JP2018158860A - 液体資材及び液体資材の製造方法 - Google Patents

液体資材及び液体資材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】土壌に対して散布する資材散布の効率性、迅速性、保存性の高い植物用の液体資材の提供。【解決手段】有用微生物とタンパク質とが少なくとも含まれている液体資材。前記液体資材にさらに、糖類が含まれていること、前記有用微生物が植物の成長に必要な植物ホルモンを産出する、例えば、アゾスピリラム属に属する微生物であること、タンパク質がペプトン類及び/又は酵母エキスであることが好ましい液体資材。製造方法は、タンパク質を含む液体培地に有用微生物を接種して得られた菌液に、少なくともタンパク質を含む保護液を添加する。【選択図】図22

Description

本発明は、土壌に対して散布する植物用の液体資材及びこの液体資材の製造方法に関する。
従来、アゾスピリラム属菌等の有用微生物を有し、植物に対して接種する植物用の資材は、下記の特許文献1に記載の水懸濁型資材が知られている。
特許文献1に記載の水懸濁型資材は、有用微生物を担持した担体を、有用微生物のみ濾し出し可能な濾過機能を有する収納体に封入し、水中において収納体から有用微生物を濾し出して水懸濁液を得るようにされている。
特開平10−323179号公報
ところで、特許文献1に記載の水懸濁型資材は、担体を収納した収納体を多量の水に浸漬し、水中で収納体に断続的に圧搾まは衝撃を与え、或いは人手で揉み出すなどの有用微生物の濾し出し操作を行って、有用微生物を含む水懸濁液を得た後、この水懸濁液を散布するようになっている。
しかしながら、水懸濁液を散布する際には、散布範囲の面積に応じた個数の収納体の濾し出し操作が必要であるため、濾し出し操作に相当な時間を要しており、水懸濁液を散布する効率性や迅速性が低くなってしまうという問題がある。
また、濾し出した後の収納体や担体は、廃棄処理を行うか、或いは収納体の塞いだ口を開いて担体を取り出し、取り出した担体に再びアゾスピリラム菌を担持させると共に、この担体を再び収納体に収納する再処理を行うものと推察できる。
しかしながら、これらの処理についても、極めて面倒である上に、相当な時間を要するという問題があるが、特許文献1に記載の水懸濁型資材では、濾し出した後の収納体や担体の処理について何ら想定されていない。
また、特許文献1には、微生物の培養液をそのまま液体資材として植物に散布する方法も採用されており、この場合には、散布する微生物の濃度を高めることができ、植物体に直接散布することも可能であり、培土に散布すると液体資材が浸透した領域全体の培土に微生物を行き渡らせることができるという点で好都合であるが、これら微生物は、室温において水分過多の状態で保存すると胞子から発芽し始めるという問題があるため、その培養から散布までの間、低温に維持して保存することが必要になると記載されている。
すなわち、現在、資材散布の効率性や迅速性が高い資材が望まれていると共に、散布後の資材処理の面倒がない資材が望まれ、且つ保存性の高い資材が望まれている。
前述の課題を解決するために、本発明は、以下の手段を採用した。
有用微生物とタンパク質とが少なくとも含まれている液体資材にしたことである。
前記液体資材にさらに、糖類が含まれていることが好ましい。
前記有用微生物がアゾスピリラム属に属する微生物であることが好ましい。
前記タンパク質がペプトン類及び/又は酵母エキスであることが好ましい。
液体資材の製造方法であって、タンパク質を含む液体培地に有用微生物を接種して得られた菌液に、少なくともタンパク質を含む保護液を添加することを特徴とする液体資材の製造方法にしたことである。
前記保護液は、糖類が含まれていることが好ましい。
液体資材の製造方法であって、タンパク質と糖類とを含む液体培地に有用微生物を接種することを特徴とする液体資材の製造方法にしたことである。
試験1:液体資材によるレタスの生育結果を示す表である。 試験1:液体資材によるハクサイの生育結果を示す表である。 試験1:液体資材によるキャベツの生育結果を示す表である。 試験1:液体資材によるブロッコリーの生育結果を示す表である。 試験2:レタスに対するアゾ菌株の感染結果を示す表である。 試験2:ハクサイに対するアゾ菌株の感染結果を示す表である。 試験2:キャベツに対するアゾ菌株の感染結果を示す表である。 試験2:ブロッコリーに対するアゾ菌株の感染結果を示す表である。 試験3:前培養による菌液の生菌数を測定した結果を示す表である。 試験3:混合菌液中の生菌数を測定した結果を示す表である。 試験3:継代菌液の生菌数を測定した結果を示す表である。 試験4:ペプトンを添加したことによる混合菌液中のアゾ菌株の増殖性を示す表である。 試験5:アゾ菌株の生存数の推移を示すグラフであり、(a)はペプトン1%培地を用いてなる混合菌液での結果を示し、(b) ペプトン5%培地を用いてなる混合菌液での結果を示す。 試験6:液体資材の構成を示す表である。 試験6:アゾ菌株の生存数の推移を示すグラフであり、(a)は5℃、(b)は10℃、 (c)は20℃、(d)は28℃での結果を示す。 試験6:アゾ菌株の生存数の推移を示すグラフであり、(a)は5℃、(b)は10℃、 (c)は20℃、(d)は28℃での結果を示す。 試験7A:液体資材の構成を示す表である。 試験7A:アゾ菌株の生存数の推移を示すグラフであり、(a)は5℃、(b)は10℃、 (c)は20℃、(d)は28℃での結果を示す。 試験7A:アゾ菌株の生存数の推移を示すグラフであり、(a)は5℃、(b)は10℃、 (c)は20℃、(d)は28℃での結果を示す。 試験7B:液体資材の構成を示す表である。 試験7B:アゾ菌株の生存数の推移を示すグラフであり、(a)は5℃、(b)は10℃、 (c)は20℃、(d)は28℃での結果を示す。 試験8:液体資材の構成を示す表である。 試験8:アゾ菌株の生存数の推移を示すグラフであり、(a)は5℃、(b)は10℃、 (c)は20℃、(d)は28℃での結果を示す。 試験9:アゾ菌株の生存数の推移を示すグラフである。 試験10:各タンパク質のIAA産出量を示す表である。 試験10:各タンパク質によるアゾ菌株の増加効果を示すグラフである。
