以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。しかし、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1に示されるように、放射能濃度計測装置1は、計測水W1(被計測物)の放射能濃度を計測する。液体状の被計測物である計測水W1は、例えば、放射性セシウム等の放射性物質を含む。計測水W1は、砂や泥といった不純物も含むことがある。放射性物質の一例である放射性セシウムは、砂や泥といった不純物に付着した状態または水に溶けた状態として水中に存在する。
放射能濃度計測装置1は、遮蔽槽2と、貯留槽3と、循環系流路4(液体供給部)と、攪拌系流路6(液体供給部)と、排出系流路7(排出部)と、制御装置8(制御部)と、を備える。
遮蔽槽2は、放射能濃度計測装置1の外形形状をなす。遮蔽槽2は、本体9と、上蓋11(上蓋面)とを有する。本体9は、直方体状の箱体であり、その上面には開口9aが設けられる。本体9は、液体を満たすことができるように側壁や底部をなす部材同士が水密に接続される。上蓋11は、開口9aを塞ぐ。遮蔽槽2の大きさは、例えば、高さが2450mmであり、幅が2700mmであり、奥行きが2200mmである。
貯留槽3は、計測水W1を収容するものであり、外筒12と内筒13とを含む。外筒12は、下端が閉鎖され上端が解放された円筒状の形状を有する。外筒12の大きさは、例えば、直径が1400mmであり、高さが2450mmである。外筒12は、その軸線Lが上下方向に沿うように遮蔽槽2の中央近傍に配置される。外筒12は、梁部材(不図示)を介して遮蔽槽2に対して連結される。外筒12は、遮蔽槽2とともに計測対象領域Aと遮蔽領域Bとを形成する。外筒12の内部空間は、計測水W1を収容する計測対象領域Aである。また、遮蔽槽2と外筒12との間の空間は、遮蔽水W2を収容する遮蔽領域Bであり、遮蔽領域Bにはバックグラウンド放射線を低減させるための遮蔽水W2が満たされる。計測対象領域Aは、遮蔽領域Bに対して外筒12によって隔離されており、計測対象領域Aから遮蔽領域Bに計測水W1が漏れることがない。また、遮蔽領域Bから計測対象領域Aに遮蔽水W2が漏れることもない。
ここで、外筒12の直径の下限値は、計測水W1の遮蔽能力に基づいて設定され、例えば、300mm以上が好ましく、より好ましくは800mm以上である。なお、直径が300mm以上である場合には、感度改善効果は約2倍以上にすることが可能になり、計測精度の改善度合いが大きくなる。また、外筒12の直径の上限値は、2000mm以下であり、より好ましくは1500mm以下である。これら上限値によれば、所望の計測精度を維持できる。また、直径が1500mmより大きくなると、直径に対する計測精度の向上度合が徐々に小さくなる。そして、直径が2000mmより大きくなると直径が大きくなっても計測精度はほぼ一定なる。一方、計測水W1は少ない方が好ましいため、外筒12の直径は、2000mm以下であり、より好ましくは1500mm以下に設定される。なお、上記各部の数値は例示であって、各部の数値は上記の数値に限定されるものではない。
より詳細には、放射能濃度計測装置1では、放射能濃度センサ20の周囲空間が放射能濃度センサ20の検出限界まで計測水W1で満たすように設計されている。図8は、放射能濃度センサ20の周囲空間を計測水W1で満たした状態において放射能濃度センサ20で得られる線量(カウント値)の計算値である。図8では、比較例に係るマリネリ容器を利用した計測で取得された線量検出値(カウント値)を1として線量を規格化している。図8によれば、放射能濃度センサ20を中心として直径1400mm(即ち自己遮蔽距離である半径Rが700mm)のあたりでは、線量が飽和しており、1400mmより大きくしても感度上昇に寄与し得ないことがわかる。従って、貯留槽5の直径D2として1400mmを選択している。この場合には、比較例に係るマリネリ容器を用いた放射能濃度計測に比べて、4.4倍の感度を得ることができる。一方、貯留槽3の直径D2(自己遮蔽距離換算で半径R=700mm)であると仮定すると、点線源換算による遮蔽能力は1/40〜1/50である。そこで、放射能濃度計測装置1では、貯留槽3の外側に遮蔽領域をさらに設けることにより、自己遮蔽距離である半径Rを1100mmまで拡大し、充分な遮蔽能力を確保している。
内筒13は、上端及び下端が解放された円筒状の形状を有する。内筒13の大きさは、例えば、直径が400mmであり、高さが2000mmである。内筒13は、外径が外筒12より小さく、軸線が外筒12の軸線に重複するように外筒12の内部に配置される。さらに、内筒13は、内筒13の下端が外筒12の壁面と離間するように(内筒13の下端と外筒12の底部との間に所定の区間が形成されるように)配置される。内筒13は、外筒12の上蓋11を介して外筒12に連結されている。なお、放射能濃度計測装置1は、内筒13の内部における計測水W1の流れを乱すための撹拌コマ(不図示)を備えてもよい。撹拌コマは、内筒13の内壁面において、内筒13の軸線に沿う方向に互いに離間すると共に、円周方向にも互いに離間するように複数取り付けられる。この攪拌コマは、攪拌ノズルや攪拌スクリューを含む。
