しかし、上記特許文献1の構成では、潤滑油を排出するために或いは補充するために、クランクケース内と外部とを連通すると、クランクケース内に充填されている作動流体が抜けてしまうと考えられる。とりわけ、スターリングエンジンでは、作動流体の圧力変化を大きくして効率よく動力を得られるようにするために、作動流体をクランクケース内に高圧で充填することが一般的に行われている。そのため、クランクケース内と外部とを連通したときに大量の作動流体が抜けてしまうこととなる。従って、潤滑油の排出や補充の作業を行うと、それと併せて、クランクケース内に作動流体を充填し直す作業も必要となり、作業負担が大きくなる点で改善の余地があった。
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、内部に充填していた作動流体が過剰に抜けてしまうことを抑制しながら、潤滑油の排出又は供給を行うことが可能なスターリングエンジンを提供することにある。
課題を解決するための手段及び効果
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
本発明の第1の観点によれば、以下の構成のスターリングエンジンが提供される。即ち、このスターリングエンジンは、クランクケースと、排出路と、排出バルブと、を備える。前記クランクケースは、ピストンの往復運動をクランクシャフトの回転運動に変換する動力変換部材を収容し、当該動力変換部材を潤滑するための潤滑油が内部に貯留されるとともに、前記ピストンを往復運動させるための作動流体が内部に充填される。前記排出路は、前記クランクケースの外側に設けられ、当該クランクケースの下部に接続される。前記排出バルブは、前記排出路に設けられ、当該排出路内の流路を開閉可能としている。
これにより、クランクケースの内部の潤滑油を排出する際には、排出路に潤滑油排出用のタンクを取り付け、排出バルブを開くことでクランクケースから排出路を介してタンクに潤滑油を送る。この際、クランクケース内の作動流体よりも潤滑油の方が比重が大きいため、クランクケースの下部から抜き出すことにより潤滑油を優先的に排出することができる。また、所望のタイミングで排出バルブを閉じることにより、クランクケース内の作動流体が過剰に外部に抜けるのを防止することができる。
前記のスターリングエンジンにおいては、前記排出路の前記排出バルブが設けられる位置よりも下流側に取り付けられる潤滑油排出用タンクを更に備えることが好ましい。
これにより、排出バルブを開閉することにより、簡単に、クランクケース内の作動流体が過剰に外部に抜けるのを防止しつつ、クランクケース内の潤滑油を潤滑油排出用タンクに排出することができる。
前記のスターリングエンジンにおいては、前記潤滑油排出用タンクの容量は、前記クランクケースの内部に貯留する潤滑油の規定量以下であることが好ましい。
これにより、規定量の潤滑油が潤滑油排出用タンクに排出された時点で、又は排出される前に、潤滑油排出用タンクが概ね満量となる。このため、潤滑油の排出に伴って作動流体が抜けてしまう量を少なく抑えることができる。
本発明の第2の観点によれば、以下の構成のスターリングエンジンが提供される。即ち、このスターリングエンジンは、クランクケースと、供給路と、供給バルブと、を備える。前記クランクケースは、ピストンの往復運動をクランクシャフトの回転運動に変換する動力変換部材を収容し、当該動力変換部材を潤滑するための潤滑油が内部に貯留されるとともに、前記ピストンを往復運動させるための作動流体が内部に充填される。前記供給路は、前記クランクケースの外側に設けられ、当該クランクケースに接続される。前記供給バルブは、前記供給路に設けられ、当該供給路内の流路を開閉可能としている。
これにより、クランクケースの内部に潤滑油を供給する際には、供給路に潤滑油供給用のタンクを取り付け、供給バルブを開くことにより、このタンクから供給路を介してクランクケース内に潤滑油を円滑に送り込むことができる。また、適切なタイミングで供給バルブを閉じることにより、クランクケース内の作動流体が過剰に外部に(潤滑油供給用のタンク側に)抜けるのを防止することができる。
前記のスターリングエンジンにおいては、前記供給路の前記供給バルブが設けられる位置よりも上流側に取り付けられる潤滑油供給用タンクを更に備えることが好ましい。
これにより、供給バルブを開閉することにより、簡単に、クランクケース内の作動流体が過剰に外部に抜けるのを防止しつつ、潤滑油供給用タンク内の潤滑油をクランクケースの内部に供給することができる。
前記のスターリングエンジンにおいては、前記潤滑油供給用タンクの容量は、前記クランクケースの内部に貯留する潤滑油の規定量以下であることが好ましい。
これにより、潤滑油供給用タンクの容量を必要以上に大きくしないことにより、潤滑油の供給に伴って潤滑油供給用タンク側に抜けてしまう作動流体の量を少なく抑えることができる。
前記のスターリングエンジンにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このスターリングエンジンは、作動流体流通路と、作動流体流通バルブと、を備える。前記作動流体流通路は、前記供給路よりも上方の位置でその一端部が前記クランクケースと接続され、前記供給路よりも上方の位置でその他端部が前記潤滑油供給用タンクと接続される。前記作動流体流通バルブは、前記作動流体流通路に設けられ、当該作動流体流通路内の流路を開閉可能である。
これにより、潤滑油供給用タンクから供給路を介してクランクケース内に潤滑油を供給する際に、併せて、作動流体流通バルブを開いた状態にして、クランクケース内の作動流体の一部をこの作動流体流通路を介して潤滑油供給用タンクに送り込むことができる。これにより、作動流体の圧力を利用して、潤滑油供給用タンク内の潤滑油をクランクケース側へと圧送することができ、より速やかに潤滑油をクランクケース内に供給することができる。
