JP2018130840A - フィラメントワインディング装置におけるロービングへの樹脂含浸絞り機構 - Google Patents

フィラメントワインディング装置におけるロービングへの樹脂含浸絞り機構 Download PDF

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Abstract

【課題】 ロービングのガラスフィラメントの切断を抑制し得る、フィラメントワインディング装置におけるロービングへの樹脂含浸絞り機構の提供。【解決手段】 樹脂絞り手段57では、樹脂を含浸したロービング2が曲面と平面との間の隙間83を通過する際に、余剰な樹脂を拭うように除去する構成であるから、ロービング2のガラスフィラメントへの損傷、あるいはガラスフィラメントの切断が抑制できる。【選択図】 図9

Description

本発明は、ロービング(繊維束)を、例えば合成樹脂製ライナーの外面に巻装させるフィラメントワインディング装置に用いられ、ロービングに未硬化の樹脂を含浸させた状態で合成樹脂製ライナーの外面に巻装させるようにする樹脂含浸絞り機構に関する。
特許文献1には、この種のフィラメントワインディング装置が記載され、このフィラメントワインディング装置は、繰出される長尺のロービングに、強度を確保するために未硬化の樹脂を含浸させる樹脂含浸機構と、樹脂を含浸させたロービングをライナーの外面に巻装する巻装部とを備える。
樹脂含浸機構は、未硬化の樹脂を貯留するレジンバス、およびレジンバスの出口に配置された樹脂絞り部を備えている。樹脂絞り部は、ロービングが走行しつつ接触するガイドローラ、およびガイドローラに対向して配置された押圧パッドを備えている。
この樹脂含浸機構において、レンジンバス内の樹脂を走行して潜り終えたロービングは、レジンバスの出口においてガイドローラと押圧パッドの間を走行する際に、押圧パッドによりガイドローラに向けて押圧されて絞られ、余剰な樹脂が取り除かれる。
特開平07−205316号公報
一般にロービングは、多数本のガラスフィラメント(単繊維)を集束させてなり、ガラスフィラメントは切断し易い。しかしながら、特許文献1の樹脂含浸機構では、ロービングがガイドローラと押圧パッドの間を走行する際に、押圧パッドにより押圧される構成である。このため、ロービングを構成する一部のガラスフィラメントが切断してしまう場合がある。
そこで本発明は、ロービングのガラスフィラメントの切断を抑制し得る、フィラメントワインディング装置におけるロービングへの樹脂含浸絞り機構の提供を目的とする。
本発明は、複数本の長尺のロービングをライナーの外面に巻装するための巻装部と、前記複数本のロービングを前記巻装部へ向けて走行させる駆動部とを備えたフィラメントワインディング装置において、前記複数本のロービングを前記巻装部に向けて走行させる途中に配置される樹脂含浸絞り機構であって、未硬化の樹脂を貯留するレジンバスと、該レジンバスの出口に配置される樹脂絞り部とを備え、該樹脂絞り部は、前記レジンバス内の樹脂を潜って走行してくる前記ロービングを通過させる隙間を保持して対向するするとともに、前記ロービングに接触可能な一方側の絞り部材および他方側の絞り部材を備え、該両絞り部材は非回転とされるとともに、前記隙間の大きさを調整可能に相対的に接近離間可能とされたことを特徴としている。
上記構成を備えた本発明の樹脂含浸絞り機構によれば、レジンバス内の樹脂を潜って走行してくるロービングが、一方側の絞り部材および他方側の絞り部材の間の隙間を通過することで、ガラスフィラメントが損傷することなく絞られ、ロービングに付着した余剰な樹脂が取り除かれる。しかも、本発明の樹脂含浸絞り機構によれば、一方側の絞り部材および他方側の絞り部材は、隙間の大きさを調整可能に相対的に接近離間可能であるから、隙間の大きさを調整することで、ガラスフィラメントを保護しつつロービングを絞ることが可能である。
本発明の樹脂含浸絞り機構では、前記一方側の絞り部材および他方側の絞り部材における、少なくとも何れかの絞り部材における少なくとも対向部分が、前記ロービングの走行方向に向けて可撓可能な弾性を有した構成を採用できる。