内筒13は、計測対象領域Aを外部領域A1aと内部領域A1bとに区分する。内筒13と外筒12との間の空間は、外部領域A1aである。内筒13の内部空間は、内部領域A1bである。内筒13は、下端に設けられた開口13aを有する。計測水W1は、開口13aを介して外部領域A1aと内部領域A1bとの間を行き来できる。つまり、計測水W1は、内筒13の内部と外部との間で循環する。この循環経路は、循環系流路4と内筒13の開口13aとによって構成される。
循環系流路4は、循環ポンプ14と、第1循環配管16と、第2循環配管17と、給水側三方弁18と、を有する。循環ポンプ14は、第1循環配管16の一端に接続される。第1循環配管16の他端には、給水側三方弁18が接続される。給水側三方弁18には、第1循環配管16に加えて、第2循環配管17の一端及び給水配管19の一端が接続される。第2循環配管17の他端は、外筒12と内筒13との間の領域(外部領域A1a)に配置される。給水配管19の他端は、計測前の計測水W1を収容する給水タンク(不図示)に接続される。このような構成を有する循環系流路4は、内部領域A1bから外部領域A1aへ計測水W1を導く第1経路と、給水タンクから給水配管19を経由して内筒13の内部へ計測水W1を導く第2経路とを構成する。
循環ポンプ14は、内筒13の内部に配置されて、内筒13の内部における計測水W1を吸い上げて、第1循環配管16に送出する。循環ポンプ14は、計測対象領域Aに計測水W1が満たされた状態において、液面よりも下方に配置される。また、循環ポンプ14は、計測水W1を吸い上げる動作に加えて、給水配管19を介して供給される計測水W1を内部領域A1b内へ排出する排出口としても機能する。この場合、循環ポンプ14の動作は停止させる。さらに、循環ポンプ14の下部におけるストレーナ部分の形状をノズル状としてもよい。この形状によれば、該ストレーナから排出される計測水W1の排出方向に指向性を付与することができ、放射能濃度センサ20および内筒13の任意の場所(例えば汚れのたまりやすい場所)を洗浄できる。
給水側三方弁18は、第1経路と第2経路とを選択的に切り替える。具体的には、給水側三方弁18は、第1循環配管16と第2循環配管17とを接続し、給水配管19の一端を閉鎖することにより第1経路を構成する。一方、給水側三方弁18は、給水配管19と第1循環配管16とを接続し、第2循環配管17の一端を閉鎖することにより第2経路を構成する。また、給水側三方弁18は、その開度を調整して、給水の全量を循環ポンプ14から噴出させることにより、放射能濃度センサ20および内筒13の内壁面の洗浄を優先させる動作を行うことができる。また、給水側三方弁18は、その開度を調整して、給水の一部を循環ポンプ14から噴出させることにより、給水速度を速めることもできる。なお、切換え弁としての給水側三方弁18は、二方弁を用いてもよい。
なお、給水側三方弁18は、第3経路を構成してもよい。第3経路とは、給水配管19を第1循環配管16に接続すると同時に、給水配管19を第2循環配管17に接続する態様である。この第3経路によれば、第1循環配管16及び第2循環配管17から水を給水できるので、給水時間を短縮することができる。
放射能濃度センサ(放射能濃度計測部)20は、計測水W1の放射能濃度を計測するものであり、内筒13の内部に配置される。内筒13は、外筒12に収容された計測水W1に囲まれている。換言すると、内筒13は、計測水W1に浸漬している。また、内筒13内には計測水W1が満たされていると共に、内筒13内には放射能濃度センサ20が配置されている。従って、放射能濃度センサ20も周囲が計測水W1に囲まれている。放射能濃度センサ20は、内部領域A1bにおいて液面及び循環ポンプ14よりも下方に配置されている。より詳細には、放射能濃度センサ20は、内筒13の軸線上であり且つ計測水W1の中央近傍に配置されている。換言すると、放射能濃度センサ20は、予め設定した標準水位の中央近傍に配置されている。
放射能濃度センサ20は、例えば、セシウム137など、ガンマ線を放射する放射性物質を含んだ計測水W1を計測する場合には、シンチレータと光電変換部と濃度推定部とを有する。シンチレータは、放射線エネルギーを吸収して蛍光を発生させる。シンチレータには、例えば、NaI(Tl)シンチレータや、CsI(Tl)シンチレータが用いられる。光電変換部は、シンチレータで発生した光を電気信号に変換する。放射能濃度センサ20は、シンチレータの発光の回数を数えたカウント値(CPS)を線量率として計測する。最終的に取得すべきデータは放射能濃度(Bq/kg)である。そこで、濃度推定部は、計測された線量率から放射能濃度を推定(換算)する。濃度推定部は、予め準備しておいた校正曲線を利用して、実際の計測において得られた線量率に基づいて放射能濃度を推定する。校正曲線としては、例えば体積と比重とが既知の試料で得られる線量率と放射能濃度との関係を示すものが用いられる。
