JP2018146311A - 粉体用動的粘弾性測定装置、及び粉体用動的粘弾性測定方法 - Google Patents

粉体用動的粘弾性測定装置、及び粉体用動的粘弾性測定方法 Download PDF

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巧巳 草野
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昌彦 石井
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Abstract

【課題】非流動性の粉体組成物の動的粘弾性を測定することが可能な粉体用動的粘弾性測定装置及びその測定方法を提供すること。【解決手段】粉体用動的粘弾性測定装置10は、可動側平板プレート22と固定側平板プレート24との間に粉体組成物12を充填するための回転セル20と、粉体組成物12をz軸方向に加圧するための加圧手段30と、可動側平板プレート22のθ方向に振動ひずみを加えるための入力手段40と、固定側平板プレート24に伝達されるθ方向の応力を検出するための出力手段50とを備えている。可動側平板プレート22及び固定側平板プレート24は、それぞれ、粉体組成物12に含まれる粉体との接触面に、粉体のすべりを抑制するための凹凸を備えている。このような装置10を用いると、振動ひずみとθ方向の応力から、粉体組成物12の貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”を算出することができる。【選択図】図1

Description

本発明は、粉体用動的粘弾性測定装置、及び粉体用動的粘弾性測定方法に関し、さらに詳しくは、乾燥粉体や固形分体積分率が50%以上である湿潤粉体などの非流動性の粉体組成物の動的粘弾性を測定することが可能な粉体用動的粘弾性測定装置、及びこれを用いた粉体用動的粘弾性測定方法に関する。
材料の粘弾性は、製品設計、プロセス設計を考える上で重要であり、その物性を定量的に評価することは、産業上も学術上も極めて重要なことである。材料の動的粘弾性を知る方法としては、レオメーターを用いて貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”の角周波数依存性を測定する手法が良く知られている(例えば、特許文献1参照)。レオメータを用いた手法は、電池ペーストなどの溶液、スラリー系では良く用いられる手法である。しかし、この測定法が適用される物質は、一般的に固形分体積分率50%未満の液状の物質に限られ、粉体に対して適用された例はない。
一方、粉体の物性を定量的に評価するための種々の方法も提案されている。例えば、非特許文献1〜3には、粉体のせん断試験法として、ジェニケセル法や回転セル法が開示されている。これらの方法は、いずれも粉体の圧密度とせん断面を制御するために、予圧密と予備せん断を加えた後にせん断試験を行う方法である。しかし、いずれも粉体をせん断破壊する際の応力を観測する手法であって、振動ひずみではなく一定方向のひずみを加える手法であるため、弾性項と粘性項を切り分けて測定することはできない。その結果、粉体の摩擦角や付着力などの静的な物性を評価することはできるが、粉体の粘弾性を評価することはできない。
また、特許文献2、3には、粉体に対する静的粘弾性を測定するための装置であって、圧縮応力を加えた際の応力緩和率を測定する装置が開示されている。しかし、この装置は、一定の圧縮応力を加えた際の応答を見る静的粘弾性測定装置であり、振動ひずみに対する応答(位相ずれ)を観測する動的粘弾性測定装置ではない。すなわち、応力緩和等の圧縮に対する粉体のバルクとしての粘弾性を評価する手法であり、せん断場での粉体層のせん断崩壊に起因する粘弾性を求めることができない。
さらに、特許文献4には、粉体の粘弾性を測定する方法ではないが、ゴムの動的粘弾性測定を行う際に、ゴムとプレートの間でのすべりを抑制するために、プレートにmm単位の溝を施す方法が開示されている。しかし、この手法は、ゴムのすべりを抑制するためにmm単位の溝を付ける手法であり、数十μmの粒子からなる粉体には有効ではない。
特開2012−064542号公報 特開2007−333448号公報 特開2008−157704号公報 特開平07−146229号公報