上記構成のように、少なくとも何れかの絞り部材における少なくとも対向部分が、ロービングの走行方向に向けて可撓可能な弾性を有していれば、ロービングの継目が隙間を通過する際に、継目の移動に倣って対向部分が弾性変形する。
本発明のフィラメントワインディング装置は、上記何れかに記載の樹脂含浸絞り機構を備えたことを特徴としている。
本発明のフィラメントワインディング装置におけるロービングへの樹脂含浸絞り機構によれば、ロービングのガラスフィラメントの切断を抑制し得る。
本発明の一実施形態のフィラメントワインディング装置を表す全体平面図である。 同側面図である。 同張力付与機構および樹脂含浸機構(樹脂含浸絞り機構)を表す概略平面図である。 同側面図である。 同個別張力付与部、および統合張力付与部を表す平面図である。 同側面図である。 同張力付与体を表し、(a)は平面図、(b)は側面図である。 同樹脂含浸機構を表す平面図である。 同側面図である。 同図8におけるA−A断面矢視図である。 同図8におけるB−B断面矢視図である。 同図8におけるC−C断面矢視図である。 同トラバースにおける走行方向からの側面図である。 同トラバースにおける左右方向からの正面図である。 同巻装機構の一部を表す正面図である。 同平面図である。 同ロービングの巻装を終了した状態におけるロービングの切断前を表し、(a)は巻装機構の一部の平面図、(b)は側面図である。 同ロービングの切断直前を表し、(a)は巻装機構の把持手段がまだロービングを把持する前の平面図、(b)は側面図である。 同把持手段がロービングを把持した状態を表す側面図である。 同把持手段がロービングを把持して上昇した状態を表し、(a)は側面図、(b)は正面図である。 同切断手段がロービングを切断する際の状態を表し、(a)は側面図、(b)は正面図である。 同切断手段がロービングを切断した際の状態を表す側面図である。 同繰出手段がロービングを挟んだ状態を表す側面図である。 同把持手段が合成樹脂製ライナーの上方へ移動した状態を表す側面図である。 同ロービングの先端部が合成樹脂製ライナーの外面に載せられた状態を表す側面図である。
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、本実施形態におけるフィラメントワインディング装置1は、圧力容器を製造するための装置であり、圧力容器は、液化ガスが充填される合成樹脂製ライナー(以下、単に「ライナー」と称する)Rの外面に、長尺のロービング2を巻装してなる。
本実施形態のフィラメントワインディング装置1で扱われるライナーRは、長手方向を円筒状に形成され、長手方向両側端部にドーム状部分を一体的に形成してなる。ロービング2はライナーRの外面にフープ巻として施された後に、ヘリカル巻として施される。図1において、ライナーRはサイズの異なる2種類を描いている。つまり、このフィラメントワインディング装置1は、異なるサイズのライナーRに適用できる。
フィラメントワインディング装置1の概略構成は、以下のとおりである。すなわち、フィラメントワインディング装置1は、ライナーRに巻装されるロービング2を筒状にまとめた筒状繊維体Cを設置する筒状繊維体設置部3と、筒状繊維体設置部3に設置した筒状繊維体Cから導出されてライナーRに向けて走行するロービング2に張力を付与する張力付与機構4と、ロービング2が走行する途中で、ロービング2に未硬化の樹脂を含浸させる樹脂含浸機構5と、ライナーRの外面にロービング2を巻装する巻装機構6とを備えている。本実施形態では、張力付与機構4、樹脂含浸機構5、および巻装機構6は、3個(3箇所に)設けられている。
本実施形態のフィラメントワインディング装置1では、筒状繊維体Cから導出されたロービング2は、張力付与機構4および複数箇所において走行抵抗を付与されつつ巻装機構6側へ走行され、走行途中において樹脂含浸機構5において未硬化の樹脂を含浸し、また、余剰な樹脂が除去された状態で、巻装機構6によりライナーRに巻装される。なお、ロービング2は、多数本のガラスフィラメント(単繊維)を集束させてなる。
以下の説明においては、ロービング2が筒状繊維体設置部3から巻装機構6へ向かう方向側をロービング2の走行方向あるいは走行方向側と称し、巻装機構6から筒状繊維体設置部3へ向かう方向側を走行方向反対側と称し、走行方向に対して水平面内で直交する方向を左右方向と称する。
