JP2018138632A - 脱蛋白質天然ゴムラテックスの製造方法 - Google Patents

脱蛋白質天然ゴムラテックスの製造方法 Download PDF

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順司 小出村
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隆志 伊賀
俊仁 相原
Toshihito Aihara
俊仁 相原
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【課題】即時型アレルギー(TypeI)のアレルギー症状の発生を抑制可能であり、しかも、引張強度および伸びに優れ、柔軟な風合いを備えるディップ成形品を与えることのできる脱蛋白質天然ゴムラテックスを製造するための方法の提供。
【解決手段】蛋白質を含有する天然ゴムのラテックスに対して、エチレン性不飽和化合物を反応させることにより、前記蛋白質を変性させる蛋白質変性工程と、前記蛋白質変性工程を経たラテックスから、前記蛋白質を除去する蛋白質除去工程と、を備える脱蛋白質天然ゴムラテックスの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、即時型アレルギー(Type I)のアレルギー症状の発生を抑制可能であり、しかも、引張強度および伸びに優れ、柔軟な風合いを備えるディップ成形品を与えることのできる脱蛋白質天然ゴムラテックスを製造するための方法、ならびに、このような製造方法により得られる脱蛋白質天然ゴムラテックスを用いたラテックス組成物の製造方法、該ラテックス組成物を用いたディップ成形体の製造方法、および該脱蛋白質天然ゴムラテックスを用いた接着剤層形成基材に関する。
従来、天然ゴムのラテックスを含有するラテックス組成物をディップ成形して、乳首、風船、手袋、バルーン、サック等の人体と接触して使用されるディップ成形体が得られることが知られている。しかしながら、天然ゴムのラテックスは、人体に即時型アレルギー(Type I)の症状を引き起こすような蛋白質を含有するため、生体粘膜又は臓器と直接接触するディップ成形体としては問題がある場合があった。
これに対し、たとえば、特許文献1では、天然ゴムラテックスから蛋白質を除去して得られる脱蛋白質化天然ゴムラテックスが開示されている。
特開2004−99696号公報
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、即時型アレルギー(Type I)のアレルギー症状の発生を抑制可能であり、しかも、引張強度および伸びに優れ、柔軟な風合いを備えるディップ成形品を与えることのできる脱蛋白質天然ゴムラテックスを製造するための方法、ならびに、このような製造方法により得られる脱蛋白質天然ゴムラテックスを用いたラテックス組成物の製造方法、該ラテックス組成物を用いたディップ成形体の製造方法、および該脱蛋白質天然ゴムラテックスを用いた接着剤層形成基材を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、蛋白質を含有する天然ゴムのラテックスに対して、エチレン性不飽和化合物を反応させ、その後、蛋白質を除去することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明によれば、蛋白質を含有する天然ゴムのラテックスに対して、エチレン性不飽和化合物を反応させることにより、前記蛋白質を変性させる蛋白質変性工程と、前記蛋白質変性工程を経たラテックスから、前記蛋白質を除去する蛋白質除去工程と、を備える脱蛋白質天然ゴムラテックスの製造方法が提供される。
本発明の製造方法では、前記エチレン性不飽和化合物が、カルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物であることが好ましい。
本発明の製造方法では、前記蛋白質変性工程において、有機過酸化物および/または還元剤の存在下で、前記エチレン性不飽和化合物を反応させることが好ましい。
また、本発明によれば、前記製造方法により得られた脱蛋白質天然ゴムラテックスに、架橋剤を添加する工程を備えるラテックス組成物の製造方法が提供される。
さらに、本発明によれば、前記製造方法により得られたラテックス組成物をディップ成形する工程を備えるディップ成形体の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、前記製造方法により得られた脱蛋白質天然ゴムラテックスを用いて形成される接着剤層を、基材表面に形成する工程を備える接着剤層形成基材の製造方法が提供される。
本発明によれば、即時型アレルギー(Type I)のアレルギー症状の発生を抑制可能であり、しかも、引張強度および伸びに優れ、柔軟な風合いを備えるディップ成形品を与えることのできる脱蛋白質天然ゴムラテックスを製造するための方法、ならびに、このような製造方法により得られる脱蛋白質天然ゴムラテックスを用いたラテックス組成物の製造方法、該ラテックス組成物を用いたディップ成形体の製造方法、および該脱蛋白質天然ゴムラテックスを用いた接着剤層形成基材を提供することができる。
本発明の脱蛋白質天然ゴムラテックスの製造方法は、蛋白質を含有する天然ゴムのラテックスに対して、エチレン性不飽和化合物を反応させることにより、前記蛋白質を変性させる蛋白質変性工程と、前記蛋白質変性工程を経たラテックスから、前記蛋白質を除去する蛋白質除去工程と、を備える。
蛋白質変性工程
本発明の製造方法における蛋白質変性工程は、天然ゴムのラテックス(天然ゴムラテックス)に対してエチレン性不飽和化合物を反応させることにより、蛋白質を変性させる工程である。
本発明によれば、天然ゴムラテックスに対してエチレン性不飽和化合物を反応させることにより、天然ゴムに含まれる蛋白質の一部または全部を変性させることができ、この変性させた蛋白質を、後述する蛋白質除去工程において除去することにより、脱蛋白質天然ゴムのラテックス(脱蛋白質天然ゴムラテックス)が得られる。すなわち、天然ゴムに含まれる蛋白質を変性させることにより、蛋白質が天然ゴムから分離しやすくなり、これにより、天然ゴムラテックスから蛋白質を良好に除去することができるようになる。
尚、本発明における蛋白質の「変性」とは、蛋白質自体の化学構造等を変性前と異なる構造等に変化させることに限らず、蛋白質を構成する高分子化合物同士の相互作用(結合状態等)を変化させて蛋白質全体としての物性等を変化させることも含む。その具体例としては、例えば、蛋白質を構成する高分子同士の水素結合を崩すことにより蛋白質の水等に対する溶解性を変えることなどが挙げられる。
そして、本発明によれば、この脱蛋白質天然ゴムラテックスを用いてディップ成形体を形成した場合に、蛋白質に起因する即時型アレルギー(Type I)の発生を有効に抑制でき、しかも、引張強度および伸びが大きく、柔軟な風合い(500%伸長時の応力が小さい)を備えるディップ成形体を与えることが可能となる。さらに、本発明によれば、エチレン性不飽和化合物により、蛋白質の変性だけでなく、天然ゴムの変性をも行うことにより、得られるディップ成形体の引張強度をより向上させることができる。
本発明で用いる天然ゴムラテックスとしては、天然ゴムの樹から得られたラテックスおよび該ラテックスを処理したものを使用することができ、たとえば、天然ゴムの樹から採取されたフィールドラテックスや、フィールドラテックスをアンモニア等で処理してなる市販の天然ゴムラテックスなどを使用することができる。あるいは、天然ゴムラテックスとしては、後述するように、予め蛋白質分解酵素等の蛋白質用変性剤を用いて蛋白質を除去する処理が施されたものを用いてもよい。
エチレン性不飽和化合物としては、特に限定されないが、たとえば、カルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物、スルホン酸基含有エチレン性不飽和化合物、リン酸基含有エチレン性不飽和化合物、その他のエチレン性不飽和化合物などが挙げられる。
カルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸およびその無水物;マレイン酸メチル、イタコン酸メチル等のエチレン性不飽和多価カルボン酸の部分エステル化物;などが挙げられる。これらの中でも、化合物の分子構造内に、(CH=CH−)の構造を有する化合物が好ましい。エチレン性不飽和化合物として、カルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物を用いることにより、得られる脱蛋白質天然ゴムラテックスを用いてディップ成形体を形成した場合に、得られるディップ成形体の引張強度がより向上する。
