JP2018165303A - ゴム軟化剤、ゴム組成物およびその加硫物 - Google Patents

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正幸 齋藤
優紀 八木
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優紀 八木
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英樹 渡邊
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Abstract

【課題】ゴム組成物にの加硫物の硬さを低下させにくいゴム軟化剤、該ゴム軟化剤を用いたゴム組成物およびその加硫物の提供。
【解決手段】(A)成分および(B)成分のいずれか一方または両方を含み、25℃における粘度が10万mPa・s以下であるゴム軟化剤。(A)成分:少なくとも1つの二重結合を含む鎖式炭化水素基を有するフェノール成分(I)に由来する構造を含み、25℃において液状であるフェノール樹脂。(B)成分:前記フェノール成分(I)に由来する構造を含み、単独では25℃において固形であり、前記ゴム軟化剤中では溶解しているフェノール樹脂。
【選択図】なし

Description

本発明は、ゴム軟化剤、ゴム組成物およびその加硫物に関する。
従来、ゴム製品に硬さや弾性率を付与する方法として、カーボンブラックやシリカ等の補強用フィラーを配合する方法、ゴム補強用フェノール樹脂およびその硬化剤を配合する方法等が知られている(非特許文献1)。
ゴム製品は、ゴム、加硫剤等を含む未加硫のゴム組成物を加硫させて製造される。
ゴム組成物は、一般に、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、2軸ロール等のゴム混練装置にて1種または複数種のゴム、補強用フィラー、ゴム補強用フェノール樹脂、老化防止剤、紫外線防止剤、ステアリン酸等の有機ゴム薬品類、亜鉛華等を配合、均一化する一次混練工程(A練り工程)、およびそこで得られた配合物に硫黄等の加硫剤、加硫促進剤、フェノール樹脂硬化剤等を配合、均一化する二次混練工程(B練り工程)とを含む製造方法によって製造される。
上記の一次混練工程および二次混練工程においては、混練時の粘度を低下させ、異種のゴムの均一分散化やその他の配合物の均一混合を容易にする目的で、ゴム軟化剤を配合することがある。ゴム軟化剤としては、アロマオイル、プロセスオイル等の石油系オイルが一般的である(特許文献1)。ゴム軟化剤として、将来的な資源枯渇の問題、および地球温暖化ガスである二酸化炭素排出の問題を抑制する目的で、脱石油資源である植物油(なたね油、とうもろこし油等)を用いる場合もある(特許文献2)。
一方、ゴムの樹脂架橋剤であるアルキルフェノール樹脂のゴムへの分散性等を高める目的で、アルキルフェノール樹脂にオイルおよび/または可塑剤を配合することが提案されている(特許文献3)。
特開2009−46674号公報 特開2007−197004号公報 特開2007−204617号公報
ラバーダイジェスト社編、「便覧 ゴム・プラスチック配合薬品」、ラバーダイジェスト社、1989年3月、p.212−234
前述の石油系オイルや植物油からなるゴム軟化剤をゴム組成物に配合した場合、ゴム混練時の粘度が低減し、配合成分の均一混合性は向上するものの、ゴム軟化剤を配合しない場合に比べて、得られる加硫物(加硫ゴム)の硬さ(貯蔵弾性率)等の物性が劣る問題がある。
硬さはゴム製品において重要な特性である。また、近年、ゴム製品の用途が多様化しており、硬さのさらなる向上が要求されている。そのため、硬さの低下は好ましくない。
本発明は、ゴム組成物の加硫物の硬さを低下させにくいゴム軟化剤、該ゴム軟化剤を用いたゴム組成物およびその加硫物を提供することを目的とする。
本発明は、以下の態様を有する。
〔1〕下記(A)成分および下記(B)成分のいずれか一方または両方を含み、25℃における粘度が10万mPa・s以下であるゴム軟化剤。
(A)成分:少なくとも1つの二重結合を含む鎖式炭化水素基を有するフェノール成分(I)に由来する構造を含み、25℃において液状であるフェノール樹脂。
(B)成分:前記フェノール成分(I)に由来する構造を含み、単独では25℃において固形であり、前記ゴム軟化剤中では溶解しているフェノール樹脂。
〔2〕前記(A)成分および前記(B)成分がそれぞれノボラック型フェノール樹脂である、〔1〕のゴム軟化剤。
〔3〕前記(A)成分および前記(B)成分それぞれにおける下式(1)で求められる不飽和結合量が1%以上である、〔1〕または〔2〕のゴム軟化剤。
不飽和結合量=(I/I)×100 ・・・(1)
ここで、Iは、H−NMRスペクトルにおいて前記(A)成分または前記(B)成分を構成する炭素原子に結合した水素原子に由来するピークの積算値合計を示し、Iは、H−NMRスペクトルにおいて前記鎖式炭化水素基の二重結合を構成する炭素原子に結合した水素原子に由来するピークの積算値合計を示す。
〔4〕前記フェノール成分(I)が、カシューナッツシェルリキッド、カルダノール、カードル、メチルカードル、アナカルド酸、ウルシオールおよびアリルフェノールからなる群から選ばれる少なくとも1種である、〔1〕〜〔3〕のいずれかのゴム軟化剤。
〔5〕オイルをさらに含む、〔1〕〜〔4〕のいずれかのゴム軟化剤。
〔6〕前記(A)成分および前記(B)成分のうち少なくとも前記(B)成分を含み、
前記(B)成分における前記フェノール成分(I)が、カシューナッツシェルリキッド、カルダノール、カードル、メチルカードル、アナカルド酸およびウルシオールからなる群から選ばれる少なくとも1種の植物由来フェノール成分を含み、
前記(B)成分中の前記植物由来フェノール成分に由来する構造の含有率が35質量%以上である、〔5〕のゴム軟化剤。
〔7〕前記(A)成分および前記(B)成分の合計の含有量が、前記ゴム軟化剤の総質量に対して15質量%以上である、〔1〕〜〔6〕のいずれかのゴム軟化剤。
〔8〕ゴムと、前記〔1〕〜〔7〕のいずれかのゴム軟化剤とを含むゴム組成物。
〔9〕前記ゴムがジエン系ゴムである、〔8〕のゴム組成物。
〔10〕加硫剤をさらに含む、〔8〕または〔9〕のゴム組成物。
〔11〕ゴム補強用フェノール樹脂をさらに含む、〔8〕〜〔10〕のいずれかのゴム組成物。
〔12〕フェノール樹脂硬化剤をさらに含む、〔8〕〜〔11〕のいずれかのゴム組成物。
〔13〕前記〔8〕〜〔12〕のいずれかのゴム組成物の加硫物。
本発明によれば、ゴム組成物の加硫物の硬さを低下させにくいゴム軟化剤、該ゴム軟化剤を用いたゴム組成物およびその加硫物を提供できる。
〔ゴム軟化剤〕
本発明のゴム軟化剤は、下記(A)成分および下記(B)成分のいずれか一方または両方を含む。
本発明のゴム軟化剤は、必要に応じて、オイルをさらに含む。本発明のゴム軟化剤が(B)成分を含む場合は、通常、オイルをさらに含み、このオイルに(B)成分が溶解している。本発明のゴム軟化剤が(B)成分を含まない場合は、オイルを含んでもよく含まなくてもよい。
本発明のゴム軟化剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)成分、(B)成分およびオイル以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。
本発明のゴム軟化剤は液状である。
本発明のゴム軟化剤の25℃における粘度は、10万mPa・s以下であり、8千mPa・s以下が好ましい。粘度(25℃)が前記上限値以下であれば、本発明のゴム軟化剤をゴム等と混練してゴム組成物を製造する際に、混練時の粘度を充分に低くできる。また、オイル等を添加することにより加硫物の硬さが低下することを抑制する効果(硬さ低下抑制効果)、さらには加硫物により優れた硬さを付与する効果(硬さ付与効果)が得られる。また、粘度が低い程、計量、仕込み等の取扱い性、作業性に優れる。
