JP2018162524A - 鋼線用線材および鋼線 - Google Patents

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友信 石田
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Abstract

【課題】低サイクル疲労特性に優れ、ワイヤロープやPC鋼線等の高強度の鋼線の素材として有用な鋼線用線材、およびこのような特性を発揮できる鋼線を提供する。【解決手段】本発明の鋼線用線材は、質量%で、C:0.70〜1.3%、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.1〜1.5%、N:0.001〜0.006%、Al:0.001〜0.10%、Ti:0.02〜0.20%、B:0.0005〜0.010%、P:0%以上、0.030%以下、S:0%以上、0.030%以下、を夫々含有し、残部が鉄および不可避不純物であり、パーライトを主相とし、300℃における鋼中の水素拡散係数Dが下記(1)式を満足する。D≦2.5×10-7(cm2/秒) …(1)【選択図】なし

Description

本発明は、ワイヤロープやPC鋼線等に用いられる高強度の鋼線の素材となる鋼線用線材、およびそのような鋼線に関する。
エレベータ用ロープやクレーンの巻上げロープなど、繰り返し曲げ応力が付加される鋼撚り線においては、素線の曲げ疲労特性がロープの設計強度や寿命を決定する重要因子である。近年では、エレベータの高速化やクレーンの小型化に伴うロープの軽量化ニーズが増大しており、それを実現する曲げ疲労特性に優れた高強度鋼線用線材が求められている。また曲げ疲労特性に優れた高強度鋼線用線材は、PC(Prestressed Concrete)鋼線の素材としても有用である。
線材の特性を改善するための技術として、これまでにも様々提案されている。例えば、特許文献1では、鋼中にBN系介在物を微細析出させることによって疲労強度を向上させる技術が開示されている。しかしながら、この技術で問題にしている特性は、107回の疲労限近くで起こる高サイクル疲労であり、上記のような環境で要求されるような、104〜105回で起きる低サイクル疲労とはメカニズムが異なる。ワイヤロープの様な長期間外気に晒される製品では、表層部の酸化や素線同士の摩擦によって疲労亀裂が発生しやすく、かつ鋼中に侵入した水素によって亀裂進展が促進されるため、疲労限より遥かに低い寿命で材料が破壊する。したがって、水素に対する対策が必要になる。
特許文献2では、伸線加工パーライト組織を持った極細鋼線中の水素量を低減することで疲労特性を向上させる技術が公開されている。しかし、ワイヤロープやPC鋼線の様に、外界からの水素侵入がある様な製品の場合には外部から侵入した水素で疲労特性が低下するため、単に鋼中の水素量を低減するだけでは不十分である。
特開2011−225990号公報 特開平11−256274号公報
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、低サイクル疲労特性に優れ、ワイヤロープやPC鋼線等の高強度の鋼線の素材として有用な鋼線用線材、およびこのような特性を発揮できる鋼線を提供することにある。
上記課題を解決し得た本発明の鋼線用線材は、
質量%で、
C :0.70〜1.3%、
Si:0.1〜1.5%、
Mn:0.1〜1.5%、
N :0.001〜0.006%
Al:0.001〜0.10%、
Ti:0.02〜0.20%、
B :0.0005〜0.010%
P :0%以上、0.030%以下、
S :0%以上、0.030%以下、
を夫々含有し、残部が鉄および不可避不純物であり、
パーライトを主相とし、300℃における鋼中の水素拡散係数Dが下記(1)式を満足することを特徴とする。
D≦2.5×10-7(cm2/秒) …(1)
尚、「パーライトを主相とする」とは、金属組織の95面積%以上がパーライト組織であることを意味する。