日本粉体工業技術協力規格 SAP 15−13:2013 株式会社ナノシーズ、粉体層せん断試験装置カタログ A. W. Jenike, J. Appl. Mechanics, vol. 26, Trans. ASME, vol. 81, Series E, 1959, pp. 599-602
本発明が解決しようとする課題は、乾燥粉体や固形分体積分率が50%以上である湿潤粉体などの非流動性の粉体組成物の動的粘弾性を測定することが可能な粉体用動的粘弾性測定装置を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、このような粉体用動的粘弾性測定装置を用いた粉体用動的粘弾性測定方法を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る粉体用動的粘弾性測定装置は、以下の構成を備えていることを要旨とする。
(1)前記粉体用動的粘弾性測定装置は、
平行に配置された可動側平板プレートと固定側平板プレートとの間に非流動性の粉体組成物を充填するための回転セルと、
前記可動側平板プレートと前記固定側平板プレートとの間に充填された前記粉体組成物をz軸方向に加圧するための加圧手段と、
前記可動側平板プレートのθ方向に振動ひずみを加えるための入力手段と、
前記可動側平板プレートから前記固定側平板プレートに伝達されるθ方向の応力を検出するための出力手段と、
前記加圧手段、前記入力手段、及び前記出力手段の動作を制御するための制御手段と
を備えている。
(2)前記可動側平板プレート及び前記固定側平板プレートは、それぞれ、前記粉体組成物に含まれる粉体との接触面に、前記粉体のすべりを抑制するための凹凸を備えている。
(3)前記制御手段は、前記振動ひずみと前記θ方向の応力から、前記粉体組成物の貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”を算出する弾性率演算手段を備えている。
本発明に係る粉体用動的粘弾性測定方法は、本発明に係る粉体用動的粘弾性測定装置を用いて、非流動性の粉体組成物の動的粘弾性を測定することを要旨とする。
平行に配置された一対の平板プレートの間に粉体組成物を挟み込み、可動側の平板プレートに振動ひずみを加える場合において、表面に凹凸のない平板プレートを用いた時には、平板プレートとの接触面上にある粉体がすべる。一方、平板プレートの接触面に高さがmm単位の突起を設けた時には、突起の間にある粉体は平板プレートに追従して動かない。そのため、これらの方法では、いずれも振動ひずみに対する応答(位相ずれ)を正確に観測することができない。
これに対し、平板プレートの接触面上に粉体の平均一次粒子径とほぼ同程度の凹凸を形成すると、可動側の平板プレートに振動ひずみを加えた時に、粉体が接触面上ですべることがなく、かつ、粉体は平板プレートに追従して動く。その結果、振動ひずみに対する応答(位相ずれ)を正確に観測することができる。
本発明に係る粉体用動的粘弾性測定装置の模式図である。 動的粘弾性測定における応力と、材料のひずみの関係を示す図である。 貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”,及び位相差δの関係を示す図である。 粉体層せん断試験(回転セル法)における入力(ひずみ)と出力(応力)の関係を示す模式図である。 粉体層せん断試験(下部セル直動法)における入力(ひずみ)と出力(応力)の関係を示す模式図である。
凹凸加工を行った平板プレート(RzJIS=20μm)を用いた時の、粉体組成物(平均1次粒子径:16μm、固形分体積分率:55%)の粘弾性の測定結果である。 凹凸加工を行わなかった平板プレート(RzJIS=1.3μm)を用いた時の、粉体組成物(平均1次粒子径:16μm、固形分体積分率:55%)の粘弾性の測定結果である。 凹凸加工を行った平板プレート(RzJIS=47μm)を用いた時の、粉体組成物(平均1次粒子径:16μm、固形分体積分率:55%)の粘弾性の測定結果である。
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 粉体用動的粘弾性測定装置]
図1に、本発明に係る粉体用動的粘弾性測定装置の模式図を示す。
図1において、粉体用動的粘弾性測定装置10は、