本発明のゴム軟化剤の粘度(25℃)の下限は特に限定されず、例えば、1mPa・s以上であってよい。
粘度は、TVE−25形粘度計を用いて測定される。
<(A)成分>
(A)成分は、フェノール成分(I)に由来する構造を含み、25℃において液状であるフェノール樹脂である。
ここで、フェノール樹脂は、フェノール成分と架橋成分との反応生成物であり、フェノール成分由来の構成単位を複数有する重合体を含む。フェノール樹脂中には、未反応のフェノール成分が残存していてもよい。
フェノール成分に由来する構造は、重合体中のフェノール成分由来の構成単位と、未反応のフェノール成分との総称である。
フェノール成分は、芳香環および該芳香環に結合した水酸基を有する化合物である。芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環等が挙げられる。
架橋成分は、複数のフェノール成分の芳香環同士を架橋する架橋構造を形成する化合物である。
フェノール成分(I)は、少なくとも1つの二重結合(炭素−炭素二重結合)を含む鎖式炭化水素基(以下、「不飽和鎖式炭化水素基ともいう。)」を有する。不飽和鎖式炭化水素基を有することで、硬さ低下抑制効果、さらには硬さ付与効果を得ることが可能である。
不飽和鎖式炭化水素基は、芳香環に結合している。不飽和鎖式炭化水素基の炭素数は、2〜20が好ましい。不飽和鎖式炭化水素基は、直鎖状でもよく分岐状でもよいが、典型的には直鎖状である。不飽和鎖式炭化水素基の例として、−CH=CH、−(CH−CH=CH−(CHCH、−(CH−CH=CH−CH−CH=CH−(CHCH、−(CH−CH=CH−CH−CH=CH−CH−CH=CH、−CH−CH=CH等が挙げられる。
不飽和鎖式炭化水素基において、不飽和鎖式炭化水素基の末端に存在する二重結合量(以下、「末端二重結合量」ともいう。)/前記鎖式炭化水素基の末端以外に存在する二重結合量(以下、「鎖中二重結合量」ともいう。)の比は、0/100〜25/75が好ましく、0/100〜10/90がより好ましい。不飽和鎖式炭化水素基の末端に存在する二重結合は、末端以外に存在する二重結合に比べて反応性が高い。末端二重結合量/鎖中二重結合量の比が前記上限値以下であれば、ゴム軟化剤やこれを含むゴム組成物の保存安定性が優れる傾向がある。
末端二重結合量/鎖中二重結合量の比は、フェノール樹脂のH−NMR(核磁気共鳴)スペクトルから求められる。詳しくは、後述する実施例に記載のとおりである。
フェノール成分(I)の芳香環には、水酸基および不飽和鎖式炭化水素基以外の他の置換基が結合していてもよい。他の置換基としては、例えば炭素数1〜20のアルキル基、カルボキシ基、アルデヒド基、フェニル基、メトキシ基、チオール基、スルフィド基等が挙げられる。
フェノール成分(I)としては、カシューナッツシェルリキッド、カルダノール、カードル、メチルカードル、アナカルド酸、ウルシオール等の植物由来フェノール成分、アリルフェノール等が挙げられる。これらはいずれか1種が単独で用いられてもよく2種以上が併用されてもよい。
植物由来フェノール成分は、不飽和鎖式炭化水素基として、少なくとも1つの二重結合を含む長鎖炭化水素基を有するフェノール化合物、または該フェノール化合物を含む複数の化合物の混合物である。植物由来フェノール成分が有する長鎖炭化水素基の炭素数は、通常、10〜20程度である。
植物由来フェノール成分としては、硬さ低下抑制効果または硬さ付与効果が高い点で、カシューナッツシェルリキッド、カルダノールが好ましい。カシューナッツシェルリキッドは、未精製物であってもよいが、精製物であることが好ましい。カシューナッツシェルリキッドとしては、カシューナッツシェルリキッドの全質量に対し、カルダノールの含有率が70〜100質量%、カードルの含有率が0〜25質量%、メチルカードルの含有率が0〜5質量%で、カルダノールとカードルとメチルカードルとの合計の含有率(有効成分量)が70質量%以上であるものが好ましい。
アリルフェノールは、オルソアリルフェノール、メタアリルフェノール、パラアリルフェノールのいずれであってもよく、加硫物の硬さ等の低下を抑制する効果または加硫物に硬さ等を付与する効果が高い点で、オルソアリルフェノールが好ましい。
(A)成分は、フェノール成分(I)以外の他のフェノール成分に由来する構造をさらに含んでいてもよい。他のフェノール成分によって、ゴム混練時の粘度を低減させゴム配合物の均一混合性を向上させる効果や、加硫物の硬さ低減抑制または硬さ付与効果を高めることができる。
他のフェノール成分としては、例えばフェノール、オルソクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、α−ナフトール、β−ナフトール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、オルソイソプロピルフェノール、オルソターシャリーブチルフェノール、パラターシャリーブチルフェノール、オルソセカンダリーブチルフェノール、パラセカンダリーブチルフェノール、オルソターシャリーアミルフェノール、パラノニルフェノール、パラクミルフェノール、2,6−ジセカンダリーブチルフェノール、2−セカンダリー−4−ターシャリーブチルフェノール、2,4ジターシャリーアミルフェノール、2,4−ジクミルフェノール等が挙げられる。またこのほか、タンニン類、リグニン、リグニン分解物等、フェノール成分(I)以外の植物由来フェノール類が挙げられる。これらはいずれか1種が単独で用いられてもよく2種以上が併用されてもよい。
他のフェノール成分としては、上記の中でも、硬さ低下抑制効果または硬さ付与効果が高い点で、フェノール、オルソクレゾール、メタクレゾール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、β−ナフトールが好ましい。
架橋成分としては、アルデヒド類、糖質類等が挙げられる。アルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、グリオキザール、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等が挙げられる。糖質類としては、例えばフルクトース、グルコース、マンノース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、マルトース、イソマルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、ラフィノース、デキストリン、オリゴ糖、フラクタン、フラクオリゴ糖、ショ糖、澱粉、化工澱粉、アミロース、アミロペクチン、廃棄糖蜜等が挙げられる。これらはいずれか1種が単独で用いられてもよく2種以上が併用されてもよい。
アルデヒド類とフェノール成分とのモル比(アルデヒド類/フェノール成分)は、0.05〜1.00が好ましく、0.10〜0.90がより好ましい。糖質類とフェノール成分との質量比(糖質類/フェノール成分)は、0.05〜1.00が好ましく、0.167〜0.333がより好ましい。アルデヒド類/フェノール成分のモル比または糖質類/フェノール成分の質量比が前記範囲の下限値以上であれば、加硫物の硬さ低減抑制または本品による硬さ付与効果を高めることができる。アルデヒド類/フェノール成分のモル比または糖質類/フェノール成分の質量比が前記範囲の上限値以下であれば、ゴム混練時の粘度を低減させゴム配合物の均一混合性を向上させる効果がより優れる。
(A)成分は、不飽和鎖式炭化水素基に由来して、不飽和結合(二重結合)を含む。
(A)成分の不飽和結合量は、1%以上が好ましく、2%以上がより好ましい。不飽和結合量が前記下限値以上であれば、硬さ低下抑制効果や硬さ付与効果がより優れる。(A)成分の不飽和結合量の上限は特に限定されないが、典型的には15%以下である。
