JP2018159165A - 上半身用の下衣 - Google Patents
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Abstract
【課題】着用者に不快感を与えることなく小型電子機器を装着可能な上半身用の下衣を提供する。【解決手段】前身頃2と後身頃3と袖部4を構成する身生地によりネックホール及び裾部が形成され、小型電子機器を保持可能な保持部を備えた上半身用の下衣100であって、保持部10は、前身頃及び後身頃のうち後中心から左右胴周りに周長の5%の長さ以上偏った位置であって、ネックホールの頂点から裾部に垂下する30cmから裾部迄の長さの範囲に含まれる胴部領域R1、または、前身頃側でアームホールの上端と下端を結ぶ線分の中点を始点として袖先の上端と下端を結ぶ線分の中点を終点とする基準線を中心に、袖周りに周長の±12%以内の範囲であって、始点から0〜30cmの長さの範囲に含まれる袖部領域R2の何れかに設けられている。【選択図】図1
Description
本発明は、前身頃と後身頃を構成する身生地によりネックホール及び裾部が形成され、小型電子機器を保持可能な保持部を備えた上半身用の下衣に関する。
認知症を患った高齢者等の被保護者が、家族や保護者(以下、「保護者等」と記す。)が気付かないうちに、家や施設から抜け出して徘徊して、行方が不明となったり事故に遭遇したりといった社会問題が増えている。
特許文献1には、徘徊者に対してGPS(Global Positioning System)端末を装着することにより位置確認及び捜索を可能にした徘徊者用位置検知器付き衣服が提案されている。
当該徘徊者用位置検知器付き衣服は、GPS携帯端末本体とアンテナ部とで構成されるGPS携帯端末が固装され、GPS端末のアンテナ部が、所定の情報を受信しやすい位置に配されている。
また、特許文献2には、同様の目的でGPS端末を取り付けた衣服が提案されている。
しかし、GPS携帯端末とアンテナ部等の大掛かりな機器を衣服に装着すると、非常に大きな違和感を覚えるためか認知症患者はそのような機器が装着された衣服を脱ぎ棄てることがあり、効果的に活用できないという問題があった。
被保護者が着用する任意の上衣のポケット等にGPS端末等の小型電子機器を収容することも考えられるが、その場合には小型電子機器がどの上衣に装着されているのかを把握して、被保護者が着用している上衣に小型電子機器を装着する必要があるため、管理が煩雑になるという問題があった。
また、被保護者自身がポケット等から小型電子機器を容易に取り出すことができるため、保護者等が知らないうちに被保護者によって小型電子機器が取り出されると、小型電子機器に基づく被保護者の所在把握が不可能になる虞があり、また容易に取り出されると小型電子機器を紛失する虞もあった。
逆に、小型電子機器が容易に取り出せない態様で上衣に装着すると、被保護者が当該上衣以外の上衣を着用するときに、小型電子機器を容易に入れ替えることができなくなるという問題もあった。
そこで、被保護者が常時着用しているシャツ等の上半身用の下衣に小型電子機器を装着することが考えられるが、小型電子機器が肌に近い位置に配置されるため、小型電子機器の存在が被保護者に違和感を与えると下衣が脱ぎ捨てられたり、小型電子機器が下衣から離脱されたりする虞もあった。
ところで、そのような小型電子機器及び小型電子機器を用いた管理システムを保護者等が購入して運用する場合には、保護者等の負担が大きくなり、高価であればそれだけ活用の機会が失われるという問題もあった。
そこで、小型電子機器及び小型電子機器を用いた管理システムをレンタルできると管理者等にとって都合がよいのであるが、レンタル事業者が一旦着用された下衣を回収しても再利用するのは困難であるため、小型電子機器のみを回収して再利用することが望まれる。
本発明の目的は、上述した問題に鑑み、着用者に不快感を与えることなく小型電子機器を装着可能な上半身用の下衣を提供する点にある。