スルホン酸基含有エチレン性不飽和化合物としては、たとえば、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル、2−アクリルアミド−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸などが挙げられる。
リン酸基含有エチレン性不飽和化合物としては、たとえば、(メタ)アクリル酸−3−クロロ−2−リン酸プロピル、(メタ)アクリル酸−2−リン酸エチル、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンリン酸などが挙げられる。
その他のエチレン性不飽和化合物としては、たとえば、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等のエチレン性不飽和基含有シラン化合物;スチレン、α−メチルスチレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、トリクロルスチレン、モノメチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等のエチレン性不飽和カルボン酸アミド化合物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等のエチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル化合物;エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン化合物;メチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル等のビニルエーテル化合物;酢酸アリル、酢酸メタリル、塩化アリル、塩化メタリル等の(メタ)アリル化合物;ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン;などを挙げることができる。
これらのエチレン性不飽和化合物は、アルカリ金属塩またはアンモニウム塩として用いることもできる。また、これらのエチレン性不飽和化合物は、単独で用いてもよいが、天然ゴムラテックスにエチレン性不飽和化合物を反応させた際の蛋白質の変性率を向上させることができるという観点より、2種以上を組み合せて用いることが好ましい。上記のエチレン性不飽和化合物のなかでも、カルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物、エチレン性不飽和基含有シラン化合物が好ましく、カルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物がより好ましく、エチレン性不飽和モノカルボン酸がさらに好ましく、メタクリル酸が特に好ましい。
エチレン性不飽和化合物を天然ゴムラテックスに添加する方法としては、特に限定されず、一括添加、分割添加、連続添加等の公知の添加方法を採用することができる。また、エチレン性不飽和化合物は、直接、天然ゴムラテックスに添加してもよいし、予めエチレン性不飽和化合物の溶液または分散液を調製し、調製したエチレン性不飽和化合物の溶液または分散液を天然ゴムラテックスに添加してもよい。
蛋白質変性工程において、エチレン性不飽和化合物により、蛋白質の変性だけでなく、天然ゴムの変性も行う場合には、天然ゴムにエチレン性不飽和化合物を反応させる方法としては、特に限定されず、天然ゴムをエチレン性不飽和化合物で変性する反応、天然ゴムにエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させる反応などにおける従来公知の方法を用いればよいが、たとえば、天然ゴムラテックスに、エチレン性不飽和化合物と、有機過酸化物とを添加した後、天然ゴムにエチレン性不飽和化合物を反応させる方法が好ましい。
有機過酸化物としては、特に限定されないが、たとえば、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられるが、得られるディップ成形体の機械的強度向上の観点から、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイドが特に好ましい。これらの有機過酸化物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機過酸化物の添加量は、特に限定されないが、天然ゴムラテックスに含まれる天然ゴム100重量部に対して、好ましくは0.01〜3重量部、より好ましくは0.1〜1重量部である。
また、有機過酸化物は、還元剤との組み合わせで、レドックス系重合開始剤として使用することができる。還元剤としては、特に限定されないが、たとえば、硫酸第一鉄、ナフテン酸第一銅等の還元状態にある金属イオンを含有する化合物;メタンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸化合物;ジメチルアニリン等のアミン化合物;等が挙げられる。これらの還元剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
還元剤の添加量は、特に限定されないが、有機過酸化物1重量部に対して0.01〜1重量部であることが好ましい。
有機過酸化物および還元剤の添加方法は、特に限定されず、それぞれ、一括添加、分割添加、連続添加等の公知の添加方法を用いることができる。
天然ゴムラテックス中においてエチレン性不飽和化合物を反応させる際の反応温度(すなわち、エチレン性不飽和化合物により蛋白質を変性させる際の温度、またはエチレン性不飽和化合物により蛋白質および天然ゴムを変性させる際の温度)は、特に限定されないが、好ましくは15〜80℃、より好ましくは30〜50℃である。天然ゴムラテックス中においてエチレン性不飽和化合物を反応させる際の反応時間は、上記反応温度に応じて適宜設定すればよいが、好ましくは30〜300分間、より好ましくは60〜120分間である。
天然ゴムラテックス中においてエチレン性不飽和化合物を反応させる際における、天然ゴムラテックスの固形分濃度は、特に限定されないが、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜40重量%である。
天然ゴムをエチレン性不飽和化合物により変性させる場合における、天然ゴムの変性率は、得られるディップ成形体の引張強度をより向上させることができるという観点より、好ましくは0.5〜10モル%、より好ましくは1〜5モル%である。なお、変性率は、下記式(i)で表される。
変性率(モル%)=(X/Y)×100 ・・・(i)
なお、上記式(i)においては、Xは、天然ゴム中におけるエチレン性不飽和化合物による変性基の全モル数を、Yは、変性反応に用いたエチレン性不飽和化合物(=反応に際し仕込んだモノマー)の合計モル数をそれぞれ表す。Xは、天然ゴムをH−NMRで測定することにより求めることができる。また、Yは、反応に際し仕込んだエチレン性不飽和化合物の総重量に基づいて求めることができる。
エチレン性不飽和化合物を反応させた天然ゴムラテックスには、ラテックスの分野で通常配合される、pH調整剤、消泡剤、防腐剤、キレート化剤、酸素捕捉剤、分散剤、老化防止剤等の添加剤を配合してもよい。
pH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩;アンモニア;トリメチルアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン化合物;等が挙げられるが、アルカリ金属の水酸化物またはアンモニアが好ましい。
蛋白質除去工程
本発明の製造方法における蛋白質除去工程は、上述した蛋白質変性工程を経た天然ゴムラテックスから、蛋白質を除去する工程である。
本発明によれば、蛋白質変性工程を経た天然ゴムラテックスから蛋白質を除去することにより、脱蛋白質天然ゴムのラテックス(脱蛋白質天然ゴムラテックス)を得ることができ、この脱蛋白質天然ゴムラテックスを用いてディップ成形体を形成した場合に、ディップ成形体において、該蛋白質に起因する即時型アレルギー(Type I)の発生をより有効に抑制できるようになる。
天然ゴムラテックスから蛋白質を除去する方法としては、特に限定されないが、たとえば、減圧蒸留、常圧蒸留、遠心分離、膜濃縮等の方法が挙げられ、これらのなかでも、蛋白質をより適切に除去することができるという観点より、遠心分離が好ましい。
天然ゴムラテックスを遠心分離機にかける場合、天然ゴムラテックスの機械的安定性の向上のため、予めpH調整剤を添加して天然ゴムラテックスのpHを7以上としておくことが好ましく、pHを9以上としておくことがより好ましい。pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物またはアンモニアが好ましい。
遠心分離は、たとえば、連続遠心分離機を用いて、遠心力を、好ましくは4,000〜5,000G、遠心分離機に送り込む流速を、好ましくは500〜2000Kg/hr、遠心分離機の背圧(ゲージ圧)を、好ましくは0.03〜1.6MPaの条件にて実施することが好ましい。
