JP2018143158A - 細胞内の酸素濃度の変化をモニターするための融合タンパク質 - Google Patents

細胞内の酸素濃度の変化をモニターするための融合タンパク質 Download PDF

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Abstract

【課題】細胞内の酸素濃度の変化をモニターすることができる蛍光タンパク質の提供。【解決手段】GFP又はその変異体であるドナーと、配列番号1で表されるアミノ酸配列と少なくとも90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列から成るタンパク質及び酸素と可逆的に結合することができる化合物を含むアクセプターとを含む融合タンパク質であって、アクセプターへ酸素が結合する前後でドナーとアクセプターとの間のFRET効率が変化する、融合タンパク質。【選択図】なし

Description

本発明は、細胞内における酸素濃度の変化のモニタリングに利用可能な融合タンパク質に関する。また本発明は、当該融合タンパク質(但し、酸素と可逆的に結合することができる化合物を除く)をコードするDNA、当該DNAを有する組み換えベクター、当該ベクターにより形質転換された宿主細胞、及び当該融合タンパク質を用いて細胞内の酸素濃度の変化をモニターする方法に関する。
呼吸や自然免疫(呼吸バーストによる病原菌除去等)など、多くの重要な代謝経路において酸素を利用した反応が行われている。生体内における酸素の枯渇は、さまざまな代謝に影響を及ぼし、遺伝子の転写、発現、酵素の活性調節など、あらゆるレベルでの低酸素応答を引き起こす。反対に、過剰な酸素は、活性酸素種の生成を促進し、酸化障害の引き金となる。細胞内における酸素濃度やその動態を知ることは、生命現象を代謝レベル、さらには分子レベルで理解することに直結する。細胞内における酸素濃度の変化をモニターできる分子ツールの開発が望まれている。
細胞内の酸素濃度の変化を測定するための方法として、金属-ポルフィリン化合物を利用した、燐光測定に基づく酸素濃度測定方法が知られている。これは、燐光が分子状酸素に特異的に消去されるという性質を利用している(非特許文献1)。
また、真菌細胞内の酸素濃度の変化を測定するためのプローブとして、酸素非依存性蛍光タンパク質であるフラビンモノヌクレオチド結合性蛍光タンパク質(FMN-binding fluorescent proteins (FbFp))と酸素依存性蛍光タンパク質であるYFPとの融合タンパク質(Yeast fluorescent oxygen sensor (YFOS))が報告されている(非特許文献2)。YFOSは、YFPの発色団が分子状酸素に依存して形成される性質を利用して酸素を感知する。低酸素条件下においてはYFPの発色団形成がほとんど起こらないため、FbFpに対する励起光を照射するとFbFpからの発光のみが観察される。一方、正常酸素圧条件下においては、酸素に依存してYFPの発色団が形成される。この場合、FbFpに対する励起光を照射すると、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によってYFPからの発光が観察される。
Nature,508,269−273,2014 Fungal Genetics and Biology93(2016)14−25
非特許文献1に記載されているような燐光の顕微分光測定を行うためには、特殊な実験装置が必要となる。また、燐光プローブは細胞内において速やかに拡散するため、特定の組織や器官だけをモニターすることができない。さらに、金属−ポルフィリン化合物などの燐光性分子は、蛍光性分子と比較して量子収率が低く、発光強度が小さい。したがって、クロロフィルなどの色素をもつ光合成生物を対象とする場合には、燐光の正確な検出は困難であった。
また、非特許文献2のYFOSにおいて、酸素によるYFPの発色団形成は不可逆的である。したがって、例えば正常酸素圧条件下に曝露された後に低酸素条件として、FbFpに対する励起光を照射すると、正常酸素圧条件下の場合と同様にYFPからの発光が観察されるため、細胞内の酸素濃度をモニターすることができないという問題点があった。また、YFPの発色団形成反応は正常酸素条件下においても約1時間を要するため、YFOSによる酸素の検出はタイムラグを含むという問題もあった。
したがって本発明の目的は、細胞内の酸素濃度の変化を、燐光の顕微分光測定などに依らず、より簡便にかつ高感度で評価することが可能な分子ツールを提供することである。
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討した結果、驚くべきことに、GFP又はその変異体であるドナーと、酸素と可逆的に結合することができるアクセプターとを含むFRETプローブを使用することで、プローブの周囲環境の酸素濃度の変化を、励起されたドナー分子の蛍光強度の変化として検出できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、以下の態様を有する。
[1]
GFP又はその変異体であるドナーと、
