1 第1実施形態
1.1 流体加熱部材の構成
第1実施形態は、流体加熱部材に関する。
図1の模式図は、第1実施形態の流体加熱部材を図示する斜視図である。図2の模式図は、第1実施形態の流体加熱部材を図示する断面図である。
図1および図2の各々に図示される流体加熱部材100は、基材110、多数のナノ粒子111およびスペーサー112を備える。基材110は、複数のセラミック基板120を備える。
複数のセラミック基板120は、複数のセラミック基板120の各々である各セラミック基板120の厚さ方向に配列される。複数のセラミック基板120に含まれる隣接する2枚のセラミック基板120は、流体が侵入しうる間隙130を挟んで互いに対向する。スペーサー112は、複数のセラミック基板120が上記の配置を有する状態が維持されるように複数のセラミック基板120を支持する。各セラミック基板120は、緻密体からなる。これらにより、平行平板状の構造体である基材110が得られ、各セラミック基板120の一方の主面140、他方の主面141および端面142が、流体が接触しうる表面になる。
各セラミック基板120は、透光性を有する。各セラミック基板120を構成するセラミック材料は、望ましくはアルミナ、窒化アルミニウム、ジルコニアまたはシリカであり、さらに望ましくは高い熱伝導率を有するアルミナまたは窒化アルミニウムである。各セラミック基板120を構成するセラミック材料がアルミナ、窒化アルミニウム、ジルコニアおよびシリカから選択される2種類以上のセラミック材料の固溶体または複合体であってもよい。各セラミック基板120が例示されるセラミック材料以外のセラミック材料以外により構成されてもよい。セラミック材料により構成されるセラミック基板がセラミック材料以外の材料により構成される基板に置き換えられてもよい。例えば、セラミック材料により構成されるセラミック基板がガラスにより構成されるガラス基板、石英により構成される石英基板等に置き換えられてもよい。
ナノ粒子111は、各セラミック基板120の一方の主面140、他方の主面141および端面142に分散して固定される。ナノ粒子111は、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウム、窒化タンタル、炭化チタン、炭化タングステン、ホウ化ランタン、炭化ジルコニウムおよびホウ化チタンからなる群から選択される少なくとも1種類の化合物からなり、望ましくは窒化チタンからなる。ナノ粒子111は、プラズモン吸収効果を有するように調製される。
1.2 流体の加熱
流体加熱部材100により流体が加熱される場合は、流体加熱部材100が流体中に置かれ、各セラミック基板120の一方の主面140、他方の主面141および端面142に流体が接触させられる。また、流体加熱部材100に太陽光が照射される。各セラミック基板120は透光性を有するため、照射された太陽光は一方の主面140、他方の主面141および端面142の全部に到達し一方の主面140、他方の主面141および端面142に固定されたナノ粒子111に到達する。ナノ粒子111に到達した太陽光は、ナノ粒子111に吸収され、熱に変換される。発生した熱は、ナノ粒子111から流体に直接的に伝わる。これにより、流体が加熱される。
第1実施形態の流体加熱部材100によれば、ナノ粒子111が、太陽光に近いスペクトルを有するため、太陽光を効率よく吸収し、太陽光を効率よく熱に変換する。また、ナノ粒子111が、各セラミック基板120の一方の主面140、他方の主面141および端面142に固定されるため、各セラミック基板120に埋設される場合と比較して、太陽光を効率よく吸収し、太陽光を効率よく熱に変換する。さらに、ナノ粒子111が、各セラミック基板120の一方の主面140、他方の主面141および端面142に固定されるため、流体に直接的に接触し、変換により生成された熱を流体に直接的に伝え、各セラミック基板120に埋設される場合と比較して、変換により生成された熱を流体に効率よく伝える。このため、太陽光を効率よく吸収するナノ粒子111から流体に熱が効率よく伝わり、流体が効率よく加熱される。
また、第1実施形態の流体加熱部材100によれば、ナノ粒子111が各セラミック基板120の一方の主面140、他方の主面141および端面142に固定され流出しない。このため、ナノ粒子111から流体を分離する処理、ナノ粒子111により加熱された1次流体と2次流体との間で熱交換を行わせる処理、ナノ粒子111の流出を防ぐ処理等が不要になり、加熱された流体が容易に得られる。
さらに、第1実施形態の流体加熱部材100によれば、各セラミック基板120が透光性を有する。このため、第1実施形態の流体加熱部材100によれば、流体加熱部材100の中心部においても太陽光が吸収され、太陽光を熱に変換する効率が高くなる。
加えて、第1実施形態の流体加熱部材100において各セラミック基板120が高い熱伝導率を有する場合は、流体の全体に熱が均一に伝わり、加熱された流体を製造することが容易になる。
1.3 流体加熱部材の製造
図3は、第1実施形態の流体加熱部材を製造する手順を図示するフローチャートである。
流体加熱部材100の製造においては、図3に図示される工程S101において、複数のセラミック基板120が作製される。
続いて、工程S102において、各セラミック基板120の一方の主面140、他方の主面141および端面142にナノ粒子111が分散して固定される。ナノ粒子111の固定が工程S103の後に行われてもよい。
続いて、工程S103において、複数のセラミック基板120が上記の配置を有するようにスペーサー112で固定される。これにより、図1および図2の各々に図示される流体加熱部材100が製造される。
1.4 ゲルキャスト法による各セラミック基板の作製
ゲルキャスト法による各セラミック基板120の作製においては、成形用スラリーが調製される。成形用スラリーは、分散媒にセラミック粉末を添加して分散させることにより得られるスラリーにゲル化剤をさらに添加することにより調製される。または、成形用スラリーは、分散媒にセラミック粉末およびゲル化剤を同時に添加して分散させることにより調製される。成形用スラリーが分散媒、セラミック粉末およびゲル化剤以外の成分を含んでもよい。例えば、成形用スラリーが分散剤、消泡剤等を含んでもよい。