濃度推定部は、放射能濃度センサ20と一体的に設けられていてもよいし、別体のものとして設けられていてもよい。濃度推定部は、放射能濃度センサ20と別体の場合、遮蔽槽2の外側に設置され、放射能濃度センサ20と接続されたコンピュータ(例えば制御装置8)の演算装置であってもよい。この場合、放射能濃度センサ20は、内部領域A1bを流動する計測水W1(被計測物)からの放射線を計測する放射線計測部として機能し、濃度推定部は、放射線計測部から送信された線量率に関する信号に基づいて放射能濃度を推定する。
攪拌系流路6は、撹拌ポンプ21と、第1攪拌配管22と、第2攪拌配管23と、第3攪拌配管24と、噴出ノズル26と、を有する。撹拌ポンプ21は、第1攪拌配管22の一端に接続される。第1攪拌配管22の他端には、第2攪拌配管23の一端が接続される。第2攪拌配管23の他端側は、3個に分岐し、それぞれに第3攪拌配管24の一端が接続される。第3攪拌配管24には、複数の噴出ノズル26が設けられる。具体的には、複数の噴出ノズル26は、鉛直方向に沿って互いに離間するように第3攪拌配管24に配置される。このような構成を有する攪拌系流路6は、内部領域A1bから外部領域A1aへ計測水W1を導く第3経路を構成する。なお、上記攪拌系流路6の構成は例示であって、分岐する数は3つに限定されることはない。
撹拌ポンプ21は、外筒12と内筒13との間の領域(外部領域A1a)、外筒12の底面近傍に配置される。撹拌ポンプ21は、計測水W1を吸い上げて、第1攪拌配管22に送出する。第1攪拌配管22は、上下方向に延びるパイプであり、第2攪拌配管23に計測水W1を送出する。第1攪拌配管22の一端は、計測水W1の水中において撹拌ポンプ21に接続される。第1攪拌配管22の他端は、計測水W1の液面上において、第2攪拌配管23の一端に接続される。第2攪拌配管23は、計測水W1の液面上、具体的には、遮蔽槽2の上蓋11における上側に配置される4つ叉のパイプであり、3本の第3攪拌配管24のそれぞれに計測水W1を送出する。第3攪拌配管24は、第1攪拌配管22のように上下方向に延びるパイプであり、それらの軸線方向から見たとき、外筒12の軸線まわりに略等間隔(例えば120度間隔)に配置される。
噴出ノズル26は、外部領域A1aにおいて内筒13の周方向に計測水W1を噴出する。この周方向とは、例えば、噴出ノズル26の噴出口から内筒13の外径に接するように引いた接線に沿う方向ということもできる。つまり、噴出ノズル26は、外筒12の側壁面から内部側の傾斜方向に計測水W1を噴出する。ここでいう傾斜方向とは、洗浄の態様によりいくつかの方向を選択し得る。例えば、傾斜方向は、水平面内の傾斜及び上下(鉛直)面内における傾斜を含む。噴出ノズル26の具体的な構成は、特に限定されないが、例えば液中撹拌ノズルが用いられる。液中撹拌ノズルである噴出ノズル26は、側面に吸入口を有し、第3攪拌配管24から流入する計測水W1の勢いを利用して噴出ノズル26の周囲(側面)の計測水W1を吸入する。噴出ノズル26は、下流側端部に噴出口を有し、第3攪拌配管24から流入した計測水W1と共に、噴出ノズル26の周囲から吸入した計測水W1を噴出する。そして、各縦流路における複数の噴出ノズル26では、計測水W1が噴出されるタイミングがほぼ同期している。
噴出ノズル26は、鉛直方向に並置されているので、液面高さの変化に応じて2個の形態を取り得る。第1形態は、噴出ノズル26が計測水W1の液面上において空気中に計測水W1を噴出する形態である。この第1形態によれば、空気中に露出した外筒12の内壁面に向けて計測水W1が噴出される。従って、外筒12の内壁面に付着した残留物を洗い流すことが可能になる。第2形態は、噴出ノズル26が計測水W1に計測水W1を噴出する形態である。この第2形態によれば、噴出ノズル26が計測水W1の液面下に存在し、貯留槽内の計測水W1を噴出することで、外部領域A1aの上下方向に延びて内筒13の周方向に進むような面状の噴流が形成される。その結果、外部領域A1aにおいて計測水W1を好適に撹拌できる。そうすると、放射性物質を含む物質が巻き上げられるので、外筒12の底部に沈殿することを抑制できる。
排出系流路7は、外筒12の底部に設けられて、外筒12に収容された計測水W1を外部環境に排出する。排出系流路7は、第1排出配管27と、排水弁28と、排出側三方弁29とを有する。第1排出配管27の一端は、外筒12の底面に接続される。第1排出配管27は上下方向に延びるパイプであり、その一端は外筒12の底面に接続され、他端は遮蔽槽2の外部に配置された排水弁28に接続される。排水弁28は、第1排出配管27の他端に取り付けられ、外筒12に収容された計測水W1の排出を制御する。つまり、排水弁28を閉鎖とすると、外筒12に計測水W1が収容可能となる。逆に、排水弁28を開放すると、外筒12に計測水W1が貯留されていた場合は計測水W1が排出される。排水弁28の排出側には、排出側三方弁29が接続される。排出側三方弁29には、排水弁28の排出側に加えて、さらに第2排出配管31と、第3排出配管32とが接続される。排出側三方弁29は、排水弁28から送出された計測水W1を第2排出配管31または第3排出配管32に対して選択的に送出する。第2排出配管31は、一端が排出側三方弁29に接続され、他端が開放されている。第3排出配管32は、一端が排出側三方弁29に接続され、他端が浄化設備(不図示)に接続される。このような構成を有する排出系流路7は、計測の結果に応じて計測水W1を第2排出配管31または第3排出配管32へ送出する。例えば、計測の結果が基準を満たすと判定されたとき、計測水W1は第2排出配管31に送出されて放流される。一方、計測の結果が基準を満たさない判定されたとき、計測水W1は第3排出配管32に送出されて、浄化設備に送られる。