本発明の第3の観点によれば、以下のスターリングエンジンの潤滑油排出方法が提供される。即ち、このスターリングエンジンの潤滑油排出方法は、ピストンの往復運動をクランクシャフトの回転運動に変換する動力変換部材を収容し、当該動力変換部材を潤滑するための潤滑油が内部に貯留されるとともに、前記ピストンを往復運動させるための作動流体が内部に充填されるクランクケースと、前記クランクケースの外側に設けられ、当該クランクケースの下部に接続される排出路と、前記排出路に設けられ、当該排出路内の流路を開閉可能な排出バルブと、を備えるスターリングエンジンの前記排出バルブを操作して前記排出路内の前記流路を開くことにより、前記クランクケース内の潤滑油を、前記排出バルブより下流側に配置された潤滑油排出用タンクに前記排出路を介して排出する工程を含む。また、このスターリングエンジンの潤滑油排出方法は、前記クランクケースから潤滑油が所望の量だけ排出された時点で前記排出バルブを閉じる工程を含む。
これにより、クランクケースの内部の潤滑油を排出したい場合に、排出バルブを操作して排出路の流路を開くことで、クランクケースから排出路を介して潤滑油排出用タンクに潤滑油を送ることができる。この際、クランクケース内の作動流体よりも潤滑油の方が比重が大きいため、クランクケースの下部から抜き出すことにより潤滑油を優先的に排出することができる。また、所望の量の潤滑油が排出された時点で排出バルブを閉じることにより、クランクケース内の作動流体が過剰に外部に抜けるのを防止することができる。
本発明の第4の観点によれば、以下のスターリングエンジンの潤滑油供給方法が提供される。即ち、このスターリングエンジンの潤滑油供給方法は、ピストンの往復運動をクランクシャフトの回転運動に変換する動力変換部材を収容し、当該動力変換部材を潤滑するための潤滑油が内部に貯留されるとともに、前記ピストンを往復運動させるための作動流体が内部に充填されるクランクケースと、前記クランクケースの外側に設けられ、当該クランクケースに接続される供給路と、前記供給路に設けられ、当該供給路内の流路を開閉可能な供給バルブと、を備えるスターリングエンジンの前記供給バルブを操作して前記供給路内の前記流路を開くことにより、前記供給バルブより上流側に配置された潤滑油供給用タンク内の潤滑油を、前記供給路を介して前記クランクケース内に供給する工程を含む。また、このスターリングエンジンの潤滑油供給方法は、前記供給バルブを閉じる工程を含む。
これにより、クランクケースの内部に潤滑油を供給したい場合に、供給バルブを操作して供給路の流路を開くことで、潤滑油供給用タンクから供給路を介してクランクケース内に潤滑油を送り込むことができる。この際、潤滑油供給用タンクの容量を制限することにより、或いは、所望の量の潤滑油が供給された時点で供給バルブを閉じることにより、クランクケース内の作動流体が過剰に外部に(潤滑油供給用タンク側に)抜けるのを防止することができる。
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るスターリングエンジン1の全体的な構成を示す模式図である。
図1に示す本実施形態のスターリングエンジン1は、外燃機関の一種である。このスターリングエンジン1は、シリンダ2内に充填された作動流体を、外部から取り入れた熱を利用して膨張及び収縮させることによりパワーピストン3を往復運動させ、この往復運動をクランクシャフト8の回転運動に変換して動力を取り出すものである。
本実施形態のスターリングエンジン1は、シリンダ2と、パワーピストン3と、ディスプレーサピストン4と、ヒータ5と、再生器6と、クーラ7と、クランクシャフト8と、クランクケース9と、フライホイール10と、クランクボックス11と、第1動力変換部材30と、第2動力変換部材40と、を主として備える。なお、本実施形態のスターリングエンジン1は、パワーピストン3とディスプレーサピストン4とが同一のシリンダ2内に収容される、いわゆるβ型のスターリングエンジンである。
シリンダ2は、パワーピストン3及びディスプレーサピストン4を収容する円筒状の部材である。シリンダ2内には作動流体が充填される。作動流体としては、ヘリウムガス、水素ガス、空気等の様々な流体を用いることができるが、本実施形態では、熱伝導率が高いヘリウムガスが用いられる。シリンダ2の軸線方向の一端部はディスプレーサピストン4より上部でヒータ5と接続されており、当該軸線方向の他端はクランクケース9に接続されている。後に詳述するように、作動流体は加熱・冷却されることにより、シリンダ2内でその圧力を変化させる。
ディスプレーサピストン4は、その軸線方向にスライド可能なようシリンダ2内に収容される概ね円柱形状の部材である。シリンダ2内のうち、ディスプレーサピストン4よりもシリンダ2とヒータ5との接続側(図では上方側)には、相対的に高温である膨張空間S1が形成される。シリンダ2内のディスプレーサピストン4よりもクランクケース9側(図では下方側)には、相対的に低温である圧縮空間S2が形成される。ディスプレーサピストン4は、高温の膨張空間S1及び低温の圧縮空間S2の容積の割合を変化させる役割を果たす。
パワーピストン3は、その軸線方向にスライド可能なようシリンダ2内に収容される短い円柱形状の部材である。パワーピストン3は、ディスプレーサピストン4よりもクランクケース9に近い側に配置される。前記圧縮空間S2は、ディスプレーサピストン4とパワーピストン3との間に配置される。パワーピストン3は、膨張空間S1及び圧縮空間S2(高温領域と低温領域)の圧力差による力を受けて、当該パワーピストン3の軸線方向に変位することができる。