分散媒は、有機溶剤である。有機溶剤は、多価アルコール、多塩基酸、エステル類等である。多価アルコールは、ジオール類、トリオール類等である。ジオール類は、エチレングリコール等である。トリオール類は、グリセリン等である。多塩基酸は、ジカルボン酸等である。エステル類は、多塩基酸エステル、多価アルコールのエステル等である。多塩基酸エステルは、グルタル酸ジメチル、マロン酸ジメチル等である。多価アルコールのエステルは、トリアセチン等である。
セラミック粉末は、各セラミック基板120を構成するセラミック材料の粉末である。
ゲル化剤は、反応性官能基を有し架橋剤の存在下で3次元架橋構造を形成する有機化合物であり、プレポリマー等である。プレポリマーは、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等である。
調製された成形用スラリーは、型に形成された板状の型内空間に注型される。注型された成形用スラリーにおいては、ゲル化剤が重合し、3次元架橋構造が形成される。これにより、注型された成形用スラリーが硬化し、板状のセラミック成形体が得られる。
得られた板状のセラミックス成形体は、適切な雰囲気下において適切な温度で焼成される。これにより、各セラミック基板120が得られる。
1.5 ドクターブレード法による各セラミック基板の作製
ドクターブレード法による各セラミック基板120の作製においては、成形用スラリーがキャリアフィルム上に塗布される。これにより、塗布膜が得られる。
得られた塗布膜は、硬化させられる。これにより、テープ状のセラミック成形体が得られる。
得られたテープ状のセラミック成形体は、加工される。これにより、板状のセラミック成形体が得られる。
得られた板状のセラミックス成形体は、適切な雰囲気下において適切な温度で焼成される。これにより、各セラミック基板120が得られる。
1.6 ナノ粒子の固定
ナノ粒子111の固定においては、分散スラリーが調製される。分散スラリーは、分散媒にナノ粒子111および無機系バインダーを添加して分散させることにより調製される。
分散媒は、水、エタノール等の液体である。
作製された各セラミック基板120が、調製された分散スラリーに浸漬される。これにより、ディップコーティングが行われ、調製されたスラリーが各セラミック基板120の一方の主面140、他方の主面141および端面142に接触し、ナノ粒子111が一方の主面140、他方の主面141および端面142に付着する。
一方の主面140、他方の主面141および端面142にナノ粒子111が付着した各セラミック基板120は、乾燥熱処理される。これにより、ナノ粒子111が無機系バインダーにより一方の主面140、他方の主面141および端面142に結合させられ、図1および図2の各々に図示されるナノ粒子111が結合させられた各セラミック基板120が作製される。
2 第2実施形態
2.1 流体加熱部材の構成
第2実施形態は、流体加熱部材に関する。
第1実施形態の流体加熱部材と第2実施形態の流体加熱部材との主な相違は、第1実施形態においては、基材110が平行平板状の構造体であるのに対して、第2実施形態においては、基材が格子状の構造体である点にある。
上記の主な相違をもたらす構成の採用を阻害しない範囲において他の実施形態において採用された構成が第2実施形態において採用されてもよい。
図4の模式図は、第2実施形態の流体加熱部材を図示する斜視図である。図5の模式図は、第2実施形態の流体加熱部材を図示する分解斜視図である。
図4および図5の各々に図示される流体加熱部材200は、基材210および多数のナノ粒子211を備える。
基材210は、複数のセラミック基板220および複数のセラミック基板221を備える。複数のセラミック基板220は、複数のセラミック基板220の各々である各セラミック基板220の厚さ方向に配列される。複数のセラミック基板220に含まれる隣接する2枚のセラミック基板220は、流体が侵入しうる間隙230を挟んで互いに対向する。複数のセラミック基板221は、複数のセラミック基板221の各々である各セラミック基板221の厚さ方向に配列される。複数のセラミック基板221に含まれる隣接する2枚のセラミック基板221は、流体が侵入しうる間隙231を挟んで互いに対向する。各セラミック基板220は、各セラミック基板221と垂直をなす。各セラミック基板220は、図5に図示されるように、板状くし型であり、板状部240およびくし状部241を備える。くし状部241には、複数のスリット250が形成される。各セラミック基板221は、図5に図示されるように、板状くし型であり、板状部242およびくし状部243を備える。くし状部243には、複数のスリット251が形成される。複数のスリット250には、複数のセラミック基板221の板状部242がそれぞれ挿入される。複数のスリット251には、複数のセラミック基板220の板状部240がそれぞれ挿入される。複数のセラミック基板220は、複数のセラミック基板221が上記の配置を有する状態が維持されるように複数のセラミック基板221を支持する。複数のセラミック基板221は、複数のセラミック基板220が上記の配置を有する状態が維持されるように複数のセラミック基板220を支持する。これらにより、図4に図示されるように複数の孔260および複数の溝261が形成された格子状の構造体である基材210が得られ、複数の孔260の各々である各孔260の内壁270、複数の溝261の各々である各溝261の内壁271、各セラミック基板220の端面280および各セラミック基板221の端面281が、流体が接触しうる表面になる。
各セラミック基板220および各セラミック基板221は、透光性を有する。各セラミック基板220および各セラミック基板221を構成するセラミック材料は、第1実施形態の各セラミック基板120を構成するセラミック材料と同様のものである。
ナノ粒子211は、各孔260の内壁270、各溝261の内壁271、各セラミック基板220の端面280および各セラミック基板221の端面281に分散して固定される。ナノ粒子211を構成する化合物は、第1実施形態のナノ粒子111を構成する化合物と同様のものである。
2.2 流体の加熱
流体加熱部材200により流体が加熱される場合は、流体加熱部材200が流体中に置かれ、各孔260の内壁270、各溝261の内壁271、各セラミック基板220の端面280および各セラミック基板221の端面281に流体が接触させられる。また、流体加熱部材200に太陽光が照射される。基材210は透光性を有するため、照射された太陽光は内壁270、内壁271、端面280および端面281の全部に到達し内壁270、内壁271、端面280および端面281に固定されたナノ粒子211に到達する。ナノ粒子211に到達した太陽光は、ナノ粒子211に吸収され、熱に変換される。当該熱は、ナノ粒子211から流体に直接的に伝わる。これにより、流体が加熱される。