本発明に係る液体資材に含まれる有用微生物は、植物の成長に必要な植物ホルモンを産出する微生物であり、例えば、アゾスピリラム属に属する微生物が挙げられる。
アゾスピリラム属に属する微生物は、例えば、アゾスピリラム・ブラシレンス、アゾスピリラム・リポフェラム、アゾスピリラム・アマゾネンセ、アゾスピリラム・ハロプレフェランス等が代表的なものであり、例示した以外のアゾスピリラム属に属する微生物でもよい。
本発明に係る液体資材に用いられる微生物は、例示したアゾスピリラム属に属する微生物に限るものではなく、土壌に生息または、植物に寄生し、植物に有用な効果を及ぼす、植物ホルモンを産出する微生物であればよい。
有用な微生物を例示すると、リゾビウム属、アゾリゾビウム属、ブラジリゾビウム属、フランキア属、バンドエア属、シュードモナス属、バチルス属、アスペルギルス属、クレブシエラ属、パントエア属、ハーバスピリラム属、アグロバクテリウム属、ストレプトミセス属、キサントモナス属、ラクトバチルス属、アエロモナス属、アナベナ属、トリコデルマ属、グロムス属、アゾトバクター属、ロドシュードモナス属、リゾプス属、フザリウム属、グリオグラディウム属、キサントモナス属、ノストック属、ギガスポラ属、スクテロスポラ属等が挙げられる。
本発明に係る液体資材に含まれるタンパク質は、有用微生物が摂取する栄養源であり、タンパク分解物、タンパク質を含む物質を含む。
また、水溶液中において有用微生物が効率よく資化できると共に、有用微生物が効率よく植物ホルモンを産出できるタンパク質としては、ペプトンであることが好ましい。
また、本発明に係る液体資材は、有用微生物の生存率を高めるために、水溶液に糖類を添加して、有用微生物、タンパク質、糖類を含む液体資材にすることが好ましい。
有用微生物が産出する植物ホルモンの代表的なものとしてオーキシン類が挙げられ、有用微生物が産出するオーキシン類としてはインドール-3-酢酸(以下「IAA」という)が挙げられる。
また、IAAの前駆体であるトリプトファンは、多くのタンパク質に含まれており、有用微生物がペプトンを含む各種タンパク質、各種タンパク分解物、タンパク質を含む各種物質から摂取することが容易である。
以下、本発明に係る液体資材及び液体資材の製造方法の実施形態を、下記、試験1〜試験10〕の結果(図1〜図26参照)に基づいて説明する。尚、以下で説明する各実施形態は、本発明を限定するものではない。
〔試験1〕(図1〜図4参照)
試験1では、有用微生物及びタンパク質を含まない液体資材(本願の液体資材と比較する資材であって図中において「A」で示す、有用微生物のみを含む液体資材(本願の液体資材と比較する資材であって図中において「B」で示す)、有用微生物とタンパク質とを含む本願発明の液体資材(図中において番号「C」「D」で示す)を、夫々植物に接種して、この植物の生育状態を比較すると共に、植物ホルモンの産出に効果的な有用微生物の濃度とタンパク質の濃度を検討する。
試験1では、有用微生物に系統が異なる2種類、且つ同量のアゾスピリラム・ブラシレンス(以下「アゾ菌株」という)を混合して使用した。また、試験1では、タンパク質にペプトン(ミクニ化学産業株式会社製)を使用した。
尚、ペプトンを用いる下記の各試験でも、試験1と同じペプトンを用いた。
〔試験方法〕
(1)試験場所:温室
(2)供試植物品種:〔図1〕レタス「シルル」、〔図2〕ハクサイ「ちよぶき70」、〔図3〕キャベツ「おきな」、〔図4〕ブロッコリー「ピクセル」
(3)供試菌株:前述の2種類のアゾ菌株
(4)処理方法:本葉展開期から1週間後に、下記(5)のA〜Dに記載の構成となるように調整した溶液100mlを1トレーに対し500mlの水で希釈して液体資材A〜Dとし、この液体資材A〜Dを夫々ジョウロで散布した。
(5)試験処理:
A;溶液中の菌株濃度×ペプトン濃度(0cfu/ml×0%)
B;溶液中の菌株濃度×ペプトン濃度(106、107、108cfu/ml×0%)
C;溶液中の菌株濃度×ペプトン濃度(106、107、108cfu/ml×0.1%)
D;溶液中の菌株濃度×ペプトン濃度(106、107、108cfu/ml×1%)
尚、(4)においてB〜Dを水で希釈してなる液体資材B〜Dの苗1株当たりの接種菌数は、105cfu、106cfu、107cfuとなる。
(6)供試培土:スミソイル(覆土:バーミキュライト)
(7)育苗トレー:128穴プラグトレー
(8)調査株数:50株(25株×2反復)。尚、育苗トレーの淵より2列は調査対象外とした。
(9)調査項目:葉数、苗長(キャベツ・ブロッコリーのみ)、葉長、乾物重(地上・地下部)、株当りの感染数
尚、調査は北海道花・野菜技術センター「園芸作物に関する調査基準」に準じて行った。
また、地下部乾物重の調査株数は40株とし、残りの10株はアゾ菌株の感染の有無の調査に用いた。
試験1の結果、液体資材A〜Dを接種した各供試作物は、図1〜図4に示す通り、測定された地上部乾物重及び地下部乾物重(根張り)、葉数及び葉長(各供試作物の2回目の調査)の数値から判断して成長しているものと認められる。
また、液体資材Aを接種したときの各調査項目の成長の数値を基準(100%)とし、この液体資材Aの数値に対し、液体資材B〜Dを接種したときの各調査項目の成長の数値を比較すると、液体資材B〜Dのほとんどの数値が基準以上であることが測定されており、この測定結果から判断して、アゾ菌株が植物の成長に大きく寄与しているものと認められる。