平行に配置された可動側平板プレート22と固定側平板プレート24との間に非流動性の粉体組成物12を充填するための回転セル20と、
可動側平板プレート22と固定側平板プレート24との間に充填された粉体組成物12をz軸方向に加圧するための加圧手段30と、
可動側平板プレート22のθ方向に振動ひずみを加えるための入力手段40と、
可動側平板プレート22から固定側平板プレート24に伝達されるθ方向の応力を検出するための出力手段50と、
加圧手段30、入力手段40、及び出力手段50の動作を制御するための制御手段(図示せず)と
を備えている。
[1.1. 粉体組成物]
本発明に係る粉体用動的粘弾性測定装置10は、非流動性の粉体組成物12の動的粘弾性を測定するために用いられる。
ここで、「非流動性の粉体組成物」とは、粉体を含み、かつ、静止状態において流体としての性質を持たない組成物をいう。従って、電池ペーストのような溶液やスラリーは、本発明にいう「非流動性の粉体組成物」には含まれない。
非流動性の粉体組成物12としては、例えば、
(a)乾燥粉体、
(b)少なくとも粉体と液体(分散媒など)とを含み、固形分体積分率(粉体組成物に含まれる固形分の体積の割合)が50%以上100%未満の湿潤粉体
などがある。
湿潤粉体は、さらに添加剤を含んでいるもの(すなわち、粉体/液体/添加剤混合系)でも良い。「添加剤」とは、増粘剤、結着剤などの粉体粒子以外の固体成分をいう。添加剤は、粉体若しくは分散溶媒として加えられ、その固体成分が粉体粒子に付着して機能を発現させるため、固体成分は粉体の一部とみなせる。但し、添加剤分散液の溶媒成分は、液体とみなす。
固形分体積分率が50%以上になると、著しく流動性が低くなるため、通常の動的粘弾性測定を行うことが困難となる。しかし、本発明では、粉体の一次粒子と可動側平板プレート22及び固定側平板プレート24とが噛み合うことにより、固形分体積分率が50%以上の粉体組成物12の粘弾性を求めることが可能となる。
逆に、固形分体積分率が50%未満では、スラリー状となり、平板プレートと一次粒子が噛み合わないために、粘弾性測定には適さない。
本発明において、粉体の組成は、特に限定されない。粉体としては、例えば、カーボン、金属粉末、鉱石粉末、高分子ビーズ、デンプン顆粒などがある。
また、粉体の粒径も特に限定されない。本発明は、特に、平均一次粒子径が1〜100μmである粉体の粘弾性測定に好適である。
[1.2. 回転セル]
[1.2.1. 平板プレート]
回転セル20は、可動側平板プレート22と、固定側平板プレート24とを備えている。可動側平板プレート22及び固定側平板プレート24は、対向する平面が平行になるように配置されている。これは、粉体組成物12の圧密度を測定するためである。粉体組成物12は、可動側平板プレート22と固定側平板プレート24との間に充填される。
ここで、「可動側平板プレート22」とは、平行に配置された一対の平板プレートの内、入力側(すなわち、粘弾性の測定時にθ方向に回転させ、粉体組成物12に振動ひずみを与える側)の平板プレートをいう。
「固定側平板プレート24」とは、平行に配置された一対の平板プレートの内、出力側(すなわち、粘弾性測定時にθ方向に回転させることなく、粉体組成物12から伝達されるθ方向の応力を検出する側)の平板プレートをいう。
粘弾性の測定は、平行に配置された可動側平板プレート22と固定側平板プレート24との間に粉体組成物12を充填し、粉体組成物12をz軸方向に加圧しながら、可動側平板プレート24をθ方向に回転させることにより行われる。回転セル20の構造は、このような測定が可能なものである限りにおいて、特に限定されない。また、一対の平板プレートを上下に配置する場合、いずれを可動側としても良い。
ここで、「z軸方向」とは、平板プレートの表面に対して垂直方向をいう。「θ方向」とは、z軸を回転軸とする回転方向をいう。
図1に示す例において、回転セル20は、下方に配置された可動側平板プレート22と、上方に配置された固定側平板プレート24とを備えている。
可動側平板プレート22は、プレート(A)22aと、プレート(A)22aの上面に設けられた円筒状の飛散防止壁22bと、プレート(A)22aの下面に設けられた回転軸22cとを備えている。飛散防止壁22bは、その内部空間に粉体組成物12を充填するためのものであると同時に、粘弾性測定時に粉体組成物12の飛散を防止するためのものである。可動側平板プレート22は、回転軸22cを中心に回転可能になっている。