第2実施形態の流体加熱部材200によれば、第1実施形態の流体加熱部材100と同様に、太陽光を効率よく吸収するナノ粒子211から流体に熱が直接的に伝わり、流体が効率よく加熱される。
また、第2実施形態の流体加熱部材200によれば、第1実施形態の流体加熱部材100と同様に、ナノ粒子211から流体を分離する処理、ナノ粒子211により加熱された1次流体と2次流体との間で熱交換を行わせる処理、ナノ粒子211の流出を防ぐ処理等が不要になり、加熱された流体が容易に得られる。
さらに、第2実施形態の流体加熱部材200によれば、第1実施形態の流体加熱部材100と同様に、流体加熱部材200の中心部においても太陽光が吸収され、太陽光を熱に変換する効率が高くなる。
加えて、第1実施形態の流体加熱部材100と同様に、第2実施形態の流体加熱部材200において各セラミック基板220および各セラミック基板221が高い熱伝導率を有する場合は、流体の全体に熱が均一に伝わり、加熱された流体を製造することが容易になる。
2.3 流体加熱部材の製造
図6は、第2実施形態の流体加熱部材を製造する手順を図示するフローチャートでもある。
流体加熱部材200の作製においては、図6に図示される工程S201において、複数のセラミック基板220および複数のセラミック基板221が作製される。
続いて、工程S202において、各孔260の内壁270、各溝261の内壁271、各セラミック基板220の端面280および各セラミック基板221の端面281にナノ粒子211が分散して固定される。ナノ粒子211の固定が工程S203の後に行われてもよい。
続いて、工程S203において、複数のセラミック基板220および複数のセラミック基板221が上記の配置を有するように複数のセラミック基板220および複数のセラミック基板221が互いに組み合わされる。これにより、図4および図5の各々に図示される流体加熱部材200が製造される。
2.4 ゲルキャスト法による各セラミック基板の作製
ゲルキャスト法による各セラミック基板220および各セラミック基板221の各々として使用されるセラミック基板の作製においては、成形用スラリーが調製される。調製される成形用スラリーは、第1実施形態のゲルキャスト法による各セラミック基板120の作製において調製される成形用スラリーと同様のものである。
調製された成形用スラリーは、型に形成された板状くし型の型内空間に注型される。注型された成形用スラリーにおいては、ゲル化剤が重合し、3次元架橋構造が形成される。これにより、注型された成形用スラリーが硬化し、板状くし型のセラミック成形体が得られる。
得られた板状くし型のセラミック成形体は、適切な雰囲気下において適切な温度で焼成される。これにより、各セラミック基板220および各セラミック基板221の各々として使用されるセラミック基板が得られる。各セラミック基板220および各セラミック基板221の各々として使用されるセラミック基板が板状のセラミック基板を加工することにより作製されてもよい。
2.5 ドクターブレード法による各セラミック基板の作製
ドクターブレード法による各セラミック基板220および各セラミック基板221の各々として使用されるセラミック基板の作製においては、成形用スラリーがキャリアフィルム上に塗布される。これにより、塗布膜が得られる。
得られた塗布膜は、硬化させられる。これにより、テープ状のセラミック成形体が得られる。
得られたテープ状のセラミック成形体は、加工される。これにより、板状くし型のセラミック成形体が得られる。
得られた板状くし型のセラミック成形体は、適切な雰囲気下において適切な温度で焼成される。これにより、各セラミック基板220および各セラミック基板221の各々として使用されるセラミック基板が得られる。各セラミック基板220および各セラミック基板221の各々として使用されるセラミック基板が板状のセラミック基板を加工することにより作製されてもよい。
2.6 ナノ粒子の固定
ナノ粒子211の固定においては、分散スラリーが調製される。調製される分散スラリーは、第1実施形態のナノ粒子111の固定において調製される分散スラリーと同様のものである。
作製された各セラミック基板220および各セラミック基板221が、調製された分散スラリーに浸漬される。これにより、ディップコーティングが行われ、調製されたスラリーが各セラミック基板220の両主面および端面ならびに各セラミック基板221の両主面および端面に接触し、ナノ粒子211が各セラミック基板220の両主面および端面ならびに各セラミック基板221の両主面および端面に付着する。
両主面および端面にナノ粒子211が付着した各セラミック基板220ならびに両主面および端面にナノ粒子211が付着した各セラミック基板221は、乾燥熱処理される。これにより、ナノ粒子211が無機系バインダーにより各セラミック基板220の両主面および端面ならびに各セラミック基板221の両主面および端面に結合させられ、図4および図5の各々に図示されるナノ粒子211が結合させられた各セラミック基板220および各セラミック基板221が作製される。
2.7 押し出し成形による基材の作製
複数のセラミック基板220および複数のセラミック基板221の組み合わせ物である基材210が、基材210の形状と同様の形状を有する一体物である基材に置き換えられてもよい。
一体物である基材の作製においては、杯土が調製される。杯土は、骨材に分散媒および有機バインダーを添加して混練することにより調製される。杯土が骨材、分散媒および有機バインダー以外の成分を含んでもよい。例えば、杯土が界面活性剤、可塑剤等を含んでもよい。
骨材は、一体物である基材を構成するセラミック材料の粉末である。
調製された杯土は、一体物である基材の断面形状に応じた断面形状を有する孔が形成された口金を経由して押し出し成形される。これにより、一体物である基材の断面形状に応じた断面形状を有する形状物が得られる。
得られた形状物は、乾燥させられる。
乾燥させられた形状物は、所定の長さを有するように切断される。これにより、成形体が得られる。
