JP2018145497A - Cuろう付け性に優れたフェライト系ステンレス鋼 - Google Patents

Cuろう付け性に優れたフェライト系ステンレス鋼 Download PDF

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明訓 河野
Akinori Kono
明訓 河野
太一朗 溝口
Taichiro Mizoguchi
太一朗 溝口
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Abstract

【課題】Cuろうを用いて、高温、低酸素分圧下でろう付けされる場合のろう付け性に優れ、かつろう付け接合部の複雑な形状に加工可能な優れた加工性を併せ持つフェライト系ステンレス鋼を提供する。
【解決手段】本発明は、質量%で、C:0.01〜0.03%、Si:1.00%以下、Mn:1.50%以下、P:0.04%以下、S:0.03%以下、Ni:0.6%以下、Cr:17〜25%、Mo:2.50%以下、Cu:0.10〜0.50%、N:0.030%以下、Nb:7×(C+N)%以上、0.80%以下、Al:0.022%以下、を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、下記(1)式を満足する、Cuろう付け性に優れたフェライト系ステンレス鋼である。C+6Si−4Al−72Ti≧1.5 ・・・(1)式、ここで、(1)式中のC、Si、Al、Tiは、各元素の質量%を意味する。
【選択図】図1

Description

本発明は、Cuろう付け接合により接続される部材に用いられるフェライト系ステンレス鋼に関する。
本発明のフェライト系ステンレス鋼が適用される部材には、自動車のフューエルデリバリ系部品、プレート式熱交換器、給湯器の配管などがあり、一般的に複雑な形状を有し、耐圧性、密閉性や疲労強度を重視する用途に適用される。ろう付け方法としては、高温かつ低酸素分圧の雰囲気下での炉中ろう付けまたは水素ガスと窒素ガスを用いた高周波加熱によるろう付けが用いられる。
ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの燃焼技術は、熱効率の向上、炭酸ガス排出量の削減、排出ガスの規制などの様々な課題に直面しつつも、着実な進歩を遂げてきた。現在では、電気自動車や水素自動車などの次世代自動車が開発され、一般に普及しつつあるが、次世代自動車の生産台数は、いまだ自動車全体の1割に満たないのが実情である。したがって、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの技術開発が引き続き求められており、自動車メーカー各社は、直噴エンジン、リーンバーン、EGRなどの高性能化を進めている。
こうした背景の中、フューエルデリバリ部品の形状は、複雑化の一途をたどり、更なる形状精度と耐久性が求められるようになった。すなわち、これら部材に適用されるステンレス鋼についても、複雑で精密な形状に加工可能であることが要求される。さらに、燃料の漏洩が重大なリスクとなることから、十分な密閉性と耐圧性を確保するための良好な接合性が必要とされる。そして、腐食による穿孔を生じないための耐食性が不可欠である。また、フューエルデリバリ部品における接合部分の多くは、Cuろう、Cu−Niろうなどを用いたろう付け接合が適用されている。したがって、フューエルデリバリ部品に使用されるステンレス鋼には、加工性、耐食性、およびCuろう付け性の各特性が良好であることが要求される。
従来、ろう付け性に優れたステンレス鋼に関する知見として、例えば、次のようなものがある。特許文献1には、低酸素分圧下でも酸化物を形成する元素であるTiとAlを低減することにより、雰囲気ろう付け性を改善したフェライト系ステンレス鋼が開示されている。また、特許文献2には、熱交換特性、耐食性およびろう付け性に優れるフェライト系ステンレス鋼に関して記載されており、還元雰囲気中で昇温した後、ろう材溶融後に酸化雰囲気にして、表層にAlやTiの酸化物を生成させる方法を開示している。
特開2009−174046号公報 国際公開第2016−013482号
特許文献1は、Alが酸化膜を形成して、ろう付けを阻害することから、Al含有量が0.1%以下に制限されている。しかし、Alを含有するステンレス鋼は、雰囲気熱処理時に表層近傍に内層酸化物層を形成する。そのため、製品の外観を損なうのみならず、耐食性に悪影響を与える。