配列番号1で表されるアミノ酸配列と少なくとも90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列から成るタンパク質及び酸素と可逆的に結合することができる化合物を含むアクセプターと
を含む融合タンパク質であって、
アクセプターへ酸素が結合する前後でドナーとアクセプターとの間のFRET効率が変化する、融合タンパク質。
[2]
アクセプターへの酸素の結合前と比較して、アクセプターへの酸素の結合後にドナーとアクセプターとの間のFRET効率が低下する、[1]に記載の融合タンパク質。
[3]
前記ドナーが、配列番号2〜4から成る群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列から成る蛍光タンパク質である、[1]又は[2]に記載の融合タンパク質。
[4]
ドナー及びアクセプターを連結するリンカーをさらに含む、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
[5]
前記リンカーがペプチドリンカーである、[4]に記載の融合タンパク質。
[6]
シグナルペプチドをさらに含む、[1]〜[5]のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
[7]
酸素と可逆的に結合することができる化合物がヘムである、[1]〜[6]のいずれか1つに記載の融合タンパク質。
[8]
[1]〜[7]のいずれか1つに記載の融合タンパク質(ただし酸素と可逆的に結合することができる化合物を除く)をコードするDNA。
[9]
[8]に記載のDNAを有する組み換えベクター。
[10]
[9]に記載の組み換えベクターにより形質転換された宿主細胞。
[11]
細胞内の酸素濃度の変化をモニターする方法であって、
[1]〜[7]のいずれか1つに記載の融合タンパク質を細胞内に存在させ、
励起光によって励起されたドナーから発生する蛍光を検出し、
検出された蛍光の蛍光強度に基づいて細胞内の酸素濃度の変化をモニターすること
を含む、方法。
本発明の融合タンパク質は、燐光よりも発光強度が高い蛍光を観察することによって酸素濃度の変化をモニターすることができる。また本発明の融合タンパク質は、酸素検出感度が高く、低酸素条件下でも酸素濃度の測定が可能である。さらに、本発明の融合タンパク質と酸素との結合は速いため、酸素濃度変化を迅速に検出することが可能である。また、本発明の融合タンパク質と酸素との結合は可逆的である。したがって、光合成時や疾患状態における細胞内の酸素の挙動を、細胞内器官を含めてリアルタイムでモニターすることができる。
酸素結合型及び酸素解離型のANA(Anaerobic aerobic sensor protein)の模式図を示す。酸素解離型ANA(左)においてフォトクロミックFRET(pcFRET)が観察されるが、酸素結合型ANA(右)においてpcFRETの効率は低下する。 嫌気条件下及び好気条件下におけるANAの蛍光スペクトルを示す。 嫌気条件下及び好気条件下におけるANA−YGの蛍光スペクトルを示す。 嫌気条件下及び好気条件下におけるANA−Gの蛍光スペクトルを示す。 酸素濃度を変化させた場合における、ANAの蛍光強度変化を示す。 ANAへの酸素の結合が可逆的であることを示す。 ANA及びmtp−ANAを発現させたHeLa細胞における蛍光顕微鏡の観察結果を示す。 嫌気条件下及び好気条件下におけるprotoANAの蛍光スペクトルを示す。
本明細書において「配列同一性」とは、2つのDNA又は2つのタンパク質間の配列の同一性をいう。前記「配列同一性」は、比較対象の配列の領域にわたって、最適な状態にアラインメントされた2つの配列を比較することにより決定される。ここで、比較対象のDNA又はタンパク質は、2つの配列の最適なアラインメントにおいて、付加又は欠失(例えばギャップ等)を有していてもよい。このような配列同一性に関しては、例えば、Vector NTIを用いて、ClustalWアルゴリズム(Nucleic Acid Res.,22(22):4673-4680(1994))を利用してアラインメントを作成することにより算出することができる。尚、配列同一性は、配列解析ソフト、具体的にはVector NTI、GENETYXや公共のデータベースで提供される解析ツールを用いて測定される。前記公共データベースは、例えば、ホームページアドレスhttp://www.ddbj.nig.ac.jpにおいて、一般的に利用可能である。
本明細書において「蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescence Resonance Energy Transfer、本明細書において「FRET」とも呼ぶ)」とは、励起状態にある蛍光分子(ドナー)からごく近傍(一般的に100オングストローム以下、好ましくは50オングストローム以下)にある蛍光分子(アクセプター)へ励起エネルギーが移動する現象のことである。FRETは、ドナーの蛍光スペクトルとアクセプターの励起スペクトル又は吸収スペクトルが重なりを有する場合に観察される。
本発明の一態様は、
GFP又はその変異体であるドナーと、
配列番号1で表されるアミノ酸配列と少なくとも90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列から成るタンパク質及び酸素と可逆的に結合することができる化合物を含むアクセプターと