上述の目的を達成するため、本発明による上半身用の下衣の第一の特徴構成は、同請求項1に記載した通り、前身頃と後身頃を構成する身生地によりネックホール及び裾部が形成され、小型電子機器を保持可能な保持部を備えた上半身用の下衣であって、前記保持部は、前記前身頃及び前記後身頃のうち後中心から左右胴周りに周長の5%の長さ以上偏った位置であって、前記ネックホールの頂点から裾部に垂下する30cmから裾部迄の長さの範囲に含まれる胴部領域、または、前記前身頃側でアームホールの上端と下端を結ぶ線分の中点を始点として袖先の上端と下端を結ぶ線分の中点を終点とする基準線を中心に、袖周りに周長の±12%以内の範囲であって、前記始点から0〜30cmの長さの範囲に含まれる袖部領域の何れかに設けられている点にある。
上述した胴部領域、または袖部領域に保持部を設けると、当該上半身用の下衣の着用者が、直立、椅坐位、歩行、仰臥位、側臥位、伏臥位の何れの姿勢を取った場合であっても、比較的不快に感じる程度が低くなり、当該下衣を着用した状態でも長時間過ごせるようになる。
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、前身頃と後身頃を構成する身生地によりネックホール及び裾部が形成され、小型電子機器を保持可能な保持部を備えた上半身用の下衣であって、前記保持部は、前記前身頃及び前記後身頃のうち後中心から左右胴周りに周長の5%の長さ以上偏った位置であって、前記ネックホールの頂点から裾部に垂下する40〜60cmの長さの範囲に含まれる胴部領域、または、前記前身頃側でアームホールの上端と下端を結ぶ線分の中点を始点として袖先の上端と下端を結ぶ線分の中点を終点とする基準線を中心に、袖周りに周長の±12%以内の範囲であって、前記始点から0〜30cmの長さの範囲に含まれる袖部領域の何れかに設けられている点にある。
上述した胴部領域、または袖部領域に保持部を設けると、当該上半身用の下衣の着用者が、直立、椅坐位、歩行、仰臥位、側臥位、伏臥位の何れの姿勢を取った場合であっても、不快に感じる程度が著しく低くなり、当該下衣を着用した状態でも長時間過ごせるようになる。
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記保持部は、前記胴部領域のうち、前身頃の前中心から左右胴周りに周長の18%の長さの範囲及び/または後中心から左右胴周りに周長の5〜15%の長さの範囲に設けられている点にある。
上述の範囲であれば、上衣等によって保持部が押圧された場合でも、腸骨近傍の脂肪層が比較的薄い肌面に小型電子機器が押し付けられることがないので、より不快に感じる程度が低くなり、当該下衣を着用した状態でも長時間穏やかに過ごせるようになる。
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記保持部は、前記胴部領域のうち、前身頃の前中心から左右胴周りに周長の4〜18%の長さの範囲及び/または後中心から左右胴周りに周長の5〜15%の長さの範囲に設けられている点にある。
上述の範囲であれば、上衣等によって保持部が押圧された場合でも、腸骨近傍の脂肪層が比較的薄い肌面に小型電子機器が押し付けられることがないばかりでなく、伏臥位の姿勢で最も自重がかかりやすい腹部隆起の頂点で小型電子機器が押し付けられることによる不快感を軽減することができ、当該下衣を着用した状態でも長時間穏やかに過ごせるようになる。
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記保持部は、前記小型電子機器を収容する収容部と、前記収容部に前記小型電子機器を挿入する第1開口部と、前記第1開口部に前記小型電子機器を案内する案内部と、前記第1開口部と開口の向きが異なり前記案内部に前記小型電子機器を挿入する第2開口部を備えて構成されている点にある。
第2開口部から挿入された小型電子機器は、案内部に沿って第1開口部に導かれた後に、第2開口部とは向きが異なる第1開口部を経由して、つまり案内部に沿う向きとは異なる向きに姿勢変更操作されて収容部に収容される。収容部に収容された小型電子機器は、人為的に逆の手順で第2開口部まで案内操作されない限り、収容部から取り出すことはできないため、認知症患者のような被保護者が容易に小型電子機器を取り出すことはできなくなる。
