JP2018143223A - 作業室内のdna不活化方法、及びdnaインジケータ - Google Patents
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Abstract
Description
また、微量なDNAの混入が作業に悪影響を及ぼすことは、万能細胞の取り扱いに限らず、例えば、リアルタイムPCRを用いたサンプル中の微量DNA分析の場合にも起こり得る(例えば、非特許文献1)。
[2] 前記DNA不活化処理が、前記作業室の少なくとも前記DNAインジケータを設置した領域に対して、DNAを分解する薬剤を散布する処理である、[1]に記載の作業室内のDNA不活化方法。
[3] 前記薬剤が次亜塩素酸を含む液体薬剤である、[2]に記載の作業室内のDNA不活化方法。
[4] 前記標準DNAの残留量を測定する際にPCR法を用いる、[1]〜[3]の何れか一項に記載の作業室内のDNA不活化方法。
[5] 前記作業室がクリーンルームである、[1]〜[4]の何れか一項に記載の作業室内のDNA不活化方法。
[6] 担持体と、前記担持体に担持された標準DNAとを有し、[1]〜[5]の何れか一項に記載の<作業室内のDNA不活性化方法>用の、DNAインジケータ。
[7] 前記標準DNAが既知の塩基配列を含むDNAである、[6]に記載のDNAインジケータ。
[8] 前記標準DNAの塩基数が10〜200塩基対(bp)である、[6]又は[7]に記載のDNAインジケータ。
[9] 前記担持体の単位面積(cm2)当たりに担持された前記標準DNAの合計の質量が0.003μg/cm2〜0.3μg/cm2である、[6]〜[8]の何れか一項に記載のDNAインジケータ。
[10] 前記標準DNAがヒトを含む哺乳類、魚類、鳥類、爬虫類、菌類、酵母、及びウイルスのうち少なくとも1つ以上に由来する、[6]〜[9]の何れか一項に記載のDNAインジケータ。
[11] 前記担持体の形状がシートであり、前記シートの外部からアクセス可能な表面に前記標準DNAが担持されている、[6]〜[10]の何れか一項に記載のDNAインジケータ。
[12] 前記担持体が、セルロース含有繊維、ガラス繊維及び合成樹脂繊維のうち少なくとも1つ以上を含む、[6]〜[11]の何れか一項に記載のDNAインジケータ。
[13] 前記担持体が濾紙、布、又はフィルムである、[6]〜[12]の何れか一項に記載のDNAインジケータ。
以下、先にDNAインジケータを詳細に説明し、その後に、作業室内のDNA不活化方法の詳細を説明する。
DNAインジケータは、担持体と、前記担持体に担持された標準DNAと、を有する。
標準DNAは既知の塩基配列を含むDNAであることが好ましい。既知の塩基配列に結合するプライマーを用いてPCR法(ポリメラーゼ連鎖反応法)を行うことにより、DNAインジケータに担持された微量のDNAを検出することができる。前記プライマーとして、例えば、16S rRNA、27f、357f、530f、519r、907r、1100r、1392r、1492r等のユニバーサルプライマーが挙げられる。
標準DNAの塩基数が10bp以上であると、DNA不活化処理によって標準DNAが分解又は除去されたことをより容易に検出し易くなる。例えば、PCR法で増幅したDNAの検出や取り扱いがより容易になる。
標準DNAの塩基数が200bp以下であると、担持体に多数の標準DNAを担持させることがより容易なる。つまり、担持される標準DNAの単位質量当たりのコピー数を多くすることができる。このコピー数を多くするほど、DNA不活化処理後に標準DNAの少なくとも一つが残留する可能性が高まる。したがって、コピー数を調整することによって、DNAインジケータの完全な不活化の困難度を調整することができる。
担持体の単位面積(cm2)当たりに担持された標準DNAの合計の質量は、0.003μg/cm2〜0.3μg/cm2であることが好ましく、0.004μg/cm2〜0.05μg/cm2であることがより好ましく、0.005μg/cm2〜0.01μg/cm2であることがさらに好ましい。