本発明においては、以上のようにして脱蛋白質天然ゴムラテックスを得ることができる。
なお、本発明においては、天然ゴムラテックスからより蛋白質を除去するという観点より、上述した蛋白質変性工程および蛋白質除去工程を、繰り返し行ってもよい。この際には、蛋白質変性工程および蛋白質除去工程を連続して行う処理を、2回以上繰り返してもよい。あるいは、蛋白質変性工程を2回以上繰り返し行った後、蛋白質除去工程を少なくとも1回行うようにしてもよいし、蛋白質変性工程を少なくとも1回行った後、蛋白質除去工程を2回以上繰り返し行うようにしてもよい。
本発明の脱蛋白質天然ゴムラテックスの固形分濃度は、好ましくは40〜75重量%、より好ましくは50〜65重量%である。固形分濃度を上記範囲とすることにより、脱蛋白質天然ゴムラテックスを貯蔵した際に脱蛋白質天然ゴムの粒子が分離してしまうことをより有効に抑制することができ、また、脱蛋白質天然ゴムの粒子同士が凝集して粗大凝集物が発生してしまうこともより有効に抑制することができる。
本発明の脱蛋白質天然ゴムラテックスを構成する脱蛋白質天然ゴムの窒素元素含有率は、好ましくは0.05重量%以下、より好ましくは0.02重量%以下、さらに好ましくは0.01重量%以下である。なお、脱蛋白質天然ゴムの窒素元素含有率は、主に脱蛋白質天然ゴム中に含まれる蛋白質に由来する窒素の含有量に依存する値であり、脱蛋白質天然ゴム中における蛋白質の含有割合を示す指標となる値である。脱蛋白質天然ゴム中の窒素元素含有率を上記範囲とすることにより、脱蛋白質天然ゴムのラテックスを用いてディップ成形体を形成した場合に、蛋白質に起因する即時型アレルギー(Type I)のアレルギー症状の発生をより有効に抑制することができる。なお、脱蛋白質天然ゴムの窒素元素含有率は、蛋白質除去工程にて蛋白質を除去して得られた脱蛋白質天然ゴムラテックスを、凝固させることにより凝固物(固形ゴム)を得て、この固形ゴムの窒素元素含有率を測定することにより得られる値を示すものである。
また、本発明においては、得られる脱蛋白質天然ゴムラテックス中の蛋白質の含有割合をより低減させるという観点より、蛋白質変性工程で使用する天然ゴムラテックスとして、予め蛋白質を除去する処理が施されたものを用いることが好ましい。予め蛋白質を除去する処理が施された天然ゴムラテックスを用いることにより、得られる脱蛋白質天然ゴムラテックスを用いて、ディップ成形体を形成した場合に、ディップ成形体において、該蛋白質に起因する即時型アレルギー(Type I)の発生をより有効に抑制できるようになる。
予め蛋白質を除去する処理が施された天然ゴムラテックスとしては、特に限定されないが、天然ゴムラテックス中の蛋白質を、蛋白質分解酵素等の蛋白質用変性剤により変性した後、変性により天然ゴムから分離しやすくなった蛋白質を、天然ゴムから除去したものが挙げられる。
なお、本発明においては、天然ゴムラテックスとして、このような蛋白質用変性剤による蛋白質の変性および蛋白質の除去が行われたものを用いる場合には、上述した蛋白質変性工程においてエチレン性不飽和化合物により蛋白質を変性する際に、蛋白質分解酵素により変性されなかった蛋白質を、エチレン性不飽和化合物により変性してもよいし、蛋白質分解酵素により変性した蛋白質を、エチレン性不飽和化合物によりさらに変性してもよい。
蛋白質分解酵素としては、特に限定されないが、たとえば、細菌(バクテリア)により産生されるプロテアーゼ、糸状菌により産生されるプロテアーゼ、酵母により産生されるプロテアーゼなどが挙げられる。細菌により産生されるプロテアーゼは、通常、アルカリプロテアーゼとして、天然ゴムラテックスに対する蛋白分解処理に汎用されているプロテアーゼであって、一般に、アルカリ領域に至適pHを有し、エンドペプチダーゼ活性のみを有している。糸状菌により産生されるプロテアーゼとしては、たとえば、アスペルギルス属(コウジカビ属)、リゾプス属(クモノスカビ属)などに属する微生物により産生されるプロテアーゼが挙げられる。これらは、通常、エキソペプチダーゼ活性、または、エキソペプチターゼ活性とエンドペプチダーゼ活性とを有している。これらのなかでも、蛋白質の変性をより効率的に実施することができ、これにより天然ゴムラテックスから蛋白質をより効率的に除去することができるという観点より、アルカリプロテアーゼが好ましい。
天然ゴムラテックスに蛋白質分解酵素を反応させる際には、蛋白質分解酵素とともに、他の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、特に限定されないが、たとえば、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸ナトリウム等のリン酸塩;酢酸カリウム、酢酸ナトリウム等の酢酸塩;硫酸、酢酸、塩酸、硝酸、クエン酸、コハク酸等の酸類またはその塩;アンモニア;水酸化ナトリウム;水酸化カリウム;炭酸ナトリウム;炭酸水素ナトリウム等のpH調整剤が挙げられる。あるいは、添加剤としては、リパ−ゼ、エステラ−ゼ、アミラ−ゼ、ラッカ−ゼ、セルラ−ゼ等の酵素も挙げられる。
さらに、天然ゴムラテックスに蛋白質分解酵素を反応させる際には、必要に応じて、スチレンスルホン酸共重合物、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、リグニンスルホン酸、多環型芳香族スルホン酸共重合物、アクリル酸及び無水マレイン酸ホモポリマ−及び共重合物、イソブチレン−アクリル酸、イソブチレン−無水マレイン酸共重合物等の分散剤を併用してもよい。
蛋白質分解酵素により蛋白質を変性する方法としては、特に限定されないが、蛋白質分解酵素の1種または2種以上を天然ゴムラテックスに添加した後、静置または処理する方法が好ましい。静置または処理を行う際の温度は、使用する蛋白質分解酵素に応じて設定すればよいが、蛋白質分解酵素による蛋白質を変性させる機能がより効率的に発揮され、かつ、天然ゴムラテックスの安定性がより向上するという観点より、好ましくは10〜90℃、より好ましくは30〜60℃である。静置または処理の時間は、上記温度に応じて適宜設定すればよいが、好ましくは0.5〜5時間、より好ましくは1〜2時間である。
蛋白質分解酵素の添加量は、使用する蛋白質分解酵素の性質に応じて適宜設定すればよく特に限定されないが、天然ゴムラテックスの固形分100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは1〜5重量部である。蛋白分解酵素の使用量を上記範囲とすることにより、蛋白質分解酵素による蛋白質を変性させる機能をより効率的に発揮させることができるようになる。
本発明においては、蛋白質分解酵素により蛋白質を変性する際には、蛋白質の変性を安定して行なうことができるという観点より、天然ゴムラテックス中に界面活性剤を存在させておくことが好ましい。天然ゴムラテックスに界面活性剤を添加するタイミングとしては、特に限定されず、蛋白質分解酵素により天然ゴムラテックスを処理する前でもよいし、蛋白質分解酵素により天然ゴムラテックスを処理している間でもよい。
界面活性剤としては、特に限定されず、従来公知のアニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤およびカチオン界面活性剤を用いることができるが、好ましくはpH6〜13の範囲、より好ましくはpH9〜12の範囲において、安定した界面活性を示すものを用いるのが好ましい。
アニオン界面活性剤としては、特に限定されないが、たとえば、カルボン酸系、スルホン酸系、硫酸エステル系、リン酸エステル系のアニオン界面活性剤等が挙げられる。
カルボン酸系のアニオン界面活性剤としては、たとえば、炭素数が6〜30である、脂肪酸塩、多価カルボン酸塩、ロジン酸塩、ダイマー酸塩、ポリマー酸塩、トール油脂肪酸塩などが挙げられ、なかでも炭素数10〜20のカルボン酸塩が好ましい。カルボン酸系のアニオン界面活性剤として炭素数が6〜30であるものを用いた場合には、天然ゴムに含まれる蛋白質および不純物をより良好に分散および乳化させることができるとともに、カルボン酸系のアニオン界面活性剤自体がより水に分散しやすくなる。
スルホン酸系のアニオン界面活性剤としては、たとえば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、ジフェニルエーテルスルホン酸塩等が挙げられる。
硫酸エステル系のアニオン界面活性剤としては、たとえば、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、トリスチレン化フェノール硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンジスチレン化フェノール硫酸エステル塩等が挙げられる。
