JP2018163223A - ノイズキャンセル装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】アクティブ・ノイズ・コントロールにおいてチャンネル間の干渉を低減させる。
【解決手段】第1スピーカ21から第1マイク11までの伝達特性を示す係数を各周波数に対応付けて記憶しており、係数は第1スピーカ21を含む複数のスピーカの各々から第1マイク11までの伝達特性のゲインを周波数毎に比較し、比較結果に基づいて、複数のスピーカの各々から第1マイク11までのゲインの合計に占める第1ゲインの割合が所定値より小さい場合、第1ゲインを減少させた値となるように定められており、エンジンの回転周波数に応じた係数を出力するテーブルTBLと、係数、エンジンの回転と同期した第1参照信号EN1及び第2参照信号EN2、第1マイク11から出力される出力信号に基づいて、エンジンこもり音を打ち消すためのキャンセル音を発生させる第1キャンセル信号CS1を生成する信号処理部Zと、を備える。
【選択図】図4
【解決手段】第1スピーカ21から第1マイク11までの伝達特性を示す係数を各周波数に対応付けて記憶しており、係数は第1スピーカ21を含む複数のスピーカの各々から第1マイク11までの伝達特性のゲインを周波数毎に比較し、比較結果に基づいて、複数のスピーカの各々から第1マイク11までのゲインの合計に占める第1ゲインの割合が所定値より小さい場合、第1ゲインを減少させた値となるように定められており、エンジンの回転周波数に応じた係数を出力するテーブルTBLと、係数、エンジンの回転と同期した第1参照信号EN1及び第2参照信号EN2、第1マイク11から出力される出力信号に基づいて、エンジンこもり音を打ち消すためのキャンセル音を発生させる第1キャンセル信号CS1を生成する信号処理部Zと、を備える。
【選択図】図4
Description
本発明は、エンジンの回転に同期したエンジンこもり音をキャンセルするキャンセル装置に関する。
車両の走行中に、エンジンの回転に同期した騒音が発生する。この騒音を空間上で打ち消すためキャンセル音をスピーカから放音するアクティブ・ノイズ・コントロール・システム(以下、ANCと称する)に関する技術が知られている(特許文献1参照)。
ところで、ANCでは、キャンセル音を用いて騒音を空間上で打ち消すために、マイクで集音した信号をエラー信号として適応フィルタにフィードバックしている。
しかしながら、複数のマイクと複数のスピーカを備えたANCでは、1つのマイクに着目して、当該マイクから出力されるエラー信号が最小となるように制御すると、他のマイクから出力されるエラー信号が最小とならず、バランスが取れないことがある。例えば、
第1マイク及び第2マイク、並びに第1スピーカ及び第2スピーカを備えるANCを想定する。この場合、第1スピーカから第1マイクに至るチャンネル、第2スピーカから第11マイクに至るチャンネル、第1スピーカから第2マイクに至るチャンネル、及び第2スピーカから第2マイクに至るチャンネルがある。そして、第1マイクが第2マイクよりも第1スピーカの近くに配置されているものとする。
ここで、第1マイクに着目すると、第1スピーカからのキャンセル音が騒音に対する打消し効果が最も大きい。仮に、第2スピーカが存在しなければ、第1マイクは正確なエラー音を集音でき、最適なキャンセル音を第1スピーカから放音させることができる。しかしながら、他にも第2スピーカが存在するために、第2スピーカから放音されたキャンセル音が第1スピーカから放音されたキャンセル音と干渉する。この結果、第1マイクは、第2スピーカから放音されたキャンセル音によって干渉を受けたトータルエラー音を集音する。従って、最も影響が強い(打消し効果の高い)第1スピーカに対して最適化したキャンセル音を生成することができず、結果として、第2スピーカを考慮した全体のノイズ減衰率が悪化する。
即ち、従来のANCでは、チャンネル間でキャンセル音が干渉してしまい、騒音の減衰率が低下するといった問題があった。
しかしながら、複数のマイクと複数のスピーカを備えたANCでは、1つのマイクに着目して、当該マイクから出力されるエラー信号が最小となるように制御すると、他のマイクから出力されるエラー信号が最小とならず、バランスが取れないことがある。例えば、
第1マイク及び第2マイク、並びに第1スピーカ及び第2スピーカを備えるANCを想定する。この場合、第1スピーカから第1マイクに至るチャンネル、第2スピーカから第11マイクに至るチャンネル、第1スピーカから第2マイクに至るチャンネル、及び第2スピーカから第2マイクに至るチャンネルがある。そして、第1マイクが第2マイクよりも第1スピーカの近くに配置されているものとする。
