JP2018139513A - ホウレンソウ、及びホウレンソウの水耕栽培方法 - Google Patents

ホウレンソウ、及びホウレンソウの水耕栽培方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 カリウムの含有量が少なく、かつ鉄の含有量が多いホウレンソウの水耕栽培法などの提供。【解決手段】 ホウレンソウの水耕栽培方法であって、カリウムと鉄とを含む第一種の液肥で栽培期間中の所定の日数のあいだ栽培し、その後、カリウムを実質的に含まず、かつ鉄の濃度が130質量ppm以上である第二種の液肥で前記栽培期間中の収穫前の7日間以上栽培するホウレンソウの水耕栽培方法である。【選択図】図1

Description

本件は、ホウレンソウ、及びホウレンソウの水耕栽培方法に関する。
野菜の土壌栽培では、例えば、連作障害が発生したり、土の固さにより根の伸長が抑えられて野菜全体の生育が遅れたり、土壌の老朽化による収量の低下等種々の問題がある。そこで、この様な問題を解消する栽培方法として野菜の水耕栽培方法が着目されている。
水耕栽培方法では、例えば、野菜の硝酸塩の含有量を調整する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
慢性腎臓病患者は、体内のカリウムを十分に排出することができないため、食品として摂取するカリウムの量の制限が必要になる。カリウムは野菜に多く含まれ、食生活向上を鑑みれば、できる限りカリウム含有量の少ない野菜の栽培技術が望まれる。
そこで、低カリウムホウレンソウを水耕栽培する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また一方で、野菜に含まれる成分のうち人に有用な特定の成分量を多くできれば、食品としての高機能化を期待できる。例えば、鉄分を多く含む野菜を栽培することができれば、鉄欠乏に起因する健康上の不調や疾病を改善することに寄与できる。慢性腎臓病患者にとっても、このような高機能野菜は望まれることである。
したがって、カリウムの含有量が少なく、かつ鉄の含有量が多いホウレンソウの水耕栽培方法が求められているのが現状である。
特開平6−105625号公報 特開2008−61587号公報
本件は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本件は、カリウムの含有量が少なく、かつ鉄の含有量が多いホウレンソウの水耕栽培法、及びカリウムの含有量が少なく、かつ鉄の含有量が多いホウレンソウを提供することを目的とする。
1つの態様では、ホウレンソウの水耕栽培方法は、カリウムと鉄とを含む第一種の液肥で栽培期間中の所定の日数のあいだ栽培し、その後、カリウムを実質的に含まず、かつ鉄の濃度が130質量ppm以上である第二種の液肥で前記栽培期間中の収穫前の7日間以上栽培する。
また、1つの態様では、ホウレンソウは、新鮮重100グラムあたり、カリウムの含有量が240ミリグラム以下であり、かつ鉄の含有量が2.0ミリグラム以上である。
1側面では、カリウムの含有量が少なく、かつ鉄の含有量が多いホウレンソウの水耕栽培方法が得られる。
他の1側面では、カリウムの含有量が少なく、かつ鉄の含有量が多いホウレンソウが得られる。
図1は、第二種の液肥による栽培期間と鉄含有量との関係を表すグラフである。 図2は、第三種の液肥による栽培期間と鉄含有量との関係を表すグラフである。
(ホウレンソウの水耕栽培方法)
開示のホウレンソウの水耕栽培方法では、カリウムと鉄とを含む第一種の液肥で栽培期間中の所定の日数のあいだ栽培し、その後、カリウムを実質的に含まず、かつ鉄の濃度が130質量ppm以上である第二種の液肥で前記栽培期間中の収穫前の7日間以上栽培する。
本発明者らは、ホウレンソウの水耕栽培において、栽培期間の後期に、カリウムを実質的に含まず、かつ高濃度の鉄を含有する液肥を用いることにより、カリウムの含有量が少なく、かつ鉄の含有量が多いホウレンソウを栽培できることを見出した。
水耕栽培は、例えば、播種、育苗、及び定植の3つの段階に分けることができる。
前記播種とは、種を撒いてから発芽するまでの段階である。前記播種においては、例えば、スポンジに種を撒いて、暗所に置いて、育成する。
前記育苗とは、発芽してからある程度の大きさになるまで苗を成長させる段階である。
前記定植とは、育苗した苗を収穫できる大きさまで成長させる段階である。