不飽和結合量は、下式(1)で求められる。詳しくは、後述する実施例に記載のとおりである。
不飽和結合量=(I/I)×100 ・・・(1)
ここで、Iは、H−NMRスペクトルにおいてフェノール樹脂((A)成分または(B)成分)を構成する炭素原子に結合した水素原子に由来するピーク(0.2〜7.5ppmのピーク)の積算値合計を示し、Iは、H−NMRスペクトルにおいて前記不飽和鎖式炭化水素基の二重結合を構成する炭素原子に結合した水素原子に由来するピーク(4.5〜6.0ppmのピーク)の積算値合計を示す。
(A)成分中の前記植物由来フェノール成分に由来する構造の含有率(以下、「植物由来フェノール含有率」ともいう。)は、特に限定されず、例えば0〜99%の範囲内で適宜選定できる。
植物由来フェノール含有率が高いほど、石油由来原料の使用量を低減でき、資源枯渇や地球温暖化の抑制の観点から有用である。また、ゴム軟化剤が(A)成分とともにオイルを含む場合、植物由来フェノール含有率が高いほど、(A)成分とオイルとの相溶性が優れる。これらの観点から、(A)成分中の植物由来フェノール含有率としては、35〜99%が好ましい。ただし、(A)成分は25℃において液状であるため、該含有率が低くてもオイルと充分に相溶する。
植物由来フェノール含有率は、フェノール樹脂((A)成分または(B)成分)の質量(100質量%)に対する、植物由来フェノール成分に由来する構造の質量の割合である。植物由来フェノール含有率は、後述する実施例に記載の方法により求められる。
(A)成分は、ノボラック型フェノール樹脂であってもよく、レゾール型フェノール樹脂であってもよい。ノボラック型フェノール樹脂は、フェノール成分と架橋成分との酸性触媒下での反応生成物である。レゾール型フェノール樹脂は、フェノール成分と架橋成分との塩基性触媒下での反応生成物である。硬さ低下抑制効果や硬さ付与効果が高い点では、ノボラック型フェノール樹脂が好ましい。
(A)成分は25℃において液状である。
(A)成分の25℃における粘度は、10万mPa・s以下が好ましく、8千mPa・s以下がより好ましい。(A)成分の粘度(25℃)が前記上限値以下であれば、本発明のゴム軟化剤の粘度(25℃)を前記上限値以下としやすい。
(A)成分の粘度(25℃)の下限は特に限定されず、例えば、1mPa・s以上であってよい。
(A)成分の粘度は、樹脂合成時の架橋成分/フェノール成分の比等によって調整できる。
(A)成分は、公知の製造方法により製造したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
(A)成分は、少なくともフェノール成分(I)を含むフェノール成分と架橋成分とを、酸性触媒下または塩基性触媒下で反応させることにより製造できる。
フェノール成分と架橋成分とを反応させる際の反応温度は、例えば40〜150℃であってよい。反応時間は、反応温度によっても異なるが、例えば1〜12時間であってよい。
酸性触媒としては、例えば、鉱酸類(塩酸、硫酸等)、有機酸類(パラトルエンスルホン酸、シュウ酸等)等が挙げられる。これらはいずれか1種が単独で用いられてもよく2種以上が併用されてもよい。
酸性触媒の使用量は、例えば、フェノール成分の質量(固形分)を100質量部としたときに、0.2〜20.0質量部であってよい。
塩基性触媒としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等)、アルカリ土類金属の水酸化物(水酸化カルシウム、水酸化バリウム等)、水酸化アンモニウム、アミン類(ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン等)等が挙げられる。これらはいずれか1種が単独で用いられてもよく2種以上が併用されてもよい。
塩基性触媒の使用量は、例えば、フェノール成分の質量(固形分)を100質量部としたときに、0.2〜20.0質量部であってよい。
(A)成分の製造において、フェノール成分と架橋成分との反応は、得られるフェノール樹脂が25℃において液状となるように行われる。
25℃において液状のノボラック型フェノール樹脂は、例えば、架橋成分/フェノール成分のモル比を小さくすること、フェノール成分(I)およびそれ以外のフェノール成分として結晶性の低いフェノール類を使用し、かつそれら結晶性の低いフェノール類の配合比を高くすること等により得ることができる。
<(B)成分>
(B)成分は、フェノール成分(I)に由来する構造を含み、単独では25℃において固形であり、本発明のゴム軟化剤中では溶解しているフェノール樹脂である。
(B)成分単独では25℃において固形であるため、本発明のゴム軟化剤が(B)成分を含む場合は、通常、(B)成分と共にオイルを含み、このオイルに(B)成分が溶解した状態となっている。
(B)成分は、フェノール成分(I)以外の他のフェノール成分に由来する構造をさらに含んでいてもよい。他のフェノール成分によって、ゴム混練時の粘度を低減させゴム配合物の均一混合性を向上させる効果や、加硫物の硬さ低減抑制または硬さ付与効果を高めることができる。
(B)成分におけるフェノール成分(I)、他のフェノール成分、架橋成分はそれぞれ、前記と同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
(B)成分の不飽和結合量は、(A)成分と同様に、1%以上が好ましく、2%以上がより好ましい。不飽和結合量が前記下限値以上であれば、硬さ低下抑制効果や硬さ付与効果がより優れる。(A)成分の不飽和結合量の上限は特に限定されないが、典型的には15%以下である。
(B)成分におけるフェノール成分(I)は、オイルとの相溶性の観点から、前記植物由来フェノール成分を含むことが好ましい。前記植物由来フェノール成分は長鎖炭化水素基を有しており、長鎖炭化水素基はオイルとの親和性に優れる。
(B)成分中の植物由来フェノール含有率は、35質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、45質量%以上がさらに好ましい。植物由来フェノール含有率が前記下限値以上であれば、(B)成分とオイルとの相溶性が優れる。該含有率の上限は特に限定されないが、典型的には99質量%以下である。
(B)成分は、ノボラック型フェノール樹脂であってもよく、レゾール型フェノール樹脂であってもよい。硬さ低下抑制効果や硬さ付与効果が高い点では、ノボラック型フェノール樹脂が好ましい。
(B)成分は、公知の製造方法により製造したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
(B)成分は、(A)成分と同様に、少なくともフェノール成分(I)を含むフェノール成分と架橋成分とを、酸性触媒下または塩基性触媒下で反応させることにより製造できる。ただし、(B)成分の製造において、フェノール成分と架橋成分との反応は、得られるフェノール樹脂が25℃において固形となるように行われる。
<オイル>
オイルとしては、従来、ゴム軟化剤として公知のものを使用でき、例えば植物油、石油系オイル等が挙げられる。植物油としては、例えばなたね油、コーン油、ひまわり油、大豆油、べに花油、亜麻仁油、パーム油、米油、ヤシ油、綿実油等が挙げられる。石油系オイルとしては、例えばパラフィン系オイル、ナフテン系オイル、アロマ系オイル等が挙げられる。これらはいずれか1種が単独で用いられてもよく2種以上が併用されてもよい。
上記の中でも、資源枯渇、地球温暖化を抑制できる点で、植物油が好ましく、工業的に使用しうるに十分な生産量がある点で、なたね油、コーン油、ひまわり油がより好ましい。
<各成分の含有量>