固定側平板プレート24は、は、円板状のプレート(B)24aと、プレート(B)24aの上面に設けられた固定軸24bとを備えている。プレート(B)24aの外径は、飛散防止壁22aの内径より小さくなっている。粘弾性測定時には、プレート(B)24aは、飛散防止壁22aの中に挿入される。固定側平板プレート24の固定軸24bは、回転しないように固定されている。そのため、可動側平板プレート22が粉体組成物12に印加した動トルクに対する、粉体組成物12からの応力を固定軸24bで検出することができる。
可動側平板プレート22及び固定側平板プレート24の各部の寸法は、目的に応じて最適な値を選択することができる。
例えば、飛散防止壁22aの高さhが低すぎると、粉体粒子を均一に充填することができない。従って、hは、1mm以上が好ましい。
一方、hが高くなりすぎると、飛散防止壁22aの強度が低下する。従って、hは、5mm以下が好ましい。
また、可動側平板プレート22と固定側平板プレート24との間のギャップの大きさgが小さすぎると、粉体粒子を均一に充填することができない。従って、gは、1mm以上が好ましい。
一方、gが大きくなりすぎると、粉体厚みが飛散防止壁22aの高さよりも高くなり、測定が成立しなくなる。従って、gは、5mm以下が好ましい。
[1.2.2. 表面粗さRzJIS]
可動側平板プレート22及び固定側平板プレート24は、それぞれ、粉体組成物12に含まれる粉体との接触面に、粉体のすべりを抑制するための凹凸を備えている。この点が、従来とは異なる。凹凸の大きさや形状は、このようなプレート/粉体界面における粉体のすべりを抑制することが可能な限りにおいて、特に限定されない。
一般に、粉体の平均一次粒子径に対して凹凸が小さすぎると、プレート/粉体界面での粉体のすべりを抑制することができない。従って、可動側平板プレート22及び固定側平板プレート24の接触面の表面粗さRzJIS(JIS2001;十点平均粗さ)は、それぞれ、粉体の平均1次粒子径(dp)の50%以上が好ましい。接触面の表面粗さRzJISは、好ましくは、dpの70%以上、さらに好ましくは、dpの90%以上である。
一方、粉体の平均一次粒子径に対して凹凸が大きすぎると、粉体の一部が可動側平板プレート22の動きに追従しなくなり、粘弾性の測定精度が低下する。従って、接触面の表面粗さRzJISは、dpの150%以下が好ましい。接触面の表面粗さRzJISは、好ましくは、dpの130%以下、さらに好ましくは、dpの110%以下である。
接触面にμmオーダーの凹凸を形成する方法は、特に限定されない。このような方法としては、例えば、ショットブラスト、研磨加工、放電加工などがある。
[1.3. 加圧手段]
[1.3.1. 圧力の印加]
加圧手段30は、可動側平板プレート22と固定側平板プレート24との間に充填された粉体組成物12をz軸方向に加圧するためのものである。加圧手段30は、
(a)可動側平板プレート22のz軸方向の位置を固定し、固定側平板プレート24をz軸方向に移動させることが可能なもの、
(b)固定側平板プレート24のz軸方向の位置を固定し、可動側平板プレート22をz軸方向に移動させることが可能なもの、あるいは、
(c)可動側平板プレート22及び固定側平板プレート24の双方をz軸方向に移動させることが可能なもの、
のいずれであっても良い。
図1に示す例では、固定側平板プレート24がz軸方向に移動可能になっている。
[1.3.2. 変位の計測]
加圧手段30は、粉体組成物12に圧力を加えるための手段に加えて、可動側平板プレート22及び/又は固定側平板プレート24のz軸方向の変位を計測する変位計測手段(図示せず)をさらに備えていても良い。変位計測手段により計測された変位は、粉体組成物12の圧密度の算出及び管理に用いられる。この点については、後述する。
粉体組成物12の粘弾性は、粉体組成物12の圧密度に大きく依存する。そのため、圧密度を管理しながら位相遅れδを検出すると、粉体組成物12の粘弾性を正確に評価することが可能となる。
[1.4. 入力手段]
入力手段40は、可動側平板プレート22のθ方向に振動ひずみを加えるためのものである。入力手段40の構造は、このような機能を奏するものである限りにおいて、特に限定されない。