リン酸エステル系のアニオン界面活性剤としては、たとえば、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンリン酸エステル塩等が挙げられる。
なお、上述したようにカルボン酸系、スルホン酸系、硫酸エステル系、リン酸エステル系のアニオン界面活性剤として例示した塩としては、金属塩(Na,K,Ca,Mg,Zn等)、アンモニウム塩、アミン塩(トリエタノールアミン塩等)などが挙げられる。
ノニオン界面活性剤としては、特に限定されないが、たとえば、ポリオキシアルキレンエーテル系、ポリオキシアルキレンエステル系、多価アルコール脂肪酸エステル系、糖脂肪酸エステル系、アルキルポリグリコシド系のノニオン界面活性剤等が挙げられる。
ポリオキシアルキレンエーテル系のノニオン界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンポリオールアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンスチレン化フェノールエーテル、ポリオキシアルキレンジスチレン化フェノールエーテル、ポリオキシアルキレントリスチレン化フェノールエーテル等が挙げられる。前記ポリオールとしては炭素数2〜12の多価アルコールが挙げられ、例えばプロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、シュクロース、ペンタエリトリトール、ソルビタン等が挙げられる。
ポリオキシアルキレンエステル系のノニオン界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル等が挙げられる。
多価アルコール脂肪酸エステル系のノニオン界面活性剤としては、たとえば、炭素数2〜12である、多価アルコールの脂肪酸エステルまたはポリオキシアルキレン多価アルコールの脂肪酸エステルが挙げられる。より具体的には、たとえば、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、脂肪酸ジグリセライド、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。また、これらのポリアルキレンオキサイド付加物(例えばポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル等)も使用することができる。
糖脂肪酸エステル系のノニオン界面活性剤としては、たとえば、ショ糖、グルコース、マルトース、フラクトース、多糖類の脂肪酸エステル等が挙げられ、これらのポリアルキレンオキサイド付加物も使用することができる。
アルキルポリグリコシド系のノニオン界面活性剤としては、たとえば、アルキルグルコシド、アルキルポリグルコシド、ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド、ポリオキシアルキレンアルキルポリグルコシド等が挙げられ、これらの脂肪酸エステル類も挙げられる。また、これらのポリアルキレンオキサイド付加物も使用することができる。
なお、上述したノニオン界面活性剤におけるアルキル基としては、たとえば、炭素数4〜30のアルキル基が挙げられる。また、ポリオキシアルキレン基としては、たとえば、炭素数2〜4のアルキレン基を有するものが挙げられ、具体的には酸化エチレンの付加モル数が1〜50モル程度のものが挙げられる。脂肪酸としては、たとえば、炭素数が4〜30の直鎖または分岐した飽和または不飽和の脂肪酸が挙げられる。
カチオン界面活性剤としては、特に限定されないが、たとえば、アルキルアミン塩型、アルキルアミン誘導体型およびこれらの第4級化物、ならびにイミダゾリニウム塩型等が挙げられる。
アルキルアミン塩型のカチオン界面活性剤としては、たとえば、第1級アミン、第2級アミンおよび第3級アミンの塩が挙げられる。
アルキルアミン誘導体型のカチオン界面活性剤は、エステル基、エーテル基、アミド基のうちの少なくとも1つを分子内に有するものであって、たとえば、ポリオキシアルキレン(AO)アルキルアミンおよびその塩、アルキルエステルアミン(AO付加物を含む)およびその塩、アルキルエーテルアミン(AO付加物を含む)およびその塩、アルキルアミドアミン(AO付加物を含む)およびその塩、アルキルエステルアミドアミン(AO付加物を含む)およびその塩、アルキルエーテルアミドアミン(AO付加物を含む)およびその塩等が挙げられる。これらの塩の種類としては、たとえば、塩酸塩、リン酸塩、酢酸塩、アルキル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、脂肪酸、有機酸、アルキルリン酸エステル、アルキルエーテルカルボン酸、アルキルアミドエーテルカルボン酸、アニオン性オリゴマー、アニオン性ポリマー等が挙げられる。アルキルアミン誘導体型のカチオン界面活性剤のうち、酢酸塩の具体例としては、ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等が挙げられる。
上述したアルキルアミン塩型およびアルキルアミン誘導体型のカチオン界面活性剤におけるアルキル基は、特に限定されないが、通常炭素数8〜22の、直鎖状、分岐鎖状またはゲルベ状のものが挙げられる。
上述したアルキルアミン塩型およびアルキルアミン誘導体型の第4級化物としては、上記アルキルアミン塩およびアルキルアミン誘導体を、たとえば、メチルクロライド、メチルブロマイド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等で第4級化したものが挙げられる。具体的には、ラウリルトリメチルアンモニウムハライド、セチルトリメチルアンモニウムハライド、ステアリルトリメチルアンモニウムハライド等のアルキルトリメチルアンモニウムハライド;ジステアリルジメチルアンモニウムハライド等のジアルキルジメチルアンモニウムハライド;トリアルキルメチルアンモニウムハライド;ジアルキルベンジルメチルアンモニウムハライド;アルキルベンジルジメチルアンモニウムハライド等が挙げられる。
イミダゾリニウム塩型のカチオン界面活性剤としては、たとえば、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシルエチルイミダゾリン等が挙げられる。
界面活性剤の天然ゴムラテックスへの添加量は、特に限定されないが、天然ゴムラテックス中の固形分に対して、好ましくは0.01〜10重量%である。
蛋白質分解酵素により蛋白質を変性する際における天然ゴムラテックスのpHは、特に限定されないが、好ましくは6〜13、より好ましくは9〜12である。
蛋白質分解酵素により蛋白質を変性させた後、変性させた蛋白質(変性蛋白質)を除去する方法としては、特に限定されないが、たとえば、変性蛋白質を含有する天然ゴムラテックスに対し、遠心分離、ゴム分の凝固、限外ろ過等の処理を施すことにより、天然ゴムと変性蛋白質とを分離し、この変性蛋白質を除去する方法が挙げられる。遠心分離により変性蛋白質を除去する場合には、遠心分離処理の回数は、1回以上であればよいが、変性蛋白質をより良好に分離および除去することができるという観点より、好ましくは2回以上である。
また、蛋白質分解酵素により蛋白質を変性する際には、蛋白質の変性をより効率的に実施することができ、これにより天然ゴムラテックスから蛋白質をより効率的に除去することができるという観点より、天然ゴムラテックスに極性有機溶媒を添加し、極性有機溶媒の存在下で、蛋白質分解酵素を反応させることが好ましい。
極性有機溶媒としては、特に限定されないが、水に混和するものが好ましく、たとえば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール等の炭素数が1〜5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の炭素数3〜4のケトン;酢酸エチル等の炭素数1〜5のカルボン酸のエステル(炭素数1〜5の低級アルキルエステルが好ましい)が挙げられる。これらの極性有機溶媒は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
極性有機溶媒を用いる場合には、極性有機溶媒の使用量は、天然ゴムラテックスの固形分に対して、好ましくは0.001〜30重量%、より好ましくは0.01〜10重量%、さらに好ましくは0.05〜1重量%である。極性有機溶媒の使用量を上記範囲とすることにより、天然ゴムラテックス中においてゴム分が凝固してしまうことを有効に防止しながら、蛋白質の変性をより効率的に実施することができ、これにより天然ゴムラテックスから蛋白質をより効率的に除去することができるようになる。
ラテックス組成物
本発明のラテックス組成物は、上述した本発明の脱蛋白質天然ゴムラテックスに、架橋剤を添加してなるものである。
