JP2018159084A - インサート成形用フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】樹脂組成物からなる基部の表面に、他の部品と動的に接触した際に擦れ音(軋み音)の発生を抑制する樹脂膜部の形成に好適なインサート成形用フィルム、並びに、これらの基部及び樹脂膜部を備える複合物を製造する方法の提供。【解決手段】本発明のインサート成形用フィルム1は、エチレン・α−オレフィン系ゴム等のゴム質重合体に由来する部分(a1)を含む熱可塑性樹脂を含有し、且つ、JIS K 7121−1987に準ずる融点が0〜120℃の範囲にある熱可塑性樹脂組成物からなる。熱可塑性樹脂は、ゴム質重合体に由来する部分(a1)と、ビニル系単量体に由来する構造単位を含むビニル系(共)重合体に由来する部分(a2)とを含むゴム強化ビニル系樹脂であることが好ましい。【選択図】図1

Description

本発明は、射出成形用金型を用いて、他の部品と動的に接触した際に擦れ音(以下、「軋み音」という)の発生を抑制する樹脂膜部と、樹脂組成物からなる基部とが接合された積層物(以下、「インサート成形品」又は「軋み音低減化複合物」ともいう)の製造に用いられ、樹脂膜部の形成に好適な表皮材フィルムであるインサート成形用フィルムに関する。
熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムを射出成形用金型の内部に配置し、射出成形用金型のキャビティに、樹脂組成物を射出して複合物を製造する、所謂、インサート成形法が知られている。従来、この方法は、例えば、文字、数字、模様、デザイン、絵、写真等の画像等が形成されたフィルム(単層又は多層からなる加飾フィルム)を用いて、加飾された複合物を製造する方法として広く適用されている(例えば、特許文献1〜3等)。
これらの文献において、加飾フィルムのベース樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、これらの混合樹脂等が用いられている。
ところで、熱可塑性樹脂組成物又は硬化樹脂組成物は、今日、あらゆる場面で使用されており、目的に応じた作用を有する部品になりつつある。特に、近年、車両、OA(オフィスオートメーション)機器、家庭電化機器、電気・電子機器、建材等の分野で用いられる熱可塑性樹脂製部品(「熱可塑性樹脂組成物Xからなる部品」とする)の中には、熱可塑性樹脂組成物Xと同一の若しくは異なる材料からなる熱可塑性樹脂製部品、硬化樹脂製部品、又は、金属若しくは無機化合物からなる無機材料製部品等の他の部品と組み合わせて用いられるものがある。例えば、熱可塑性樹脂製部品と他の部品とを接触配置させたり、これらの部品を、所定の間隔をもって配置させたりするというものである。このような態様において、熱可塑性樹脂製部品どうしが隣接(単に両者が接触している若しくは一部に接着部を有しつつ両者が接触している、あるいは、両者が所定の間隔をもって配置される)している場合、振動、回転、ねじれ、摺動、衝撃等により一方若しくは両方が移動又は変形して動的に接触して、軋み音(擦れ音)が発生することが知られている。例えば、自動車内に配設されたエアコン又はオーディオの筐体部品と、その周縁又は内部に配置された嵌合部品とが、振動等により擦れ合って、不快な音を発するというものである。この軋み音は、二つの物体が擦れ合った際に発生するスティックスリップ現象に起因する音であり、物体どうしの摺動性とは異なるものといわれている。
軋み音対策が施された部品として、例えば、特許文献4には、ポリプロピレン系樹脂及びポリスチレン系樹脂を用いた型内発泡成形体と、この成形体の凹凸を有する表面に形成された、不織布又はフェルトからなる外装材と、を備える積層体が開示されている。そして、この積層体は、外装材の表面に他の構造物が接した際に、即ち、不織布又はフェルトに、擦れによる音なりの抑制効果を有することが記載されている。
特開2002−338797号公報 特開2005−349839号公報 特開2013−1855号公報 特開2011−73196号公報
特許文献4に記載された積層体を製造する場合には、実質的に、型内発泡成形体と、外装材と、これらを接合する接着剤とを必要とし、経済的に好ましくなかった。そこで、本発明者らは、接着剤を用いずに、1の樹脂部分と、他の材料からなる部分とを接合するインサート成形法を利用して得られる、表層樹脂部及び樹脂基部からなる積層物であって、表層樹脂部の表面において軋み音対策が施された物品の製造方法について検討した。
本発明は、可撓性及び真空成形性に優れ、樹脂組成物からなる基部の表面に、他の部品と動的に接触した際に軋み音の発生を抑制する樹脂膜部の形成に好適なインサート成形用フィルム、並びに、これらの基部及び樹脂膜部を備える積層物(軋み音低減化複合物、インサート成形品)を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明は以下のとおりである。
1.ゴム質重合体に由来する部分(a1)を含む熱可塑性樹脂を含有し、且つ、JIS K 7121−1987に準ずる融点が0〜120℃の範囲にある熱可塑性樹脂組成物からなることを特徴とするインサート成形用フィルム。
2.上記ゴム質重合体が、エチレン・α−オレフィン系ゴムである上記1に記載のインサート成形用フィルム。
3.上記エチレン・α−オレフィン系ゴムが、JIS K 7121−1987に準ずる融点が0〜120℃の範囲にある共重合体である上記2に記載のインサート成形用フィルム。
4.上記熱可塑性樹脂が、上記部分(a1)と、ビニル系樹脂に由来する部分(a2)とを含むゴム強化ビニル系樹脂である上記1乃至3のいずれか一項に記載のインサート成形用フィルム。
5.厚さが50〜300μmである上記1乃至4のいずれか一項に記載のインサート成形用フィルム。
6.上記1乃至5のいずれか一項に記載のインサート成形用フィルムを射出成形用金型の内部に配置する工程、及び、上記射出成形用金型のキャビティに、樹脂組成物を射出する工程、を備えることを特徴とするインサート成形品の製造方法。
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルを、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートを、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基又はメタクリロイル基を、「(共)重合体」は、単独重合体及び共重合体を意味する。
また、JIS K 7121−1987に準ずる融点(以下、「Tm」と表記する)は、DSC(示差走査熱量計)を用い、1分間に20℃の一定昇温速度で吸熱変化を測定し、得られた吸熱パターンのピーク温度を読みとった値である。
本発明のインサート成形用フィルムは、特定の熱可塑性樹脂組成物により形成されて可撓性を有するので、可撓性及び真空成形性に優れ、射出成形用金型を用いたインサート成形法によりこの組成物と同一の若しくは異なる熱可塑性樹脂組成物又は硬化樹脂組成物からなる基部の表面に、他の部品と動的に接触した際に軋み音の発生を抑制する樹脂膜部の形成、即ち、これらの基部及び樹脂膜部を備える積層物(軋み音低減化複合物、インサート成形品)の製造に好適である。得られた積層物が用いられて、その樹脂膜部が、インサート成形用フィルムを構成する熱可塑性樹脂組成物と同一又は他の材料からなる部品(他の部品)に隣接(単に両者が接触している若しくは一部に接着部を有しつつ両者が接触している、あるいは、両者が所定の間隔をもって配置される)した構造を形成する場合には、振動、回転、ねじれ、摺動、衝撃等により一方若しくは両方が移動又は変形して動的に接触(面接触、線接触又は点接触)しても、発生する軋み音が低減されるかあるいは軋み音の発生が抑制される。また、得られた積層物(軋み音低減化複合物、インサート成形品)は、孔部又は凹部を有する他の部品における該孔部又は該凹部への嵌挿に用いられる部材、及び、孔部又は凹部を有する部材、のいずれにおいても好適であり、特に、車両内装部品として好適である。
本発明のインサート成形用フィルムを用いて、積層物(軋み音低減化複合物、インサート成形品)を製造する方法の一例を説明する概略断面図である。 本発明の方法により得られた積層物(軋み音低減化複合物、インサート成形品)の一例を示す概略断面図である。 本発明の方法により得られた積層物(軋み音低減化複合物、インサート成形品)と、他の部品とを用いて形成された複合物の一例を示す概略断面図である。 〔実施例〕における真空成形性の評価に用いた型を示す概略斜視図である。 〔実施例〕における真空成形性の評価方法を説明する概略断面図である。 〔実施例〕における軋み音評価で用いた試験体を示す概略断面図である。 〔実施例〕における軋み音評価の方法を示す概略斜視図である。
本発明のインサート成形用フィルムは、ゴム質重合体に由来する部分(a1)(以下、「ゴム質重合体部(a1)」ともいう)を含む熱可塑性樹脂(以下、「熱可塑性樹脂(X)」ともいう)を含有し、且つ、Tmが0℃〜120℃の範囲にある熱可塑性樹脂組成物からなり、可撓性を有する。本発明のインサート成形用フィルムは、これを構成する熱可塑性樹脂組成物と同一の又は異なる熱可塑性樹脂組成物、硬化樹脂組成物、架橋ゴム(加硫ゴムを含む)、繊維集合体、金属(合金を含む)、ガラス、セラミックス等を含む他の部品と動的に接触すると、軋み音の発生が抑制されるといった性能を有する。従って、本発明のインサート成形用フィルム1と、射出成形用金型11,12とを用いて、図1における(A)、(B)、(C)及び(D)に従って、インサート成形法に供することにより、樹脂成形部3の表面に、他の部品と動的接触した際に軋み音の低減効果を有する樹脂膜部4(以下、単に「樹脂膜部」ということがある)が接合されてなる積層物(軋み音低減化複合物)5を好適に製造することができる。更に、この積層物(軋み音低減化複合物)5は、本発明のインサート成形用フィルム1を、別の工程により、予め、所定の形状に調整されたフィルム構造体1aとした後、これを用いて、図1における(B)、(C)及び(D)に従って、インサート成形法に供することにより、製造することもできる。
