JP2018135573A - 円筒型スパッタリングターゲット材及びその製造方法 - Google Patents

円筒型スパッタリングターゲット材及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】円筒形状の端部における蓋部の接合加工を不必要として、接合部での欠陥リスクを全く解消した、高品質な円筒型スパッタリングターゲット材とその有利な製造方法を提供することにあり、また、大型サイズの円筒型スパッタリングターゲット材を有利に提供する。【解決手段】軸回りに回転せしめられる、外周面がスパッタリング面とされた円筒形状のターゲット本体部12と、このターゲット本体部12の一方の端部を閉塞する蓋部14とを備えたスパッタリングターゲット材10にして、マンドレルを用いた熱間押出加工によって管成形された、少なくとも押出方向における先端部が閉塞されてなる形態の円筒形状の押出筒体から形成され、ターゲット本体部10と蓋部14とが一体の一部材として構成した。【選択図】図1

Description

本発明は、円筒型スパッタリングターゲット材及びその製造方法に係り、特に、欠陥リスクを極力排除した高品質な円筒状のスパッタリングターゲット材と、それを有利に製造する方法に関するものである。
従来から、基板やガラス、プラスチック等の材料に薄膜を成膜する技術として、スパッタリング法が知られており、それによって成膜された各種の製品が、実用に供されてきている。例えば、液晶や有機ELパネル等のフラットパネルディスプレイやタッチパネル等の配線膜として、CuやAl等からなる薄膜が、スパッタリング法にて、所定の基材面に形成されているのである。
そして、そのような材質からなるスパッタリング薄膜を、所定の基材上に成膜する場合には、これまで、平板形状を呈するスパッタリングターゲット材が用いられて、その一方の平面に対してスパッタリングが実施されてきているのであるが、近年、同時に大量にスパッタリングが可能であり、且つ成膜速度やターゲット使用効率の点で優れている等の特徴から、外周面をスパッタリング面とする円筒型のスパッタリングターゲット材を用いることが推奨され、特開2002−155356号公報、特開2012−111994号公報、特開2013−57112号公報等においては、そのような円筒型のスパッタリングターゲット材について、各種の提案が為されている。
また、かかる円筒型のスパッタリングターゲット材は、ターゲット材ホルダとしてのパッキンチューブに装着して、保持され、そして、被スパッタリング材に対向するように配置されて、ターゲット駆動装置により支持された状態において、パッキンチューブと共に、軸回りに回転せしめられて使用されるようになっているのであるが、特に、近年においては、ディスプレイパネルや基板としての被スパッタリング材としての大型化が進むに伴い、そのような大型サイズの被スパッタリング材への成膜に適用することが期待されており、これに応えるために、円筒型のターゲット材についても、大型サイズのものが要求されるようになっている。
しかしながら、円筒型スパッタリングターゲット材の大型化に伴い、それが長尺化される場合において、その円筒状ターゲット材の製造過程において冷間加工や熱処理が行われると、それによって、撓みや歪みが生じ易くなるという問題が内在しており、そして、そのような円筒状のターゲット材に撓みや歪みが生じた場合にあっては、ターゲットホルダへの装着が困難となるという問題を生じる恐れがあった。
特に、そのような問題は、円筒状ターゲット材の端部を閉塞すべく、蓋部を溶接等によって接合せしめる場合において、より顕在化されることとなるのである。具体的には、円筒型スパッタリングターゲット材を用いたスパッタリング法においては、ターゲット材の筒外面側は高真空下に曝される一方、マグネトロンの配置される筒内には、ターゲット材を冷却するための冷却水が流されることとなるところから、その筒端部の開口部を閉塞して、密閉構造とする必要があり、そのために、筒状ターゲット材の開口端部に対して、蓋部材を接合することが不可欠とされているのである。例えば、上記の特開2012−111994号公報においても、円筒状ターゲット材の端部開口部に蓋部材を電子ビーム溶接により固着せしめて、密閉構造が確保されるようになっているのである。而して、そのような蓋部材を筒体端部に接合するために、電子ビーム溶接やアーク溶接等の溶接技術を採用すると、それが溶融溶接であるところから、筒体側(円筒部側)の温度が再結晶温度以上に上昇して、結晶粒の粗大化を招くこととなり、そのために、スパッタリングに供し得る円筒部の領域が狭くなって、その歩留りが低下する等の問題も惹起されるようになるのである。