また、試験1の結果から液体資材Bと液体資材C、Dの数値を比較すると、各調査項目のほとんどにおいて、液体資材C、Dが液体資材Bの数値を上回っていることが認められ、この結果によって、アゾ菌株とペプトンとを有する液体資材C、Dが植物の成長に効果的であることが証明された。
また、試験1の結果から液体資材Cと液体資材Dの数値を比較すると、各調査項目のほとんどにおいて、液体資材Dが液体資材Cの数値を上回っていることが認められ、この結果によってペプトン濃度が高い液体資材Dが植物の成長に効果的であると認められる。
また、試験1の結果から液体資材Dの菌株濃度ごとの数値を比較すると、各調査項目のほとんどが菌株濃度が高いほど数値が高くなっていることがと認められ、この結果によって、菌株濃度が高いほど植物の成長に効果的であると認められる。
そして、試験1の結果から総合すると、植物の成長に最も効果的な菌株濃度×ペプトン濃度は、107cfu/ml×1%、108cfu/ml×1%であると認められる。
〔試験2〕
次に、アゾ菌株の供試植物への感染数を試験2によって確認する(図5〜図8参照)。
〔試験方法〕
試験1で得られた地下部乾物の10株の感染数を算出する。具体的には、地下部乾物に付着した培土を洗い流した根をハサミで細く刻みPBS20mlを入れ乳鉢で摩砕し、その摩砕液を希釈してRCプレートへ塗布後、プレートに生じた2種類のアゾ菌株のコロニーを計数して株あたりの感染数を算出した(希釈頻度法:3反復)。
試験2の結果、図5〜図8に示す通り、液体資材Aでは全ての供試植物にアゾ菌株の感染が認められなかった。液体資材Bでは、108cfu/mlのもので感染が認められた。液体資材C、Dでは107cfu/ml以上のもので感染が認められた。
また、株あたりの感染数が最も多かった資材は液体資材Dであり、この内、菌濃度×ペプトン濃度が108cfu/ml×1%の液体資材Dであって、株あたりの感染数は106cfuであった。
すなわち、ペプトンの存在によって、アゾ菌株の感染数が増えるという結果から判断して、このペプトンがアゾ菌株の増殖能の向上に大きく寄与していると認められる。
アゾ菌株の増殖能及びIAA産出能が向上するメカニズムは、添加されたペプトンをアゾ菌株が資化して増殖する過程でIAAを産出し、アゾ菌株が増殖するほど多くのIAAを産出するものと思われる。
したがって、試験1及び試験2の結果から総合して判断すると、植物の成長に最も効果的な菌株濃度×ペプトン濃度は、108cfu/ml×1%であると認められ、この菌株濃度×ペプトン濃度の液体資材によって、アゾ菌株が効率良く増殖し、IAAを多く産出させることができる。
〔試験3〕(図9〜図12参照)
試験1及び試験2において、ペプトンの添加によりアゾ菌株の増殖能の向上が認められ、試験1及び試験2で使用した液体資材Dを施用することで、供試植物の生育促進・増収効果が期待できる。
そこで、培養液中での有用微生物の増殖の可否を試験3によって判断した。試験3では、試験1及び試験2で使用したアゾ菌株を使用し、液体資材製造の効率性の向上という観点から、同一培養液中での混合培養の可否も判断する。
〔試験方法〕
1.供試菌株:アゾ菌株A1、アゾ菌株A2
2.培養方法
(1)前培養:アゾ菌株A1及びアゾ菌株A2について純化を確認したコロニー1白金耳を40mlの培養液に夫々接種し、この培養液を28℃・120rpmで48時間振盪培養してアゾ菌株A1及びアゾ菌株A2夫々の菌液(菌液A10、菌液A20)を得た。
(2)培養1:前培養で得た菌液A10、A20を20mlずつ300mlの培養液に接種し、この培養液を28℃・120rpmで48時間振盪培養して混合菌液A30を得た。
(3)培養2(継代培養):培養1で得た混合菌液20mlを300mlの培養液に接種し、この培養液を28℃・120rpmで48時間振盪培養して継代菌液A40を得た。
(4)生菌数の測定:菌液A10、菌液A20、混合菌液A30、継代菌液A40の夫々の生菌数を希釈平板法により測定した。
菌液A10、菌液A20、混合菌液A30、継代菌液A40の夫々の生菌数を測定した結果を〔図9〕〜〔図11〕に示す。
前培養の結果、〔図9〕に示す通り、アゾ菌株A1及びアゾ菌株A2は、培養液中において増殖することが示され、前培養で培養された菌液A10中のアゾ菌株A1の濃度と、前培養で培養された菌液A20中の菌株A2の濃度とが、同濃度(小数点2位以下切り捨て)であり、培養液中での同条件による培養において、アゾ菌株A1とアゾ菌株A2との生存率が同等であることが示された。
すなわち、アゾ菌株A1とアゾ菌株A2とは、培養液中での増殖が可能であると判断できる。また、菌液A10と菌液A20とのアゾ菌株A1とアゾ菌株A2を同濃度で、培養1での試験において培養液に接種することができ、これにより、混合菌液A30中でのアゾ菌株A1とアゾ菌株A2の混合培養の可否判断の正確性が高まるものと思われる。
培養1の結果、〔図10〕に示す通り、5回同じ試験を行ったとき、混合菌液A30中のアゾ菌株A1とアゾ菌株A2の濃度が、およそ5.0〜7.0×108cfu/mlで推移し、5回の試験の平均濃度(小数点2位以下切り捨て)が近似していることが示された。
培養2においても、培養1での試験結果と同様に、〔図11〕に示す通り、継代菌液A40中でアゾ菌株A1とアゾ菌株A2が正常に増殖し、アゾ菌株A1とアゾ菌株A2の平均濃度も同じであることが示された。
すなわち、アゾ菌株A1とアゾ菌株A2、同一の培養液で競合することなく、夫々正常に増殖することができ、同一の培養液中での混合培養が可能であると判断できる。
尚、本試験中において、混合菌液A30を希釈平板法によりプレートに塗沫5日後のコロニーでアゾ菌株A1とアゾ菌株A2を視覚的に見分けることができた。アゾ菌株A1は、寒天培地中のコンゴーレットを十分に吸収したようで、コロニーの色は赤色であり、アゾ菌株A2は、コンゴーレットをアゾ菌株A1よりも少なく吸収したようで、コロニーの色はピンク色であって、コロニーの色で識別可能であった。