ここで、第1マイクに着目すると、第1スピーカからのキャンセル音が騒音に対する打消し効果が最も大きい。仮に、第2スピーカが存在しなければ、第1マイクは正確なエラー音を集音でき、最適なキャンセル音を第1スピーカから放音させることができる。しかしながら、他にも第2スピーカが存在するために、第2スピーカから放音されたキャンセル音が第1スピーカから放音されたキャンセル音と干渉する。この結果、第1マイクは、第2スピーカから放音されたキャンセル音によって干渉を受けたトータルエラー音を集音する。従って、最も影響が強い(打消し効果の高い)第1スピーカに対して最適化したキャンセル音を生成することができず、結果として、第2スピーカを考慮した全体のノイズ減衰率が悪化する。
即ち、従来のANCでは、チャンネル間でキャンセル音が干渉してしまい、騒音の減衰率が低下するといった問題があった。
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、複数のチャンネル間の干渉を低減して、騒音を効果的に打ち消すことを解決課題の一つとする。
本発明に係るノイズキャンセル装置の一態様は、第1スピーカから第1マイクまでの伝達特性を示す係数を各周波数に対応付けて記憶しており、前記係数は、前記第1スピーカを含む複数のスピーカの各々から前記第1マイクまでの伝達特性のゲインを周波数毎に比較し、比較結果に基づいて、前記第1スピーカから前記第1マイクまでのゲインである第1ゲインを減少させた値となるように定められており、エンジンの回転周波数に応じた係数を出力するテーブルと、前記テーブルから出力される前記係数、前記エンジンの回転と同期した参照信号、及び前記第1マイクから出力される出力信号に基づいて、前記参照信号の振幅及び位相を調整してエンジンこもり音を打ち消すためのキャンセル音を発生させるキャンセル信号を生成する信号処理部と、を備える
以下、図面を参照しながら本発明に係る実施の形態を説明する。なお、図面において各部の寸法及び縮尺は実際のものと適宜異なる。また、以下に記載する実施の形態は、本発明の好適な具体例である。このため、本実施形態には、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかしながら、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
<1.実施形態>
本実施形態に係る車載音響システム1は車両100に用いられる。図1は、本発明の第1実施形態に係る車載音響システム1を搭載した車両100の平面図である。
車両100の車室Rには、車載音響システム1の他に、矩形に配置された4つの座席51〜54と、フロントレフトドア71と、フロントライトドア72と、リアライトドア73と、リアレフトドア74とが配置される。座席51は助手席であり、座席52は運転席であり、座席53は後部右座席であり、さらに、座席54は後部左座席である。座席51〜54の各々は、布又は革を素材とする材質であり吸音性を有する。座席51〜54は、同じ方向を向いている。
本実施形態に係る車載音響システム1は車両100に用いられる。図1は、本発明の第1実施形態に係る車載音響システム1を搭載した車両100の平面図である。
車両100の車室Rには、車載音響システム1の他に、矩形に配置された4つの座席51〜54と、フロントレフトドア71と、フロントライトドア72と、リアライトドア73と、リアレフトドア74とが配置される。座席51は助手席であり、座席52は運転席であり、座席53は後部右座席であり、さらに、座席54は後部左座席である。座席51〜54の各々は、布又は革を素材とする材質であり吸音性を有する。座席51〜54は、同じ方向を向いている。
車載音響システム1は、第1スピーカ21、第2スピーカ22、第3スピーカ23及び第4スピーカ24、並びに第1マイク11、第2マイク12、第3マイク13及び第4マイク14を含む。
第1マイク11、第2マイク12、第3マイク13及び第4マイク14の各々は、集音した音を電気信号に変換して出力する。各マイクは、座席51〜54に対応して車室Rの天井に設けられている。車室Rの中のノイズ成分としてエンジンの回転に伴うエンジンこもり音がある。エンジンこもり音は、エンジンの回転に伴う音が車室Rに漏れ聞こえる音である。
第1マイク11、第2マイク12、第3マイク13及び第4マイク14の各々は、集音した音を電気信号に変換して出力する。各マイクは、座席51〜54に対応して車室Rの天井に設けられている。車室Rの中のノイズ成分としてエンジンの回転に伴うエンジンこもり音がある。エンジンこもり音は、エンジンの回転に伴う音が車室Rに漏れ聞こえる音である。
図2は、車載音響システム1の電気的な構成を示すブロック図である。車載音響システム1は、第1〜第4マイク11〜14、第1〜第4処理部U1〜U4(ノイズキャンセル装置)、及び第1〜第4スピーカ21〜24を備える。この例では、図3に示すように4個のスピーカの各々から4個のマイクへ信号を伝達する16個の経路がある。以下の説明では伝達の経路をチャンネルと呼ぶ。