上記熱可塑性樹脂組成物のTmは、インサート成形法により形成される樹脂膜部における軋み音の低減効果及び機械的強度の観点から、0℃〜120℃の範囲にあり、好ましくは10℃〜90℃、より好ましくは20℃〜80℃の範囲にある。尚、上記のように、Tmは、JIS K 7121−1987に準じて得られるが、0℃〜120℃の範囲における吸熱パターンのピークの数は、一つに限定されず、二つ以上でもよい。また、0℃〜120℃の範囲に見られるTmは、熱可塑性樹脂(X)に由来するものであってもよく、必要に応じて配合される他の熱可塑性樹脂や、ポリオレフィンワックス等の離型剤等に由来するものであってもよい。
上記熱可塑性樹脂(X)は、ゴム質重合体に由来するゴム質重合体部(a1)を含む熱可塑性樹脂であり、一分子の熱可塑性樹脂(X)を構成するゴム質重合体部(a1)は、一種のみであってよいし、二種以上であってもよい。
上記ゴム質重合体は、25℃でゴム質であれば、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。本発明においては、ジエン系重合体(以下、「ジエン系ゴム」という)及び非ジエン系重合体(以下、「非ジエン系ゴム」という)のいずれを用いてもよい。また、これらの重合体は、架橋重合体であってもよいし、非架橋重合体であってもよい。
上記ジエン系ゴムとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン等の単独重合体;スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合体等のスチレン・ブタジエン系共重合体ゴム;スチレン・イソプレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・イソプレン共重合体等のスチレン・イソプレン系共重合体ゴム等が挙げられる。これらの共重合体は、ブロック共重合体でもよいし、ランダム共重合体でもよい。また、これらの共重合体は、水素添加(但し、水素添加率は50%未満。)されたものであってもよい。
また、上記非ジエン系ゴムとしては、エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム(以下、「エチレン・α−オレフィン系ゴム」という);ウレタン系ゴム;アクリル系ゴム;シリコーンゴム;シリコーン・アクリル系IPNゴム;共役ジエン系化合物に由来する構造単位を含む(共)重合体を水素添加してなる水素添加重合体等が挙げられる。この水素添加重合体は、ブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよい。また、これらの共重合体は水素添加(但し、水素添加率は50%以上。)されたものであってもよい。
本発明において、上記ゴム質重合体は、非ジエン系ゴムであるエチレン・α−オレフィン系ゴムを含むことが好ましい。
上記エチレン・α−オレフィン系ゴムは、エチレンに由来する構造単位と、α−オレフィンに由来する構造単位とを含む共重合体ゴムである。
α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセン等が挙げられる。これらのα−オレフィンは、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。α−オレフィンの炭素原子数は、耐衝撃性の観点から、好ましくは3〜20、より好ましくは3〜12、更に好ましくは3〜8である。
上記エチレン・α−オレフィン系ゴムを構成する、エチレンに由来する構造単位及びα−オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、インサート成形法により形成される樹脂膜部における軋み音の低減効果及び耐衝撃性の観点から、両者の合計を100質量%とした場合に、好ましくは5〜95質量%及び95〜5質量%、より好ましくは50〜95質量%及び50〜5質量%、更に好ましくは60〜95質量%及び40〜5質量%である。
本発明において、好ましいエチレン・α−オレフィン系ゴムは、Tmが0℃〜120℃の範囲にあるエチレン・α−オレフィン系共重合体であり、その限りにおいて、他の単量体に由来する構造単位を有してもよい。他の単量体としては、アルケニルノルボルネン類、環状ジエン類、脂肪族ジエン類等の非共役ジエン化合物が挙げられる。これらの非共役ジエン化合物は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。非共役ジエン化合物に由来する構造単位の含有割合の上限は、上記エチレン・α−オレフィン系ゴムを構成する構造単位の全量を100質量%とした場合に、好ましくは10質量%、より好ましくは5質量%、更に好ましくは3質量%である。
上記エチレン・α−オレフィン系ゴムのTmは、インサート成形法により形成される樹脂膜部における軋み音の低減効果及び耐衝撃性の観点から、好ましくは10℃〜90℃、より好ましくは20℃〜80℃である。尚、エチレン・α−オレフィン系ゴムのTmが0℃〜120℃の範囲に存在することは、このゴムが結晶性を有することを意味している。エチレン・α−オレフィン系ゴムが結晶性部分を有すると、スティックスリップ現象の発生が抑制されて、樹脂膜部と、他の部品との動的接触による軋み音の発生が低減されるものと考えられる。
上記エチレン・α−オレフィン系ゴムは、インサート成形法により形成される樹脂膜部における軋み音低減効果の観点から、エチレンに由来する構造単位と、α−オレフィンに由来する構造単位とからなるエチレン・α−オレフィン共重合体であることが好ましい。本発明においては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体が好ましく、エチレン・プロピレン共重合体が特に好ましい。
上記ゴム質重合体部(a1)がエチレン・α−オレフィン系ゴムに由来するものである場合、インサート成形法により形成される樹脂膜部における軋み音の低減効果及び耐衝撃性の観点から、上記熱可塑性樹脂(X)を100質量%とした場合に、好ましくは20〜90質量%、より好ましくは40〜85質量%、更に好ましくは55〜80質量%である。
本発明において、上記ゴム質重合体部(a1)が、エチレン・α−オレフィン系ゴム、及び、他のゴムの両方に由来するものである場合も好ましい態様であり、他のゴムとして、例えば、耐衝撃性の観点から、1,3−ブタジエン又はイソプレンに由来する構造単位を有する(共)重合体からなるジエン系ゴムが好ましく用いられる。
上記ゴム質重合体部(a1)が、エチレン・α−オレフィン系ゴム及び他のゴムの両方に由来する場合、両者の含有割合は、インサート成形法により形成される樹脂膜部における軋み音の低減効果及び耐衝撃性の観点から、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは15〜98質量%及び2〜85質量%、より好ましくは25〜95質量%及び5〜75質量%、更に好ましくは35〜90質量%及び10〜65質量%である。
また、上記態様において、上記熱可塑性樹脂(X)に対する、エチレン・α−オレフィン系ゴムに由来する部分及び他のゴムに由来する部分の合計量の割合、即ち、ゴム質重合体部(a1)の割合は、インサート成形法により形成される樹脂膜部における軋み音の低減効果及び耐衝撃性の観点から、上記熱可塑性樹脂(X)を100質量%とした場合に、好ましくは20〜90質量%、より好ましくは40〜85質量%、更に好ましくは55〜80質量%である。
上記熱可塑性樹脂(X)は、ゴム質重合体部(a1)を含む熱可塑性樹脂であることから、通常、このゴム質重合体部(a1)と、他の構造部とを備える樹脂である。本発明において、上記熱可塑性樹脂(X)は、好ましくは、上記ゴム質重合体部(a1)と、ビニル系樹脂に由来する部分(a2)(以下、「樹脂部(a2)」ともいう)とが、化学的に結合しているゴム強化ビニル系樹脂である。一分子の熱可塑性樹脂(X)を構成する樹脂部(a2)は、一種のみであってよいし、二種以上であってもよい。
上記ビニル系樹脂は、ビニル系単量体に由来する構造単位を含むビニル系(共)重合体であり、好ましくは、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含むビニル系(共)重合体部である。即ち、好ましい態様において、上記樹脂部(a2)は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位の一種又は二種以上からなるビニル系(共)重合体部であってよいし、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位の一種又は二種以上と、他のビニル系単量体に由来する構造単位の一種又は二種以上と、からなるビニル系(共)重合体部であってもよい。
尚、上記樹脂部(a2)を構成するビニル系樹脂に含まれる、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位の含有量の下限は、フィルムの剛性及び外観性の観点から、好ましくは50質量%、より好ましくは60質量%、更に好ましくは65質量%である。
上記芳香族ビニル化合物は、少なくとも一つのビニル結合と、少なくとも一つの芳香族環とを有する化合物であれば、特に限定されない。但し、官能基等の置換基を有さないものとする。その例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、β−メチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは二つ以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましく、スチレンが特に好ましい。
また、他のビニル系単量体としては、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、不飽和酸無水物、カルボキシル基含有不飽和化合物、アミノ基含有不飽和化合物、アミド基含有不飽和化合物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリル、α−イソプロピルアクリロニトリル等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは二つ以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは二つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記マレイミド系化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−メチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジメチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−ナフチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらのうち、N−フェニルマレイミドが好ましい。また、これらの化合物は、単独であるいは二つ以上を組み合わせて用いることができる。尚、重合体鎖に、マレイミド系化合物に由来する構造単位を導入する他の方法としては、例えば、無水マレイン酸の不飽和ジカルボン酸無水物を共重合し、その後イミド化する方法でもよい。