図1に示す例において、入力手段40は、モータ42と、変速機44とを備えている。モータ42の回転軸は、変速機44の一方の回転軸に接続されている。変速機44の他方の回転軸は、可動側平板プレート22の回転軸22cに接続されている。変速機44は、可動側平板プレート22に伝達する回転力の大きさ、及び回転方向を調節するためのものである。変速機44を用いることにより、例えば、可動側平板プレート22に正弦波振動ひずみを印加することができる。
[1.5. 出力手段]
出力手段50は、可動側平板プレート22から粉体組成物12を介して固定側平板プレート25に伝達されるθ方向の応力を検出するためのものである。出力手段50の構造は、このような機能を奏するものである限りにおいて、特に限定されない。
図1に示す例において、出力手段50は、トランスデューサ52を備えている。トランスデューサ52は、固定側平板プレート24の固定軸24bに接続されている。固定軸24bに伝達されたθ方向の応力は、トランスデューサ52により検出される。
[1.6. 制御手段]
制御手段(図示せず)は、加圧手段30、入力手段40、及び出力手段50の動作を制御するためのものである。
制御手段は、具体的には、
(a)粉体組成物12に加える垂直加重、及びz軸方向の変位の制御、
(b)可動側平板プレート22に印加される振動ひずみの振幅や周期の制御、
(c)固定側平板プレート24から検出されるθ方向の応力の検出
などを行う。
本発明において、制御手段は、さらに、可動側平板プレート22から粉体組成物12に印加される振動ひずみと、固定側平板プレート24の固定軸24bで検出されるθ方向の応力から、粉体組成物12の貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”を算出する弾性率演算手段を備えている。本発明は、入力側の振動ひずみと出力側のθ方向の応力を同時に測定しているので、G’及びG”を直接、求めることができる。
加圧手段30が固定側平板プレート22及び/又は可動側平板プレート24のz軸方向の変位を計測する変位計測手段をさらに備えている場合、制御手段は、粉体組成物12の重量とz軸方向の変位から、粉体組成物12の圧密度を算出する密度算出手段をさらに備えていても良い。粉体組成物12の粘弾性は、圧密度に大きく依存する。そのため、圧密度を制御しながら粉体組成物12に振動ひずみを加えると、動的粘弾性を正確に測定することが可能となる。
[2. 粉体用粘弾性測定方法]
図1に示す粉体用動的粘弾性測定装置10を用いた粉体の動的粘弾性の測定は、具体的には、以下のようにして行われる。まず、飛散防止壁22a内の空間に粉体組成物12を充填する。この時、粉体の飛散を防ぐために、粉体組成物12の予圧密を行うのが好ましい。次いで、飛散防止壁22aの内部に固定側平板プレート24を挿入し、上下の平板プレートで粉体組成物12を挟む。
次に、加圧手段30を用いて粉体組成物12を圧縮し、変位量を測定する。予め測定された粉体組成物12の重量と、変位量とを用いて、粉体組成物12の圧密度を算出する。この状態からモータ42を用いて回転軸22cに動トルク(回転)を与え、可動側平板プレート22により、粉体組成物12にひずみを与える。固定側プレート24に加わるθ方向の応力は、トランスデューサ52により検出される。
動的粘弾性測定は、一般に溶液に対して行われる測定方法である。一定ひずみや応力を与える静的粘弾性測定では、応力の遅延時間や緩和時間が求まる。しかし、これらのパラメータは粘性項と弾性項の比で決まるため、それぞれの値を求めることができない。一方、動的粘弾性測定では、加える応力とその際のひずみが周期的(正弦波)であり、応力とひずみの位相差δから溶液の粘性項と弾性項を求めることができる。
図2に、動的粘弾性測定における応力と、材料のひずみの関係を示す。弾性項の応力はひずみに対して同じ位相で変化するのに対し、粘性項の応力はひずみに対して応答が90°(4分の1波長分)ずれる。粘性体は、ひずみ速度が最大になる点で応力が最大となるためである。この関係から、弾性項の弾性率(貯蔵弾性率G’)と粘性項の弾性率(損失弾性率G”)をそれぞれ求めることができる。