標準DNAの前記質量が0.003μg/cm2以上であると、DNA不活化処理によって標準DNAが分解又は除去されたことをより容易に検出し易くなる。例えば、PCR法で増幅したDNAの検出や取り扱いがより容易になる。
標準DNAの前記質量が0.3μg/cm2以下であると、担持体に多数の標準DNAを担持させることがより容易なる。つまり、担持される標準DNAの単位質量当たりのコピー数を多くすることができる。このコピー数を多くするほど、DNA不活化処理後に標準DNAの少なくとも一つが残留する可能性が高まる。したがって、コピー数を調整することによって、DNAインジケータの完全な不活化の困難度を調整することができる。
担持体の形状はシートであることが好ましい。担持体がシートであると、作業室内の床上、壁上、装置上、作業台上等にDNAインジケータを容易に設置することができる。
担持体がシートである場合、標準DNAはシートの外部からアクセス可能な表面に担持されていることが好ましい。ここで、「アクセス可能な表面」は、平滑な表面だけでなく、微細な凹凸のある表面、複数の繊維が互いに絡み合った繊維構造における繊維の表面、多孔質構造における外部と連通した孔内の表面等を含む。
ここで、DNAを担持するとは、DNAが担持体に物理的又は化学的に吸着、付着若しくは結合した状態をいう。この際、DNA分子が担持体に対して直に接していてもよいし、DNA分子が、DNA分子を分散する分散媒を介して、担持体に対して間接的に接していてもよい。前記分散媒としては、例えば、水、アルコール、pH緩衝剤、EDTA、増粘剤等を含む公知のDNA分散媒が挙げられる。
担持体のサイズは特に限定されず、DNAインジケータを設置する箇所に応じて適宜設定されるが、DNA不活化処理後にDNAインジケータを回収し、標準DNAの残留量を定量する際の取り扱いの容易さを考慮して、例えば、面積が1〜10cm2程度の小片であることが好ましい。シート状のDNAインジケータを用いる場合、そのサイズは、取り扱いの容易さを考慮して適宜設定される。例えば、取り扱いが容易で、DNA不活化処理によって標準DNAを適切に分解又は除去できることから、20×20mm程度が好ましい。
また、使用前の担持体のDNA汚染を防ぐ観点から、DNA汚染が起こり難い材料からなる担持体を使用することが好ましい。
本発明の第二態様は、第一態様のDNAインジケータを作業室に設置するステップ(設置ステップ)と、前記作業室において、前記DNAインジケータが担持する標準DNAと、前記作業室に予め存在したDNAとを同時に分解又は除去するDNA不活化処理を施すステップ(不活化ステップ)と、前記作業室からDNAインジケータを回収し、前記DNAインジケータに担持された標準DNAの残留量を測定するステップ(測定ステップ)と、を有する、作業室内のDNA不活化方法である。以下、各ステップを説明する。
DNAインジケータを設置する作業室は密閉空間であってもよいし、非密閉空間であってもよい。作業室の大きさは特に限定されず、例えば、その床面積が1〜100m2程度の大きさが挙げられる。この床面積はクリーンルームの床面積として適している。
DNAインジケータを設置する箇所は、特に限定されず、例えば、床上、壁上、装置上、作業台上等が挙げられる。
設置するDNAインジケータの個数は、特に限定されず、1箇所に複数のDNAインジケータを設置してもよいし、複数箇所に1つ又は複数のDNAインジケータを設置してもよい。複数のDNAインジケータを設置する場合、個々のDNAインジケータは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
DNAインジケータの設置方法は、担持した標準DNAが露出するように設置することが好ましく、単に置くだけでもよいし、両面テープや接着剤等で固定してもよい。
作業室内の、DNAインジケータを設置した箇所を含む任意の領域に対して、DNAを分解又は除去することが可能なDNA不活化処理を行う。