シリンダ2のすぐ外側には、当該シリンダ2のヒータ5との接続側からクランクケース9が配置される側に向かって、ヒータ5、再生器6、及びクーラ7がこの順に並ぶように設けられる。作動流体は、膨張空間S1からヒータ5、再生器6、及びクーラ7を順に通って、圧縮空間S2に流入することができる。また、作動流体は、圧縮空間S2からクーラ7、再生器6、及びヒータ5を順に通って、膨張空間S1に流入することもできる。
ヒータ5は、作動流体を加熱するための熱交換器である。ヒータ5の構成としては、公知の様々な構成をとることができるが、本実施形態では、伝熱面積を大きく確保できるように、多数並べられた細管の内部を作動流体が流動する構成を採用している。加熱媒体は、例えば発電プラントで生じた排ガス等であり、ヒータ5の細管の外側を流れる。この細管の外側を加熱媒体が流れることにより、当該作動流体が加熱媒体からの熱を受けて昇温(加熱)される。
クーラ7は、作動流体を冷却するための熱交換器である。クーラ7の構成としては、公知の様々な構成をとることができるが、本実施形態では、ヒータ5と同様に、多数の細管を備える構成を採用している。何らかの方法で冷却された冷却媒体がクーラ7の細管の外側を流れることにより、細管の内部を流れる作動流体が、冷却媒体に熱を奪われて降温(冷却)される。
再生器6は、蓄熱用の熱交換器である。再生器6の構成としては、公知の様々な構成をとり得るが、本実施形態では、金属製の網を積層させた構成を採用している。再生器6は、膨張空間S1の高温の作動流体がヒータ5から当該再生器6を介してクーラ7に流れる際には、作動流体の熱を奪って蓄える。一方、再生器6は、圧縮空間S2の低温の作動流体がクーラ7から当該再生器6を介してヒータ5に流れる際には、前記のようにして蓄えた熱を作動流体に与える。
クランクシャフト8は、シリンダ2内で発生させた動力(具体的には、パワーピストン3の往復運動による動力)を回転運動としてスターリングエンジン1の外部に取り出すためのものである。クランクシャフト8は、クランクケース9に回転可能に支持されている。クランクシャフト8の一端部はクランクケースの外部に突出しており、この一端部に発電機29が取り付けられている。この発電機29により、スターリングエンジン1で発生させた回転動力が電力に変換される。
クランクケース9は、クランクシャフト8が架け渡されるケースであり、内部にフライホイール10と、クランクボックス11と、を収容している。シリンダ2とクランクケース9とは、図示しない孔によって連通されている。そのため、本実施形態では、シリンダ2内だけではなくクランクケース9内にも作動流体が充填される。
フライホイール10は円板状の部材であり、クランクケース9内でありかつクランクボックス11外の領域に、クランクシャフト8に貫通された状態で設けられる。フライホイール10は、クランクシャフト8の回転する勢いを保ちつつ、回転速度のムラを小さくして滑らかに回転させるための、はずみ車として機能する。
クランクボックス11は、パワーピストン3の往復運動をクランクシャフト8の回転運動に変換する第1動力変換部材30を収容する。また、クランクボックス11は、クランクシャフト8の回転運動をディスプレーサピストン4の往復運動に変換するための第2動力変換部材40を収容する。これらの動力変換部材30,40は、摺動する部材である(厳密には、摺動する部材を含む)ため、潤滑する必要がある。本実施形態のスターリングエンジン1では、クランクボックス11に貯留した潤滑油により動力変換部材30,40を潤滑する湿式潤滑方式を採用している。
ここで、仮に潤滑油がシリンダ2内に混入すると、熱交換器5,6,7の性能等に悪影響を及ぼすことが懸念される。具体的には、例えば潤滑油が前記の再生器6の上記の金属製の網等に付着すると、再生器6が汚損するおそれがある。よって、スターリングエンジン1では、潤滑油のシリンダ2内への混入を確実に防ぐことが望まれる。そこで、本実施形態では、潤滑が必要な動力変換部材30,40を収容するクランクボックス11内にだけ潤滑油を貯留し、その外側のクランクケース9内(クランクケース9内でありかつクランクボックス11外である領域)には潤滑油が漏れないようにしている。言い換えれば、クランクケース9を2重構造にし、その一番内側に相当するクランクボックス11内に潤滑油を封入することで、シリンダ2内への潤滑油の混入を防止している。
図1に示すように、クランクボックス11は、クランクシャフト8により貫かれている。クランクシャフト8がクランクボックス11を貫通している部分には、クランクシャフト8の外周面と、クランクボックス11に形成された貫通孔と、の隙間を埋めるためのオイルシールが設けられている。これにより、クランクボックス11内の潤滑油が、クランクシャフト8の外周面と、クランクボックス11に形成された前記貫通孔と、の間の隙間を通って漏れ出てしまうことを防止している。
第1動力変換部材30は、パワーピストン3の往復運動をクランクシャフト8の回転運動に変換するものであり、後述の第2動力変換部材40を挟むように1対で設けられている。β型のスターリングエンジンにおいて往復運動を回転運動に変換するための機構としては、クロスヘッド機構、ロンビック機構、スコッチヨーク機構等の、様々な構成の機構を用いることができるが、本実施形態では、第1動力変換部材30として、サイズを小さくするとともに比較的簡素な構成にすることが可能なスコッチヨーク機構を採用している。具体的には、本実施形態の第1動力変換部材30は、図2に示すように、パワーピストンヨーク31、ガイド軸32、第1偏心クランクピン(不図示)、及びロッド34等を備える。
パワーピストンヨーク31は、スライド移動(往復移動)することが可能な板状の部材である。パワーピストンヨーク31には、当該パワーピストンヨーク31を貫通する1対の貫通孔が形成される。当該1対の貫通孔は、シリンダ2の軸線方向と平行な方向に延びている。また、パワーピストンヨーク31には、その板面を貫くように案内溝が形成されている。後に説明するように、この案内溝には、前記第1偏心クランクピンが収容される。