特許文献2は、表層にAlやTiの酸化物を積極的に生成させることを目的として、還元雰囲気中で昇温した後、ろう材溶融後に酸化雰囲気に制御する方法を提案している。しかし、十分な特性を得るためには、複数回の特殊な熱処理を施す必要があり、工程増加によるコスト上昇が発生するという課題がある。
さらに、溶融したCuろうは、濡れ広がる際に急激に流動してエロージョンを引き起こすことがある。近年のステンレス部材は、軽量化目的で薄肉化が進んでおり、わずかな板厚減少でも大きな問題となり得る。そして、ろうに溶け込んだステンレス鋼成分が冷却時にFe−richの金属間化合物として析出することがあり、耐食性に悪影響を与える。
特許文献1と特許文献2に開示された発明は、ろう付け性、耐食性、溶損の低減について、全ての特性を同時に満足できるものではなかった。
本発明は、Cuろうを用いて、高温、低酸素分圧下でろう付けされる場合のろう付け性に優れ、かつろう付け接合部の複雑な形状に加工可能な優れた加工性を併せ持つフェライト系ステンレス鋼を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を達成するべく、Cuろうがステンレス鋼上で溶解する際のメカニズムとそれにおよぼす合金元素や表面状態の影響について詳細な検討を行った。その結果、フェライト系ステンレス鋼のろう付け性におよぼすTi、Alの悪影響を低減し、良好なろう付け性を確保できる条件を見出して、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
(1)本発明は、質量%で、
C:0.01〜0.03%
Si:1.00%以下
Mn:1.50%以下
P:0.04%以下
S:0.03%以下
Ni:0.6%以下
Cr:17〜25%
Mo:2.50%以下
Cu:0.10〜0.50%
N:0.030%以下
Nb:7×(C+N)以上、0.80%以下
Al:0.022%以下
を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、
下記(1)式を満足する、Cuろう付け性に優れたフェライト系ステンレス鋼である。
C+6Si−4Al−72Ti≧1.5 ・・・ (1)式
ここで、(1)式中のC、Si、Al、Tiは、各元素の質量%を意味する。
(2)本発明は、さらに、質量%で、V:0.20%以下、W:1.00%以下の1種または2種以上を含有する、(1)に記載のCuろう付け性に優れたフェライト系ステンレス鋼である。
(3)本発明は、さらに、質量%で、B:0.007%以下を含有する、(1)または(2)に記載のCuろう付け性に優れたフェライト系ステンレス鋼である。
本発明によれば、Cuろうを用いて、高温、低酸素分圧下でろう付けされる場合のろう付け性に優れ、かつ、ろう付け接合部の複雑な形状に加工可能な優れた加工性を併せ持つフェライト系ステンレス鋼を提供できる。本発明のフェライト系ステンレス鋼は、薄肉化した複雑な形状の部品とした場合でも、容易にCuろう付け接合が可能であり、溶損による強度低下も小さい。そのため、フューエルデリバリ部品、熱交換器などのCuろう付けを伴う用途に好適である。
実施例における(1)式の値と濡れ広がり係数との関係を示す図である。
ろう付け性が良好であることは、できるだけ低温で短時間の熱処理により、ろう材が接合部全体に浸透し、接触角の小さい良好な形状のフィレット(fillet)が形成されることを意味する。さらに、ろう材によりステンレス鋼の侵食(溶損)が生じる場合がある。板厚が1mmを下回る薄板は、厚板と比較して、板厚の減少による強度や靭性の低下が問題となりやすいことから、ろう材による侵食(溶損)が少ないことが望ましい。
Cuろう付けは、1000〜1120℃の真空中または水素雰囲気中で行われる。ここで、ろう付け性におよぼす影響因子として最も重要なものは、酸素分圧であり、真空と水素雰囲気のいずれにおいても、Crの還元域である10−20atm程度まで低下していると考えられている。しかし、工業的な観点から見ると、大規模な量産設備においては、製品同士の隙間などで雰囲気が不均一となり、酸素分圧の高い雰囲気が生じている可能性がある。
[溶融Cuによるステンレス鋼上での濡れ広がり]