本発明の高強度鋼線用線材は、更に、(a)Cr:0%超、1.0%以下およびV:0%超、0.5%以下の少なくとも1種、(b)Ni:0%超、0.5%以下およびNb:0%超、0.5%以下の少なくとも1種、(c)Co:0%超、1.0%以下、(d)Mo:0%超、0.5%以下およびCu:0%超、0.5%以下の少なくとも1種、等を含有することも好ましい。
本発明は、上記した鋼の化学成分組成からなり、300℃における鋼中の水素拡散係数Dが下記(1)式を満足する鋼線も包含する。
D≦2.5×10-7(cm2/秒) …(1)
本発明によれば、微細分散させたTiC等のTi系介在物による水素トラップ効果によって鋼中での水素拡散を阻害し、その拡散係数を低減することで疲労特性に優れた鋼線材を得ることができる。特に、104〜105回程度の繰り返し応力負荷で生じる低サイクル疲労に対して、優れた特性を発揮する。
図1は、4点曲げ疲労試験の実施状況を示す概略説明図である。
本発明者らは、パーライトを主相とする金属組織である鋼線材において、低サイクル疲労特性を左右する因子を鋭意調査した。水素による疲労特性の低下は、繰り返し応力が負荷されることによって鋼中の水素が鋼材に生じた微小なクラックに向かって拡散し、クラック周辺の組織を脆化させることで生じる。製造工程で鋼中に吸蔵された水素に加えて、外界から侵入した水素も同様に疲労特性を低下させる。従って、鋼中の水素拡散を阻害し、クラック周辺に集積する水素の量を低減することで疲労特性を向上させることができる。具体的には、300℃における鋼中の水素拡散係数Dを2.5×10-7 (cm2/秒)以下にすることで疲労特性が向上する。
水素拡散係数Dは温度に依存する物性値であるが、本発明では300℃における鋼中の水素拡散係数Dを指標とする。この理由は水素拡散係数の計測方法に由来する。水素拡散係数Dの測定に当たっては、試料を測定器中で昇温して得られた水素ガスの放出曲線を解析する方法を採用しているが、放出曲線の低温部分は外乱による影響を受けやすく、正確な評価に適さない。これは、低温で放出される水素は拡散性水素と呼ばれ、室温での拡散が無視できないため、測定に供する試料の保管状態によって影響を受けるためである。尚、水素拡散係数Dは、好ましくは2.3×10-7 (cm2/秒)以下であり、より好ましくは2.0×10-7(cm2/秒)以下である。
水素の拡散を阻害する手段としては、水素を吸着する効果のあるTiC等のTi系介在物を鋼中に微細分散させることが有効である。
本発明に係る鋼線用線材は、ワイヤなどに適用したときにその基本的な特性を発揮させる上からも、その化学成分組成も適切に調整する必要がある。その化学成分組成は以下の通りである。尚、化学成分組成における「%」は、いずれも「質量%」である。
(C:0.70〜1.3%)
Cは、強度の上昇に有効な元素であり、C量の増加に伴って、冷間加工前の線材(鋼線材)、および冷間加工後の鋼線の強度が向上する。そこで、C量は0.70%以上と定めた。C量は、好ましくは0.74%以上であり、より好ましくは0.78%以上である。
しかし、C量が過剰になり過ぎると、初析セメンタイト(以下、「初析θ」と略記することがある)が析出し、伸線加工中に断線を引き起こす。そこで、C量は1.3%以下と定めた。C量は、好ましくは1.2%以下であり、より好ましくは1.1%以下である。
(Si:0.1〜1.5%)
Siは、脱酸剤としての作用を有し、また線材の強度を向上させる作用も有する。これらの作用を有効に発揮させるために、Si量を0.1%以上と定めた。Si量は、好ましくは0.15%以上であり、より好ましくは0.18%以上である。一方、Si量が過剰になり過ぎると、冷間伸線性を悪化させ、断線率の増加を引き起こす。そこで、Si量を1.5%以下と定めた。Si量は好ましくは1.4%以下であり、より好ましくは1.3%以下である。
(Mn:0.1〜1.5%)
Mnは、Siと同様に脱酸作用も有しているが、特に鋼中のSをMnSとして固定して、鋼の靭性および延性を高める作用を有している。これらの作用を有効に発揮させるために、Mn量は0.1%以上とする。Mn量は、好ましくは0.15%以上であり、より好ましくは0.20%以上である。しかしながら、Mnは偏析し易い元素であり、過剰に添加すると、Mn偏析部の焼入れ性が過剰に増大し、マルテンサイト等の過冷組織を生成させる恐れがある。そこで、Mn量は1.5%以下と定めた。Mn量は、好ましくは1.4%以下であり、より好ましくは1.3%以下である。
