JP2018158400A - ダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具 - Google Patents

ダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具 Download PDF

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信一 鹿田
Shinichi Shikada
信一 鹿田
哲光 冨永
Tetsumitsu Tominaga
哲光 冨永
英彰 高島
Hideaki Takashima
英彰 高島
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Abstract

【課題】ダイヤモンド皮膜と工具基体との密着性と刃先強度を向上させ、耐チッピング性と耐剥離性が向上したダイヤモンド被覆工具を提供する。【解決手段】Coを3〜15質量%含むWC基超硬合金基体のWC平均粒径が0.5〜0.9μm、ダイヤモンド皮膜に接する基体の界面の凹凸最大高低差が0.5〜1.0μm、界面における隣り合う基体の最大凹凸間距離が0.5〜1.5μm、結合相が除去された領域のダイヤモンド皮膜膜厚方向の長さが0.5〜2.0μm、界面におけるダイヤモンド皮膜に接する縦断面に占めるWC粒子のうち70面積%以上のWC粒子において、頂点間距離の最大値(L1)が0.4〜0.8μm、内接する内接円の直径あるいは対向面の接線間の距離の最小値(L2)が0.2〜0.4μmであって、(L1)/(L2)が1.5〜2.5である。【選択図】図1

Description

本発明は、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)などの難削材の高速切削加工において、優れた耐衝撃性および密着性を備えることによって、優れた耐チッピング性および耐剥離性を発揮し、工具寿命を改善したダイヤモンド被覆炭化タングステン(WC)基超硬合金製切削工具に関する。
従来、WC基超硬合金(以下、「超硬合金」という)からなる工具基体に、ダイヤモンド膜を被覆したダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具(以下、「ダイヤモンド被覆工具」という)が知られており、工具基体とダイヤモンド皮膜の密着性を改善するために、工具基体上にダイヤモンド膜を成膜するなどの種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、凹凸を有する超硬基材の表面に超硬基材の構成成分の拡散を防止する中間層を介してダイヤモンド皮膜を被覆して得られた切削工具が開示されている。
さらに、特許文献2には、高い面加工精度で加工を行うために、ダイヤモンド皮膜を積層させて表面の結晶粒径を2μm以下とすることが開示されている。
特開平11−193479号公報 特開2002−79406号公報
近年の切削加工の技術分野における省力化および省エネ化、さらに低コスト化に対する要求は強く、これに伴い、切削加工は益々高速化の傾向にある。一方、従来のダイヤモンド被覆工具を、例えば、CFRPなどの難削材をエンドミルにより高い加工精度での高速切削に用いる場合には、鋭利な刃先が要求されるため、特に高い刃先強度が要求されるが、従来のダイヤモンド被覆工具は刃先強度が十分でなく、また、ダイヤモンド膜の剥離が生じやすい。そのため、長期の使用にわたって、満足できる耐チッピング性および耐摩耗性を発揮することはできず高い加工精度を維持することは困難であって、その結果、比較的短時間で使用寿命に至ることが多かった。