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、前記保持部は、前記小型電子機器と装着者の体表面との間を電磁的に遮蔽する電磁シールド部材を備えている点にある。
保持部に収容された小型電子機器から電磁波が放出される場合であっても、電磁シールド部材によって電磁波が体表面から遮蔽されるので、電磁波による人体への影響が軽減される。
同第七の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、前記保持部は、前記小型電子機器の一部が装着者の体表面に直接接触するように前記小型電子機器を保持するように構成されている点にある。
保持部に装着された小型電子機器の一部が下衣の装着者の体表面に直接接触するように、例えば小さな開口が形成された収容部で構成されていれば、体温計等のバイタルデータ計測機器を小型電子機器として用いることができる。
以上説明した通り、本発明によれば、着用者に不快感を与えることなく小型電子機器を装着可能な上半身用の下衣を提供することができるようになった。
以下、本発明による上半身用の下衣を図面に基づいて説明する。
図1(a),(b)には、男性用の下衣の一例である長袖シャツ100が示されている。長袖シャツ100は、前身頃2と後身頃3と左右の袖部4,4を備え、それらを構成する身生地によりラウンドネックのネックホール5、左右のアームホール6,6及び裾部7が形成されている。左右のアームホール6,6のそれぞれに袖部4,4が取り付けられている。
図1(a),(b)には、男性用の下衣の一例である長袖シャツ100が示されている。長袖シャツ100は、前身頃2と後身頃3と左右の袖部4,4を備え、それらを構成する身生地によりラウンドネックのネックホール5、左右のアームホール6,6及び裾部7が形成されている。左右のアームホール6,6のそれぞれに袖部4,4が取り付けられている。
図1(a)には、前身頃2のうち前中心FCから僅かに左側に偏った位置で、且つ、着用した状態で腸骨より下方の位置で、肌に接する側に小型電子機器8を保持可能な保持部10が設けられた例が示され、図1(b)には、着用した状態で上腕に対応し、袖部の腹側(前身頃側)に小型電子機器8を保持可能な保持部10が設けられた例が示されている。
本実施形態では、小型電子機器8は認知症患者等の被保護者の所在確認のために使用される機器であり、着用者の所在を近傍に設置された受信装置に向けて報知する無線タグで構成されている。
無線タグとしてBLE端末やアクティブRFIDなどの発信装置が好適に用いられる。BLEとは、Bluetooth Low Energyの略語(Bluetoothは登録商標)であり、低消費電力の近距離無線通信インタフェースをいい、BLE端末とはBLEが組み込まれた端末装置をいい、以下の説明では単に「ビーコン」と記す。またアクティブRFIDとは電池内蔵の無線発信タグである。
ビーコンは、蓋体を備えた筒状の樹脂ケースに、発信部を構成する発信モジュールと、発信モジュールに電力を供給するボタン型電池が収容されて構成されている。発信モジュールには、固有の識別情報が記憶されたメモリと、アンテナと、メモリから読み出した識別情報を所定時間間隔で発信する発信回路を備えている。
無線タグが離脱困難な状態で衣類の収容部に収容されていることと相俟って、当該衣類は、無線タグに備えた発信部から発信される固有の識別情報により一意に特定可能になるように構成されている。
樹脂ケースに発信モジュールとボタン型電池が収容されることにより防水処理された無線タグとなり、保持部に無線タグが収容された状態で当該衣類を洗濯することができるように構成されている。無線タグを防水処理するための態様は特に限定されることはない。例えば、発信モジュールとボタン型電池を一体にして防水機能を備えた樹脂部材などの被覆材で被覆すればよい。
当該ビーコンは、直径が約30mm、厚さが約10mm、重さが約6gの円盤状の素子で、筒状ケーシングの内部にバッテリと、近距離無線通信規格の一つであるブルートゥース(登録商標)を採用した通信回路が収容されている。当該近距離無線通信規格によれば、約10m程度の範囲で無線通信が可能になる。
