JP2018155723A - 弾性波センサ - Google Patents

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曽我部 智浩
Tomohiro Sogabe
智浩 曽我部
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Abstract

【課題】ヒータレスであり、高感度の弾性波センサを提供すること。【解決手段】弾性波を伝搬可能な基板と、基板上に設けられ、基板に弾性波を励振し、励振された弾性波を受信する弾性波送受信手段と、弾性波の伝搬経路上に配置され、検知対象と反応する反応部と、を有し、反応部は、酸化されたグラフェンを含むことを特徴とする弾性波センサである。【選択図】図5

Description

本発明は、弾性波センサに関する。本発明は、特に、弾性表面波を利用するガスセンサに関する。
ガスセンサは、雰囲気中に存在するガスを検知し、その種類、濃度、流量等の情報を電気信号に変換して出力する装置である。このようなガスセンサは、家電機器、産業用機器、環境モニタリング機器等に搭載され、人間、環境等に対して影響を及ぼすガスの漏洩を検知するために用いられている。
ガスセンサとしては、検知するガスの種類、濃度範囲、精度、動作原理、構成材料等の違いにより種々のガスセンサが知られている。従来のガスセンサには、通常、検知するガスとガス検知膜との反応を促進するために、ガス検知膜を数百℃程度まで加熱するヒータが設けられている。
しかしながら、ヒータを有するガスセンサにおいては、ヒータを加熱するためのエネルギーが必要となり、このようなガスセンサが搭載された機器の消費電力を増大させてしまうという問題があった。また、当該機器内部にヒータを配置するスペースが必要となり、当該機器の大型化を招いてしまうという問題があった。したがって、特に、可搬型の機器に搭載する部品としてヒータを有するガスセンサを採用することは困難であった。
さらに、ヒータにより加熱される温度が高いため、可搬型機器、据置型機器にかかわらず機器の安全性を確保することも困難であった。特に、水素ガスを用いる燃料電池等において、水素ガスを検知するためのガスセンサがヒータを有している場合、ヒータによる加熱が水素ガスの着火源となりうる可能性がある。
ところで、弾性波を利用して、ガス、液体等の種類、濃度等を測定する弾性波センサが知られている。弾性波として、弾性表面波素子の表面を伝搬する弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)を用いる場合、弾性表面波素子上に形成された反応膜と検知対象物質との反応の程度を、弾性表面波の伝搬特性の変化として取り出し、ガス、液体等の種類、濃度等を測定することができる。
たとえば、特許文献1には、弾性表面波ガスセンサとして、圧電性基板上に2つの送受波器が設けられ、2つの送受波器の間に、ゲッター材料を含むガス感知材料が配置されたセンサが記載されている。特許文献1によれば、ゲッター材料により吸着された分子、たとえば水素が、2つの送受波器の間で送信された信号の周波数を変化させることにより、当該分子を検出して、ガスセンサとして機能することが記載されている。
特表2008−518201号公報
しかしながら、特許文献1に記載された弾性表面波センサを水素センサとして用いる場合、吸着した水素を放出するために、加熱が必要となり、上記のヒータを備えるガスセンサと同様の問題があった。
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、ヒータレスであり、高感度の弾性波センサを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の弾性波センサは、
[1]弾性波を伝搬可能な基板と、
基板上に設けられ、基板に弾性波を励振し、励振された弾性波を受信する弾性波送受信手段と、
弾性波の伝搬経路上に配置され、検知対象と反応する反応部と、を有し、
反応部は、酸化されたグラフェンを含むことを特徴とする弾性波センサである。
[2]酸化されたグラフェンの酸化度が5%以上であることを特徴とする[1]に記載の弾性波センサである。
[3]弾性波送受信手段が、弾性波励振用電極および弾性波受信用電極を含むことを特徴とする[1]または[2]に記載の弾性波センサである。
[4]反応部と検知対象との反応を、弾性波の周波数変化量および/または振幅変化量として検出することを特徴とする[1]から[3]のいずれかの記載の弾性波センサである。