特許文献1に開示されている基体表面に凹凸を設けてダイヤモンドを皮覆する工具は、アルミニウム板の切削加工への適用についての説明があるものの、CFRP等の難切削材へ適用の説明はない。CFRP等の難切削材の切削加工において、基体表面の凹凸が大きいと、チッピングが発生する虞やダイヤモンド皮膜の成長にしたがいダイヤモンド皮膜の面粗度は粗くなることから、この文献に記載されている技術をCFRP等の難切削材へ直ちに適用することは難しい。
また、特許文献2は、アルミニウム合金などの非鉄金属の切削加工の加工面の粗さについて説明があるものの、CFRP等の難切削材へ適用の説明はない。特許文献2のように、工具表面ダイヤモンドの微結晶粒の割合が高くすると耐摩耗性が低下する虞があり、CFRP等の難切削材へ直ちに適用することはできない。
すなわち、CFRPなどの難削材の高速切削加工において、優れた耐衝撃性および密着性を備えることによって、優れた耐チッピング性および耐剥離性を発揮し、高い寿命のダイヤモンド被覆WC基超硬合金製切削工具を得ることは十分とは言えない状況にあった。
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち本発明の目的は、ダイヤモンド被覆工具において、ダイヤモンド皮膜と工具基体との密着性を向上させるとともにダイヤモンド被覆工具の刃先強度を向上させ、CFRP等の難切削材の高速切削加工において、耐チッピング性および耐剥離性が向上した、切削寿命が長いダイヤモンド被覆工具を提供することである。
上述の従来のダイヤモンド被覆工具が有する課題について本発明者らは鋭意、研究と実験を繰り返した。すなわち、CFRPのエンドミル加工において、突発的なチッピングが発生し、早期に工具の寿命に至る現象を詳細に解析した結果、ダイヤモンド皮膜の工具基体への密着力とその外表面の平滑性とを両立させることにより、ダイヤモンド皮膜工具のチッピングを抑制しダイヤモンド皮膜の耐剥離性を向上させ、工具寿命を延ばすという新たな知見を得た。
すなわち、本発明は、
「(1)Coを3〜15質量%含むWC基超硬合金基体にダイヤモンド皮膜を被覆形成したダイヤモンド被覆超硬合金切削工具であって、
当該ダイヤモンド被覆超硬合金切削工具のダイヤモンド皮膜厚さ方向の切断面において、
(a)前記基体を構成するWC粒子の平均粒径が0.5〜0.9μmであり、
(b)前記ダイヤモンド皮膜に接する前記基体の界面の凹凸の最大高低差(Rz1)が0.5〜1.0μmであり、該界面における隣り合う前記基体の凹凸間の最大距離(Δ)が0.5〜1.5μmであり、かつ基体の結合相が除去された領域のダイヤモンド皮膜の厚さ方向の長さ(Ye)が0.5〜2.0μmであり、
(c)前記界面における前記ダイヤモンド皮膜に接する個々のWC粒子の占める面積の和を100面積%とするとき、当該WC粒子の頂点間距離の最大値(L)が0.4〜0.8μmであって、当該WC粒子に内接する内接円の直径あるいは対向面の接線間の距離の最小値(L)が0.2〜0.4μm、(L)/(L)が1.5〜2.5であるWC粒子の面積和が70面積%以上であり、
(d)前記ダイヤモンド皮膜表面の凹凸の最大高低差(Rz2)が0.5〜1.5μmである、
ことを特徴とするダイヤモンド被覆超硬合金切削工具。
(2)前記ダイヤモンド皮膜の平均膜厚は、3〜30μmであることを特徴とする(1)に記載のダイヤモンド被覆超硬合金切削工具。」
である。
本発明のダイヤモンド被覆工具は、ダイヤモンド皮膜の工具基体への密着力とその皮膜表面の平滑性を両立させたため、チッピングを抑えることができ、工具寿命を延ばすことができるという顕著な効果を奏するものである。
ダイヤモンド皮膜を成膜する前の基体の結合相の一部を除去した超硬合金基体のダイヤモンド皮膜の厚さ方向断面(縦断面)模式図である。ただし、この図では、結合相の存在を強調するために、その面積を実際よりも大きく表示している。 ダイヤモンド皮膜と基体の界面におけるWC粒子の凹凸間の距離を説明する図である。 図1の結合相を除去した領域のWC粒子の形状の模式図であって、WC粒径の頂点間距離の最大値(L)およびWC粒子に内接する内接円の直径あるいは対向面の接線間の最小距離(L)を説明する図である。