を含む融合タンパク質であって、
アクセプターへ酸素が結合する前後でドナーとアクセプターとの間のFRET効率が変化する、融合タンパク質である。以下で「本発明の融合タンパク質」とも呼ぶ。
本発明の融合タンパク質中のアクセプターは、酸素が解離した状態(以下で「酸素解離型」とも呼ぶ)から酸素が結合した状態(以下で「酸素結合型」とも呼ぶ)となることによって吸収特性が変化する。そしてこの吸収特性の変化に起因してドナーとアクセプターとの間のFRET効率が変化する。すなわち、アクセプターへ酸素が結合する前後で、励起されたドナーから放出される蛍光の蛍光強度は変化する。アクセプターの吸収特性の変化に起因してドナーとアクセプターとの間のFRET効率が変化する現象を、本明細書において「フォトクロミックFRET(pcFRET)」とも呼ぶ。
本発明の融合タンパク質において、アクセプターへの酸素の結合と解離は可逆的である。また本発明の融合タンパク質と酸素との結合は速いため、酸素濃度変化を迅速に検出することが可能である。したがって、本発明の融合タンパク質はその周囲環境の酸素濃度の変化をリアルタイムでモニターすることが可能である。
好ましくは、本発明の融合タンパク質は、アクセプターへの酸素の結合前と比較して、アクセプターへの酸素の結合後にドナーとアクセプターとの間のFRET効率が低下する。すなわち、アクセプターへの酸素の結合前と比較して、アクセプターへの酸素の結合後に、励起されたドナーから放出される蛍光の蛍光強度が増大する(図1を参照)。
本明細書において「FRET効率」とは、ドナーを励起して得られる蛍光強度の、アクセプター存在下における低下の割合のことである。FRET効率が高いほど、ドナーの蛍光スペクトルとアクセプターの吸収スペクトルの重なりが大きいことを示す。本明細書においてFRET効率は、全てが酸素結合型となっている場合の本発明の融合タンパク質の蛍光強度をA、特定の酸素濃度において測定された本発明の融合タンパク質の蛍光強度をBとした場合に、以下の式に基づいて計算される。なお蛍光強度は、励起光波長を固定して特定の波長(例えば蛍光極大波長)における蛍光強度を測定することにより得られる。
本明細書において「GFP変異体」とは、GFPのアミノ酸配列と高い同一性(例えば90%以上の同一性)を有し、かつ固有の蛍光特性を有する、GFPの変異体のことである。アクセプターへ酸素が結合する前後でドナーとアクセプターとの間のFRET効率が変化する限り、GFP変異体は特に限定されない。GFP変異体は好ましくは波長530nm〜600nmの範囲で、より好ましくは波長540nm〜590nmの範囲で蛍光を有する。例えば、Venus(励起極大波長約515nm、蛍光極大波長約528nm)、EGFP(励起極大波長約488nm、蛍光極大波長約509nm)などが挙げられる。
本発明の融合タンパク質において使用されるドナーは、アクセプターへ酸素が結合する前後でドナーとアクセプターとの間のFRET効率が変化する限り特に限定されないが、好ましくは、配列番号2〜4(それぞれ、Venus、Venus−Y203T、EGFPに相当)から成る群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%以上の、より好ましくは、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列から成る蛍光タンパク質である。
本発明の融合タンパク質において使用されるアクセプターは、配列番号1で表されるアミノ酸配列と少なくとも90%以上の、好ましくは、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列から成るタンパク質と、酸素と可逆的に結合することができる化合物とを含む、又はから成る。
本明細書において「酸素と可逆的に結合することができる化合物」としては、特に限定されないが、好ましくは酸素と可逆的に結合することができる金属錯体化合物であり、より好ましくは金属を含むポルフィリン化合物であり、特に好ましくはヘムである。
配列番号1で表されるアミノ酸配列から成るタンパク質及びヘムから成るタンパク質は、「DosH」とも呼ばれ、大腸菌由来の酸素センサータンパク質であるDos(Direct oxygen sensor protein)のヘム結合ドメインであり、ヘムによって酸素の可逆的な結合能を有する。
本明細書において「ヘム」は、2価の鉄原子及びポルフィリンから成る錯体のことである。好ましくは、2価の鉄原子及びプロトポルフィリンIXから成る錯体である。