得られた成形体は、骨材の材料および杯土の組成に応じた温度で骨材の材料および杯土の組成に応じた時間をかけて焼成される。例えば、得られた成形体は、1000から1600℃で0.1から3時間かけて焼成される。これにより、焼結体であり一体物である基材が作製される。
3 第3実施形態
3.1 流体加熱部材の構成
第3実施形態は、流体加熱部材に関する。
第1実施形態の流体加熱部材と第3実施形態の流体加熱部材との主な相違は、第1実施形態においては、基材110が平行平板状の構造体であるのに対して、第3実施形態においては、基材がハニカム状の構造体である点にある。
上記の主な相違をもたらす構成の採用を阻害しない範囲において他の実施形態において採用された構成が第3実施形態において採用されてもよい。
図7の模式図は、第3実施形態の流体加熱部材を図示する斜視図である。
図7に図示される流体加熱部材300は、基材310および多数のナノ粒子311を備える。
基材310には、複数の六角柱状の孔320が形成される。複数の六角柱状の孔320は、密に配列される。これにより、複数の六角柱状の孔320が形成されたハニカム状の構造体である基材310が得られ、複数の六角柱状の孔320の各々である各孔320の内壁330、基材310の外周面331および基材310の端面332が、流体が接触しうる表面になる。
基材310は、透光性を有する。基材310を構成するセラミック材料は、第1実施形態の各セラミック基板120を構成するセラミック材料と同様のものである。
ナノ粒子311は、各孔320の内壁330、基材310の外周面331および基材310の端面332に分散して固定される。ナノ粒子311を構成する化合物は、第1実施形態のナノ粒子111を構成する化合物と同様のものである。
3.2 流体の加熱
流体加熱部材300により流体が加熱される場合は、流体加熱部材300が流体中に置かれ、各孔320の内壁330、基材310の外周面331および基材310の端面332に流体が接触させられる。また、流体加熱部材300に太陽光が照射される。基材310は透光性を有するため、照射された太陽光は内壁330、外周面331および端面332の全部に到達し内壁330、外周面331および端面332に固定されたナノ粒子311に到達する。ナノ粒子311に到達した太陽光は、ナノ粒子311に吸収され、熱に変換される。当該熱は、ナノ粒子311から流体に直接的に伝わる。これにより、流体が加熱される。
第3実施形態の流体加熱部材300によれば、第1実施形態の流体加熱部材100と同様に、太陽光を効率よく吸収するナノ粒子311から流体に熱が直接的に伝わり、流体が効率よく加熱される。
また、第3実施形態の流体加熱部材300によれば、第1実施形態の流体加熱部材100と同様に、ナノ粒子311から流体を分離する処理、ナノ粒子311により加熱された1次流体と2次流体との間で熱交換を行わせる処理、ナノ粒子311の流出を防ぐ処理等が不要になり、加熱された流体が容易に得られる。
さらに、第3実施形態の流体加熱部材300によれば、第1実施形態の流体加熱部材100と同様に、流体加熱部材300の中心部においても太陽光が吸収され、太陽光を熱に変換する効率が高くなる。
加えて、第1実施形態の流体加熱部材100と同様に、第3実施形態の流体加熱部材300において基材310が高い熱伝導率を有する場合は、流体の全体に熱が均一に伝わり、加熱された流体を製造することが容易になる。
3.3 流体加熱部材の製造
図8は、第3実施形態の流体加熱部材を製造する手順を図示するフローチャートである。
流体加熱部材300の作製においては、図8に図示される工程S301において、基材310が作製される。
続いて、工程S302において、各孔320の内壁330、基材310の外周面331および基材310の端面332にナノ粒子311が分散して固定される。これにより、図7に図示される流体加熱部材300が製造される。
3.4 押し出し成形による基材の作製
基材310の作製においては、杯土が調製される。調製される杯土は、第2実施形態の一体物である基材の作製において調製される杯土と同様のものである。
調製された杯土は、基材310の断面形状に応じた断面形状を有する孔が形成された口金を経由して押し出し成形される。これにより、基材310の断面形状に応じた断面形状を有する形状物が得られる。
得られた形状物は、乾燥させられる。
乾燥させられた形状物は、所定の長さを有するように切断される。これにより、成形体が得られる。
得られた成形体は、骨材の材料および杯土の組成に応じた温度で骨材の材料および杯土の組成に応じた時間をかけて焼成される。例えば、得られた成形体は、1000から1600℃で0.1から3時間かけて焼成される。これにより、焼結体である基材310が作製される。
4 第4実施形態
第4実施形態は、流体加熱部材に関する。
第1実施形態の流体加熱部材100と第4実施形態の流体加熱部材との主な相違は、第1実施形態においては、基材110が平行平板状の構造体であるのに対して、第4実施形態においては、基材が格子状の構造体である点にある。
上記の主な相違をもたらす構成の採用を阻害しない範囲において他の実施形態において採用された構成が第4実施形態において採用されてもよい。
図9の模式図は、第4実施形態の流体加熱部材400を図示する斜視図である。
図9に図示される流体加熱部材400は、基材410および多数のナノ粒子411を備える。
基材410は、円筒420および格子421を備える。格子421は、円筒420に形成される円柱状の空間430に配置され、空間430を複数の柱状の孔440に区分けする。これにより、複数の柱状の孔440が形成された格子状の構造体である基材410が得られ、複数の柱状の孔440の各々である各孔440の内壁450、基材410の外周面451および基材410の端面452が、流体が接触しうる表面になる。
第4実施形態の流体加熱部材400は、基材410の形状が異なる点を除いては、第3実施形態の流体加熱部材300と同様に製造される。
5 第5実施形態
第5実施形態は、流体加熱部材に関する。
第1実施形態の流体加熱部材100と第5実施形態の流体加熱部材との主な相違は、第1実施形態においては、基材110が平行平板状の構造体であるのに対して、第5実施形態においては、基材が格子状の構造体である点にある。
上記の主な相違をもたらす構成の採用を阻害しない範囲において他の実施形態において採用された構成が第5実施形態において採用されてもよい。
図10の模式図は、第5実施形態の流体加熱部材を図示する斜視図である。