ガイド軸32は、シリンダ2の軸線方向に平行な方向に延びる軸状の部材であり、その両端部がクランクボックス11に固定される(図2を参照)。ガイド軸32は、クランクシャフト8を挟むように1対で設けられる。ガイド軸32は、パワーピストンヨーク31の前記貫通孔に差し込まれる。これにより、ガイド軸32は当該パワーピストンヨーク31をスライド可能に支持している。なお、パワーピストンヨーク31の前記貫通孔とガイド軸32との摺動部分には、例えばロータリブッシング等の直動軸受が設けられる。
前記第1偏心クランクピンは、クランクシャフト8に偏心した状態で取り付けられるクランクピンである。この第1偏心クランクピンは、クランクシャフト8に貫通された状態で、当該クランクシャフト8に対して固定され、又は当該クランクシャフト8と一体的に形成されている。前記第1偏心クランクピンは、パワーピストンヨーク31の前記案内溝の中を転がりながら移動することができるように、当該案内溝の中に収容される。なお、パワーピストンヨーク31の当該案内溝と前記第1偏心クランクピンとの摺動部分には、例えば転がり軸受等の回転軸受が設けられる。
ロッド34は、パワーピストンヨーク31の往復移動と、パワーピストン3の往復移動とを連動させるものである。ロッド34は、長い軸状に形成され、その一端部がパワーピストン3に接続され、その他端部がパワーピストンヨーク31に接続されている。
このような構成の第1動力変換部材30において、パワーピストン3がシリンダ2内で変位すると、このパワーピストン3とロッド34を介して連結されているパワーピストンヨーク31がガイド軸32に沿ってスライド移動し、これに伴い前記案内溝の中を前記第1偏心クランクピンが転がりながら移動する。これにより、クランクシャフト8が回転変位される。こうして、パワーピストン3の往復運動がクランクシャフト8の回転運動に変換されて、発電機29へと伝達される。
第2動力変換部材40は、クランクシャフト8の回転運動をディスプレーサピストン4の往復運動に変換するものである。β型のスターリングエンジンにおいて回転運動を往復運動に変換するための機構としては、上述のように種々の機構を用いることができるが、本実施形態では、第2動力変換部材40として、第1動力変換部材30と同様にスコッチヨーク機構を採用している。具体的には、本実施形態の第2動力変換部材40は、ディスプレーサヨーク41、ガイド軸42、第2偏心クランクピン、及びロッド44等を備える。
第2動力変換部材40のディスプレーサヨーク41、ガイド軸42、第2偏心クランクピン、及びロッド44の構成は、それぞれ、第1動力変換部材30のパワーピストンヨーク31、ガイド軸32、第1偏心クランクピン、及びロッド34の構成と実質的に同様であるため、詳細な説明は省略する。
第2動力変換部材40のロッド44は、ディスプレーサヨーク41とディスプレーサピストン4とを連結するために、パワーピストン3に形成された図略の貫通孔に差し込まれている。パワーピストン3はロッド44に対して摺動可能に設けられており、当該摺動部分には、気密を保つための図示しないシール機構が配置されている。
このような構成の第2動力変換部材40において、クランクシャフト8が回転運動すると、当該クランクシャフト8と一体的となっている前記第2偏心クランクピンが、ディスプレーサヨーク41の案内溝の中を転がりながら移動する。これに伴い、ディスプレーサヨーク41が、ガイド軸42に沿ってスライド移動する。これにより、ディスプレーサヨーク41とロッド44を介して連結されているディスプレーサピストン4が、ディスプレーサヨーク41と連動して変位する。こうして、クランクシャフト8の回転運動がディスプレーサピストン4の往復運動に変換され、パワーピストン3の往復運動とも相まって、膨張空間S1と圧縮空間S2との容積の割合が周期的に変化するようになっている。
なお、パワーピストン3が上死点(図1では、最もシリンダ2の上方側)に至るタイミングと、ディスプレーサピストン4が上死点に至るタイミングと、がズレるように、前記第1偏心クランクピン及び前記第2偏心クランクピンは、所定の位相差(本実施形態では、90°の位相差)が生じるように配置されている。
以下では、スターリングエンジン1の作動原理について、簡単に説明する。
ディスプレーサピストン4が上死点の付近にあるとき、圧縮空間S2内の作動流体は、クランクシャフト8の回転に伴って上昇するパワーピストン3に押されて圧縮される。また、クランクシャフト8の回転によりディスプレーサピストン4が下降し始めると、圧縮空間S2の容積が減少し、膨張空間S1の容積が増大する。この結果、圧縮空間S2内の作動流体は、クーラ7、再生器6、及びヒータ5をこの順に通過して、膨張空間S1内に移動する。この過程で、作動流体は加熱されて相対的に高温となるので、作動流体は膨張空間S1内で熱膨張しようとし、圧力が上昇する。
この高まった膨張空間S1内の圧力は直ちに圧縮空間S2内に伝播するので、圧縮空間S2の圧力は膨張空間S1と同様に高くなる。この状況で、パワーピストン3が上死点に至った後に下降し始めると、作動流体によってパワーピストン3が下向きに押されて、これにより当該パワーピストン3がシリンダ2内をスライドする。パワーピストン3の変位はクランクシャフト8に伝達され、クランクシャフト8が駆動力を得て回転する。
クランクシャフト8の回転によりディスプレーサピストン4が下死点に至り、その後上昇すると、膨張空間S1の容積が減少し、圧縮空間S2の容積が増大する。これに伴って、膨張空間S1内の作動流体が、ヒータ5、再生器6、及びクーラ7をこの順に通過して、圧縮空間S2内に移動する。この過程で、作動流体は冷却されて相対的に低温となり、圧力が低下する。
パワーピストン3はディスプレーサピストン4に遅れて下死点に至り、その後上昇を開始する。やがて、ディスプレーサピストン4が上死点付近に至る。