上記不飽和酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは二つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記カルボキシル基含有不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは二つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記アミノ基含有不飽和化合物としては、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノメチル、アクリル酸ジエチルアミノメチル、アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸アミノエチル、メタクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノメチル、メタクリル酸ジエチルアミノメチル、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、p−アミノスチレン、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アクリルアミン、メタクリルアミン、N−メチルアクリルアミン等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
上記アミド基含有不飽和化合物としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
上記ヒドロキシル基含有不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、o−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、m−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、2−ヒドロキシメチル−α−メチルスチレン、3−ヒドロキシメチル−α−メチルスチレン、4−ヒドロキシメチル−α−メチルスチレン、4−ヒドロキシメチル−1−ビニルナフタレン、7−ヒドロキシメチル−1−ビニルナフタレン、8−ヒドロキシメチル−1−ビニルナフタレン、4−ヒドロキシメチル−1−イソプロペニルナフタレン、7−ヒドロキシメチル−1−イソプロペニルナフタレン、8−ヒドロキシメチル−1−イソプロペニルナフタレン、p−ビニルベンジルアルコール、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは二つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記エポキシ基含有不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−オキシシクロヘキシル、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは二つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記オキサゾリン基含有不飽和化合物としては、ビニルオキサゾリン、4−メチル−2−ビニル−2−オキサゾリン、5−メチル−2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、4−メチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、5−メチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン等が挙げられる。
上記樹脂部(a2)を構成するビニル系樹脂が、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と、他のビニル系単量体に由来する構造単位とからなる場合、他のビニル系単量体としては、フィルムの剛性及び外観性の観点から、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物等を含むことが好ましい。
本発明において、上記樹脂部(a2)を構成するビニル系樹脂が、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と、シアン化ビニル化合物に由来する構造単位とを含むビニル系共重合体である場合、これらの構造単位の合計量は、フィルムの機械的強度及び耐薬品性の観点から、ビニル系共重合体の全量に対して、好ましくは70〜100質量%であり、より好ましくは80〜100質量%、更に好ましくは95〜100質量%である。また、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位及びシアン化ビニル化合物に由来する構造単位の含有割合は、機械的強度及び耐薬品性の観点から、これらの合計を100質量%とした場合、それぞれ、好ましくは55〜95質量%及び5〜45質量%、より好ましくは60〜90質量%及び10〜40質量%、更に好ましくは65〜80質量%及び20〜35質量%である。
上記熱可塑性樹脂(X)がゴム強化ビニル系樹脂である場合、このゴム強化ビニル系樹脂を構成する、ゴム質重合体部(a1)及び樹脂部(a2)との含有割合は、インサート成形法により形成される樹脂膜部における軋み音の低減効果及び耐衝撃性の観点から、これらの合計を100質量%とした場合、それぞれ、好ましくは10〜90質量%及び10〜90質量%、より好ましくは20〜80質量%及び20〜80質量%、更に好ましくは30〜75質量%及び25〜70質量%である。
上記熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂(X)は、一種又は二種以上の樹脂からなることができる。
本発明に係る熱可塑性樹脂(X)は、上記のように、好ましくは、ゴム強化ビニル系樹脂であり、特に、エチレン・α−オレフィン系ゴムに由来する重合体部(以下、「エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体部」という)と、芳香族ビニル化合物に由来するビニル系(共)重合体部からなるビニル系樹脂部とを有する、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂を含むことが好ましい。
また、上記エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂と、ジエン系ゴムに由来する重合体部(以下、「ジエン系重合体部」という)と、芳香族ビニル化合物に由来するビニル系(共)重合体部からなるビニル系樹脂部とを有する、ジエン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂とを併用すると、インサート成形法により形成される樹脂膜部における耐衝撃性を更に向上させることができる。
上記エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂を構成するエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体部及びビニル系樹脂部の含有割合は、インサート成形法により形成される樹脂膜部における軋み音の低減効果及び耐衝撃性の観点から、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは10〜90質量%及び10〜90質量%、より好ましくは20〜80質量%及び20〜80質量%、更に好ましくは30〜75質量%及び25〜70質量%である。
上記ジエン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂を構成するジエン系重合体部及びビニル系樹脂部の含有割合は、インサート成形法により形成される樹脂膜部における軋み音の低減効果及び耐衝撃性の観点から、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは10〜90質量%及び10〜90質量%、より好ましくは25〜80質量%及び20〜75質量%、更に好ましくは35〜75質量%及び25〜65質量%である。
上記のエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂又はジエン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂は、好ましくは、エチレン・α−オレフィン系ゴム又はジエン系ゴムの存在下に、ビニル系単量体、好ましくは芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体、特に好ましくは芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体を重合して得られたゴム強化樹脂に含まれるグラフト樹脂である。上記エチレン・α−オレフィン系ゴムは、好ましくは、Tmが0℃〜120℃の範囲にある、エチレンに由来する構造単位と、炭素原子数が3〜8のα−オレフィンに由来する構造単位とからなるエチレン・α−オレフィン共重合体(以下、「エチレン・α−オレフィン系ゴム(r1)」という。)である。また、上記芳香族ビニル化合物は、好ましくはスチレン及びα−メチルスチレンであり、上記シアン化ビニル化合物は、好ましくはアクリロニトリルである。