液面センサ33(液面計測部)は、液面の高さの設定や攪拌系流路6の制御のために用いられる。例えば、放射能濃度計測装置1では、計測運転時における標準水位が予め設定されており、液面の高さが標準水位となるように、加圧給水装置による給水量が制御される。加圧給水装置よる給水量は、液面センサ33が計測している液面の高さに関する信号に応じて随時増減するように制御される。標準水位は、循環ポンプ14の吸入口よりも高い位置であって、内筒13の上端の高さよりも低い位置である。なぜならば、内筒13は外筒12の蓋と一体になっており通常の状態では蓋が閉じられているためである。なお、攪拌系流路6の制御について後述する。
制御装置8は、循環系流路4、攪拌系流路6、排出系流路7及び放射能濃度センサ20の動作を制御する。制御装置8は、例えば、パーソナルコンピュータや、マイコンを搭載した専用のコントローラを採用し得る。以下、計測水W1の放射能濃度を計測するための制御装置8の動作について、図2、図3、図4、図5及び図6を参照しつつ説明する。
まず、放射能濃度計測装置1を所望の場所に配置し、その後、遮蔽領域Bに遮蔽水W2を満たす。この遮蔽水W2には、水道水といった、放射性物質を含まない液体が利用される。図2に示されるように、次に、放射能濃度計測装置1を運転するための初期化処理を行う(工程S1)。初期化処理では、放射能濃度計測装置1の健全性のチェックを行う。チェック項目には、例えば、遮蔽水W2の水位が基準値以上であるか否か、バックグラウンド値の変化量が基準値以下であるか否かなどが挙げられる。ここで、計測されるバックグラウンド値は2種類ある。まず、第1に計測水W1が内筒13に入っていない状態で計測するバックグラウンド値がある。第2に、濃度ゼロの計測水W1(水道水など)を計測するバックグラウンド値がある。後述する工程S1は、第1のバックグラウンド値を確認する。この確認は、短時間に終わる。第2のバックグラウンド値は、濃度推定に用いる。この確認は、比較的時間を要する。バッチ毎に第1のバックグラウンド値を計測して、変動が大きかった場合は浄化を行うが、これは第2のバックグランド値の変化を簡易に確認していることに相当する。
続いて、制御装置8は、給水側三方弁18を給水側へ切り替える(工程S2)。つまり、制御装置8は、給水側三方弁18を動作させて、給水配管19と第2循環配管17とを接続する。なお、制御装置8は、上述した第3経路を構成するように給水側三方弁18を制御し、給水配管19を第1循環配管16に接続すると共に、給水配管19を第2循環配管17に接続してもよい。この構成によれば、給水時間を短縮することができる。
続いて、計測水W1の給水を開始する(工程S3)。ここで、計測水W1は、給水配管19と給水側三方弁18と第2循環配管17とを通って、外筒12と内筒13との間(外部領域A1a)へ送出される。内筒13には、放射能濃度センサ20が配置されている。そうすると、放射能濃度センサ20は、循環ポンプ14から排出された計測水W1によって洗浄されることになる。つまり、放射能濃度センサ20に付着した残留物が、計測水W1によって洗い流される。これにより、計測水W1の給水を停止する。なお、制御装置8が第3経路を構成する制御を行った場合には、計測水W1は、給水配管19から第1循環配管16へ流れると共に、給水配管19から第2循環配管17へも流れる。
続いて、制御装置8は、給水側三方弁18を循環側へ切り替える(工程S4)。つまり、制御装置8は、給水側三方弁18を動作させて、第1循環配管16と第2循環配管17とを接続する。このとき、給水配管19は閉鎖状態であり、給水配管19からの計測水W1の流入はない。
続いて、制御装置8は、撹拌ポンプ21の運転を開始する(工程S5)。計測水W1の液面が標準水位に達するまでの撹拌は、計測水W1に含まれる微粒子の沈降及び/または固着を抑制するためのものをいう。つまり、「攪拌」によって、計測水W1中において微粒子の分布を均一に近づけることは達成されなくてもよい。
続いて、制御装置8は、循環ポンプ14の運転を開始する(工程S6)。循環ポンプ14では、計測水W1の水位が撹拌ポンプより高くなった後に、一定の流量をもって内筒13の内部へ計測水W1を引き上げることにより、計測水W1を放射能濃度センサ20に接近させる。これにより、計測水W1を計測時間内に放射能濃度センサ20の近傍を強制的に通過させ計測水W1中の放射性物質の濃度分布影響を低減させている。