〔筒状繊維体設置部〕
図2に示すように、筒状繊維体設置部3は外枠体7と、外枠体7の底部に配置された板状の設置台とを備える。外枠体7は、複数本の設置柱8と、左右方向に離間した設置柱8どうしを、その上端部において連結する設置梁10とを備えている。具体的には、4本の設置柱8が走行方向に左右対で並べられて、左右一対の設置柱8が4組設けられている。各左右一対の設置柱8の上端部どうしが、左右方向に渡した設置梁10により連結されている。すなわち、設置梁10は4本設けられている。
4本の設置梁10のうち、走行方向側(下流側)に配置された3本の設置梁10には、設置台に載置された各筒状繊維体Cから導出される1本ごとのロービング2を、筒状繊維体Cの上方において走行方向へ通過させる通過用リング部材11が取付けられている。なお、本実施形態では、12個の筒状繊維体Cから導出されるロービング2、すなわち12本のロービング2がひとまとめにされて、ライナーRに巻装される。
〔ロービングの張力付与機構〕
図3ないし図7に張力付与機構4、および樹脂含浸機構5の一部を表している。張力付与機構4は、筒状繊維体設置部3に対して走行方向側(筒状繊維体設置部3の下流側)に配置され、樹脂含浸機構5は、張力付与機構4に対して走行方向側に配置されている。張力付与機構4と樹脂含浸機構5とは走行方向で接近して配置されている。
張力付与機構4および樹脂含浸機構5は、共通の支持台12に載置されている。支持台12は、左右方向に離間して配置された複数組の支持柱13と、左右方向に離間して配置された支持柱13どうしをその上端部において左右方向で連結する左右方向支持梁14、走行方向で連結する走行方向支持梁15とを備える。
張力付与機構4は、後述する駆動部の駆動によって走行方向に走行するロービング2に対して、駆動部の駆動力に対する抵抗力(駆動部の駆動力に対するバックテンション)を付与する部分である。個別張力付与部16および統合張力付与部17を備える。個別張力付与部16は、ロービング2ごとに、個別に張力を付与する。統合張力付与部17は、12本のロービング2に統合的に張力を付与する。
個別張力付与部16は、走行方向反対側(上流側)に配置された左右方向支持梁14に、3個並べて設けられている。各個別張力付与部16の構成は同様であるので、1個の個別張力付与部16の構成の説明をもって、他の個別張力付与部16の構成の説明に代える。
図4および図6に示すように、個別張力付与部16は、上側張力付与部20と下側張力付与部21が上下でひと組みとされてなる。上側張力付与部20と下側張力付与部21とは、上側に配置されるか下側に配置されるかの相違であって同様の構成であるから、ここでは上側張力付与部20の構成の説明をもって、下側張力付与部21の構成の説明に代える。
図5に示すように、上側張力付与部20は、6個の張力付与体22により構成される。各張力付与体22の構成は同様であるので、1個の張力付与体22の構成の説明をもって、他の張力付与体22の構成の説明に代える。すなわち、本実施形態における個別張力付与部16は、1個の張力付与体22を最小単位として、36個の張力付与体22により構成される。
図7(a)(b)に示すように、張力付与体22は、左右方向支持梁14に取付部材23を介して取付けられている。張力付与体22は左右方向支持梁14に、走行方向を長手方向として取付けられた付与台部材24と、付与台部材24上に配置され、ロービング2を左右側で挟んだ状態でロービング2が通過可能な左右一対の付与ばね体25,25と、付与ばね体25,25の挟み力を調整可能とする調整ねじ26とを備える。
付与台部材24は、走行方向反対側に、上下方向に沿う後壁板27を備えている。後壁板27には1本のロービング2が通過して走行可能な後走行孔28が形成されている。付与台部材24は、走行方向側部に上下方向に沿う前板壁30を備えている。前板壁30には1本のロービング2が通過して走行可能な前走行孔31が形成されている。後走行孔28と前走行孔31とは走行方向で対向して配置されている。