[5]反応部において反応する検知対象が、水素ガス、水蒸気、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、一酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、アンモニアガスから選ばれる1つ以上であることを特徴とする[1]から[4]のいずれかに記載の弾性波センサである。
[6]反応部において反応する検知対象が、ガス流量であることを特徴とする[1]から[5]のいずれかに記載の弾性波センサである。
本発明によれば、ヒータレスであり、高感度の弾性波センサを提供すること弾性波センサを提供することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る弾性波センサの一例を示す模式的な斜視図である。 図2は、本発明の一実施形態に係る弾性波センサの別の例を示す模式的な斜視図である。 図3は、本発明の一実施形態に係る弾性波センサの別の例を示す模式的な斜視図である。 図4は、本発明の実施例において、伝送特性S12の特定ピークにおける水素ガス濃度変化に起因する周波数変化を示すグラフである。 図5は、本発明の実施例において、水素ガス濃度と、周波数変化量と、の関係を示すグラフである。 図6は、本発明の実施例において、湿度と、周波数変化量と、の関係を示すグラフである。 図7は、本発明の実施例において、流量と、周波数変化量と、の関係を示すグラフである。 図8は、本発明の実施例において、酸化されたグラフェンの酸化度と、周波数変化量と、の関係を示すグラフである。 図9は、本発明の実施例において、伝送特性S12の特定ピークにおける水素ガス濃度変化に起因する振幅変化を示すグラフである。 図10は、本発明の実施例において、水素ガス濃度と、振幅変化量と、の関係を示すグラフである。
以下、本発明を、具体的な実施形態に基づき、以下の順序で詳細に説明する。
1.弾性波センサ
1.1 弾性表面波ガスセンサの全体構成
1.2 反応部
1.3 基板
1.4 弾性表面波励振電極および弾性表面波受信電極
1.5 弾性表面波ガスセンサの動作原理
2.本実施形態における効果
3.変形例
(1.弾性波センサ)
本実施形態に係る弾性波センサは、弾性表面波ガスセンサである。このガスセンサを接着剤等により基板上に実装して用いてもよいし、測定雰囲気と連通する公知のパッケージ内に収容して用いてもよい。また、このガスセンサのみでガスを検知してもよいし、補償用のセンサ素子、別種のガスを検知するための他のガスセンサ素子等とともにガスを検知してもよい。
(1.1 弾性表面波ガスセンサの全体構成)
図1に示すように、本実施形態に係る弾性表面波ガスセンサ1は、基板2、弾性表面波励振電極3、弾性表面波受信電極4および反応部5を有しており、弾性表面波励振電極3、弾性表面波受信電極4および反応部5は、いずれも基板2の一方の主面上に設けられている。また、反応部5は、弾性表面波励振電極3と弾性表面波受信電極4との間に配置されている。以下、各構成要素について詳細に説明する。
(1.2 反応部)
反応部5は、基板2の一方の主面上に設けられている。反応部5は検知対象と反応して、反応部上を伝搬する弾性表面波の伝搬特性を変化させることができる。弾性表面波の伝搬特性の変化は、後述する弾性表面波受信電極4において検出される。このような伝搬特性としては、弾性表面波の伝搬速度、減衰量等が例示される。弾性表面波の伝搬速度の変化は、弾性表面波の周波数変化量として検出される。また、弾性表面波の減衰量は、弾性表面波の振幅変化量として検出される。したがって、検知対象の有無、質量、濃度等を、周波数変化量、振幅変化量等として取り出すことができ、検知対象に関する情報を検出することができる。また、反応部と検知対象との反応を、少なくとも振幅変化量として検出することが好ましい。
本実施形態では、「反応」とは、反応部5が、検知対象を可逆的に捕捉および解放できることを意味しており、たとえば、可逆的な吸着および脱着が例示される。
本実施形態では、検知対象はガスであり、水素ガス(Hガス)、水蒸気(HOガス)、一酸化炭素ガス(COガス)、二酸化炭素ガス(COガス)、一酸化窒素ガス(NOガス)、二酸化窒素ガス(NOガス)、アンモニアガス(NH)等が例示される。なお、検知対象が水蒸気である場合には、当該ガスセンサは湿度センサとして機能する。
反応部5は、少なくとも酸化されたグラフェンを含有している。グラフェンは、炭素原子から構成される2次元シートが積層された層構造を有するグラファイトから、1層分の2次元シート構造が取り出された構成を有している。本実施形態では、酸化されたグラフェンとは、グラフェンに酸素または酸素を含む官能基が結合している状態をいう。酸素または酸素を含む官能基が結合しているグラフェンは酸化グラフェンともいう。