上述のとおり、本発明は、ダイヤモンド皮膜の工具基体への密着力とその皮膜表面の平滑性とを両立させることにより、ダイヤモンド被覆工具のチッピングを抑制しダイヤモンド皮膜の耐剥離性を向上させ、工具寿命を延ばすという新たな知見に基づくものである。
ここで、ダイヤモンド皮膜の密着性は、基体であるWC基超硬合金基体における、(1)Co含有量、(2)WC粒子の平均粒径、(3)基体界面の凹凸の最大高低差(Rz1)、(4)該界面における隣り合う基体の凹凸間の最大距離(Δ)、(5)基体の結合相が除去された領域のダイヤモンド皮膜の厚さ方向の長さ(Y)、(6)界面におけるダイヤモンド皮膜に接するWC粒子の頂点間距離の最大値(L)、同WC粒子に内接する内接円の直径あるいは対向面の接線間の距離の最小値(L)、(7)(L)/(L)、(8)前記(6)および(7)に該当するWC粒子の面積割合、の各因子を所定値にすることにより達成される。一方、ダイヤモンド皮膜表面の平滑性は、前記密着性に影響を与える因子を所定値にすることに加え、(9)ダイヤモンド皮膜表面の凹凸の最大高低差(Rz2)を所定の範囲とすること、により達成される。
このため、本発明においては、ダイヤモンド皮膜が所定の密着力を得るために密着力に影響を与える因子を制御する一方で、これら密着性に影響を与える因子が平滑性に与える影響も考慮して、密着性と平滑性の両立を図るべく、前記各因子の最適な範囲を見出し、チッピングの発生を抑制して耐剥離性を向上させ、工具寿命の長いダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具を得ることに発明の特徴を有する。
以下、前記各因子の最適な範囲の説明を含め、本発明を詳細に説明する。
1.WC基超硬合金基体
まず、WC基超硬合金基体について説明する。
(1)Coの含有量
本発明のWC基超硬合金基体は、WCとCoを含み、Coの含有量は3〜15質量%である。Coの含有量の数値範囲を決めた理由は次のとおりである。基体を構成する超硬合金のCoの含有量が3質量%未満の場合、工具基体の靱性が低くなり切削時に欠損が生じやすくなるため好ましくない。一方、15質量%を超えると、エッチング処理後、Coが除去された領域において空隙が占める体積割合が多くなりCoが除去された領域が脆弱になるためダイヤモンド皮膜と工具表面との密着力が低下し好ましくない。したがって、超硬合金中のCoの含有量は、3〜15質量%と定めた。
(2)WCの平均粒径
本発明のWC基超硬合金基体のWCの平均粒径は0.5〜0.9μmである。平均粒径をこの範囲とした理由は、0.5μm未満では基体の靱性が低下し、一方、0.9μmを超えると前処理工程におけるエッチング後の基体凹凸が大きくなりダイヤモンド皮膜の平滑性に悪影響を及ぼし、チッピングを生じやすくなるからである。
ここで、WCの粒径は、エッチング処理を受けていない基体の任意の箇所で同じであって、以下のようにして求めたものである。すなわち、基体の表面(ダイヤモンド皮膜との界面)から10μm離れた基体側の50μm四方の領域の断面において、エッチング処理を受けていない個々のWC粒子の粒径を電子線後方散乱回折法(Electron Back Scatter Diffraction Patterns:EBSD)にてステップサイズ0.1μmの条件にて結晶方位を測定し、隣り合う測定点の結晶方位が5度ずれた箇所を粒界とみなし、粒界によって囲まれた領域を一粒子とした。
そして、基体断面の任意の3箇所において10μmの線分に含まれるWC粒子の数を、それぞれ数えて10μmで除し、得られた数値の平均値をWC粒子の平均粒径とした。
(3)基体界面の最大高低差