前記薬剤としては、例えば、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、過酸化水素等の1つ以上を含む液体薬剤が挙げられる。なかでも、DNAの分解効率に優れ、換気によって作業室内から容易に除去できることから、次亜塩素酸を含む液体薬剤(DNA不活化剤)が好ましい。
前記液体薬剤に含まれる次亜塩素酸の濃度は、当該液体薬剤に接触した標準DNAが分解される濃度であればよく、例えば、有効塩素濃度50〜500ppmが挙げられる。
前記液体薬剤を散布する機器としては、例えば、霧吹き器具、噴霧装置、散水装置、超音波霧発生装置、蒸気発生装置(加湿器)等が挙げられる。
作業室内に散布した霧状、エアロゾル状又はガス状の前記薬剤を、作業室内の所定箇所に向けて誘導するために送風機を併用してもよい。
適切なDNA不活化処理によって、DNAインジケータに担持されていた標準DNAの少なくとも一部は分解又は除去されている。回収したDNAインジケータに残留している、分解又は除去されていない標準DNAの量を測定する方法としては、PCR法、DNAの吸収波長帯を測定する吸光光度分析法等が挙げられる。なかでも、微量のDNAを精度良く分析することが可能なPCR法が好ましい。
標準DNAとして繊維芽細胞から抽出したDNA(例えば、TIG1−20DNA)を使用し、PCR用のプライマーとしてLINE1(Long Interspersed element-1)を使用する。DNA不活性化処理後のDNAインジケータに残留したDNAを分散媒に溶出する等の方法で回収し、分解されずに残った標準DNAの定量をリアルタイムPCRのSYBR-GREEN法等の公知方法で行う。標準DNAとプライマーの組み合わせが上記であると、未分解の標準DNAが0.0001pg(ピコグラム)程度で残留していれば、それを検出することができる。検出したDNAの濃度は、DNA濃度の対数スケールを横軸にとり、Ct値を縦軸にとって予め作成した検量線に基づいて求めることができる。
DNA担持体を構成する材料を選定するために、耐熱温度、丈夫さ、水分(DNA)保持力、DNA様夾雑物なし、の4つ項目で評価し、さらに総合的な観点から評価した。評価は次の4段階で行った;◎:優れている、○:良好である、△:劣る、×:極めて劣る。
耐熱温度については、担持体(担体)のカタログ値を参照した。
丈夫さについては、担持体を両手で引き裂くことを試み、その難易度を主観で評価した。
水分保持力については、担持体に滴下した水の吸収の程度を目視で確認して評価した。
DNA様夾雑物なしについては、担持体を所定量のイオン交換水で洗浄し、溶出された成分を吸光光度計で検出し、DNAに対応する紫外線波長域に観測されたピークの高さからDNA様夾雑物の溶出程度を評価した。上記の評価結果を表1に示す。
一例として、繊維芽細胞由来の標準DNA水溶液(濃度:0.5μg/ml)を用いて以下の実施例で用いるDNAインジケータを作製した。
実施例2で作製したDNAインジケータを汚染しないように、清浄なピンセットを用いて、清浄な1.5mlのマイクロチューブに入れる。TE(Tris-EDTA)緩衝液120μlをマイクロチューブ内のDNAインジケータに浸み込ませ、DNAインジケータを丸めてTE緩衝液に漬けた状態で5分間静置する。
次いで、丸めたDNAインジケータの端部をマイクロチューブの蓋に挟み、マイクロチューブ内に吊り下げる。この状態で卓上遠心機に掛けて2000G、30秒間で遠心することにより、DNAインジケータに浸み込んでいたTE緩衝液をマイクロチューブの底部に落とし、溶出液として回収する。
得られた溶出液10μlをリアルタイムPCRに掛けて、DNAインジケータからの標準DNAの回収率を求める。
DNA不活化処理を施していないDNAインジケータから回収した標準DNAの回収率を基準として、DNA不活化処理を施したDNAインジケータに残留した標準DNAも同様に回収し、定量することができる。