一般に、Fe基合金と溶融Cuとの平衡接触角は、5〜10°程度であるのに対し、Crなどの酸化物と溶融Cuとの平衡接触角は、90°以上である。したがって、このような雰囲気下で溶融したCuろうがステンレス鋼上を濡れ広がるには、Cuろうが溶融した時点で、ステンレス鋼の表面を覆う酸化皮膜が除去され、ステンレス鋼のマトリックスが露出している必要がある。
上述のとおり、ろう付けは、Crが還元域となる雰囲気で実施される。しかし、大規模な量産設備においては、設定した条件から雰囲気が変化することがある。また、設定された雰囲気は、ステンレス鋼の主要成分であるFe、Cr、Niにとって還元域であるとしても、Si、TiやAlのようにCrよりも酸化されやすい元素にとっては、酸化域に当たる。そのため、Si、TiまたはAlは、ステンレス鋼の表面に酸化物を形成して、Cuろうの濡れを阻害することがある。
[Cによる酸化皮膜除去]
このような低酸素分圧下でのステンレス鋼表面の酸化物除去において、重要な役割を果たす元素がCである。雰囲気の酸素分圧が10−18atmを下回る程度であると、ステンレス鋼中の固溶Cは、還元域の状態に移行し、ステンレス鋼表面の酸化物とCが反応して金属炭化物を形成する。そして、この金属炭化物と雰囲気中の酸素とが反応して、COまたはCOが形成されて、雰囲気中に放出される。このとき、金属炭化物は、還元されて金属単体となる。さらに、真空引きまたはガスフローなどの影響により、雰囲気中のCO分圧は、ろう付け中も徐々に下がり続ける傾向にあるため、金属炭化物が金属に還元されてCOを放出する上記の反応は、ろう付け中に平衡状態に到達することなく、継続して進行する。このことから、ステンレス鋼中の固溶Cは、ろう付け雰囲気下にてステンレス鋼表面の酸化物を還元除去する効果を示すといえる。また、上記の反応は、Fe、Cr、Niのみならず、エリンガム図(Ellingham diagram)において酸化域に位置するAl、Tiも、同様に、Cの存在下では、金属炭化物を経由することにより還元反応を生じる。
ろう付け炉の部品、治具、発熱体などの部材中にCが含まれている場合も、同様に、COガスを放出し、ステンレス鋼表面の酸化物の還元反応を助長する効果を示す。しかし、COからCOへの反応は、低酸素分圧下のCO分圧が極めて小さい場合にのみ進行する反応であるため、ステンレス鋼表面の酸化物を除去する手段としては、固溶Cによる還元作用が最も効果的である。
他方、ステンレス鋼の固溶Cは、固溶強化により加工性(延性)を低下させる。また、冷却速度が遅い場合、冷却中にCr炭化物を形成し、鋭敏化を引き起こして耐食性にも悪影響を与える。そのため、加工性と耐食性が重要となるフューエルデリバリ部材のろう付け接合に、固溶Cを利用した表面酸化物の除去機構を適用する際は、工夫が必要である。
[炭化物の活用によるろう流れ性の改善]
そこで、本発明者らは、スレンレス鋼のマトリックス中に微細に分散させたNbCを活用することで、加工性や耐食性におよぼすCの悪影響を抑制しつつ、ろう付け性を改善できることを見出した。すなわち、Cは、常温ではNbCとして存在し、無害化されている。ろう付け温度近傍まで昇温された際は、NbCの一部が固溶されて、固溶Cと固溶Nbを生成する。その後、当該固溶Cによって表面酸化皮膜が除去され、Cuろうの濡れ広がりが改善される。酸化皮膜の除去に使用されずに残存したCは、その後、冷却中に再びNbCを形成するため、ろう付け熱処理後においても、加工性や耐食性の低下は生じない。
[Siの活用によるCuろうの濡れ広がり速度の改善]
上述した炭化物を活用したステンレス鋼の表面酸化皮膜の除去機構は、定常状態では必ず生じる現象である。しかし、大規模な量産設備において、実際のろう付け熱処理時間内で遂行するには、さらに工夫が必要である。本発明者らが詳細な検討を行った結果、ステンレス鋼中のTi、Al、C、Siに関して、その組成比率の範囲を最適化することにより、実際的な雰囲気ろう付け条件において、炭化物を活用したろう付け性改善効果を得られることが判明した。
Siは、溶融したCuろうの表面張力を減少させる作用を有する。そのSiの作用により、溶融Cuろう/ステンレス鋼/雰囲気の三相界面の近傍において、マランゴニ(Marangoni)対流を発生させて、撹拌を促進することで、Cuろう流れ性を改善する作用をもたらす。ステンレス鋼中のSiは、一般的に1%未満であるが、界面近傍では濃化しており、Cuろうの濡れ広がり速度を大きく向上させることが可能である。このような効果により、量産設備の実用的な処理時間内で濡れ広がりを完了させることができる。