第1〜第4処理部U1〜U4は、第1〜第4スピーカ21〜24に1対1に対応するように設けられており、第1〜第4駆動信号S1〜S4を生成して各スピーカに供給する。
第1処理部U1は、第1ノイズキャンセル部NC1、第2ノイズキャンセル部NC2、第3ノイズキャンセル部NC3、及び第4ノイズキャンセル部NC4、並びに加算部10を備える。加算部10は、第1〜第4ノイズキャンセル部NC1〜NC4から出力される第1〜第4キャンセル信号CS1〜CS4を加算して第1駆動信号S1を生成する。なお、第2処理部U2、第3処理部U3及び第4処理部U4も、第1処理部U1と同様に構成されている。
第1処理部U1は、第1ノイズキャンセル部NC1、第2ノイズキャンセル部NC2、第3ノイズキャンセル部NC3、及び第4ノイズキャンセル部NC4、並びに加算部10を備える。加算部10は、第1〜第4ノイズキャンセル部NC1〜NC4から出力される第1〜第4キャンセル信号CS1〜CS4を加算して第1駆動信号S1を生成する。なお、第2処理部U2、第3処理部U3及び第4処理部U4も、第1処理部U1と同様に構成されている。
図4に第1ノイズキャンセル部NC1及び周辺構成のブロック図を示す。なお、第2〜第4ノイズキャンセル部NC2〜NC4も同様に構成されている。
第1ノイズキャンセル部NC1は、参照信号生成部60と、係数テーブルTBLと、信号処理部Zとを備える。信号処理部Zは、推定部30と、キャンセル信号生成部40とを備える。
第1ノイズキャンセル部NC1は、参照信号生成部60と、係数テーブルTBLと、信号処理部Zとを備える。信号処理部Zは、推定部30と、キャンセル信号生成部40とを備える。
参照信号生成部60は、エンジンの回転周波数を示す周波数データDfに基づいて、エンジンの回転に同期した第1参照信号EN1及び第2参照信号EN2を生成する。また、第1参照信号EN1は、所定の周波数におけるCOS成分を表している。COS信号発生部61は第1参照信号EN1を発生する。第2参照信号EN2は、所定の周波数におけるSIN成分を表している。SIN信号発生部62は第2参照信号EN2を発生する。例えば、周波数データDfが示す周波数がfの場合、第1参照信号EN1と第2参照信号EN2は以下に示す式1と式2で与えられる。但し、ω=2πfである。
EN1=cos(ωt)…式1
EN2=sin(ωt)=cos(ωt+π/2)…式2
式1及び式2から明らかなように、第2参照信号EN2は第1参照信号EN1に対してπ/2だけ位相が遅れている。
EN1=cos(ωt)…式1
EN2=sin(ωt)=cos(ωt+π/2)…式2
式1及び式2から明らかなように、第2参照信号EN2は第1参照信号EN1に対してπ/2だけ位相が遅れている。
第1スピーカ21から第1マイク11までの伝達特性Gを複素数で表すと、伝達特性G(jω)は以下に示す式3で与えられる。
G(jω)=Re{G(jω)}+jIm{G(jω)}…式3
式3によれば、周波数を定めると、伝達特性G(jω)の実部Re{G(jω)}と虚部Im{G(jω)}の値が定まる。各周波数における実部の値を第1係数C0、虚部の値を第2係数C1で表すものとする。係数テーブルTBLは、第1係数C0及び第2係数C1と周波数とを対応付けて記憶しており、周波数データDfの示す周波数に応じた第1係数C0及び第2係数C1を出力する。なお、第1係数C0及び第2係数C1は同一の車種であれば同じにする。あるいは、車ごとに伝達特性Gを測定して第1係数C0及び第2係数C1を定めてもよい。
G(jω)=Re{G(jω)}+jIm{G(jω)}…式3
式3によれば、周波数を定めると、伝達特性G(jω)の実部Re{G(jω)}と虚部Im{G(jω)}の値が定まる。各周波数における実部の値を第1係数C0、虚部の値を第2係数C1で表すものとする。係数テーブルTBLは、第1係数C0及び第2係数C1と周波数とを対応付けて記憶しており、周波数データDfの示す周波数に応じた第1係数C0及び第2係数C1を出力する。なお、第1係数C0及び第2係数C1は同一の車種であれば同じにする。あるいは、車ごとに伝達特性Gを測定して第1係数C0及び第2係数C1を定めてもよい。
次に、信号処理部Zは、係数テーブルTBLから出力される第1係数C0及び第2係数C1、エンジンの回転と同期した第1参照信号EN1及び第2参照信号EN2、及び第1マイク11から出力される出力信号M1に基づいて、第1参照信号EN1及び第2参照信号EN2の振幅及び位相を調整してエンジンこもり音を打ち消すためのキャンセル音を発生させる第1キャンセル信号CS1を生成する。