例えば、被保護者が居住する部屋にビーコンからの電波を受信する受信機が設置されている。当該受信機にはブルートゥース(登録商標)通信回路と、WiFi用の無線回路と、ビーコン検知回路が組み込まれている。
ビーコン検知回路は、ビーコンから所定のインタバルで発信される電波が当該ブルートゥース(登録商標)通信回路によって受信される間は被保護者が部屋にいると認識し、ビーコンから発信される電波が当該ブルートゥース(登録商標)通信回路によって所定の不在検知時間以上連続して確認されないときに、被保護者が部屋から退室して何れかに徘徊したと認識する制御プログラムが格納されたメモリと、当該制御プログラムを実行するマイクロコンピュータを備えている。
ビーコン検知回路は、被保護者が部屋から退室して何処かに徘徊したと認識すると、WiFi無線回路を介して予めアドレスが登録された保護者のスマートフォンに向けて、被保護者が部屋から退室したことを知らせる電子メールを送信するように構成されている。従って、保護者は常時被保護者を目視確認しなくても、被保護者が在室しているか、室外に徘徊したかを認識できるようになる。
尚、小型電子機器8はビーコンやアクティブRFIDに限るものではなく、例えばGPS端末のような位置確認機器で構成されていてもよい。GPS端末から発信される電波によってGPS端末の位置情報が把握され、その位置情報が予めアドレスが登録された保護者のスマートフォンに送信されるように構成することにより、常時保護者が被保護者のいる位置を確認することができるようになる。
図2(a)には、保持部10の一例が示されている。保持部10は、身頃を構成する身生地と同じ生地を用いて平面視矩形の袋状に構成され、左右側部が前身頃2を構成する身生地に縫着されている。
保持部10は、小型電子機器8を収容する収容部11と、収容部11に小型電子機器8を挿入する第1開口部12と、第1開口部12に小型電子機器8を案内する案内部13と、第1開口部12と開口の向きが異なり案内部13に小型電子機器8を挿入する第2開口部14を備えて構成されている。
図2(b)に示すように、小型電子機器8は、上方に開口した第2開口部14から案内部13に向けて下方に挿入され、図2(c)に示すように、案内部13に沿って下方に位置する第1開口部12まで導かれる。
図2(d)に示すように、その後第1開口部12の縁部を上方に撓ませることにより、小型電子機器8を、第1開口部12を通過させて収容部11に収容する。収容部11に収容された小型電子機器8は、人為的に逆の手順で第2開口部14まで案内操作されない限り、収容部11から取り出すことはできないため、認知症患者のような被保護者が収容部11から容易に小型電子機器8を取り出すことはできなくなる。
この例では、第1開口部12の開口方向と第2開口部の開口方向が180°異なる例を示したが、第1開口部12の開口方向と第2開口部の開口方向が異なっていればよく、例えば90°異なる向きに形成されていてもよい。
他の例として、身頃を構成する身生地と同じ生地を用いて平面視矩形の袋状に構成され、無線タグが収容された保持部を前身頃を構成する身生地に縫着処理または接着処理して取り外せないように構成してもよい。つまり、保持部2は、内部に収容された収容物を離脱困難な状態に収容するように構成されていればよい。
収容部11を構成する身生地の内側面及び/または外側面が撥水加工されていると好適である。また、収容部11の外側面で肌に接する部位は吸水加工にし、内側面は撥水加工にすることもできる。そうすることで、収容された小型電子機器8が水分で破損しないように保護できる点で好都合である。
また、小型電子機器がビーコンのように電磁波を出力する機器であれば、収容部11を構成する生地のうち肌側面に、小型電子機器8と装着者の体表面との間を電磁的に遮蔽する電磁シールド部材が配されていることが好ましい。電磁シールド部材として電磁波反射部材または電磁波吸収部材を用いることができる。