本発明の融合タンパク質において、アクセプターとドナーは直接連結されても良いし、あるいはリンカーを介して連結されても良い。アクセプターへ酸素が結合する前後におけるドナーとアクセプターとの間のFRET効率の変化の大きさを調節する観点から、好ましくは、本発明の融合タンパク質は、ドナー及びアクセプターを連結するリンカーをさらに含む。使用されるリンカーは、アクセプターへ酸素が結合する前後でドナーとアクセプターとの間のFRET効率が変化するように、ドナーとアクセプターを配置できるリンカーであれば特に限定されない。好ましくは、リンカーはペプチドリンカーである。リンカーがペプチドリンカーである場合、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、10個以上、20個以上又は30個以上であって、200個以下、150個以下、100個以下、90個以下、80個以下、70個以下、60個以下又は50個以下のアミノ酸から成るペプチドリンカーが好ましい。また、リンカーがペプチドリンカーである場合、コイルドコイル構造又はヘリックスターンヘリックス構造を有するペプチドリンカーもまた好ましい。特に好ましくは、配列番号5で表されるアミノ酸配列と少なくとも90%以上の、さらに好ましくは、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、コイルドコイル構造を有するペプチドリンカーである。
本発明の融合タンパク質は、細胞内の特定の部位に移行させるためのシグナルペプチドをさらに含んでも良い。シグナルペプチドとしては、特に限定されないが、例えばMTP(mitocondrial targeting peptide)(配列番号6)及びNLS(nuclear localization signal)(配列番号44)などが挙げられる。
本発明の一態様は、本発明の融合タンパク質(但し、酸素と可逆的に結合することができる化合物を除く)をコードするDNAである。以下で「本発明のDNA」とも呼ぶ。一の実施形態において、本発明のDNAは、配列番号17(ANAをコードする)、18(ANA−YGをコードする)、19(ANA−Gをコードする)、20(mtp−ANAをコードする)又は41(protoANAをコードする)の塩基配列に対して70%以上、80%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上又は100%の配列同一性を有する塩基配列からなる。
本発明の一態様は、本発明のDNAを有する組み換えベクターである。以下で「本発明の組み換えベクター」とも呼ぶ。本発明の組み換えベクターは、環状、直鎖状等いかなる形態のものであってもよく、また本発明のDNAに加え、必要ならば他の塩基配列を有していてもよい。他の塩基配列としては、エンハンサー配列、プロモーター配列、リボゾーム結合配列、コピー数の増幅を目的として使用される塩基配列、シグナルペプチドをコードする塩基配列、ポリA付加配列、スプライシング配列、複製開始点、選択マーカーとなる遺伝子の塩基配列等が挙げられる。
遺伝子組み換えに際しては、適当な合成DNAアダプターを用いて翻訳開始コドンや翻訳終止コドンを本発明のDNAに付加したり、あるいは塩基配列内に適当な制限酵素切断配列を新たに発生させたり、あるいは消失させたりすることも可能である。これらは当業者が通常行う作業の範囲内であり、当業者は本発明のDNAを基に任意かつ容易に加工することができる。
また、本発明のベクターは、使用する宿主に応じた適当なベクターを選択すればよい。ベクターは、自律複製ベクター、すなわち宿主細胞の染色体複製とは無関係に自律的に複製可能なベクターであってもよい。また、宿主細胞のゲノムに統合され、統合された染色体と共に複製されるものであってもよい。例えば、プラスミドの他にバクテリオファージ、バキュロウイルス、レトロウィルス、ワクシニアウィルス等の種々のウイルスを用いることが可能である。
利用可能な市販の発現ベクターとしては、pcDM8(フナコシ社製)、pcDNAI(フナコシ社製)、pcDNAI/AmP(Invitrogen社製)、EGFP−C1(Clontech社製)、pREP4(Invitrogen社製)、pGBT−9(Clontech社製)、pet23a(Novagen社製)等を例示することができる。本発明の融合タンパク質の発現は、該タンパク質をコードする遺伝子固有のプロモーター配列の制御下に発現させることができる。あるいは、本発明のDNAの上流に別の適当な発現プロモーターを連結して使用することもできる。その様な発現プロモーターは、宿主及び発現の目的に応じて適宜選択すればよく、例えば宿主が大腸菌である場合にはT7プロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、λPLプロモーターなどが、宿主が酵母である場合にはPHO5プロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター等が、宿主が動物細胞である場合にはSV40由来プロモーター、レトロウィルスプロモーター、サイトメガロウイルス(ヒトCMV)のIE(immediate early)遺伝子のプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、SRαプロモーター等を挙げることができる。本発明の融合タンパク質をコードするDNAを上記に例示されたプロモーターに連結する、あるいは発現ベクターに組み込む等の操作は、Maniatis T. et al. (Molecular Cloning, a Laboratory Manual, Cold Spring harbor Laboratory, New York, 1982)及びその他の実験操作マニュアル書の記載に基づいて行うことができる。
