種類の化合物のうち、明確な標的分子、作用機序が明らかにされている点から、ボルテゾミブを選択して用いた。
実施例2.CYP11B2の発現に対するボルテゾミブの影響の評価
種々の濃度でボルテゾミブを用い、前記「1−4.」に記載の方法に従って、ルシフェラーゼアッセイを行った。また、同様に種々の濃度でボルテゾミブを用い、前記「1−5.」に記載の方法に従って、細胞増殖アッセイを行った。結果を図2Bに示す。図2Bに示すように、ボルテゾミブは、濃度依存的にCYP11B2遺伝子プロモーター活性を阻害した。次に、10μMのボルテゾミブ又はDMSOを用いて化合物処理を行ったH295R細胞について、「1−6.」に記載の方法に従って、H295細胞からのRNA抽出、逆転写、定量PCR(CYP11B2/GAPDH)を行った。当該試験は、アンジオテンシンII処理していないH295細胞(NT)及び0.1μMアンジオテンシンIIで6時間処理したH295細胞(AngII)の両方に対して行った。結果を図2Cに示す。図2Cから、アンジオテンシンII処理により亢進したCYP11B2のmRNA発現がボルテゾミブ添加により、阻害されたことが分かる。同様にして、ヒトNurr1、ヒトNGFIBについても試験を行った(図2D、図2E)。図2Dからボルテゾミブ処理によってもNurr1発現のアンジオテンシンII応答性に変化がないことが示された。すなわち、ボルテゾミブによる発現抑制作用はCYP11B2発現に対して選択性を有することが示された。また、図2EからNGFIB発現はボルテゾミブ処理により増加することが示された。Nurr1やNGFIBはCYP11B2の転写活性化因子であることが報告されているが、ボルテゾミブによるCYP11B2発現阻害はNurr1やNGFIBの発現阻害によるものではないと考えられる。さらに、10μMのボルテゾミブ又はDMSOを用いて化合物処理を行ったH295R細胞について、前記「1−7」の記載に従い、アルドステロン抽出及びELISAでの検出を行った。当該試験も、アンジオテンシンII処理していないH295細胞(NT)及び0.1μMアンジオテンシンIIで24時間処理したH295細胞(AngII)の両方に対して行った。結果を図2Fに示す。図2Fから、アンジオテンシンII処理により亢進したアルドステロンの分泌がボルテゾミブにより抑制されたことが分かる。
実施例3
野生型マウス及びツクバ高血圧マウスを用い、前記「1−3.」に記載の方法に従って、血圧測定を行った。結果を図3Aに示す。図3Aからツクバ高血圧マウスでは血圧が上昇していることが確認できた。次に、これらのマウスを用い、前記「1−6.」に記載の方法に従って、副腎におけるCyp11b2 mRNA発現解析を行った。結果を図3Bに示す。図3Bからツクバ高血圧マウスでは副腎Cyp11b2発現が亢進していることが分かる。次に、これらのマウスを用い、前記「1−8.」に記載の方法に従って、CYP11B2抗体を用いた副腎の免疫染色を行った。結果を図3Cに示す。図3Cからツクバ高血圧マウスにおいて副腎球状層でCYP11B2タンパク質の発現が増加していることが分かる。
実施例4.
野生型マウス及びツクバ高血圧マウスを用い、前記「1−3.」に記載の方法に従って、ボルテゾミブ投与前後の体重変化解析を行った。結果を図4Aに示す。図4Aからいずれのマウスにおいてもボルテゾミブ投与による有意な体重変化は認められなかった。次に、これらのマウスを用い、前記「1−3.」に記載の方法に従って、ボルテゾミブ投与の血圧への影響解析を行った。結果を図4Bに示す。図4Bからボルテゾミブはツクバ高血圧マウスの血圧を有意に硬化させることが分かる。次に、これらのマウスを用い、前記「1−6.」に記載の方法に従って、ボルテゾミブの副腎Cyp11b2 mRNA発現への影響解析を行った。結果を図4Cに示す。図4Cからボルテゾミブ投与はツクバ高血圧マウスの副腎Cyp11b2 mRNA発現亢進を阻害するであることが分かる。次に、これらのマウスを用い、前記「1−8.」に記載の方法に従って、副腎免疫染色を行った。結果を図4Dに示す。図4Dからボルテゾミブ投与により副腎球状層におけるCYP11B2タンパク質発現量が低下していることが分かる。
実施例5.
0.1μMボルテゾミブを含む維持培地で12時間処理した後、20mM塩化カリウムを含む刺激培地で6時間培養したH295R細胞を用い、前記「1−6.」に記載の方法に従って、定量PCRによるCYP11B2 mRNA発現解析を行った。結果を図5Aに示す。図5Aからボルテゾミブ処理は、アンジオテンシンII応答と同様にCYP11B2発現の塩化カリウム応答を抑制することが分かる。また、アンジオテンシンII及び塩化カリウムの両方の刺激によるCYP11B2の発現上昇を抑制することから、ボルテゾミブは、前記刺激による細胞内カルシウム濃度の上昇後に変動するCYP11B2の発現制御因子(以下、Ca2+下流の因子)を標的とすることが示唆され、ARB、ACE阻害剤またはCa2+拮抗剤とは異なる標的と機序によりCYP11B2の発現を抑制することが分かる。
次に、2もしくは20μMベラプロストを含む維持培地で12時間培養した後、0.1μMアンジオテンシンIIで6時間培養したH295R細胞を用い、前記「1−6.」に記載の方法に従って、ベラプロストのCYP11B2発現応答に対する影響を検証した。結果を図5Bに示す。図5Bからいずれの濃度においてもベラプロストはCYP11B2の塩化カリウム応答に影響を与えないことが分かる。ベラプロストはプロスタサイクリン受容体に作用し、慢性動脈閉塞症や肺高血圧症に用いられ、血管を広げることで血圧を下げる効果が知られている。本実施例により、ベラプロストによる血圧降下作用はCYP11B2の発現抑制による作用ではないことがわかる。

Claims (4)

  1. ボルテゾミブ又はその塩を含有する、アルドステロン合成酵素発現阻害剤。
  2. CYP11B2の発現を抑制するための、請求項1に記載のアルドステロン合成酵素発現阻害剤。
  3. Ca2+下流の因子に作用する、請求項1又は2に記載のアルドステロン合成酵素発現阻害剤。
  4. ボルテゾミブ又はその塩を含有する、アルドステロン合成酵素の発現阻害により処置し得る疾患の予防又は治療剤。
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