〔試験4〕(図12参照)
試験1〜試験3の結果から、ペプトンの添加によってアゾ菌株の増殖能及びIAAの産出能が向上し、しかも、2種類のアゾ菌株A1とアゾ菌株A2が同一の培養液中での混合培養ができることが示されている。
そこで、混合菌液A30にペプトンを添加することによる菌株の増殖効果の可否と、アゾ菌株の増殖能及びIAAの産出能の向上に効果的なペプトン濃度とを、試験4により、混合菌液A30の生菌数を測定し、この測定結果に基づいて判断する。
〔試験方法〕
(1)供試菌株:アゾ菌株A1、アゾ菌株A2
(2)混合菌液A30の培養方法:ペプトン濃度1%、3%、5%、6%、7%、8%、10%の溶液300mlに、アゾ菌株A1の濃度が1×109cfu/mlの菌液A10と、アゾ菌株A2濃度が1×109cfu/mlの菌液A20を、夫々10ml接種して24時間放置して混合菌液A30を得た。
(3)調査方法:混合菌液A30の生菌数を希釈平板法により測定し、この生菌数と混合菌液A30の接種時の生菌数とを比較する。
尚、(2)における菌液A10、A20の接種量とする10mlは、アゾ菌株A1、アゾ菌株A2で約1×109cfu/mlまで増殖するので、トレー1冊あたりに必要な菌液A10、A20は、10mlと算出できる。また、計算上、混合菌液A30の接種時の生菌数は約7×107cfu/mlである。
混合菌液A30の、ペプトンを添加したことによるアゾ菌株A1とアゾ菌株A2の生菌数を測定し、その増殖性を判定した結果を〔図12〕に示す。
測定の結果、図12に示すように、混合菌液A30の接種時の生菌数に対して、混合菌液A30中のペプトン濃度が7%以上からアゾ菌株A1とアゾ菌株A2の明らかな増殖の抑制が認められた。
一方、混合菌液A30中のペプトン濃度が1〜6%の生菌数を見ると、混合菌液A30の接種時の生菌数に対して増殖していることが明らかであり、この結果から、混合菌液A30中のペプトンの限界濃度は6%付近であると判断でき、或いは6%〜7%未満であると推察できる。
また、試験1、2で明らかなように、混合菌液A30中のペプトン濃度が0.1%である液体資材Cが接種された供試植物の成長結果から判断すれば、混合菌液A30中のペプトン濃度が1%未満でも、アゾ菌株A1とアゾ菌株A2とが増殖するものと推察できる。
すなわち、アゾ菌株A1とアゾ菌株A2とが含まれる混合菌液A30にペプトンを添加することによっても、アゾ菌株A1とアゾ菌株A2の増殖能及びIAAの産出能が向上することが示され、且つアゾ菌株A1とアゾ菌株A2の増殖能及びIAAの産出能が向上する好適なペプトン濃度が示された。
また、本実施例においては、継代菌液A40にペプトンを添加した場合のアゾ菌株A1とアゾ菌株A2の増殖能及びIAAの産出能の測定を行っていないが、試験3によって証明されたように、継代菌液A40中でのアゾ菌株A1とアゾ菌株A2との増殖能が、混合菌液A30中でのアゾ菌株A1とアゾ菌株A2との増殖能と同等であるので、ペプトンが添加された継代菌液A40は、ペプトンが添加された混合菌液A30と同等の作用効果を有していると推察できる。
また、実施例1及び実施例3においては、2種類のアゾ菌株A1、A2を含む混合菌液A30にペプトンを添加した菌液の試験結果のみを開示したが、1種類のアゾ菌株や3種類以上のアゾ菌株に対してペプトンを添加した菌液であっても、アゾ菌株の増殖能及びIAAの産出能が向上するものと推察できる。
〔試験5〕(図13参照)
試験1〜試験4では、ペプトンの添加によってアゾ菌株の増殖能及びIAAの産出能が向上すること、2種類のアゾ菌株A1、A2が同一の培養液中で競合することなく生存できること、アゾ菌株の増殖能及びIAAの産出能の向上に好適なペプトン濃度が存在すること等が示された。
この試験5では、任意に定められた温度下で、且つ液体資材を任意に定められた期間で放置したときアゾ菌株A1、A2の生存数の推移を測定し、この測定結果に基づいて液体資材の保存性能を判定する。
〔試験方法〕
(1)供試菌株:アゾ菌株A1、A2
(2)供試培地:ペプトン1%培地(混合菌液A30用)・5%培地(混合菌液A31用)
(3)保存温度:5・10・20・28℃
(4)保存期間:3か月間
(5)混合菌液A30、A31の培養方法:ペプトン1%培地・5%培地を用いて試験4と同様の培養方法で混合菌液A30、A31を得た。
(6)調査方法:混合菌液A30、A31を分注したアイボーイを、5・10・20・28℃の温度下でに静置し、生菌数の推移を測定した。混合菌液A30、A31の生菌数は希釈平板法により測定した。
測定の結果、図13(a)(b)に示すように、混合菌液A30、A31は、双方ともに、すべての温度下で生菌数が減少しているが、混合菌液A30の生菌数の減少に比べて、すべての温度下で混合菌液A31の生菌数が緩やかに減少していることが確認できる。
すなわち、図13(a)に示す線で表わされる混合菌液A30の生菌数の減少を示す勾配が、すべての温度下において、接種時当初から3か月後までほぼ一気に減少することを示している。
図13(a)に示す勾配に対して、図13(b)に示す線で表わされる混合菌液A31の生菌数の減少を示す勾配が、すべての温度下において、接種時当初から緩やかに減少していることが示されている。
さらに、図13(b)に示すように、20℃の温度下では、3か月後においても高い生菌数を維持していることが示されており、20℃を除く温度下での勾配が、1か月付近又は2か月付近を境に3か月付近まで急勾配となり、生菌数が一気に減少することが示されている。
また、混合菌液A30、A31の各温度下での生菌数を、図13(a)(b)に示すように接種時から7日目、1か月目、2か月目で夫々比較すると、7日目、1か月目、2か月目のすべてで混合菌液A31の生菌数が混合菌液A30の生菌数を上回っていることが示されている。