本発明の一態様は、本発明の組み換えベクターにより形質転換された宿主細胞である。宿主細胞の例としては、エシェリヒア(Escherichia)属細菌、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属細菌、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属細菌、バチラス(Bacillus)属細菌、セラチア(Serratia)属細菌、シュードモナス(Pseudomonas)属細菌、アースロバクター(Arthrobacter)属細菌、エルウニア(Erwinia)属細菌、メチロバクテリウム(Methylobacterium)属細菌、ロドバクター(Rhodobacter)属細菌、ストレプトミセス(Streptomyces)属微生物、ザイモモナス(Zymomonas)属微生物、サッカロミセス(Saccharomyces)属酵母等の微生物、カイコなどの昆虫細胞、HEK293細胞、MEF細胞、Vero細胞、Hela細胞、CHO細胞、WI38細胞、BHK細胞、COS−7細胞、MDCK細胞、C127細胞、HKG細胞、ヒト腎細胞株等の動物細胞を挙げることができる。
宿主細胞に組み換えベクターを導入する方法としては、前記のManiatis T. et al. (Molecular Cloning, a Laboratory Manual, Cold Spring harbor Laboratory, New York, 1982)を初めとする実験操作マニュアル書に記載されている方法、例えば、エレクトロポレーション法、プロトプラスト法、アルカリ金属法、リン酸カルシウム沈澱法、DEAEデキストラン法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法等により行うことができる。Sf9やSf21等の昆虫細胞の利用については、Baculovirus Expression Vectors, A Laboratory Manual, W. H. Freeman and Company, New York (1992) 及び、BIO/TECHNOLOGY vol. 6, 1988, page 47等に記載されている。
本発明の融合タンパク質は、酸素と可逆的に結合することができる化合物(例えばヘム)が(例えば宿主細胞中で生合成されることによって)宿主細胞中に存在する場合には、本発明の組み換えベクターを前記の宿主細胞内で発現させ、宿主細胞抽出液から目的とするタンパク質を回収し、精製することによって得ることができる。細胞抽出液から回収されたタンパク質の一部において、酸素と可逆的に結合することができる化合物が含まれていない場合には、精製過程において酸素と可逆的に結合することができる化合物(例えばヘム又はヘミン)を添加することで本発明の融合タンパク質の量を増加させることができる。例えば、宿主細胞中で酸素と可逆的に結合することができる化合物(例えばヘム)が生合成される場合において、宿主細胞が存在する培養培地中に、酸素と可逆的に結合することができる化合物の生合成を促進することができる化合物(例えば5−アミノレブリン酸)を添加しても良い。一方、酸素と可逆的に結合することができる化合物が宿主細胞内に存在しない場合には、本発明の組み換えベクターを前記の宿主細胞内で発現させ、宿主細胞抽出液から目的とするタンパク質を回収し、精製過程において酸素と可逆的に結合することができる化合物を添加することで得ることができる。タンパク質を精製する方法としては、タンパク質の精製に通常使用されている方法の中から適切な方法を適宜選択して行うことができる。すなわち、塩析法、限外濾過法、等電点沈澱法、ゲル濾過法、電気泳動法、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィーや抗体クロマトグラフィー等の各種アフィニティークロマトグラフィー、クロマトフォーカシング法、吸着クロマトグラフィー及び逆相クロマトグラフィー等、通常使用され得る方法の中から適切な方法を適宜選択し、必要によりHPLCシステム等を使用して適当な順序で精製を行えば良い。
本発明の融合タンパク質はまた、ドナーとアクセプターとを別々に作製し、それらを(例えばリンカーを介して)連結し、その後に酸素と可逆的に結合することができる化合物を添加することで得ることもできる。
本発明の一態様は、細胞内の酸素濃度の変化をモニターする方法であって、本発明の融合タンパク質を細胞内に存在させ、励起光によって励起されたドナーから発生する蛍光を検出し、検出された蛍光の蛍光強度に基づいて細胞内の酸素濃度の変化をモニターすることを含む、方法である。以下で「本発明の方法」とも呼ぶ。
本発明の方法において、細胞内に本発明の融合タンパク質を存在させるためには、酸素と可逆的に結合することができる化合物の存在下で本発明のDNAを有する組み換えベクターを当該細胞内で発現させてもよいし、或いは、本発明の融合タンパク質を当該細胞内へ直接導入してもよい。本発明の融合タンパク質を細胞内へ直接導入する方法は特に限定されないが、例えば、カチオン性脂質をベースとしたタンパク質導入試薬などを使用して行われる。また、エレクトロポレーション法やマイクロインジェクション法によっても行われる。