図3に、貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”,及び位相差δの関係を示す。具体的には、図3に示すように、応力ピーク値とひずみピーク値の比を複素弾性率G*とする。斜辺をG*、斜辺と隣辺の挟角を位相差δとした直角三角形の隣辺及び対辺を、それぞれ、G’、G”として求める。
[3. 作用]
粉体の粘弾性測定に関し、粉体の静的粘弾性を測定するための装置は存在する(例えば、特許文献2、3参照)が、動的粘弾性を測定するための装置は知られていない。但し、せん断特性と検出する方法としては、回転セル法(例えば、パウダーレオメータFT4、Freemantechnology社)と、下部セル直動法(非特許文献2参照)等が一般に知られている(非特許文献1参照)。
図4に、粉体層せん断試験(回転セル法)における入力(ひずみ)と出力(応力)の関係を示す模式図を示す。回転セル法においては、日本粉体工業技術協会により規格が決められており、内径50mmの外部セルと外径48mmの回転セルを用い、回転セル下部には刃高3mmのブレードを付けることを規格としている。この手法は、外部セルに入れた粉体を回転セルにより予圧密を加え、300秒保持した後、荷重を除去する。次いで、予備せん断を行い、その後、せん断試験を行う。
この測定法では、圧縮応力を調節することにより、粉体の圧密度を制御することが可能である。しかし、一定方向のせん断しか加えていないため、入力(ひずみ)に対する出力(せん断応力)の位相遅れを検出することができない。そのため、弾性項と粘性項を切り分けて測定することができない。
一方、この回転セルを振動させると、位相遅れを観測することは可能であるが、溝の大きさが3mmと大きいために、振動測定ではブレード間の粉体がブレードに追従して動かない。そのため、「粉体−粉体間の粘弾性」の他に、「粉体−ブレード間の摩擦」と、「ブレード間の粉体の圧縮応力」が同時に測定されてしまい、それらを分離することはこの手法では困難と考えられる。
図5に、粉体層せん断試験(下部セル直動法)における入力(ひずみ)と出力(応力)の関係を示す模式図を示す。下部セル直動法においても、日本粉体工業技術協会により規格が決められている。すなわち、セル内径は3mm〜43mmであり、かつ上部固定セルと下部可動セルの隙間は0.2mmを標準としている(非特許文献1参照)。
この手法では、セルに入れた粉体へ予圧密を加え、300秒保持した後、荷重を除去する。次いで、予備せん断を行い、その後せん断試験を行う。回転セル法と同様に、圧縮応力を調節することにより、粉体の圧密度を制御することが可能である。しかし、常に一定のせん断応力を加えているため、入力(ひずみ)に対する出力(せん断応力)の位相遅れを検出することができない。また、横せん断をかけるこの装置の仕組みでは、粉体に周期的な応力を加えることは難しく、粉体の粘弾性を求めるには適した方法ではない。
これに対し、平行に配置された一対の平板プレートの間に粉体組成物を挟み込み、可動側の平板プレートに振動ひずみを加える場合において、平板プレートに適切な凹凸を形成すると、粉体の動的粘弾性を正確に測定することができる。
具体的には、平板プレートの接触面上に粉体の平均一次粒子径とほぼ同程度の凹凸を形成すると、可動側の平板プレートに振動ひずみを加えた時に、粉体が接触面上ですべることがなく、かつ、粉体は平板プレートに追従して動く。その結果、振動ひずみに対する応答(位相ずれ)を正確に観測することができる。
(実施例1〜2、比較例1)
[1. 試験方法]
図1に示す粉体用動的粘弾性測定装置10を用いて、粉体組成物12の動的粘弾性を測定した。粉体組成物12には、平均1次粒子径が16μmであり、固形分体積分率が55%である湿潤粉体を用いた。固定側平板プレート24の外径は25mm、可動側平板プレート22の飛散防止壁22bの内径は26mmとした。さらに、各平板プレートの表面粗さは、RzJIS=20μm(実施例1)、RzJIS=1.3μm(未加工)(比較例1)、又は、RzJIS=47μm(実施例2)とした。平板プレート表面の凹凸加工には、放電加工を用いた。
0.7gの粉体組成物12を可動側平板プレート22の飛散防止壁22b内に入れ、装置外で粉体組成物12に予圧密(圧縮応力:2kPa)を加えた。その後、可動側平板プレート22を装置に設置した。