信号処理部Zは、推定部30とキャンセル信号生成部40とを備える。推定部30は、第1参照信号EN1及び第2参照信号EN2、並びに第1係数C0及び第2係数C1に基づいて、第1スピーカ21から放音されるキャンセル音が第1マイク11に到達した音を推定した第1推定信号ES1及び第2推定信号ES2を出力する。推定部30は、演算部31、加算部32、及び加算部33を備える。
演算部31は、第1係数C0と第1参照信号EN1[cos(ωt)]とを乗算して信号EN11[C0cos(ωt)]を生成し、第2係数C1と第1参照信号EN1[cos(ωt) ]とを乗算して信号EN12[C1cos(ωt)]を生成し、第1係数C0と第2参照信号EN2[sin(ωt)]とを乗算して信号EN21[C0sin(ωt)]を生成し、第2係数C1と第2参照信号EN2[sin(ωt)]と「−1」を乗算して信号EN22[−C1sin(ωt)]を生成する。
演算部31は、第1係数C0と第1参照信号EN1[cos(ωt)]とを乗算して信号EN11[C0cos(ωt)]を生成し、第2係数C1と第1参照信号EN1[cos(ωt) ]とを乗算して信号EN12[C1cos(ωt)]を生成し、第1係数C0と第2参照信号EN2[sin(ωt)]とを乗算して信号EN21[C0sin(ωt)]を生成し、第2係数C1と第2参照信号EN2[sin(ωt)]と「−1」を乗算して信号EN22[−C1sin(ωt)]を生成する。
加算部32は、信号EN11[C0cos(ωt)]と信号EN22[−C1sin(ωt)]とを加算して第1推定信号ES1[C0cos(ωt) −C1sin(ωt)]を生成する。また、加算部33は、信号EN21[C0sin(ωt)]と信号EN12[C1cos(ωt)]とを加算して第2推定信号ES2[C0sin(ωt)+C1cos(ωt)]を生成する。
キャンセル信号生成部40は、第1推定信号ES1及び第2推定信号ES2と第1マイク11から出力される出力信号M1とに基づいて、第1参照信号EN1及び第2参照信号EN2の振幅及び位相を調整して、キャンセル音を発生させる第1キャンセル信号CS1を生成する。
キャンセル信号生成部40は、第1適応フィルタLMS1及び第2適応フィルタLMS2と、乗算部41及び乗算部42と、加算部43とを備える。第1適応フィルタLMS1は、第1推定信号ES1と出力信号M1とが供給される。第1マイク11の出力信号M1は、エンジンこもり音をキャンセル音で打ち消すことができなかったエラー成分を表している。第1適応フィルタLMS1は、エラー成分である出力信号M1が最小に近づくように第1制御係数W0を決定する。第1制御係数W0は、例えば、最小2乗法によって定めることができる。
第2適応フィルタLMS2は、第1適応フィルタLMS1と同様に、第2推定信号ES2と出力信号M1とに基づいて、エラー成分である出力信号M1が最小に近づくように第2制御係数W1を決定する。なお、第1係数C0及び第2係数C1がゼロに近づくと、第1制御係数W0及び第2制御係数W1もゼロに近づく。これは、第1スピーカ21から第1マイク11までの伝達特性のゲイン特性がゼロに近づく周波数においては、ノイズキャンセルを実行しないことを意味する。
乗算部41は第1制御係数W0と第1参照信号EN1とを乗算し、乗算結果を加算部43に出力する。乗算部42は第2制御係数W1と第2参照信号EN2とを乗算し、乗算結果を加算部43に出力する。加算部43は、乗算部41の出力信号と乗算部42の出力信号とを加算して第1キャンセル信号CS1を生成する。この結果、第1キャンセル信号CS1は、CS1=W0sin(ωt)+W1con(ωt)で与えられる。
第1キャンセル信号CS1は、加算部10において第1〜第2ノイズキャンセル部NC2〜NC4で生成された第2〜第4キャンセル信号CS2〜CS4と加算される。加算部10は第1スピーカ21を駆動する第1駆動信号S1を出力する。
ここで、第2〜第4キャンセル信号CS2〜CS4がゼロであり、且つ、図3に示すキャンセル音A2〜A4が無い場合には、第1マイク11の近傍で第1キャンセル信号CS1に基づくキャンセル音A1によってエンジンこもり音Xが打ち消される。
しかしながら、第1マイク11には、第1スピーカ21から放音されるキャンセル音A1の他に、第2スピーカ22から放音されるキャンセル音A2、第3スピーカ23から放音されるキャンセル音A3、第4スピーカ24から放音されるキャンセル音A4が集音される。
しかしながら、第1マイク11には、第1スピーカ21から放音されるキャンセル音A1の他に、第2スピーカ22から放音されるキャンセル音A2、第3スピーカ23から放音されるキャンセル音A3、第4スピーカ24から放音されるキャンセル音A4が集音される。