グラフェンは1層分の2次元シートなので、グラフェンに酸素が存在する場合、そのほぼ全てが外部に露出している。本実施形態では、酸化されたグラフェンにおいて、グラフェンに結合している酸素または酸素を含む官能基が検知対象と反応する。したがって、検出対象のガスが微量であっても、ガスを吸着しやすいので、感度よくガスを検知できる。このことが、ヒータレスでもガスの吸着・脱離が促進され、ガスの検知が可能な理由の一つである。また、反応部5の面積が小さくても、吸着および脱着に関わる酸素が多く存在しているので、効率よくガスを吸着および脱着できる。したがって、当該ガスセンサを小型化しても精度よくガスを検知できる。
また、グラフェンは熱的にも化学的にも安定であることから、酸化されたグラフェンも同様の性質を有している。したがって、酸化されたグラフェンを、反応部を構成する材料として用いることにより、種々の環境下に置かれた際の経時変化が少なく、検知対象の反応の再現性が高いセンサを得ることができる。
上述したように、検知対象であるガスの吸着および脱着には、酸素、または、酸素を含む官能基が関係しているので、検知対象であるガスの検知感度を向上させるには、酸化されたグラフェン中に存在する酸素が所定量以上含まれていることが好ましい。酸化されたグラフェン中の酸素含有量(wt%)は、酸化度として表され、本実施形態では、酸化されたグラフェンの酸化度は5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましい。一方、酸化されたグラフェンの酸化度の上限は特に制限されないが、高い酸化度を有する酸化グラフェンを製造することは困難であるという観点から、たとえば、酸化度の上限は80%である。
なお、上記の酸化度は、グラフェンおよび酸化グラフェンの合計を100%とした場合の酸素含有量である。したがって、グラフェンおよび酸化グラフェンのうち、酸化グラフェンのみが反応部に含まれている場合、酸化グラフェンの酸化度が、上記の酸化されたグラフェンの酸化度となる。一方、グラフェンおよび酸化グラフェンの両方が反応部に含まれている場合、酸化されたグラフェンの酸化度は、酸化グラフェンの酸化度とは一致せず、グラフェンおよび酸化グラフェンの合計を100%とした場合の酸素含有量となる。
反応部5は、酸化されたグラフェンによる検知対象ガスの検知を阻害しない程度において、グラフェンおよび酸化グラフェン以外の物質を含んでもよい。本実施形態では、グラフェンおよび酸化グラフェン以外の物質として、グラファイトが例示される。グラファイトは、グラフェンを製造するための原料となる場合があり反応部に含まれやすい。
反応部5の厚みは、検知対象ガスを十分に検知でき、反応部上を伝搬する弾性表面波の伝搬損失が抑制されていれば、特に制限されない。本実施形態では、1nm〜2μm程度である。
本実施形態では、反応部5は公知の成膜法により形成することができる。基板上に電極を形成した後、酸化されたグラフェンを含むペーストを塗布して形成する。まず、反応部5の形成予定領域以外の基板上の領域をレジストで覆い、酸化されたグラフェンのペーストを、たとえばスプレーコートにより基板上に塗布する。塗布後、所定の温度で乾燥させ、レジストをリフトオフすることにより、酸化されたグラフェンから構成される反応部5が形成される。また、反応部5と基板2との間に密着性を向上させる層が形成されていてもよい。
(1.3 基板)
図1に示す基板2は、反応部5、弾性表面波励振電極3および弾性表面波受信電極4を支持可能な強度を有し、基板上で励振される弾性表面波を所定の方向に伝搬可能な基板であれば、特に制限されない。本実施形態では、圧電性を有する材料で構成され、タンタル酸リチウム(LiTaO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、水晶等が例示され、LiTaOが好ましい。伝搬する弾性表面波の周波数温度特性が優れ、高い機械結合係数を有しているからである。
これらの基板の結晶方位は、励振される弾性表面波の種類に応じて決定すればよい。本実施形態において、励振される弾性表面波としては、レイリー波、リーキー波、ラブ波等が例示される。たとえば、リーキー波を励振する場合には、LiTaOでは、カット角が36°回転Yカットであり、LiNbOでは、カット角が64°回転Yカットであり、水晶では、カット角が−7.5°回転Yカットである。
(1.4 弾性表面波励振電極および弾性表面波受信電極)
