JP2018149049A - 房水排出装置 - Google Patents

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晴之 木下
Haruyuki Kinoshita
晴之 木下
藤井 輝夫
Teruo Fujii
輝夫 藤井
若棋 徐
Ruochi Hsu
若棋 徐
亮 朝岡
Ryo Asaoka
亮 朝岡
一 相原
Hajime Aihara
一 相原
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Abstract

【課題】正常房水排出量を確保しつつ眼圧を正常範囲に調整する機能を有し、薄く、柔軟で、小型であるようにする。
【解決手段】薄膜状の本体11と、該本体11内に形成された上流側流路12a及び下流側流路12bと、前記上流側流路12aと下流側流路12bとの間に配設された眼圧調整機構14とを備え、該眼圧調整機構14は、前記上流側流路12aと下流側流路12bとの間の圧力差が正常眼圧範囲にあっても、正常房水排出量の房水が流れる漏出流路を含む。
【選択図】図1

Description

本開示は、房水排出装置に関するものである。
眼の病気の一種である緑内障は、眼圧が正常範囲(1.07〜2.80〔kPa〕又は8〜21〔mmHg〕)を超えて上昇することよって、網膜神経節細胞が圧迫され、損傷し、徐々に視野が狭まり、最終的には失明に至る疾患のことで、わが国で最も多い中途失明原因である。その進行は非可逆的で、一度失われた視力は回復せず、根治させることができない疾患である。そこで、緑内障治療においては、進行を食い止めることが肝要で、眼圧を速やかに下降させる必要がある。緑内障では、眼内を循環する房水の流出経路にあたる線維柱帯やシュレム管に異常が起きて流出抵抗が増加すると流れが滞り、眼圧が上昇するが、これを治療するため、房水産生を抑制する薬剤の投与、排出を促進するレーザ治療、線維柱帯切除術等の外科手術が実施される。
薬剤治療やレーザ治療でも眼圧が下降しない難治例では、房水排出装置を結膜下、強膜上に埋め込んで人工的な房水排出経路を設けて強制的に圧力を下げるインプラント手術が適応となる。日本でも2種類の房水排出装置が認可され、2012年からは保険適用にもなったため、今後更に利用が増えると予想される。現在、臨床応用可能な代表的な房水排出装置として、モルテノ型(例えば、特許文献1参照。)、バルベルト型(例えば、特許文献2参照。)、アーメド型(例えば、特許文献3及び4参照。)が存在し、いずれの装置も、眼球内に挿入し外部へ房水を導く1本の排出管部と、眼球に固定するプレート部とで構成されている。
排出管部とプレート部とで構成される従来の房水排出装置では、角膜を切開し、眼球の前房部に排出管部の一端を挿入し、排出管部の他端とそれに接続されたプレート部を強膜上に固定する。排出管部が房水の流れる流路となり、前房部内に貯まった房水が排出管部を通って眼球外のプレート部周囲に流れ出ることによって、上昇した眼球内の圧力を眼球外に逃がすことができ、眼圧上昇を抑制する仕組みになっている。
臨床応用が可能な従来の緑内障治療用の房水排出装置の抱える第一の課題が、排出管部及びプレート部のサイズが大きく、厚く、硬いことである。その結果、結膜上への装置の露出が起き、術後の見た目を著しく悪くする。また、硬い排出管部が結膜を破って突き出る場合もあり、傷口から感染症にかかるリスクも高まる。
前記第一の課題を解決するために、柔軟なシリコーンゴムを材料とし、房水排出のための微小な流路構造を内蔵させた柔軟平板型の房水排出装置が提案されている。MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術、フォトリソグラフィー技術及びソフトモールディング技術を応用して作製することによって、臨床応用可能な従来の房水排出装置に比べて、本体がより薄く、かつ柔軟な房水排出装置を実現している。
前記第一の課題を解決するために、プレート部を排除し、眼球の前房部に挿入する排出管部のみで房水排出装置を構成する技術が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。このような構成によって小型化を図り、また、排出管部を柔軟材料で作製することで柔軟化を図っている。
臨床応用が可能な従来の緑内障治療用の房水排出装置の抱える第二の課題が、房水排出機能を喪失するリスクである。1本の経路で排出を行う限り、装置周囲の線維瘢痕化や細胞の付着や凝固によって流路が詰まって排水不能になるリスクが高い。
前記第二の課題を解決するために、複数の微小排出路を内蔵させた房水排出装置も提案されている(例えば、特許文献5参照。)。MEMS技術、フォトリソグラフィー技術及びソフトモールディング技術を応用することで、柔軟な平板形状の本体に、房水排出のための複数の微小流路を集積化させている。排出経路を多重化することによって、臨床応用可能な従来の房水排出装置よりも、房水排出機能喪失のリスクを低減している。
臨床応用が可能な従来の緑内障治療用の房水排出装置の抱える第三の課題が、眼圧調整機能である。モルテノ型房水排出装置やバルベルト型房水排出装置には、房水排出装置本体に圧力調整機構は内蔵されていない。正常眼圧範囲に対してわずかな上昇(数〔mmHg〕)で視神経が損傷することが知られており、緑内障治療のための房水排出装置には精密な調整を可能にする機構が要求されている。
前記第三の課題を解決するために、アーメド型房水排出装置では、簡易的な膜バルブ機構を内蔵させ、圧力調整機能を実現している。眼球外に配置された排出管部の出口端が膜で挟まれて閉じられており、眼圧が一定圧力値以下の場合には、膜が剥がれないため、排出管部を通って房水が流れ出ることはない。眼圧が一定閾値より上昇した場合には、膜が圧力に耐えられずに剥がれて、房水が排水管部を通って流出する。このような膜バルブ機構によって、眼圧を一定圧力値以下に調整している。
前記第三の課題を解決するために、微小な流路構造の上に被せた柔軟な膜の一部が流路内の圧力上昇によって剥がれる機構を備える圧力調整機能が提案されている(例えば、非特許文献2参照。)。柔軟なシリコーンゴム同士を接合するときに、接合面を局所的に金属で被膜することで、接合されない領域を設けている。流路内の圧力が一定圧力値以下の場合、金属被膜された部分は素材の粘着性によって接合状態が維持され、流路を通って液体が流出することはない。流路内圧力が一定閾値より上昇した場合、接着膜が圧力に耐えられずに剥がれて、液体が流路を通って流出する。このような膜バルブ機構によって、圧力を一定圧力値以下に調整している。
前記第三の課題を解決するために、眼球の前房部に挿入する排出管部にバルブ機能を配置した房水排出装置も提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。柔軟材料で構成される排出管部の壁面の一部に微細加工技術を利用して切れ目を入れ、排出管部周囲の圧力、すなわち、眼圧が上昇すると、切れ目を入れた排出管部の壁面の一部が撓む構造になっている。眼圧が上昇して一定圧力値以上に到達すると、排出管部の周囲の房水が、撓んだ排出管部の壁面を通って排出管部内に流れ込み、眼球外へ排水され、眼圧の上昇を抑制する。
米国特許第4457757号明細書 特表平10−503405号公報 特表2001−505089号公報 米国特許第6007510号明細書 特表2007−526013号公報 Siewert S., Schultze C., Schmidt W., Hinze U., Chichkov B., Wree A., Sternberg K., Allemann R., Guthoff R., and Schmitz K. P.,"Development of a micro-mechanical valve in a novel glaucoma implant ", Biomedical Microdevices, 14 (2012), 907-920. Moon S., Im S., An J., Park C. J., Kim H. G., Park S. W., Kim H. I., and Lee J. H., "Selectively bonded polymeric glaucoma drainage device for reliable regulation of intraocular pressure ", Biomedical Microdevices, 14 (2012), 325-335.