次に、固定側プレート24をギャップgが1mmとなるように下降させ、粉体組成物12を圧縮した。この状態で、周波数62.8rad/sで可動側平板プレート22を振動させ、測定を行った。ひずみは、0.01%〜100%まで変化させた。
図6〜図8に、表面粗さの異なる平板プレートを用いた時の、粉体組成物(平均1次粒子径:16μm、固形分体積分率:55%)の粘弾性の測定結果を示す。
図6に示すように、RzJIS=20μmの平板プレートを用いた場合、G”が単調に減少しており、滑りは見られなかった。
一方、凹凸加工を行わなかった平板プレート(RzJIS=1.3μm)を用いた場合、図7に示す矢印の位置で滑りが発生し、損失弾性率G”の上昇が観測された。滑りが発生することで、流動性が増加していることが分かる。
さらに、RzJIS=47μmの平板プレートを用いた場合、図8に示す矢印の位置で滑りが発生した。その結果、粘弾性の測定精度が低下した。
以上の結果から、平板プレートの凹凸が平均1次粒子径±50%に収まっていれば、粉体/液体混合系の粘弾性を正確に測定できることがわかった。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る粉体用動的粘弾性測定装置は、触媒粒子、食品用粉末、医薬品用粉末、化粧品用粉末などの粉体を含む粉体組成物の動的粘弾性の測定に使用することができる。
10 粉体用動的粘弾性測定装置
12 粉体組成物
20 回転セル
22 可動側平板プレート
22b 飛散防止壁
24 固定側平板プレート
30 加圧手段
40 入力手段
50 出力手段

Claims (6)

  1. 以下の構成を備えた粉体用動的粘弾性測定装置。
    (1)前記粉体用動的粘弾性測定装置は、
    平行に配置された可動側平板プレートと固定側平板プレートとの間に非流動性の粉体組成物を充填するための回転セルと、
    前記可動側平板プレートと前記固定側平板プレートとの間に充填された前記粉体組成物をz軸方向に加圧するための加圧手段と、
    前記可動側平板プレートのθ方向に振動ひずみを加えるための入力手段と、
    前記可動側平板プレートから前記固定側平板プレートに伝達されるθ方向の応力を検出するための出力手段と、
    前記加圧手段、前記入力手段、及び前記出力手段の動作を制御するための制御手段と
    を備えている。
    (2)前記可動側平板プレート及び前記固定側平板プレートは、それぞれ、前記粉体組成物に含まれる粉体との接触面に、前記粉体のすべりを抑制するための凹凸を備えている。
    (3)前記制御手段は、前記振動ひずみと前記θ方向の応力から、前記粉体組成物の貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”を算出する弾性率演算手段を備えている。
  2. 前記可動側平板プレート及び前記固定側平板プレートの前記接触面の表面粗さRzJIS(JIS2001;十点平均粗さ)は、それぞれ、前記粉体の平均1次粒子径の50%以上150%以下である請求項1に記載の粉体用動的粘弾性測定装置。
  3. 前記加圧手段は、前記可動側平板プレート及び/又は前記固定側平板プレートのz軸方向の変位を計測する変位計測手段をさらに備え、
    前記制御手段は、前記粉体組成物の重量と前記z軸方向の変位から、前記粉体組成物の圧密度を算出する密度算出手段をさらに備えている
    請求項1又は2に記載の粉体用動的粘弾性測定装置。
  4. 前記可動側平板プレート及び前記固定側平板プレートの内のいずれか一方は、プレート(A)と、前記プレート(A)の表面に設けられた円筒状の飛散防止壁とを備えており、
    他方は、前記飛散防止壁の内径より小さな外径を有する円板状のプレート(B)を備えている
    請求項1から3までのいずれか1項に記載の粉体用動的粘弾性測定装置。
  5. 乾燥粉体、又は、固形分体積分率が50%以上100%未満の湿潤粉体からなる前記粉体組成物の動的粘弾性を測定するための用いられる請求項1から4までのいずれか1項に記載の粉体用動的粘弾性測定装置。
  6. 請求項1から5までのいずれか1項に記載の粉体用動的粘弾性測定装置を用いて、非流動性の粉体組成物の動的粘弾性を測定する粉体用動的粘弾性測定方法。
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