図10に図示される流体加熱部材500は、基材510および多数のナノ粒子511を備える。
基材510は、角筒520および格子521を備える。格子521は、角筒520に形成される角柱状の空間530に配置され、角柱状の空間530を複数の柱状の孔540に区分けする。これにより、複数の柱状の孔540が形成された格子状の構造体である基材510が得られ、複数の柱状の孔540の各々である各孔540の内壁550、基材510の外周面551および基材510の端面552が、流体が接触しうる表面になる。
第5実施形態の流体加熱部材500は、基材の形状が異なる点を除いては、第3実施形態の流体加熱部材300と同様に製造される。
6 第6実施形態
6.1 流体加熱部材の構成
第6実施形態は、流体加熱部材に関する。
第1実施形態と第6実施形態との主な相違は、第1実施形態においては、基材110が緻密体からなり、基材110の表面140,141および142が、流体が接触しうる表面になり、基材110の表面140,141および142にナノ粒子111が固定されるのに対して、第6実施形態においては、基材が多孔質体からなり、基材の細孔内表面および外表面が、流体が接触しうる表面になり、基材の細孔内表面にナノ粒子が固定される点にある。
上記の主な相違をもたらす構成の採用を阻害しない範囲において他の実施形態において採用された構成が第6実施形態において採用されてもよい。
図11は、第6実施形態の流体加熱部材を図示する斜視図である。図12は、第6実施形態の流体加熱部材の微構造を図示する断面図である。
図11および図12に図示される流体加熱部材600は、基材610および多数のナノ粒子611を備える。
基材610は、3次元格子状である。基材610は、図12に図示されるように、多孔質体からなる。このため、基材610は流体が侵入しうる空間となる細孔620を内部に有し、基材610の細孔内表面630および外表面631は流体が接触しうる表面になる。
基材610は、透光性を有する。基材610を構成するセラミック材料は、望ましくはアルミナ、窒化アルミニウム、ジルコニアまたはシリカであり、さらに望ましくは低い熱伝導率を有するジルコニアまたはシリカである。基材610を構成するセラミック材料がアルミナ、窒化アルミニウム、ジルコニアおよびシリカから選択される2種類以上のセラミック材料の固溶体または複合体であってもよい。例えば、基材610を構成するセラミック材料が高い耐食性を有するジルコニアおよびシリカの固溶体であってもよい。基材610は、望ましくは高い親水性を有する。これにより、加熱される流体が水である場合に基材610が水を保持する能力が向上する。基材610が例示されるセラミック材料以外のセラミック材料以外により構成されてもよい。セラミック材料により構成される基材610がセラミック材料以外の材料により構成される基材に置き換えられてもよい。例えば、セラミック材料により構成される基材610がガラス、石英等により構成される基材に置き換えられてもよい。
ナノ粒子611は、細孔620を囲む細孔内表面630に分散して固定される。ナノ粒子611が細孔内表面630に加えて基材610の外部に露出する外表面631に固定されてもよい。ナノ粒子611を構成する化合物は、第1実施形態のナノ粒子111を構成する化合物と同様のものである。
6.2 流体の加熱
流体加熱部材600により流体が加熱される場合は、流体加熱部材600が流体中に置かれ、基材610の細孔内表面630および外表面631に流体が接触させられる。また、流体加熱部材600に太陽光が照射される。基材610は透光性を有するため、照射された太陽光は細孔内表面630に到達し細孔内表面630に固定されたナノ粒子611に到達する。ナノ粒子611に到達した太陽光は、ナノ粒子611に吸収され、熱に変換される。当該熱は、ナノ粒子611から流体に直接的に伝わる。これにより、流体が加熱される。
第6実施形態の流体加熱部材600によれば、第1実施形態の流体加熱部材100と同様に、太陽光を効率よく吸収するナノ粒子611から流体に熱が直接的に伝わり、流体が効率よく加熱される。
また、第6実施形態の流体加熱部材600によれば、第1実施形態の流体加熱部材100と同様に、ナノ粒子611から流体を分離する処理、ナノ粒子611により加熱された1次流体と2次流体との間で熱交換を行わせる処理、ナノ粒子611の流出を防ぐ処理等が不要になり、加熱された流体が容易に得られる。
さらに、第6実施形態の流体加熱部材600によれば、第1実施形態の流体加熱部材100と同様に、流体加熱部材600の中心部においても太陽光が吸収され、太陽光を熱に変換する効率が高くなる。
加えて、第6実施形態の流体加熱部材600において基材610が低い熱伝導率を有する場合は、流体に局所的に熱が伝わり、液体を蒸発させることにより生成される気体を製造することが容易になる。
6.3 流体加熱部材の製造
図8は、第6実施形態の流体加熱部材を製造する手順を図示するフローチャートでもある。
流体加熱部材600の作製においては、図8に図示される工程S601において、基材610が作製される。
続いて、工程S602において、基材610の細孔内表面630にナノ粒子611が分散して固定される。これにより、図11および図12に図示される流体加熱部材600が製造される。
6.4 基材の作製
基材610の作製においては、成形用スラリーが調製される。調製される成形用スラリーは、第1実施形態のゲルキャスト法による各セラミック基板120の作製において調製される成形用スラリーと同様のものである。
図13は、第6実施形態の基材の作製において使用されるウレタンフォームを図示する斜視図である。
図13に図示されるウレタンフォーム640は、あらかじめ3次元構造を有するように加工され、基材610の形状に応じた形状を有する。
調製された成形用スラリーは、ウレタンフォーム640に含浸させられる。
成形用スラリーが含浸させられたウレタンフォーム640は、含浸させられた成形用スラリーがウレタンフォーム640に形成された孔を塞がない程度に絞られる。これにより、余剰の成形用スラリーが除去される。
余剰の成形用スラリーが除去されたウレタンフォーム640は、固定用治具の上に載置された状態で常温から40℃の温度下において数時間から数10時間放置される。ウレタンフォーム640が放置されている間に、成形用スラリーにおいては、ゲル化剤が重合し、3次元架橋構造が形成される。これにより、ウレタンフォーム640に含浸させられた成形用スラリーがゲル化して硬化し、ウレタンフォーム640およびセラミック成形体の複合体が得られる。