しかしながら、前記従来の技術では、眼圧調整機能を有するバルブ構造を有しているものの、眼圧が一定閾値を超えるとバルブが開放されて房水が排出され、眼圧が正常眼圧範囲内まで低下する、という調整方法が採用されている。しかし、正常眼圧範囲にある眼球でも、常に房水の産生と排出が行われており、房水の排出量は2〔μL/min〕程度であり、房水の産生量と排出量が均衡した結果として、眼圧が一定に維持される。したがって、このような眼圧調整機能では、正常眼圧状態において房水の排出が担保されず、眼圧の上昇と下降とを繰り返す調整機能となっている。
ここでは、前記従来の技術の問題点を解決して、正常房水排出量を確保しつつ眼圧を正常範囲に調整する機能を有し、薄く、柔軟で、小型の房水排出装置を提供することを目的とする。
そのために、房水排出装置においては、薄膜状の本体と、該本体内に形成された上流側流路及び下流側流路と、前記上流側流路と下流側流路との間に配設された眼圧調整機構とを備え、該眼圧調整機構は、前記上流側流路と下流側流路との間の圧力差が正常眼圧範囲にあっても、正常房水排出量の房水が流れる漏出流路を含む。
他の房水排出装置においては、さらに、前記眼圧調整機構は、前記漏出流路の周囲に形成された面状開閉部を含み、該面状開閉部は、前記上流側流路と下流側流路との間の圧力差が所定の閾値を超えると開いて、前記上流側流路と下流側流路との間を連通する。
更に他の房水排出装置においては、さらに、前記本体は、互いに接合された上部シート及び下部シートを含む。
更に他の房水排出装置においては、さらに、前記上部シート及び下部シートは、PDMS等のシリコーン素材又はその他の柔軟素材から成る。
更に他の房水排出装置においては、さらに、前記上流側流路、下流側流路及び漏出流路は、前記上部シート又は下部シートの一方の接合面に形成された溝と、他方の接合面との間に形成された流路である。
更に他の房水排出装置においては、さらに、前記下流側流路は複数である。
更に他の房水排出装置においては、さらに、前記本体の厚さは0.1〜1〔mm〕であり、前記上流側流路及び下流側流路の幅及び高さは0.05〜2〔mm〕及び0.01〜0.5〔mm〕である。
更に他の房水排出装置においては、さらに、前記上流側流路は本体の前端部に開口し、前記下流側流路は本体の後端部に開口し、前記前端部は眼球の前房内に挿入され、該前房内の房水は眼球外の前記後端部から排出される。
更に他の房水排出装置においては、さらに、前記漏出流路の幅及び高さは、ともに、0.002〜0.05〔mm〕であり、前記漏出流路の長さは0.1〜2〔mm〕である。
更に他の房水排出装置においては、さらに、前記漏出流路は複数である。
更に他の房水排出装置においては、さらに、前記眼圧調整機構は、前記上流側流路と下流側流路とを分離する上側弁部材及び下側弁部材を含み、前記面状開閉部は、前記上側弁部材の下面と下側弁部材の上面とが離間可能に接合する部分である。
更に他の房水排出装置においては、さらに、前記所定の閾値は、前記漏出流路の幅、長さ及び数を調整することによって調整可能である。
更に他の房水排出装置においては、さらに、前記所定の閾値は、前記上側弁部材又は下側弁部材の厚さを調整することによって調整可能である。
更に他の房水排出装置においては、さらに、前記所定の閾値は、前記面状開閉部にフッ素系化合物又は高分子を塗布することによって調整可能である。
本開示によれば、正常房水排出量を確保することができ、薄く、柔軟で、小型の房水排出装置を提供することができる。
本実施の形態における房水排出装置の斜視図である。 本実施の形態における房水排出装置の使用状態を示す図である。 本実施の形態における房水排出装置の透視図である。 本実施の形態における眼圧調整機構周辺の拡大図である。 本実施の形態における眼圧が正常なときの眼圧調整機構周辺の拡大断面図である。 本実施の形態における眼圧が上昇したときの眼圧調整機構周辺の拡大断面図である。 本実施の形態における房水排出装置の裏側から観た斜視図である。 本実施の形態における房水排出装置の変形例の眼圧調整機構の平面図である。 本実施の形態における房水排出装置の写真である。 本実施の形態における房水排出装置の実例を眼球に固定した状態を示す図である。 本実施の形態における房水排出装置の評価試験系を示す図である。 本実施の形態における房水排出装置の実例を眼圧が正常範囲にある眼球に固定した状態を示す写真である。 本実施の形態における房水排出装置の実例を眼圧が一定閾値を超えた眼球に固定した状態を示す写真である。 本実施の形態における房水排出装置の第1実験例の透視図である。 本実施の形態における房水排出装置の第2実験例の眼圧調整機構周辺の拡大図である。 本実施の形態における房水排出装置の第3実験例の眼圧調整機構周辺の拡大図である。 本実施の形態における漏出流路が眼圧調整機能に与える影響の評価試験系を示す図である。 本実施の形態における房水排出装置の第4〜第7実験例の透視図である。 本実施の形態における房水排出装置の第4〜第7実験例の眼圧調整機構周辺の拡大図である。
以下、本実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本実施の形態における房水排出装置の斜視図、図2は本実施の形態における房水排出装置の使用状態を示す図である。
図において、10は本実施の形態における房水排出装置である。該房水排出装置10は、好適には、図2に示されるように、ヒトを含む動物の眼球31に埋め込むことによって取り付けられ、前記眼球31内を循環して流れている房水を眼球31から適切に排出するために使用される。
なお、本実施の形態において、房水排出装置10の各部の構成及び動作を説明するために使用される上、下、左、右、前、後等の方向を示す表現は、絶対的なものでなく相対的なものであり、前記房水排出装置10の各部が図に示される姿勢である場合に適切であるが、その姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
前記房水排出装置10は、シリコーン樹脂等の柔軟性を有する素材から成る薄膜状の本体11と、該本体11内に形成された流路12と、該流路12の途中に配設された眼圧調整機構14とを備える。前記流路12において、本体11の前端部11aに開口する前端開口部15aから眼圧調整機構14までの部分を上流側流路12aと称し、眼圧調整機構14から本体11の後端部11bに開口する後端開口部15bまでの部分を下流側流路12bと称する。なお、前記流路12は、必ずしも1本に限定されるものでなく、複数本であってもよいし、また、1本の流路12が途中で複数本に分岐したものであってもよい。例えば、図に示される例においては、流路12が眼圧調整機構14で分岐しており、上流側流路12aが1本であるのに対して下流側流路12bが3本になっている。なお、流路12は、必ずしも、眼圧調整機構14で分岐する必要はなく、上流側流路12a又は下流側流路12bの途中で分岐してもよい。また、分岐後の本数も、3本である必要はなく、2本であっても、4本以上であってもよい。
前記本体11の前端部11a及びその近傍は、好適には、図2に示されるように、眼球31の結膜を切開して剥離することによって強角膜輪部に開けられた挿入孔33を通して、眼球31の前房32の内部に挿入される。そして、前記本体11は、眼球31の表面に沿って這うように湾曲させた状態で、強膜上に固定される。前房32の内部の房水は、前端開口部15aから流路12内に流入し、矢印19で示されるように、眼圧調整機構14を通過して流路12内を流れた後、眼球31の後側に位置する後端開口部15bから排出される。排出された房水は、後端開口部15bの周囲の体内組織に吸収される。
次に、前記流路12及び眼圧調整機構14の構成について詳細に説明する。ここでは、説明の都合上、本体11は細長い真っ直ぐな帯状であって、流路12は、分岐することなく、1本のみである基本的な構成の房水排出装置10について説明する。