開示の水耕栽培方法は、例えば、前記定植の段階において用いられる。
<第一種の液肥>
前記第一種の液肥としては、カリウムと鉄とを含む液肥であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記第一種の液肥におけるカリウムの濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、120質量ppm〜320質量ppmが好ましく、240質量ppm〜270質量ppmがより好ましい。
前記第一種の液肥における鉄の濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.5質量ppm以上が好ましく、0.5質量ppm〜50質量ppmがより好ましく、1.0質量ppm〜30質量ppmが更により好ましく、1.5質量ppm〜25質量ppmが特に好ましい。
前記第一種の液肥は、その他に、窒素、リン酸、マグネシウム、マンガン、ホウ素、亜鉛、モリブデン、カルシウムなどを含有していてもよい。
これらは、これらを含む化合物を用いて前記第一種の液肥を調製することで、前記第一種の液肥に含有させることができる。
前記第一種の液肥は、例えば、市販品を用いて作製することができ、例えば、OATアグリオ社のファームエース1号S、及びファームエース2号、並びに水(例えば、水道水)を所望の濃度となるように混合して作製することができる。
<第二種の液肥>
前記第二種の液肥としては、カリウムを実質的に含まず、かつ鉄の濃度が130質量ppm以上である液肥であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
ここで「カリウムを実質的に含まない」とは、第二種の液肥のカリウム濃度を測定した際に測定限界値以下であればよく、そのため、水に含有される不可避的な夾雑カリウムの含有は許容される。例えば、イオンメーターを用いて、第二種の液肥のカリウム濃度を測定した際に、測定限界値以下であれば、それは、「カリウムを実質的に含まない」といえる。測定限界値としては、例えば、10ppmが挙げられる。
前記第二種の液肥における鉄の濃度としては、130質量ppm以上であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、130質量ppm〜190質量ppmが好ましく、150質量ppm〜170質量ppmがより好ましい。前記第二種の液肥における鉄の濃度が高すぎると、ホウレンソウの発育を阻害することがあるため、前記鉄の濃度は、190質量ppm以下であることが好ましい。
前記第二種の液肥は、その他に、窒素、リン酸、マグネシウム、マンガン、ホウ素、亜鉛、モリブデン、カルシウムなどを含有していてもよい。
これらは、これらを含む化合物を用いて前記第二種の液肥を調製することで、前記第二種の液肥に含有させることができる。
前記第二種の液肥は、鉄の析出を防止する点から、遮光された状態で貯蔵されることが好ましい。
なお、液肥における鉄の濃度は、例えば、イオンクロマトグラフィーなどにより容易に測定することができる。
前記水耕栽培方法においては、前記第一種の液肥で栽培期間中の所定の日数のあいだ栽培する。前記所定の日数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5日間〜12日間が好ましく、8日間〜10日間がより好ましい。
前記水耕栽培方法において、前記第二種の液肥で栽培する、前記栽培期間中の収穫前の日数は、7日間以上であり、13日間以上が好ましい。前記日数の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、30日間などが挙げられる。
前記水耕栽培方法においては、例えば、ホウレンソウの根に、前記第一種の液肥を、前記第一種の液肥が流れている状態で与えることが量産の点から好ましい。
前記水耕栽培方法においては、例えば、ホウレンソウの根に、前記第二種の液肥を、前記第二種の液肥が流れている状態で与えることが量産の点から好ましい。
即ち、ホウレンソウを量産する場合には、各種液肥はタンクに貯蔵しておき、栽培対象のホウレンソウが配置された栽培棚へ液肥を循環させる、すなわち、栽培棚に配置されているホウレンソウの根に対して、液肥が流れている状態で与えられることが好ましい。
液肥が流れている状態で与えることの利点として、以下の点が挙げられる。
・常に栄養のある液肥を送ることができる。