(N:0.001〜0.006%)
Nは、鋼中のBと化合してBNを形成し、Bによる効果を失わせる。また、固溶状態のNは伸線時に歪み時効による捻回特性の低下を引き起こし、著しい場合には縦割れを招く。これらの弊害を防ぐために、N量は0.006%以下とする。好ましくは0.005%以下であり、より好ましくは0.004%以下である。一方、少量であればTiNやAlNなどの窒化物によって結晶粒を微細化し、線材の延性を高める効果がある。そのような効果を発揮させるために、N量は0.001%以上とする。好ましくは0.0015%以上、より好ましくは0.0020%以上である。
(Al:0.001〜0.10%)
Alは、有効な脱酸元素である。また、AlNの様な窒化物を形成して結晶粒を微細化する効果も有する。このような効果を有効に発揮させるために、Al量は0.001%以上とする。Al量は、好ましくは0.002%以上であり、より好ましくは0.003%以上である。一方、Alを過剰に添加するとAl23の様な酸化物を形成し、伸線時の断線を増加させる。こうした観点から、Al量は0.10%以下とする。好ましくは0.09%以下であり、より好ましくは0.08%以下である。
(Ti:0.02〜0.20%)
Tiは、TiCの様な炭化物を形成し、水素の拡散係数を低下させて鋼線の疲労特性を向上させる働きがある。また、鋼中のNと化合してTiNの様な窒化物を形成し、Nによる捻回特性の低下を防ぐ働きもある。それらの効果を有効に発揮させるために、Ti量は0.02%以上とする。好ましくは0.03%以上、より好ましくは0.04%以上である。一方、Ti量が過剰になると、TiCやTiN等のTi系介在物が多量に析出し、伸線時の断線を増加させる。したがって、Ti量は0.20%以下とする。好ましくは0.15%以下であり、さらに好ましくは0.10%以下である。
(B:0.0005〜0.010%)
Bは、粒界に析出する初析フェライト(以下、「初析α」と略記することがある)を抑制する働きがあり、疲労特性の向上に有効である。また、BNを形成することで、鋼中の固溶Nを固定し、捻回特性を向上させる効果も期待できる。Bの効果を有効に発揮させるために、B量は0.0005%以上が必要である。好ましいB量の下限は0.0007%以上であり、より好ましくは0.001%以上である。一方、B量が過剰になると、Feとの化合物であるFe−B系化合物、例えばFeB2が析出し、熱間圧延時の割れを引き起こすため、B量は0.010%以下にする必要がある。好ましくは0.008%以下であり、より好ましくは0.006%以下である。
(P:0%以上、0.030%以下)
Pは、旧オーステナイト粒界に偏析して粒界を脆化させ、疲労強度を低下させるため、その含有量は少なければ少ないほど好ましい。したがって、P量は0.030%以下とする。P量は、好ましくは0.025%以下であり、より好ましくは0.020%以下である。P量は0%であってもよいが、通常0.001%以上で含まれる。
(S:0%以上、0.030%以下)
Sは、Pと同様に旧オーステナイト粒界に偏析して粒界を脆化させ、疲労強度を低下させるため、その含有量は少なければ少ないほど好ましい。したがって、S量は0.030%以下とする。S量は、好ましくは0.025%以下であり、より好ましくは0.020%以下である。S量は0%であってもよいが、通常0.001%以上で含まれる。
本発明の線材の基本成分は上記の通りであり、残部は実質的に鉄である。但し、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる不可避不純物が鋼中に含まれることは当然に許容される。また本発明の線材は、強度、靭性、延性等の特性を更に向上させるため、必要に応じて、更に(a)Cr:0%超、1.0%以下およびV:0%超、0.5%以下の少なくとも1種、(b)Ni:0%超、0.5%以下およびNb:0%超、0.5%以下の少なくとも1種、(c)Co:0%超、1.0%以下、(d)Mo:0%超、0.5%以下およびCu:0%超、0.5%以下の少なくとも1種、等を含有することも好ましい。