図3は本実施の形態における房水排出装置の透視図、図4は本実施の形態における眼圧調整機構周辺の拡大図、図5は本実施の形態における眼圧が正常なときの眼圧調整機構周辺の拡大断面図、図6は本実施の形態における眼圧が上昇したときの眼圧調整機構周辺の拡大断面図、図7は本実施の形態における房水排出装置の裏側から観た斜視図である。
図3に示されるように、薄膜状の本体11は、流路12に対応する細長い溝が接合面である下面に形成された上部シート21と、接合面である上面が平坦な下部シート22とを重ね合わせた構造を有する。前記上部シート21の下面と下部シート22の上面とを接合することによって、流路12及び該流路12の途中に形成された眼圧調整機構14を備える房水排出装置10の本体11が形成される。なお、該本体11の厚さは、例えば、0.1〜1.0〔mm〕であり、前記上部シート21及び下部シート22の厚さは、例えば、0.05〜0.95〔mm〕であり、流路12の幅及び高さ(厚さ)は、例えば、0.05〜2〔mm〕及び0.01〜0.5〔mm〕であるが、これらの数値は、適宜変更することができる。
図4〜6に示されるように、眼圧調整機構14は、上側弁部材14a、下側弁部材14b、面状開閉部14c及び漏出流路16を含んでいる。
前記上側弁部材14aは、流路12の途中を塞き止めるように上部シート21に形成された部分であって、流路12の上面から下方に向かって突出する肉厚の凸部であり、その下面は流路12の下面を構成する下部シート22の上面に当接する。前記流路12は、上側弁部材14aによって、上流側流路12aと下流側流路12bとに分離される。そして、前記下側弁部材14bは、下部シート22における上側弁部材14aと対向する部分であって、前記上側弁部材14aの下面が当接する部分である。
また、前記面状開閉部14cは、上側弁部材14aの下面と下側弁部材14bの上面とが離間可能に接合する部分であって、上側弁部材14aの下面は下側弁部材14bである下部シート22の上面に離間可能に接合している。そのため、前記面状開閉部14cは、一種の圧力制御弁として機能し、正常な場合、すなわち、上流側流路12a内の圧力と下流側流路12b内の圧力との差が小さい場合には、図5に示されるように、閉じており、上流側流路12a内の圧力が上昇して下流側流路12b内の圧力との差が大きくなると、図6に示されるように、開くようになっている。
さらに、前記漏出流路16は、前記上側弁部材14aの下面に形成された微細な溝であり、前記面状開閉部14cが閉じている場合であっても、上流側流路12aと下流側流路12bとを連通する通路である。なお、前記漏出流路16は、面状開閉部14cを通過して上流側流路12aと下流側流路12bとを結ぶ微細流路であるとも言える。また、上流側流路12aと下流側流路12bとの間に配設された漏出流路16の周囲が面状開閉部14cになっているとも言える。
なお、図に示される例において、面状開閉部14cにおける上流側の幅は、上流側流路12aの幅と等しく、下流側の幅は、下流側流路12bの幅と等しくなっているが、適宜変更することができる。前記面状開閉部14cの長さは、例えば、0.1〜2〔mm〕であるが、適宜変更することができる。また、前記漏出流路16は、幅及び高さ(厚さ)は、例えば、0.002〜0.05〔mm〕であるが、適宜変更することができる。なお、前記漏出流路16の長さは、面状開閉部14cの長さと同様である。また、前記漏出流路16は、必ずしも1本に限定されるものではなく、複数本であってもよい。
眼球31の内部圧力、すなわち、眼圧が正常範囲に収まっている場合には、上流側流路12a内に流入した房水の圧力が高くなく、上流側流路12a内の圧力と下流側流路12b内の圧力との差が小さいので、図4及び5に示されるように、面状開閉部14cは閉じている。このような場合であっても、眼圧が正常な眼球31から排出される程度の房水の量、すなわち、正常房水排出量の房水は、漏出流路16を通過して、上流側流路12aから下流側流路12bに流入し、最終的には後端開口部15bから排出される。したがって、正常房水排出量、例えば、約2〔μL/min〕の房水が、眼球31の前房32から眼球31外へ流出するので、眼圧は一定圧力範囲に調整される。
一方、眼圧が正常範囲を超えて上昇した場合、上流側流路12a内に流入した房水の圧力が高くなり、上流側流路12a内の圧力と下流側流路12b内の圧力との差が大きくなるので、図6に示されるように、面状開閉部14cにおいて上側弁部材14aの下面と下側弁部材14bの上面とが離間し、下部シート22の一部である下側弁部材14bが下方に撓み、面状開閉部14cが開いた状態になる。そのため、上流側流路12aと下流側流路12bとの間で房水が流れる経路が拡張されて流路抵抗が低下するので、房水の流量が増大し、上流側流路12a内の圧力が低下して眼圧が下降する。
そして、眼圧が正常範囲に戻ると、上流側流路12a内の圧力が低下して上流側流路12a内の圧力と下流側流路12b内の圧力との差が小さくなるので、撓んでいた下側弁部材14bが復帰して上側弁部材14aの下面と下側弁部材14bの上面とが再び接合し、面状開閉部14cが閉じる。
このように、面状開閉部14cは、眼圧が高くなり、上流側流路12a内に流入した房水の圧力が高くなると開いて、房水を下流側流路12b内に多量に流入させて後端開口部15bから排出させることによって、眼圧を低下させる圧力制御弁として機能する。
なお、ここでは、上部シート21に、流路12に対応する細長い溝、上側弁部材14aに対応する肉厚の凸部、及び、漏出流路16に対応する微細な溝を形成した例について説明したが、これらを下部シート22に形成することもできる。
図7に示されるように、下部シート22側から房水排出装置10を観ると分かるように、下部シート22の下面における下側弁部材14bに対応する部分に膜変位空間としての凹入部24が形成されている。なお、該凹入部24は、面状開閉部14cよりも広い面積となるように形成されることが望ましい。これにより、下側弁部材14bは、下部シート22の他の部分よりも肉薄となるので、柔軟性が高く、撓みやすくなる。したがって、上流側流路12a内に流入した房水の圧力があまり高くなく、上流側流路12a内の圧力と下流側流路12b内の圧力との差があまり大きくなくても、面状開閉部14cが開いた状態になる。
このように、凹入部24を形成して下側弁部材14bの柔軟性を調整することによって、眼圧調整機構14の面状開閉部14cが開放するのに必要な上流側流路12a内の圧力と下流側流路12b内の圧力との差を調整することができる。すなわち、面状開閉部14cを開放させて眼圧を低下させるための眼圧の閾値を調整することができる。また、前記凹入部24が下部シート22の下面を凹ませることによって形成されているので、図2に示されるように、房水排出装置10の本体11を眼球31の表面に沿って這うように強膜上に固定し、下部シート22の下面が強膜に当接した状態であっても、下側弁部材14bが撓んで面状開閉部14cを開放することができる。
なお、上側弁部材14aの下面又は下側弁部材14bの上面に、例えば、トリフルオロメタン(HFC−23)等のフッ素系化合物やMPCポリマー等の高分子を塗布することによって、上側弁部材14aの下面と下側弁部材14bの上面との接合力を調整し、面状開閉部14cを開放させて眼圧を低下させるための眼圧の閾値を調整することもできる。
次に、眼圧調整機構14を変形した房水排出装置10の変形例について説明する。
図8は本実施の形態における房水排出装置の変形例の眼圧調整機構の平面図である。
房水排出装置10の変形例においては、図8に示されるように、流路12が眼圧調整機構14で分岐しており、上流側流路12aが1本であるのに対して下流側流路12bが3本になっている場合、面状開閉部14cを通過して上流側流路12aと下流側流路12bとを結ぶ微細流路である漏出流路16も、途中で3本に分岐している。なお、漏出流路16の分岐後の本数は、必ずしも、3本に限定されるものでなく、下流側流路12bの本数に合わせて変更される。