架橋剤としては、たとえば、粉末硫黄、硫黄華、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄等の硫黄;塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリン・ジスルフィド、アルキルフェノール・ジスルフィド、カプロラクタム・ジスルフィド(N,N’−ジチオ−ビス(ヘキサヒドロ−2H−アゼピノン−2))、含りんポリスルフィド、高分子多硫化物、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等の硫黄含有化合物や、3価以上の金属を含む金属化合物などが挙げられる。これらのなかでも、3価以上の金属を含む金属化合物が特に好ましい。架橋剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明においては、架橋剤として通常用いられる硫黄の代わりに、3価以上の金属を含む金属化合物を架橋剤として用いることにより、さらには、架橋に際しては、硫黄を含有する加硫促進剤を使用しないようにすることにより、即時型アレルギー(Type I)に加えて、硫黄や、硫黄を含有する加硫促進剤に起因する、遅延型アレルギー(Type IV)のアレルギー症状の発生をも有効に抑制することができる。
3価以上の金属を含む金属化合物としては、たとえば、アルミニウム化合物、コバルト化合物、ジルコニウム化合物、チタン化合物などが挙げられるが、これらのなかでも、ラテックス中に含まれる脱蛋白質天然ゴムをより良好に架橋させることができるという点より、アルミニウム化合物が好ましい。
アルミニウム化合物としては、特に限定されないが、たとえば、酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、硝酸アルミウム、硫酸アルミニウム、アルミニウム金属、硫酸アルミニウムアンモニウム、臭化アルミニウム、フッ化アルミニウム、硫酸アルミニウム・カリウム、アルミニウム・イソプロポキシド、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、亜硫酸アルミウムナトリウムなどが挙げられる。なお、これらアルミニウム化合物は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。これらの中でも、本発明の作用効果をより顕著なものとすることができるという点より、アルミン酸ナトリウムが好ましい。
3価以上の金属を含む金属化合物を添加する方法としては、特に限定されないが、直接、脱蛋白質天然ゴムラテックスに添加してもよいし、予め3価以上の金属を含む金属化合物の溶液または分散液を調製し、調製した溶液または分散液を脱蛋白質天然ゴムラテックスに添加してもよい。
架橋剤の含有量は、特に限定されないが、架橋剤として硫黄含有化合物を用いる場合には、脱蛋白質天然ゴムラテックスを構成する脱蛋白質天然ゴム100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.2〜3重量部である。また、架橋剤として3価以上の金属を含む金属化合物を用いる場合には、架橋剤の含有量は、脱蛋白質天然ゴムラテックスを構成する脱蛋白質天然ゴム100重量部に対して、好ましくは0.1〜1.5重量部であり、より好ましくは0.1〜1.25重量部、さらに好ましくは0.1〜1.0重量部である。架橋剤の含有量を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体の引張強度をより高めることができる。
また、本発明のラテックス組成物は、さらに架橋促進剤を含有してもよい。
架橋促進剤としては、ディップ成形において通常用いられるものが使用でき、たとえば、ジエチルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、ジ−2−エチルヘキシルジチオカルバミン酸、ジシクロヘキシルジチオカルバミン酸、ジフェニルジチオカルバミン酸、ジベンジルジチオカルバミン酸などのジチオカルバミン酸類およびそれらの亜鉛塩;2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛、2−メルカプトチアゾリン、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2−(2,4−ジニトロフェニルチオ)ベンゾチアゾール、2−(N,N−ジエチルチオ・カルバイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(2,6−ジメチル−4−モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、2−(4′−モルホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾール、4−モルホニリル−2−ベンゾチアジル・ジスルフィド、1,3−ビス(2−ベンゾチアジル・メルカプトメチル)ユリアなどが挙げられるが、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、2ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛が好ましい。架橋促進剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
架橋促進剤の含有量は、脱蛋白質天然ゴムラテックスを構成する脱蛋白質天然ゴム100重量部に対して、好ましくは0.05〜5重量部であり、より好ましくは0.1〜2重量部である。架橋促進剤の含有量を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体の引張強度をより高めることができる。
また、本発明のラテックス組成物は、さらに酸化亜鉛を含有してもよい。
酸化亜鉛の含有量は、特に限定されないが、脱蛋白質天然ゴムラテックスを構成する脱蛋白質天然ゴム100重量部に対して、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.2〜2重量部である。酸化亜鉛の含有量を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体の引張強度をより高めることができる。
本発明のラテックス組成物には、さらに、老化防止剤、分散剤;カーボンブラック、シリカ、タルク等の補強剤;炭酸カルシウム、クレー等の充填剤;紫外線吸収剤;可塑剤;等の配合剤を必要に応じて配合することができる。
分散剤としては、重量平均分子量が1,000〜150,000である不飽和結合含有非極性化合物−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル重合体の塩を含有しているものが好ましい。
不飽和結合含有非極性化合物−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル重合体を形成する不飽和結合含有非極性化合物は、炭素−炭素不飽和結合を有する炭化水素化合物であれば特に限定されないが、例えば、エチレン;プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどのα−オレフィン;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどのシクロモノオレフィン;1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、シクロペンタジエンなどの共役ジエン;スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル炭化水素;などが挙げられる。中でも、分散安定化効果により優れる点から、芳香族ビニル炭化水素が好ましく、スチレンがより好ましい。これらの不飽和結合含有非極性化合物は、1種単独で、または2種以上を併用しても良い。
不飽和結合含有非極性化合物−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル重合体を形成するエチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルとしては、例えば、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、イタコン酸モノブチル、イタコン酸モノシクロヘキシル、シトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノプロピル、シトラコン酸モノブチル、シトラコン酸モノシクロヘキシルなどを挙げることができ、これらのなかでも、マレイン酸モノメチルおよびマレイン酸モノブチルが好ましい。なお、エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルは、予め塩基を用いて中和し、塩構造の状態で用いることもできる。