上記における融合タンパク質の蛍光の検出は、特に限定されないが、例えば蛍光顕微鏡を使用して、又は分光蛍光光度計を使用して行われる。例えば検出される蛍光の蛍光強度を測定し、FRET効率を計算することで、あるいは、全てが酸素結合型となっている場合の当該タンパク質の蛍光強度、及び/又は全てが酸素解離型となっている場合の当該タンパク質の蛍光強度と、測定された蛍光強度とを比較することで、細胞内の酸素濃度の変化がモニターできる。
以下に示す実施例を参照して本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例によって限定されるものでないことは言うまでもない。
実施例で用いた各種試薬は、特に記載の無い限り市販品を使用した。
実施例1
ANA(Anaerobic aerobic sensor protein)発現用ベクターの調製
蛍光タンパク質VenusとDosHとを、逆平行リンカー(Antiparallel coiled coil linker; APCリンカー)で連結することにより、融合タンパク質(配列番号7)発現用ベクター(pET21a−ANA)を構築した。当該融合タンパク質にヘムが結合したものを、以下で「ANA(Anaerobic aerobic sensor protein)」とも呼ぶ。
Venusのコード領域を、pET21a−Venusを鋳型とし、以下の二つのプライマーを用いてPCRを行って増幅した。PCR酵素としてKod−plus(TOYOBO)を使用した。
DosHのコード領域は、大腸菌(Escherichia coli)のJM109株のゲノムDNAを鋳型とし、以下の二つのプライマーを用いてPCRを行い、増幅した。
増幅したVenus及びDosH断片に対して、それぞれNdeIとEcoRIおよびEcoRIとXhoI処理(プライマーの下線部が切断部位)を行った後、ライゲーションによりpET21aのマルチクローニング部位のNdeI−XhoIサイトにまとめてサブクローニングし、pET21a−Venus−DosHを構築した。
以下のAPCリンカーのコード領域(配列番号15)を、人工遺伝子合成(Invitrogen Life Technologies)により作製した。
上記遺伝子断片を鋳型とし、以下の二つのプライマーを用いてPCRを行い、APCリンカーのコード領域を増幅した。
増幅断片に対してBamHIおよびEcoRI処理(プライマーの下線部が切断部位)をした後、これをpET21a−Venus−DosHのBamHI−EcoRIサイトへ挿入し、pET21a−Venus−APCリンカー−DosHを構築した。このpET21a−Venus−APCリンカー−DosHを鋳型とし、以下のプライマーを用いて部位特異的変異導入を行い、VenusとAPCリンカーのつなぎ目に位置するグリシン−セリン残基をグルタミン酸−フェニルアラニン残基へと置換し、最終的な酸素センサー蛍光タンパク質ANAの発現用プラスミド、pET21a−ANAとした。ANAのC末端にはpET21aに由来する6xHis−tagが付加されて発現する。
実施例2
ANA−YG発現用ベクターの調製
蛍光タンパク質Venusにおける203番目のチロシン残基をスレオニン残基へと置換(Y203T)したタンパク質とDosHとをAPCリンカーで連結することにより、融合タンパク質(配列番号8)発現用ベクター(pET21a−ANA−YG)を構築した。当該融合タンパク質にヘムが結合したものを、以下で「ANA−YG」とも呼ぶ。ANA−YGは、黄緑色の蛍光を示す変異型ANAである。
pET21a−ANAを鋳型として、以下のプライマーを用いて部位特異的変異導入を行い、Venusにおける203番目のチロシン残基をスレオニン残基へと置換する(Y203T)ことで、pET21a−ANA−YGを構築した。
実施例3
ANA−G発現用ベクターの調製
蛍光タンパク質EGFPとDosHとをAPCリンカーで連結することにより、融合タンパク質(配列番号9)発現用ベクター(pET21a−ANA−G)を構築した。当該融合タンパク質にヘムが結合したものを、以下で「ANA−G」とも呼ぶ。ANA−Gは、緑色の蛍光を示す変異型ANAである。pET21a−ANA−GはpET21a−ANAにおけるVenusのコード領域をEGFPのコード領域と入れ替えることで作製した。
pET21c−EGFPを鋳型とし、以下の二つのプライマーを用いてPCRを行い、EGFPのコード領域を増幅した。
増幅したegfp断片に対して、NdeIとEcoRI処理(プライマーの下線部が切断部位)を行った。Venusのコード領域を除去したプラスミド断片pET21a−APCリンカー−DosHは、pET21a−ANAをNdeIとEcoRIを用いて部分消化して調製した。ライゲーションにより前述のegfp断片をpET21a−APCリンカー−DosHに連結し、pET21a−ANA−Gを構築した。
実施例4
大腸菌におけるANA及びその変異体の発現と精製