(Cr:0%超、1.0%以下およびV:0%超、0.5%以下の少なくとも1種)
Crは、パーライトのラメラ間隔を微細化し、線材の強度や靭性を高める作用を有する。このような作用を有効に発揮させるために、Cr量は0.05%以上が好ましい。Cr量は、より好ましくは0.10%以上であり、更に好ましくは0.15%以上である。一方、Cr量が過剰になり過ぎると、焼入れ性が向上して熱間圧延中に過冷組織を発生させる危険性が高まるため、Cr量は1.0%以下とすることが好ましい。Cr量は、より好ましくは0.8%以下であり、更に好ましくは0.6%以下である。
Vは炭窒化物を形成して線材の強度を向上させる効果がある。また、Nbと同様にAlNが析出した後の余剰の固溶Nと窒化物を形成し、結晶粒微細化に寄与する他、固溶Nを固定することによる時効脆化の抑制効果も有する。このような作用を有効に発揮させるために、V量は0.01%以上が好ましく、より好ましくは0.02%以上、更に好ましくは0.03%以上である。しかし、Vは高価な元素であり、過剰に添加してもその効果は飽和し、経済的に無駄であるため、V量は0.5%以下が好ましく、より好ましくは0.4%以下、更に好ましくは0.2%以下である。
CrおよびVは、線材の強度(引張強度)を高める上で有用な元素であり、これらは1種または2種を併用して含有させてもよい。
(Ni:0%超、0.5%以下およびNb:0%超、0.5%以下の少なくとも1種) Niは、伸線後の鋼線の靭性を高める元素である。このような作用を有効に発揮させるために、Ni量は0.05%以上が好ましく、より好ましくは0.1%以上であり、更に好ましくは0.2%以上である。しかし、Niは過剰に添加してもその効果が飽和し、経済的に無駄である。したがって、Ni量は0.5%以下が好ましく、より好ましくは0.4%以下、更に好ましくは0.3%以下である。
Nbは、TiやAlと同様に窒化物を形成し、結晶粒を微細化して鋼線の靭性向上に寄与する他、固溶Nを固定することによる時効脆化の抑制効果も有する。このような作用を有効に発揮させるために、Nb量は0.01%以上が好ましく、より好ましくは0.03%以上、更に好ましくは0.05%以上である。しかし、Nbは高価な元素であり、過剰に添加してもその効果は飽和し、経済的に無駄であるため、Nb量は0.5%以下が好ましく、より好ましくは0.4%以下、更に好ましくは0.3%以下である。
NiおよびNbは、鋼線の靭性を高める上で有用な元素であり、これらは1種または2種を併用して含有させてもよい。
(Co:0%超、1.0%以下)
Coは、初析セメンタイトを低減し(特にC量が高い場合)、組織を均一なパーライト組織に制御しやすくするという作用を有する。この作用を有効に発揮させるために、Co量は0.05%以上が好ましく、より好ましくは0.1%以上、更に好ましくは0.2%以上である。しかし、Coは過剰に添加してもその効果が飽和し、経済的に無駄である。
したがって、Co量は1.0%以下が好ましく、より好ましくは0.8%以下であり、更に好ましくは0.6%以下である。
(Mo:0%超、0.5%以下およびCu:0%超、0.5%以下の少なくとも1種) Moは、鋼線の耐食性を向上させる元素である。このような作用を有効に発揮させるために、Mo量は0.05%以上が好ましく、より好ましくは0.1%以上であり、更に好ましくは0.2%以上である。しかし、Mo量が過剰になると、熱間圧延時に過冷組織が発生しやすくなり、また延性も劣化する。そこでMo量は0.5%以下が好ましく、より好ましくは0.4%以下であり、更に好ましくは0.3%以下である。
Cuは、Moと同様に鋼線の耐食性を向上させる元素である。このような作用を有効に発揮させるために、Cu量は0.05%以上が好ましく、より好ましくは0.08%以上であり、更に好ましくは0.10%以上である。しかし、Cu量が過剰になると、Sと反応して粒界部にCuSを偏析させ、線材製造過程で疵を発生させる。このような影響を避けるために、Cu量は0.5%以下が好ましく、より好ましくは0.4%以下であり、更に好ましくは0.3%以下である。