図1に示すように、弾性波送受信手段としての弾性表面波励振電極3および弾性表面波受信電極4は、基板2の反応部5が形成されている主面上に、反応部5を挟むように配置されている。
弾性表面波励振電極3および弾性表面波受信電極4は、それぞれ、一対の櫛歯状電極が所定の間隔で、かつ接触せずに交差するよう配置されている。電極の配置状態、電極の間隔および交差長は、励振する弾性表面波の周波数、弾性表面波の伝搬方向等に応じて決定される。
弾性表面波励振電極3は、外部回路から所定の周波数を有する電気信号として入力された電気的エネルギーを基板に入力する。電気的エネルギーが与えられた基板は、逆圧電効果により振動し、基板上に入力された周波数を有する弾性表面波を励振することができる。
弾性表面波受信電極4は、弾性表面波励振電極3により励振され伝搬されてきた弾性表面波を受信し、その周波数に応じた弾性表面波のエネルギーを、電気的エネルギーに変換して、所定の周波数を有する電気信号として外部回路に出力する。
弾性表面波励振電極3および弾性表面波受信電極4を構成する材料は、導電性の材料であって、弾性表面波ガスセンサ素子の製造時の処理温度に耐えうる材料であれば特に制限されない。本実施形態では、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、または、これらを2つ以上含む合金が例示され、Auが好ましい。弾性表面波励振電極3および弾性表面波受信電極4を構成する材料として、Auを用いる場合、基板との密着性を向上させるためにAuと基板との間にチタン(Ti)等の密着層を形成してもよい。
弾性表面波励振電極3および弾性表面波受信電極4は以下のようにして形成することができる。まず、基板上に公知の成膜法を用いて電極を構成する導電性材料の薄膜を形成する。電極が、複数の導電性材料を積層して構成される場合には、複数の薄膜を形成して積層すればよい。次に、電極が図1に示す櫛歯状電極パターンとなるように薄膜をエッチングする。エッチングとしては、ウェットエッチングでもよいし、ドライエッチングでもよい。ドライエッチングとしては、たとえば、イオンミリングが例示される。
また、弾性表面波励振電極3および弾性表面波受信電極4の上に、カバー電極を形成してもよい。カバー電極を構成する材料としては、たとえば、アルミニウム(Al)等が例示される。カバー電極は、所定のレジストパターン上に蒸着膜を形成した後、リフトオフすることにより形成される。
弾性表面波励振電極3および弾性表面波受信電極4の厚みは、基板上に弾性表面波を励振でき、励振された弾性表面波を受信可能であれば、特に制限されない。本実施形態では、厚みは、50〜200nm程度である。
(1.5 弾性表面波ガスセンサの動作原理)
本実施形態では、検知対象が水素ガス(Hガス)である場合について説明する。まず、周波数変化量を検出する場合について説明する。弾性表面波ガスセンサ1において、弾性表面波励振電極3および弾性表面波受信電極4は図示しない外部回路に接続される。弾性表面波ガスセンサ1を所定の雰囲気に配置し、弾性表面波励振電極3に所定の周波数を有する高周波電圧を印加すると、基板上に弾性表面波が励振される。すなわち、印加された電気的エネルギーが、弾性表面波のエネルギーに変換される。励振された弾性表面波は、弾性表面波受信電極4に向けて伝搬し、弾性表面波受信電極4において受信され、電気的エネルギーに変換され、高周波電圧として取り出される。
雰囲気中に、弾性表面波ガスセンサ1の反応部5と反応する物質が存在しない場合には、印加される高周波電圧の周波数fと、取り出される高周波電圧の周波数fとは同じである。この雰囲気に検知対象であるHガスを導入すると(Hガス濃度が増加すると)、H分子が、反応部5を構成する酸化されたグラフェン中の酸素に吸着する。その結果、酸化されたグラフェンを構成する炭素原子の電子軌道が変化し、酸化されたグラフェンの導電率が変化する。
反応部5の導電率が変化すると、基板の特性が変化し、基板に形成された反応部5上を伝搬する弾性表面波の伝搬速度(v=fλ)が変化するので、その周波数も変化する。その結果、弾性表面波受信電極4において取り出される高周波電圧の周波数f’は、印加される高周波電圧の周波数fと異なっており、導電率の変化に起因する周波数変化量(Δf)を検出することができる。この周波数変化量は、反応部5において吸着された水素分子量と所定の相関関係を有しているので、この周波数変化量を、Hガス濃度として検出することができる。