本発明のゴム軟化剤において、(A)成分および(B)成分の合計の含有量は、ゴム軟化剤の総質量に対し、15質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。該合計の含有量が前記下限値以上であれば、通常のゴム軟化剤の配合量でゴム軟化剤に配合されたときに、硬さ低下抑制効果や硬さ付与効果が発揮されやすい。
オイルの含有量は、ゴム軟化剤の粘度が前記上限値以下となればよく、特に限定されないが、(A)成分および(B)成分の合計100質量部に対し、0〜1000質量部が好ましく、0〜500質量部がより好ましい。オイルの含有量が前記上限値以下であれば、硬さ低下抑制効果や硬さ付与効果がより優れる。
<植物由来率>
本発明のゴム軟化剤の植物由来率は、特に限定されないが、5〜100質量%が好ましく、10〜99質量%がより好ましい。植物由来率が前記下限値以上であれば、資源枯渇、地球温暖化をより抑制できる。植物由来率が前記上限値以下であれば、硬さ低下抑制効果や硬さ付与効果がより優れる。
植物由来率は、ゴム軟化剤の総質量に対する、ゴム軟化剤中の植物由来フェノール成分に由来する構造と植物油との合計質量の割合である。詳しくは、後述する実施例に記載の方法により求められる。
<好ましい態様>
本発明の好ましい態様として、以下の(1)〜(2)が挙げられる。
(1)(A)成分を含み、(B)成分を含まないゴム軟化剤。
(2)(B)成分およびオイルを含み、(A)成分を含まないゴム軟化剤。
前記(1)の態様のゴム軟化剤は、オイルをさらに含んでもよい。
前記(1)の態様において、(A)成分の含有量は、ゴム軟化剤の総質量に対して、5質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、30質量%以上が特に好ましい。該含有量の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。
前記(1)の態様において、オイルの含有量は、(A)成分100質量部に対し、0〜1000質量部が好ましく、0〜500質量部がより好ましく、0〜300質量部がさらに好ましく、0〜200質量部が特に好ましい。
前記(2)の態様において、(B)成分の含有量は、ゴム軟化剤の総質量に対して、5〜99質量%が好ましく、15〜98質量%がより好ましく、20〜95質量%がさらに好ましく、30〜90質量%が特に好ましい。
前記(2)の態様において、オイルの含有量は、(B)成分100質量部に対し、1〜1000質量部が好ましく、2〜500質量部がより好ましく、5〜300質量部がさらに好ましく、10〜200質量部が特に好ましい。
本発明のゴム軟化剤にあっては、(A)成分および(B)成分のいずれか一方または両方を含み、25℃における粘度が10万mPa・s以下であるため、ゴム組成物を製造する際の混練工程において、混練時の粘度を低下させ、異種のゴムの均一分散化やその他の配合物の均一混合を容易にすることができる。また、ゴム軟化剤として、従来用いられていた植物油または石油系オイルを用いる場合に比べて、得られるゴム組成物を加硫させた加硫物の硬さ(弾性率)が高く、さらには、ゴム軟化剤を含まない場合よりも加硫物の硬さを高めることも可能である。また、この加硫物は、硬さの他、引張特性(モジュラス)、tanδ等の特性も良好である。
かかる効果が得られる理由としては、二重結合を含む鎖式炭化水素基を有することで、加硫時に、フェノール樹脂の硬化反応に加えて、(A)成分または(B)成分が有する二重結合の間や、ゴムが二重結合を有する場合にはその二重結合との間で加硫が起こることが考えられる。
〔ゴム組成物〕
本発明のゴム組成物は、ゴムと、前述の本発明のゴム軟化剤とを含む。
本発明のゴム組成物は、加硫剤をさらに含むことができる。
本発明のゴム組成物は、フェノール樹脂硬化剤をさらに含むことができる。
本発明のゴム組成物は、ゴム補強用フェノール樹脂をさらに含むことができる。
本発明のゴム組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、ゴム、本発明のゴム軟化剤、ゴム補強用フェノール樹脂、加硫剤およびフェノール樹脂硬化剤以外の他の成分をさらに含むことができる。
本発明のゴム組成物は、未加硫のものである。
ゴムとしては、例えばジエン系ゴム、非ジエン系ゴム等が挙げられる。ジエン系ゴムとしては、例えば天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、クロロプレンゴム等が挙げられる。非ジエン系ゴムとしては、例えばブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エチレン・プロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム等が挙げられる。これらはいずれか1種が単独で用いられてもよく2種以上が併用されてもよい。
ゴムとしては、ジエン系ゴムが好ましい。ゴムがジエン系ゴムを含むことで、加硫の際、本発明のゴム軟化剤の二重結合とジエン系ゴムの二重結合との間で加硫が起こり、硬さ低下抑制効果や硬さ付与効果がより優れたものとなる。
ジエン系ゴムとともに非ジエン系ゴムを含んでいてもよい。
加硫剤は、ゴム組成物を加硫させるために用いられる。
加硫剤としては、例えば硫黄、4,4’−ジチオジモルホリン、p−キノンジオキシム、安息香酸アンモニウム、m−フェニレンジマレイミド等が挙げられる。これらはいずれか1種が単独で用いられてもよく2種以上が併用されてもよい。
フェノール樹脂硬化剤は、ゴム組成物中のフェノール樹脂(本発明のゴム軟化剤に含まれる(A)成分または(B)成分、ゴム補強用フェノール樹脂等)を硬化させるために用いられる。フェノール樹脂が硬化することで、硬さ低下抑制効果や硬さ付与効果がより優れたものとなる。
フェノール樹脂硬化剤としては、例えばヘキサメチレンテトラミン、ヘキサメトキシメチロールメラミン(HMMM)の部分縮合物、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテル(PMMM)の部分縮合物、レゾール型フェノール樹脂等が挙げられる。これらはいずれか1種が単独で用いられてもよく2種以上が併用されてもよい。
上記の中でも、硬さ低下抑制効果や硬さ付与効果がより優れる点で、ヘキサメチレンテトラミンが好ましい。
ゴム補強用フェノール樹脂は、加硫物に硬さを付与するために用いられる。
ゴム補強用フェノール樹脂は、典型的には、25℃において固形のフェノール樹脂であり、また、ゴム組成物中において固形の状態で、つまり溶解せずに、存在している。ゴム組成物がゴム補強用フェノール樹脂を含むことで、硬さ低下抑制効果や硬さ付与効果がより優れたものとなる。
ゴム補強用フェノール樹脂としては、例えば、フェノール−ホルムアルデヒドノボラック型フェノール樹脂、カシュー変性ノボラック型フェノール樹脂、オイル変性ノボラック型フェノール樹脂等のノボラック型フェノール樹脂が挙げられる。これらはいずれか1種が単独で用いられてもよく2種以上が併用されてもよい。
カシュー変性ノボラック型フェノール樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂をカシューナッツシェルリキッドで変性したものである。カシュー変性ノボラック型フェノール樹脂中の植物由来フェノール含有率(カシューナッツシェルリキッドに由来する構造の含有率)は、典型的には、35%未満である。
他の成分としては、ゴム組成物に通常用いられる添加剤を適宜用いることができ、例えば補強用フィラー(カーボンブラック、シリカ等)、本発明のゴム軟化剤以外の他のゴム軟化剤、ゴム補強用フェノール樹脂以外の他のゴム補強用樹脂、有機ゴム薬品(老化防止剤、紫外線防止剤、ステアリン酸等)、酸化亜鉛、加硫促進剤等が挙げられる。
他のゴム軟化剤としては、例えばオイルが挙げられる。オイルとしては、前記と同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