続いて、制御装置8は、放射線(ガンマ線)の計測と記録とを行う(工程S7)。具体的には、制御装置8は、循環ポンプ14と撹拌ポンプ21とを運転させながら、放射能濃度センサ20によって放射能濃度を示すデータを得る。制御装置8は、濃度推定部を含むことができ、予め準備しておいた校正曲線を利用して、放射能濃度センサ20で計測された線量率(シンチレータの発光回数を数えた単位時間当たりのカウント値CPS)から放射能濃度(Bq/kg)を推定(換算)する。放射能濃度の計測は、所定の条件を満たすまで継続される。所定の条件には、例えば、放射能濃度センサ20の特性に基づいて定められる必要計測時間を実際の計測時間が上回ったか否か、あるいは、計測水W1が循環ポンプ14によって内筒13を通過した積算量が、計測水W1の総量の三倍を超えたか否かなどが挙げられる。制御装置8は、これらに例示された条件のいずれかを満たした場合に計測を終了し次の工程に進んでもよいし、すべての条件を満たした場合に計測を終了し次の工程に進んでもよい。なお、制御装置8は、次工程に進む前に、循環ポンプ14を停止させる。
なお、制御装置8は、計測水W1の放射能濃度の範囲に応じて計測時間を設定してもよい。例えば、想定される計測水W1の放射能濃度値が約10Bq/kgであるとき、制御装置8は、計測時間を数分程度に設定する。
続いて、制御装置8は、放流操作を開始する(工程S8)。放流操作とは、工程S7の結果に基づいて、計測水W1を外部環境へ放流するか否かを判断し、当該判断の結果に基づいて排出系流路7を制御する操作をいう。換言すると、放流操作とは、工程S7における計測結果と予め定められた基準に基づいて設定した閾値とを比較することにより、閾値以下である場合には外部環境へ計測水W1を放流すると判断し、閾値以上である場合には浄化設備へ計測水W1を送出すると判断する。
図3及び図5に示されるように、制御装置8は、工程S7の結果を利用して、計測水W1の放流が可能か否かを判断する(工程S8a)。計測水W1の放流が可能であると判断した場合(工程S8a:YES)、制御装置8は、排出側三方弁29を放流側へ切り替える(工程S8b)。つまり、制御装置8は、排出側三方弁29を動作させて計測水W1を第2排出配管31へ送出する流路を構成する。続いて、工程S8bののちに、制御装置8は、排水弁28を開放する(工程S8c)。この工程S8cにより、計測水W1が外部環境へ放流される。一方、計測水W1の放流が不可であると判断した場合(工程S8a:NO)、制御装置8は、排出側三方弁29を返送側へ切り替える(工程S8d)。つまり。制御装置8は、排出側三方弁29を動作させて計測水W1を第3排出配管32へ送出する流路を構成する。続いて、工程S8dののちに、制御装置8は、排水弁28を開放する(工程S8e)。この工程S8eにより、計測水W1が浄化設備(不図示)へ返送される。
再び図2に示されるように、制御装置8は、排水操作を開始する(工程S9)。具体的には、図4に示されるように、工程S9では、工程S8において開始された排水動作中における撹拌ポンプ21の動作を制御する。つまり、旋回流の状態に基づいて、撹拌ポンプ21の動作を継続し、または撹拌ポンプ21の動作を停止する。この旋回流の状態に基づく撹拌ポンプ21の制御によれば、貯留槽の残渣を低減し迅速に計測水W1を排出できる。まず、制御装置8は、外筒12に収容されている計測水W1の水位が撹拌ポンプ21の運転可能な水位以上であるか否かを判断する(工程S9a)。この判断は、例えば、最も下方に配置された噴出ノズル26の位置よりも液面高さが高いとき、撹拌ポンプ21の運転可能な水位以上であるとしてもよい。制御装置8が、外筒12に収容されている計測水W1の水位が撹拌ポンプ21の運転可能な水位以下であると判断した場合(工程S9a:NO)、撹拌ポンプ21の動作を停止する。一方で、制御装置8が、外筒12に収容されている計測水W1の水位が撹拌ポンプ21の運転可能な水位以上であると判断した場合(工程S9a:YES)、制御装置8は撹拌ポンプ21の動作を継続し、続いて、制御装置8は、必要に応じて旋回流の検出を行ってもよい(工程S9b)。一度でも旋回状況が確認されていれば、のちの工程S9bは省略してもよい。この工程S9bについては、のちに詳細に説明する。続いて、制御装置8は、排水中における計測水W1が十分に旋回しているか否かの判定結果に基づいて撹拌ポンプ21の動作を決定する(工程S9c)。十分な旋回流が発生しておらず撹拌ポンプ21の継続運転が必要と判定されているとき(工程S9c:NO)、制御装置8は、撹拌ポンプ21を運転する(工程S9d)。一方、十分な旋回流が発生しており、撹拌ポンプ21の運転が不要と判定されているとき(工程S9c:YES)、制御装置8は、撹拌ポンプ21の運転を停止する(工程S9e)。そして、制御装置8は、液面センサ33の計測結果に基づく判断を行う(工程S9f)。つまり工程S9fでは、排水が完了したか否かの判定を行う。水位が閾値よりも低いと判断されたとき(工程S9f:YES)、制御装置8は、排水処理を完了する(工程S9p)。一方、水位が閾値よりも高いと判断されたとき(工程S9f:NO)、制御装置8は、排水処理を継続する。つまり、再び工程S9a〜S9fを実施する。