上記ゴム強化ビニル系樹脂を製造するために、エチレン・α−オレフィン系ゴム又はジエン系ゴムの存在下に、ビニル系単量体を重合(グラフト重合)する方法としては、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合、又は、これらを組み合わせた重合方法が挙げられる。
例えば、乳化重合を行う場合には、重合開始剤、連鎖移動剤(分子量調節剤)、乳化剤、水等が用いられる。
上記重合開始剤としては、有機過酸化物、アゾ系化合物、無機過酸化物、レドックス型重合開始剤等が挙げられる。
上記有機過酸化物としては、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、tert−アミル−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチル−tert−ヘキシルパーオキサイド、tert−アミル−tert−ヘキシルパーオキサイド、ジ(tert−ヘキシル)パーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレイト、tert−ブチルパーオキシモノカーボネート、ビス(tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。
上記アゾ系化合物としては、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、アゾクメン、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2′−アゾビスジメチルバレロニトリル、4,4′−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2−(tert−ブチルアゾ)−2−シアノプロパン、2,2′−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2′−アゾビス(2−メチルプロパン)、ジメチル2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等が挙げられる。
上記無機過酸化物としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
また、上記レドックス型重合開始剤としては、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸、硫酸第一鉄等を還元剤とし、ペルオキソ二硫酸カリウム、過酸化水素、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド等を酸化剤としたものを用いることができる。
上記連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、tert−テトラデシルメルカプタン等のメルカプタン類;ターピノーレン類、α−メチルスチレンのダイマー等が挙げられる。これらは、一種単独であるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
上記乳化剤としては、アニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤が挙げられる。アニオン系界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族スルホン酸塩;高級脂肪族カルボン酸塩、脂肪族リン酸塩等が挙げられる。また、ノニオン系界面活性剤としては、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型化合物、アルキルエーテル型化合物等が挙げられる。これらは、一種単独であるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
乳化重合の際の製造条件は、特に限定されない。重合開始剤又は連鎖移動剤は、反応系に一括して、又は、連続的に供給することができる。
乳化重合により得られたラテックスに対しては、通常、凝固剤による樹脂成分の凝固が行われ、粉体等とされる。その後、水洗等によって精製し、乾燥して回収される。凝固に際しては、従来、公知の凝固剤が用いられ、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム等の無機塩;硫酸、塩酸等の無機酸;酢酸、乳酸等の有機酸等が用いられる。
上記グラフト重合により製造されたゴム強化樹脂は、主として、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂又はジエン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂を含み、更に、エチレン・α−オレフィン系ゴム又はジエン系ゴムそのものや、これらのゴムに由来するゴム質重合体部に化学的に結合していない、ビニル系単量体に由来する構造単位を含むビニル系(共)重合体とが含まれる。後者のビニル系(共)重合体は、ゴム質重合体部(a1)を含まないので、ゴム強化樹脂の中に、「他の熱可塑性樹脂」として含まれる。
上記ゴム強化ビニル系樹脂におけるグラフト率は、フィルム形成性、及び、インサート成形法により形成される樹脂膜部における耐衝撃性の観点から、好ましくは10〜150%であり、より好ましくは20〜120%、更に好ましくは30〜80%である。
上記グラフト率は、下記式により求めることができる。
グラフト率(%)={(S−T)/T}×100
上記式中、Sはゴム強化樹脂1グラムをアセトン20mlに投入し、25℃の温度条件下で、振とう機により2時間振とうした後、5℃の温度条件下で、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で1時間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(g)であり、Tはゴム強化樹脂1グラムに含まれるエチレン・α−オレフィン系ゴム、ジエン系ゴム等のゴム質重合体の質量(g)である。ゴム質重合体の質量は、重合処方及び重合転化率から算出する方法、赤外分光分析、熱分解ガスクロマトグラフィー、CHN元素分析等により得ることができる。
上記ゴム強化ビニル系樹脂における、ゴム質重合体重合体部(a1)と、樹脂部(a2)との含有割合は、上記の通りであるが、これらの割合は、上記ゴム強化樹脂から求めたゴム強化ビニル系樹脂におけるグラフト率の結果から算出することができる。
上記グラフト重合により製造された、ゴム強化ビニル系樹脂を含むゴム強化樹脂において、アセトンに可溶な成分(以下、「アセトン可溶分」ともいう)は、グラフト重合により副製した未グラフト重合体であり、ビニル系単量体に由来する構造単位を有する(共)重合体である。アセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、熱可塑性樹脂組成物の押出性、成形加工性等の観点から、好ましくは0.05〜0.90dl/g、より好ましくは0.07〜0.81dl/g、更に好ましくは0.09〜0.65dl/g、特に好ましくは0.12〜0.55dl/gである。
尚、アセトン可溶分は、例えば、10グラムのゴム強化樹脂を、100〜200mlのアセトンに投入し、振とう機等を用いて、25℃で2〜3時間の振とうを行い、生成した不溶分及び可溶分を分離した後の可溶分である。
極限粘度[η]は、以下の要領で求めることができる。
ゴム強化ビニル系樹脂を含むゴム強化樹脂をアセトンに投入し、遠心分離後に回収されたアセトン可溶分をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度の異なるものを5点調製し、ウベローデ粘度管のより、30℃で各濃度における溶液の還元粘度を測定し、極限粘度[η]を求める。
上記グラフト率及び極限粘度[η]は、ゴム強化ビニル系樹脂を製造する際に用いる、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤等の種類や量、溶剤等の種類や量、更には、仕込時期、仕込時間、重合温度、重合時間等を調節することにより、制御することができる。
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物に含まれる樹脂成分は、熱可塑性樹脂(X)からなるものであってよいし、この熱可塑性樹脂(X)と、他の熱可塑性樹脂とからなるものであってもよい。
上記熱可塑性樹脂組成物が他の熱可塑性樹脂を含有する場合、例えば、ビニル系単量体に由来する構造単位を含むビニル系(共)重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
上記他の熱可塑性樹脂は、一種単独であるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
上記熱可塑性樹脂組成物が他の熱可塑性樹脂を含有する場合、その含有量の上限は、上記熱可塑性樹脂(X)100質量部に対して、好ましくは80質量部、より好ましくは70質量部である。
上記熱可塑性樹脂組成物は、目的、用途等に応じて、更に、充填剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、難燃剤、滑剤、安定剤、耐候剤、光安定剤、熱安定剤、帯電防止剤、離型剤、抗菌剤、防腐剤、着色剤(顔料、染料等)、蛍光増白剤、導電性付与剤等を含有したものとすることができる。
上記充填剤としては、重質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、カーボンブラック、クレー、タルク、フュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、カオリン、硅藻土、ゼオライト、酸化チタン、生石灰、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化バリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、硫酸アルミニウム、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスバルーン、シラスバルーン、サランバルーン、フェノールバルーン等が挙げられる。これらは、単独であるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