<各成分の含有量>
本発明のゴム組成物中、本発明のゴム軟化剤の含有量は、(A)成分および(B)成分の合計の含有量として、ゴム100質量部に対して0.3質量部以上が好ましく、0.8質量部以上がより好ましい。本発明のゴム軟化剤の含有量が前記下限値以上であれば、硬さ低下抑制効果や硬さ付与効果が充分に発揮される。また、ゴム混練時の粘度を低減させ、配合成分の均一混合性を向上させることができる。
(A)成分および(B)成分の合計の含有量の上限は、上記効果の点では特に限定されないが、典型的には、ゴム100質量部に対して50質量部以下である。
ゴム組成物中、本発明のゴム軟化剤/他のゴム軟化剤の質量比は、100/0〜5/95が好ましく、100/0〜80/20がより好ましい。本発明のゴム軟化剤の割合が多いほど、硬さ低下抑制効果や硬さ付与効果が優れる。
加硫剤の含有量は、例えば、ゴム100質量部に対して0.1〜10.0質量部であってよい。
フェノール樹脂硬化剤の含有量は、例えばゴム組成物中の全てのフェノール樹脂((A)成分、(B)成分、ゴム補強用フェノール樹脂等)の総質量を100質量部としたときに、0.8〜70質量部が好ましい。フェノール樹脂硬化剤の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、硬さ低下抑制効果や硬さ付与効果がより優れる。フェノール樹脂硬化剤の含有量が増えるに従い、硬さ付与効果は向上するものの、70質量部を超えると、含有量の増量に見合った硬さ付与効果の増加はあまり見られなくなる。
ゴム補強用フェノール樹脂の含有量は、ゴム100質量部に対して0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましい。ゴム補強用フェノール樹脂の含有量が前記下限値以上であれば、加硫物の硬さがより優れる。ゴム補強用フェノール樹脂の含有量の上限は上記効果の点では特に限定されないが、典型的には、ゴム100質量部に対して70質量部以下である。
<ゴム組成物の製造方法>
本発明のゴム組成物は、公知の製造方法により製造できる。例えば、従来用いられていた植物油または石油系オイルからなるゴム軟化剤の少なくとも一部を本発明のゴム軟化剤に置き換えればよい。
ゴム組成物の製造方法の一例として、ゴム混練装置にて1種または複数種のゴム、本発明のゴム硬化剤、ゴム補強用樹脂(ゴム補強用フェノール樹脂等)、補強用フィラー、有機ゴム薬品類、酸化亜鉛等を配合、均一化する一次混練工程、およびそこで得られた配合物に加硫剤、加硫促進剤、フェノール樹脂硬化剤等を配合、均一化する二次混練工程とを含む製造方法が挙げられる。
ゴム混練装置としては、例えばバンバリーミキサー、加圧ニーダー、2軸ロール等が挙げられる。
ここでは、加硫剤、加硫促進剤、フェノール樹脂硬化剤以外の原料を先に混練する例を示したが、全ての原料を一括して混練してもよい。
ゴム組成物が加硫剤、加硫促進剤、フェノール樹脂硬化剤等を含まない場合には、一次混練工程のみを行ってもよい。
本発明のゴム組成物にあっては、本発明のゴム軟化剤を含むため、ゴム組成物を製造する際の混練工程において、混練時の粘度が低く、異種のゴムの均一分散化やその他の配合物の均一混合を容易にできる。また、本発明のゴム軟化剤の代わりに、従来ゴム軟化剤として用いられていた植物油または石油系オイルを含む場合に比べて、ゴム組成物を加硫させた加硫物の硬さ(弾性率)が高く、さらには、ゴム軟化剤を含まない場合よりも加硫物の硬さを高くすることも可能である。また、この加硫物は、硬さの他、引張特性(モジュラス)、tanδ等の特性も良好である。
〔加硫物〕
本発明の加硫物は、前述の本発明のゴム組成物を加硫したものである。
本発明の加硫物は、例えば、本発明のゴム組成物を金型中やオートクレーブ中で加圧・加温する等、通常のゴム加硫工程を施すことにより製造できる。
本発明の加硫物の用途は特に限定されない。具体例としては、タイヤ、搬送ベルト、伝動ベルト、ホース、ゴムクローラ、ゴムパッド、空気バネ、防振ゴム、電線被覆、靴、オイルシール、ガスケット、工業用ロール等が挙げられる。
以下に、本発明を実施例によってさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
以下の各例において「%」は、特に限定のない場合は「質量%」を示す。
以下の各例で用いた評価方法を以下に示す。
〔評価方法〕
(フェノール樹脂の植物由来フェノール含有率)
フェノール樹脂の植物由来フェノール含有率は、フェノール樹脂製造時に配合された植物由来フェノール成分の質量と、生成されたフェノール樹脂の収量(質量)から、下記式に基づき算出した。
フェノール樹脂の植物由来フェノール含有率(%)=100×(フェノール樹脂製造時に配合された植物由来フェノール成分の質量)/(生成されたフェノール樹脂の質量)
(ゴム軟化剤の植物由来率)
ゴム軟化剤の植物由来率は、ゴム軟化剤に配合されたフェノール樹脂の植物由来フェノール含有率およびその質量と、ゴム軟化剤に配合された植物油の質量から、下記式に基づき算出した。
ゴム軟化剤の植物由来率(質量%)=100×{0.01×(ゴム軟化剤に配合されたフェノール樹脂の植物由来フェノール含有率)×(ゴム軟化剤に配合されたフェノール樹脂の質量)+(ゴム軟化剤に配合された植物油の質量)}/{(ゴム軟化剤に配合されたフェノール樹脂の質量)+(ゴム軟化剤に配合された植物油の質量)}
(フェノール樹脂またはゴム軟化剤の粘度)
東機産業社製TVE−25形粘度計のL型またはH型を用いて、25℃における粘度を測定した。粘度が低い程、計量、仕込み等の取扱い性、作業性に優れる。
(フェノール樹脂の軟化点)
JIS K 2207の6.4.に準じ、メイテック社製環球式自動軟化点試験器ASP−MGK2型を用いて、フェノール樹脂の軟化点を測定した。
(フェノール樹脂の不飽和結合量および末端二重結合量/鎖中二重結合量の比)
日本電子社製LA−400型核磁気共鳴装置を用い、NMRサンプル管中で試料0.155gを重水素化テトラヒドロフラン0.55gに溶解させて、25℃にてH−NMRスペクトルを測定した。
測定結果よりフェノール樹脂の不飽和結合量を下記式に従い算出した。下記式中の[(H−NMRスペクトルの、炭素原子に結合した水素原子に由来するピークの積算値合計)−(H−NMRスペクトルの、重水素化テトラヒドロフランの重水素に由来するピークの積算値)×2]は、フェノール樹脂を構成する炭素原子に結合した水素原子に由来するピークの積算値合計に相当する。
不飽和結合量(%)=100×[(H−NMRスペクトルの、鎖式炭化水素基にて二重結合を構成する炭素原子に結合した水素原子に由来するピーク(4.5〜6.0ppmのピーク)の積算値合計)]/[(H−NMRスペクトルの、炭素原子に結合した水素原子に由来するピーク(0.2〜7.5ppmのピーク)の積算値合計)−(H−NMRスペクトルの、重水素化テトラヒドロフランの重水素に由来するピーク(3.7ppmのピーク)の積算値)×2]
また、測定結果より、フェノール樹脂の不飽和鎖式炭化水素基における末端二重結合量/鎖中二重結合量の比を下記式に従い算出した。
末端二重結合量/鎖中二重結合量の比=(H−NMRスペクトルの、鎖式炭化水素基の末端の不飽和結合を構成する炭素原子に結合した水素原子に由来するピーク(4.5ppm以上5.2ppm未満のピーク及び5.7ppm超6.0ppm以下のピーク)の積算値合計)/(H−NMRスペクトルの、鎖式炭化水素基の末端以外の部分の不飽和結合を構成する炭素原子に結合した水素原子に由来するピーク(5.2〜5.7ppmのピーク)の積算値合計)
(ゴム組成物のキュラスト最小トルク)
未加硫のゴム組成物5.0gについて、JSRトレーディング社製キュラストメーター7を用いて、振幅角度±1度(全振幅角度2度)、ダイス温度120℃にて20分間トルクを測定し、その最小トルクをキュラスト最小トルクとした。キュラスト最小トルクの値が小さい程、ゴム組成物混練時のゴム粘度が低く、均一混合性に優れる。