キャンセル音A2〜A3は、第1マイク11の近傍において、必ずしもエンジンこもり音Xを打ち消すように作用するとは限らない。これは、第2マイク12、第3マイク13、及び第4マイク14の近傍においてもエンジンこもり音Xを打ち消すように第1処理部U1の第2〜第4ノイズキャンセル部NC2〜NC4が動作すると共に、第2〜第4処理部U2〜U4が動作するためである。従って、チャンネル間の干渉が発生し、エンジンこもり音Xの減衰率が低下してしまう。
そこで、本実施形態では、各チャンネル(各スピーカから各マイクまでの経路)のゲイン特性を周波数ごとに比較し、比較結果に基づいて、エンジンこもり音Xの打ち消しに寄与しないチャンネルについては、ゲインをゼロに近づけるようにしている。
図5は、第1〜第4スピーカ21〜24から第1マイク11までのゲイン特性を示すグラフである。同図に示すように139Hz〜168Hzの帯域Wでは、第1スピーカ21から第1マイク11までのチャンネルのゲインが、他のチャンネルと比較して低い。そこで、当該帯域Wでは、第1スピーカ21から第1マイク11までのチャンネルによるノイズキャンセルを実行しないようにする。同様に、他の帯域においても、ゲインの低いチャンネルについては、ノイズキャンセルを実行しないようにする。
具体的には、係数テーブルTBLに記憶する第1係数C0及び第2係数C1の値を、ノイズキャンセルを実行しない帯域において減少させる。但し、第1係数C0及び第2係数C1をゼロにすると、位相もゼロになってしまい、制御系が不安定になる可能性がある。
そこで、位相特性が変化しない範囲で、第1係数C0及び第2係数C1をゼロに近づけることが好ましい。具体的には、実測から得られた第1係数C0及び第2係数C1を同じ割合で減少させて、係数テーブルTBLに記憶させればよい。実測で得られた第1係数C0をC0a、実測で得られた第2係数C1をC1aとし、変更後の第1係数C0をC0b、変更後の第2係数C1をC1b、Kを1未満の定数とした場合、C0b=K・C0a、C1b=K・C1aとすればよい。なお、Kは、1/100≧K≧1/1000であることが好ましい。
そこで、位相特性が変化しない範囲で、第1係数C0及び第2係数C1をゼロに近づけることが好ましい。具体的には、実測から得られた第1係数C0及び第2係数C1を同じ割合で減少させて、係数テーブルTBLに記憶させればよい。実測で得られた第1係数C0をC0a、実測で得られた第2係数C1をC1aとし、変更後の第1係数C0をC0b、変更後の第2係数C1をC1b、Kを1未満の定数とした場合、C0b=K・C0a、C1b=K・C1aとすればよい。なお、Kは、1/100≧K≧1/1000であることが好ましい。
また、ノイズキャンセルを実行しない周波数は、次のように定める。
まず、第1スピーカ21から第1マイク11までのゲイン特性、第2スピーカ22から第1マイク11までのゲイン特性、第3スピーカ23から第1マイク11までのゲイン特性、第4スピーカ24から第1マイク11までのゲイン特性を特定する。
次に、周波数ごとのゲインの合計値に占める、あるチャンネルのゲイン割合が所定値より小さい場合、ゲインをゼロに近づけるように当該チャンネルの第1係数C0及び第2係数C1を減少させる。所定値は適宜定めればよいが例えば25%である。
まず、第1スピーカ21から第1マイク11までのゲイン特性、第2スピーカ22から第1マイク11までのゲイン特性、第3スピーカ23から第1マイク11までのゲイン特性、第4スピーカ24から第1マイク11までのゲイン特性を特定する。
次に、周波数ごとのゲインの合計値に占める、あるチャンネルのゲイン割合が所定値より小さい場合、ゲインをゼロに近づけるように当該チャンネルの第1係数C0及び第2係数C1を減少させる。所定値は適宜定めればよいが例えば25%である。
第1マイク11に関する各チャンネルのゲイン特性が図5に示すものである場合、ゲインを減少させた後の各チャンネルのゲイン特性は、図6に示すものとなる。また、第2マイク12に関する各チャンネルのゲイン特性が図7に示すものである場合、ゲインを減少させた後の各チャンネルのゲイン特性は、図8に示すものとなる。
このように、本実施形態においては、エンジンこもり音の打ち消しの効果が少ないチャンネルにおいて、係数テーブルTBLに記憶する第1係数C0及び第2係数C1を減少させたので、チャンネル間の干渉を低減することができる。また、第1係数C0及び第2係数C1を変更するだけでよいので、新たな構成を追加する必要がない。加えて、位相特性を変更しないようにしたので、制御系を安定させることができる。
<2.変形例>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、以下に述べる各種の変形が可能である。また、各変形例と実施形態とは適宜組み合わせてもよい。