得られた複合体は、約500℃で熱処理される。これにより、ウレタンフォーム640が除去され、セラミック成形体が得られる。
得られたセラミック成形体は、800℃から1500℃で焼成される。これにより、セラミック成形体を構成するセラミック粒子が焼結し強固な骨格が形成され、ウレタンフォーム640の3次元形状を反映した3次元形状を有する基材610が作製される。
6.5 ナノ粒子の固定
ナノ粒子611の固定においては、分散スラリーが調製される。分散スラリーは、第1実施形態のナノ粒子111の固定において調製される分散スラリーと同様のものである。
作製された基材610が調製された分散スラリーに浸漬され、作製された基材610が調製された分散スラリーに浸漬された状態において真空脱気または分散スラリーの加熱が行われる。これにより、細孔620から空気が追い出され、調製されたスラリーが細孔620に侵入し、ナノ粒子611が細孔内表面630に付着する。
細孔内表面630にナノ粒子611が付着した基材610は、乾燥熱処理される。これにより、ナノ粒子611が無機系バインダーにより細孔内表面630に結合させられ、図11および図12に図示される流体加熱部材600が作製される。
7 第7実施形態
7.1 流体加熱部材の構成
第7実施形態は、流体加熱部材に関する。
第1実施形態と第7実施形態との主な相違は、第1実施形態においては、基材110が緻密体からなり、基材110の表面140,141および142が、流体が接触しうる表面になり、基材110の表面140,141および142にナノ粒子111が固定されるのに対して、第7実施形態においては、基材が多孔質体からなり、基材の細孔内表面および外表面が、流体が接触する表面になり、基材の細孔内表面にナノ粒子が固定される点にある。
上記の主な相違をもたらす構成の採用を阻害しない範囲において他の実施形態において採用された構成が第7実施形態において採用されてもよい。
図14は、第7実施形態の流体加熱部材を図示する斜視図である。図12は、第7実施形態の流体加熱部材の微構造を図示する断面図でもある。
図14および図12に図示される流体加熱部材700は、基材710および多数のナノ粒子711を備える。
基材710は、バルク状である。基材710は、図12に図示されるように、多孔質体からなる。このため、基材710は流体が侵入しうる空間となる細孔720を内部に有し、基材710の細孔内表面730および外表面731は流体が接触しうる表面になる。
基材710は、透光性を有する。基材710を構成するセラミック材料は、第6実施形態の基材610を構成するセラミック材料と同様のものである。
ナノ粒子711は、細孔720を囲む細孔内表面730に分散して固定される。ナノ粒子711が細孔内表面730に加えて外表面731に固定されてもよい。ナノ粒子711を構成する化合物は、第1実施形態のナノ粒子111を構成する化合物と同様のものである。
7.2 流体の加熱
流体加熱部材700により流体が加熱される場合は、流体加熱部材700が流体中に置かれ、基材710の細孔内表面730に流体が接触させられる。また、流体加熱部材700に太陽光が照射される。基材710は透光性を有するため、照射された太陽光は細孔内表面730に到達し細孔内表面730に固定されたナノ粒子711に到達する。ナノ粒子711に到達した太陽光は、ナノ粒子711に吸収され、熱に変換される。当該熱は、ナノ粒子711から流体に直接的に伝わる。これにより、流体が加熱される。
第7実施形態の流体加熱部材700によれば、第1実施形態の流体加熱部材100と同様に、太陽光を効率よく吸収するナノ粒子711から流体に熱が直接的に伝わり、流体が効率よく加熱される。
また、第7実施形態の流体加熱部材700によれば、第1実施形態の流体加熱部材100と同様に、ナノ粒子711から流体を分離する処理、ナノ粒子711により加熱された1次流体と2次流体との間で熱交換を行わせる処理、ナノ粒子711の流出を防ぐ処理等が不要になり、加熱された流体が容易に得られる。
さらに、第7実施形態の流体加熱部材700によれば、第1実施形態の流体加熱部材100と同様に、流体加熱部材700の中心部においても太陽光が吸収され、太陽光を熱に変換する効率が高くなる。
加えて、第7実施形態の流体加熱部材700において基材710が低い熱伝導率を有する場合は、流体に局所的に熱が伝わり、液体を蒸発させることにより生成される気体を製造することが容易になる。
7.3 流体加熱部材の製造
図8は、第7実施形態の流体加熱部材を製造する手順を図示するフローチャートでもある。
流体加熱部材700の作製においては、図8に図示される工程S701において、基材710が作製される。
続いて、工程S702において、基材710の細孔内表面730にナノ粒子711が分散して固定される。ナノ粒子711の固定は、第6実施形態のナノ粒子611の固定と同様に行われる。これにより、図14および図12に図示される流体加熱部材700が製造される。
7.4 基材の作製
基材710の作製においては、杯土が調製される。杯土は、骨材に分散媒および有機バインダーを添加して混練することにより調製される。杯土が骨材、分散媒および有機バインダー以外の成分を含んでもよい。例えば、杯土が界面活性剤、可塑剤、造孔剤等を含んでもよい。造孔剤は、高い気孔率を有する基材710を得ることが望まれる場合に添加され、焼成中に消失して気孔を形成する。
骨材は、基材710を構成するセラミック材料の粉末である。
調製された杯土は、基材710の断面形状に応じた断面形状を有する孔が形成された口金を経由して押し出し成形される。これにより、基材710の断面形状に応じた断面形状を有する形状物が得られる。
得られた形状物は、乾燥させられる。
乾燥させられた形状物は、所定の長さを有するように切断される。これにより、成形体が得られる。
得られた成形体は、骨材の材料および杯土の組成に応じた温度で骨材の材料および杯土の組成に応じた時間をかけて焼成される。例えば、得られた成形体は、1000から1600℃で0.1から3時間かけて焼成される。これにより、焼結体である基材710が作製される。
8 第8実施形態
8.1 流体加熱部材の構成
第8実施形態は、流体加熱部材に関する。