眼圧が正常範囲に収まって面状開閉部14cが閉じている場合、正常房水排出量の房水は、途中で分岐する漏出流路16を通過して、上流側流路12aから3本の下流側流路12bに流入し、3つの後端開口部15bから排出される。一方、眼圧が正常範囲を超えて上昇した場合、上流側流路12a内の圧力と3本の下流側流路12b内の圧力との差が大きくなるので、面状開閉部14cが開いた状態となり、上流側流路12aと3本の下流側流路12bとの間で房水が流れる経路が拡張され、多量の房水が上流側流路12aから3本の下流側流路12bに流入するので、上流側流路12a内の圧力が速やかに低下して眼圧が速やかに下降する。
次に、発明者が実際に作製した房水排出装置10の実例について説明する。
図9は本実施の形態における房水排出装置の写真である。
発明者は、フォトリソグラフィー技術、ソフトモールディング技術及び接合技術を用いて、実際に房水排出装置10の実例を作製した。なお、該房水排出装置10は、図3に示されるものと同様に、流路12が分岐することなく、1本のみである基本的な構成のものである。
まず、上部シート21の作製を行った。フォトリソグラフィー法によって、フォトレジストKMPR 1035(日本化薬株式会社)を用いて、2.5インチ×2.5インチサイズのガラス基板上に上流側流路12a、下流側流路12b及び漏出流路16の反転型となる流路反転型凸構造を成形し、ガラス基板及び該ガラス基板上に成形した流路反転型凸構造の表面に、離型処理(トリフルオロメタン塗布)を施した。
PDMS(ポリジメチルシロキサン)の一種であるインプラント用シリコーンMED−6015(NuSil Technology LLC)のA液とB液とをそれぞれ10グラムずつ計量し、計量したA液とB液とを混合器で混合し、真空デシケータを用いて脱泡処理を行った。流路反転型凸構造が成形されたガラス基板を専用金型に取り付け、専用金型の注ぎ口より、脱泡されたMED−6015混合液を注入し、75〔℃〕環境下で90分間加熱し、硬化させた。
インプラント用シリコーンMED−6015が硬化した後、専用金型を分解し、流路反転型凸構造が成形されたガラス基板から硬化したインプラント用シリコーンMED−6015のシートを剥がし、上流側流路12a、下流側流路12b及び漏出流路16となる溝構造が加工された上部シート21を得た。
次に、下部シート22の作製を行った。上部シート21を作製したときと同様に、インプラント用シリコーンMED−6015のA液とB液とをそれぞれ10グラムずつ計量し、計量したA液とB液とを混合器で混合し、真空デシケータを用いて脱泡処理を行った。膜変位空間としての凹入部24となる凸構造を有する専用金型を組み立てて、専用金型の注ぎ口より、脱泡されたMED−6015混合液を注入し、75〔℃〕環境下で90分間加熱し、硬化させた。
インプラント用シリコーンMED−6015が硬化した後、専用金型を分解し、専用金型から硬化したインプラント用シリコーンMED−6015のシートを剥がし、片側に凹入部24を有する平らな下部シート22を得た。
最後に、上部シート21と下部シート22との接合、及び、外形状の成形を行った。上部シート21の、上流側流路12a、下流側流路12b及び漏出流路16となる溝構造が加工された面に対して、面状開閉部14cに対応する領域のみが曝露するように、厚み0.1〔mm〕の市販のシリコーンシートで被膜を行った上で、RIE(リアクティブイオンエッチング)装置RIE−10NR(サムコ株式会社)を用いて、トリフルオロメタンプラズマ処理を30秒間実施し、上部シート21の面状開閉部14cに対応する面のみにトリフルオロメタンを塗布した。トリフルオロメタン塗布後、被膜に用いたシリコーンシートを上部シート21から取り除いた。
上部シート21の、上流側流路12a、下流側流路12b及び漏出流路16となる溝構造が加工された面に対して、RIE装置RIE−10NRを用いて、酸素プラズマ処理を施した。同様に、下部シート22の凹入部24の凹みがある面の反対側の面に対しても、RIE装置RIE−10NRを用いて、酸素プラズマ処理を施した。上部シート21の酸素プラズマ処理を施した面と、下部シート22の酸素プラズマ処理を施した面とを貼り合わせ、75〔℃〕環境下で加熱し、上部シート21と下部シート22とを接合し、本体11が幅2.5〔mm〕、長さ40〔mm〕、厚さ0.4〔mm〕となるように、接合された上部シート21及び下部シート22の外周の不要な部分をナイフで切り落とし、図9に示されるような房水排出装置10を得た。
酸素プラズマ処理が施されたインプラント用シリコーンMED−6015の表面は、互いに強固に接合し、永久に剥がれることがない。ただし、トリフルオロメタンプラズマ処理を施した面状開閉部14cに対応する領域は、接合してはいるが、外力によって剥がれる構造となっている。
図9に示されるように、作製された房水排出装置10は、すべて柔軟なインプラント用シリコーンMED−6015から成り、幅2.5〔mm〕、長さ40〔mm〕、厚さ0.4〔mm〕となっている。上部シート21及び下部シート22の厚さは、それぞれ、0.2〔mm〕である。眼圧調整機構14の面状開閉部14cは、本体11の幅方向中央に配置され、下部シート22の面状開閉部14cに対応する位置には、凹入部24として、直径2〔mm〕、深さ0.1〔mm〕の凹みが形成されている。上流側流路12a及び下流側流路12bは、幅1〔mm〕、高さ0.1〔mm〕となっており、漏出流路16は幅0.02〔mm〕、高さ0.02〔mm〕となっており、漏出流路16の本数は1本となっている。面状開閉部14cは幅1〔mm〕、長さ1〔mm〕である。
作製された房水排出装置10では、流路幅及び流路高さの小さい漏出流路16における流路抵抗が支配的であるため、眼圧に対する房水排出量は、漏出流路16における流路抵抗によって決定される。眼圧が正常範囲(1.07〜2.80〔kPa〕又は8〜21〔mmHg〕)にあるとき、漏出流路16の流路抵抗を基にして房水排出量を流体力学的に見積もると、房水排出量は0.4〔μL/min〕から1.1〔μL/min〕の範囲となり、眼圧の正常範囲に対応する正常房水排出量として妥当な値になる。
次に、前記房水排出装置10の実例の評価試験について説明する。
図10は本実施の形態における房水排出装置の実例を眼球に固定した状態を示す図、図11は本実施の形態における房水排出装置の評価試験系を示す図、図12は本実施の形態における房水排出装置の実例を眼圧が正常範囲にある眼球に固定した状態を示す写真、図13は本実施の形態における房水排出装置の実例を眼圧が一定閾値を超えた眼球に固定した状態を示す写真である。
発明者は、前記房水排出装置10の実例を、豚検体から抽出された眼球である眼球試料35に埋め込み、眼圧上昇時の房水排出機能及び眼圧調整機能の評価試験を実施した。図10に示されるように、豚眼試料(東京芝浦臓器株式会社)としての眼球試料35を試料台37の上に載せ、4本の固定用ピン37aで試料台37に固定した。三面切開法を用いて、眼球試料35の輪部から1〜2〔mm〕の位置において、虹彩面に対して平行に角膜36を切開して挿入孔33を設け、実例として作製した房水排出装置10の本体11の前端部11aを前房32内へ挿入した。挿入孔33と房水排出装置10の本体11との隙間から、前房32内に存在する房水が漏出しないように、前端部11aを挿入した後、挿入孔33の周囲を光硬化性樹脂で密閉した。挿入孔33と対角線の位置において、圧力印可用注射針(23G×1”)41を前房32内に挿入し、前記圧力印可用注射針41に対して直角になるように、圧力測定用注射針(23G×1”)42を前房32内に挿入した。