[溶損の低減]
ここで、Cuろうによるステンレス鋼の侵食(溶損)の問題について検討する。マランゴニ対流は、Cuろう/ステンレス鋼/雰囲気の三相界面の移動(濡れ広がり)を促進する一方で、板厚方向への界面移動(板厚減少)を生じさせる。特に、Ti、Alを含むステンレス鋼の場合、酸化皮膜の除去速度が遅いため、Cuろうが溶融した時点でも酸化皮膜が残存していることがある。その場合、酸化皮膜が除去されたと同時に、多量の溶融Cuろうが濡れ広がることにより、溶融Cuによるエロージョンが発生し、100μm以上の大きな板厚減少が生じることがある。近年、熱効率の向上や軽量化の観点から、ステンレス鋼部材の板厚が薄くなる傾向にあり、板厚1mm以下の部材も適用されるため、このようなCuろう材による溶損が生じると大きな問題になる。
エロージョンは、Cuろうとステンレス鋼の濃度差を駆動力とした現象である。したがって、ステンレス鋼側にある程度のCuを含有させ、濃度差を小さくすることで著しく抑制可能である。
本発明に係るフェライト系ステンレス鋼は、上記の知見を基に達成されたものであり、以下の化学組成を有している。
質量%で、C:0.01〜0.03%、Si:1.00%以下、Mn:1.50%以下、P:0.04%以下、S:0.03%以下、Ni:0.6%以下、Cr:17〜25%、Mo:2.50%以下、Cu:0.50%以下、N:0.030%以下、Nb:7×(C+N)%以上、0.80%以下、Al:0.022%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、C、Si、Al、Tiが下記(1)式を満足する、Cuろう付け性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
C+6Si−4Al−72Ti≧1.5 ・・・ (1)式
ここで、(1)式中のC、Si、Al、Tiは、各元素の質量%を意味する。
〔化学組成〕
本発明のフェライト系ステンレス鋼を構成する組成の選定理由について、以下、説明する。なお、本明細書において、鋼の化学組成に関する「%」は、特に断りがない限り「質量%」を意味する。
Cは、本発明において最も重要な元素の一つである。常温ではNbCとして固定されており、ろう付け温度にてその一部が固溶して酸化皮膜の除去に寄与する。C含有量は、0.01%以上を含有することができる。しかし、過剰なC含有は、鋭敏化の原因となるとともに、固溶強化による加工性の低下を招く。そのため、C含有量は、0.03%以下が好ましい。
Siは、溶融Cuの表面張力を低下させ、マランゴニ対流を発生させることで、ろうの濡れ広がり速度を増大し、ステンレス鋼のろう付け性を改善する作用を有する。Siを0.10%以上含有することができる。他方、Siを過剰に含有すると、ステンレス鋼を硬質化させて、加工性を劣化させる要因となる。そのため、Si含有量のは、1.00%以下が好ましい。
Mnは、ステンレス鋼の脱酸剤として使用される。スクラップを原料とするステンレス鋼は、ある程度のMn混入を避けられないので、Mnは、1.50%以下を含有できる。他方、Mnが不働態皮膜に含まれると、耐食性を低下させるため、Mn含有量は、低いことが望ましい。1.20%以下が好ましい。
Pは、母材およびろう付け部の靭性を損なうため、低い方が望ましい。ただし、含Cr鋼の溶製において精錬による脱りんは、困難であることから、P含有量を極低化するには原料の厳選などの過剰なコスト増を伴う。したがって、本発明では、一般的なフェライト系ステンレス鋼と同様に、P含有量は、0.05%以下で許容される。
Sは、孔食の起点となりやすいMnSを形成して耐食性を阻害する元素である。また、S含有量が高い場合、ろう付け部の高温割れが生じやすくなる。そのため、S含有量は、0.03%以下が好ましい。
Niは、ろう付け時にフェライト結晶粒が粗大化した際の靭性低下を抑制するのに有効な元素であり、耐食性を改善する作用も有している。Niは、0.01%以上を含有することができる。他方、Niの過剰な添加は、高温域でのオーステナイト相の生成を招き、熱間加工性に悪影響をおよぼす。そのため、Ni含有量は、0.60%以下が好ましく、0.30%以下がより好ましい。