ここで、旋回流の検出(工程S9b)についてさらに詳細に説明する。旋回流が存在しない重力に起因する自然排水時において、液面高さの変化は、単純な減少である(図7の(a)部参照)。一方、十分な旋回流が存在する自然排水時において、液面高さの変化は、5mmから50mm程度の脈動(上下変動)を含む減少である(図7の(b)部参照)。この脈動を利用して旋回流の有無を検出する。図6に示されるように、工程S9aにおいて、水位が撹拌ポンプ21の運転可能な水位以上であると判断されたとき(工程S9a:YES)、次に、制御装置8は、過去水位の判定を行う(工程S9b1)。具体的には制御装置8は、過去の水位(例えばN1秒前)と現在の水位とを比較する。そして、現在の水位が過去の水位よりも所定高さ以上(例えばN2mm)であったとき、制御装置8は、旋回流が発生していると判断する(工程S9b1:YES)。N1、N2は所望の値に設定してよい。例えば、N1は0.5秒以上2秒以下である。また、N2は5mm程度である。そして、旋回流が発生していると判断されたとき、制御装置8は、続いて運転時間の判定を行う(工程S9b2)。一方、現在の水位が過去の水位よりも所定高さ以上でないとき、制御装置8は、旋回流が発生していないと判断する(工程S9b1:NO)。工程S9b1において、旋回流が発生していないと判断されたとき、制御装置8は、続いて撹拌ポンプ21の運転継続を決定する(工程S9b4)。
旋回流が発生していると判断されたとき、制御装置8は、続いて運転時間の判定を行う(工程S9b2)。具体的には、撹拌ポンプ21の連続運転時間は、所定時間以上であるか否かを判定する。例えば、所定時間は、10秒である。この工程S9b2によれば、工程S9b1において存在すると判断された旋回流が、残存するものではなく、今回の撹拌ポンプ21の運転により発生させたものであるか否かを判定できる。撹拌ポンプ21の連続運転時間が所定時間以上であれば、十分な旋回流が発生していると判定される。工程S9b2において、運転時間が所定時間以上であると判定されたとき(工程S9b2:YES)、制御装置8は、続いて撹拌ポンプ21の運転停止を決定する(工程S9b3)。一方、工程S9b2において、運転時間が所定時間以上でないと判定されたとき(工程S9b2:NO)、制御装置8は、続いて撹拌ポンプ21の運転継続を決定する(工程S9b4)。
ところで、旋回流を利用しない排水操作によれば、液面の低下に伴って浮遊性の物質やこの物質に付着した土壌吸着された放射性セシウムが外筒12及び内筒13の壁面に付着することがある。また、これら物質は外筒12の底部における緩傾斜部にも沈殿することがある。付着及び沈殿した物質は、バックグラウンド値を増加させ、初期化条件S1のエラーの原因となり得る。そこで、上述した旋回流を利用する排出操作によれば、放射性セシウムを含む物質の付着や沈殿が抑制されるので、次バッチにおけるバックグラウンドの増加を低減し、より確かな計測結果を得ることができる。
また、外筒12と内筒13との間(外部領域A1a)における旋回流の存在を液面センサ33の計測結果を利用して検出し、旋回流が十分であるときには撹拌ポンプ21の動作を停止し、旋回流が十分でないときには撹拌ポンプ21の動作を継続する。この旋回流の有無を利用した撹拌ポンプ21の動作制御によれば、排水中に旋回流を生じさせる、つまり、排水を攪拌するために撹拌ポンプ21を連続的に稼働させたときに時間当たりの排出量が低下する傾向を抑制することが可能になる。そうすると、1回のバッチ処理に要するサイクルタイムの増加が抑制されるので、ひいては処理効率の低下を抑制できる。
再び図2に示されるように、工程S9fの結果がYESであるとき、制御装置8は、排水弁28を閉鎖する(工程S10)。そして、制御装置8は、清浄水による洗浄を行う(工程S11)。工程S11は、放射性物質を含む残留物が外筒12の内面といった放射能濃度センサ20から近い部分に付着していたときに、バックグラウンド値が増加することになるため、洗浄により付着物を除去するために実施される。
上記工程S1〜S11を実施することにより、1つのバッチ処理が終了する。そして、制御装置8は、再び工程S1〜S11をこの順で実施する。
なお、以上の工程において、外筒12から計測水W1を排出するように排出系流路7を動作させる第1動作及び第4動作とは、排水弁28を開放する動作(工程S8c、工程S8d)を含む工程S8から、排水弁28を閉鎖する工程S10までの動作をいう。また、計測水W1を噴出させることにより放射能濃度センサ20の一部分を洗浄するように循環系流路4を動作させる第5動作とは、給水側三方弁18を給水側へ切り替える工程(工程S2)と、計測水W1を給水する工程(工程S3)とを含む動作をいう。さらに、計測水W1を噴出させることにより計測水W1が排出された外筒12の一部分を洗浄するように攪拌系流路6を動作させる第2動作とは、工程S9をいう。そうすると、第1動作(工程S9〜工程S10)と、第2動作(工程S9)とは、並行して実施される期間を有する。
以下、実施形態に係る放射能濃度計測装置1の作用効果について説明する。