さらに、そのような蓋部材の接合に際して、電子ビーム溶接の如き溶融溶接を実施した場合にあっては、接合欠陥の問題を内在することに加えて、材料が溶解されて生じる溶融部(溶接部)が凝固するときに、かかる溶接部にポロシティやブローホール等の欠陥が発生する恐れがある。しかして、そのような欠陥が溶接部からなる接合部に存在するターゲット材を用いて、真空中でスパッタリングをしたときには、そのような欠陥部位からガス等が発生して、形成される薄膜(スパッタリング膜)の品質に悪影響を及ぼす恐れも内在するものであった。
特開2002−155356号公報 特開2012−111994号公報 特開2013−57112号公報
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、円筒形状の端部における蓋部の接合加工を不必要として、接合部での欠陥リスクを全く解消した、高品質な円筒型スパッタリングターゲット材と、その有利な製造方法を提供することにあり、また、大型サイズの円筒型スパッタリングターゲット材を有利に提供することにもある。
そして、本発明にあっては、そのような課題を解決するために、軸回りに回転せしめられる、外周面がスパッタリング面とされた円筒形状のターゲット本体部と、このターゲット本体部の一方の端部を閉塞する蓋部とを備えたスパッタリングターゲット材にして、マンドレルを用いた熱間押出加工によって管成形された、少なくとも押出方向における先端部が閉塞されてなる形態の円筒形状の押出筒体から形成され、前記ターゲット本体部と前記蓋部とが一体の一部材として構成されていることを特徴とする円筒型スパッタリングターゲット材を、その要旨とするものである。
なお、かかる本発明に従う円筒型スパッタリングターゲット材の好ましい態様の一つによれば、前記押出筒体は銅材質からなるものである。
そして、本発明にあっては、上述の如き円筒型スパッタリングターゲット材を有利に得るべく、軸回りに回転せしめられる、外周面がスパッタリング面とされた円筒形状のターゲット本体部と、このターゲット本体部の一方の端部を閉塞する蓋部とを備えたスパッタリングターゲット材を製造する方法にして、コンテナ内に収容された加熱状態の中実の鋳塊ビレットに対して、マンドレルを突入せしめて、穴明けを行い、かかるマンドレルの先端部を、該コンテナの押出側端部に配された押出ダイスに到達せしめた後、該鋳塊ビレットの材料にて該マンドレルの先端部が覆われてなる状態下において、該鋳塊ビレットの押出加工を開始して、管成形を行うことにより、少なくとも押出方向における先端部が閉塞されてなる形態の円筒形状の押出筒体を形成せしめ、更にその後、該押出筒体の内径面及び外径面に切削加工を施すことにより、スパッタリングターゲット材として仕上げることを特徴とする円筒型スパッタリングターゲット材の製造方法をも、その要旨とするものである。このような方法によれば、冷間加工や熱処理を行うことなく、切削加工のみの仕上げ工程にて、目的とするターゲット材を得ることが出来、その製造工程の短縮化に寄与し、また労力の大幅な軽減を図り得ることとなるのである。
また、このような本発明に従う円筒型スパッタリングターゲット材の製造法の好ましい態様の一つにおいては、前記鋳塊ビレットの押出加工の終了に先立ち、前記マンドレルの先端部を前記押出ダイスから後退させた状態において押出加工することにより、前記押出筒体の押出方向における後端部を閉塞せしめ、そしてその形態において、かかる押出筒体が形成されることとなり、更に、そのような押出筒体は、前記押出ダイスから押し出された後、冷却水にて冷却せしめられるようになっていることが好ましいのである。このように、押出加工されて、得られた押出筒体が、冷却水によって急冷せしめられるに際して、かかる押出筒体の押出方向における前端部と後端部とが、それぞれ、閉塞されて、筒内に冷却水が浸入しない状態において、水冷されることにより、より均一な冷却を行うことが出来ると共に、均一で微細な金属組織を有する、高品質な円筒状のターゲット材が、有利に製造され得ることとなるのである。