付与ばね体25,25には、左右方向で対向する板ばねが用いられている。付与ばね体25,25どうしにおいて、走行方向反対側(後側)は当接することなく、左右方向での離間距離を大きく設定されるよう折曲されて、ロービング2の導入部とされている。導入部に対する走行方向側部は弾性的に当接する挟持部32とされている。挟持部32どうしの左右方向での当接面は、後走行孔28と前走行孔31との間に配置されるよう設定されている。調整ねじ26は、これを回転させることにより、上下方向の軸心回りに回動可能な一対のレバー片29,29を回動させて、このレバー片29,29の先端部で前記導入部での付与ばね体25,25どうしの離間幅を調整することで、挟持部32によるロービング2の挟持力を、強弱変更することが可能に構成されている。
個別張力付与部16には、上記のような張力付与体22を、それぞれ左右方向に6個並べて構成される上側張力付与部20、および下側張力付与部21をひと組として、このような上側張力付与部20、および下側張力付与部21が左右方向に3個並べられている。
各張力付与体22において、前記駆動部の駆動力により筒状繊維体設置部3から走行してきた1本のロービング2が、導入部、前走行孔31、挟持部32、後走行孔28を通過するよう走行して、統合張力付与部17へ走行される。上側張力付与部20、および下側張力付与部21においては、各ロービング2は、各張力付与体22の左右方向での離間幅分(この場合、前走行孔31間の距離)だけ離間して走行される。
図5および図6に示すように、統合張力付与部17は、個別張力付与部16に対して走行方向側に配置されている。統合張力付与部17は、個別張力付与部16を走行し終えたロービング2どうしを、走行方向に直交する方向である左右方向に寄せた状態として、各ロービング2に対し一括して(統合的に)張力を付与する部分である。
統合張力付与部17は、左右方向に離間して配置された走行方向支持梁15に渡された統合付与台34と、統合付与台34上に、走行方向反対側に設置された後側案内環群35と、統合付与台34上の走行方向側部に設置された前側案内環群36と、後側案内環群35および前側案内環群36の間に配置された統合付与手段37とを備える。
この統合張力付与部17は、3個の個別張力付与部16ごとに設けられているが、各統合張力付与部17は同様の構成であるから、1個の統合張力付与部17の構成の説明をもって、他の統合張力付与部17の構成の説明に代える。
図6に示すように、後側案内環群35は、上側張力付与部20および下側張力付与部21に対応するよう設けられている。すなわち後側案内環群35は、前後に離間して配置されて、それぞれ6個の後側案内環38を集合させて構成された上側張力付与部用後案内環群40と、下側張力付与部用後案内環群41とから構成される。6個の後側案内環38は同様の構成であり、中心部に1本のロービング2を挿通させ得る径の、後案内孔が形成されている。
上側張力付与部用後案内環群40、下側張力付与部用後案内環群41において、後側案内環38どうしの左右方向での離間幅は、張力付与体22の左右方向での離間幅に比べて小さく設定されている。また、上側張力付与部用後案内環群40、下側張力付与部用後案内環群41の左右方向中心位置と、上側張力付与部20、下側張力付与部の左右方向中心位置とは、走行方向において略一致した位置に設定されている。そして、後側案内環38どうしの左右方向での離間幅を、張力付与体22の左右方向での離間幅に比べて小さく設定することで、個別張力付与部16から走行してくるロービング2が左右方向で近付けられて、後案内孔を挿通するように走行される。
前側案内環群36は、統合付与台34上に、後側案内環群35に対応して設けられている。前側案内環群36は、後側案内環群35に対して走行方向側に配置されており、各後側案内環38と同様の構成の前側案内環43を集合させて構成されている。前側案内環群36は、前後に離間して配置されて、それぞれ6個の前側案内環43を備える。
各ロービング2は、後側案内環38の後案内孔を通過するよう走行し、前側案内環43の前案内孔を通過するよう走行する間に、統合付与手段37によって、張力が付与される。統合付与手段37は、統合付与台34上にあって、統合付与台34の前後方向中心部(前側案内環群36と後側案内環群35との間)に配置されている。
統合付与手段37は、統合付与台34上に軸支持ブロック45を介して回動自在に設けられた左右方向に沿う回動軸体46と、回動軸体46に取付けられた回動枠体47と、軸支持ブロック45に取付けられて回動枠体47の回動を許容、あるいは阻止するための操作レバー49とを備えている。