実施形態に係る放射能濃度計測装置1では、放射性物質を含む液体状の計測水W1が貯留槽3に収容され、貯留槽3の内部に配置された放射能濃度センサ20によってその放射能濃度が計測される。放射能濃度が計測された計測水W1は、制御装置8が排出系流路7を制御する第1動作(または第4動作)により放射能濃度計測装置1の外部(浄化槽又は外部環境)に排出される。そして、再び新たな計測水W1が貯留槽3に収容され、放射能濃度が計測される。さらに、制御装置8は、計測水W1が排出された貯留槽3の一部分を洗浄するように攪拌系流路6を動作させる第2動作を行う。この第2動作によれば、貯留槽3の一部分が洗浄されるので、計測水W1を排出した後に貯留槽3に残る残留物を低減することが可能になる。従って、次の動作サイクルに及ぼす残留物の影響を低減し得るので、より確かな計測結果を得ることができる。
この構成によれば、攪拌系流路6が鉛直方向に並置された複数の噴出ノズル26を有している。このため、計測水W1の排出が進むにしたがって上側の噴出ノズル26から順に計測水W1から露出していく。すなわち、上側の噴出ノズル26から順に第2形態から第1形態へ移行していく。そして、第1形態である噴出ノズル26が計測水W1を貯留槽3の側壁面に噴出するので、貯留槽3の側壁面が洗浄される。従って、計測水W1を排出した後に、貯留槽3の側壁面へ付着する計測水W1が低減されるので、貯留槽3へ残留する計測水W1をさらに低減することが可能になる。従って、次の動作サイクルに及ぼす残留物の影響を低減し得るので、さらに確かな計測結果を得ることができる。なお、切り替えノズル式の場合には、第2形態である噴出ノズル26が計測水W1中に計測水W1を噴出するので、計測水W1に旋回流が生じる。この旋回流によれば、計測水W1に含まれた放射性物質が計測水W1中に巻き上げられて貯留槽3の底部への沈殿が抑制される。従って、貯留槽3の底部へ沈殿する計測水W1が低減されるので、貯留槽3へ残留する計測水W1をさらに低減することが可能になる。
放射能濃度計測装置1は、計測水W1の液面の位置を得る液面センサ33をさらに備え、制御装置8は、第1動作と並行して実施される第2動作中において液面の位置が最も下方に配置された噴出ノズル26の位置よりも低くなったとき、計測水W1の噴出を停止するように攪拌系流路6を動作させて、計測水W1の旋回流の誘起を停止させる。この制御によれば、攪拌系流路6の動作を最適化し、放射能濃度計測装置1の稼働に必要な動力を低減することができる。
放射能濃度計測装置1において、制御装置8は、第2動作において計測水W1を噴出させることにより計測水W1の旋回流を誘起する動作(工程S9d)と、計測水W1の噴出を停止させることにより計測水W1の旋回流の誘起を停止する動作(工程S9e)と、を選択的に行う。この制御によれば、放射性物質の沈殿を抑制するに足りる旋回流の生成と、効率のよい計測水W1の排出とを両立させることができる。
また、放射能濃度計測装置1は、放射能汚染水の放射能濃度測定の精度向上をねらったものである。放射能濃度計測装置1は、循環構造と給水構造とを兼用化することにより、放射能濃度センサ20の汚染に起因するバックグラウンドの増加を抑制する。通常の運転時には、放射能濃度センサ20において上昇流速が低下するので、泥がつきやすい。また、排水時には、内筒13の内部は徐々に水位が下がるだけであり、浮遊物などが放射能濃度センサ20に沈殿し、センサ表面や内筒13の内壁面にも付着してしまう。そこで、通常、循環系流路は一方向にしか水を流すことができないところ、放射能濃度計測装置1の循環系流路4は、第1循環配管16及び第2循環配管17の途中に切り替え弁である給水側三方弁18を設け、給水配管19を接続することで、給水時にはセンサ上部へ水を噴射し洗浄を行い、運転時には循環水を通すことが可能になる。
要するに、放射能濃度計測装置1は、次の動作サイクルにおける計測対象である給水を洗浄水として用いているので、別途の洗浄水を用意する必要がない。従って、通常の動作サイクルでは洗浄のためだけの時間を設定する必要がない。さらに、洗浄した成分は、前回の計測水W1に含まれていた残渣であり、すでに計量評価がなされたものである。次回の動作サイクルにおける計測には、この残渣に起因する放射能濃度が含まれることになる。しかし、この残渣の影響は、放射能濃度を上昇する側への影響となる。すなわち、安全側への影響であり問題にならない。さらに、切換え弁としての三方弁を設置するだけで、新たな浄化設備を設ける必要がない。このため、構造が簡易になり、計測水W1に沈む構造物(洗浄構造)を削減することができ、計測能力(計測水W1の収容容量や撹拌効率)を増大させることができる。そのうえ、放射能濃度センサ20の感度は距離の二乗に反比例する。そして、放射能濃度センサ20の検出部から近く感度の高いセンサ上部とセンサ表面、あるいは内筒13の内壁面を効率よく洗浄できる。このために付着物による放射線で増大するバックグラウンド値を低減することが可能となり、計測システム低濃度領域での感度を高めることができる。