冷間伸線前の線材は、通常、化学成分を適切に制御した鋼を溶製、分塊圧延および熱間圧延し、更に必要に応じてパテンティング処理することにより製造される。本発明で規定する要件(金属組織、水素の拡散係数)を満足させつつ本発明の線材を製造するにあたっては、Tiの含有量を上記の範囲に適正に制御した上で、TiC等のTi系介在物の析出挙動を適切にコントロールすることが重要である。
まず、分塊圧延では、鋳片を1200℃以上に加熱し、鋳造時に析出した粗大なTiCを分解することが好ましい。加熱温度が1200℃よりも低いと、線材に粗大なTiCが残存し、水素拡散係数を十分に小さくすることができないので、疲労強度が低下する。この加熱温度はより好ましくは1250℃以上であり、更に好ましくは1300℃以上であるが、あまり高くなり過ぎると、線材の溶融が生じるので、通常は1400℃程度までに設定される。
続いて熱間圧延を行なうにあたっては、1000℃以上に加熱した上で、圧延の最終4パスにおける歪み速度を0.5秒-1以上とし、動的再結晶によって結晶粒を微細化すると共に、微細なTiCを析出させることが好ましい。歪み速度が0.5秒-1よりも小さくなると、TiCを十分に微細化することができず、水素拡散係数Dを十分に小さくできない。このときの歪み速度は、より好ましくは0.8秒-1以上、更に好ましくは1.0秒-1以上であるが、設備負荷の問題から、通常は5秒-1以下とすることが好ましい。尚、歪み速度をVεとすると、一つ目のロール(最終パスから4パス手前のロール)に入線する前の断面積S0(m2)と、最終パス通過後の断面積S4(m2)と、4パスの合計通過時間(圧延時間)t(秒)を用いて、下記(2)式で表わせる。
Vε={ln(S0/S4)}/t …(2)
熱間圧延後は、水冷で十分に冷却して、圧延材(線材)のレイングヘッドでの載置温度を800〜1000℃に制御することが好ましい。載置温度が1000℃を超えると、載置後のコンベヤ上での冷却中に、TiCが粗大化してしまう恐れがある。より好ましくは980℃以下であり、更に好ましくは950℃以下である。また、載置温度が800℃未満の場合は線材の変形抵抗が増大し、レイングヘッドでの載置不良(例えば、コイリングできない)が生じる可能性があるので、800℃以上とすることが好ましい。より好ましくは820℃以上であり、更に好ましくは850℃以上である。
載置後、冷却コンベア上で線材を冷却し、この冷却中にパーライト変態を起こさせるが、パーライト変態開始までの平均冷速度を5℃/秒以上として急冷することが好ましい。
このときの冷却速度が遅くなると、TiCが粗大化しやすくなり、水素拡散係数が大きくなる恐れがある。また、平均冷却速度が5℃/秒より小さくなると、局所的にコーズパーライトと呼ばれるラメラ間隔が極端に粗い組織が析出し、伸線性を低下させることもある。尚、パーライト変態の開始については、線材の温度を測定し、変態発熱によって冷却曲線が変化する点(変曲点)を求めれば良い。この平均冷却速度は、より好ましくは10℃/秒以上であり、更に好ましくは15℃/秒以上である。平均冷却速度の好ましい上限は100℃/秒以下であり、より好ましくは50℃/秒以下である。
上記のようにして得られた線材は、そのまま伸線加工(冷間加工)して鋼線として使用することができるが、伸線加工前にパテンティング処理を施しても良い。こうした伸線加工前のパテンティング処理を施すことによって、線材の強度を高め、且つ強度ばらつきを低減することができる。
また細径の鋼線を製造する場合のように、伸線加工度が大きくなることが予想されるときには、圧延材からある程度伸線した後にパテンティング処理を施し、線材組織を未加工のパーライト組織に戻した上で、更に伸線加工を行なうことも有用である。このとき、再加熱処理によっても微細析出したTiCが保たれていれば、一般的なパテンティング処理によっても水素拡散係数Dが低い状態を保つことができる。
パテンティング処理を施すときの加熱温度(この温度を「再加熱温度」と呼ぶことがある)は、900〜1000℃程度が好ましく、より好ましくは920℃以上、980℃以下である。また、保持温度は530〜600℃程度が好ましく、より好ましくは550℃以上、580℃以下である。再加熱温度は、未固溶炭化物の残存を防ぎ、組織を完全にオーステナイト化する観点から、900℃以上であることが好ましいが、あまり高温になると、TiCが粗大化して水素拡散係数Dが増大する。