このような本発明に従う円筒型スパッタリングターゲット材にあっては、少なくとも押出方向における先端部が閉塞されてなる形態の円筒形状の押出筒体から形成されて、ターゲット本体部と蓋部とが一体の一部材として構成されているところから、従来の如く、ターゲット本体部と蓋部とを溶接等によって接合する接合工程を採用する必要がなく、熱間押出加工によって得られた有底円筒形状の押出筒体をそのまま用いて、切削加工により、目的とするターゲット材に仕上げることが出来ることとなるところから、ターゲット本体部と蓋部との接合部における欠陥リスクが惹起されるようなことがなく、また、そのような接合操作に起因する熱影響の問題に加えて、撓みや歪み等の問題の発生も効果的に回避され得て、高品質な円筒状ターゲット材が提供され得たのあり、しかも、接合作業が不要となるところから、製造工程の簡略化、更には労力の大幅な低減をも可能となったのである。
また、本発明に従う円筒型スパッタリングターゲット材の製造法によれば、熱間押出加工による管成形を行うときに、押出方向先端部に中実部が存在するようにして、従って押出成形される押出筒体の先端部が閉塞されてなる形態において、管成形が行われることとなるものであり、更にそのような端部閉塞構造(有底円筒形状)の押出筒体を、そのまま用いて、ターゲット本体部と蓋部とが一体の一部材からなる円筒状ターゲット材として、仕上げられるものであるところから、ターゲット本体部と蓋部との溶接等による接合加工工程が全く不要となり、これによって、ターゲット材の製造工程の簡略化、ひいては生産性の向上が有利に図られ得ることとなる他、接合作業を不要とすることで、労力を大幅に低減することが出来ることに加えて、ターゲット本体部と蓋部との一体性が向上せしめられ得ることによって、それらの間の優れた機密性が、有利に確保され得ることとなったのである。
しかも、そのような熱間押出加工された押出素管である押出筒体は、均一で微細な金属組織を有していると共に、溶接等の接合作業における熱影響も何等顧慮する必要がないところから、目的とするターゲット材としての仕上げに際して、冷間加工や熱処理等の加工を施すことなく、切削加工のみの仕上げ工程を採用することが出来るのであって、この点においても、労力を大幅に軽減することに寄与し得ることとなった他、ターゲット材の製造工程の簡略化、ひいては生産性の向上にも大きく寄与し得るのである。
本発明に従う円筒型スパッタリングターゲット材の一例を示す一部切欠き正面説明図である。 本発明に従う円筒型スパッタリングターゲット材の製造工程の一例を示す断面説明図である。 本発明に従う円筒型スパッタリングターゲット材の製造工程において得られた押出筒体の一例を示す一部切欠き正面説明図である。 本発明において用いられる熱間押出加工装置の一例における熱間加工押出形態を示す切欠き説明図である。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の代表的な実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
先ず、本発明に従う円筒型スパッタリングターゲット材の一例を示す図1において、円筒状のスパッタリングターゲット材10は、軸回りに回転せしめられて、外周面がスパッタリング面とされる円筒形状のターゲット本体部12と、このターゲット本体部12の軸方向(長さ方向)の一方の端部を閉塞する蓋部14と、ターゲット本体部12の軸方向の他方の端部で開口する開口フランジ部16とを備えて構成されており、また、そのようなスパッタリングターゲット材10には、スパッタリング装置に組み込む際に、スパッタリングターゲット材10を回転自在に保持するターゲットホルダ(図示せず)への嵌合を許容する嵌合取付け部18が、その軸方向の両端部に、それぞれ形成されている。なお、そのような嵌合取付け部18は、スパッタリングターゲット材10の軸方向の中央部位に位置するスパッタリング部分に対して、小径となる形態において、軸方向において所定長さに亘って設けられている。また、蓋部14の内面中心には、マグネトロン(電極)を支持するための突部15が一体的に設けられている。
そして、本発明にあっては、かくの如き構成のスパッタリングターゲット材10が、マンドレルを用いた熱間押出加工によって管成形された、押出方向における先端部が閉塞されてなる形態の、有底円筒形状の押出筒体から形成されており、これによって、ターゲット本体部12と蓋部14とが、一体の一部材として構成されており、そしてそれにより、ターゲット本体部12と蓋部14との溶接等による接合操作が不要とされて、それらの接合部で惹起される欠陥リスクが効果的に回避され得て、高品質な円筒状ターゲット材を得ることが出来ることとなるのである。