循環している液肥はタンク内に戻ると、設定しているEC値に調整されて、再び栽培棚のホウレンソウへ供給できるため、根には常に栄養のある液肥が供給できる。
・溶存酸素(DO)の消耗を減らすことができる。
植物は根からも液肥中の酸素を取り込むため、液肥中の溶存酸素(DO)が重要である。液肥が循環することで、空気と混ざり合い、液肥中に酸素が供給され、溶存酸素(DO)を減少させずに栽培できる。
・液肥のよどみを減らすことができる。
液肥が循環していることで、栽培トレー内及び貯蔵タンク内に流れができるため、液肥の濃度にムラがなくなる。
前記第二種の液肥を貯蔵する貯蔵タンクは、鉄の析出を防止する点から、前記第二種の液肥を遮光された状態で貯蔵できることが好ましい。
前記第一種の液肥の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、20℃〜25℃などが挙げられる。
前記第二種の液肥の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、20℃〜25℃などが挙げられる。
前記水耕栽培方法においては、光を前記ホウレンソウに照射する。使用される光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、太陽光、蛍光灯、LEDなどが挙げられる。
前記水耕栽培方法は、一定の収穫量を安定して得るために、いわゆる植物工場において行われることが好ましい。
前記植物工場は、例えば、温度調整が可能な閉鎖空間内でホウレンソウを水耕栽培する水耕栽培装置を備える植物工場である。
前記水耕栽培装置は、例えば、前記ホウレンソウを収容する栽培ポットを備えた栽培棚と、前記閉鎖空間内の室温を調整する手段と、前記ホウレンソウへ液肥を供給する手段とを有する。
前記閉鎖空間とは、太陽光が入らず、かつ外気が入らない空間をいい、例えば、クリーンルームが挙げられる。前記閉鎖空間内の室温としては、例えば、20℃〜25℃が挙げられる。
前述のとおり、本発明者らは、ホウレンソウの水耕栽培において、栽培期間の後期に、カリウムを実質的に含まず、かつ高濃度の鉄を含有する液肥を用いることにより、カリウムの含有量が少なく、かつ鉄の含有量が多いホウレンソウを栽培できることを見出し、本発明の完成に至った。
本発明者らは、更に検討を進めたところ、前記第二種の液肥に代えて、カリウムを含み、かつ鉄の濃度が145質量ppm以上である第三種の液肥を用いても、鉄の含有量が多いホウレンソウを栽培できることを見出した。
即ち、前記水耕栽培方法は、前記第二種の液肥に代えて、カリウムを含み、かつ鉄の濃度が145質量ppm以上である第三種の液肥を用いてもよい。
<第三種の液肥>
前記第三種の液肥は、カリウムを含み、かつ鉄の濃度が145質量ppm以上である。
前記第三種の液肥におけるカリウムの濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、110質量ppm〜230質量ppmが好ましく、120質量ppm〜180質量ppmがより好ましい。
前記第三種の液肥における鉄の濃度としては、145質量ppm以上であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、145質量ppm〜190質量ppmが好ましく、150質量ppm〜170質量ppmがより好ましい。前記第三種の液肥における鉄の濃度が高すぎると、ホウレンソウの発育を阻害することがあるため、前記鉄の濃度は、190質量ppm以下であることが好ましい。
前記第三種の液肥は、その他に、窒素、リン酸、マグネシウム、マンガン、ホウ素、亜鉛、モリブデン、カルシウムなどを含有していてもよい。
これらは、これらを含む化合物を用いて前記第三種の液肥を調製することで、前記第三種の液肥に含有させることができる。
(ホウレンソウ)
開示のホウレンソウは、新鮮重100グラムあたり、カリウムの含有量が240ミリグラム以下であり、かつ鉄の含有量が2.0ミリグラム以上である。
開示の前記ホウレンソウは、例えば、開示の前記水耕栽培方法により得ることができる。
ホウレンソウを露地栽培する場合には、鉄の含有量は、新鮮重100グラムあたり2.0ミリグラム程度である。しかし、ホウレンソウを水耕栽培する場合、鉄の含有量は、新鮮重100グラムあたりおよそ1.0ミリグラムを超えない。