また、混合菌液A30、A31の夫々で各温度下での生菌数の減少を比較すると、20℃の温度下での生菌数の減少数が、20℃以外の温度下の生菌数の減少数に比べて、群を抜いて少ないことが示された。
試験5の結果から、ペプトン濃度が高い方が生菌数の保存能力が高く、さらに、20℃の保存温度が生菌数の保存に適していると判断できる。したがって、ペプトン濃度5%の液体資材を20℃の温度下で保存することによって、比較的長期間(試験例では3か月)にわたり生菌数の減少を抑制することができる。
〔試験6〕(図14、図15参照)
試験5の結果から菌液中のペプトン濃度が高い方が、生菌数の保存能力が高く、20℃の保存温度が生菌数の保存に適していることが認められた。試験6では、試験5における各温度下での生菌数の保存能力の向上の可否を検討する。
〔試験方法〕
(1)供試菌株:アゾ菌株A1、A2
(2)供試培地:ペプトン1%培地・5%培地
(3)保存温度:5・10・20・28℃
(4)混合菌液A30の培養方法:ペプトン1%培地300mlにアゾ菌株A1、A2の培養液(6×108cfu/ml)を夫々20ml接種し、48時間振盪培養して混合菌液A30を得た。
(5)混合菌液A31の培養方法:ペプトン5%培地300mlにアゾ菌株A1、A2の培養液(6×108cfu/ml)を夫々20ml接種し、48時間振盪培養して混合菌液A31を得た。
(6)液体資材の調整:混合菌液A30を10mlアイボーイに分注し、分注した混合菌液A30に同量の滅菌した保護液(10%・20%ペプトン溶液)を添加して液体資材A40a(10%ペプトン溶液)、液体資材A40b(20%ペプトン溶液)を得た(図14参照)。
(7)液体資材の調整:混合菌液A31を10mlアイボーイに分注し、分注した混合菌液A31に同量の滅菌した保護液(5%・10%ペプトン溶液)を添加して液体資材A41a(5%ペプトン溶液)、液体資材A41b(10%ペプトン溶液)を得た(図14参照)。
(8)調査方法:液体資材A40a、A40b、A41a、A41bを分注したアイボーイを、(3)に示すの温度下で静置して生菌数の変化を測定した。また、液体資材A40a、A40b、A41a、A41bの比較対象として、ペプトン溶液を添加しない混合菌液A30、A31を用いた。液体資材A40a、A40b、A41a、A41b及び混合菌液A30、A31の生菌数は希釈平板法により測定した。
液体資材A40a、A40b、A41a、A41b中及び混合菌液A30、A31中のペプトン濃度は、図14に示す通り、20%ペプトン溶液を添加した液体資材A40bが最も高く、ペプトン溶液を無添加とした混合菌液A30、A31が最も低いことが示された。
尚、図14に示す液体資材A40a、A40b、A41a、A41b及び混合菌液A30、A31中のペプトン濃度は、供試培地中のペプトンがアゾ菌株A1、A2により資化されていない場合の濃度である。
すなわち、液体資材A40a、A40b、A41a、A41b及び混合菌液A30、A31中において、アゾ菌株A1、A2がペプトンを資化するので、実際の液体資材A40a、A40b、A41a、A41b及び混合菌液A30、A31中のペプトン濃度は、図14に示す値よりも低い可能性がある。
液体資材A40a、A40b及び混合菌液A30中の生菌数の推移を温度別で測定した結果を図15(a)〜(d)に示す。
測定の結果、5℃(図15(a))・10℃(図15(b))の温度下では、液体資材A40a、A40bの生菌数の減少が、混合菌液A30の生菌数の減少とほぼ同じ程度であることが示されている。
一方、20℃(図15(c))・28℃(図15(d))の温度下では、液体資材A40aの生菌数が、液体資材A40b及び混合菌液A30と比較して緩やかに減少していることが示されており、特に、20℃の温度下での生菌数は、接種時から3か月間にわたり108cfu/mlを維持していることが示されている。
また、液体資材A40bの場合、20℃の温度下においては、接種後から2か月目くらいまでは、混合菌液A30の生菌数が液体資材A40bの生菌数よりも多いが、1か月目くらいから3か月目にわたり混合菌液A30の生菌数が一気に減少する一方、液体資材A40bの生菌数は、2か月目くらいから3か月目にわたり106cfu/mlを維持していることが示されている。
すなわち、液体資材A40a、A40bの構成では、20℃・28℃の温度下において、生菌数の減少を抑制できることが認められ、特に、液体資材A40aを20℃の温度下で保存した場合には、より高い生菌数の減少の抑制ができることが認められる。
次に、液体資材A41a、A41b及び混合菌液A31中の生菌数の推移を温度別で測定した結果を図16(a)〜(d)に示す。
測定の結果、5℃(図16(a))・10℃(図16(b))の温度下では、液体資材A41a、A41bの生菌数の減少が、混合菌液A31の生菌数の減少とほぼ同じ程度であることが示されている。
一方、20℃(図16(c))の温度下では、液体資材A41a及び混合菌液A31の生菌数が緩やかに減少すると共に、接種時から3か月目にわたり減少量が極めて低いことが示されており、液体資材A41bでも、5℃・10℃の温度下での接種時から3か月目にわたる減少量よりも低いことが示された。
また、28℃(図16(d))の温度下では、液体資材A41a、A41b及び混合菌液A31の生菌数の減少が、5℃・10℃の温度下での液体資材A41a、A41b及び混合菌液A31の生菌数が緩やかに減少すると共に、液体資材A41a、A41bともに、5℃・10℃の温度下での接種時から3か月目にわたる減少量よりも低いことが示された。
すなわち、液体資材A41a、A41bの構成では、20℃・28℃の温度下において、生菌数の減少を抑制できることが認められ、特に、液体資材A41aを20℃の温度下で保存した場合には、より高い生菌数の減少の抑制ができることが認められた。