しかも、そのような円筒状のスパッタリングターゲット材10は、ターゲット本体部12に対する蓋部14の一体性が増大せしめられたものであるために、それら各部の間が、優れた気密性において保たれ得るものであるところから、ターゲット本体部12の内部に粉塵が付着していた場合であっても、それら粉塵が隙間を通じて外部に流出することがないため、スパッタ装置に真空チャンバ内をクリーンに保つことが出来、スパッタリングを行う際に、被スパッタリング材に良好な薄膜を成膜することが出来ることとなる。また、ターゲット本体部12の内部に、長時間、高圧の冷却水を連続的に流した場合にあっても、接合部での隙間腐食等による漏水が惹起されるようなことがないために、この点からしても、スパッタリング装置に備えた真空チャンバ内をクリーンに保持することが出来ることとなるのであり、従って、被スパッタリング材に対するスパッタリングによる薄膜の成膜を有利に行うことが可能となるのである。
なお、かかるスパッタリングターゲット材10を与える押出筒体の材質としては、スパッタリングの目的に応じて、公知の各種の材質が適宜に採用され得るところであるが、本発明にあっては、一般に金属材質であることが好ましく、その中でも、Cu若しくはその合金からなるCu材質やAl若しくはその合金からなるAl材質が、好適に採用されることとなる他、TiやAg等の材質も、同様に採用可能である。そして、そのような材質からなる押出筒体から形成されるスパッタリングターゲット材10は、真空中において均一にスパッタリングせしめられ得るように、ランダムな結晶方位の再結晶粒が、微細且つ均一に分散されてなる形態において、平均結晶粒径が一般に30〜200μmの範囲内となる、微細化された結晶組織を有するものとして、調製されているように構成されることとなる。
ところで、上述の如き本発明に従うスパッタリング材ターゲット材10は、マンドレルを用いた熱間押出加工手法によって、有底円筒形状の押出筒体を管成形せしめ、そしてその押出筒体を、そのまま用いて、その内径面及び外径面を切削加工して、ターゲット材として仕上げることにより、容易に得ることが出来、図2には、そのような押出筒体を管成形操作にて製造するための熱間押出加工の工程の一例が示されている。
具体的には、図2に示される熱間押出加工の工程において、先ず、押出工程1においては、目的とするターゲット材10を与える材質からなる中実の鋳塊ビレット20が、コンテナ22内に収容されて、所定の温度に加熱された状態下において、鋳塊ビレット20の後方に配置されたステム24から、マンドレル26が突出せしめられて、中実の鋳塊ビレット20を突き刺し、突入(圧入)せしめられることにより、鋳塊ビレット20の穴明けが行われる。そして、そのようなマンドレル26の先端が、コンテナ22の押出側の端部に配された押出ダイス28に到達し、更に、押出ダイス28の押出孔29内に前進せしめられて、そのようなマンドレル26の前進によって、押出ダイス28の押出孔29内に押し出された鋳塊ビレット20の材料(メタル)にて、マンドレル26の先端部が覆われてなる状態とされる。換言すれば、押出ダイス28の押出孔29内へのマンドレル26の先端部の進入により、かかる押出ダイス28の押出孔29に押し出された鋳塊ビレット20の材料(メタル)にて形成される閉塞された管頭部(押出筒体の押出方向端部)が切断されない状態において、かかるマンドレル26の前進が停止せしめられるのである。
次いで、押出工程2においては、マンドレル26の先端部が、押出ダイス28の押出孔29内において、鋳塊ビレット20の材料にて覆われてなる、押出工程1にて示される状態下において、鋳塊ビレット20の押出加工を開始して、通常の管成形操作が行われることとなるのである。即ち、マンドレル26と共に、ステム24が前進せしめられることにより、押出ダイス28の押出孔29に、マンドレル26が挿通、位置せしめられてなる状態下において、鋳塊ビレット20の材料(メタル)が押し出されることにより、中空の管体乃至は筒体が形成される管成形操作が進行せしめられ、以て、押出方向における先端部が閉塞されてなる形態の、有底円筒形状の押出筒体30が形成されることとなる。