他方、ホウレンソウを露地栽培しても、新鮮重100グラムあたり、カリウムの含有量が240ミリグラム以下の低カリウムのホウレンソウを得ることはできない。
そのところ、開示の前記ホウレンソウであれば、カリウム含有量を低く抑えつつ、露地栽培に匹敵する鉄の含有量を達成できる。
前記ホウレンソウにおけるカリウムの含有量としては、新鮮重100グラムあたり、240ミリグラム以下であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記カリウムの含有量の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、一例として、前記カリウムの含有量は、新鮮重100グラムあたり、100ミリグラム以上であることや、150ミリグラム以上であることが挙げられる。
前記ホウレンソウにおける鉄の含有量としては、新鮮重100グラムあたり、2.0ミリグラム以上であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3.0ミリグラム以上であることが挙げられる。前記鉄の含有量の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、一例として、前記鉄の含有量は、新鮮重100グラムあたり、5.0ミリグラム以下であることや、4.5ミリグラム以下であることが挙げられる。
以下、開示の技術の実施例について説明するが、開示の技術は下記実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
<第一種の液肥の作製>
OATアグリオ社のファームエース1号S(1.5kg)、OATアグリオ社のファームエース2号(800g)、及び水道水(10L)を混合し、液肥の原液を作製した。
原液を水道水で希釈して、鉄濃度が2.0質量ppm、カリウム濃度が240質量ppmになるように調整して、第一種の液肥を作製した。
第一種の液肥の配合及び比率は以下の通りである。
・窒素全量 : 9.0質量%
内硝酸性窒素 : 8.6質量%
・水溶性リン酸 : 7.0質量%
・水溶性カリウム : 32.0質量%
・水溶性マグネシウム : 4.0質量%
・水溶性マンガン : 0.05質量%
・水溶性ホウ素 : 0.07質量%
・EDTA鉄(鉄として) : 0.15質量%
・EDTA銅(銅として) : 0.002質量%
・硫酸亜鉛(亜鉛として) : 0.006質量%
・モリブデン酸アンモニウム(モリブデンとして) : 0.002質量%
・硝酸性窒素 : 11.0質量%
・硝酸石灰(カルシウムとして) : 16.4質量%
<第二種の液肥の作製>
下記表1に記載の濃度になるように、各成分を配合して、第二種の液肥を作製した。第二種の液肥の鉄濃度は、160質量ppmとした。なお、栽培期間中には第二種の液肥における鉄濃度は、ホウレンソウによる吸収で減少するため、適宜、第二種の液肥における鉄濃度の調整を行った。その結果、栽培期間中に測定した第二種の液肥における鉄濃度は、142質量ppm〜181質量ppmであった。
Figure 2018139513
<水耕栽培>
高さ約6cmまで育苗したホウレンソウを栽培ポットに入れた。続いて、栽培ポットを栽培トレーに入れた。続いて、栽培ポットに入れられたホウレンソウの根が第一種の液肥に浸るように、栽培トレーに第一種の液肥を入れた。その状態で、9日間水耕栽培を行った。
続いて、栽培トレー内の第一種の液肥を排水し、栽培トレーに第二種の液肥を入れ、液肥を切替えた。
そして、第二種の液肥を用いて、水耕栽培を続けた。
そのところ、切替後3、4日目から外葉の枯れ(黄変や黄変後の枯れ)がみられるようになった。具体的には、切換え後3、4日目程度で双葉(子葉)2枚と、その時点で6枚程度生えている本葉のうち1〜3枚目とに枯れが見られた。このような事象は、第一種の液肥から実質的にカリウム分を含まない低カリウム液肥に切り替える、例えば特許文献2に記載の低カリウムホウレンソウの水耕栽培方法では見られない事象であった。これは、もともとの低カリウム液肥が有しているカリウム分が少ないという植物にとっては過酷な条件に加え、第二種の液肥ではさらに第一種の液肥よりも鉄分濃度が約80倍高いという条件も加わったため、植物にかかるストレスが大きくなったことが原因と考えられる。
食用の商品としてのホウレンソウを栽培することを考えると、葉が枯れた状態では商品価値が低い。従って、まずは、第二種の液肥による栽培期間を、葉が枯れ始める前の1−2日に留めることが考えられる。