(1)上述した実施形態では、4個のスピーカと4個のマイクからなる16チャンネルのシステムを一例として説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、2個以上のマイクと1個以上のスピーカとを備えるシステムであればよい。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、以下に述べる各種の変形が可能である。また、各変形例と実施形態とは適宜組み合わせてもよい。
(1)上述した実施形態では、4個のスピーカと4個のマイクからなる16チャンネルのシステムを一例として説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、2個以上のマイクと1個以上のスピーカとを備えるシステムであればよい。
(2)上述した実施形態では、第1係数C0及び第2係数C1の変更は、周波数ごとのゲインの合計値に占める、あるチャンネルのゲイン割合が所定値より小さいことを条件としたが、本発明はこれに限定されるものではない。この条件に加えて、ゲインが最も小さいチャンネルであることを条件としてもよい。
(3)上述した実施形態において、第1〜第4スピーカ21〜24は、キャンセル音を放音したが、キャンセル音の他に乗員の会話をアシストするアシスト音等を放音するために用いてもよい。
(4)上述した実施形態では、ゲインを減少させるために位相特性を変更することなく第1係数C0及び第2係数C1を変更したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ゲインの減少に伴う伝達特性の位相特性の変化が所定範囲内となるように第1係数C0及び第2係数C1を変更してもよい。ここで、所定範囲とは制御系が安定しており、発振しない範囲である。
(5)上述した実施形態では、第1〜第4スピーカ21〜24の各々から第1マイクまでの伝達特性のゲインを周波数毎に比較し、第1〜第4スピーカ21〜24の各々から第1マイク11までのゲインの合計に占める第1スピーカ21から第1マイク11までの第1ゲインの割合が所定値より小さい場合、第1ゲインを減少させるように第1係数C0及び第2係数C1を定めた。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、すべての周波数帯域で最もゲインの小さいチャンネルについてゲインを0にするといった規則を採用してもよい。また第1〜第4マイク11〜14の各々に対して最も遠いスピーカのチャンネルについてノイズキャンセルをせず、ゲインを0にしてもよい。
この場合、4個の第1〜第4ノイズキャンセル部NC1〜NC4も設ける必要はなく3個で足りる。第1処理部U1をハードウエアで構成する場合は、3つのノイズキャンセル部が周波数帯に応じて計算するチャンネルを切り替える。一方、ソフトウェアで構成する場合には、3個の計算リソースがあれば足りる。
但し、実施形態ではノイズキャンセルを実行しない場合は第1係数C0及び第2係数C1をゼロに近付けて計算させていたが、この変形例ではノイズキャンセルを実行しない、即ち、計算処理を実行しないことになる。
このような方法では、ハードウエア又は計算リソースを削減することができる。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、すべての周波数帯域で最もゲインの小さいチャンネルについてゲインを0にするといった規則を採用してもよい。また第1〜第4マイク11〜14の各々に対して最も遠いスピーカのチャンネルについてノイズキャンセルをせず、ゲインを0にしてもよい。
この場合、4個の第1〜第4ノイズキャンセル部NC1〜NC4も設ける必要はなく3個で足りる。第1処理部U1をハードウエアで構成する場合は、3つのノイズキャンセル部が周波数帯に応じて計算するチャンネルを切り替える。一方、ソフトウェアで構成する場合には、3個の計算リソースがあれば足りる。
但し、実施形態ではノイズキャンセルを実行しない場合は第1係数C0及び第2係数C1をゼロに近付けて計算させていたが、この変形例ではノイズキャンセルを実行しない、即ち、計算処理を実行しないことになる。
このような方法では、ハードウエア又は計算リソースを削減することができる。
<3.各実施形態及び各変形例の少なくとも1つから把握される態様>
上述した各実施形態及び各変形例の少なくとも1つから以下の態様が把握される。
ノイズキャンセル装置の一態様は、第1スピーカから第1マイクまでの伝達特性を示す係数を各周波数に対応付けて記憶しており、前記係数は、前記第1スピーカを含む複数のスピーカの各々から前記第1マイクまでの伝達特性のゲインを周波数毎に比較し、比較結果に基づいて、前記第1スピーカから前記第1マイクまでのゲインである第1ゲインを減少させた値となるように定められており、エンジンの回転周波数に応じた係数を出力するテーブルと、前記テーブルから出力される前記係数、前記エンジンの回転と同期した参照信号、及び前記第1マイクから出力される出力信号に基づいて、前記参照信号の振幅及び位相を調整してエンジンこもり音を打ち消すためのキャンセル音を発生させるキャンセル信号を生成する信号処理部と、を備える。