一方、Hガス濃度が減少すると、酸化されたグラフェン中の酸素に吸着されているH分子が濃度の減少に応じて酸素から脱着する。その結果、反応部5の導電率が変化し、この導電率の変化に起因する周波数変化量(Δf)が検出され、Hガス濃度が減少したことが出力される。
次に、振幅変化量を検出する場合について説明する。周波数変化量と同様に、雰囲気中に、弾性表面波ガスセンサ1の反応部5と反応する物質が存在しない場合には、印加される高周波電圧の振幅Aと、取り出される高周波電圧の振幅Aとは同じである。
この雰囲気中にHガスが導入され反応部5の導電率が変化すると、基板のインピーダンスが変化し、高周波電圧が減衰して、高周波電圧のベクトルAがベクトルA’に変化する。この減衰前後の2つのベクトルの比を取ることによって、導電率の変化に起因する振幅変化量(ΔA)を検出することができる。この振幅変化量は、反応部5において吸着された水素分子量と所定の相関関係を有しているので、この振幅変化量を、Hガス濃度として検出することができる。
なお、反応部5上を伝搬する弾性表面波の伝搬速度を変化させる要因としては、反応部5の導電率変化に限らず、反応部5の質量変化であってもよい。この場合には、検知対象が酸化グラフェン中の酸素に吸着することにより、反応部5の質量が増加するので、反応部5上を伝搬する弾性表面波の伝搬速度または減衰量が変化し、取り出される高周波電圧の周波数または振幅が変化する。
同様に、検知対象が水蒸気(HOガス)である場合には、水蒸気の濃度変化、すなわち、湿度変化を周波数変化量または振幅変化量として取り出すことができる。また、検知対象がガス流量である場合には、流量変化を周波数変化量または振幅変化量として取り出すことができる。
高周波電圧の周波数変化量および振幅変化量は、ネットワークアナライザを用いて測定されるSパラメータの周波数変化量および振幅変化量として検出する。
Sパラメータは、DUT(Device Under Test)(本実施形態では弾性波センサ)の入出力特性を表すベクトルパラメータである。2つのポートを持つDUTの入力側のポートをポート1とし、出力側のポートをポート2とする。このとき、ポート2への入射波電圧に対するポート1からの伝送波電圧の比率が伝送特性S12(=伝送波電圧/入射波電圧)として表される。本実施形態では、伝送特性S12の周波数変化量および振幅変化量を検出する。
(2.本実施形態における効果)
本実施形態では、弾性表面波を利用するセンサにおいて、反応部に酸化されたグラフェンを少なくとも含有させている。検知対象との反応を担う酸素がグラフェン上に露出しているため、検知対象を吸着しやすい。したがって、反応部と検知対象との反応をヒータにより促進しなくても、高感度で検知対象を検出できる。その結果、ヒータを不要とすることができるので、当該センサが搭載される機器の消費電力を小さくし、小型化も可能とすることができる。
また、酸化されたグラフェンは熱的かつ化学的に安定であることから、当該センサが種々の環境下に置かれた場合であっても、経時変化が少なく、検知対象との反応の再現性も優れている。
また、検知対象の濃度に応じて、酸化されたグラフェン中の酸素と検知対象との吸着および脱着は可逆的に進行するので、検知対象の濃度と周波数変化量または振幅変化量とがよく対応し、精度よく検知対象を検知することができる。
また、酸化されたグラフェンには、酸素を含む種々の官能基を容易に導入できるので、検知対象との反応性の観点から、酸化されたグラフェンを種々の官能基で修飾することが可能となり、様々な検知対象に対しても容易に対応することができる。
また、反応部に酸化されたグラフェンが含まれることにより、伝搬する弾性表面波の減衰量が多くなる。したがって、弾性表面波の伝搬距離が短くても、検知対象の濃度変化および流量変化を精度よく検出できる程度に大きな振幅変化量を検出できる。その結果、検知対象の濃度変化および流量変化を、周波数変化量として検出するだけでなく、振幅変化量として検出することができる。
すなわち、本実施形態に係る弾性波センサは、種々の検知対象に対応でき、かつ検出精度を高めることができる。たとえば、ある検知対象の濃度変化について、周波数変化量よりも振幅変化量の方が精度よく検出できる場合には、当該検知対象の濃度変化を振幅変化量で検出し、別の検知対象の濃度変化について、振幅変化量よりも周波数変化量の方が精度よく検出できる場合には、当該検知対象の濃度変化を周波数変化量で検出できる。換言すれば、周波数変化量の検出と振幅変化量の検出とを組み合わせることにより、検知対象の種類の選択性を高めることができる。
(3.変形例)