また、混合菌液A31でも、20℃の温度下で保存した場合には、同温度下で保存した液体資材A41aと同等の高い生菌数の減少の抑制ができることが認められた。
以上の試験5、6の結果から、20℃・28℃の温度下において、液体資材A40a、A40b、A41a、A41b及び混合菌液A31中のペプトン濃度を調整することにより、生菌数の減少を抑制できることが認められた。
また、生菌数の減少の抑制に最も効果的な各資材中のペプトン濃度は、試験5、6の結果から判断して5%〜5.5%(液体資材A40a、A41a)付近であり、このペプトン濃度を超える濃度(液体資材A40b、A41b)では、生菌数の減少が早くなる傾向が認められた。
また、生菌数の減少の抑制に最も効果的なペプトン濃度として5%〜5.5%付近である結果は、試験4で示されたペプトンの増殖限界濃度が6%付近に数値的に近いものであって、
このことからも、生菌数の減少の抑制に最も効果的なペプトン濃度が5%〜5.5%付近であることが証明できる。
また、ペプトンを資化して増殖するアゾ菌株は、20℃以上の温度下において増殖性が高まり、特には、20℃以上の温度下において、アゾ菌株の増殖性が最も高まることが認められた。
20℃の温度下と28℃の温度下での生菌数の減少を比較すると、20℃の温度下での生菌数の減少が緩やかであることから判断して、アゾ菌株は、高温下において活性が高くなるため、餌であるペプトンがより多く消費され、餌が少なくなるに従って生菌数が減少するからであると推察できる。
また、アゾ菌株は、20℃の温度下において28℃の温度下に比べて活性が低く、餌であるペプトンの消費量が少なくなるため、長期間にわたって餌の必要量を確保でき、これによって、生菌数の減少が緩やかとなると推察できる。
また、図16(d)において、28℃の温度下で混合菌液A31の2か月以降の生菌数の減少が、液体資材A41a、A41b減少よりも多いが、これは混合菌液A31のペプトン濃度が、液体資材A41a、A41bのペプトン濃度よりも低いためと考えられる。
一方、5℃及び10℃の温度下では、ペプトンの添加による生菌数の減少抑制に効果がないと認められた。
生菌数の減少抑制に効果がない具体的な理由としては、アゾ菌株A1、A2は、10℃以下の温度下では、ペプトンを資化することもできないほど低活性状態となり、低活性状態によって、微好気性細菌であるアゾ菌株A1、A2の生存に必要な酸素濃度の場所への移動もできないほど運動性を失い、呼吸ができなくなって窒息死することで、アゾ菌株A1、A2の減少抑制ができないからであると推察できる。
〔試験7〕(図17〜図21参照)
試験7では、10℃以下の温度下でのアゾ菌株A1、A2の維持効果を、2種類の手段〔試験7A〕〔試験7B〕によって調査した。
〔試験方法〕
〔試験7A〕(図17〜図19参照)
(1)供試菌株:アゾ菌株A1、A2
(2)供試培地:ペプトン1%培地・ペプトン5%培地
(3)保存温度:5・10・20・28℃
(4)液体資材の調整:供試培地300mlに、アゾ菌株A1、A2の混合培養液(6×108cfu/ml)を20ml接種して48時間振盪培養し得られた菌液を、滅菌済みのアイボーイに無菌下で10ml分注した。その菌液に同量の滅菌した保護液(ペプトン・トレハロース(糖類)溶液)を添加した。保護液のペプトン濃度は試験5で、比較的結果が良かった濃度、すなわち、供試培地のペプトン濃度が1%の場合は10%、供試培地のペプトン濃度が5%の場合は5%とした。また、保護液中のトレハロース濃度は0・5・10・20%とした。
(5)調査方法:液体資材を分注し、(2)で示す温度下に静置後、生菌数の変化を測定した。各液体資材の生菌数は希釈平板法により測定した。
尚、以下では、各液体資材に、図16に示す符号を付して説明する。また、トレハロースを添加していない液体資材を比較資材とし、この比較資材は、試験5、6で用いた混合菌液(以下、「液体資材」という)A30、A31及び液体資材A40a、A41aを用いた。
測定の結果、図18(a)(b)に示すように、5℃、10℃の温度下では、液体資材A30〜液体資材A70の生菌数の減少について大きな差がない上に、図15(a)(b)、図16(a)(b)とも大きな差がなく、5℃、10℃の温度下では、トレハロースの添加による生菌数の維持という点で効果が認められなかった。
一方、図18(c)(d)に示すように、液体資材A50〜A70の生菌数の減少が、20℃の温度下では、接種後から1か月目までは、生菌数の減少が認められるが、1か月目から3か月目にわたる期間においては、生菌数の減少がほとんどなく、生菌数がほぼ維持されていることが示されている。
また、28℃の温度下では、液体資材A50、A60について接種後から2か月目までは、生菌数の減少が認められるが、2か月目から3か月目にわたる期間においては、生菌数の減少がほとんどなく、生菌数がほぼ維持されていることが示されており、液体資材A70については、1か月目から3か月目にわたる期間において、生菌数の減少がほとんどなく、生菌数がほぼ維持されていることが示されている。
すなわち、試験7Aでの液体資材A50〜A70は、20℃、28℃の温度下では、ある時期から生菌数が維持されていることが認められるのに対し、5℃、10℃の温度下でトレハロースの添加による生菌数の維持という点について効果が認められなかった。
また、図19(a)〜(d)に示す通り、液体資材A51〜A71においても、図18(a)〜(d)に示す液体資材A50〜A70と同じく、生菌数の維持について、5℃、10℃での温度下では効果がなく、20℃、28℃の温度下で効果があることが示された。