電磁波反射部材として、芯糸を銀などの金属で被覆した導電糸を用いた編地や織地などの布帛を用いることができる。収容部11を構成する生地のうち肌側面に導電糸を用いた編成領域を設けてもよい。また、収容部11を構成する生地に導電性粒子を混入した塗料を塗布してもよいし、樹脂に導電性粒子を分散させたパッドを介在させてもよい。電磁波吸収部材として、磁性体や誘電体を混入した塗料を用いることも可能で、収容部11を構成する生地に当該塗料を塗布すればよいし、樹脂に磁性体や誘電体を分散させたパッドを介在させてもよい。なお、これらは一例に過ぎず、適宜公知の電磁波反射部材や電磁波吸収部材を用いることができる。
このような上半身用の下衣を被保護者が着用することにより、保護者が遠隔で被保護者の所在確認ができるようになる。
身生地を編成する原糸として綿等の天然繊維が好適に用いられる。天然繊維以外に、キュプラ、ビスコースレーヨン等の再生セルロース繊維、ポリエステル等の合成繊維等を用いることも可能である。ポリウレタン糸を軸に天然繊維等を巻き付けたカバリング糸を用いると、伸縮性を備えたフィット感の得られる下衣を構成することも可能になる。
身生地1として天竺編、フライス編み、スムース編み、パール編等の緯編地を好適に用いることができ、コース方向が身幅に沿うように、そしてウェール方向が着丈に沿うように用いられることが好ましい。
また、身生地1として、熱変形性弾性糸とそれ以外の糸をプレーティング編みで編成し、ヒートセット加工で熱変形性弾性糸を融着させることにより解れ止め加工した編地で、端縁が切りっ放し処理されている編地を用いることも可能である。
上述した例では、上半身用の下衣として長袖シャツを例示して説明したが、7分袖、五分袖、半袖のシャツ、またはノースリーブのシャツであってもよい。また、ラウンドネック以外にUネック、Vネックなど任意の形状のネックホールを選択できる。勿論、男性用の下衣だけでなく、女性用の下衣にも適用可能であることはいうまでもない。
さらに、身生地1として平織、綾織、朱子織等の織地を採用し、前身頃を左右で分離して前打合せでボタン留めするような前開きタイプのシャツに適用することも可能である。
図3(a)及び図4(a)に示すように、保持部10に保持された小型電子機器8によって、着用者に不快感を与えることが無いように、保持部10は、平置き状態で、長袖シャツ100の前身頃2及び後身頃のうち後中心から左右胴周りに周長の5%の長さ以上偏った位置であって、ネックホール5の頂点、本実施形態では左右のサイドネックポイント5aから裾部に垂下する30cmから裾部迄の長さの範囲に含まれる胴部領域R1、さらに好ましくは左右のサイドネックポイント5aから裾部に垂下する40〜60cmの長さの範囲に含まれる胴部領域R1に設けられていることが好ましい。
後中心から左右胴周りに非着用時の胴部周長の5%の長さの範囲に保持部10を設けると、上衣等によって腰椎近傍の脂肪層が薄い肌面に小型電子機器8が押し付けられた感触が強くなる。しかし、後中心から左右胴周りに周長の5%の長さ以上偏った位置に保持部10を設けると、当該上半身用の下衣の着用者が、直立、椅坐位、歩行、仰臥位、側臥位、腹臥位の何れの姿勢を取った場合であっても、比較的不快に感じる程度が低くなり、当該下衣を着用した状態でも長時間過ごせるようになる。
換言すると、着用状態で腰椎近傍の脂肪層が薄い肌面近傍に小型電子機器8が位置しないように当該領域以外に保持部10を配置することが好ましい。
また、長袖シャツ100の着用時に、腸骨点に対応する位置より上方位置に保持部10が配置されると、伏臥位や仰臥位の姿勢となった場合に小型電子機器8であるビーコンにより身体が圧迫されて不快に感じやすいため、腸骨点に対応する位置より下方位置に保持部10を配置することが望ましい。
図5の上段及び中段には、男女各世代の統計的な体型データとして、頸椎高、腸骨棘高が示されている。女性で50〜70歳代の平均頸椎高は1298mm、平均腸骨棘高は811mmであるので、平均頸椎高と平均腸骨棘高の差は487mmとなる。同様に、男性で50〜70歳代の平均頸椎高は1410mm、平均腸骨棘高は879mmであるので、平均頸椎高と平均腸骨棘高の差は531mmとなる。