水耕栽培において株に枯れが発生する原因として、一般に液肥による影響が考えられる。そのため、水耕栽培で量産を行う場合、一部の株の枯れを検出すると、枯れが発生した株が増えて生産効率が落ちてしまう前に、まずは液肥をリセットする、または与えている液肥を交換することで枯れの増加を防ぐ処置を取る。
しかし、発明者らは、枯れが見られた後、さらに第二種の液肥による栽培を継続した。
その結果、内側で生え始めていた新しい葉は、黄変や枯れを起こさずに成長し、切替後7日目程度で大きな葉に成長することがわかった。
すなわち、切換え後3、4日目程度で双葉(子葉)2枚とその時点で6枚程度生えている本葉のうち1〜3枚目が枯れた後、7日目程度から本葉4枚目以降の葉が正常成長することがわかった。
さらに第二種の液肥による栽培を継続したところ、新たに生える本葉は枯れを起こさずに成長し、11日目程度以後では株全体で枯れが無い状態のホウレンソウを得ることができることがわかった。ここで、食用の商品としてのホウレンソウを栽培することを考えると、商品価値を高めるために、ホウレンソウの株がある程度の大きさまで育ってから収穫することが望ましい。そこで例えば、第二種の液肥による栽培を13日以上継続し、その後に収穫することが考えられる。
本発明者らは、このような事実が生じた理由について、植物が本能的に持つ、環境に対応(順応)し、子孫を残すために生育し続ける能力が関係しているのではないかと推測している。植物は、発芽し、生育してきた場所から動くことができないため、突然の環境変化に対応し、生育する術を持つと考えられる。
なお、切換え後3、4日目程度で枯れた外葉は、自然に新陳代謝で落ちる葉もあれば、株に残ったままの葉もあった。食用の商品としてのホウレンソウを栽培することを考えると、商品価値を高めるために枯れた葉を人手等で除去することが求められる。しかし、本水耕栽培方法において枯れが発生する葉は、株の外側に偏在することになるので、除去作業が容易であり、生産上大きな問題とはならない。
<カリウム含有量及び鉄含有量>
第二種の液肥に交換後、14日間栽培したホウレンソウ中のカリウム含有量を測定した。11株のホウレンソウのカリウム含有量は、150mg/100g〜220mg/100gであり、平均値は、197mg/100gであった。なお、カリウム含有量は、イオンメーター(堀場製作所製)を用いて測定した。
第二種の液肥に交換後の所定の日数において、ホウレンソウ中の鉄含有量を測定した。結果を以下、及び図1に示した。なお、鉄含有量は、原子吸光光度法を用いて測定した。
Figure 2018139513
なお、第二種の液肥を用いた他の実施例においては、栽培期間中に測定した第二種の液肥における鉄濃度は、141質量ppm〜189質量ppmであり、栽培期間14日において、新鮮重100グラムあたり、鉄の含有量が3.0ミリグラム〜5.0ミリグラム(測定株数7株)のホウレンソウが栽培できた。
また、第二種の液肥を用いた更に他の実施例においては、栽培期間中に測定した第二種の液肥における鉄濃度は、157質量ppm〜184質量ppmであり、栽培期間14日において、新鮮重100グラムあたり、鉄の含有量が2.4ミリグラム〜3.0ミリグラム(測定株数10株)のホウレンソウが栽培できた。
また、第二種の液肥を用いた更に他の実施例においては、栽培期間中に測定した第二種の液肥における鉄濃度は、130質量ppm〜176質量ppmであり、栽培期間14日において、新鮮重100グラムあたり、鉄の含有量が2.1ミリグラム〜3.5ミリグラム(測定株数10株)のホウレンソウが栽培できた。
(比較例1)
<液肥の作製>
下記表3に記載の濃度になるように、各成分を配合して、液肥を作製した。液肥の鉄濃度は、2.0質量ppmとした。
Figure 2018139513
<水耕栽培>
第二種の液肥を上記で作製した液肥に代えた以外は、実施例1と同様にして、ホウレンソウの水耕栽培を行った。
その結果、上記液肥に交換後の11〜12日間栽培したホウレンソウ中のカリウム含有量は、実施例1と同程度で、かつ鉄含有量は、0.8mg/100gであった。
実施例1及び比較例1から、実施例1では、カリウム含有量が少なくかつ鉄分含有量が高いホウレンソウが栽培されていることが確認できた。