図11に示されるように、圧力印可用注射針41は、チューブを介して、圧力印可装置43に接続される。該圧力印可装置43は、シリンジポンプ(MFS−SP1、マイクロ流体システム工房株式会社)45を用いて、水を直径10〔mm〕の水柱管44の中に注水することによって、水柱管44内の水面を上昇させ、水柱の高さに対応した静水圧を発生させることができる。そして、圧力印可装置43で発生させた静水圧は、チューブを介して圧力印可用注射針41に到達し、眼球試料35の眼圧は、圧力印可装置43で発生させた静水圧と等しい圧力値になる。また、圧力測定用注射針42は、チューブを介して、圧力測定装置(BP Transducers ADInstruments)46に接続される。該圧力測定装置46は、コンピュータ47に接続され、専用ソフトウェア(Intrapcular PowerLab(R) Data Acquisition Systems、 ADInstruments)で眼圧を測定することができる。
評価試験においては、シリンジポンプ45によって、青色色素で着色した色水を送液し、水柱管44の水面を徐々に上昇させ、圧力印可装置43が発生する圧力を徐々に上昇させ、眼球試料35の眼圧を徐々に上昇させた。図12は、圧力測定装置46によって測定される眼圧が正常眼圧範囲にあるときの、眼球試料35及び房水排出装置10を示している。眼球試料35の眼圧が正常眼圧範囲にある状態では、房水排出装置10の本体11の後端開口部15bから、色水がわずかに排出された。そして、シリンジポンプ45による送液を更に継続し、眼球試料35の眼圧を上昇させ、眼圧が2.00〔kPa〕(15〔mmHg〕)に到達したとき、眼圧調整機構14の面状開閉部14cが開き、上流側流路12aと下流側流路12bとの間で房水が流れる経路が拡張された結果、前記後端開口部15bからの色水の排出量が急激に増大し、後端開口部15b付近に色水の水滴の生成が確認された。図13は、眼圧が2.00〔kPa〕(15〔mmHg〕)となったときの、眼球試料35及び房水排出装置10を示している。
このように、房水排出装置10の実例の評価試験では、眼球試料35の眼圧が正常値範囲にあるときは、房水は漏出流路16を通って徐々に排出され、眼球試料35の眼圧が所定の閾値である2.00〔kPa〕(15〔mmHg〕)を超えて上昇したときは、眼圧調整機構14の面状開閉部14cが開き、眼圧の上昇が抑制されることが確認された。正常な眼圧の範囲が1.07〜2.80〔kPa〕(8〜21〔mmHg〕)であることから、実例として作製された房水排出装置10は、眼圧を正常範囲内に調整することができる機能を有していることが分かる。
次に、評価試験、特に、眼圧調整機能の評価試験に適した房水排出装置10の実験例について説明する。
図14は本実施の形態における房水排出装置の第1実験例の透視図、図15は本実施の形態における房水排出装置の第2実験例の眼圧調整機構周辺の拡大図、図16は本実施の形態における房水排出装置の第3実験例の眼圧調整機構周辺の拡大図である。
発明者は、フォトリソグラフィー技術、ソフトモールディング技術及び接合技術を用いて、評価試験、特に、眼圧調整機能の評価試験に適した房水排出装置10の第1実験例、第2実験例及び第3実験例を作製した。なお、該第1実験例、第2実験例及び第3実験例は、図9に示される実例と同様の基本構造を備えているが、図9に示される実例とは異なり、上部シート21の面状開閉部14cに対応する面へのトリフルオロメタンの塗布は行われない。
また、前記第1実験例、第2実験例及び第3実験例は、それぞれ、異なる本数の漏出流路16を有する。すなわち、図4に示されるように、第1実験例は1本の漏出流路16を有し、図15に示されるように、第2実験例は2本の漏出流路16を有し、図16に示されるように、第3実験例は3本の漏出流路16を有している。
図14に示されるような第1実験例を作製する方法について、詳細に説明する。第1実験例は、図3に示されるものと同様に、漏出流路16が1本のみである基本的な構成のものである。
まず、上部シート21の作製を行った。フォトリソグラフィー法によって、フォトレジストKMPR 1035を用いて、2.5インチ×2.5インチサイズのガラス基板上に上流側流路12a、下流側流路12b及び漏出流路16の反転型となる流路反転型凸構造を成形し、ガラス基板及び該ガラス基板上に成形した流路反転型凸構造の表面に、離型処理(トリフルオロメタン塗布)を施した。
PDMSの一種であるインプラント用シリコーンMED−6015のA液とB液とをそれぞれ10グラムずつ計量し、計量したA液とB液とを混合器で混合し、真空デシケータを用いて脱泡処理を行った。流路反転型凸構造が成形されたガラス基板を専用金型に取り付け、専用金型の注ぎ口より、脱泡されたMED−6015混合液を注入し、75〔℃〕環境下で90分間加熱し、硬化させた。
インプラント用シリコーンMED−6015が硬化した後、専用金型を分解し、流路反転型凸構造が成形されたガラス基板から硬化したインプラント用シリコーンMED−6015のシートを剥がし、上流側流路12aの一端及び下流側流路12bの一端に直径2〔mm〕の貫通孔をそれぞれ設け、上流側流路12a、下流側流路12b及び漏出流路16となる溝構造が加工された上部シート21を得た。
次に、下部シート22の作製を行った。上部シート21を作製したときと同様に、インプラント用シリコーンMED−6015のA液とB液とをそれぞれ10グラムずつ計量し、計量したA液とB液とを混合器で混合し、真空デシケータを用いて脱泡処理を行った。膜変位空間としての凹入部24となる凸構造を有する専用金型を組み立てて、専用金型の注ぎ口より、脱泡されたMED−6015混合液を注入し、75〔℃〕環境下で90分間加熱し、硬化させた。
インプラント用シリコーンMED−6015が硬化した後、専用金型を分解し、専用金型から硬化したインプラント用シリコーンMED−6015のシートを剥がし、片側に凹入部24を有する平らな下部シート22を得た。
次に、上流側圧力印可ポート17a及び下流側圧力印可ポート17bの作製を行った。インプラント用シリコーンMED−6015のA液とB液とをそれぞれ10グラムずつ計量し、計量したA液とB液とを混合器で混合し、真空デシケータを用いて脱泡処理を行った。脱泡されたMED−6015混合液を、プラスチックシャーレに注ぎ込み、75〔℃〕環境下で90分間加熱し、硬化させた。
インプラント用シリコーンMED−6015が硬化した後、プラスチックシャーレから硬化した板状MED−6015を剥がし、幅10〔mm〕、長さ10〔mm〕、厚さ4〔mm〕の直方体ブロック2個をナイフで切り出し、各直方体ブロックの中央に直径2〔mm〕の貫通孔を設け、上流側圧力印可ポート17a及び下流側圧力印可ポート17bを得た。
次に、上部シート21と下部シート22との接合、並びに、上部シート21と上流側圧力印可ポート17a及び下流側圧力印可ポート17bとの接合を行った。上部シート21の、上流側流路12a、下流側流路12b及び漏出流路16となる溝構造が加工された面に対して、面状開閉部14cに対応する領域のみを厚み0.1〔mm〕の市販のシリコーンシートで被覆し、RIE装置RIE−10NRを用いて、酸素プラズマ処理を施した。同様に、下部シート22の凹入部24の凹みがある面の反対側の面に対しても、面状開閉部14cに対応する領域のみを厚み0.1〔mm〕の市販のシリコーンシートで被覆し、RIE装置RIE−10NRを用いて、酸素プラズマ処理を施した。上部シート21の酸素プラズマ処理を施した面と、下部シート22の酸素プラズマ処理を施した面とを貼り合わせ、75〔℃〕環境下で加熱し、上部シート21と下部シート22とを接合した。
酸素プラズマ処理が施されたインプラント用シリコーンMED−6015の表面は、互いに強固に接合し、永久に剥がれることがない。ただし、シリコーンシートで被覆され、酸素プラズマ処理が施されていない面状開閉部14cに対応する領域は、接合してはいるが、外力によって剥がれる構造となっている。