刃先を切断加工し、刃先の断面をCross−sectional pollisher(以下、CPという)にて刃先の断面を研磨加工し、走査型電子顕微鏡により基体と皮膜との界面を含む50μm四方の領域を3箇所観察して得られるJIS B 0601-1994にしたがった基体表面の凹凸の最大高低差(Rz1)(基体表面の凹凸の最大値)は、0.5〜1.0μmである(図1を参照)。Rz1をこの範囲とした理由は、0.5μm未満であると、ダイヤモンド皮膜に対する基体界面のアンカー効果が十分ではないためダイヤモンド皮膜の基体への十分な密着力が得られない虞があり、一方、1.0μmを超えると、ダイヤモンド皮膜表面の平滑性に悪影響を与えチッピングが発生しやすくなることがあるためである。
(4)基体界面の隣り合う凹凸間の距離の最大値
刃先を切断加工し、刃先の断面をCPにて刃先の断面を研磨加工し、走査型電子顕微鏡により基体と皮膜との界面を含む50μm四方の領域を3箇所観察して得られる基体界面の隣り合うWC粒子からなる凹凸間の距離の最大値(Δ)は、0.5〜1.5μmである。Δをこの範囲とした理由は、0.5μm未満であると、ダイヤモンド皮膜の平滑性が確保できない虞があり、一方、1.5μmを超えると、ダイヤモンド皮膜の基体への密着力が不十分となることがあるためである。Δは凹凸の高低差(Rz1)が0.5〜1.5範囲を満たす凹凸間の距離として規定される。凹凸間の距離については、図2を参照されたい。
(5)基体の結合相が除去された領域のダイヤモンド皮膜の厚さ方向の長さ(Y
超硬合金基体にダイヤモンド皮膜を成膜するためには、超硬合金基体の結合相成分であるCoを超硬合金基体とダイヤモンド皮膜の界面より除去する必要がある。ダイヤモンドコーティング工具の刃先を切断加工し、刃先の断面をCPにて刃先の断面を研磨加工し、走査型電子顕微鏡により基体と皮膜との界面を含む50μm四方の領域を3箇所観察して得られる断面観察像において、図1に示すように、酸等によるエッチング処理により、基体の結合相が除去された領域のWC基体の最上端のWC粒子からWC基体の最も深い底部に至るダイヤモンド皮膜の膜厚方向の長さをYとする。Yが0.5μm未満の場合は、超硬合金基体表面からCo層が十分除去されていないため、ダイヤモンド成膜時にCoが、超硬合金基体と皮膜の界面に拡散し、ダイヤモンド皮膜の密着力が低下する。またYが2.0μmを超える場合、超硬合金基体と皮膜との界面が脆弱となり、基体側にクラックを生じやすく、剥離の原因となる。したがって、Yの値を0.5〜2.0μmとした。
(6)基体界面のWC粒子の頂点間距離の最大値(L)と当該粒子のWC粒子に内接する内接円の直径あるいは対向面の接線間の距離の最小値(L
基体界面のWC粒子とは、図1において、ダイヤモンド皮膜に接するWC粒子であって、点で印をつけているものである。そのWC粒子の形状はWC粒子の頂点間距離の最大値(L)および当該粒子のWC粒子に内接する内接円の直径あるいは対向面の接線間の距離の最小値(L)で規定される。
は当該WC粒子の頂点上を結ぶ最大距離(最大長)の値を示し、0.4〜0.8μmである。WC粒子の最大長はWC粒子の粒径に依存し、エッチングによりWCが浸食されるため、その範囲はWCの粒径を超えない範囲で規定され、この範囲になければ、ダイヤモンド皮膜は良好な密着性を得ることができない。
一方、Lは、当該エッチングにより侵食された粒子のWC粒子に内接する内接円の直径あるいは対向面の接線間の距離の最小値である。Lは当該粒子のWC粒子の断面形状を構成する頂点が3点のときは、当該WC粒子内に内接する内接円の直径の最大値であり、当該粒子のWC粒子の断面形状を構成する頂点が4点のときは、接線間の距離の最小値である。Lの範囲は0.2〜0.4μmである。Lが0.2μm未満であると、基体の結合相が除去された領域の基体強度が得られず、基体の結合相が除去された領域にクラックを生じやすい。また、Lが0.4μmを超えると、ダイヤモンド皮膜に対する基体界面のアンカー効果が十分に得られないため、基体への十分な密着力が得られない虞がある。
ダイヤモンド皮膜に接するWC粒子の(L)および(L)の定義については、図3を参照されたい。