第1実施形態と第8実施形態との主な相違は、第1実施形態においては、基材110が緻密体からなり、基材110が透光性を有し、基材110の表面140,141および142が、流体が接触しうる表面になり、基材110の表面140,141および142にナノ粒子111が固定されるのに対して、第8実施形態においては、基材が多孔質体からなり、基材が透光性を有しなくてもよく、基材の細孔内表面および外表面が、流体が接触しうる表面になり、基材の外表面にナノ粒子が固定される点にある。
上記の主な相違をもたらす構成の採用を阻害しない範囲において他の実施形態において採用された構成が第8実施形態において採用されてもよい。
図11は、第8実施形態の流体加熱部材を図示する斜視図でもある。図15は、第8実施形態の流体加熱部材の微構造を図示する断面図である。
図11および図15に図示される流体加熱部材800は、基材810および多数のナノ粒子811を備える。
基材810は、3次元格子状である。基材810は、図15に図示されるように、多孔質体からなる。このため、基材810は流体が侵入しうる空間となる細孔820を内部に有し、基材810の細孔内表面830および外表面831は流体が接触しうる表面になる。
基材810は、透光性を有しなくてもよい。基材810を構成するセラミック材料は、望ましくはムライト、コージェライト、アルミナ、窒化アルミニウム、ジルコニアまたはシリカであり、さらに望ましくは低い熱伝導率を有するムライトまたはコージェライトである。基材810を構成するセラミック材料がムライト、コージェライト、アルミナ、窒化アルミニウム、ジルコニアおよびシリカから選択される2種類以上のセラミック材料の固溶体または複合体であってもよい。基材810は、望ましくは高い親水性を有する。基材810が例示されるセラミック材料以外のセラミック材料以外により構成されてもよい。セラミック材料により構成される基材810がセラミック材料以外の材料により構成される基材に置き換えられてもよい。例えば、セラミック材料により構成される基材810がガラス、石英等により構成される基材に置き換えられてもよい。
ナノ粒子811は、基材810の外表面831に分散して固定される。ナノ粒子811を構成する化合物は、第1実施形態のナノ粒子111を構成する化合物と同様のものである。
8.2 流体の加熱
流体加熱部材800により流体が加熱される場合は、流体加熱部材800が流体中に置かれ、基材810の細孔内表面830および外表面831に流体が接触させられる。また、流体加熱部材800に太陽光が照射される。ナノ粒子811は外表面831に固定されるため、照射された太陽光はナノ粒子811に到達する。ナノ粒子811に到達した太陽光は、ナノ粒子811に吸収され、熱に変換される。当該熱は、ナノ粒子811から流体に直接的に伝わる。これにより、流体が加熱される。
第8実施形態の流体加熱部材800によれば、第1実施形態の流体加熱部材100と同様に、太陽光を効率よく吸収するナノ粒子811から流体に熱が直接的に伝わり、流体が効率よく加熱される。
また、第8実施形態の流体加熱部材800によれば、第1実施形態の流体加熱部材100と同様に、ナノ粒子811から流体を分離する処理、ナノ粒子811により加熱された1次流体と2次流体との間で熱交換を行わせる処理、ナノ粒子811の流出を防ぐ処理等が不要になり、加熱された流体が容易に得られる。
さらに、第8実施形態の流体加熱部材800において基材810が低い熱伝導率を有する場合は、流体に局所的に熱が伝わり、液体を蒸発させることにより生成される気体を製造することが容易になる。
8.3 流体加熱部材の製造
図8は、第8実施形態の流体加熱部材を製造する手順を図示するフローチャートでもある。
流体加熱部材800の作製においては、工程S801において、基材810が作製される。基材810は、透光性を有する材料を選択する必要がない点を除いて、第6実施形態の基材610と同様に作製される。
続いて、工程S802において、基材810の外表面831にナノ粒子811が分散して固定される。これにより、図11および図15に図示される流体加熱部材800が製造される。
8.4 ナノ粒子の固定
ナノ粒子811の固定においては、分散スラリーが調製される。分散スラリーは、第1実施形態のナノ粒子111の固定において調製される分散スラリーと同様のものである。望ましくは、分散スラリーにポリビニルアルコール等の高分子化合物からなる増粘剤が添加され、分散スラリーが増粘させられる。
作製された基材810の表面には、調製された分散スラリーが塗布される。これにより、調製されたスラリーが基材810の外表面831に接触し、ナノ粒子811が外表面831に付着する。塗布は、スプレーコート法、スタンプ法、ディッピングコート法等により行われる。
分散スラリーが増粘させられた場合は、分散スラリーの細孔820への進入が抑制され、外表面831のみにナノ粒子811が固定される。
外表面831にナノ粒子811が付着した基材810は、乾燥熱処理される。これにより、ナノ粒子811が無機系バインダーにより外表面831に結合され、図11および図15に図示される流体加熱部材800が作製される。
9 第9実施形態
9.1 流体加熱部材の構成
第9実施形態は、流体加熱部材に関する。
第1実施形態と第9実施形態との主な相違は、第1実施形態においては、基材110が緻密体からなり、基材110が透光性を有し、基材110の表面140,141および142が、流体が接触しうる表面になり、基材110の表面140,141および142にナノ粒子111が固定されるのに対して、第9実施形態においては、基材が多孔質体からなり、基材が透光性を有しなくてもよく、基材の細孔内表面および外表面が、流体が接触しうる表面になり、基材の外表面にナノ粒子が固定される点にある。
上記の主な相違をもたらす構成の採用を阻害しない範囲において他の実施形態において採用された構成が第9実施形態において採用されてもよい。
図14は、第9実施形態の流体加熱部材を図示する斜視図でもある。図15は、第9実施形態の流体加熱部材の微構造を図示する断面図でもある。
図14および図15に図示される流体加熱部材900は、基材910および多数のナノ粒子911を備える。
基材910は、バルク状である。基材910は、図15に図示されるように、多孔質体からなる。このため、基材910は流体が侵入しうる空間となる細孔920を内部に有し、基材910の細孔内表面930および外表面931は流体が接触しうる表面になる。