以上のサイクルが繰り返されることにより、膨張空間S1及び圧縮空間S2の作動流体の体積変化(即ち、熱による膨張・収縮)に伴う圧力変化が反復され、これを利用してパワーピストン3が往復運動されて、この往復運動がクランクシャフト8の回転運動に変換されて動力が取り出される。
以上のような構成のスターリングエンジン1において、上述のように、膨張空間S1及び圧縮空間S2には作動流体が充填される。また、シリンダ2内においてパワーピストン3よりもクランクシャフト8に近い側の空間、クランクケース9内、及びクランクボックス11内にも、作動流体が充填される。本実施形態では、作動流体の圧力変化を大きくして効率よく動力を得られるようにするために、作動流体はこれらの空間内に高圧(大気圧よりも高圧)で充填される。
本実施形態のスターリングエンジン1では、クランクボックス11内の潤滑油を外部に排出するときに、クランクボックス11内に充填していた作動流体が過剰に抜けてしまうことを抑制するための構成として、排出路51と、排出バルブ52と、潤滑油排出用タンク53と、主として備えている。以下では、これらの構成について詳細に説明する。
図1から図3までに示す排出路51は、クランクボックス11内の潤滑油をスターリングエンジン1の外部に排出する作業を行うときに、潤滑油を通過させる流路を形成する部材である。排出路51は、クランクボックス11の外側に設けられ、当該クランクボックス11の下部に接続される。本実施形態の排出路51は、断面が円形状のパイプ状の部材であり、その一端部がクランクボックス11の底部に接続されている。
本実施形態の排出路51の中途部は、クランクケース9の底部を貫通している。排出路51の中途部の、クランクケース9の外側に配置されている部分、別の言い方をすればクランクケース9を貫通している部分よりも潤滑油の流通方向の下流側には、排出路51内の流路を開閉可能な排出バルブ52が設けられている。
排出路51の他端部には、クランクボックス11の内部から排出した潤滑油を貯留するための潤滑油排出用タンク53が取り付けられる。本実施形態の排出路51の他端部は、当該排出路51の一端部よりも低い位置に配置されている。なお、潤滑油排出用タンク53は、スターリングエンジン1を構成する部材の1つとしてもよいし、或いはスターリングエンジン1に対して取付け・取外し可能な外部の部材としてもよい。
潤滑油排出用タンク53の容量は、クランクボックス11の内部に貯留する潤滑油の規定量以下に設定されている。本実施形態においては、潤滑油排出用タンク53の容量は、スターリングエンジン1の稼動(具体的には、例えば、マニュアル等で規定されている標準時間の稼動)に伴う蒸散等を考慮したときに推定されるクランクボックス11内の残存量に近い量の潤滑油がぎりぎり入る程度の容量に設定されている。
なお、本実施形態では、潤滑油排出用タンク53に貯留した潤滑油を例えば廃油タンク等に排出するための下流側排出路54が、当該潤滑油排出用タンク53の下流側に更に設けられる(図1を参照)。下流側排出路54の一端部は潤滑油排出用タンク53に接続されている。下流側排出路54の他端部は廃油タンク等に接続可能である。下流側排出路54の中途部の下流側排出バルブ55を操作することにより、下流側排出路54内の流路を開閉し、潤滑油排出用タンク53内の潤滑油を前記の廃油タンク等に排出することが可能になっている。なお、前記廃油タンクへの排出作業を行うときを除いて、下流側排出バルブ55は閉じられている。これにより、外部からの空気が潤滑油排出用タンク53内に流入しないようにしている。
本実施形態のスターリングエンジン1では、クランクボックス11内に外部からの潤滑油を供給(補充)するときに、クランクボックス11内に充填していた作動流体が過剰に抜けてしまうことを防止するための構成として、供給路61と、供給バルブ62と、潤滑油供給用タンク63と、を主として備えている。以下では、これらの構成について詳細に説明する。
図1、図4及び図5に示す供給路61は、潤滑油をスターリングエンジン1の外部からクランクボックス11の内部に供給する作業を行うときに、潤滑油を通過させる流路を形成する部材である。供給路61は、クランクボックス11の外側に設けられ、当該クランクボックス11の上部に接続される。本実施形態の供給路61は、断面が円形状のパイプ状の部材であり、その一端部がクランクボックス11の上部に(十分に高い位置で)接続されている。
本実施形態の供給路61の中途部は、クランクケース9の上部を貫通している。供給路61の中途部の、クランクケース9の外側に配置されている部分、別の言い方をすればクランクケース9を貫通している部分よりも潤滑油の供給方向の上流側には、供給路61内の流路を開閉可能な供給バルブ62が設けられている。
供給路61の他端部には、クランクボックス11の内部へと供給する潤滑油を貯留する潤滑油供給用タンク63が取り付けられる。本実施形態の供給路61の他端部は、当該供給路61の一端部と概ね同じ高さの位置、或いはそれよりも上方に配置されることが好ましい。なお、潤滑油供給用タンク63は、スターリングエンジン1を構成する部材の1つとしてもよいし、或いはスターリングエンジン1に対して取付け・取外し可能な外部の部材としてもよい。
潤滑油供給用タンク63の容量は、クランクボックス11の内部に貯留する潤滑油の規定量以下に設定されている。本実施形態においては、潤滑油供給用タンク63の容量は、スターリングエンジン1の稼動(具体的には、例えば、マニュアル等で規定されている標準時間の稼動)に伴う蒸散等を考慮したときに補充が必要と推定される量の潤滑油を入れたときに、あまり空き容量が生じない程度の容量に設定されている。