上記可塑剤としては、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル、脂肪族一塩基酸エステル、脂肪族二塩基酸エステル、リン酸エステル、多価アルコールのエステル、エポキシ系可塑剤、高分子型可塑剤、塩素化パラフィン等が挙げられる。これらは、単独であるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
上記酸化防止剤としては、ヒンダードアミン系化合物、ハイドロキノン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、含硫黄化合物、含リン化合物等が挙げられる。これらは、単独であるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
上記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。これらは、単独であるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
上記老化防止剤としては、ナフチルアミン系化合物、ジフェニルアミン系化合物、p−フェニレンジアミン系化合物、キノリン系化合物、ヒドロキノン誘導体系化合物、モノフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、トリスフェノール系化合物、ポリフェノール系化合物、チオビスフェノール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、亜リン酸エステル系化合物、イミダゾール系化合物、ジチオカルバミン酸ニッケル塩系化合物、リン酸系化合物等が挙げられる。これらは、単独であるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
上記難燃剤としては、含ハロゲン化合物、含リン化合物、グアニジン系化合物、シリコーン系化合物等が挙げられる。これらは、単独であるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
その他、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、ジルコニウム系化合物、モリブデン系化合物、スズ酸亜鉛等を用いることができる。
上記離型剤としては、オレフィン系ワックス、シリコーンオイル、高級脂肪酸、一価又は多価アルコールの高級脂肪酸エステル、蜜蝋等の天然動物系ワックス、カルナバワックス等の天然植物系ワックス、パラフィンワックス等の天然石油系ワックス、モンタンワックス等の天然石炭系ワックス等が挙げられる。これらは、単独であるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
上記オレフィン系ワックスは、通常、オレフィンに由来する構造単位を含む(共)重合体である。また、オレフィン系ワックスの構造は、特に限定されず、線状及び分岐状のいずれでもよい。
上記オレフィン系ワックスとしては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、オレフィン共重合体ワックス(例えば、エチレン共重合体ワックス)等が挙げられ、これらは、部分酸化物であってもよい。尚、上記オレフィン系ワックスが共重合体である場合、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−デセン、4−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のオレフィンに由来する構造単位を二つ以上含む共重合体;オレフィンに由来する構造単位の少なくとも一つと、オレフィンと共重合可能な単量体(不飽和カルボン酸又はその酸無水物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等)に由来する構造単位とからなる共重合体等が挙げられる。これらの共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体及びグラフト共重合体のいずれでもよい。
上記オレフィン系ワックスの数平均分子量は、離型性の観点から、好ましくは100〜10,000、より好ましくは1,000〜6,000、更に好ましくは1,200〜5,500である。
また、上記オレフィン系ワックスの粘度(140℃)は、離型性の観点から、好ましくは100〜10,000cps、より好ましくは100〜5,000cpsである。
上記シリコーンオイルは、好ましくはポリオルガノシロキサン構造を有するものであり、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等の未変性シリコーンオイルであってもよいし、ポリオルガノシロキサン構造中の側鎖の一部及び/又はポリオルガノシロキサン構造の片末端部分、あるいは、ポリオルガノシロキサン構造の両末端部分に各種有機基が導入された変性シリコーンオイル等が挙げられる。
上記変性シリコーンオイルとしては、アルキル変性シリコーンオイル、アルキル・アラルキル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、高級アルコキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、メチル塩素化フェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、アクリル変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル等が挙げられる。
上記シリコーンオイルの動粘度(25℃)は、離型性の観点から、好ましくは10〜100,000cSt、より好ましくは、10〜50,000cSt、更に好ましくは15〜50,000cSt、特に好ましくは20〜30,000cStである。尚、上記動粘度は、ASTM D445−46T(JIS 8803でも可)によるウベローデ粘度計により測定することができる。
上記高級脂肪酸は、好ましくは、炭素原子数10〜30の化合物であり、例えば、ミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等が挙げられる。
上記高級脂肪酸エステルは、好ましくは、炭素原子数1〜20の一価又は多価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステル又は全エステルであり、例えば、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸モノグリセリド、ベヘニン酸ベヘニル、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、ビフェニルビフェネ−ト、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレート等が挙げられる。
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物のTmは0℃〜120℃の範囲にあるが、上記熱可塑性樹脂(X)のTmが0℃〜120℃の範囲にあることが好ましい。このような熱可塑性樹脂(X)は、上記エチレン・α−オレフィン系ゴム(r1)に由来する重合体部と、芳香族ビニル化合物に由来するビニル系(共)重合体部からなるビニル系樹脂部とからなるエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂であり、そのTmは、より好ましくは10℃〜90℃、更に好ましくは20℃〜80℃の範囲である。
上記熱可塑性樹脂組成物に含まれる樹脂成分は、上記のように、熱可塑性樹脂(X)からなるものであってよいし、この熱可塑性樹脂(X)と、他の熱可塑性樹脂とからなるものであってもよいが、いずれの場合も、熱可塑性樹脂(X)がゴム強化ビニル系樹脂からなる場合、このゴム強化ビニル系樹脂を構成するゴム質重合体部(a1)の含有割合は、フィルム加工性、フィルムの、凹部、凸部等における追従性(可撓性)、更には、インサート成形法により形成される樹脂膜部における耐衝撃性の観点から、上記熱可塑性樹脂組成物の全体に対して、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%、更に好ましくは15〜30質量%である。尚、上記熱可塑性樹脂(X)が、上記エチレン・α−オレフィン系ゴム(r1)に由来する重合体部と、芳香族ビニル化合物に由来するビニル系(共)重合体部からなるビニル系樹脂部とからなるエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂である場合、このエチレン・α−オレフィン系ゴム(r1)に由来する重合体部の含有割合は、フィルム加工性、及び、インサート成形法により形成される樹脂膜部における耐衝撃性の観点から、上記熱可塑性樹脂組成物の全体に対して、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜45質量%、更に好ましくは15〜35質量%である。
上記熱可塑性樹脂組成物が、熱可塑性樹脂(X)と、他の熱可塑性樹脂とからなる樹脂成分を含み、他の熱可塑性樹脂が、ビニル系単量体に由来する構造単位を有するビニル系樹脂である場合、熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、押出性、成形加工性等の観点から、好ましくは0.05〜0.90dl/g、より好ましくは0.07〜0.81dl/g、更に好ましくは0.09〜0.65dl/g、特に好ましくは0.12〜0.55dl/gである。
本発明のインサート成形用フィルムは、上記熱可塑性樹脂組成物、又は、その構成成分を形成することとなる原料成分を、カレンダー成形装置、Tダイ押出成形装置、インフレーション成形装置等、公知の成形装置で加工することにより製造することができる。
本発明のインサート成形用フィルムの厚さは、容易に取り扱いすることができ、インサート成形法により形成される樹脂膜部における軋み音の低減効果、外観性等に優れたインサート成形品を円滑に製造することができることから、好ましくは50〜400μm、より好ましくは70〜350μm、更に好ましくは90〜280μmである。