pET21a−ANAプラスミドを用いて大腸菌BL21株を形質転換し、37℃下、アンピシリン(50μg/ml)を含むLB寒天培地で培養した。翌日、5mLのLB液体培地に植菌し前培養を行った。さらに、この前培養液を1.5LのLB液体培地に植菌し本培養を行った。OD600=0.6の時点で、IPTGを終濃度1mMとなるように添加し、20℃で一晩培養した。菌体を遠心分離により回収し、cOmplete(Roche)とヘミンを含むTNH−バッファー(25mM Tris−HCl;pH8.0、150mM NaCl,25μMヘミン)に懸濁し、ソニケーション(Sonifier model 250、Branson)により大腸菌細胞を破砕した。破砕後、37,000xg、60分間(RP50-2 rotor)遠心し、可溶性画分を分離した。Ni−NTA樹脂を用いて可溶性画分に含まれるANAタンパク質を分離し、20mのイミダゾールを含むTN−バッファーで非特異的吸着を洗浄した後に、250mMのイミダゾールを含むTN−バッファーでANAを溶出した。ANA−YG及びANA−Gについても、pET21a−ANA−YGプラスミド及びpET21a−ANA−Gプラスミドを用いて同様に調製した。
実施例5
酸素に依存した、ANA及びその変異体の蛍光強度変化の測定
実施例4において外気中で調製したANA、ANA−YG及びANA−Gをそれぞれ嫌気チャンバー(COY, Glass Lake, MI)に入れ、亜ジチオン酸ナトリウムを終濃度0.5mMとなるように添加して10秒間撹拌し、ANA、ANA−YG及びANA−Gに結合した酸素およびそれらのタンパク質溶液中に含まれる溶存酸素を除去した。その後速やかに嫌気的なTN−バッファーを用いて20倍希釈し、酸素解離型のANA、ANA−YG及びANA−Gの溶液(1〜2μM)とした。調製した溶液をキュベットに封入して嫌気チャンバーの外へ出し、嫌気状態を保ったまま蛍光分光光度計(FP8500,Jasco)を用いて蛍光強度を測定した(嫌気)。次にキュベットを開封して溶液を空気に暴露した後10秒間混合し、速やかに蛍光強度を測定した(好気)。ANA溶液では、500nm励起時における527nm蛍光強度を測定した。ANA−YG溶液は、485nm励起時における513nm蛍光強度測定した。ANA−G溶液は、485nm励起時における510nm蛍光強度を測定した。結果を図2〜4に示す。いずれの場合も、嫌気条件下と比較して好気条件下においてFRET効率が低下し、蛍光強度が大きくなった。
実施例6
ANAの酸素感受性の確認
嫌気チャンバー内の酸素解離型のANA溶液へ、空気飽和したTN−バッファーを、溶存酸素濃度が0μM、6.1μM、17.2μM、18.4μM、19.6μM、20.8μM、22.1μM及び36.8μMとなるように混合した。混合溶液をキュベットに封入して嫌気チャンバーの外へ出し、蛍光分光光度計を用いて500nm励起時における527nm蛍光強度を測定した。結果を図5に示す。ANAは、10μM以下であっても酸素濃度変化を検出することができた。
実施例7
ANAの蛍光強度変化の可逆性の確認
嫌気チャンバー内において調製した酸素解離型のANA溶液(1μM)をキュベットに封入し、嫌気状態を保ったまま蛍光分光光度計を用いて500nm励起時における527nm蛍光強度を測定した(ステップ1)。キュベットを開封してANA溶液を空気に暴露した後10秒間混合し、500nm励起時における527nm蛍光強度を測定した(ステップ2)。酸素暴露したANA溶液を回収し、終濃度2μMとなるようにヘミンを添加した後にNi−NTA樹脂を用いてANAを分離した。分離されたANAを用いて、前述のように、嫌気チャンバー内において酸素解離型のANA溶液(0.33μM)を調製し、キュベットに封入し、嫌気状態を保ったまま蛍光分光光度計を用いて蛍光強度を測定し(ステップ3)、ANA溶液を空気に暴露して10秒間混合した後に蛍光強度を測定した(ステップ4)。ANAの蛍光強度変化を図6に示す。ANAへの酸素の結合が可逆的であること、及び酸素濃度変化をANAの蛍光強度の変化として検出できることが確認された。
実施例8
HeLa細胞におけるANA発現コンストラクトの作製
(1)ANA発現用プラスミドの調製
pcDNA3.1(−)を鋳型とし、以下の二つのプライマーを用いてPCRを行い増幅した後、XhoIとBamHI処理(プライマーの下線部が切断部位)を行った。
ANAのコード領域を、前述のpET21a−ANAを鋳型とし、以下の二つのプライマーを用いてPCRを行い増幅した。
増幅したana断片に対してBglIIとXhoI処理(プライマーの下線部が切断部位)を行った後、ライゲーションによりpcDNA3.1(−)のBamHI−XhoIサイトに連結し、pcDNA3.1−ANAを構築した。
(2)mtp−ANA発現用プラスミドの調製
ミトコンドリアターゲッティング用プラスミド(MTP)とANAとの融合タンパク質(配列番号10)を発現するためのプラスミドを、ANAのコード領域の5’末端にMTP(mitocondrial targeting peptide)をコードする塩基配列を付加することで構築した。MTPコード領域は、pEGFP−N1(Clontech)を鋳型とし、以下の二つのプライマー用いてPCRを行い増幅した。なお、当該融合タンパク質にヘムが結合したものを、以下で「mtp−ANA」とも呼ぶ。
増幅したmtp断片に対してBglIIとXhoI処理(プライマーの下線部が切断部位)を行った後、ライゲーションによりpcDNA3.1(−)のBamHI−XhoIサイトにサブクローニングし、pcDNA3.1−MTPを構築した。このpcDNA3.1−MTPを鋳型とし、以下の二つのプライマーを用いてPCRを行い増幅した後、BamHIとXhoI処理(プライマーの下線部が切断部位)を行った。