Crは、不働態皮膜の主要な構成元素であり、耐孔食性や耐すきま腐食性などの局部腐食性の向上をもたらす。Cuろう付け用途では、板厚が薄く、熱影響を受けた状態で使用される。さらに、Cuろう付けは、腐食を促進させるCu2+が存在する過酷な環境下となる。高い耐食性を確保するため、Cr含有量は、17%以上が好ましく、18%以上がより好ましい。他方、Cr含有量が過多であると、C、Nの低減が難しくなり、機械的性質や靭性を損ね、かつ、コストを増大させる要因となる。そのため、Cr含有量は、25%以下が好ましく、23%以下がより好ましい。
Moは、耐食性を向上させる元素である。また、ろう付け熱処理時の結晶粒成長に対する固溶Moのドラッグ効果により、結晶粒の粗大化抑制にも有効な元素である。Moは、0.01%以上を含有することができる。他方、Moは、高価であるから、コスト増大を招く。そのため、Mo含有量は、2.50%以下が好ましく、2.00%以下、1.00%以下がより好ましい。
Cuは、Cuろうによるステンレス鋼の溶損を低減させるのに重要な添加元素である。溶損を低減させるため、Cu含有量は、0.10%以上であることが好ましい。他方、Cuを過剰に添加すると、常温でε−Cu相が残存し、耐食性を低下させる。そのため、Cu含有量は、0.50%以下が好ましく、0.40%以下がより好ましい。
Nは、耐食性を改善させる元素ではあるが、固溶強化による加工性の低下を引き起こす上、NbNを形成して鋼中の有効Nbを減少させるため、N含有量を0.03%以下に低減することが好ましい。
Alは、脱酸剤として広く用いられている元素であるが、上述のとおり、ステンレス鋼表面で酸化物を形成して、ろう付け性を低下させる。炭化物を活用した上記の酸化皮膜の除去機構を活用するためには、Al含有量は、0.022%以下に低減させる必要があり、より好ましくは0.01%以下である。
Nbは、NbCを形成して常温でのCを無害化するとともに、ろう付け温度近傍では固溶Nbのドラッグ効果により結晶粒粗大化抑制に寄与する。そのため、Nb含有量は、その上限が、7×(C+N)%以上であることが好ましく、8×(C+N)%以上がより好ましい。当該(C+N)は、C、Nの各含有量(質量%)の合計を意味する。他方、Nbを過剰に添加すると、加工性を低下させるから、Nb含有量の上限は、0.80%以下が好ましく、0.60%以下がより好ましい。
さらに、AlやTiなどのろう付けに悪影響をおよぼす元素を含む場合、上述した炭化物を活用した酸化物除去機構を、工業的な量産設備のろう付け条件下で達成するためには、C、Si、Al、Tiの含有量(質量%)が以下の(1)式を満たすことが好ましい。
C+Si−4Al−72Ti≧1.5 ・・・ (1)式
Cが不足する場合は、酸化物を十分に除去されず、また、Siが不足する場合は、ろう付け熱処理時間内で十分な濡れ広がりが生じない。Al、Tiが過剰に含有する場合は、酸化物の還元除去に要する時間が過度に長くなり、生産性の低下や製造コストの増大を招くことに加えて、長時間の熱処理により、フェライト結晶粒の粗大化が起こり、製品の靭性を低下させるおそれがある。
以下、本発明に係る実施例について説明する。本発明は、以下の説明に限定されるものではない。
表1に示す化学組成を有するステンレス鋼を溶製し、熱延、冷延、焼鈍工程を経て、板厚1mmの冷延板を製造した。表面は、2D(硝フッ酸浸漬仕上)である。この冷延板を15mm×15mmに切り出した後、アセトンで超音波洗浄して試験片とした。試験片の中央に0.05gの円柱型のCuろうを設置し、酸素分圧10−20atmの真空雰囲気で1120℃、均熱10minの熱処理を施した。その後、常温まで冷却して、Cuろうの濡れ広がり面積を測定した。表1に示した化学組成は、質量%であり、残部がFeおよび不可避的不純物である。
Figure 2018145497
ろう付け性は、濡れ性(濡れ広がり係数)と溶損の程度により評価した。ろう付け熱処理後の濡れ広がり面積を、設置したろう材の投影面積で除した値を「濡れ広がり係数」と定義した。濡れ広がり係数が、5以上である場合を濡れ性良好(○)とし、5を下回る場合を濡れ性不良(×)とした。また、溶損については、ろう付け熱処理後に断面観察を行い、最大板厚減少が10μm以下である場合を溶損が少なく良好である(○)、10μmを超える場合を溶損が多く不適である(×)とそれぞれ判定した。