本発明のインサート成形用フィルムを、射出成形用金型とともに用いて、インサート成形法に供することにより、樹脂成形部3の表面に、他の部品と動的接触した際に軋み音の低減効果を有する樹脂膜部4が接合されてなる積層物(軋み音低減化複合物、インサート成形品)5を好適に製造することができる(図1(D)、図2等参照)。樹脂成形部3は、熱可塑性樹脂組成物又は硬化樹脂組成物からなるものとすることができる。
上記積層物(軋み音低減化複合物、インサート成形品)5は、インサート成形用フィルムを射出成形用金型の内部に配置する工程(以下、「第1工程」という)、及び、上記射出成形用金型のキャビティに、樹脂組成物を射出する工程(以下、「第2工程」という)を備える方法により製造することができる(図1参照)。尚、第1工程は、図1(A)に示されるように、特定の形状に加工していないフィルムをそのまま(インサート成形用フィルム1)を用いる工程であってよいし、図1(B)に示されるように、未加工のインサート成形用フィルム1を、予め、別の工程に供して、所定の形状を有するフィルム構造体1aとした後、これを用いる工程であってもよい。
以下、インサート成形用フィルム1と、雄型11及び雌型12を備える射出成形用金型とを用いた、積層物(軋み音低減化複合物、インサート成形品)5の製造方法について、図1により例示説明する。尚、積層物5を製造するに際して、樹脂成形部3が形成される側のインサート成形用フィルム1の表面には、予め、凹部、凸部、溝部等を形成しておいてよいし、樹脂成形部3を構成する熱可塑性樹脂組成物又は硬化樹脂組成物の原料成分に応じて、表面処理を施しておいてもよい。
先ず、図1(A)に示すように、インサート成形用フィルム1を、雄型71及び雌型72の間に配置する。その後、雌型12に配された吸引孔13等の吸引手段を用いて、インサート成形用フィルム1を、雌型12の内表面に密着させる。インサート成形用フィルム1は、可撓性を有するので、雌型12の内表面に、容易に沿わせて密着させ、所定形状のフィルム構造体1aとすることができる(図1(B)参照)。尚、図1(A)に示していないが、インサート成形用フィルム1は、例えば、枠状のシートクランプで固定してもよい。
次いで、図1(C)に示すように、雄型11及び雌型12を型締めし、両型で形成されるキャビティに、雄型11に形成された導入口14から、加熱溶融状態にある熱可塑性樹脂組成物、又は、室温硬化性若しくは熱硬化性樹脂組成物、からなる樹脂成形部形成用原料2を供給する(第2工程)。樹脂成形部形成用原料2が熱可塑性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物からなる場合には、インサート成形用フィルム1(フィルム構造体1a)は予熱されていてもよい。その後、樹脂成形部形成用原料2が冷却等によって固化され、そして、型開きして、一体化した積層物(軋み音低減化複合物、インサート成形品)5を取り出す。このとき、インサート成形用フィルムの不要部分がある場合には、それを、適宜、トリミングする。以上の工程により、熱可塑性樹脂組成物又は硬化樹脂組成物からなる樹脂成形部3の表面に、インサート成形用フィルム1を用いて形成された樹脂膜部4が接合されてなる積層物5が得られる(図1(D)参照)。
図1を用いた製造方法では、インサート成形用フィルムにおける不要部分をトリミングしたことを説明したが、本発明は、これに限定されない。例えば、図2に示すような積層物5を製造する場合には、インサート成形用フィルムを所定の大きさに切削加工しておき、射出成形用金型の内部の所定の位置に配置した状態で樹脂組成物を導入することができる。図2は、樹脂成形部3の表面に2箇所の樹脂膜部4が形成された積層物5を示すが、このような積層物5の製造方法としては、第2工程を1度のみ行って、複数の樹脂膜部4を形成する方法、又は、樹脂膜部4の数の分だけ第2工程を行って、樹脂膜部4を1箇所ずつ形成する方法とすることができる。
上記第2工程で用いる樹脂成形部形成用原料2が熱可塑性樹脂組成物である場合、ゴム質重合体の存在下に、重合性不飽和単量体を重合して得られたゴム強化樹脂(ABS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、MBS樹脂等)、ゴム質重合体の非存在下に、芳香族ビニル化合物を含む重合性不飽和単量体を重合して得られた(共)重合体(ポリスチレン、スチレン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・アクリロニトリル・メタクリル酸メチル共重合体、スチレン・アクリロニトリル・N−フェニルマレイミド共重合体等)、アクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル等)、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、イミド系樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等のケトン系樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のスルホン系樹脂、生分解性プラスチック等から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含む組成物等とすることができる。
また、上記第2工程で用いる樹脂成形部形成用原料2が硬化性樹脂組成物である場合、アクリル樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、アクリルシリコン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等からなる硬化性樹脂(プレポリマー等)、硬化剤(重合開始剤等)等を含む未硬化の硬化性組成物等とすることができる。
本発明により得られた積層物(軋み音低減化複合物、インサート成形品)5は、樹脂膜部4が、本発明のインサート成形用フィルムを構成する熱可塑性樹脂組成物と同一の又は異なる熱可塑性樹脂組成物、硬化樹脂組成物、架橋ゴム(加硫ゴムを含む)、繊維集合体、金属(合金を含む)、ガラス、セラミックス等を含む他の部品と動的に接触すると、軋み音の発生が抑制されるといった性能を有する。従って、積層物5における樹脂膜部4と、他の部品とを接触させて複合物として、振動、ねじれ、衝撃等による軋み音発生の抑制効果を得る場合や、積層物5と、他の部品とが、所定の空隙をもって配置されており、振動、ねじれ、衝撃等により一方若しくは両方が移動又は変形して動的に接触(面接触、線接触又は点接触)して、軋み音発生の抑制効果を得る場合に好適である。
図3は、積層物5として、二箇所の凹部又は溝部を有し、これらを有する側の表面に樹脂膜部4を形成したものと、他の部品として、樹脂製の接続部材7とを用いてなる複合物15を示す。この図3においては、樹脂製の接続部材7が、積層物5における凹部又は溝部の樹脂膜部4と接触するように嵌合されているので、振動、ねじれ、衝撃等による軋み音発生の抑制効果を得ることができる。
本発明により得られた積層物(軋み音低減化複合物、インサート成形品)5は、車両、OA(オフィスオートメーション)機器、家庭電化機器、電気・電子機器、建材等を構成する複合体製品の一部材として好適である。
以下に、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。尚、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。
1.インサート成形用フィルムの製造原料
インサート成形用フィルムの製造は、下記の原料を用いて調製された熱可塑性樹脂組成物のTダイ押出成形により行った。尚、樹脂成分等のグラフト率、極限粘度[η]等の測定は、上記記載の方法に準じて行った。
1−1.原料〔P〕
ゴム質重合体に由来する部分を含む熱可塑性樹脂として、下記の合成例1〜4で得られたエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂(原料P1〜P4)と、下記の合成例5で得られたブタジエンゴム質重合体強化ビニル系樹脂(原料P5)とを用いた。
合成例1(原料P1の合成)
リボン型攪拌機翼、助剤連続添加装置、温度計等を装着したステンレス製オートクレーブに、エチレン・プロピレン共重合体ゴム(エチレン/プロピレン=78/22(%)、Tm:40℃、ガラス転移温度:−50℃、ムーニー粘度(ML1+4,100℃):20)25部、スチレン11部、アクリロニトリル4部、tert−ドデシルメルカプタン0.5部及びトルエン110部を仕込み、昇温した。内温が75℃に達したところで、オートクレーブ内容物を1時間攪拌して均一溶液とした。その後、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.09部を添加し、更に昇温した。内温を100℃に保持しながら、攪拌回転数100rpmとして重合を開始した。60分間重合した後、スチレン44部、アクリロニトリル16部及びtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.86部を3時間かけて連続的に添加した。重合を開始して4時間経過した後、内温を120℃に昇温し、この温度を保持しながら更に2時間反応を行って重合を終了した。重合転化率は98%であった。その後、内温を100℃まで冷却し、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオネート0.2部を添加した。次いで、反応液をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により未反応物と溶媒を留去した。その後、40mmφベント付き押出機(シリンダー温度220℃、真空度760mmHg)を用いて揮発分を実質的に脱気させ、ペレット化し、エチレン・プロピレン共重合体ゴムからなる部分と、シアン化ビニル化合物(アクリロニトリル)に由来する構造単位及び芳香族ビニル化合物(スチレン)に由来する構造単位を含むビニル系共重合体からなる部分とを含むエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂(グラフト樹脂)、並びに、未グラフトのビニル系共重合体(アクリロニトリル・スチレン共重合体)からなる樹脂混合物であるゴム強化樹脂(原料P1)を得た。この原料P1に含まれる上記グラフト樹脂におけるグラフト率は48%、未グラフトのビニル系共重合体(以下、「アセトン可溶分」ともいう。)の含有率は63%であり、このアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.42dl/gであった。その後、このペレットを用いて原料P1のTmを測定したところ、40℃であった。