前述の、BglII及びXhoI処理をしたana断片を、ライゲーションによりpcDNA3.1−MTPのBamHI−XhoIサイトに連結し、pcDNA3.1−mtp−ANAを構築した。
実施例9
HeLa細胞におけるANAの蛍光の観察
実施例8で調製したプラスミド、pcDNA3.1−ANAおよびpcDNA3.1−mtp−ANAを用いて、ガラスボトムディッシュで培養したHeLa細胞に導入した。形質転換は、Lipofectamin3000 (Life technologies)を用い、付属のプロトコールに従って行った。プラスミドの導入後、細胞内のヘム生合成量を増加させるために培地に5−アミノレブリン酸を添加し、さらに20〜24時間培養して、ANAを発現させた。顕微鏡観察の結果を図7に示す。使用した顕微鏡の仕様は以下の通りである。顕微鏡本体:IX73(Olympus)、ハロゲン光源:TH4−100(Olympus)、蛍光ミラーユニット: U−FYFPフィルター(Olympus)。mtp−ANAを使用した場合には、ミトコンドリアへのANAの局在化が確認された。
実施例10
protoANA発現用ベクターの調製
蛍光タンパク質VenusとDosHとを、2アミノ酸(Gly−Ser)からなるリンカーで連結した融合タンパク質(配列番号40)の発現用ベクター(pET21a−protoANA)を調製した。なお、当該融合タンパク質にヘムが結合したものを、以下で「protoANA」とも呼ぶ。
Venusのコード領域を、pET21a−Venusを鋳型とし、以下の二つのプライマーを用いてPCRを行って増幅した。PCR酵素としてKod−plus(TOYOBO)を使用した。
DosHのコード領域は、大腸菌(Escherichia coli)のJM109株のゲノムDNAを鋳型とし、以下の二つのプライマーを用いてPCRを行い、増幅した。
増幅したVenus及びDosH断片に対して、それぞれNdeIとBamHIおよびBamHIとXhoI処理(プライマーの下線部が切断部位)を行った後、ライゲーションによりpET21aのマルチクローニング部位のNdeI−XhoIサイトにまとめてサブクローニングし、pET21a−protoANAを構築した。
実施例11
酸素に依存したprotoANAの蛍光強度変化の測定
実施例10で調製したprotoANA発現用ベクターを用いて、実施例4と同様の方法でprotoANAを調製した。得られたprotoANAを用いて実施例5と同様の実験を行った結果、嫌気条件下と比較して好気条件下においてFRET効率が低下し、蛍光強度が大きくなった。結果を図8に示す。嫌気条件下と比較して好気条件下においてFRET効率が低下し、蛍光強度が大きくなった。
本発明の融合タンパク質を用いることによって、細胞内における酸素濃度の変化を、融合タンパク質の蛍光強度の変化に基づいて、蛍光顕微鏡観察などで簡便にモニターすることができる。

Claims (11)

  1. GFP又はその変異体であるドナーと、
    配列番号1で表されるアミノ酸配列と少なくとも90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列から成るタンパク質及び酸素と可逆的に結合することができる化合物を含むアクセプターと
    を含む融合タンパク質であって、
    アクセプターへ酸素が結合する前後でドナーとアクセプターとの間のFRET効率が変化する、融合タンパク質。
  2. アクセプターへの酸素の結合前と比較して、アクセプターへの酸素の結合後にドナーとアクセプターとの間のFRET効率が低下する、請求項1に記載の融合タンパク質。
  3. 前記ドナーが、配列番号2〜4から成る群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列から成る蛍光タンパク質である、請求項1又は2に記載の融合タンパク質。
  4. ドナー及びアクセプターを連結するリンカーをさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
  5. 前記リンカーがペプチドリンカーである、請求項4に記載の融合タンパク質。
  6. シグナルペプチドをさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
  7. 酸素と可逆的に結合することができる化合物がヘムである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の融合タンパク質(ただし酸素と可逆的に結合することができる化合物を除く)をコードするDNA。
  9. 請求項8に記載のDNAを有する組み換えベクター。
  10. 請求項9に記載の組み換えベクターにより形質転換された宿主細胞。
  11. 細胞内の酸素濃度の変化をモニターする方法であって、
    請求項1〜7のいずれか1項に記載の融合タンパク質を細胞内に存在させ、
    励起光によって励起されたドナーから発生する蛍光を検出し、
    検出された蛍光の蛍光強度に基づいて細胞内の酸素濃度の変化をモニターすること
    を含む、方法。
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