上部シート21の上面に対して、RIE装置RIE−10NRを用いて、酸素プラズマ処理を施した。同様に、上流側圧力印可ポート17a及び下流側圧力印可ポート17bの片面に対しても、RIE装置RIE−10NRを用いて、酸素プラズマ処理を施した。上部シート21の上流側流路12aの一端に設けられた直径2〔mm〕の上流側貫通孔と、上流側圧力印可ポート17aに設けられた直径2〔mm〕の貫通孔とが連通するように、上流側圧力印可ポート17aを上部シート21の上面に貼り合わせて、上流側圧力印可ポート17aを配設した。同様に、上部シート21の下流側流路12bの一端に設けられた直径2〔mm〕の下流側貫通孔と、下流側圧力印可ポート17bに設けられた直径2〔mm〕の貫通孔とが連通するように、下流側圧力印可ポート17bを上部シート21の上面に貼り合わせて、下流側圧力印可ポート17bを配設した。75〔℃〕環境下で加熱し、上部シート21と上流側圧力印可ポート17a及び下流側圧力印可ポート17bとを完全に接合した。
最後に、外形状の成形を行った。本体11が幅10〔mm〕、長さ60〔mm〕、厚さ0.4〔mm〕となるように、接合された上部シート21及び下部シート22の外周の不要な部分をナイフで切り落とし、図14に示されるような第1実験例を得た。
同様にして、第2実験例及び第3実験例を作製した。図15に示されるように、第2実験例は2本の漏出流路16を有している。また、図16に示されるように、第3実験例は3本の漏出流路16を有している。
次に、前記漏出流路16が眼圧調整機能に与える影響を評価する評価試験について説明する。
図17は本実施の形態における漏出流路が眼圧調整機能に与える影響の評価試験系を示す図である。
発明者は、漏出流路16が眼圧調整機能に与える影響を評価するために、図14〜16に示されるような房水排出装置10の第1〜第3実験例を用いて、眼圧調整機構14の面状開閉部14cが開く眼圧の閾値を測定した。図17に示されるように、房水排出装置10の第1〜第3実験例は圧力印可測定用治具38に取り付けられ、上流側圧力印可ポート17aは、チューブを介して、図11に示される評価試験系における圧力印可装置43と同様の圧力印可装置43に接続される。
また、上流側圧力印可ポート17a及び下流側圧力印可ポート17bには、上流側圧力測定装置46a及び下流側圧力測定装置46bがそれぞれ接続される。これにより、上流側圧力印可ポート17a及び下流側圧力印可ポート17bにおける圧力を測定することができる。なお、前記上流側圧力測定装置46a及び下流側圧力測定装置46bとしては、光ファイバ型圧力センサ(OPP−M250 Opsens Inc.)が使用された。また、前記上流側圧力測定装置46a及び下流側圧力測定装置46bはコンピュータ47に接続され、上流側圧力印可ポート17a及び下流側圧力印可ポート17bにおける圧力の値はコンピュータ47によって記録される。上流側圧力測定装置46aで測定される圧力と、下流側圧力測定装置46bで測定される圧力との差を、房水排出装置10に負荷される圧力とした。また、下流側圧力印可ポート17bの下流側には、コンピュータ47に接続された流量測定装置48が配置され、房水排出装置10から排出される水の流量を測定することができる。前記流量測定装置48としては、LG−480(Sensirior Inc.)が使用された。流量測定装置48で測定される流量が急激に増大したときに、眼圧調整機構14の面状開閉部14cが開いた、と判断した。
評価試験においては、まず、房水排出装置10の第1実験例の面状開閉部14cが開く圧力の値を測定した。シリンジポンプ45によって水を送液し、水柱管44の水面を徐々に上昇させ、圧力印可装置43が発生する圧力を徐々に上昇させた。房水排出装置10に負荷される圧力が4.40±1.12〔kPa〕(33.0±8.4〔mmHg〕)に到達したとき、眼圧調整機構14の面状開閉部14cが開いた。
次に、房水排出装置10の第2実験例の面状開閉部14cが開く圧力の値を測定した。第1実験例の場合と同様にして圧力印可装置43が発生する圧力を徐々に上昇させると、房水排出装置10に負荷される圧力が4.20±0.89〔kPa〕(31.5±6.7〔mmHg〕)に到達したとき、眼圧調整機構14の面状開閉部14cが開いた。
最後に、房水排出装置10の第3実験例の面状開閉部14cが開く圧力の値を測定した。第1及び第2実験例の場合と同様にして圧力印可装置43が発生する圧力を徐々に上昇させると、房水排出装置10に負荷される圧力が3.70±0.56〔kPa〕(27.8±4.2〔mmHg〕)に到達したとき、眼圧調整機構14の面状開閉部14cが開いた。
このように、房水排出装置10の第1〜第3実験例を用いた漏出流路16が眼圧調整機能に与える影響を評価する評価試験では、漏出流路16の本数が多いほど、眼圧調整機構14の面状開閉部14cが開く圧力の値が低くなることが確認された。すなわち、房水排出装置10においては、漏出流路16の本数を調整することによって、許容する最大眼圧値を調整可能なことが確認された。
次に、評価試験、特に、眼圧調整機能の評価試験に適した房水排出装置10の他の実験例について説明する。
図18は本実施の形態における房水排出装置の第4〜第7実験例の透視図、図19は本実施の形態における房水排出装置の第4〜第7実験例の眼圧調整機構周辺の拡大図である。
発明者は、フォトリソグラフィー技術、ソフトモールディング技術及び接合技術を用いて、評価試験、特に、眼圧調整機能の評価試験に適した房水排出装置10の更なる変形例として、第4実験例、第5実験例、第6実験例及び第7実験例を作製した。なお、該第4実験例、第5実験例、第6実験例及び第7実験例は、図14〜16に示される第1実験例、第2実験例及び第3実験例と同様の基本構造を備えているが、第1実験例、第2実験例及び第3実験例とは異なり、眼圧調整機構14は漏出流路16を含んでいない。そのため、第4実験例、第5実験例、第6実験例及び第7実験例では、眼圧調整機構14の面状開閉部14cが閉じていると、上流側流路12aから下流側流路12bに房水が流れないので房水は排出されず、眼圧が所定の閾値を超えて上昇したときに限り、眼圧調整機構14の面状開閉部14cが開いて房水が排出されて眼圧が降下する、という圧力調整機構になっている。
また、第4実験例、第5実験例、第6実験例及び第7実験例では、図9に示される実例と同様に、面状開閉部14cにトリフルオロメタンが塗布されているが、第4実験例、第5実験例、第6実験例及び第7実験例のそれぞれにおいて、面状開閉部14cに塗布されるトリフルオロメタンの厚さがそれぞれ異なっている。
まず、上部シート21の作製を行った。フォトリソグラフィー法によって、フォトレジストKMPR 1035を用いて、2.5インチ×2.5インチサイズのガラス基板上に上流側流路12a及び下流側流路12bの反転型となる流路反転型凸構造を成形し、ガラス基板及び該ガラス基板上に成形した流路反転型凸構造の表面に、離型処理(トリフルオロメタン塗布)を施した。
PDMSの一種であるインプラント用シリコーンMED−6015のA液とB液とをそれぞれ10グラムずつ計量し、計量したA液とB液とを混合器で混合し、真空デシケータを用いて脱泡処理を行った。流路反転型凸構造が成形されたガラス基板を専用金型に取り付け、専用金型の注ぎ口より、脱泡されたMED−6015混合液を注入し、75〔℃〕環境下で90分間加熱し、硬化させた。
インプラント用シリコーンMED−6015が硬化した後、専用金型を分解し、流路反転型凸構造が成形されたガラス基板から硬化したインプラント用シリコーンMED−6015のシートを剥がし、上流側流路12aの一端及び下流側流路12bの一端に直径2〔mm〕の貫通孔をそれぞれ設け、上流側流路12a及び下流側流路12bとなる溝構造が加工された上部シート21を得た。
次に、下部シート22の作製を行った。上部シート21を作製したときと同様に、インプラント用シリコーンMED−6015のA液とB液とをそれぞれ10グラムずつ計量し、計量したA液とB液とを混合器で混合し、真空デシケータを用いて脱泡処理を行った。膜変位空間としての凹入部24となる凸構造を有する専用金型を組み立てて、専用金型の注ぎ口より、脱泡されたMED−6015混合液を注入し、75〔℃〕環境下で90分間加熱し、硬化させた。
インプラント用シリコーンMED−6015が硬化した後、専用金型を分解し、専用金型から硬化したインプラント用シリコーンMED−6015のシートを剥がし、片側に凹入部24を有する平らな下部シート22を得た。