なお、文部科学省の発表する日本食品標準成分表によれば、ホウレンソウの鉄含有量は、2.0mg/100gとなっている。しかし、この数値は、露地栽培のホウレンソウを対象としたものと思われ、水耕栽培においては、比較例1で得られた0.8mg/100g程度が一般的であることから、実施例1では、水耕栽培において鉄分含有量の多いホウレンソウが栽培できたといえる。
(実施例2)
<第三種の液肥の作製>
下記表4に記載の濃度になるように、各成分を配合して、第三種の液肥を作製した。第三種の液肥の鉄濃度は、160質量ppmとした。カリウム濃度は、120質量ppmとした。なお、栽培期間中には第三種の液肥における鉄濃度は、ホウレンソウによる吸収で減少するため、適宜、第三種の液肥における鉄濃度の調整を行った。その結果、栽培期間中に測定した第三種の液肥における鉄濃度は、145質量ppm〜188質量ppmであった。
Figure 2018139513
<水耕栽培>
第二種の液肥を上記で作製した第三種の液肥に代えた以外は、実施例1と同様にして、ホウレンソウの水耕栽培を行った。
第一種の液肥から第三種の液肥に交換後、所定の日数において、ホウレンソウ中の鉄含有量を測定した。結果を表5、及び図2に示した。なお、鉄含有量は、原子吸光光度法を用いて測定した。
Figure 2018139513
実施例2も、実施例1と同様に、水耕栽培において鉄分含有量の多いのホウレンソウが栽培できたといえる。ただし、実施例1の方が、鉄含有量がより高いホウレンソウを得ることができた。
更に以下の付記を開示する。
(付記1)
ホウレンソウの水耕栽培方法であって、
カリウムと鉄とを含む第一種の液肥で栽培期間中の所定の日数のあいだ栽培し、
その後、カリウムを実質的に含まず、かつ鉄の濃度が130質量ppm以上である第二種の液肥で前記栽培期間中の収穫前の7日間以上栽培することを特徴とするホウレンソウの水耕栽培方法。
(付記2)
前記第二種の液肥で栽培する期間が、収穫前の13日間以上である付記1に記載のホウレンソウの水耕栽培方法。
(付記3)
前記第一種の液肥の鉄の濃度が、1.0質量ppm〜30質量ppmである付記1又は2に記載の水耕栽培方法。
(付記4)
前記ホウレンソウの根に、前記第二種の液肥を、前記第二種の液肥が流れている状態で与える付記1から3のいずれかに記載のホウレンソウの水耕栽培方法。
(付記5)
前記第二種の液肥における鉄の濃度が、150質量ppm〜170質量ppmである付記1から4のいずれかに記載のホウレンソウの水耕栽培方法。
(付記6)
前記第二種の液肥に代えて、カリウムを含み、かつ鉄の濃度が145質量ppm以上である第三種の液肥を用いる付記1から4のいずれかに記載のホウレンソウの水耕栽培方法。
(付記7)
前記第三種の液肥における鉄の濃度が、150質量ppm〜170質量ppmである付記6に記載のホウレンソウの水耕栽培方法。
(付記8)
新鮮重100グラムあたり、カリウムの含有量が240ミリグラム以下であり、かつ鉄の含有量が2.0ミリグラム以上であることを特徴とするホウレンソウ。
(付記9)
前記新鮮重100グラムあたり、前記カリウムの含有量が150ミリグラム〜240ミリグラムであり、かつ前記鉄の含有量が2.0ミリグラム〜5.0ミリグラムである付記8に記載のホウレンソウ。

Claims (6)

  1. ホウレンソウの水耕栽培方法であって、
    カリウムと鉄とを含む第一種の液肥で栽培期間中の所定の日数のあいだ栽培し、
    その後、カリウムを実質的に含まず、かつ鉄の濃度が130質量ppm以上である第二種の液肥で前記栽培期間中の収穫前の7日間以上栽培することを特徴とするホウレンソウの水耕栽培方法。
  2. 前記第二種の液肥で栽培する期間が、収穫前の13日間以上である請求項1に記載のホウレンソウの水耕栽培方法。
  3. 前記第一種の液肥の鉄の濃度が、1.0質量ppm〜30質量ppmである請求項1又は2に記載の水耕栽培方法。
  4. 前記ホウレンソウの根に、前記第二種の液肥を、前記第二種の液肥が流れている状態で与える請求項1から3のいずれかに記載のホウレンソウの水耕栽培方法。
  5. 前記第二種の液肥に代えて、カリウムを含み、かつ鉄の濃度が145質量ppm以上である第三種の液肥を用いる請求項1から4のいずれかに記載のホウレンソウの水耕栽培方法。
  6. 新鮮重100グラムあたり、カリウムの含有量が240ミリグラム以下であり、かつ鉄の含有量が2.0ミリグラム以上であることを特徴とするホウレンソウ。
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