また、これらのエチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルは、1種単独で、または2種以上を併用して用いても良い。
本発明のラテックス組成物の調製方法は、特に限定されないが、たとえば、ボールミル、ニーダー、ディスパー等の分散機を用いて、脱蛋白質天然ゴムラテックスに、架橋剤、および必要に応じて配合される各種配合剤を混合する方法や、上記の分散機を用いて、脱蛋白質天然ゴムラテックス以外の配合成分の水性分散液を調製した後、該水性分散液を脱蛋白質天然ゴムラテックスに混合する方法などが挙げられる。
本発明のラテックス組成物は、pHが7以上であることが好ましく、pHが7〜13の範囲であることがより好ましく、pHが8〜12の範囲であることがさらに好ましい。また、ラテックス組成物の固形分濃度は、15〜65重量%の範囲にあることが好ましい。
本発明のラテックス組成物は、得られるディップ成形体の機械的特性をより高めるという観点より、ディップ成形に供する前に、熟成(前架橋)させることが好ましい。前架橋する時間は、特に限定されず、前架橋の温度にも依存するが、好ましくは1〜14日間であり、より好ましくは1〜7日間である。なお、前架橋の温度は、好ましくは20〜40℃である。
そして、前架橋した後、ディップ成形に供されるまで、好ましくは10〜30℃の温度で貯蔵することが好ましい。高温のまま貯蔵すると、得られるディップ成形体の引張強度が低下する場合がある。
ディップ成形体
本発明のディップ成形体は、本発明のラテックス組成物をディップ成形して得られる。ディップ成形は、ラテックス組成物に型を浸漬し、型の表面に当該組成物を沈着させ、次に型を当該組成物から引き上げ、その後、型の表面に沈着した当該組成物を乾燥させる方法である。なお、ラテックス組成物に浸漬される前の型は予熱しておいてもよい。また、型をラテックス組成物に浸漬する前、または、型をラテックス組成物から引き上げた後、必要に応じて凝固剤を使用できる。
凝固剤の使用方法の具体例としては、ラテックス組成物に浸漬する前の型を凝固剤の溶液に浸漬して型に凝固剤を付着させる方法(アノード凝着浸漬法)、ラテックス組成物を沈着させた型を凝固剤溶液に浸漬する方法(ティーグ凝着浸漬法)などがあるが、厚みムラの少ないディップ成形体が得られる点で、アノード凝着浸漬法が好ましい。
凝固剤の具体例としては、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウムなどのハロゲン化金属;硝酸バリウム、硝酸カルシウム、硝酸亜鉛などの硝酸塩;酢酸バリウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛など酢酸塩;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウムなどの硫酸塩;などの水溶性多価金属塩である。なかでも、カルシウム塩が好ましく、硝酸カルシウムがより好ましい。これらの水溶性多価金属塩は、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
凝固剤は、好ましくは水溶液の状態で使用する。この水溶液は、さらにメタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒やノニオン性界面活性剤を含有していてもよい。凝固剤の濃度は、水溶性多価金属塩の種類によっても異なるが、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜30重量%である。
型をラテックス組成物から引き上げた後、通常、加熱して型上に形成された沈着物を乾燥させる。乾燥条件は適宜選択すればよい。
次いで、加熱して、型上に形成された沈着物を架橋させる。
架橋時の加熱条件は、特に限定されないが、好ましくは60〜150℃、より好ましくは100〜130℃の加熱温度で、好ましくは10〜120分の加熱時間である。
加熱の方法は、特に限定されないが、オーブンの中で温風で加熱する方法、赤外線を照射して加熱する方法などがある。
また、ラテックス組成物を沈着させた型を加熱する前あるいは加熱した後に、水溶性不純物(たとえば、余剰の界面活性剤や凝固剤)を除去するために、型を水または温水で洗浄することが好ましい。用いる温水としては好ましくは40℃〜80℃であり、より好ましくは50℃〜70℃である。
架橋後のディップ成形体は、型から脱着される。脱着方法の具体例は、手で型から剥がす方法、水圧または圧縮空気圧力により剥がす方法等が挙げられる。架橋途中のディップ成形体が脱着に対する十分な強度を有していれば、架橋途中で脱着し、引き続き、その後の架橋を継続してもよい。
本発明のディップ成形体は、上記本発明の製造方法により得られる脱蛋白質天然ゴムラテックスを用いて得られるものであるため、即時型アレルギー(Type I)の発生が抑制され、しかも、引張強度および伸びに優れ、柔軟な風合いを備えるものであり、そのため、手袋用途、とりわけ、手術用手袋に好適である。あるいは、本発明の製造方法により得られるディップ成形体は、手袋の他にも、哺乳瓶用乳首、スポイト、チューブ、水枕、バルーンサック、カテーテル、コンドームなどの医療用品;風船、人形、ボールなどの玩具;加圧成形用バック、ガス貯蔵用バックなどの工業用品;指サックなどにも用いることができる。
接着剤組成物
本発明においては、上述した本発明の脱蛋白質天然ゴムラテックスを、接着剤組成物として用いることができる。
接着剤組成物中における脱蛋白質天然ゴムの含有量(固形分量)は、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜30重量%である。
接着剤組成物は、本発明の脱蛋白質天然ゴムラテックスに加えて、接着剤樹脂を含有してなることが好ましい。接着剤樹脂としては、特に限定されないが、たとえば、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂及びイソシアネート樹脂を好適に使用することができ、これらのなかでも、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂が好ましい。レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂は、公知のもの(例えば、特開昭55−142635号公報に開示のもの)が使用できる。レゾルシンとホルムアルデヒドとの反応比率は、「レゾルシン:ホルムアルデヒド」のモル比で、通常、1:1〜1:5、好ましくは1:1〜1:3である。
また、接着剤組成物の接着力をさらに高めるために、接着剤組成物には、従来から使用されている2,6−ビス(2,4−ジヒドロキシフェニルメチル)−4−クロロフェノール又は類似の化合物、イソシアネート、ブロックイソシアネート、エチレン尿素、ポリエポキシド、変性ポリ塩化ビニル樹脂等を含有させることができる。
さらに、接着剤組成物には、加硫助剤を含有させることができる。加硫助剤を含有させることにより、接着剤組成物を用いて得られる後述する複合体の機械的強度を向上させることができる。加硫助剤としては、p−キノンジオキシム等のキノンジオキシム;ラウリルメタクリレートやメチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル;DAF(ジアリルフマレート)、DAP(ジアリルフタレート)、TAC(トリアリルシアヌレート)、TAIC(トリアリルイソシアヌレート)等のアリル化合物;ビスマレイミド、フェニルマレイミド、N,N−m−フェニレンジマレイミド等のマレイミド化合物;硫黄;等を挙げることができる。
接着剤層形成基材
本発明の接着剤層形成基材は、本発明の脱蛋白質天然ゴムラテックスまたは接着剤組成物を用いて形成される接着剤層を、基材表面に形成して得られる。
基材としては、特に限定されないが、たとえば繊維基材を用いることができる。繊維基材を構成する繊維の種類は、特に限定されず、たとえば、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン、アラミド(芳香族ポリアミド)等のポリアミド繊維、ガラス繊維、綿、レーヨン等が挙げられる。これらは、その用途に応じて、適宜選定することができる。繊維基材の形状は特に限定されず、たとえば、ステープル、フィラメント、コード状、ロープ状、織布(帆布等)等を挙げることができ、その用途に応じて適宜選定することができる。たとえば、接着剤層形成基材は、接着剤層を介して、ゴムと接着することにより、基材−ゴム複合体として用いることができる。基材−ゴム複合体としては、特に限定されないが、たとえば、繊維基材としてコード状のものを用いた芯線入りのゴム製歯付きベルト、帆布等の基布状の繊維基材を用いたゴム製歯付きベルト等が挙げられる。