そして、鋳塊ビレット20の押出加工を終了せしめるに際しては、その終了に先立ち、マンドレル26の先端部を押出ダイス28から後退させた状態において、押出加工することにより、押出筒体30の押出方向後端部を閉塞せしめ、そしてその形態において、かかる押出筒体30が形成されるようにすることが、本発明においては、有利に採用されることとなる。即ち、図2の押出工程3に示されるように、マンドレル26の先端部が、押出ダイス28から後退せしめられて、押出ダイス28の押出孔29から引き抜かれた状態において、ステム24が更に前進せしめられて、熱間押出が進行させられることにより、押出ダイス28の押出孔29内は、鋳塊ビレット20の材料(メタル)にて満たされることとなり、これによって、押出筒体30の押出方向後端部が閉塞されるようになる。
その後、押出工程4においては、ステム24の前進が停止された状態下において、マンドレル26が前進せしめられて、押出ダイス28の押出孔29内に突入せしめられることにより、かかる押出孔29内への鋳塊ビレット20材料の供給が停止されているところから、押出筒体30は、その閉塞された後端部において破断せしめられて、熱間押出加工装置から取り出されることとなる。
かくして得られた押出筒体30は、図3に示されるように、押出方向における先端部30aが中実形態とされて、一体的な閉塞構造において構成されている一方、その押出方向における後端部30bにおいても、押し出された鋳塊ビレット材料にて閉塞されてなる形態とされているのであり、そしてそれによって、内部に、外部から完全に仕切られた中空部30cを有する両端閉塞筒体として、得られることとなるのである。
なお、図4には、上記した熱間押出加工における押出工程2(図2参照)にある熱間押出加工装置の更に具体的な構造の概略が明らかにされている。そこにおいて、鋳塊ビレット20が、マンドレル26の挿通下において,ステム24の前進により、押出ダイス28の押出孔29から熱間押出されることにより、先端部が中実形状の押出筒体30の管成形が行われるようになっている。そして、そこでは、管成形された押出筒体30に対して、直列に配された冷却水噴射装置32,34から冷却水がジェット噴射されると共に、冷却水槽36内に導入されることにより、押出直後の高温の押出筒体30が急冷せしめられ得るようになっている。
そして、本発明に従う円筒型スパッタリングターゲット材は、上述の如くして得られた押出筒体30を、そのまま用いて、形成されてなるものであって、そのような押出筒体30に対しては、先ず、後端部(尾部)30bの閉塞部位が切除される一方、先端部(頭部)30aを、そのまま蓋部14として利用すべく、所定の厚さとなるように切断せしめた後、ターゲット材として仕上げるべく、かかる押出筒体30の内径面の切削加工と外径面の切削加工が施され、軸方向の真直度、外径、内径等の寸法が所定の基準値を満足するようにして、図1に示される如きスパッタリングターゲット材10が完成せしめられるのである。
このように、本発明によれば、マンドレルを用いた熱間押出加工によって管成形して得られた、押出方向の先端部が閉塞されてなる、中実形態の有底円筒形状の押出筒体30をそのまま用いて、かかる中実の先端部を切削加工して、蓋部14をターゲット本体部12と一体の一部材として構成せしめるものであるところから、従来の如き、溶接等によるターゲット本体部と蓋部との接合加工を採用する必要がなく、このため、接合部での欠陥リスクや接合時の熱による撓みや歪みを未然に防ぐことが出来ると共に、接合作業が不要となったことにより、そのための労力を大幅に軽減することが出来る等という特徴が発揮され得るのである。
しかも、熱間押出加工された押出筒体30は、冷却水により急冷されることとなるが、押出筒体30は、その先端部が閉塞されていることから、筒内に冷却水が入り込むことのない状態において、水冷されることとなるのであり、更に、そのような冷却水による水蒸気の発生も効果的に阻止され得ることとなるところから、より均一な冷却を行うことが可能となり、以て均一で微細な金属組織を有する、高品質な円筒状ターゲット材10を、有利に製造することが可能となるのである。
また、そのような冷却水の筒内への入り込みから惹起される各種の問題は、押出筒体30が、図3に示される如く、その押出方向の後端部においても閉塞せしめられてなる形態において、押出加工されるようにすることによって、より一層有利に回避され得ることとなるのである。
さらに、ターゲット材としての仕上げ工程においては、押出筒体30の内径面や外径面の切削加工を採用することのみで足り、引抜き抽伸の如き冷間加工や焼鈍の如き熱処理を行う必要がないところから、それらの加工に基づく問題の発生を考慮する必要がなく、しかも、そのような加工が必要ないことにより、製造工程の簡略化、更には労力の大幅な軽減にも大きく寄与し得たのである。