(7)ダイヤモンド皮膜に接する基体のWC粒子の頂点間距離の最大値(L)と当該粒子のWC粒子に内接する内接円の直径あるいは対向面の接線間の距離の最小値(L)との比
ダイヤモンド皮膜に接する基体のWC粒子の頂点間距離の最大値(L)と当該粒子のWC粒子に内接する内接円の直径あるいは対向面の接線間の距離の最小値(L)との比、(L)/(L)は1.5〜2.5である。比をこの範囲とした理由は、1.5未満では、ダイヤモンド皮膜に対するアンカー効果が十分ではないためダイヤモンド皮膜の十分な密着性が得られないことがあり、一方、2.5を超えると、ダイヤモンド皮膜の平滑性が損なわれる虞があり、チッピングが発生しやすくなるためである。
なお、ダイヤモンド皮膜に接する基体のWC粒子形状の頂点間距離の最大値(L)と当該粒子のWC粒子に内接する内接円の直径あるいは対向面の接線間の距離の最小値(L)は、基体の界面から10μm、基体表面と水平方向において50μmの基体の縦断面において、電子線後方散乱回折法(EBSD)にてステップサイズ0.1μmの条件で結晶方位を測定し、隣り合う測定点の結晶方位が5度ずれた箇所を粒界とみなし、粒界によって囲まれた領域をWC粒子の一粒子として、同縦断面内の全てのWC粒子に対して、(L)と(L)を求めた。
(8)前記(6)および(7)を満足するWC粒子の面積割合
前記(6)および(7)を満足するWC粒子の面積割合は、ダイヤモンド皮膜と基体との界面を含む50μm四方の領域を3箇所観察して得られる縦断面観察像において、前記界面においてダイヤモンド皮膜に接する個々のWC粒子の占める面積の和を100面積%とするとき、前記(6)および(7)を満足するWC粒子が占める面積が70面積%以上でないと、前記(6)および(7)の規定を満足してもダイヤモンド皮膜の密着性や平滑性を得ることができない。
2.ダイヤモンド皮膜
次に、ダイヤモンド皮膜について説明する。
(1)ダイヤモンド皮膜の平均膜厚
ダイヤモンド皮膜の平均膜厚は基体表面と水平方向における50μmの領域において、皮膜の厚さの5点の平均値であり、その値は3〜30μmが望ましい。この範囲とすることによって、長期の使用にわたって十分な耐摩耗性と耐剥離性をより発揮することができ、刃が丸みを帯びることが一層確実になくなって、所定の加工精度が得られる。
(2)ダイヤモンド皮膜の最大高低差
ダイヤモンドコーティング工具の刃先を切断加工し、刃先の断面をCPにて刃先の断面を研磨加工し、走査型電子顕微鏡により皮膜表面を含む50μm四方の領域を3箇所観察して得られる断面観察像において、JIS B 0601-1994にしたがったダイヤモンド皮膜の凹凸の3視野における最大高低差(Rz2)は、0.5〜1.5μmである。Rz2をこの範囲とした理由は、0.5μm未満であると、ダイヤモンド皮膜は剥離しやすくなり、一方、1.5μmを超えると、平滑性が不十分となりチッピングが発生しやすくなるためである。
次に、実施例について説明する。
ここでは、本発明に係るダイヤモンド被覆工具の具体例としてダイヤモンド被覆エンドミルについて述べるが、本発明はこれに限られるものではなく、ダイヤモンド被覆合金インサート、ダイヤモンド被覆ドリルなどの各種のダイヤモンド被覆工具に適用できることは言うまでもない。
(a)基体の製造工程
原料粉末として、0.5〜0.9μmの範囲内の所定の平均粒径を有するWC粉末、Co粉末、TaC粉末、NbC粉末またはCr粉末を、表1に示される割合に配合し、さらにバインダーとしてパラフィンと溶剤としてトルエン、またはキシレン、またはメシチレン、またはテトラリン、またはデカリンを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した。その後、いずれも押出プレス成形し、直径が10mm、長さが150mmの丸棒圧粉体とし、これらの丸棒圧粉体を、1Paの真空雰囲気中、1380〜1500℃の温度で1〜2時間保持するという焼結条件で焼結することで焼結体を得た。その後、前記焼結体を研磨加工することにより、WC基超硬合金焼結体を製造した。