上述の実施形態では、基板上に、弾性表面波励振電極、弾性表面波受信電極および反応部を有するガスセンサについて説明したが、弾性表面波励振電極、弾性表面波受信電極および反応部が形成されている主面上の別の領域に、補償用の弾性表面波励振電極および弾性表面波受信電極が形成されていてもよい。補償用の弾性表面波励振電極および弾性表面波受信電極の間には、反応部が形成されていないので、周波数変化量を算出する基準となる周波数および振幅変化量を算出する基準となる振幅を校正することができる。
また、検出感度を上げる為に、図2に示すように、弾性表面波励振電極3及び弾性表面波受信電極4の外側に反射器6を設置してもよい。反射器6を設置することによって、弾性表面波の共振が起こり、急峻な立ち上がりで挿入損失の低いフィルタ特性、共振特性が得られる。その結果、センサとしてのガス検知感度が向上する。
また、温度や湿度等の環境変化の影響を抑える為に、図3に示すように、2対の同じ弾性表面波励振電極3及び弾性表面波受信電極4を横方向に近接配置して(図3では接続された構成)、一方の弾性表面波励振電極3と弾性表面波受信電極4との間にのみ反応部5を配置してもよい。2対の同じ弾性表面波励振電極3及び弾性表面波受信電極4を横方向に近接配置することによって、温度や湿度等の環境変化の影響以外の反応部5の変化のみを検出することができる。
また、上述した実施形態では、ガスセンサを、ガスセンサ、湿度センサ、流量センサとして用いることを説明したが、1つのガスセンサでこれらのセンサを兼ねてもよい。たとえば、検知対象の濃度と周波数変化量または振幅変化量との対応データと、検知対象の流量と周波数変化量または振幅変化量との対応データとが保存されたメモリを接続することにより、検知対象の濃度および流量を同時に測定することも可能である。
また、上述した実施形態では、弾性波センサを、ガスを検知するセンサとして用いているが、検知対象がガス以外の液体であってもよい。さらに、上述した実施形態では、弾性波として弾性表面波を例示したが、弾性表面波以外の弾性波であってもよい。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の態様で改変しても良い。
以下、実施例を用いて、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
まず、カット角が36°の回転Yカットのタンタル酸リチウム(LiTaO)ウェハの主面にスパッタリング法を用いてチタン薄膜(膜厚20nm)及び金薄膜(膜厚80nm)を順次堆積し、弾性表面波励振電極および弾性表面波受信電極となるAu/Ti膜を成膜した。その後、Au/Ti膜にイオンミリングを施し、対数32、電極間隔9.4μm、交差長2370μmの弾性表面波励振電極および弾性表面波受信電極を形成した。次に、カバー電極として、Alをリフトオフ法により形成した。
続いて、電極が形成されたLiTaOウェハに、反応部として酸化度が40%である酸化グラフェンをスプレーコートした。すなわち、酸化されたグラフェンの酸化度も40%であった。続いて、リフトオフ法により、酸化グラフェンを弾性表面波励振電極および弾性表面波受信電極の間にパターニングした。
次に、電極および反応部としての酸化グラフェンが形成されたLiTaOウェハを個片化して、ガスセンサを得た。
得られたガスセンサをネットワークアナライザに接続し、流量が50sccmでドライエアーを20分流した後、水素濃度を、それぞれ、0.1%、0.2%、0.5%、0.75%、1.0%としたエアーを流し、入力周波数を109.5MHzとした場合におけるSパラメータとしての伝送特性S12を測定しその周波数変化量を評価した。各水素濃度における伝送特性S12の特定ピーク(周波数109.5MHz)からの周波数の変化を図4に示す。図4より、水素濃度が大きくなるにつれて、S12の特定ピークの周波数が大きくなることが確認できた。図4から、水素濃度と、S12の特定ピークの周波数変化量(Δf)との関係を示すグラフを作成すると、図5に示すグラフとなる。
図5より、水素濃度が変わるにつれて、特定ピークの周波数変化量Δfが大きくなることが確認できた。すなわち、周波数変化量を測定することにより、水素ガスを検知対象とした場合に、水素ガスの濃度を検出可能であることが確認できた。
続いて、得られたセンサをネットワークアナライザに接続し、流量が50sccmでドライエアーを20分流した後、水のバブリングによりドライエアーに水蒸気を供給して、エアー中の相対湿度を変化させ、入力周波数を109.5MHzとした場合におけるSパラメータとしての伝送特性S12を測定しその周波数変化量を評価した。相対湿度を変化させた場合における伝送特性S12の特定ピーク(周波数109.5MHz)からの周波数変化量を図6に示す。