加えて、円筒状のターゲット材の大型化のために、押出筒体30を長尺化しても、円筒体の製造過程において、冷間加工や熱処理を採用する必要がないところから、それによって、撓みや歪みが生じやすくなるという問題も効果的に回避され得ることとなるのであり、これによって、大型のサイズであっても、欠陥リスクのない高品質な円筒状のターゲット材を有利に提供することが可能となったのである。
以上、本発明の代表的な実施形態について詳述してきたが、それは、あくまでも、例示に過ぎないものであって、本発明は、そのような実施形態に係る具体的な記述によって、何等限定的に解釈されるものではないことが、理解されるべきである。
例えば、押出筒体30の押出方向における先端部30aの、閉塞された中実部としての長さは、マンドレル26の前進によって、当該部分に位置する鋳塊ビレット20の材料の切断が惹起されない程度において、適宜に選定されるところであり、また他方の後端部30bが閉塞される場合にあっても、その閉塞長さは、適宜に選定されることとなる。
また、押出筒体30の後端部30bを閉塞構造とすることは、図4に示される如く、熱間押出加工の直後において水冷する方式を採用する場合においては、特に有効となるものであるが、熱間押出加工の方式によっては、そのような押出筒体30の後端部30bが閉塞構造とされない形態も、採用可能である。
さらに、本発明においては、目的とする有底円筒形状の押出筒体30が得られる限りにおいて、マンドレルを用いた熱間押出加工による管成形方式としては、公知の各種の方式を利用することが可能である。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、そして、そのような実施の態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範疇に属するものであることは、言うまでもないところである。
10 スパッタリングターゲット材 12 ターゲット本体部
14 蓋部 15 突部
16 開口フランジ部 18 嵌合取付け部
20 鋳塊ビレット 22 コンテナ
24 ステム 26 マンドレル
28 押出ダイス 29 押出孔
30 押出筒体 30a 先端部
30b 後端部 30c 中空部
32,34 冷却水噴射装置 36 冷却水槽

Claims (5)

  1. 軸回りに回転せしめられる、外周面がスパッタリング面とされた円筒形状のターゲット本体部と、このターゲット本体部の一方の端部を閉塞する蓋部とを備えたスパッタリングターゲット材にして、
    マンドレルを用いた熱間押出加工によって管成形された、少なくとも押出方向における先端部が閉塞されてなる形態の円筒形状の押出筒体から形成され、前記ターゲット本体部と前記蓋部とが一体の一部材として構成されていることを特徴とする円筒型スパッタリングターゲット材。
  2. 前記押出筒体が、銅材質からなるものである請求項1に記載の円筒型スパッタリングターゲット材。
  3. 軸回りに回転せしめられる、外周面がスパッタリング面とされた円筒形状のターゲット本体部と、このターゲット本体部の一方の端部を閉塞する蓋部とを備えたスパッタリングターゲット材を製造する方法にして、
    コンテナ内に収容された加熱状態の中実の鋳塊ビレットに対して、マンドレルを突入せしめて、穴明けを行い、かかるマンドレルの先端部を、該コンテナの押出側端部に配された押出ダイスに到達せしめた後、該鋳塊ビレットの材料にて該マンドレルの先端部が覆われてなる状態下において、該鋳塊ビレットの押出加工を開始して、管成形を行うことにより、少なくとも押出方向における先端部が閉塞されてなる形態の円筒形状の押出筒体を形成せしめ、更にその後、該押出筒体の内径面及び外径面に切削加工を施すことにより、スパッタリングターゲット材として仕上げることを特徴とする円筒型スパッタリングターゲット材の製造方法。
  4. 前記鋳塊ビレットの押出加工の終了に先立ち、前記マンドレルの先端部を前記押出ダイスから後退させた状態において押出加工することにより、前記押出筒体の押出方向における後端部を閉塞せしめ、そしてその形態において、かかる押出筒体が形成される請求項3に記載の円筒型スパッタリングターゲット材の製造方法。
  5. 前記押出筒体が前記押出ダイスから押し出された後、冷却水にて冷却せしめられるようになっている請求項4に記載の円筒型スパッタリングターゲット材の製造方法。
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