なお、本実施形態では、潤滑油供給用タンク63内に潤滑油を追加(補充)するために用いる上流側供給路66が、当該潤滑油供給用タンク63の上流側に更に設けられる(図1を参照)。上流側供給路66の一端部は潤滑油供給用タンク63の上部に接続されている。上流側供給路66の他端部は、新しい潤滑油が貯留されているタンク等に接続可能である。上流側供給路66の中途部の上流側供給バルブ67を操作することにより、上流側供給路66内の流路を開閉し、新しい潤滑油を潤滑油供給用タンク63の中に補充することが可能になっている。なお、潤滑油供給用タンク63への新しい潤滑油の補充を行っていない間は、上流側供給バルブ67は閉じられている。これにより、外部からの空気が潤滑油供給用タンク63内に流入することを防いでいる。
加えて、本実施形態のスターリングエンジン1では、クランクボックス11内に外部からの潤滑油をより速やかに供給(補充)できるようにするための構成として、作動流体流通路64と、流通バルブ(作動流体流通バルブ)65と、を備えている。以下では、これらの構成について詳細に説明する。
作動流体流通路64は、スターリングエンジン1の外部からクランクボックス11の内部に潤滑油を供給する作業を行うときに、必要に応じて作動流体を流通させることが可能な流路を形成する部材である。作動流体流通路64は、クランクボックス11の外側に設けられ、クランクボックス11の上部と潤滑油供給用タンク63の上部との間を接続している。本実施形態の作動流体流通路64は、断面が円形状のパイプ状の部材であり、その一端部がクランクボックス11の上部に接続されている。作動流体流通路64とクランクボックス11との接続位置は、クランクボックス11と供給路61の一端部との接続位置よりも上方となるように配置される。
作動流体流通路64の中途部は、クランクケース9の上部を貫通している。作動流体流通路64の中途部の、クランクケース9の外側に配置されている部分、別の言い方をすればクランクケース9を貫通している部分よりも作動流体の流通方向の下流側には、作動流体流通路64内の流路を開閉可能な流通バルブ65が設けられている。
作動流体流通路64の他端部は、潤滑油供給用タンク63の上端部に接続されている。作動流体流通路64の他端部と潤滑油供給用タンク63との接続位置は、供給路61の他端部と潤滑油供給用タンク63との接続位置よりも上方となるように配置される。
次に、上記のような構成のスターリングエンジン1において、クランクボックス11内の潤滑油を外部に排出する作業について、図2及び図3を参照して説明する。図2は、スターリングエンジン1において、潤滑油を排出するために排出バルブ52を開く直前の様子を示す模式図である。図3は、潤滑油を排出して排出バルブ52を閉じた様子を示す模式図である。
初めに、オペレータは、図2の状態から、排出バルブ52を操作して排出路51内の流路を開く。これにより、クランクボックス11内の潤滑油は、排出路51を介して潤滑油排出用タンク53に排出され始める。クランクボックス11内には潤滑油だけではなく作動流体も封入されているが、作動流体よりも潤滑油の方が比重が大きいため、クランクボックス11の下部(本実施形態では、底部)から抜き出すことにより潤滑油を優先的に排出することができる。
クランクボックス11内から潤滑油が所望の量だけ排出された時点で、オペレータは排出バルブ52を操作して、排出路51内の流路を閉じる。この状態が図3に示されている。具体的には、例えば、スターリングエンジン1のこれまでの稼動時間、蒸散の予想量、油面計(不図示)の測定値等を考慮して、クランクボックス11内に残存している潤滑油の量を予め推定し、この推定残存量だけ潤滑油が潤滑油排出用タンク53に排出された時点で排出バルブ52を閉じることにより、クランクボックス11内の作動流体が過剰に抜けてしまうことを抑制することができる。
或いは、上記の推定残存量よりも少ない量の潤滑油が潤滑油排出用タンク53に排出された時点で排出バルブ52を閉じることにより、潤滑油をクランクボックス11内に少し残した状態とすることもできる。この場合、クランクボックス11内の作動流体が潤滑油排出用タンク53の方へと押し出されて抜けてしまうことを抑制することができる。
もっとも、本実施形態のスターリングエンジン1では、潤滑油排出用タンク53の容量が、クランクボックス11の内部に貯留する潤滑油の規定量以下に設定されている。従って、排出バルブ52を閉じるのが仮に多少遅れたとしても、潤滑油排出用タンク53の空きスペースに入る量しか作動流体が抜けることができない。これにより、クランクボックス11の作動流体が過剰に抜けてしまうことを確実に防止できる(図3を参照)。なお、上記の潤滑油の排出作業中は、常に下流側排出バルブ55(図1を参照)は閉じられている。
オペレータは、排出バルブ52を閉じた後、下流側排出バルブ55を操作して下流側排出路54内の流路を開くことにより、潤滑油排出用タンク53から下流側排出路54を介して潤滑油を排出することができる。或いは、排出バルブ52が閉じられた後、オペレータは、潤滑油が貯留された潤滑油排出用タンク53を排出路51から取り外してもよい。
次に、潤滑油を外部からクランクボックス11の内部へと供給する作業について、図4及び図5を参照して説明する。図4は、スターリングエンジンにおいて、潤滑油を供給するために供給バルブ62を開く直前の様子を示す図である。図5は、供給バルブ62を開くとともに流通バルブ65を開いて、潤滑油を供給している様子を示す図である。
初めに、オペレータは、図4の状態から、供給バルブ62を操作して供給路61内の流路を開くとともに、流通バルブ65を操作して作動流体流通路64内の流路を開く。これにより、図5に示すように、潤滑油供給用タンク63内の潤滑油が、供給路61を介してクランクボックス11内に供給され始める。このとき、潤滑油供給用タンク63内の潤滑油の液面は、潤滑油供給用タンク63内に流入した作動流体により押される。従って、潤滑油供給用タンク63からクランクボックス11へと向かう潤滑油の流れが促されて、速やかに潤滑油をクランクボックス11内へと供給することができる(図5の矢印を参照)。