Cuろう付け部材の耐食性を評価するため、ろう付け後の試験片の塩乾湿繰り返し試験を10サイクルまで行い、発銹面積率を測定した。当該塩乾湿繰り返し試験は、「5%NaCl水溶液の噴霧(35℃×15min) → 乾燥(RH30%、60℃×1h) → 湿潤(RH95%、50℃×3h)」の塩水噴霧、乾燥、湿潤の各処理を1サイクルとして、それを繰り返した。10サイクルを経過した時点で、試験片を取り出し、水洗および乾燥させた後、試験片を観察した。
発銹面積率の測定は、次のような手順で行った。塩乾湿繰り返し試験後の試験片外観を写真撮影し、端面とろうに覆われた部分とを除いたステンレス鋼の露出部分について、発銹部分の面積を求めた。露出部分の面積は、試験片の外観写真を画像解析により2値化し、1ピクセルあたりの面積を算出した後、ろう部分のピクセル数をカウントして差し引くことで求めた。発銹部分の面積も同様に、露出部分について画像解析を行って2値化した後、ピクセル数をカウントして求めた。本明細書では、発銹部分の面積を露出部分全体の面積で除した値を「発銹面積率」と定義し、上記の測定値から発錆面積率を求めた。発銹面積率が1%以下のものを「○」(耐食性が良好)と、1%を超えるものを「×」(耐食性が不良)とそれぞれ評価した。
試験結果を表2に示す。参考として、各実施例の(1)式の値と濡れ広がり係数も合わせて示した。(1)式の値がゼロまたはマイナスであるときは、ゼロ(0.00)と表示した。
Figure 2018145497
本発明の成分組成を有する本発明例No.1〜No.9はいずれも、濡れ性が良く、溶損が少なく、耐食性に優れ、Cuろう付け部材として良好な特性を示した。
それに対し、比較例No.1、No.2は、Cu含有量が0.10%以下であるため、ろうの溶融初期に当たる部分で溶損が認められた。また、比較例No.2は、C含有量が0.03%を超えて、Cr含有量が17%未満であるため、耐食性が劣った。比較例No.3は、Cr含有量が17%未満であるため、耐食性が劣った。比較例No.4〜No.8、No.10は、成分が(1)式を満たしていないため、ステンレス鋼表面に形成されたAl、Tiの酸化物を十分に除去することができず、十分な濡れ性を得ることができなかった。比較例No.9は、成分が(1)式を満たしているが、Al含有量が0.01%を超えているため、濡れ性に劣った。
図1は、表2に示した(1)式の値と濡れ広がり係数との関係を示したものである。Al含有量の多い比較例No.9を除き、(1)式の値が1.5以上の範囲で、濡れ広がり係数が上昇し始めることを確認できた。
本発明に係るフェライト系ステンレス鋼は、Cuろう付け性に優れ、耐食性と加工性も良好であるので、フューエルデリバリ部品、熱交換器や配管などのろう付け性、加工性が必要とされ、かつ優れた耐食性が要求される用途に好適に用いることができる。

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C:0.01〜0.03%
    Si:1.00%以下
    Mn:1.50%以下
    P:0.04%以下
    S:0.03%以下
    Ni:0.6%以下
    Cr:17〜25%
    Mo:2.50%以下
    Cu:0.10〜0.50%
    N:0.030%以下
    Nb:7×(C+N)%以上、0.80%以下
    Al:0.022%以下
    を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、
    下記(1)式を満足する、Cuろう付け性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
    C+6Si−4Al−72Ti≧1.5 ・・・ (1)式
    ここで、(1)式中のC、Si、Al、Tiは、各元素の質量%を意味する。
  2. さらに、質量%で、V:0.20%以下、W:1.00%以下の1種または2種以上を含有する、請求項1に記載のCuろう付け性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
  3. さらに、質量%で、B:0.007%以下を含有する、請求項1または請求項2に記載のCuろう付け性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
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