(モジュラス25、モジュラス100)
加硫物について、JIS K 6251に準じ、東洋精機製ストログラフV10−Cを使用して、ダンベル3号とした試験片の引張強度を測定し、これよりモジュラス25、モジュラス100を測定した。
加硫物のモジュラスが高い程、加硫物の引張応力、硬さが高い。
(貯蔵弾性率、tanδ)
厚さ2mm、幅10mm、長さ50mmとした加硫物を用い、日立ハイテクサイエンス社製DMA7100にて、ずりモード、周波数10Hz、測定温度範囲20〜110℃、昇温速度2℃/分にて測定を行い、30℃における貯蔵弾性率G’およびtanδを測定した。
貯蔵弾性率の値が高い程、加硫物の硬さが高い。tanδの値が小さい程、加硫物の発熱性が低く、例えばタイヤに用いた際、低燃費化に寄与する。
(ゴム軟化剤1)
群栄化学工業社製のXPL−4437E(オルソアリルフェノール・ホルムアルデヒド液状ノボラック型フェノール樹脂、樹脂粘度:9,880mPa・s、植物由来フェノール含有率:0%)をゴム軟化剤1とした。
(合成例1)
精製カシューナッツシェルリキッドとして、GOLDEN CASHEW PRODUCTS PVT社製、商品名:CARDANOLを用意した(以下同様)。この精製カシューナッツシェルリキッドは、カルダノールの含有量が90.44%、カルドールの含有量が4.02%、メチルカルドールの含有量が1.04%で、それらの合計(有効成分量)が95.5%であった。
攪拌機、温度計、コンデンサーを付した1L四つ口フラスコに、精製カシューナッツシェルリキッド450.0g、50%ホルマリン27.0g、10%硫酸水溶液4.50gを投入し、還流下2時間反応させた。ここに10%硫酸水溶液4.50gを添加後、さらに還流下2時間反応後、常圧蒸留を施すことにより内温を200℃まで昇温させた。ついで200℃を保持したまま、−0.0973MPaにて減圧蒸留を3.5時間施し、ここへ水酸化カルシウム0.68gを添加後、さらに減圧蒸留を0.5時間施した。これを40℃まで冷却し、液状のノボラック型フェノール樹脂443.7gを得た。この樹脂の植物由来フェノール含有率は98.6%、樹脂粘度は877mPa・sであった。
(ゴム軟化剤2)
合成例1で得た液状のノボラック型フェノール樹脂をゴム軟化剤2とした。
(合成例2)
攪拌機、温度計、コンデンサーを付した1L四つ口フラスコに、精製カシューナッツシェルリキッド270.0g、オルソクレゾール65.0g、50%ホルマリン27.0g、10%硫酸水溶液3.35gを投入し、還流下2時間反応させた。ここに10%硫酸水溶液3.35gを添加後、さらに還流下2時間反応後、常圧蒸留を施すことにより内温を200℃まで昇温させた。ついで200℃を保持したまま、−0.0973MPaにて減圧蒸留を3.5時間施し、ここへ水酸化カルシウム0.51gを添加後、さらに減圧蒸留を0.5時間施した。これを40℃まで冷却し、液状のノボラック型フェノール樹脂299.5gを得た。この樹脂の植物由来フェノール含有率は90.2%、樹脂粘度は2,657mPa・sであった。
(ゴム軟化剤3)
合成例2で得た液状のノボラック型フェノール樹脂をゴム軟化剤3とした。
(合成例3)
攪拌機、温度計、コンデンサーを付した1L四つ口フラスコに、精製カシューナッツシェルリキッド360.0g、メタクレゾール86.7g、50%ホルマリン24.0g、10%硫酸水溶液4.47gを投入し、還流下2時間反応させた。ここに10%硫酸水溶液4.47gを添加後、さらに還流下2時間反応後、常圧蒸留を施すことにより内温を200℃まで昇温させた。ついで200℃を保持したまま、−0.0973MPaにて減圧蒸留を3.5時間施し、ここへ水酸化カルシウム0.67gを添加後、さらに減圧蒸留を0.5時間施した。これを40℃まで冷却し、液状のノボラック型フェノール樹脂402.9gを得た。この樹脂の植物由来フェノール含有率は89.4%、樹脂粘度は544mPa・sであった。
(ゴム軟化剤4)
合成例3で得た液状のノボラック型フェノール樹脂をゴム軟化剤4とした。
(合成例4)
攪拌機、温度計、コンデンサーを付した1L四つ口フラスコに、精製カシューナッツシェルリキッド600.0g、フェノール47.1g、50%ホルマリン30.0g、10%硫酸水溶液6.47gを投入し、還流下2時間反応させた。ここに10%硫酸水溶液6.47gを添加後、さらに還流下2時間反応後、常圧蒸留を施すことにより内温を200℃まで昇温させた。ついで200℃を保持したまま、−0.0973MPaにて減圧蒸留を3.5時間施し、ここへ水酸化カルシウム0.98gを添加後、さらに減圧蒸留を0.5時間施した。これを40℃まで冷却し、液状のノボラック型フェノール樹脂610.4gを得た。この樹脂の植物由来フェノール含有率は98.3%、樹脂粘度は571mPa・sであった。
(ゴム軟化剤5)
合成例4で得た液状のノボラック型フェノール樹脂をゴム軟化剤5とした。
(ゴム軟化剤6)
合成例1で得た液状のノボラック型フェノール樹脂100.0gになたね油40.0gを添加し、室温にて均一混合することにより液状組成物140.0gを得た。この液状組成物の植物由来率は98.6%、組成物粘度は427mPa・sであった。この液状組成物をゴム軟化剤6とした。
(合成例5)
攪拌機、温度計、コンデンサーを付した1L四つ口フラスコに、精製カシューナッツシェルリキッド315.0g、フェノール230.5g、50%ホルマリン84.0g、10%硫酸水溶液5.46gを投入し、還流下2時間反応させた。ここに10%硫酸水溶液5.46gを添加後、さらに還流下2時間反応後、常圧蒸留を施すことにより内温を200℃まで昇温させた。ついで200℃を保持したまま、−0.0973MPaにて減圧蒸留を3.5時間施し、ここへ水酸化カルシウム0.98gを添加後、さらに減圧蒸留を0.5時間施した。これをバットに取り出し、固形状のノボラック型フェノール樹脂462.0gを得た。この樹脂の植物由来フェノール含有率は68.2%、樹脂軟化点は47℃であった。
(ゴム軟化剤7)
合成例5で得た固形のノボラック型フェノール樹脂100.0gになたね油124.0gを添加し、80℃にて均一混合することにより液状組成物224.0gを得た。この液状組成物の植物由来率は85.2%、組成物粘度は2,524mPa・sであった。この液状組成物をゴム軟化剤7とした。
(ゴム軟化剤8)
合成例5で得た固形のノボラック型フェノール樹脂100.0gにコーン油124.0gを添加し、80℃にて均一混合することにより液状組成物224.0gを得た。この液状組成物の植物由来率は85.2%、組成物粘度は2,530mPa・sであった。この液状組成物をゴム軟化剤8とした。
(ゴム軟化剤9)
合成例5で得た固形のノボラック型フェノール樹脂100.0gにひまわり油124.0gを添加し、80℃にて均一混合することにより液状組成物224.0gを得た。この液状組成物の植物由来率は85.2%、組成物粘度は2,534mPa・sであった。この液状組成物をゴム軟化剤9とした。
(ゴム軟化剤10)
合成例5で得た固形のノボラック型フェノール樹脂100.0gにプロセスオイル1 124.0gを添加し、80℃にて均一混合することにより液状組成物224.0gを得た。この液状組成物の植物由来率は29.8%、組成物粘度は3,508mPa・sであった。この液状組成物をゴム軟化剤10とした。
(合成例6)
攪拌機、温度計、コンデンサーを付した1L四つ口フラスコに、精製カシューナッツシェルリキッド270.0g、フェノール197.6g、50%ホルマリン126.0g、10%硫酸水溶液4.68gを投入し、還流下2時間反応させた。ここに10%硫酸水溶液4.68gを添加後、さらに還流下2時間反応後、常圧蒸留を施すことにより内温を200℃まで昇温させた。ついで200℃を保持したまま、−0.0973MPaにて減圧蒸留を3.5時間施し、ここへ水酸化カルシウム0.71gを添加後、さらに減圧蒸留を0.5時間施した。これをバットに取り出し、固形のノボラック型フェノール樹脂458.4gを得た。この樹脂の植物由来フェノール含有率は58.9%、樹脂軟化点は50℃であった。