合成例2(原料P2の合成)
リボン型攪拌機翼、助剤連続添加装置、温度計等を装着したステンレス製オートクレーブに、エチレン・プロピレン共重合体ゴム(エチレン/プロピレン=78/22(%)、Tm:40℃、ガラス転移温度:−50℃、ムーニー粘度(ML1+4,100℃):20)10部、スチレン13.2部、アクリロニトリル4.8部、tert−ドデシルメルカプタン0.7部及びトルエン100部を仕込み、昇温した。内温が75℃に達したところで、オートクレーブ内容物を1時間攪拌して均一溶液とした。その後、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.11部を添加し、更に昇温した。内温を100℃に保持しながら、攪拌回転数100rpmとして重合を開始した。70分間重合した後、スチレン52.8部、アクリロニトリル19.2部及びtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.42部を3時間30分かけて連続的に添加した。重合を開始して4時間30分経過した後、内温を120℃に昇温し、この温度を保持しながら更に2時間反応を行って重合を終了した。重合転化率は97%であった。その後、内温を100℃まで冷却し、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオネート0.2部を添加した。次いで、反応液をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により未反応物と溶媒を留去した。その後、40mmφベント付き押出機(シリンダー温度220℃、真空度760mmHg)を用いて揮発分を実質的に脱気させ、ペレット化し、エチレン・プロピレン共重合体ゴムからなる部分と、シアン化ビニル化合物(アクリロニトリル)に由来する構造単位及び芳香族ビニル化合物(スチレン)に由来する構造単位を含むビニル系共重合体からなる部分とを含むエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂(グラフト樹脂)、並びに、未グラフトのビニル系共重合体(アクリロニトリル・スチレン共重合体)からなる樹脂混合物であるゴム強化樹脂(原料P2)を得た。この原料P2に含まれる上記グラフト樹脂におけるグラフト率は52%、アセトン可溶分の含有率は85%であり、このアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.25dl/gであった。その後、このペレットを用いて原料P2のTmを測定したところ、40℃であった。
合成例3(原料P3の合成)
リボン型攪拌機翼、助剤連続添加装置、温度計等を装着したステンレス製オートクレーブに、エチレン・プロピレン共重合体ゴム(エチレン/プロピレン=78/22(%)、Tm:40℃、ガラス転移温度:−50℃、ムーニー粘度(ML1+4,100℃):20)50部、スチレン7.3部、アクリロニトリル2.7部、tert−ドデシルメルカプタン0.1部及びトルエン220部を仕込み、昇温した。内温が75℃に達したところで、オートクレーブ内容物を1時間攪拌して均一溶液とした。その後、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.07部を添加し、更に昇温した。内温を100℃に保持しながら、攪拌回転数100rpmとして重合を開始した。60分間重合した後、スチレン29.3部、アクリロニトリル10.7部及びtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.25部を2時間30分かけて連続的に添加した。重合を開始して3時間30分経過した後、内温を120℃に昇温し、この温度を保持しながら更に2時間反応を行って重合を終了した。重合転化率は98%であった。その後、内温を100℃まで冷却し、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオネート0.2部を添加した。次いで、反応液をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により未反応物と溶媒を留去した。その後、40mmφベント付き押出機(シリンダー温度220℃、真空度760mmHg)を用いて揮発分を実質的に脱気させ、ペレット化し、エチレン・プロピレン共重合体ゴムからなる部分と、シアン化ビニル化合物(アクリロニトリル)に由来する構造単位及び芳香族ビニル化合物(スチレン)に由来する構造単位を含むビニル系共重合体からなる部分とを含むエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂(グラフト樹脂)、並びに、未グラフトのビニル系共重合体(アクリロニトリル・スチレン共重合体)からなる樹脂混合物であるゴム強化樹脂(原料P3)を得た。この原料P3に含まれる上記グラフト樹脂におけるグラフト率は40%、アセトン可溶分の含有率は30%であり、このアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.40dl/gであった。その後、このペレットを用いて原料P3のTmを測定したところ、40℃であった。
合成例4(原料P4の合成)
リボン型攪拌機翼、助剤連続添加装置、温度計等を装着したステンレス製オートクレーブに、エチレン・プロピレン共重合体ゴム(エチレン/プロピレン=78/22(%)、Tm:40℃、ガラス転移温度:−50℃、ムーニー粘度(ML1+4,100℃):20)50部、スチレン7.3部、アクリロニトリル2.7部、tert−ドデシルメルカプタン0.3部及びトルエン220部を仕込み、昇温した。内温が75℃に達したところで、オートクレーブ内容物を1時間攪拌して均一溶液とした。その後、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.07部を添加し、更に昇温した。内温を100℃に保持しながら、攪拌回転数100rpmとして重合を開始した。60分間重合した後、スチレン29.3部、アクリロニトリル10.7部及びtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.25部を2時間30分かけて連続的に添加した。重合を開始して3時間30分経過した後、内温を120℃に昇温し、この温度を保持しながら更に2時間反応を行って重合を終了した。重合転化率は98%であった。その後、内温を100℃まで冷却し、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオネート0.2部を添加した。次いで、反応液をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により未反応物と溶媒を留去した。その後、40mmφベント付き押出機(シリンダー温度220℃、真空度760mmHg)を用いて揮発分を実質的に脱気させ、ペレット化し、エチレン・プロピレン共重合体ゴムからなる部分と、シアン化ビニル化合物(アクリロニトリル)に由来する構造単位及び芳香族ビニル化合物(スチレン)に由来する構造単位を含むビニル系共重合体からなる部分とを含むエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂(グラフト樹脂)、並びに、未グラフトのビニル系共重合体(アクリロニトリル・スチレン共重合体)からなる樹脂混合物であるゴム強化樹脂(原料P4)を得た。この原料P4に含まれる上記グラフト樹脂におけるグラフト率は25%、アセトン可溶分の含有率は38%であり、このアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.35dl/gであった。その後、このペレットを用いて原料P4のTmを測定したところ、40℃であった。
合成例5(原料P5の合成)
攪拌機を備えたガラス製フラスコに、窒素気流中で、イオン交換水42部、ロジン酸カリウム0.35部、tert−ドデシルメルカプタン0.2部、平均粒子径300nmのポリブタジエンゴム(ゲル含有率80%)32部を含むラテックス80部、平均粒子径600nmのスチレン・ブタジエン共重合体ゴム(スチレン単位量30%)8部を含むラテックス19部、スチレン14部及びアクリロニトリル6部を収容し、攪拌しながら昇温した。内温が40℃に達したところで、ピロリン酸ナトリウム0.2部、硫酸第一鉄7水和物0.01部及びブドウ糖0.3部を、イオン交換水8部に溶解した溶液を加えた。その後、クメンハイドロパーオキサイド0.07部を加えて重合を開始した。
30分間重合させた後、イオン交換水45部、ロジン酸カリウム0.7部、スチレン30部、アクリロニトリル10部、tert−ドデシルメルカプタン0.13部及びクメンハイドロパーオキサイド0.1部を、3時間かけて連続的に添加した。その後、更に1時間重合を継続し、反応系に、2,2′−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)0.2部を添加して重合を完結させた。
次いで、反応生成物を含むラテックスに、硫酸水溶液を添加して、樹脂成分を凝固し、水洗した。その後、水酸化カリウム水溶液を用いて、洗浄・中和し、更に、水洗した後、乾燥し、スチレン・ブタジエン共重合体ゴムからなる部分と、シアン化ビニル化合物(アクリロニトリル)に由来する構造単位及び芳香族ビニル化合物(スチレン)に由来する構造単位を含むビニル系共重合体からなる部分とを含むジエン系ゴム質重合体強化ビニル系樹脂(グラフト樹脂)、並びに、未グラフトのビニル系共重合体(アクリロニトリル・スチレン共重合体)からなる樹脂混合物であるゴム強化樹脂(原料P5)を得た。この原料P5に含まれるスチレン・ブタジエンゴム質重合体強化ビニル系樹脂(グラフト樹脂)におけるグラフト率は55%、未グラフトの(共)重合体(アセトン可溶分)の含有率は38%であり、このアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.45dl/gであった。尚、この原料P5のTmは観測されなかった。
1−2.原料〔Q〕