次に、上流側圧力印可ポート17a及び下流側圧力印可ポート17bの作製を行った。インプラント用シリコーンMED−6015のA液とB液とをそれぞれ10グラムずつ計量し、計量したA液とB液とを混合器で混合し、真空デシケータを用いて脱泡処理を行った。脱泡されたMED−6015混合液を、プラスチックシャーレに注ぎ込み、75〔℃〕環境下で90分間加熱し、硬化させた。
インプラント用シリコーンMED−6015が硬化した後、プラスチックシャーレから硬化した板状MED−6015を剥がし、幅10〔mm〕、長さ10〔mm〕、厚さ4〔mm〕の直方体ブロック2個をナイフで切り出し、各直方体ブロックの中央に直径2〔mm〕の貫通孔を設け、上流側圧力印可ポート17a及び下流側圧力印可ポート17bを得た。
次に、上部シート21と下部シート22との接合、並びに、上部シート21と上流側圧力印可ポート17a及び下流側圧力印可ポート17bとの接合を行った。
まず、第4実験例の場合について説明する。この場合、上部シート21の、上流側流路12a及び下流側流路12bとなる溝構造が加工された面に対して、面状開閉部14cに対応する領域のみを厚さ0.1〔mm〕の市販のシリコーンシートで被覆し、RIE装置RIE−10NRを用いて、酸素プラズマ処理を施した。同様に、下部シート22の凹入部24の凹みがある面の反対側の面に対しても、面状開閉部14cに対応する領域のみを厚さ0.1〔mm〕の市販のシリコーンシートで被覆し、RIE装置RIE−10NRを用いて、酸素プラズマ処理を施した。上部シート21の酸素プラズマ処理を施した面と、下部シート22の酸素プラズマ処理を施した面とを貼り合わせ、75〔℃〕環境下で加熱し、上部シート21と下部シート22とを接合した。これにより、面状開閉部14cにトリフルオロメタンが塗布されていない、すなわち、面状開閉部14cに塗布されたトリフルオロメタンの厚さが0である第4実験例を得ることができる。
次に、第5実験例、第6実験例及び第7実験例の場合について説明する。この場合、上部シート21の、上流側流路12a及び下流側流路12bとなる溝構造が加工された面に対して、面状開閉部14cに対応する領域のみ曝露するように、厚さ0.1〔mm〕の市販のシリコーンシートで被覆し、RIE装置RIE−10NRを用いて、トリフルオロメタンプラズマ処理を実施し、上部シート21の面状開閉部14cに対応する領域のみにトリフルオロメタンを塗布した。なお、トリフルオロメタンプラズマ処理時間を、第5実験例の場合は20秒間、第6実験例の場合は30秒間、第7実験例の場合は40秒間とした。その結果、面状開閉部14cに塗布されたトリフルオロメタンの厚さは、第7実験例の場合が最も厚く、第5実験例の場合が最も薄く、第6実験例の場合は中間となった。トリフルオロメタンの塗布後に、被覆に用いたシリコーンシートを上部シート21から取り除いた。上部シート21の、上流側流路12a及び下流側流路12bとなる溝構造が加工された面に対して、RIE装置RIE−10NRを用いて、酸素プラズマ処理を施した。同様に、下部シート22の凹入部24の凹みがある面の反対側の面に対しても、RIE装置RIE−10NRを用いて、酸素プラズマ処理を施した。上部シート21の酸素プラズマ処理を施した面と、下部シート22の酸素プラズマ処理を施した面とを貼り合わせ、75〔℃〕環境下で加熱し、上部シート21と下部シート22とを接合した。これにより、面状開閉部14cに塗布されたトリフルオロメタンの厚さがそれぞれ異なる第5実験例、第6実験例及び第7実験例を得ることができる。
酸素プラズマ処理が施されたインプラント用シリコーンMED−6015の表面は、互いに強固に接合し、永久に剥がれることがない。ただし、シリコーンシートで被覆されていて酸素プラズマ処理が施されていない、又は、トリフルオロメタンプラズマ処理が施された、面状開閉部14cに対応する領域は、接合してはいるが、外力によって剥がれる構造となっている。
上部シート21の上面に対して、RIE装置RIE−10NRを用いて、酸素プラズマ処理を施した。同様に、上流側圧力印可ポート17a及び下流側圧力印可ポート17bの片面に対しても、RIE装置RIE−10NRを用いて、酸素プラズマ処理を施した。上部シート21の上流側流路12aの一端に設けられた直径2〔mm〕の上流側貫通孔と、上流側圧力印可ポート17aに設けられた直径2〔mm〕の貫通孔とが連通するように、上流側圧力印可ポート17aを上部シート21の上面に貼り合わせて、上流側圧力印可ポート17aを配設した。同様に、上部シート21の下流側流路12bの一端に設けられた直径2〔mm〕の下流側貫通孔と、下流側圧力印可ポート17bに設けられた直径2〔mm〕の貫通孔とが連通するように、下流側圧力印可ポート17bを上部シート21の上面に貼り合わせて、下流側圧力印可ポート17bを配設した。75〔℃〕環境下で加熱し、上部シート21と上流側圧力印可ポート17a及び下流側圧力印可ポート17bとを完全に接合した。
最後に、外形状の成形を行った。本体11が幅10〔mm〕、長さ60〔mm〕、厚さ0.4〔mm〕となるように、接合された上部シート21及び下部シート22の外周の不要な部分をナイフで切り落とし、図18及び19に示されるような第4実験例、第5実験例、第6実験例及び第7実験例を得た。
次に、眼圧調整機構14の面状開閉部14cの表面処理が眼圧調整機能に与える影響を評価する評価試験について説明する。
発明者は、眼圧調整機構14の面状開閉部14cにトリフルオロメタンを塗布する表面処理が眼圧調整機能に与える影響を評価するために、図18及び19に示されるような房水排出装置10の第4〜第7実験例を用いて、眼圧調整機構14の面状開閉部14cが開く眼圧の閾値を測定した。なお、評価試験系の構成は、図17に示されるものと同様である。
房水排出装置10の第4〜第7実験例は圧力印可測定用治具38に取り付けられ、上流側圧力印可ポート17aは、チューブを介して、圧力印可装置43に接続される。
上流側圧力印可ポート17a及び下流側圧力印可ポート17bには、上流側圧力測定装置46a及び下流側圧力測定装置46bがそれぞれ接続される。これにより、上流側圧力印可ポート17a及び下流側圧力印可ポート17bにおける圧力を測定することができる。なお、前記上流側圧力測定装置46a及び下流側圧力測定装置46bとしては、光ファイバ型圧力センサが使用された。また、前記上流側圧力測定装置46a及び下流側圧力測定装置46bはコンピュータ47に接続され、上流側圧力印可ポート17a及び下流側圧力印可ポート17bにおける圧力の値はコンピュータ47によって記録される。上流側圧力測定装置46aで測定される圧力と、下流側圧力測定装置46bで測定される圧力との差を、房水排出装置10に負荷される圧力とした。また、下流側圧力印可ポート17bの下流側には、コンピュータ47に接続された流量測定装置48が配置され、房水排出装置10から排出される水の流量を測定することができる。前記流量測定装置48としては、LG−480が使用された。流量測定装置48で測定される流量が急激に増大したときに、眼圧調整機構14の面状開閉部14cが開いた、と判断した。
評価試験においては、まず、房水排出装置10の第4実験例の面状開閉部14cが開く圧力の値を測定した。シリンジポンプ45によって水を送液し、水柱管44の水面を徐々に上昇させ、圧力印可装置43が発生する圧力を徐々に上昇させた。房水排出装置10に負荷される圧力が5.55±0.34〔kPa〕に到達したとき、眼圧調整機構14の面状開閉部14cが開いた。
次に、房水排出装置10の第5実験例の面状開閉部14cが開く圧力の値を測定した。第4実験例の場合と同様にして圧力印可装置43が発生する圧力を徐々に上昇させると、房水排出装置10に負荷される圧力が3.19±0.55〔kPa〕(23.9±4.1〔mmHg〕)に到達したとき、眼圧調整機構14の面状開閉部14cが開いた。