ところで、本実施形態の放射能濃度計測装置1による計測の主眼は、低濃度領域の放射能濃度を高精度で計測するという点よりも、被計測物の有する放射能濃度が基準値よりも大きいまたは小さいかを判定するために、被計測物からサンプルを採取して計測するのではなく、大量の被計測物の全量について計測する点にある。そこで、放射能濃度計測装置1では、循環系流路4により内筒13の内部と外部とで計測水W1が循環しているため、外筒12の内部に収容された大量の計測水W1の全量について放射能濃度を計測できる。
また、一般的な放射能濃度計測では、被計測物を遮蔽容器内に収納し、静止状態で計測する場合がある。この計測形態は、低濃度領域の放射能濃度を放射性物質の種類(核種)を特定し高精度で計測する点を主眼とした場合の計測形態である。一方、放射能濃度計測装置1では、計測水W1の有する放射能濃度が基準値よりも大きいまたは小さいかを判定するために放射能濃度を計測しているため、計測水W1を静止状態としなくてもよい。むしろ、積極的に計測水W1を撹拌することにより、計測水W1に含まれた砂や泥の分布を均一化されるため、計測値のむらを低減して信頼できる計測値を得ることができる。
また、内筒13の内部における計測水W1の流れは、底面から液面に向かう上昇流であり、内筒13の外部における計測水W1の流れは、液面から底面に向かう下降流である。従って、放射性物質を含む計測水W1を効率よく撹拌することが可能になるため、計測水W1に含まれた放射性物質の分布をさらに均一化することができる。
また、水の放射性物質による汚染の計測は、従来、ゲルマニウム分析装置などを用いて、バックグラウンドの低い場所において、サンプルを採取して行われている。これは、バックグラウンドが高い場所では放射能濃度センサの(非計測物からの放射線の)検出下限値が高くなるためである。ここで、金属やコンクリート等に囲まれた遮蔽空間を形成し、その遮蔽空間内部で計測を行えば、計測器周辺のバックグラウンドが低減される。しかし、鉛や鉄、コンクリートなどの遮蔽体で計測器を囲う方式は、特に被対象物が大容量の場合には大掛かりな設備となり、設置や移設が容易ではない。
ここで放射能濃度センサ20は、計測水W1と遮蔽水W2に周囲を囲まれている。この計測水W1は、計測の対象であると共にバックグラウンド放射線の線量を低下させる遮蔽体として機能する。また、遮蔽体として水を利用しているため、放射能濃度センサ20は隙間なく遮蔽体で囲われることとなり、確実に遮蔽される。
また、放射能濃度計測装置1は、遮蔽槽2を備えている。この遮蔽槽2は、外筒12の外周を囲むように設けられ、計測水W1とは別の遮蔽水W2が配置される遮蔽領域Bを有している。この構成によれば、計測水W1の放射能濃度を計測する場合、外筒12の周囲に形成された遮蔽領域Bに遮蔽水W2を満たすことが可能になる。従って、計測水W1が満たされた外筒12が遮蔽水W2に囲まれるので、外筒12に侵入するバックグラウンド放射線の線量が低減する。従って、内筒13の内部に侵入するバックグラウンド放射線の線量をより低減することができる。
また、外筒12は、円筒状の形状を有し、内筒13は、円筒状の形状を有し、内筒13の中心軸線が外筒12の中心軸線と一致するように配置されている。この構成によれば、内筒13の開口13aの近傍において全周囲から計測水W1を取り入れることができると共に、外筒12の内部において計測水W1に含まれた砂や泥といった沈殿物が滞留しやすい領域を減少させることができる。従って、放射性物質を含む計測水W1を効率よく撹拌することが可能になるため、計測水W1に含まれた放射性物質の分布をより均一化することができる。
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、既に述べたように、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
例えば、放射能濃度計測装置は、バックグラウンド放射線を利用して、攪拌系流路6を制御してもよい。例えば、制御装置8は、排水弁28を閉鎖する工程(工程S10)の後であって、計測水W1の供給する(工程S3)の間に、バックグラウンド放射線を計測する(工程S12、第3動作)。そして、工程S12の結果が予め定められた条件を満たすとき、次のバッチ処理の排水動作において、旋回流を発生させる動作(第2動作)を行ってもよい。つまり、バックグラウンド放射線を用いて、次のバッチ処理の排水動作時の動作を決定する。予め定められた条件とは、例えば、バックグラウンド放射線が閾値を上回ったときに次のバッチ処理の排水動作において旋回流を発生させる動作を行い、閾値を下回ったときに次のバッチ処理の排水動作において旋回流を発生させないといった条件であってもよい。また、この判断では、バッチ処理ごとのバックグラウンド放射線の変化に注目し、バックグラウンド放射線の急激な変化が確認されたときに、次のバッチ処理の排水動作において旋回流を発生させる動作を行うこととしてもよい。この制御によれば、より確かな計測結果を得ながら、放射能濃度計測装置1の稼働効率をさらに向上させることができる。
上記実施形態では浄水設備が、放射能濃度計測装置よりも低い位置にある場合を例に説明した。例えば、浄水設備が放射能濃度計測装置よりも高い位置にある場合には、排出系流路7は、計測水W1に圧力を付与する装置(例えばポンプ)を備えていてもよい。