長袖シャツ100の着用時に、ネックホール5の頂点、本実施形態では左右のサイドネックポイント5aが頸椎に相当するので、女性の場合、平均値で頂点よりも487mmより下方に、また男性の場合、平均値で頂点よりも531mm下方に配すると、ビーコンにより身体が圧迫されるようなことがない。そこで、個人差をも考慮すると、左右のサイドネックポイント5aから裾部に垂下する40〜60cmの長さの範囲に含まれる胴部領域R1に保持部10が設けられていることが好ましく、45〜55cmの長さの範囲に含まれる胴部領域R1に保持部10が設けられていることがより好ましい。
さらに、図3(b)に示すように、保持部10は、前身頃のうち前中心から左右胴周りに非着用時の胴部開口部の周長の18%の長さの範囲及び/または後中心から左右胴周りに非着用時の胴部開口部の周長の5〜15%の長さの範囲に設けられているのが好ましい。
上述の範囲であれば、上衣等によって保持部10が押圧された場合でも、腸骨近傍の脂肪層が比較的薄い肌面に小型電子機器が押し付けられることがないので、より不快に感じる程度が低くなり、当該下衣を着用した状態でも長時間穏やかに過ごせるようになる。
換言すると、着用状態で腸骨近傍の脂肪層が比較的薄い肌面近傍に小型電子機器8が位置しないように当該領域以外に保持部10を配置することが好ましい。この場合も、上述の範囲で前身頃側及び後身頃側の双方に保持部10を設けることが好ましい。
図3(c)に示すように、保持部10は、前身頃のうち前中心から左右胴周りに非着用時の胴部開口部の周長の4〜18%の長さの範囲に設けられていることがさらに好ましい。
上述の範囲であれば、上衣等によって保持部10が押圧された場合でも、腸骨近傍の脂肪層が比較的薄い肌面に小型電子機器が押し付けられることがないばかりでなく、伏臥位の姿勢で最も自重がかかりやすい腹部隆起の頂点で小型電子機器が押し付けられることによる不快感を軽減することができ、当該下衣を着用した状態でも長時間穏やかに過ごせるようになる。
さらに、図4(b)に示すように、保持部10は、平置き状態で、長袖シャツ100の前身頃2側でアームホール6の上端6aと下端6bを結ぶ線分P1の中点P1cを始点として袖先6cの上端と下端を結ぶ線分P2の中点P2cを終点とする基準線Lを中心に、袖周りに周長の±12%以内(約1/4周)の範囲であって、始点P1cから0〜30cmの長さの範囲に含まれる袖部領域R2に設けられていることが好ましい。また、始点P1cから15〜25cmの長さの範囲に含まれる袖部領域R2に設けられていることがさらに好ましい。
図5の下段には、男女各世代の統計的な体型データとして、上腕長が示されている。女性で50〜70歳代の平均上腕長は278mmとなり、男性で50〜70歳代の平均上腕長は303mmとなる。従って、始点P1cから0〜30cmの長さの範囲に袖部領域R2を設定すると確実に上腕に保持部10を設けることができる。
このような袖部領域R2に保持部10を設けると、仰臥位および側臥位の姿勢で、上腕の内旋および前腕の回内、上腕の外旋および前腕の回外動作を行なった場合でも、床面にビーコンが当たって腕がビーコンで圧迫されるといった不快な状態になり難いので好ましい取付け位置となる。
上述した胴部領域R1に単一の保持部10を設けると、小型電子機器8であるビーコンと受信機との間に装着者が挟まれるような位置関係になった場合に、ビーコンからの微弱な電波が装着者の身体で吸収されて受信機で受信されなくなる虞がある。その結果、被保護者が居室から外部に徘徊したと誤った判断を招くことになる。
そのような場合でも、上述の胴部領域R1の範囲で前身頃側及び後身頃側の双方に保持部10を設けると、一方のビーコンからの微弱な電波が装着者の身体で吸収されて受信機で受信されなくなるような場合でも他方のビーコンからの微弱な電波が受信機で受信される確率が高くなり、誤判断を招く虞を低減することができる。
同様の理由で上述の胴部領域R1及び袖部領域R2の双方に保持部10を設けることが好ましい。この場合、後身頃の右方に位置する胴部領域R1と左袖部の袖部領域R2に保持部10を設け、或いは後身頃の左方に位置する胴部領域R1と右袖部の袖部領域R2に保持部10を設けるというように、一方のビーコンからの微弱な電波が装着者の身体で吸収されて受信機で受信されなくなるような場合でも他方のビーコンからの微弱な電波が受信機で受信される確率が高くなるような組み合わせで保持部10を設けることが好ましい。なお、ノースリーブのシャツの場合には、胴部領域R1のみがビーコンの装着対象領域となる。