基材−ゴム複合体を得る方法としては、特に限定されないが、たとえば、浸漬処理等により接着剤組成物を基材に付着させて接着剤層形成基材を得て、接着剤層形成基材をゴム上に載置し、これを加熱および加圧する方法が挙げられる。加圧は、圧縮(プレス)成形機、金属ロール、射出成形機等を用いて行なうことができる。加圧の圧力は、好ましくは0.5〜20MPa、より好ましくは2〜10MPaである。加熱の温度は、好ましくは130〜300℃、より好ましくは150〜250℃である。加熱および加圧の処理時間は、好ましくは1〜180分、より好ましくは5〜120分である。加熱および加圧する方法により、ゴムの成形、および接着剤層形成基材とゴムとの接着を、同時に行なうことができるようになる。なお、加圧に用いる圧縮機の型の内面やロールの表面には、目的とする基材−ゴム複合体のゴムに所望の表面形状を付与するための型を形成させておくことが好ましい。
また、基材−ゴム複合体の一態様として、基材−ゴム−基材複合体を挙げることができる。基材−ゴム−基材複合体は、たとえば、基材(2種以上の基材の複合体であってもよい。)と基材−ゴム複合体とを組み合わせて形成することができる。具体的には、基材としての芯線、ゴムおよび基材としての基布を重ね(このとき、芯線および基布には、接着剤組成物を適宜付着させて接着剤層形成基材としておく)、加熱しながら加圧することにより、基材−ゴム−基材複合体を得ることができる。
本発明の接着剤層形成基材を用いて得られる基材−ゴム複合体は、機械的強度、耐摩耗性および耐水性に優れたものであり、そのため、平ベルト、Vベルト、Vリブドベルト、丸ベルト、角ベルト、歯付ベルト等のベルトとして好適に用いることができる。また、本発明の接着剤層形成基材を用いて得られる基材−ゴム複合体は、耐油性に優れ、油中ベルトとして好適に用いることができる。さらに、本発明の接着剤層形成基材を用いて得られる基材−ゴム複合体は、ホース、チューブ、ダイアフラム等にも好適に使用できる。ホースとしては、単管ゴムホース、多層ゴムホース、編上式補強ホース、布巻式補強ホース等が挙げられる。ダイアフラムとしては、平形ダイアフラム、転動形ダイアフラム等が挙げられる。
本発明の接着剤層形成基材を用いて得られる基材−ゴム複合体は、上記の用途以外にも、シール、ゴムロール等の工業用製品として用いることができる。シールとしては、回転用、揺動用、往復動等の運動部位シールと固定部位シールが挙げられる。運動部位シールとしては、オイルシール、ピストンシール、メカニカルシール、ブーツ、ダストカバー、ダイアフラム、アキュムレータ等が挙げられる。固定部位シールとしては、Oリング、各種ガスケット等が挙げられる。ゴムロールとしては、印刷機器、コピー機器等のOA機器の部品であるロール;紡糸用延伸ロール、紡績用ドラフトロール等の繊維加工用ロール;ブライドルロール、スナバロール、ステアリングロール等の製鉄用ロール;等が挙げられる。
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限られるものではない。なお、以下の「部」は、特に断りのない限り、重量基準である。なお、各種の物性は以下のように測定された。
固形分濃度
アルミ皿(重量:X1)に試料2gを精秤し(重量:X2)、これを105℃の熱風乾燥器内で2時間乾燥させた。次いで、デシケーター内で冷却した後、アルミ皿ごと重量を測定し(重量:X3)、下記の計算式にしたがって、固形分濃度を算出した。
固形分濃度(重量%)=(X3−X1)×100/X2
窒素元素含有率
脱蛋白質天然ゴムラテックスを、メタノールにて凝固させて固形ゴムを得て、この固形ゴムをRRIM試験法(Rubber Reseach Institute of Malaysia(1973),’SMR Bulletin No.7’)によって測定することにより、脱蛋白質天然ゴムの窒素元素含有率(単位:重量%)を測定した。
変性率
天然ゴムラテックスを構成する天然ゴムをH−NMRで測定することにより、天然ゴム中におけるエチレン性不飽和化合物による変性基の全モル数を求めた。次いで、求めた変性基の全モル数に基づいて、下記式(i)にしたがって、エチレン性不飽和化合物による変性率を求めた。
変性率(モル%)=(X/Y)×100 ・・・(i)
なお、上記式(i)においては、Xは、天然ゴムにおけるエチレン性不飽和化合物による変性基の全モル数を、Yは、天然ゴムの総モノマー単位数(総繰り返し単位数)であり、(天然ゴムの重量平均分子量(Mw))/(天然ゴムを構成する各モノマー単位(各繰り返し単位)の含有割合に応じた平均分子量)を計算することにより求められる値をそれぞれ表す。
ディップ成形体の引張強度、伸び、500%引張応力
ASTM D412に基づいて、膜厚が約0.2mmのフィルム状のディップ成形体を、ダンベル(商品名「スーパーダンベル(型式:SDMK−100C)」、ダンベル社製)で打ち抜き、引張強度測定用試験片を作製した。当該試験片をテンシロン万能試験機(商品名「RTG−1210」、オリエンテック社製)で引張速度500mm/minで引っ張り、破断直前の引張強度(単位:MPa)、破断直前の伸び(単位:%)および伸び率が500%の時の引張応力(単位:MPa)を測定した。
パッチテスト
膜厚が約0.2mmのフィルム状のディップ成形体を、10×10mmのサイズに切断して得た試験片を、被検者10人の腕にそれぞれ貼付した。その後、180分後に貼付部分を観察することで、即時型アレルギー(Type I)のアレルギー症状の発生有無を確認し、以下の基準で評価した。
A:全ての被検者について、アレルギー症状がみられなかった。
B:一人または二人の被検者について、アレルギー症状がみられた。
C:三人または四人の被検者について、アレルギー症状がみられた。
D:五人以上の被検者について、アレルギー症状がみられた。
実施例1
蛋白質変性工程(1回目)
まず、天然ゴムラテックスとして、フィールドラテックスにアンモニアを加えて処理されてなるハイアンモニアラテックス(商品名「HAラテックス」、ソクテック社製、天然ゴム濃度60.2重量%、アンモニア濃度0.7重量%)を準備し、このハイアンモニアラテックスを、天然ゴム濃度が10重量%となるように水で希釈した。
次いで、希釈した天然ゴムラテックスを、窒素置換された攪拌機付き重合反応容器に仕込み、撹拌しながら温度を30℃にまで加温した。また、別の容器を用いて、エチレン性不飽和化合物としてのビニルトリメトキシシラン5部と蒸留水16部とを混合してビニルトリメトキシシラン希釈液を調製した。このビニルトリメトキシシラン希釈液を、30℃にまで加温した重合反応容器内に、30分間かけて添加した。
次いで、重合反応容器内に、有機過酸化物としての1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド(商品名「パーオクタH」、日本油脂社製)0.5部を添加して、30℃で1時間反応を行い、更に70℃で2時間反応させることで、天然ゴムラテックスにビニルトリメトキシシランを反応させた。
蛋白質除去工程(1回目)
その後、ビニルトリメトキシシランを反応させた天然ゴムラテックスについて、水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整し、回転数5,000rpm、30分間の条件で、遠心分離処理を施すことによって濃縮を行い、固形分濃度60重量%の脱蛋白質天然ゴムラテックスを得た。なお、ビニルトリメトキシシランの転化率は99重量%であった。
次いで、得られた脱蛋白質天然ゴムラテックスに対して、以下のように蛋白質変性工程および蛋白質除去工程を、再度実施した。
蛋白質変性工程(2回目)
脱蛋白質天然ゴムラテックスを、窒素置換された攪拌機付き重合反応容器に仕込み、撹拌しながら温度を30℃にまで加温した。また、別の容器を用いて、エチレン性不飽和化合物としてのビニルトリメトキシシラン5部と蒸留水16部とを混合してビニルトリメトキシシラン希釈液を調製した。このビニルトリメトキシシラン希釈液を、30℃にまで加温した重合反応容器内に、30分間かけて添加した。
次いで、重合反応容器内に、有機過酸化物としての1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド(商品名「パーオクタH」、日本油脂社製)0.5部を添加して、30℃で1時間反応を行い、更に70℃で2時間反応させることで、脱蛋白質天然ゴムラテックスにビニルトリメトキシシランを反応させた。
蛋白質除去工程(2回目)
その後、ビニルトリメトキシシランを反応させた脱蛋白質天然ゴムラテックスについて、水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整し、回転数5,000rpm、30分間の条件で、遠心分離処理を施すことによって濃縮を行い、固形分濃度59重量%の脱蛋白質天然ゴムラテックスを得た。なお、ビニルトリメトキシシランの転化率は99重量%であった。また、脱蛋白質天然ゴムラテックスを構成する脱蛋白質天然ゴムについて、上記方法にしたがって、窒素元素含有率および変性率を求めた。結果を表1に示す。