図6より、相対湿度の変化に伴い、特定ピークの周波数変化量Δfが大きくなることが確認できた。すなわち、周波数変化量を測定することにより、湿度を検知対象とした場合に、湿度の変化(HOガスの濃度)を検出可能であることが確認できた。
続いて、得られたセンサをネットワークアナライザに接続し、流量が50sccmでドライエアーを20分流した後、ドライエアーの流量を変化させ、入力周波数を109.5MHzとした場合におけるSパラメータとしての伝送特性S12を測定しその周波数変化量を評価した。流量を変化させた場合における伝送特性S12の特定ピーク(周波数109.5MHz)からの周波数変化量を図7に示す。
図7より、流量の変化に伴い、特定ピークの周波数変化量Δfが大きくなることが確認できた。すなわち、周波数変化量を測定することにより、流量を検知対象とした場合に、流量の変化を検出可能であることが確認できた。
(実施例2)
次に、酸化グラフェンの酸化度を30%および40%に変化させた以外は、実施例1と同じ条件によりセンサを作製した。得られたセンサをネットワークアナライザに接続し、流量が50sccmでドライエアーを20分流した後、水素濃度を1%としたエアーを流し、入力周波数を109.5MHzとした場合におけるSパラメータとしての伝送特性S12を測定しその周波数変化量を評価した。各酸化度における伝送特性S12の特定ピーク(周波数109.5MHz)からの周波数変化量を図8に示す。
図8より、酸化度が大きくなるにつれて、周波数変化量が大きくなり、より高感度にガスを検知できることが確認できた。
(実施例3)
次に、実施例1で得られたセンサをネットワークアナライザに接続し、検知対象を水素ガスとし、入力周波数を109.5MHzとした場合におけるSパラメータとしての伝送特性S12を測定しその振幅変化量を評価した。各水素濃度における伝送特性S12の特定ピーク(周波数109.5MHz)の振幅の変化を図9に示す。図9より、水素濃度が大きくなるにつれて、S12の特定ピークの振幅が小さくなることが確認できた。図9から、水素濃度と、S12の特定ピークの振幅変化量(ΔA)との関係を示すグラフを作成すると、図10に示すグラフとなる。
図10より、水素濃度が0.1%から1.0%に変化すると、特定ピークの振幅変化量ΔAは2dB程度変化することが確認できた。濃度変化に応じて、このような大きな振幅変化量が得られるので、検知対象である水素ガスの濃度を十分に精度よく検出可能であることが確認できた。
本発明に係る弾性波センサは、反応部として酸化されたグラフェンを用いているので、ヒータレスとすることができ、種々のセンサとして好適に用いることができる。
1… 弾性表面波ガスセンサ
2… 基板
3… 弾性表面波励振電極
4… 弾性表面波受信電極
5… 反応部
6… 反射器
7… グランド端子

Claims (6)

  1. 弾性波を伝搬可能な基板と、
    前記基板上に設けられ、前記基板に弾性波を励振し、励振された前記弾性波を受信する弾性波送受信手段と、
    前記弾性波の伝搬経路上に配置され、検知対象と反応する反応部と、を有し、
    前記反応部は、酸化されたグラフェンを含むことを特徴とする弾性波センサ。
  2. 前記酸化されたグラフェンの酸化度が5%以上であることを特徴とする請求項1に記載の弾性波センサ。
  3. 前記弾性波送受信手段が、弾性波励振電極および弾性波受信電極を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の弾性波センサ。
  4. 前記反応部と検知対象との反応を、前記弾性波の周波数変化量および/または振幅変化量として検出することを特徴とする請求項1から3のいずれかの記載の弾性波センサ。
  5. 前記反応部において反応する検知対象が、水素ガス、水蒸気、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、一酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、アンモニアガスから選ばれる1つ以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の弾性波センサ。
  6. 前記反応部において反応する検知対象が、ガス流量であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の弾性波センサ。
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