実施例2で作製したDNAインジケータを汚染しないように、清浄なピンセットを用いて、清浄な1.5mlのマイクロチューブに入れる。試験対象の液体薬剤50μlをマイクロチューブ内のDNAインジケータの全体に浸み込ませ、1.5時間静置する。このDNA不活化処理の後、TE緩衝液120μlをマイクロチューブ内のDNAインジケータに浸み込ませ、DNAインジケータを丸めてTE緩衝液に漬けた状態で5分間静置する。
次いで、実施例3と同様に遠心処理によって溶出液を回収し、リアルタイムPCRによって分解されずに残った標準DNAの量を定量する。
図1に示す、外部に通じる廊下に面した前室と、エアシャワーと、BCRに通じる廊下(BCR廊下)と、BCRと、シャフトとが、それぞれ扉で仕切られたBCR施設を対象とした。
BCRの中央に次亜塩素酸水溶液(濃度200ppm)を散布する噴霧装置を設置し、BCR全体に液体薬剤が充満するように2基のファン(送風機)を設置した。
噴霧装置の近くの床上、噴霧装置を設置したSUSテーブル上、外部の廊下に面した窓際の床上、シャフトスペース側の壁際の床上、の4箇所に、DNAインジケータ(図中のDI(1)〜(4))を設置した。
噴霧装置から霧状の次亜塩素酸水溶液を噴霧し、BCR内に充満させ、床に触れると湿り気を感じる程度まで散布した。DNA不活化処理を完了するために2時間静置した後、各DNAインジケータを回収した。また、噴霧装置及びファンを撤収し、BCR内を充分に換気して、原状を復帰させた。
回収した各DNAインジケータに残留した標準DNAの量をリアルタイムPCRで測定したところ、いずれも検出限界以下であった。この測定結果から、BCRのDNA汚染が充分に除去されたことを確認できた。
Claims (13)
- 担持体と、前記担持体に担持された標準DNAと、を有するDNAインジケータを作業室に設置するステップと、
前記作業室において、前記DNAインジケータが担持する標準DNAと、前記作業室に予め存在したDNAとを同時に分解又は除去するDNA不活化処理を施すステップと、
前記作業室からDNAインジケータを回収し、前記DNAインジケータに担持された標準DNAの残留量を測定するステップと、を有する、作業室内のDNA不活化方法。 - 前記DNA不活化処理が、前記作業室の少なくとも前記DNAインジケータを設置した領域に対して、DNAを分解する薬剤を散布する処理である、請求項1に記載の作業室内のDNA不活化方法。
- 前記薬剤が次亜塩素酸を含む液体薬剤である、請求項2に記載の作業室内のDNA不活化方法。
- 前記標準DNAの残留量を測定する際にPCR法を用いる、請求項1〜3の何れか一項に記載の作業室内のDNA不活化方法。
- 前記作業室がクリーンルームである、請求項1〜4の何れか一項に記載の作業室内のDNA不活化方法。
- 担持体と、前記担持体に担持された標準DNAとを有し、請求項1〜5の何れか一項に記載の<作業室内のDNA不活性化方法>用の、DNAインジケータ。
- 前記標準DNAが既知の塩基配列を含むDNAである、請求項6に記載のDNAインジケータ。
- 前記標準DNAの塩基数が10〜200塩基対(bp)である、請求項6又は7に記載のDNAインジケータ。
- 前記担持体の単位面積(cm2)当たりに担持された前記標準DNAの合計の質量が0.003μg/cm2〜0.3μg/cm2である、請求項6〜8の何れか一項に記載のDNAインジケータ。
- 前記標準DNAがヒトを含む哺乳類、魚類、鳥類、爬虫類、菌類、酵母、及びウイルスのうち少なくとも1つ以上に由来する、請求項6〜9の何れか一項に記載のDNAインジケータ。
- 前記担持体の形状がシートであり、前記シートの外部からアクセス可能な表面に前記標準DNAが担持されている、請求項6〜10の何れか一項に記載のDNAインジケータ。
- 前記担持体が、セルロース含有繊維、ガラス繊維及び合成樹脂繊維のうち少なくとも1つ以上を含む、請求項6〜11の何れか一項に記載のDNAインジケータ。
- 前記担持体が濾紙、布、又はフィルムである、請求項6〜12の何れか一項に記載のDNAインジケータ。
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