試験7Aの結果から、20℃、28℃の温度下では、液体資材A50〜A70、A51〜A71の生菌数は一時的に減少するが、ある時期から生菌の減少がほぼなくなるという傾向があり、20℃、28℃の温度下において、図18、図19に示すような生菌数の変化があるのは、20℃、28℃の温度下では、アゾ菌株A1、A2が活性化しているため、増殖しているアゾ菌株A1、A2も存在し、生存しているこのアゾ菌株A1、A2がトレハロースを体内に取り込み水溶液内でも生存できる形態に変化していると推定した。
〔試験7B〕(図20、図21参照)
試験7Aの(4)の方法で調整された液体資材A50〜A70、液体資材A51〜A71は、前述のとおり、5℃、10℃の温度下では、生菌数の維持について効果が認められなかったが、アゾ菌株A1、A2の活性が高い20℃、28℃の温度下では、生菌数の維持について効果があった。
そこで、試験7Bでは、試験7Aの方法とは異なる方法で液体資材(図20参照)を調整し、この液体資材の生菌数を測定して生菌数の維持効果について調査した。
〔試験方法〕
(1)供試菌株:アゾ菌株A1、A2
(2)供試培地:ペプトン1%+トレハロース1・5・10%
(3)保存温度:5・10・20・28℃
(4)液体資材の調整:供試培地300mlに、供試菌株の混合培養液(6×108cfu/ml)を20ml接種し、48時間振盪培養して得られた菌液を滅菌済みのアイボーイに無菌下で10ml分注した。
すなわち、試験7Bの液体資材の調整方法は、あらかじめ、ペプトンとトレハロースを添加した供試培地を用いて液体資材を調整する方法であって、この点で試験7Aの液体資材の調整方法と異なっている。
尚、以下では、各液体資材に、図20に示す符号を付して説明する。また、トレハロースを添加していない液体資材を比較資材とし、この比較資材は、試験7Aで用いた液体資材A30を用いた。
(5)調査方法:液体資材をアイボーイに分注し、(3)で示す温度下に静置後、生菌数の変化を調査した。液体資材の生菌数は希釈平板法により測定した。
測定の結果、図21(a)(b)に示すように、液体資材A82、A83は、5℃、10℃の温度下での生菌数の減少が、液体資材A30、A80と比べて極めて少なく、液体資材A81〜A83は、20℃、28℃の温度下での生菌数の減少が液体資材A30と比べて極めて少ないことが示された。
また、液体資材A82、A83の5℃、10℃の温度下での生菌数の減少は、図21(c)(d)に示す20℃、28℃の温度下での生菌数の減少と同じ程度であることが示された。
一方、図21(a)(b)に示すように、液体資材A80、A81は、5℃、10℃の温度下での生菌数の減少が大きく、液体資材A30〜A71の5℃、10℃の温度下での生菌数の減少と大差ないことが示された。
すなわち、液体資材A81、A82は、5℃、10℃の温度下において、液体資材A81〜A83は、接種後から2か月目までの生菌数がほぼ維持されていると認められ、試験7Bの方法で調整された液体資材A81〜A83は、一部を除いて生菌数の維持効果があるものと認められる。
また、5℃〜10℃のような低温下では、トレハロース濃度が5%〜10%という比較的高濃度で、生菌数の維持効果が得られていることから、細胞内に取り込まれたトレハロースが、水溶液中のアゾ菌株A1、A2にストレス耐性に作用することでアゾ菌株A1、A2を保護し、水溶液中に残存するトレハロースによって溶存酸素量が増加することで、生菌数を長く維持できたと推定できる。
さらには、供試培地にトレハロースを添加して振盪培養すると、より高いトレハロースの添加効果が向上し、低活性温度で運動性が失われても酸素を取り入れられる環境ができたと推定できる。
〔試験8〕(図22、図23参照)
試験7Bでは、トレハロースを含む培地でアゾ菌株を増殖した液体資材は、生菌数の減少が抑制され、特に、トレハロースの添加濃度が5%、10%で広い温域で減少抑制が確認された。
試験8では、試験7Bで得られた混合培養液に保護液としてペプトン溶液を添加したた場合の生菌数の減少を測定し、生菌数の維持効果の有無を調査した。
〔試験方法〕
(1)供試菌株:アゾ菌株A1、A2
(2)供試培地:試験7Bと同じ。
(3)保護液:ペプトン10%溶液
(4)保存温度:5・10・20・28℃
(5)液体資材の調整:供試培地300mlに、アゾ菌株A1、A2の混合培養液(6×108cfu/ml)を10ml接種し48時間振盪培養して得られた混合菌液に、この混合菌液と同量のペプトン10%溶液を添加した。ペプトン10%溶液を添加した混合菌液を滅菌済みのポリ瓶(豆乳瓶)に無菌下で200ml分注した。
尚、以下では、各液体資材に、図22に示す符号を付して説明する。また、トレハロースを添加していない液体資材を比較資材とし、この比較資材は、試験7Aで用いた液体資材A40aを用いた。
(6)調査方法
液体資材を分注したポリ瓶を、(4)に示す温度下に静置後、生菌数の変化を3か月間測定した。生菌数は希釈平板法により測定した。
測定の結果、図23(a)〜(d)に示すように、液体資材91は、5℃〜28℃の温度下において、生菌数の減少がほぼ横ばいであることが示されており、このことから液体資材91は、広い温度域で生菌数維持の効果が有ると認められる。
また、液体資材90は、20℃の温度下においてのみ、生菌数の減少がほぼ横ばいであることが示され、20℃以外の温度下では、液体資材40aの生菌数の減少と同じように生菌数の減少があることが示されており、このことから液体資材90は、20℃の温度下においてのみ生菌数維持の効果が有ると認められる。
また、液体資材92は、すべての温度下において、液体資材40aの生菌数の減少と同じように生菌数の減少があることが示されており、このことから液体資材90は、すべての温度下で生菌数維持の効果がないと認められる。
〔試験9〕(図24参照)
試験9では、広い温度域にわたって生菌数を維持する効果を有する液体資材91を、さらに長期間(12か月間)にわたる生菌数の減少を測定して生菌数の維持効果の有無を調査した。