次いで、前記WC基超硬合金焼結体を、溝形成部の外径寸法がφ10mm、長さ100mmとなるように研削加工することにより、WC超硬合金製エンドミル基体(以下、単に「エンドミル基体」という)を製造した。
(b)エッチング処理工程
次に、前記エンドミル基体の表面に、前記Rz1、Δ、L、L、(L)/(L)、および、面積%のそれぞれについて本発明で規定する数値範囲を満足する微細な凹凸を形成すべく、エッチング処理を行った。
エッチング処理は、アルカリエッチング処理、酸エッチング処理の2段階であり、アルカリエッチング処理は電解エッチングによって行い、酸エッチング処理は希硝酸中に基体を浸漬することによって行った。
具体的には、(第1前処理工程)
エンドミル基体を、NaOH(4〜8g)を含むエッチング溶液1Lに、単位面積当たりの電流量が1.5〜2.5A/dmになるように電流を通電した状態で10〜20分、電解エッチングを行い基体表面のWCを除去した。
(第2前処理工程)
前記エンドミル基体を、希硝酸(0.5体積%)の溶液1Lに8〜12秒間、室温(23℃)で浸漬し、ドリル基体の表面近傍のCoを主成分とする金属結合相の一部を酸エッチングで除去した。
(c)ダイヤモンド皮膜の成膜ための前処理工程
ダイヤモンド皮膜の成膜ための前処理として、ダイヤモンド成膜初期にダイヤモンドの核生成を促すため、前記エッチング処理を施したエンドミル基体を粒径1μmのダイヤモンド粉末を含むエチルアルコール溶液中で10分間超音波処理を行った。
(d)成膜工程
前記前処理を施したエンドミル基体を熱フィラメントCVD装置に装入した。そして、フィラメント温度を2100〜2200℃、ガス圧5〜8Torr(666.6〜1066.4Pa)の下で、水素ガスとメタンガスとの流量比を調整し、基体温度を800〜900℃に所定の時間維持(表2を参照)して、前記Rz2を満足する2〜32μmの膜厚のダイヤモンド皮膜を成膜し、本発明のダイヤモンド皮膜エンドミル(以下、「本発明エンドミル」という)を作成した。
比較のために、0.4〜1.2μmの範囲内の平均粒径を有するWC粉末を含む原料粉を表1に示される割合に配合し、前記(a)に記載した工程で、ドリル基体を製造した。その後、前記(b)〜(d)に相当する工程の処理(詳細は表2に記載)を行い、比較例のダイヤモンド皮膜エンドミル(以下、「比較エンドミル」という)を作成した。
表2の「先行前処理工程」とは、希硝酸(0.5体積%)の溶液1Lに8〜12秒間、室温(23℃)で浸漬し、基体表面近傍の結合相の一部を除去するものであり、前述の第1前処理工程に先行するものである。表2の斜線は対応する工程が実施されなかったことを示す。
表3に、表2にしたがって得られた本発明エンドミルと比較エンドミルにおける、基体のWC粒径、Rz1、Δ、Y、L、L、(L)/(L2)、および、WC粒子の面積%、並びに、ダイヤモンド皮膜の平均膜厚、および、Rz2を示す。表3において、斜線は対応する項目の測定ができなかったことを示す。
次に、前記本発明エンドミル1〜12、比較エンドミル1〜16(いずれも、外径はφ10.0mm)を用いて、以下の条件で、CFRPの高速溝加工試験を行った。なお、以下の条件に記載されている通常の切削速度とは、従来被覆工具を用いた場合の効率(一般には、工具寿命までに加工できる部品の数など)が最適となる切削速度である。
切削速度:300m/min
切削条件: エアブロー
突出し長さ : 25mm
1刃当り送り : 0.03mm/tooth
前記切削試験において、切削の異常音および切削時の荷重が異常を示した際に、試験を中断し、剥離・欠損の有無を確認した。剥離・欠損等が確認された場合、それまでの加工長を加工寿命とした。
また、加工長25mまで欠損せず、切れ刃の中央の逃げ面の摩耗形態が正常である(欠損、チッピングがない)、かつバリの長さまたは加工穴周りのデラミネーションの幅が1mmを越えないことを、本発明エンドミルの合格条件とした。