(ゴム軟化剤11)
合成例6で得た固形のノボラック型フェノール樹脂100.0gになたね油300.0gを添加し、80℃にて均一混合することにより液状組成物400.0gを得た。この液状組成物の植物由来率は97.8%、組成物粘度は852mPa・sであった。この液状組成物をゴム軟化剤11とした。
(合成例7)
攪拌機、温度計、コンデンサーを付した1L四つ口フラスコに、精製カシューナッツシェルリキッド210.0g、フェノール263.5g、50%ホルマリン63.0g、10%硫酸水溶液4.73gを投入し、還流下2時間反応させた。ここに10%硫酸水溶液4.73gを添加後、さらに還流下2時間反応後、常圧蒸留を施すことにより内温を200℃まで昇温させた。ついで200℃を保持したまま、−0.0973MPaにて減圧蒸留を3.5時間施し、ここへ水酸化カルシウム0.72gを添加後、さらに減圧蒸留を0.5時間施した。これをバットに取り出し、固形のノボラック型フェノール樹脂345.5gを得た。この樹脂の植物由来フェノール含有率は60.8%、樹脂軟化点は46℃であった。
(ゴム軟化剤12)
合成例7で得た固形のノボラック型フェノール樹脂100.0gになたね油30.0gを添加し、80℃にて均一混合することにより液状組成物130.0gを得た。この液状組成物の植物由来率は69.8%、組成物粘度は98,500mPa・sであった。この液状組成物をゴム軟化剤12とした。
(ゴム軟化剤13)
合成例7で得た固形のノボラック型フェノール樹脂100.0gになたね油20.0gを添加し、80℃にて均一混合することにより液状組成物120.0gを得た。この液状組成物の植物由来率は67.3%、組成物粘度は測定上限である100,000mPa・sを超えていた。この液状組成物をゴム軟化剤13とした。
(合成例8)
攪拌機、温度計、コンデンサーを付した1L四つ口フラスコに、精製カシューナッツシェルリキッド51.0g、フェノール454.5g、50%ホルマリン63120.0g、10%硫酸水溶液5.06gを投入し、還流下2時間反応させた。ここに10%硫酸水溶液5.06gを添加後、さらに還流下2時間反応後、常圧蒸留を施すことにより内温を200℃まで昇温させた。ついで200℃を保持したまま、−0.0973MPaにて減圧蒸留を3.5時間施し、ここへ水酸化カルシウム0.76gを添加後、さらに減圧蒸留を0.5時間施した。これをバットに取り出し、固体状樹脂346.9gを得た。この樹脂の植物由来フェノール含有率は14.7%、樹脂軟化点は61℃であった。
(ゴム軟化剤14)
合成例8で得た固形のノボラック型フェノール樹脂100.0gになたね油124.0gを添加し、80℃にて均一混合を試みたが、この樹脂はなたね油に相溶せず、2層分離した。
(合成例9)
攪拌機、温度計、コンデンサーを付した1L四つ口フラスコに、精製カシューナッツシェルリキッド135.0g、フェノール428.2g、50%ホルマリン120.0g、10%硫酸水溶液5.63gを投入し、還流下2時間反応させた。ここに10%硫酸水溶液5.63gを添加後、さらに還流下2時間反応後、常圧蒸留を施すことにより内温を200℃まで昇温させた。ついで200℃を保持したまま、−0.0973MPaにて減圧蒸留を3.5時間施し、ここへ水酸化カルシウム1.52gを添加後、さらに減圧蒸留を0.5時間施した。これをバットに取り出し、固形のノボラック型フェノール樹脂409.8gを得た。この樹脂の植物由来フェノール含有率は32.9%、樹脂軟化点は54℃であった。
(ゴム軟化剤15)
合成例9で得た固形のノボラック型フェノール樹脂100.0gになたね油40.0gを添加し、80℃にて均一混合を試みたが、この樹脂はなたね油に相溶せず、2層分離した。
(合成例10)
攪拌機、温度計、コンデンサーを付した1L四つ口フラスコに、精製カシューナッツシェルリキッド180.0g、フェノール319.9g、50%ホルマリン72.0g、10%硫酸水溶液5.00gを投入し、還流下2時間反応させた。ここに10%硫酸水溶液5.00gを添加後、さらに還流下2時間反応後、常圧蒸留を施すことにより内温を200℃まで昇温させた。ついで200℃を保持したまま、−0.0973MPaにて減圧蒸留を3.5時間施し、ここへ水酸化カルシウム0.76gを添加後、さらに減圧蒸留を0.5時間施した。これをバットに取り出し、固形のノボラック型フェノール樹脂390.5gを得た。この樹脂の植物由来フェノール含有率は46.1%、樹脂軟化点は53℃であった。
(ゴム軟化剤16)
合成例10で得た固形のノボラック型フェノール樹脂100.0gになたね油124.0gを添加し、80℃にて均一混合することにより液状組成物224.0gを得た。この液状組成物の植物由来率は75.9%、組成物粘度は3,092mPa・sであった。この液状組成物をゴム軟化剤16とした。
(ゴム軟化剤17)
攪拌機、温度計、コンデンサーを付した1L四つ口フラスコに、群栄化学工業製レゾール型パラターシャリーブチルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂PS−2601の200.0g、プロセスオイル2(出光興産社製 ダイアナプロセスPW−32)の248.0gを80℃にて3時間均一混合して液状組成物を得た。この液状組成物の植物由来率は0%、組成物粘度は12,850mPa・sであった。この液状組成物をゴム軟化剤17とした。
(ゴム軟化剤18)
攪拌機、温度計、コンデンサーを付した1L四つ口フラスコに、プロセスオイル1(出光興産社製 ダイアナプロセスNH−70S)の30.0g、なたね油の270.0gを40℃にて1時間均一混合して液状組成物を得た。この液状組成物の植物由来率は90.0%、組成物粘度は103mPa ・s以上であった。この液状組成物をゴム軟化剤18とした。
表1に、ゴム軟化剤1〜5それぞれにおける樹脂特性(25℃における状態、植物由来フェノール含有率、樹脂粘度、不飽和結合量、末端二重結合量/鎖中二重結合量の比)を示した。
表2〜4に、ゴム軟化剤6〜18のそれぞれにおける樹脂特性、オイルの種類、液状組成物の特性(植物由来率、粘度)を示した。
なお、ゴム軟化剤1〜12、16が本発明のゴム軟化剤、ゴム軟化剤13〜15、17〜18が比較品である。
ゴム軟化剤14〜15については、固形のノボラック型フェノール樹脂の植物由来フェノール含有率が低く、なたね油と相溶しなかったため、植物由来率および粘度は求めなかった。
Figure 2018165303
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(実施例1〜31、比較例1〜22)
<未加硫ゴム組成物の製造と評価>
表5〜10に示す配合において、硫黄、加硫促進剤、フェノール樹脂硬化剤以外の成分をロール温度140℃とした2本ロールにて7分間混練し、ゴム混練物を得た。ついでこのゴム混練物に硫黄、加硫促進剤、フェノール樹脂硬化剤を添加し、ロール温度95℃とした2本ロールにて5分間混練し、シート状の未加硫ゴム組成物を得た。
この未加硫ゴム組成物について、キュラスト最小トルクを測定した。結果を表5〜10に示す。
<加硫物の製造と評価>
上記未加硫ゴム組成物を200mm×200mm、厚さ2mmの金型に充填し、150℃にて40分間加熱することにより、加硫物を得た。
この加硫物について、モジュラス25、モジュラス100、貯蔵弾性率、tanδを測定した。結果を表5〜10に示す。
貯蔵弾性率の欄の「E+07」は「×10」を意味する。例えば「3.49E+07」は「3.49×10」である。
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使用した原料を以下に示す。