測定の結果、図24に示すように、5℃〜28℃の温度下で6か月以上、高い水準で(1×108cfu/ml以上)生菌数を維持していることが示されており、最長で5℃の温度下で9か月間、前述の生菌数を維持していることが示された。
試験7B、8、9の結果から、液体資材91が、5℃〜28℃の温度下において、生菌数の減少の抑制効果が高いのは、あらかじめ、ペプトン及びトレハロースを添加した供試培地を使用したことと、この供試培地に添加されたペプトン及びトレハロースの濃度と、この供試培地で調整された混合菌液に添加された保護液であるペプトンの濃度が大きく関係していると判断できる。
すなわち、試験8での方法で調整された液体資材91では、アゾ菌株A1、A2の増殖及び生存に対して、ペプトン及びトレハロースによる溶存酸素量の増加や菌体保護が最も効果的に作用するものと判断できる。
したがって、液体資材91は、アゾ菌株A1、A2を増殖させながら生存させることで、アゾ菌株A1、A2の生菌数を長期間にわたって維持することができるので、長期間での保存性が高く、アゾ菌株A1、A2によるIAAの産出能が高いものであって、製品とする液体資材として最も適している。
ただし、試験8以外の方法で調整された液体資材でも、すべての温度下において、生菌数の減少抑制の効果はないが、ある温度下においては、生菌数の減少抑制の効果が認められていることから、各液体資材に対応した保存温度で保存することによって、アゾ菌株A1、A2の生菌数を長期間にわたって維持することができるので、保存温度の条件を付けることによって、製品とする液体資材に使用することができる。
〔試験10〕(図25、図26参照)
前述の各試験において用いられたタンパク質はペプトンであったが、試験10において、アゾ菌株の増殖及びIAAの産出能に好適なタンパク質、タンパク分解物、タンパク質を含む物質を調査した。
〔試験方法〕
(1)供試菌株:アゾ菌株
(2)供試タンパク質:酵母エキス、ペプトン、パンクレアチンカゼイン、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、スキムミルク
(3)調査方法:各たんぱく質の1%溶液を、100ml三角フラスコに30ml分注後、121℃で30分滅菌した溶液に培養3日目のアゾ菌株懸濁液(1.27×109cfu/ml)を100μl接種し、接種した溶液を20℃の暗所で7日間振盪培養して培養液を得た。その培養液から100μl抜き取り希釈してプレートに塗抹後(菌密度測定のため)、残りの培養液を6,000rpmで10分間遠心分離し得られた上澄み液についてサルコフスキー発色法によりIAA産出量を測定した。
尚、参考例として、IAAの前駆体であるトリプトファン溶液(0.1%)を用いて、(3)と同様の方法でIAA産出量を測定した。
また、各タンパク質等の溶液のpHは土壌条件に近づけるためpH6.0とした。ただし、アルブミン、カゼインは低pHで凝固反応を起こすためpH6.8とした。
測定の結果、図25に示すように、サルコフスキー発色法でIAAの定量をした結果、最も産出量が多かったのはペプトンであり、次いでパンクレアチンカゼイン、酵母エキスであった。一方、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、スキムミルク、IAAの前駆体であるトリプトファンは、IAA産出量はわずかであった。
したがって、アゾ菌株のIAAの産出能向上に効果的なタンパク質類は、ペプトン、パンクレアチンカゼイン、酵母エキスである。
尚、供試したパンクレアチンカゼインはペプトンの一種であるが、供試したペプトンに比べてパンクレアチンカゼインは、図25に示すようにアゾ菌株のIAA産出能が低いことから、ペプトンの成分によって、アゾ菌株のIAA産出量が異なることが示された。
測定の結果、図26に示すように、7日間の培養で最も生菌数が増加したのは酵母エキスであり、次いでパンクレアチンカゼイン、スキムミルク、ペプトンであった。
したがって、アゾ菌株の増殖に効果的なタンパク質類は、酵母エキス、パンクレアチンカゼイン、スキムミルク、ペプトンである。
この結果から判断して、アゾ菌株のIAA産出能向上及びアゾ菌株の増殖能向上という観点から、添加するタンパク質としてペプトンと酵母エキスとを用いることが効果的である。また、これ以外にも、アゾ菌株のIAA産出能及び増殖能に効果的な前述のタンパク質類から任意に選択することもできる。
尚、本発明は、例示した実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。
A40a:液体資材
A40b:液体資材
A41a:液体資材
A40b:液体資材
A50:液体資材
A60:液体資材
A70:液体資材
A51:液体資材
A61:液体資材
A71:液体資材
A80:液体資材
A81:液体資材
A82:液体資材
A90:液体資材
A91:液体資材
A92:液体資材

Claims (7)

  1. 有用微生物とタンパク質とが少なくとも含まれている液体資材。
  2. 糖類が含まれている請求項1に記載の液体資材。
  3. 前記有用微生物がアゾスピリラム属に属する微生物である請求項1又は2に記載の液体資材。
  4. 前記タンパク質がペプトン類及び/又は酵母エキスである請求項1乃至3いずれか1項に記載の液体資材。
  5. 液体資材の製造方法であって、
    タンパク質と糖類とを含む液体培地に有用微生物を接種することを特徴とする液体資材の製造方法。
  6. 液体資材の製造方法であって、
    タンパク質を含む液体培地に有用微生物を接種して得られた菌液に、少なくともタンパク質を含む保護液を添加することを特徴とする液体資材の製造方法。
  7. 前記保護液は、糖類が含まれていることを特徴とする請求項6に記載の液体資材の製造方法。
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