次に、房水排出装置10の第6実験例の面状開閉部14cが開く圧力の値を測定した。第4及び第5実験例の場合と同様にして圧力印可装置43が発生する圧力を徐々に上昇させると、房水排出装置10に負荷される圧力が1.38±1.18〔kPa〕(10.4±8.9〔mmHg〕)に到達したとき、眼圧調整機構14の面状開閉部14cが開いた。
最後に、房水排出装置10の第7実験例の面状開閉部14cが開く圧力の値を測定した。第4〜第6実験例の場合と同様にして圧力印可装置43が発生する圧力を徐々に上昇させると、房水排出装置10に負荷される圧力が1.35±0.55〔kPa〕(10.1±4.1〔mmHg〕)に到達したとき、眼圧調整機構14の面状開閉部14cが開いた。
このように、房水排出装置10の第4〜第7実験例を用いた眼圧調整機構14の面状開閉部14cの表面処理が眼圧調整機能に与える影響を評価する評価試験では、面状開閉部14cにトリフルオロメタンを塗布することによって、面状開閉部14cにおける上流側流路12aと下流側流路12bとの接合力が低下し、面状開閉部14cが開く圧力の値が低下することが確認された。また、面状開閉部14cに塗布されるトリフルオロメタンの厚さを調整することによって、面状開閉部14cにおける上流側流路12aと下流側流路12bとの接合力を調整し、面状開閉部14cが開く圧力の値を調整することができることが確認された。すなわち、房水排出装置10において、面状開閉部14cの表面処理を調整することによって、許容する最大眼圧値を調整可能であることが確認された。
このように、本実施の形態においては、房水排出装置10のすべての構成部材がシリコーン等の柔軟な素材で作製され、薄いシート形状になっているため、患者への埋め込み手術後、結膜上への本体11の露出を抑えることができ、結膜を破って本体11が飛び出すリスクを抑制することができ、感染症を防ぐことができ、術後の審美性を損ねることもなくなるため、患者への負担を軽減することができる。
また、房水排出装置10のすべての構成部材がシリコーン等の柔軟な素材で作製され、薄いシート形状になっているため、埋め込み手術のときに球後領域まで本体11の後端開口部15bを挿入することが可能になり、球後の生体組織を房水の排出及び吸収のための領域として利用することができる。
さらに、房水排出装置10においては、複数の流路12で房水を排出することが可能になるため、房水排出装置10周囲の線維瘢痕化や細胞の付着や凝固によって流路12が詰まって、房水排出機能を喪失するリスクを低減することができる。
さらに、房水排出装置10は、漏出流路16を内蔵するため、正常眼圧範囲においても恒常的に房水を排出することができ、埋め込み手術後、眼圧の上下変動を抑えることができ、より健常状態に近い圧力調整が可能になる。
さらに、房水排出装置10は、膜バルブ方式の眼圧調整機構として、眼圧調整機構14を内蔵するため、眼圧が所定の閾値を超えて上昇したとき、眼圧を降下させることができる。
さらに、房水排出装置10においては、漏出流路16の幅、高さ、長さ及び数を調整することで、正常眼圧範囲における房水の排出量を設計することができる。また、漏出流路16の幅、高さ、長さ及び数を調整したり、面状開閉部14cをトリフルオロメタン等のフッ素系化合物やMPCポリマー等の高分子で被膜したりすることで、面状開閉部14cの接合力を調整し、面状開閉部14cが開く眼圧閾値を調整することができる。したがって、正常眼圧範囲における房水の流出量及び調整したい眼圧閾値を、患者の眼圧状態に合わせて設計することができ、より患者や症例に則した房水排出装置10を提供することができる。
本実施の形態における開示は、緑内障治療に適用することができる。緑内障治療において、薬剤治療やレーザ治療を実施しても眼圧が下降しない難治例では、房水排水装置を結膜下、強膜上に埋め込んで人工的に房水を排出し、圧力を下げるインプラント手術が行われている。日本でも2種類の房水排水装置が認可され、2012年からは保険適用にもなったことからも、人工的に房水を排出する装置の利用は、今後更に増えると予想されている。
しかしながら、日本で認可されている従来の房水排出装置はいずれも、装置本体が大きく、厚く、硬いため、結膜上へデバイスが露出し、審美性を損ねたり、感染症にかかったりするリスクが高く、また、排水経路が1つしかないため、房水排出機能そのものを喪失する可能性がある、といった課題を抱える。さらに、眼圧調整機能がないため、眼圧を下げるだけで眼圧の調整機能が不十分である。本開示は、従来の房水排出装置が抱える前述の問題を解決することができるため、従来の装置に置き換わる新しい房水排出装置となりうる。
なお、本明細書の開示は、好適で例示的な実施の形態に関する特徴を述べたものである。ここに添付された特許請求の範囲内及びその趣旨内における種々の他の実施の形態、修正及び変形は、当業者であれば、本明細書の開示を総覧することにより、当然に考え付くことである。
本開示は、房水排出装置に適用することができる。
10 房水排出装置
11 本体
11a 前端部
11b 後端部
12a 上流側流路
12b 下流側流路
14 眼圧調整機構
14a 上側弁部材
14b 下側弁部材
14c 面状開閉部
16 漏出流路
21 上部シート
22 下部シート
31 眼球
32 前房

Claims (14)

  1. 薄膜状の本体と、
    該本体内に形成された上流側流路及び下流側流路と、
    前記上流側流路と下流側流路との間に配設された眼圧調整機構とを備え、
    該眼圧調整機構は、前記上流側流路と下流側流路との間の圧力差が正常眼圧範囲にあっても、正常房水排出量の房水が流れる漏出流路を含むことを特徴とする房水排出装置。
  2. 前記眼圧調整機構は、前記漏出流路の周囲に形成された面状開閉部を含み、該面状開閉部は、前記上流側流路と下流側流路との間の圧力差が所定の閾値を超えると開いて、前記上流側流路と下流側流路との間を連通する請求項1に記載の房水排出装置。
  3. 前記本体は、互いに接合された上部シート及び下部シートを含む請求項1又は2に記載の房水排出装置。
  4. 前記上部シート及び下部シートは、PDMS等のシリコーン素材又はその他の柔軟素材から成る請求項3に記載の房水排出装置。
  5. 前記上流側流路、下流側流路及び漏出流路は、前記上部シート又は下部シートの一方の接合面に形成された溝と、他方の接合面との間に形成された流路である請求項3又は4に記載の房水排出装置。
  6. 前記下流側流路は複数である請求項1〜5のいずれか1項に記載の房水排出装置。
  7. 前記本体の厚さは0.1〜1〔mm〕であり、前記上流側流路及び下流側流路の幅及び高さは0.05〜2〔mm〕及び0.01〜0.5〔mm〕である請求項1〜6のいずれか1項に記載の房水排出装置。
  8. 前記上流側流路は本体の前端部に開口し、前記下流側流路は本体の後端部に開口し、前記前端部は眼球の前房内に挿入され、該前房内の房水は眼球外の前記後端部から排出される請求項1〜7のいずれか1項に記載の房水排出装置。
  9. 前記漏出流路の幅及び高さは、ともに、0.002〜0.05〔mm〕であり、前記漏出流路の長さは0.1〜2〔mm〕である請求項1〜8のいずれか1項に記載の房水排出装置。
  10. 前記漏出流路は複数である請求項1〜9のいずれか1項に記載の房水排出装置。
  11. 前記眼圧調整機構は、前記上流側流路と下流側流路とを分離する上側弁部材及び下側弁部材を含み、
    前記面状開閉部は、前記上側弁部材の下面と下側弁部材の上面とが離間可能に接合する部分である請求項2に記載の房水排出装置。
  12. 前記所定の閾値は、前記漏出流路の幅、長さ及び数を調整することによって調整可能である請求項2に記載の房水排出装置。
  13. 前記所定の閾値は、前記上側弁部材又は下側弁部材の厚さを調整することによって調整可能である請求項11に記載の房水排出装置。
  14. 前記所定の閾値は、前記面状開閉部にフッ素系化合物又は高分子を塗布することによって調整可能である請求項11に記載の房水排出装置。
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