上述した各実施形態及び各変形例の少なくとも1つから以下の態様が把握される。
ノイズキャンセル装置の一態様は、第1スピーカから第1マイクまでの伝達特性を示す係数を各周波数に対応付けて記憶しており、前記係数は、前記第1スピーカを含む複数のスピーカの各々から前記第1マイクまでの伝達特性のゲインを周波数毎に比較し、比較結果に基づいて、前記第1スピーカから前記第1マイクまでのゲインである第1ゲインを減少させた値となるように定められており、エンジンの回転周波数に応じた係数を出力するテーブルと、前記テーブルから出力される前記係数、前記エンジンの回転と同期した参照信号、及び前記第1マイクから出力される出力信号に基づいて、前記参照信号の振幅及び位相を調整してエンジンこもり音を打ち消すためのキャンセル音を発生させるキャンセル信号を生成する信号処理部と、を備える。
上述したノイズキャンセル装置の一態様において、前記テーブルは、前記比較結果に基づいて、前記複数のスピーカの各々から前記第1マイクまでのゲインの合計に占める前記第1ゲインの割合が所定値より小さい場合、前記第1ゲインを減少させた値となるように定められた前記係数が記憶されることが好ましい。
この態様によれば、エンジンこもり音を打ち消すために寄与の小さいチャンネルについては、ゲインを減少させるように係数を定めたので、チャンネル間の干渉を低減させることができる。この結果、車室内のエンジンこもり音の減衰率を向上させることができる。また、テーブルの係数を変更するだけであるから、チャンネル間の干渉を低減するために新たな構成を追加する必要がない。
この態様によれば、エンジンこもり音を打ち消すために寄与の小さいチャンネルについては、ゲインを減少させるように係数を定めたので、チャンネル間の干渉を低減させることができる。この結果、車室内のエンジンこもり音の減衰率を向上させることができる。また、テーブルの係数を変更するだけであるから、チャンネル間の干渉を低減するために新たな構成を追加する必要がない。
上述したノイズキャンセル装置の一態様において、前記信号処理部は、前記エンジンの回転と同期した参照信号と前記係数とに基づいて、前記第1スピーカから放音される前記キャンセル音が前記第1マイクに到達した音を推定した推定信号を生成する推定部と、前記推定信号と前記第1マイクから出力される出力信号とに基づいて、前記参照信号の振幅及び位相を調整して、前記キャンセル信号を生成するキャンセル信号生成部とを備える、ことが好ましい。
この態様によれば、推定信号とエラー成分となる第1マイクから出力される出力信号とに基づいて、エンジンこもり音と逆位相のキャンセル音を発生させるためのキャンセル信号を生成することができる。
この態様によれば、推定信号とエラー成分となる第1マイクから出力される出力信号とに基づいて、エンジンこもり音と逆位相のキャンセル音を発生させるためのキャンセル信号を生成することができる。
上述したノイズキャンセル装置の一態様において、前記ゲインを減少させる場合、前記ゲインの減少に伴う前記伝達特性の位相特性の変化が所定範囲内となるように前記係数を定めることが好ましい。
この態様によれば、位相特性の変化を所定範囲内とするので、制御系を安定して動作させることができる。
この態様によれば、位相特性の変化を所定範囲内とするので、制御系を安定して動作させることができる。
上述したノイズキャンセル装置の一態様において、前記伝達特性の係数は、前記伝達特性を実部と虚部で表現した場合に、前記実部を示す第1係数と前記虚部を示す第2係数とからなり、前記ゲインを減少させる場合、前記第1係数と前記第2係数を同じ割合で減少させることが好ましい。
この態様によれば、位相特性を変化させずにゲインのみを減少させることができる。
この態様によれば、位相特性を変化させずにゲインのみを減少させることができる。
上述したノイズキャンセル装置の一態様において、前記伝達特性の係数は、前記伝達特性を実部と虚部で表現した場合に、前記実部を示す第1係数と前記虚部を示す第2係数とからなり、前記ゲインを減少させる場合、前記第1係数と前記第2係数とをゼロを含まないゼロ近傍の値にすることが好ましい。
第1係数及び第2係数をゼロに設定すると位相が不定になるが、この態様によれば、第1係数と第2係数とがゼロにならないので、位相を定めることができる。更に、第1係数と第2係数とをゼロ近傍の値とするので、チャンネル間の干渉を低減することができる。
第1係数及び第2係数をゼロに設定すると位相が不定になるが、この態様によれば、第1係数と第2係数とがゼロにならないので、位相を定めることができる。更に、第1係数と第2係数とをゼロ近傍の値とするので、チャンネル間の干渉を低減することができる。