軸支持ブロック45は、左右方向に離間して一対で配置されている。各軸支持ブロック45は上下方向の一部を切欠かれて、切欠かれた隙間を埋めることが可能に、可撓性を有している。回動軸体46の一端側が各軸支持ブロック45に回動可能に挿通されている。
回動枠体47は、左右方向に沿うよう配置された一対のロービング案内用の一方の丸棒50、他方の丸棒51と、丸棒50,51の、左右端部どうしを連結する、一対の連結枠部材52を備えている。連結枠部材52の長手方向中心部に、回動軸体46の他端側が連結されている。
操作レバー49を操作して、軸支持ブロック45の前記隙間を生じさせた状態において回動軸体46は回動可能であり、回動枠体47を回動軸体46の軸心回りに回動させることで、走行方向に対する回動枠体47の角度(姿勢)を変更可能である。そして、操作レバー49を操作して、軸支持ブロック45の前記隙間を小さくすることで、回動軸体46が軸支持ブロック45の可撓部分により圧接されて回動枠体47の、走行方向に対する姿勢が保持される。
前述のように、各ロービング2は、後側案内環38の後案内孔を通過するよう走行して前側案内環43の前案内孔を通過するよう走行する間に、統合付与手段37によって、張力が付与される。このためには、後側案内環38の後案内孔を通過するよう走行し終えたロービング2が、予め姿勢を調整された回動枠体47の、一方の丸棒50にその下側から巻掛けられ、さらに他方の丸棒51にその上側から巻掛けられて、前側案内環43の前案内孔を通過させるよう設定しておく。そして、回動枠体47の姿勢を調整することで、ロービング2の走行方向の角度が変更されて、ロービング2に付与する張力を調整することができる。
このような統合付与手段37は、1個の個別張力付与部16に対して1個設けられている。すなわち、1個の統合付与手段37を走行するロービング2は12本である。換言すれば、1個の統合付与手段37によって12本のロービング2が左右方向で寄せられた状態で、まとめて張力が付与される。
本実施形態の張力付与機構4によれば、個別張力付与部16により、ロービング2ごとに個別に張力を管理できる。このため、各ロービング2を均一の緊張状態として、走行方向下流側のライナーRの外面にロービング2を巻装させられる。また、個別張力付与部16でロービング2ごとに均一に付与された張力に、統合張力付与部17によって張力を増加させられる。
〔ロービングへの樹脂含浸絞り機構〕
図8ないし図12は、樹脂含浸機構5の詳細を表す。樹脂含浸機構5は支持台12上にあって、張力付与機構4に対して走行方向側に配置されている。樹脂含浸機構5は、未硬化の樹脂53を貯留するレジンバス54と、レジンバス54に対して走行方向反対側に配置されたロービング分離導入手段55と、レジンバス54の入口側に配置された引込案内部材56と、レジンバス54の出口側54Aに配置された樹脂絞り手段57(樹脂絞り機構部)と、レジンバス54において樹脂絞り手段57の走行方向側部に配置されたロービング分離導出手段58とを備える。
レジンバス54は、底壁62と、底壁62の走行方向反対側にあって、上傾斜して形成された入口側壁63と、底壁62の走行方向側端部に配置されて、上傾斜して形成された出口側壁64と、左右両側の側壁65,65とを備える。出口側壁64の傾斜角度は、入口側壁63の傾斜角度に比べて緩やかである。また、入口側壁63には、外部から未硬化の樹脂53をレジンバス54内に供給するための供給管66が接続されている。
ロービング分離導入手段55は、図8および図9に示すように、レジンバス54とは別に設けられており、支持台12上に取付けられて上下方向に沿う13本の分離導入杆部材67と、その走行方向側に配置されて、上下方向に離間して左右方向に沿う一対の導入補助杆部材68とを備える。12本のロービング2は、分離導入杆部材67の間に入ることで分離状態を確保され、導入補助杆部材68の間に入って走行する。
引込案内部材56は、側壁65,65の上面に取付けられた一対の渡し板70Aと、渡し板70Aに渡すよう取付けられて左右方向に沿う軸心回りに回転可能な引込ローラ71とを備えている。引込ローラ71の外周面上端は、上側の導入補助杆部材68に比べて高い位置に配置されている。