表4にこれらの評価結果を示す。
表4に示される結果から、本発明エンドミルは、基体を構成するCoの含有量、WC粒子の粒径がともに所定範囲にあり、また、ダイヤモンド皮膜に接する基体界面の凹凸の最大高低差や凹凸間の最大距離、基体の結合相が除去された領域のダイヤモンド皮膜の厚さ方向の長さが、それぞれ、所定範囲にあって、さらには、前記界面の70面積%以上のWC粒子が、所定範囲にあるダイヤモンド皮膜に接する基体のWC粒子の頂点間距離の最大値(L)、当該粒子のWC粒子に内接する内接円の直径あるいは対向面の接線間の距離の最小値(L)、(L)/(L2)を満足し、加えて、ダイヤモンド皮膜の平均膜厚と凹凸の最大高低差が所定値を満足していることにより、ダイヤモンド皮膜の密着性と平滑性を確保して、優れた耐チッピング性および耐摩耗性を発揮していることがわかるから、本発明のダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具はCFRP等の難切削材に対して工具寿命が改善されている。
これに対して、本発明のダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具が満足すべき事項が一つ以上欠けている比較エンドミルは、ダイヤモンド皮膜の密着性や平滑性が確保できないため、切削長が短く、チッピングが発生しており工具寿命が短いことがわかる。
本発明のダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具は、ダイヤモンド被覆超硬合金製エンドミルばかりでなく、ダイヤモンド被覆超硬合金製インサート、ダイヤモンド被覆超硬合金製ドリル等、各種のダイヤモンド被覆工具に適用できるものである。このため、本発明のダイヤモンド被覆超硬合金製切削工具は、優れた刃先強度と耐摩耗性を発揮することから、切削加工の省エネ化、低コスト化に十分満足に対応できるものであり、その産業上の利用可能性はきわめて大きい。

Claims (2)

  1. Coを3〜15質量%含むWC基超硬合金基体にダイヤモンド皮膜を被覆形成したダイヤモンド被覆超硬合金切削工具であって、
    当該ダイヤモンド被覆超硬合金切削工具のダイヤモンド皮膜厚さ方向の切断面において、
    ・ 前記基体を構成するWC粒子の平均粒径が0.5〜0.9μmであり、
    (2)前記ダイヤモンド皮膜に接する前記基体の界面の凹凸の最大高低差(Rz1)が0.5〜1.0μmであり、該界面における隣り合う前記基体の凹凸間の最大距離(Δ)が0.5〜1.5μmであり、かつ基体の結合相が除去された領域のダイヤモンド皮膜の厚さ方向の長さ(Ye)が0.5〜2.0μmであり、
    (3)前記界面における前記ダイヤモンド皮膜に接する個々のWC粒子の占める面積の和を100面積%とするとき、当該WC粒子の頂点間距離の最大値(L)が0.4〜0.8μmであって、当該WC粒子に内接する内接円の直径あるいは対向面の接線間の距離の最小値(L)が0.2〜0.4μm、(L)/(L2)が1.5〜2.5であるWC粒子の面積和が70面積%以上であり、
    (4)前記ダイヤモンド皮膜表面の凹凸の最大高低差(Rz2)が0.5〜1.5μmである、
    ことを特徴とする、ダイヤモンド被覆超硬合金切削工具。
  2. 前記ダイヤモンド皮膜の平均膜厚は、3〜30μmであることを特徴とする請求項1記載のダイヤモンド被覆超硬合金切削工具。
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JP7120524B2 (ja) 2018-06-19 2022-08-17 住友電工ハードメタル株式会社 ダイヤモンド接合体及びダイヤモンド接合体の製造方法

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