1…車載音響システム、11…第1マイク、12…第2マイク、13…第3マイク、14…第4マイク、21…第1スピーカ、22…第2スピーカ、23…第3スピーカ、24…第4スピーカ、30…推定部、40…キャンセル信号生成部、60…参照信号生成部、LMS1…第1適応フィルタ、LMS2…第2適応フィルタ、TBL…係数テーブル、C0…第1係数、C1…第2係数。
Claims (6)
- 第1スピーカから第1マイクまでの伝達特性を示す係数を各周波数に対応付けて記憶しており、前記係数は、前記第1スピーカを含む複数のスピーカの各々から前記第1マイクまでの伝達特性のゲインを周波数毎に比較し、比較結果に基づいて、前記第1スピーカから前記第1マイクまでのゲインである第1ゲインを減少させた値となるように定められており、エンジンの回転周波数に応じた係数を出力するテーブルと、
前記テーブルから出力される前記係数、前記エンジンの回転と同期した参照信号、及び前記第1マイクから出力される出力信号に基づいて、前記参照信号の振幅及び位相を調整してエンジンこもり音を打ち消すためのキャンセル音を発生させるキャンセル信号を生成する信号処理部と、
を備えるノイズキャンセル装置。 - 前記テーブルは、前記比較結果に基づいて、前記複数のスピーカの各々から前記第1マイクまでのゲインの合計に占める前記第1ゲインの割合が所定値より小さい場合、前記第1ゲインを減少させた値となるように定められた前記係数が記憶される、請求項1に記載のノイズキャンセル装置。
- 前記信号処理部は、
前記エンジンの回転と同期した参照信号と前記係数とに基づいて、前記第1スピーカから放音される前記キャンセル音が前記第1マイクに到達した音を推定した推定信号を生成する推定部と、
前記推定信号と前記第1マイクから出力される出力信号とに基づいて、前記参照信号の振幅及び位相を調整して、前記キャンセル信号を生成するキャンセル信号生成部とを備える、
請求項1又は2に記載のノイズキャンセル装置。 - 前記ゲインを減少させる場合、前記ゲインの減少に伴う前記伝達特性の位相特性の変化が所定範囲内となるように前記係数を定めることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載のノイズキャンセル装置。
- 前記伝達特性の係数は、前記伝達特性を実部と虚部で表現した場合に、前記実部を示す第1係数と前記虚部を示す第2係数とからなり、
前記ゲインを減少させる場合、前記第1係数と前記第2係数とを同じ割合で減少させることを特徴とする請求項4に記載のノイズキャンセル装置。 - 前記伝達特性の係数は、前記伝達特性を実部と虚部で表現した場合に、前記実部を示す第1係数と前記虚部を示す第2係数とからなり、
前記ゲインを減少させる場合、前記第1係数と前記第2係数とをゼロを含まないゼロ近傍の値にすることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載のノイズキャンセル装置。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2017059489A JP2018163223A (ja) | 2017-03-24 | 2017-03-24 | ノイズキャンセル装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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Publication Number | Publication Date |
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JP2018163223A true JP2018163223A (ja) | 2018-10-18 |
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ID=63860996
Family Applications (1)
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JP2017059489A Pending JP2018163223A (ja) | 2017-03-24 | 2017-03-24 | ノイズキャンセル装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2018163223A (ja) |
-
2017
- 2017-03-24 JP JP2017059489A patent/JP2018163223A/ja active Pending
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