天然ゴム(NR):RSS♯3。
スチレンブタジエンゴム(SBR):日本ゼオン社製 Nipol1502。
カーボンブラック:キャボットジャパン社製 N330。
紫外線防止剤:大内新興化学社製 サンノック。
老化防止剤:大内新興化学社製 ノクラック6C。
加硫助剤1:日油社製 ステアリン酸さくら。
加硫助剤2:堺化学社製 酸化亜鉛。
ゴム補強用フェノール樹脂:群栄化学工業社製 カシュー変性ノボラック型フェノール樹脂PSM−9450、軟化点100℃、植物由来フェノール成分含有率30質量%。
プロセスオイル1:出光興産社製 ダイアナプロセスNH−70S。
プロセスオイル2:出光興産社製 ダイアナプロセスPW−32。
加硫剤:鶴見化学工業社製 硫黄。
加硫促進剤:大内新興化学社製 ノクセラーMSA−G。
フェノール樹脂硬化剤1:三菱ガス化学社製 ヘキサミン(ヘキサメチレンテトラミン)。
フェノール樹脂硬化剤2:CYTEC INDUSTRIES INC.社製 Cyrez 964(ヘキサメトキシメチロールメラミン(HMMM)の部分縮合物)。
フェノール樹脂硬化剤3:田岡化学工業社製 スミカノール507A(ヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテル(PMMM)の部分縮合物)。
フェノール樹脂硬化剤4:群栄化学工業社製 PS−1122B(ジメチレンエーテル型固形レゾール)。
なたね油:日清オイリオグループ製 食用なたね油。
コーン油:理研農産加工製 食用とうもろこし油。
ひまわり油:昭和産業製 食用ひまわり油。
(考察)
ゴム軟化剤として従来用いられているプロセスオイルや植物油を単独で配合した比較例1〜2では、ゴム軟化剤を配合しなかった比較例3に比べて、キュラスト最小トルクの値は小さくなっており、ゴム組成物混練時の均一混合性向上が確認されるものの、モジュラス25、モジュラス100、貯蔵弾性率が低くなっていた。
これに対し、プロセスオイルや植物油の代わりに本発明のゴム軟化剤(ゴム軟化剤1〜12、16)を配合した実施例1〜13では、比較例3に比べてキュラスト最小トルクは低く、さらに比較例1〜2に比べて、貯蔵弾性率が高かった。特に、フェノール成分として植物由来フェノール成分を使用しているゴム軟化剤2〜12、16は、植物由来率が68.2〜98.6%と高く、資源枯渇、地球温暖化の課題を低減する効果を併せ持つ。
粘度が10万超のゴム軟化剤を用いた比較例4では、キュラスト最小トルクの値が比較例3よりも大きくなっていた。
フェノール樹脂がアルキルフェノール樹脂(不飽和鎖式炭化水素基を有しない)であるゴム軟化剤を用いた比較例5、フェノール樹脂を含まないゴム軟化剤を用いた比較例6はそれぞれ、比較例1よりもさらに貯蔵弾性率が低くなっていた。
実施例14〜20および比較例7〜14は、ゴム軟化剤の配合量を、ゴム100質量部に対して0.5〜16質量部の範囲で変更した例である。これらの結果から、本発明のゴム軟化剤を増量するに従い、キュラスト最小トルクの値が小さくなる(ゴム混練時の均一混合性向上効果が高くなる)ことが確認された。本発明のゴム軟化剤とプロセスオイルを併用した実施例21〜23においても同様の傾向が見られた。また、本発明のゴム軟化剤の配合量とプロセスオイルの配合量とが同じである場合、本発明のゴム軟化剤を用いた方が貯蔵弾性率が高くなることが確認された。
実施例24〜26および比較例15〜17より、フェノール樹脂硬化剤の種類を変更した場合でも、本発明のゴム軟化剤を用いた方が、従来のプロセスオイルを用いた場合よりも貯蔵弾性率が高くなることが確認された。
実施例1、実施例27〜30、および比較例1、比較例18〜21は、フェノール樹脂硬化剤であるヘキサメチレンテトラミンの配合量を、ゴム100質量部に対して0.14〜11.2質量部(ゴム組成物中のフェノール樹脂100質量部に対して1〜112質量部)の範囲で変更したものである。これらの結果から、フェノール樹脂硬化剤の配合量がほぼ同一である場合、本発明のゴム軟化剤を用いた方が、従来のプロセスオイルを用いた場合よりも貯蔵弾性率が高くなることが確認された。
実施例31および比較例22はそれぞれ、ゴム補強用フェノール樹脂を配合しなかった例である。ここでも本発明のゴム軟化剤を用いた方が、プロセスオイルを用いるよりもモジュラス、貯蔵弾性率が高くなることがわかる。

Claims (13)

  1. 下記(A)成分および下記(B)成分のいずれか一方または両方を含み、25℃における粘度が10万mPa・s以下であるゴム軟化剤。
    (A)成分:少なくとも1つの二重結合を含む鎖式炭化水素基を有するフェノール成分(I)に由来する構造を含み、25℃において液状であるフェノール樹脂。
    (B)成分:前記フェノール成分(I)に由来する構造を含み、単独では25℃において固形であり、前記ゴム軟化剤中では溶解しているフェノール樹脂。
  2. 前記(A)成分および前記(B)成分がそれぞれノボラック型フェノール樹脂である、請求項1に記載のゴム軟化剤。
  3. 前記(A)成分および前記(B)成分それぞれにおける下式(1)で求められる不飽和結合量が1%以上である、請求項1または2に記載のゴム軟化剤。
    不飽和結合量=(I/I)×100 ・・・(1)
    ここで、Iは、H−NMRスペクトルにおいて前記(A)成分または前記(B)成分を構成する炭素原子に結合した水素原子に由来するピークの積算値合計を示し、Iは、H−NMRスペクトルにおいて前記鎖式炭化水素基の二重結合を構成する炭素原子に結合した水素原子に由来するピークの積算値合計を示す。
  4. 前記フェノール成分(I)が、カシューナッツシェルリキッド、カルダノール、カードル、メチルカードル、アナカルド酸、ウルシオールおよびアリルフェノールからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のゴム軟化剤。
  5. オイルをさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のゴム軟化剤。
  6. 前記(A)成分および前記(B)成分のうち少なくとも前記(B)成分を含み、
    前記(B)成分における前記フェノール成分(I)が、カシューナッツシェルリキッド、カルダノール、カードル、メチルカードル、アナカルド酸およびウルシオールからなる群から選ばれる少なくとも1種の植物由来フェノール成分を含み、
    前記(B)成分中の前記植物由来フェノール成分に由来する構造の含有率が35質量%以上である、請求項5に記載のゴム軟化剤。
  7. 前記(A)成分および前記(B)成分の合計の含有量が、前記ゴム軟化剤の総質量に対して15質量%以上である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のゴム軟化剤。
  8. ゴムと、請求項1〜7のいずれか一項に記載のゴム軟化剤とを含むゴム組成物。
  9. 前記ゴムがジエン系ゴムである、請求項8に記載のゴム組成物。
  10. 加硫剤をさらに含む、請求項8または9に記載のゴム組成物。
  11. ゴム補強用フェノール樹脂をさらに含む、請求項8〜10のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  12. フェノール樹脂硬化剤をさらに含む、請求項8〜11のいずれか一項に記載のゴム組成物。
  13. 請求項8〜12のいずれか一項に記載のゴム組成物の加硫物。
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WO2020174857A1 (ja) * 2019-02-26 2020-09-03 横浜ゴム株式会社 マリンホース用ゴム組成物及びこれを用いたマリンホース

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