潤滑油供給用タンク63からクランクボックス11に潤滑油が所望の量だけ供給された時点で、オペレータは供給バルブ62を操作して、供給路61内の流路を閉じる。これとほぼ同時に、オペレータは、流通バルブ65を操作して、作動流体流通路64内の流路を閉じる。
具体的には、クランクボックス11に貯留しておく潤滑油の量として好適な量(例えば、規定量)から上述の推定残存量の分を差し引いた量だけの潤滑油を、潤滑油供給用タンク63に予め貯留しておく。そして、潤滑油供給用タンク63内の潤滑油が全てクランクボックス11に供給された時点で、又はその直前の時点で、潤滑油供給用タンク63を閉じる。これにより、クランクボックス11内の作動流体が過剰に抜けてしまうことを抑制することができる。
もっとも、本実施形態のスターリングエンジン1では、潤滑油供給用タンク63の容量が、クランクボックス11の内部に貯留する潤滑油の規定量以下に設定されている。従って、供給バルブ62を閉じるのが仮に多少遅れたとしても、潤滑油供給用タンク63の容量以上に作動流体が抜けることはない。即ち、クランクボックス11から作動流体が抜ける量に一定の上限を設けることができる。なお、上記の潤滑油の供給作業中は、常に上流側供給バルブ67(図1を参照)は閉じている。
オペレータは、供給バルブ62及び流通バルブ65を閉じた後、潤滑油供給用タンク63を供給路61及び作動流体流通路64から取り外すこととしてもよい。
以上に説明したように、本実施形態のスターリングエンジン1は、クランクケース9と、排出路51と、排出バルブ52と、を備える。クランクケース9内のクランクボックス11は、パワーピストン3の往復運動をクランクシャフト8の回転運動に変換する第1動力変換部材30と、クランクシャフト8の回転運動をディスプレーサピストン4の往復運動に変換する第2動力変換部材40と、を収容する。クランクボックス11には、第1動力変換部材30及び第2動力変換部材40を潤滑するための潤滑油が内部に貯留されるとともに、パワーピストン3を往復運動させるための作動流体が内部に充填される。排出路51は、クランクボックス11の外側に設けられ、当該クランクボックス11の下部に接続される。排出バルブ52は、排出路51に設けられ、当該排出路51内の流路を開閉可能としている。
これにより、クランクボックス11の内部の潤滑油を排出する際には、排出路51に潤滑油排出用のタンクである潤滑油排出用タンク53を取り付け、排出バルブ52を開くことでクランクボックス11から排出路51を介して潤滑油排出用タンク53に潤滑油を送る。この際、クランクボックス11内の作動流体よりも潤滑油の方が比重が大きいため、クランクボックス11の下部から抜き出すことにより潤滑油を優先的に排出することができる。また、所望のタイミングで排出バルブ52を閉じることにより、クランクボックス11内の作動流体が過剰に外部に抜けるのを防止することができる。
また、本実施形態のスターリングエンジン1は、排出路51の排出バルブ52が設けられる位置よりも下流側に取り付けられる潤滑油排出用タンク53を更に備える。
これにより、排出バルブ52を開閉することにより、簡単に、クランクボックス11内の作動流体が過剰に外部に抜けるのを防止しつつ、クランクボックス11内の潤滑油を潤滑油排出用タンク53に抜き出すことができる。
また、本実施形態のスターリングエンジン1においては、潤滑油排出用タンク53の容量は、クランクボックス11の内部に貯留する潤滑油の規定量以下である。
これにより、規定量の潤滑油が潤滑油排出用タンク53に抜き出された時点で、又は抜き出される前に、潤滑油排出用タンク53が概ね満量となるため、潤滑油の排出に伴って作動流体が抜けてしまう量を少なく抑えることができる(図3を参照)。
また、本実施形態のスターリングエンジン1は、クランクケース9と、供給路61と、供給バルブ62と、を備える。クランクケース9内のクランクボックス11は、パワーピストン3の往復運動をクランクシャフト8の回転運動に変換する第1動力変換部材30と、クランクシャフト8の回転運動をディスプレーサピストン4の往復運動に変換する第2動力変換部材40と、を収容する。クランクボックス11には、第1動力変換部材30及び第2動力変換部材40を潤滑するための潤滑油が内部に貯留されるとともに、パワーピストン3を往復運動させるための作動流体が内部に充填される。供給路61は、クランクボックス11の外側に設けられ、当該クランクボックス11に接続される。供給バルブ62は、供給路61に設けられ、当該供給路61内の流路を開閉可能としている。
これにより、供給路61に潤滑油供給用タンク63を取り付けて供給バルブ62を開くことで、この潤滑油供給用タンク63内の潤滑油をクランクボックス11内に円滑に供給することができる。また、適切なタイミングで供給バルブ62を閉じることにより、クランクボックス11内の作動流体が過剰に外部に抜けるのを防止することができる。
また、本実施形態のスターリングエンジン1は、供給路61の供給バルブ62が設けられる位置よりも上流側に取り付けられる潤滑油供給用タンク63を更に備える。
これにより、供給バルブ62を開閉することにより、簡単に、クランクボックス11内の作動流体が過剰に外部に抜けるのを防止しつつ、潤滑油供給用タンク63内の潤滑油をクランクボックス11の内部に供給することができる。
また、本実施形態のスターリングエンジン1においては、潤滑油供給用タンク63の容量は、クランクボックス11の内部に貯留する潤滑油の規定量以下である。
これにより、潤滑油供給用タンク63の容量を必要以上に大きくしないことにより、潤滑油の供給に伴って潤滑油供給用タンク63側に抜けてしまう作動流体の量を少なく抑えることができる。