基材910は、透光性を有しなくてもよい。基材910を構成するセラミック材料は、第8実施形態の基材810を構成するセラミック材料と同様のものである。
ナノ粒子911は、基材910の外表面931に分散して固定される。ナノ粒子911を構成する化合物は、第1実施形態のナノ粒子111を構成する化合物と同様のものである。
9.2 流体の加熱
流体加熱部材900により流体が加熱される場合は、流体加熱部材900が流体中に置かれ、基材910の細孔内表面930および外表面931に流体が接触させられる。また、流体加熱部材900に太陽光が照射される。ナノ粒子911は基材910の外部に露出する外表面931に固定されるため、照射された太陽光はナノ粒子911に到達する。ナノ粒子911に到達した太陽光は、ナノ粒子911に吸収され、熱に変換される。当該熱は、ナノ粒子911から流体に直接的に伝わる。これにより、流体が加熱される。
第9実施形態の流体加熱部材900によれば、第1実施形態の流体加熱部材100と同様に、太陽光を効率よく吸収するナノ粒子911から流体に熱が直接的に伝わり、流体が効率よく加熱される。
また、第9実施形態の流体加熱部材900によれば、第1実施形態の流体加熱部材100と同様に、ナノ粒子911から流体を分離する処理、ナノ粒子911により加熱された1次流体と2次流体との間で熱交換を行わせる処理、ナノ粒子911の流出を防ぐ処理等が不要になり、加熱された流体が容易に得られる。
さらに、第9実施形態の流体加熱部材900において基材910が低い熱伝導率を有する場合は、流体に局所的に熱が伝わり、液体を蒸発させることにより生成される気体を製造することが容易になる。
9.3 流体加熱部材の製造
図8は、第9実施形態の流体加熱部材を製造する手順を図示するフローチャートでもある。
流体加熱部材900の作製においては、工程S901において、基材910が作製される。基材910は、透光性を有する材料を選択する必要がない点を除いて、第7実施形態の基材710と同様に作製される。
続いて、工程S902において、基材910の外表面931にナノ粒子911が分散して固定される。これにより、図14および図15に図示される流体加熱部材900が製造される。ナノ粒子911の固定は、第8実施形態のナノ粒子811の固定と同様に行われる。
10 第10実施形態
第10実施形態は、温水製造装置に関する。
図16は、第10実施形態の温水製造装置を図示する模式図である。
図16に図示される温水製造装置1000は、流体加熱部材1010および回収機構1011を備える。温水製造装置1000は、太陽光が流体加熱部材1010に照射されるように野外等に設置され、温水を製造するために使用される。
流体加熱部材1010は、第1実施形態から第9実施形態までの流体加熱部材100,200,300,400,500,600,700,800および900のいずれかであり、望ましくは第1実施形態から第5実施形態までの流体加熱部材100,200,300,400および500のいずれかであり、さらに望ましくは第1実施形態の流体加熱部材100である。流体加熱部材100,200,300,400および500は、流体加熱部材600,700,800および900と比較して、多量の流体を加熱する用途に向いているため、温水製造装置1000において好適に採用される。
回収機構1011は、水が流体加熱部材1010により加熱されて温水となった後に温水を流体加熱部材1010から回収する。
温水製造装置1000は、温水以外の加熱された流体の製造にも転用できる。
11 第11実施形態
第11実施形態は、溶融塩製造装置に関する。
図17は、第11実施形態の溶融塩製造装置を図示する模式図である。
図17に図示される溶融塩製造装置1100は、流体加熱部材1110、回収機構1111および集光器1112を備える。溶融塩製造装置1100は、集光器1112に太陽光が照射されるように野外等に設置され、溶融塩を製造するために使用される。
流体加熱部材1110は、第1実施形態から第9実施形態までの流体加熱部材100,200,300,400,500,600,700,800および900のいずれかであり、望ましく第1実施形態から第5実施形態までの流体加熱部材100,200,300,400および500のいずれかであり、さらに望ましくは第2実施形態から第5実施形態までの流体加熱部材200,300,400および500のいずれかである。流体加熱部材100,200,300,400および500は、流体加熱部材600,700,800および900と比較して、多量の流体を加熱する用途に向いているため、溶融塩製造装置1100において好適に採用される。
回収機構1111は、溶融塩が流体加熱部材1110により加熱されて加熱された溶融塩となった後に加熱された溶融塩を流体加熱部材1110から回収する。加熱された溶融塩は、発電、水素の製造等に利用される。
集光器1112は、流体加熱部材1110に太陽光を集光する。
溶融塩製造装置1100は、加熱された溶融塩以外の加熱された流体の製造にも転用できる。
12 第12実施形態
第12実施形態は、水蒸気製造装置に関する。
図18は、第12実施形態の水蒸気製造装置を図示する模式図である。
図18に図示される水蒸気製造装置1200は、流体加熱部材1210および回収機構1211を備える。水蒸気製造装置1200は、流体加熱部材1210が海水1220に浸漬されるように設置される。
流体加熱部材1210は、第1実施形態から第9実施形態までの流体加熱部材100,200,300,400,500,600,700,800および900のいずれかであり、望ましく第6実施形態から第9実施形態までの流体加熱部材600,700,800および900のいずれかである。流体加熱部材600,700,800および900は、流体加熱部材100,200,300,400および500と比較して、流体を高い温度まで加熱する用途に向いているため、水蒸気製造装置1200において好適に採用される。
回収機構1211は、海水が流体加熱部材1210により加熱され蒸発することにより生成される水蒸気を流体加熱部材1210から回収する。回収された水蒸気は、海水1120から淡水1221を得るために利用される。
水蒸気製造装置1200は、海水1220以外の流体からの気体の製造および水蒸気以外の気体の製造にも転用できる。水蒸気製造装置1200は、蒸留、汚染水の浄化等にも転用できる。
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。