以上、身頃生地の肌に接する側に保持部10を配置した例を説明したが、身頃生地の肌と反対側に保持部10を配置してもよい。外側面に配置した場合は、着用快適性上望ましく、肌側面に配置した場合は、着用者に目視されにくいという点で望ましい。
上述した実施形態では、小型電子機器8がビーコンである場合を説明したが、本発明の対象となる小型電子機器8はビーコンに限るものではなく、着用者の体温、脈拍、血圧、呼吸数等のバイタルデータを計測する機器であってもよい。違和感を与えることなく着用者のバイタルデータを常時収集できるようになる。
このような小型電子機器8は、計測したバイタルデータを外部機器に発信する無線通信インタフェースを備えていることが好ましいが、必ずしも無線通信インタフェースを備えている必要はない。例えば、コンピュータに接続したときにデータを出力可能なように計測されたバイタルデータを格納するデータメモリを備えていればよい。このような機器として体温計を好適に採用することができ、体温計の感温部が直接肌に接触するように保持部に小さな開口が形成されていることが好ましい。
図1(a),(b)に示すように、上述した上半身用の下衣には、無線タグに付された識別情報と対応付けられたコード情報が印刷された布帛製のラベル9が縫着されている。コード情報の表示態様としてQRコード(登録商標)のような2次元バーコードが好適に用いられる。コード情報は無線タグのメモリに記憶された固有の識別情報と対応付けられ、コード情報を把握することにより無線タグの識別情報を把握することができるように構成されている。なお、コード情報と識別情報とが同じ情報であってもよく、また、コード情報が付されたラベル9に代えて身生地の肌側にコード情報が直接印刷されていてもよい。また、コード情報は文字列や数列で表示されていてもよい。もちろん無線タグ1の表面にコード情報を表示してもよく、衣服と無線タグ1との両方にコード情報を表示するとなおよい。
仮に無線タグが故障して識別情報が発信されなくなっても、コード情報を読み取ることにより当該無線タグの識別情報を把握することができ、無線タグから発信される識別情報を受信する機器が無い場合でも、コード情報を読み取ることにより当該無線タグの識別情報を把握することができる。コード情報と衣類の所有者を対応付けることができるので、コード情報を読み取れば所有者を容易に把握できるようになる。ラベルに油性筆記具などで所有者の名前を記入するための欄を設けていてもよい。
以下に上述したような好適な保持部の位置を求めるための官能試験を行なった結果を説明する。
図6(a)から(c)に示すように、男性用下衣として長袖シャツ100を試験サンプルとして採用し、女性用下衣として七分袖のシャツ100を試験サンプルとして採用し、図に示すように符号1から33の丸印で示した位置に保持部となるビーコンが収容された袋状物を面ファスナーで張り付けた。なお、女性用の試験サンプルでは、符号18,20,22,24は七分袖の袖先に対応する位置となる。
3名の男性被験者と3名の女性被験者が、それぞれの下衣を着用して、直立、椅坐位、歩行、仰臥位、側臥位、腹臥位の6種類の動作を行い、それぞれの姿勢を取った時の快適度を6段階で評価した。図8に評価得点表を示している。
図9には、男性被験者による官能試験の結果(被験者の評価点及び平均値)が示され、図10には、女性被験者による官能試験の結果(被験者の評価点及び平均値)が示されている。
図7(a)から(c)には、官能試験の結果、男性被験者が良好と評価した位置が破線の逆三角形で示され、女性被験者が良好と評価した位置が破線の正三角形で示されている。そして、男女ともに良好と評価した位置がネガポジ反転した丸印の符号で示されている。
この結果、何れの位置も上述した胴部領域R1及び袖部領域R2に含まれることが明らかになり、特に、図3(c)に示した前身頃のうち前中心から左右胴周りに非着用時の胴部開口部の周長の4〜18%の長さの範囲で、サイドネックポイントから裾部に垂下する40〜60cmの長さの範囲に含まれる胴部領域R1が好適な位置であることが裏付けられた。