本発明の線材は、鋼中の水素拡散係数Dが十分に低減されているため、これを冷間加工した鋼線や、その鋼線を全部または一部に用いたワイヤロープやPC鋼線などの製品は、通常品よりも疲労特性に優れている。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前記、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
下記表1に示す化学成分組成の鋼塊を、下記表2に示した条件で分塊圧延、熱間圧延して線材コイルに加工し、一部のものは更にパテンティング処理を行った(表3)。表2、3において圧延線径とパテンティング線径が異なるものは、中間伸線を挟んで熱処理したことを示している。
Figure 2018162524
Figure 2018162524
Figure 2018162524
仕上げ伸線前の線材からサンプルを採取し、引張試験、金属組織の評価、水素拡散係数Dの測定を、下記の方法によって実施した。
(引張試験)
得られた線材コイルを伸線加工して鋼線を作製し、鋼線の引張強度TS(Tensile Strength;素線強度)および降伏点YP(Yield Point)を、JIS Z 2241(2011)に準拠して測定すると共に(N=8本の平均値)、捻回特性、疲労特性を、下記の方法で評価した。
(組織評価)
金属組織は、試料の横断面を光学顕微鏡にて観察し、パーライト組織の面積率が95%以上のものを表中に「P」と示した。
(水素拡散係数Dの評価)
採取した試料に対して飽和状態まで水素チャージを行ない、昇温分析によって水素放出曲線を得た。昇温速度は12℃/秒とし、大気圧イオン化質量分析計にて水素の放出量を測定した。水素チャージ条件は、電解液にH2SO4水溶液(pH3)+KSCN0.01mol/Lを用い、電流密度5mA/cm2で48時間チャージを行なった。尚、チャージ後の試料は、水素の離散を極力防止するため、測定まで液体窒素中に保管した。
得られた水素放出曲線に対して、水素が試料内に均一に分布しているものと近似し、試料形状を無限円柱と仮定して、拡散係数数をパラメータとして数値計算で得られる水素放出曲線でフィッティングすることによって水素拡散係数Dを求めた。尚、無限円柱近似を有効にするため、試料長は直径の5倍以上とした。またこのとき、フィッティングに使用する水素の放出ピークは、ピーク温度200℃以上のピークを使用した。200℃以下に現れる低温のピークは拡散性水素と呼ばれ、室温での拡散でも放出されるなど、外乱の影響が考えられるため、拡散係数の評価には用いなかった。こうして得た温度と、拡散係数の相関曲線から、300℃における拡散係数を水素拡散係数Dとして求めた。
(捻回特性の評価)
捻回特性は、捻回試験を行ない、破断までに要した捻回値(破断捻回数)を求めた。下記表5中の捻回値は、N=5本の平均値である。このとき、捻り速度は52回/分、張力は500gf(4.9N)とした。尚、捻回値は、チャック間距離(試験線長)を、線径dの100倍(100d)に換算して規格化した。また、破面観察によって正常破面と縦割れを判別し、5本中1本でも縦割れしたものは、後記表5において「縦割れあり」と記載した。
(疲労特性の評価)
疲労特性は、4点支持となる治具によって、繰り返し4点曲げ疲労試験を実施して評価した(図1:支持点を○で示す)。試験は片曲げで行ない、最大応力と最小応力の差を応力振幅と定義した。種々の応力振幅で10万回の繰り返し曲げを行ない、N=3本の試験で全て破断(断線)しなかったものを合格、1本でも破断したものは不合格と判定した。
合格と判定した試料における最大の応力振幅を、疲労強度と定義した。尚、応力波形は正弦波、周波数は10Hzとした。