ディップ成形用組成物の調製
脱蛋白質天然ゴムラテックスを攪拌しながら、濃度5重量%のジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム水溶液を添加した(添加量は、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム換算で0.4部)。
また、スチレン−マレイン酸モノ−sec−ブチルエステル−マレイン酸モノメチルエステル重合体(商品名「Scripset550」、Hercules社製)について、水酸化ナトリウムを用い、重合体中のカルボキシル基を100%中和して、分散剤としてのナトリウム塩水溶液(濃度10重量%)を調製した。そして、この分散剤(固形分換算で0.6部)を、上述したジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム水溶液を添加した脱蛋白質天然ゴムラテックスに添加して混合物を得た。
次いで、得られた混合物を攪拌しながら、混合物中の脱蛋白質天然ゴム100部に対して、固形分換算で、酸化亜鉛1.5部、硫黄1.5部、老化防止剤(商品名「Wingstay L」、グッドイヤー社製)2部、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛0.35部、メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩0.3部となるように、各配合剤の水分散液を添加し、さらに水酸化カリウム水溶液を添加してpHを10.5に調整した後、固形分濃度が40%となるように蒸留水を添加して、ラテックス組成物を得た。その後、得られたラテックス組成物を30℃で48時間熟成した。
ディップ成形体の製造
表面がすり加工されたガラス型(直径約5cm、すり部長さ約15cm)を洗浄し、70℃のオーブン内で予備加熱した後、濃度18重量%の硝酸カルシウムおよび濃度0.05重量%のポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名「エマルゲン109P」、花王社製)からなる凝固剤水溶液に5秒間浸漬し、取り出した。
次いで、凝固剤で被覆されたガラス型を70℃のオーブン内で乾燥させた。その後、凝固剤で被覆されたガラス型をオーブンから取り出し、25℃の上記ディップ成形用組成物に10秒間浸漬してから取り出し、室温で60分間乾燥させた後、60℃の温水中に2分間浸漬した後、室温で30分間風乾させることで、ガラス型にディップ成形層を形成した。その後、このディップ成形層で被覆されたガラス型を、120℃のオーブン内に置き20分間加熱する、加硫を行った。加硫したディップ成形層で被覆されたガラス型を室温まで冷却し、タルクを散布した後、当該ディップ成形層をガラス型から剥離することで、ディップ成形体を得た。そして、得られたディップ成形体について、上記方法にしたがって、引張強度、破断時伸び、500%伸長時の応力、およびパッチテストの各評価を行った。結果を表1に示す。
実施例2
蛋白質変性工程(1回目)および蛋白質変性工程(2回目)において、それぞれ、エチレン性不飽和化合物として、ビニルトリメトキシシランに代えてメタクリル酸5部を使用した以外は、実施例1と同様にして脱蛋白質天然ゴムラテックスおよびディップ成形体の製造を行い、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
実施例3
蛋白質変性工程(1回目)および蛋白質変性工程(2回目)において、それぞれ、有機過酸化物としての1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイドを添加する前に、蒸留水7部と、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(商品名「SFS」、三菱ガス化学社製)0.32部と、還元剤としての硫酸第一鉄(商品名「フロストFe」、中部キレスト社製)0.01部とからなる溶液を、重合反応容器内に添加した以外は、実施例2と同様にして脱蛋白質天然ゴムラテックスおよびディップ成形体の製造を行い、同様に評価を行った。結果を表1に示す。なお、実施例3においては、脱蛋白質天然ゴムの窒素元素含有率は0.005重量%以下(検出限界以下)であった。
実施例4
天然ゴムラテックスとして、ハイアンモニアラテックスに代えて、予め蛋白質分解酵素による蛋白質の変性および蛋白質の除去を行った酵素処理天然ゴムラテックス(商品名「SELATEX3821」、住友ゴム工業社製)を使用して、蛋白質変性工程(2回目)および蛋白質除去工程(2回目)は実施しなかった以外は、実施例3と同様にして脱蛋白質天然ゴムラテックスおよびディップ成形体の製造を行い、同様に評価を行った。結果を表1に示す。なお、実施例4においては、脱蛋白質天然ゴムの窒素元素含有率は0.005重量%以下(検出限界以下)であった。
比較例1
蛋白質変性工程(1回目)、蛋白質除去工程(1回目)、蛋白質変性工程(2回目)および蛋白質除去工程(2回目)をいずれも実施せず、酵素処理天然ゴムラテックスをそのまま用いた以外は、実施例1と同様にしてディップ成形体の製造を行い、同様に評価を行った。なお、窒素元素含有率は、酵素処理天然ゴムラテックスからキャストフイルムを作製し、このキャストフイルムを上記方法にしたがって測定することで、酵素処理天然ゴムラテックス中の天然ゴムの窒素元素含有率として求めた。結果を表1に示す。
比較例2
蛋白質変性工程(1回目)、蛋白質除去工程(1回目)、蛋白質変性工程(2回目)および蛋白質除去工程(2回目)をいずれも実施せず、ハイアンモニアラテックスをそのまま用いた以外は、実施例1と同様にしてディップ成形体の製造を行い、同様に評価を行った。なお、窒素元素含有率は、ハイアンモニアラテックスからキャストフイルムを作製し、このキャストフイルムを上記方法にしたがって測定することで、ハイアンモニアラテックス中の天然ゴムの窒素元素含有率として求めた。結果を表1に示す。
Figure 2018138632

表1より、天然ゴムラテックスに対して、エチレン性不飽和化合物を反応させ、その後、蛋白質を除去することにより脱蛋白質天然ゴムラテックスを製造した場合には、得られるディップ成形体は、パッチテストの結果が良好であることから、即時型アレルギー(Type I)のアレルギー症状の発生を防止することができたものであり、さらに、引張強度および伸びが大きく、柔軟な風合い(500%伸長時の応力が小さい)を備えるものであった(実施例1〜4)。特に、実施例3では、蛋白質変性工程において、還元剤としての硫酸第一鉄を用いることにより、得られる脱蛋白質天然ゴムラテックス中における蛋白質の含有割合がより低減した。また、実施例4では、予め蛋白質分解酵素による蛋白質の変性および蛋白質の除去を行った酵素処理天然ゴムラテックスを用いたことにより、得られる脱蛋白質天然ゴムラテックス中における蛋白質の含有割合がより低減した。さらに、エチレン性不飽和化合物としてメタクリル酸を使用した場合には、得られるディップ成形体は、引張強度がより優れるものであった(実施例2〜4)。
一方、蛋白質変性工程および蛋白質除去工程を実施しなかった場合には、得られるディップ成形体は、パッチテストの結果に劣ることから、即時型アレルギー(Type I)のアレルギー症状が発生してしまうものであった(比較例1,2)。

Claims (6)

  1. 蛋白質を含有する天然ゴムのラテックスに対して、エチレン性不飽和化合物を反応させることにより、前記蛋白質を変性させる蛋白質変性工程と、
    前記蛋白質変性工程を経たラテックスから、前記蛋白質を除去する蛋白質除去工程と、を備える脱蛋白質天然ゴムラテックスの製造方法。
  2. 前記エチレン性不飽和化合物が、カルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物である請求項1に記載の脱蛋白質天然ゴムラテックスの製造方法。
  3. 前記蛋白質変性工程において、有機過酸化物および/または還元剤の存在下で、前記エチレン性不飽和化合物を反応させる請求項1または2に記載の脱蛋白質天然ゴムラテックスの製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法により得られた脱蛋白質天然ゴムラテックスに、架橋剤を添加する工程を備えるラテックス組成物の製造方法。
  5. 請求項4に記載の製造方法により得られたラテックス組成物をディップ成形する工程を備えるディップ成形体の製造方法。
  6. 請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法により得られた脱蛋白質天然ゴムラテックスを用いて形成される接着剤層を、基材表面に形成する工程を備える接着剤層形成基材の製造方法。
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