着用者の挙動の把握、バイタルデータの測定等のために、着用者に不快感を与えることなく小型電子機器を装着可能な上半身用の下衣として広く活用される。
2:前身頃
3:後身頃
4:袖部
5:ネックホール
6:アームホール
7:裾部
8:小型電子機器(ビーコン、体温計等)
9:ラベル
10:保持部
100:上半身用の下衣
3:後身頃
4:袖部
5:ネックホール
6:アームホール
7:裾部
8:小型電子機器(ビーコン、体温計等)
9:ラベル
10:保持部
100:上半身用の下衣
Claims (7)
- 前身頃と後身頃を構成する身生地によりネックホール及び裾部が形成され、小型電子機器を保持可能な保持部を備えた上半身用の下衣であって、
前記保持部は、前記前身頃及び前記後身頃のうち後中心から左右胴周りに周長の5%の長さ以上偏った位置であって、前記ネックホールの頂点から裾部に垂下する30cmから裾部迄の長さの範囲に含まれる胴部領域、または、前記前身頃側でアームホールの上端と下端を結ぶ線分の中点を始点として袖先の上端と下端を結ぶ線分の中点を終点とする基準線を中心に、袖周りに周長の±12%以内の範囲であって、前記始点から0〜30cmの長さの範囲に含まれる袖部領域の何れかに設けられている上半身用の下衣。 - 前身頃と後身頃を構成する身生地によりネックホール及び裾部が形成され、小型電子機器を保持可能な保持部を備えた上半身用の下衣であって、
前記保持部は、前記前身頃及び前記後身頃のうち後中心から左右胴周りに周長の5%の長さ以上偏った位置であって、前記ネックホールの頂点から裾部に垂下する40〜60cmの長さの範囲に含まれる胴部領域、または、前記前身頃側でアームホールの上端と下端を結ぶ線分の中点を始点として袖先の上端と下端を結ぶ線分の中点を終点とする基準線を中心に、袖周りに周長の±12%以内の範囲であって、前記始点から0〜30cmの長さの範囲に含まれる袖部領域の何れかに設けられている上半身用の下衣。 - 前記保持部は、前記胴部領域のうち、前身頃の前中心から左右胴周りに周長の18%の長さの範囲及び/または後中心から左右胴周りに周長の5〜15%の長さの範囲に設けられている請求項1または2記載の上半身用の下衣。
- 前記保持部は、前記胴部領域のうち、前身頃の前中心から左右胴周りに周長の4〜18%の長さの範囲及び/または後中心から左右胴周りに周長の5〜15%の長さの範囲に設けられている請求項1または2記載の上半身用の下衣。
- 前記保持部は、前記小型電子機器を収容する収容部と、前記収容部に前記小型電子機器を挿入する第1開口部と、前記第1開口部に前記小型電子機器を案内する案内部と、前記第1開口部と開口の向きが異なり前記案内部に前記小型電子機器を挿入する第2開口部を備えて構成されている請求項1から4の何れかに記載の上半身用の下衣。
- 前記保持部は、前記小型電子機器と装着者の体表面との間を電磁的に遮蔽する電磁シールド部材を備えている請求項1から5の何れかに記載の上半身用の下衣。
- 前記保持部は、前記小型電子機器の一部が装着者の体表面に直接接触するように前記小型電子機器を保持するように構成されている請求項1から5の何れかに記載の上半身用の下衣。
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JP2017054618 | 2017-03-21 |
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Family Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2017183794A Pending JP2018159165A (ja) | 2017-03-21 | 2017-09-25 | 上半身用の下衣 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2018159165A (ja) |
-
2017
- 2017-09-25 JP JP2017183794A patent/JP2018159165A/ja active Pending
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