ゴム質重合体に由来する部分を含まない熱可塑性樹脂として、下記のアクリロニトリル・スチレン共重合体(原料Q1〜Q3)を用いた。
(1)原料Q1
アクリロニトリル単位及びスチレン単位の割合が、それぞれ、27%及び73%であり、極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)が、0.30dl/gであるアクリロニトリル・スチレン共重合体
(2)原料Q2
アクリロニトリル単位及びスチレン単位の割合が、それぞれ、27%及び73%であり、極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)が、0.45dl/gであるアクリロニトリル・スチレン共重合体
(3)原料Q3
アクリロニトリル単位及びスチレン単位の割合が、それぞれ、27%及び73%であり、極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)が、1.20dl/gであるアクリロニトリル・スチレン共重合体
1−3.原料〔R〕
三菱エンジニアリングプラスチックス社製ポリカーボネート「NOVAREX7022PJ」(商品名)を用いた。粘度平均分子量(Mv)は、18,700であり、MFR(温度240℃、荷重10kg)は、18g/10分である。
2.インサート成形用フィルムの製造及び評価
実施例1〜14及び比較例1〜3
原料〔P〕、〔Q〕及び〔R〕を用い、表1及び表2に記載の割合で、ヘンシェルミキサーにて混合した後、この混合物を、日本製鋼社製2軸押出機「TEX44αII」(型式名)に供給して溶融混練(シリンダー設定温度:200℃〜250℃)し、熱可塑性樹脂組成物からなるペレットを得た。
そして、このペレットを、フィルム成形機に配設された、Tダイ(ダイ幅;1600mm、リップ間隔1mm)を備える、スクリュー径115mmの押出機に供給して、Tダイから、樹脂温度240℃の溶融樹脂を吐出させ、軟質フィルムとした。その後、この軟質フィルムをエアーナイフによりキャストロール(ロールの表面温度;90℃)に面密着させ、表1及び表2に示す肉厚となるように運転して、冷却固化したインサート成形用フィルムを得た。
尚、上記溶融樹脂の温度は、熱電対式温度計を用いて測定した。また、インサート成形用フィルムの厚さは、シックネスゲージ(型式「ID−C1112C」、ミツトヨ社製)を用い、フィルム製造開始から1時間経過後のフィルムを切り取り、フィルム幅方向の中心、及び、中心より両端に向けて、10mm間隔で厚さを測定し、その平均値とした。フィルムの端部から20mmの範囲にある測定点の値は、上記平均値の計算から除去した。
得られたインサート成形用フィルムを下記の評価に供し、その結果を表1及び表2に示した。
2−1.製膜性
上記のようにして測定したフィルムの各点における厚さの高低差により、製膜性を判定した。
◎:差が20μmであり、製膜性に優れる
○:差が20μm以上30μm未満であり製膜性が良好である
△:差が30μm以上40μm未満であり製膜性にやや劣る
×:差が40μm以上であり製膜性に劣る
2−2.樹脂成形物との密着性
インサート成形用フィルムを、70mm(MD)×25mm(TD)の大きさに切り出し、射出成形機の金型内に固定し、その後、金型を閉じ、240℃で溶融させた耐熱ABS樹脂「テクノMUH E1500」(テクノポリマー社製)を射出し、複合物を成形した。次いで、金型から複合物を取り出し、温度23℃、湿度50%で24時間状態調節後、90度剥離試験(MD方向のフィルムの引張速度:1mm/秒)に供し、インサート成形用フィルムの部分と、射出樹脂成形部との密着性を、下記基準により評価した。
○:インサート成形用フィルムの部分が樹脂成形部と剥がれずフィルムが破断した
△:インサート成形用フィルムの部分が樹脂成形部と接着面で僅かに剥離するが途中でフィルムが破断した
×:インサート成形用フィルムの部分が樹脂成形部と接着面で剥離しフィルムが破断しなかった
2−3.可撓性
インサート成形用フィルムを、100mm(MD)×100mm(TD)の大きさに切り出し、MD方向の対称軸に沿って折り曲げた後、TD方向の対称軸に沿って折り曲げた。次いで、このように折り曲げた状態のフィルムを、JIS Z0237に準拠して手動式圧着ロール(2,000g)を用い、5mm/秒の速度で各折り目上を2往復させた後、折り目を広げて元の状態に戻し、折り目を目視にて観察し、下記基準で判定した。折り目が割れていないものが可撓性に優れる。
○:折り目が割れておらず、再度折り曲げて広げても折り目が割れなかった
△:折り目が割れていないが、再度折り曲げて広げたら折り目が割れた
×:折り目が割れた
2−4.真空成形性
インサート成形用フィルムを、300mm(MD)×210mm(TD)の大きさに切り出し、図5(IV)に示す成形品を、図4に示す真空成形用型8を備える成光産業社製小型真空成形機「300X」を用いて作製した。図4に示す真空成形用型8は、高さが45mmであり、底面の大きさが150mm×150mmであり、上面の大きさが140m×140mmであり、上面の中央には、100mm×100mmの大きさであって、深さ20mmの凹部が形成されており、全体に渡って微細な貫通孔を有する。
上記の大きさのインサート成形用フィルムを、真空成形用型8の上面から上方に、40mmの間隔をもって固定した(図5(I))。その後、予め、450℃に加熱したヒーター(図示せず)を用いて、インサート成形用フィルムを、その周縁側から加熱した。次いで、真空成形用型8を上方に移動させて、上面と、インサート成形用フィルムとを接触させた(図5(II))。その後、真空成形用型8の底面側より減圧し、インサート成形用フィルムを真空成形用型8の凹部の内表面に密着させ、真空成形を実施した(図5(III))。次いで、真空成形用型8を脱型して、図5(IV)に示す成形品を得た。真空成形用型8の凹部への追従性を目視観察し、下記基準で評価した。
○:真空成形用型8の凹部への追従性が良好であり、しわが観察されなかった
×:しわが観察された
以下のスティックスリップ試験では、インサート成形用フィルムを用いてインサート成形品が製造された場合における、軋み音の発生のしやすさ又はしにくさを評価するため、上記2−2項のようにして得られた複合物であって、各ペレットを用いて作製されたインサート成形用フィルム(50mm×25mm)からなる樹脂膜部4が、耐熱ABS樹脂「テクノMUH E1500」(テクノポリマー社製)からなる支持部(樹脂成形部)16(50mm×25mm×4mm)に接合されてなる試験体18を用いた(図6参照)。
2−5.スティックスリップ試験(異音リスク指数)
スティックスリップ試験は、ジグラー(ZIEGLER)社製スティックスリップ試験機「SSP−02」(型式名)に、上記試験体18と、AES樹脂「テクノAESW210」(テクノポリマー社製)若しくはABS/PCアロイ「エクセロイCK20」(テクノポリマー社製)からなる試験片20(60mm×100mm×4mm)、PMMA「アクリプレン」(三菱レイヨン社製、60mm×100mm×80μm)又はPET「テイジンテトロンフィルム」(帝人デュポンフィルム社製、60mm×100mm×50μm)からなるフィルムを、図7に示すようにセットし、両者を3回擦り合わせて、異音リスク指数を測定した。測定条件は、温度:23℃、湿度:50%RH、荷重:40N、速度:10mm/秒、振幅:20mmである。異音リスク指数が小さいほど、軋み音の発生リスクが低くなる。尚、比較例3では、TmのないPMMAからなるフィルム同士を擦り合わせた。また、各表において、「−」で示したところは、実験を行っていないことを示す。
Figure 2018159084
Figure 2018159084
表1及び表2から、以下のことが明らかである。即ち、比較例1及び2は、ゴム質重合体に由来する部分を含む一方、熱可塑性樹脂組成物のTmが0℃〜120℃の範囲に見られない例であり、スティックスリップ試験において異音リスク指数が高くなった。また、比較例3は、ゴム質重合体に由来する部分を含まない熱可塑性樹脂組成物を用いた例であり、スティックスリップ試験において異音リスク指数が高くなった。
一方、本発明の構成を有する組成物を用いた実施例1〜14は、可撓性及び真空成形性に優れ、軋み音が発生しにくい構成を有することが明らかである。
本発明のインサート成形用フィルムを、射出成形用金型とともに用いると、他の部品と動的に接触した際に軋み音の発生を抑制する樹脂膜部と、樹脂組成物からなる基部とが接合された積層物(軋み音低減化複合物、インサート成形品)を効率よく製造することができる。そして、得られた積層物(軋み音低減化複合物、インサート成形品)は、車両、OA(オフィスオートメーション)機器、家庭電化機器、電気・電子機器、建材等を構成する複合体製品の一部材として好適である。
1:インサート成形用フィルム
1a:所定形状のフィルム構造体
2:樹脂成形部形成用原料
3:樹脂成形部
4:樹脂膜部
5:積層物(インサート成形品又は軋み音低減化複合物)
7:接続部品
11:射出成形用金型(雄型)
12:射出成形用金型(雌型)
13:吸引孔
14:樹脂成形部形成用原料の導入口
15:複合物
16:支持体
18:軋み音評価用試験体
20:軋み音評価用ステージ

Claims (6)

  1. ゴム質重合体に由来する部分(a1)を含む熱可塑性樹脂を含有し、且つ、JIS K 7121−1987に準ずる融点が0〜120℃の範囲にある熱可塑性樹脂組成物からなることを特徴とするインサート成形用フィルム。
  2. 前記ゴム質重合体が、エチレン・α−オレフィン系ゴムである請求項1に記載のインサート成形用フィルム。
  3. 前記エチレン・α−オレフィン系ゴムが、JIS K 7121−1987に準ずる融点が0〜120℃の範囲にある共重合体である請求項2に記載のインサート成形用フィルム。
  4. 前記熱可塑性樹脂が、前記部分(a1)と、ビニル系樹脂に由来する部分(a2)とを含むゴム強化ビニル系樹脂である請求項1乃至3のいずれか一項に記載のインサート成形用フィルム。
  5. 厚さが50〜300μmである請求項1乃至4のいずれか一項に記載のインサート成形用フィルム。
  6. 請求項1乃至5のいずれか一項に記載のインサート成形用フィルムを射出成形用金型の内部に配置する工程、及び、前記射出成形用金型のキャビティに、樹脂組成物を射出する工程、を備えることを特徴とするインサート成形品の製造方法。
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