また、本実施形態のスターリングエンジン1は、作動流体流通路64と、流通バルブ(作動流体流通バルブ)65と、を備える。流通バルブ65は、供給路61よりも上方の位置でその一端部がクランクボックス11と接続され、供給路61よりも上方の位置でその他端部が潤滑油供給用タンク63と接続される。流通バルブ65は、作動流体流通路64に設けられ、当該作動流体流通路64内の流路を開閉可能である。
これにより、潤滑油供給用タンク63から供給路61を介してクランクボックス11内に潤滑油を供給する際に、併せて、流通バルブ65を開いた状態にして、クランクボックス11内の作動流体の一部をこの作動流体流通路64を介して潤滑油供給用タンク63に送り込むことができる(図5を参照)。これにより、作動流体の圧力を利用して、潤滑油供給用タンク63内の潤滑油をクランクボックス11側へと圧送することができ、より速やかに潤滑油をクランクボックス11内に供給することができる。
また、本実施形態のスターリングエンジン1の潤滑油排出方法は、当該スターリングエンジン1の排出バルブ52を操作して排出路51内の前記流路を開くことにより、クランクボックス11内の潤滑油を、排出バルブ52より下流側に配置された潤滑油排出用タンク53に排出路51を介して排出する工程を含む。また、このスターリングエンジン1の潤滑油排出方法は、クランクボックス11から潤滑油が所望の量だけ抜けた時点で排出バルブ52を閉じる工程を含む。
これにより、クランクボックス11の内部の潤滑油を排出したい場合に、排出バルブ52を操作して排出路51の流路を開くことで、クランクボックス11から排出路51を介して潤滑油排出用タンク53に潤滑油を送ることができる。この際、クランクボックス11内の作動流体よりも潤滑油の方が比重が大きいため、クランクボックス11の下部から抜き出すことにより潤滑油を優先的に排出することができる。また、所望の量の潤滑油が抜けた時点で排出バルブ52を閉じることにより、クランクボックス11内の作動流体が過剰に外部に抜けるのを防止することができる。
また、本実施形態のスターリングエンジン1の潤滑油供給方法は、当該スターリングエンジン1の供給バルブ62を操作して供給路61内の前記流路を開くことにより、供給バルブ62より上流側に配置された潤滑油供給用タンク63内の潤滑油を、供給路61を介してクランクボックス11内に供給する工程を含む。また、このスターリングエンジン1の潤滑油供給方法は、供給バルブ62を閉じる工程を含む。
これにより、クランクボックス11の内部に潤滑油を供給したい場合に、供給バルブ62を操作して供給路61の流路を開くことで、潤滑油供給用タンク63から供給路61を介してクランクボックス11内に潤滑油を送り込むことができる。この際、潤滑油供給用タンク63の容量を制限することにより、或いは、所望の量の潤滑油が供給された時点で供給バルブ62を閉じることにより、クランクボックス11内の作動流体が過剰に外部に(潤滑油供給用タンク63側に)抜けるのを防止することができる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
上記の実施形態では、クランクケース9の内側に配置されるクランクボックス11内の潤滑油を排出路51を介して排出し、或いは外部から供給路61を介してクランクボックス11の内部に潤滑油を供給するものとした。しかしながら、必ずしもこれに限るものではない。例えば、一般的な1重構造のクランクケース9内に貯留された潤滑油を、排出路(排出路51に相当するもの)を介して排出し、或いは外部から供給路(供給路61に相当するもの)を介してクランクケース9の内部に潤滑油を供給するものとしてもよい。
上記の実施形態で示した供給路61は、その他端部に取り付けた潤滑油供給用タンク63を取り外して、代わりに作動流体(例えば、ヘリウムガス)を充填したボンベを取り付けることで、当該作動流体をクランクケース内に充填するための供給路としても用いてもよい。言い換えれば、供給路61は、作動流体をクランクケース内に封入するときの供給路を兼ねるものとしてもよい。
上記の実施形態では、排出路51は、クランクボックス11の底部に貯留された潤滑油を抜き出すための排出路としたが、必ずしもこれに限るものではない。例えば、クランクボックス11内から漏れ出してクランクケース9内に少量だけ存在する潤滑油を集めて抜き出すために排出路51が用いられるものとしてもよい。その場合でも、排出路51の他端部に接続するドレン排出用タンク(潤滑油排出用タンク53に相当するもの)の容量を、クランクケース9内に漏れていると推定される潤滑油(ドレン)の体積に応じた小さな容量に設定することで、過剰に作動流体が抜け出てしまうことを抑制できる。
排出路51の、その潤滑油の排出(流通)方向でみたときの排出バルブ52よりも下流側の位置にフランジが設けられているものとし、このフランジよりも下流側の排出路(排出路51の下流側の一部をなすもの)を潤滑油排出用タンク53に付属するものとしてもよい。その場合、フランジの部分で着脱することにより、空の潤滑油排出用タンク53を取り付けて潤滑油の排出のための準備をしたり、或いは排出後に満量になった潤滑油排出用タンク53を取り外して別の場所に運んだりすることができる。
供給路61の、その潤滑油の供給(流通)方向でみたときの供給バルブ62よりも上流側の位置にフランジが設けられているものとし、このフランジよりも上流側の供給路(供給路61の上流側の一部をなすもの)を潤滑油供給用タンク63に付属するものとしてもよい。その場合、フランジの部分で着脱することにより、新しい潤滑油を入れた潤滑油供給用タンク63を取り付けて潤滑油の供給のための準備をしたり、或いは供給後に空になった潤滑油供給用タンク63を別の場所に運んだりすることができる。
上記の実施形態では、スターリングエンジン1はいわゆるβ型の形式のものとしたが、必ずしもこれに限るものではなく、例えばこれに代えて、α型或いはγ型の形式のものとしてもよい。