これらの結果を、下記表4、5に示す。尚、表4において、金属組織の項目において、「P」と示したものは、前述の如くパーライト組織が95面積%以上であったこと、即ちパーライトが主相であることを示している。また、「P+α」や「P+θ」と示したものは、パーライト組織の他に、5面積%よりも多いフェライト(α)やセメンタイト(θ)が混合した組織となっており、パーライト組織が95面積%未満であったことを示している。
Figure 2018162524
Figure 2018162524
これらの結果から、次のように考察できる。まず試験No.1〜3、9〜20は、化学成分組成、金属組織(パーライトの面積率)、水素拡散係数Dがいずれも本発明で規定する範囲内にあるため、JIS G 3522(1991) に記載されている「ピアノ線B種」を上回る引張強度(規格では、例えば線径が7.0mmで1620〜1770MPa)を得た上で、引張強度の0.45倍を超える疲労強度を達成する鋼線(ワイヤ)が得られている。
これに対し、試験No.4〜8、21〜26は、本発明の要件のいずれかが満たされていなかった例である。このうち試験No.4は、分塊圧延時の加熱温度が低かったため、粗大なTiCが析出し、水素拡散係数Dが大きくなり、疲労強度が低下した。
試験No.5は、熱間圧延時の最終4パスの歪み速度が小さかったため、粗大なTiCが析出し、水素拡散係数Dが大きくなり、疲労強度が低下した。試験No.6は、熱間圧延後の載置温度が低かったので、載置不良が起きて試料が得られなかった。
試験No.7は、熱間圧延後の載置温度が高く、また試験No.8は、圧延後の冷却速度が遅かったので、TiCが粗大化して水素拡散係数Dが大きくなり、疲労強度が低下した。
試験No.21は、C量が少なかった例であり(鋼種P)、フェライトとパーライトの混相組織となり、引張強度や捻回特性が低く、疲労強度も低下した。試験No.22は、C量が多かった例であり、多量の初析セメンタイトが析出したために伸線中に断線した。
試験No.23は、Ti量が少なかった例であり(鋼種R)、TiC量が少なく、水素拡散係数Dが大きくなって疲労強度が低下した。試験No.24は、Ti量が多かった例であり(鋼種S)、多量のTi系介在物が析出して伸線中に断線した。
試験No.25は、B量が多かった例であり(鋼種T)、熱間圧延時に断線して試料が得られなかった。No.26は、B量が少なかった例であり(鋼種U)、捻回特性と疲労強度が低下した。また水素拡散係数Dも大きくなっている。

Claims (6)

  1. 質量%で、
    C :0.70〜1.3%、
    Si:0.1〜1.5%、
    Mn:0.1〜1.5%、
    N :0.001〜0.006%、
    Al:0.001〜0.10%、
    Ti:0.02〜0.20%、
    B :0.0005〜0.010%、
    P :0%以上、0.030%以下、
    S :0%以上、0.030%以下、
    を夫々含有し、残部が鉄および不可避不純物であり、
    パーライトを主相とし、300℃における鋼中の水素拡散係数Dが下記(1)式を満足する鋼線用線材。
    D≦2.5×10-7(cm2/秒) …(1)
  2. 更に、Cr:0%超、1.0%以下およびV:0%超、0.5%以下の少なくとも1種を含有する請求項1に記載の鋼線用線材。
  3. 更に、Ni:0%超、0.5%以下およびNb:0%超、0.5%以下の少なくとも1種を含有する請求項1または2に記載の鋼線用線材。
  4. 更に、Co:0%超、1.0%以下を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の鋼線用線材。
  5. 更に、Mo:0%超、0.5%以下およびCu:0%超、0.5%以下の少なくとも1種を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の鋼線用線材。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の鋼の化学成分組成からなり、300℃における鋼中の水素拡散係数Dが下記(1)式を満足する鋼線。
    D≦2.5×10-7(cm2/秒) …(1)
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