浸漬手段60は、図9および図12に示すように、側壁65,65の上面に渡された3個の渡し板70Bと、各渡し板70Bからレジンバス54の樹脂貯留室72へ向けて垂下する一対の垂下部材73と、垂下部材73の下端どうしに渡された、円柱状の浸漬用杆部材74とを備える。各垂下部材73は板状に形成されている。浸漬用杆部材74は、走行方向に並べて3個設けられている。
浸漬手段60における中央の垂下部材73Aには、その上下方向に離間して複数の切欠75が形成されている。これらの切欠75のうちの1個を選択して、選択した切欠75に浸漬用杆部材74を支持させることで、浸漬用杆部材74の設置高さを調整することができる。
ロービング2は、浸漬手段60において、レジンバス54の入口側寄りに配置された浸漬用杆部材74にその下側から巻掛けられ、中央に配置された浸漬用杆部材74にはその上側から巻掛けられ、出口側54A寄りに配置された浸漬用杆部材74にはその下側から巻掛けられて、出口側54Aへ向けて走行するよう設定される。
複数の浸漬用杆部材74に対して巻掛ける方向を異ならせることで、ロービング2の走行方向の角度が変化する。つまり、浸漬手段60を走行中のロービング2の断面形状を変化させられるので、ロービング2に樹脂を含浸させ易い。また、中央に配置された浸漬用杆部材74の設置高さを調整することで、ロービング2に付与される張力を調整でき、ロービング2への樹脂の含浸性を調整できる。なお、浸漬用杆部材74は垂下部材73に固定されていてもよいし、軸心回りに回転可能に構成してもよい。
樹脂絞り手段57は、一方の絞り部材77と、他方の絞り部材80と、一方の絞り部材77に対して他方の絞り部材80を接近離間させ得る接近離間手段82とを備える。
一方の絞り部材77は、各側壁65,65の上面に固定された取付アングル76Aに支持されている。一方の絞り部材77として、左右方向を長手方向とする丸棒が用いられている。一方の絞り部材77は、取付アングル76Aに非回転に支持されている。一方の絞り部材77の長手方向長さは、レジンバス54の樹脂貯留室72の左右幅に比べて短いが、12本のロービング2を左右方向に離間させて並べた状態であっても、巻掛けられる(上側で巻掛けられる)長さに設定されている。一方の絞り部材77は丸棒であるから、一方の絞り部材77における前記外面とは、外周面78である。
他方の絞り部材80は、取付アングル76Aに対しその走行方向反対側に近接した位置に配置された取付アングル76Bに、接近離間手段82を介して取付けられている。他方の絞り部材80は、一方の絞り部材77に対して走行方向反対側から、一方の絞り部材77の外周面78に対して接近離間可能とされている。
他方の絞り部材80は、左右方向を長手方向とする板状に形成されている。他方の絞り部材80の長手方向は、一方の絞り部材77の軸心に沿って配置されている。他方の絞り部材80の長手方向の長さは、一方の絞り部材77の長さと略等しく設定されている。他方の絞り部材80は、接近離間手段82によって、一方の絞り部材77の外周面78に対してその法線方向に沿って、且つ水平方向に対して傾斜して接近離間可能に設けられている。
一方の絞り部材77および他方の絞り部材80は、ともに金属製である。一方の絞り部材77および他方の絞り部材80のうち、少なくとも互いに対向する面は、低摩擦とされている。この場合、対向する面とは、一方の絞り部材77においてはその外周面78であり、他方の絞り部材80においては、板の厚み方向の端面81である。
接近離間手段82は、一方の絞り部材77の外周面78に対する他方の絞り部材80の端面81の離間距離である隙間83の大きさを設定する手段であり、この隙間83をロービング2が通過する。
接近離間手段82は、取付アングル76Bにボルトを介して取付けられている。接近離間手段82は、他方の絞り部材80をその傾斜方向に直交する上側と下側とでスライド可能に挟む一対の挟持板84,85と、下側の挟持板84の板面に挿通して、且つ他方の絞り部材80に貫通固定された調整ねじ86とを備える。下側の挟持板84は取付アングル76Bに渡して固定され、上側の挟持板85は下側の挟持板84に、他方の絞り部材80を配置する隙間を介して取付アングル76Bに固定されている。下側の挟持板84には、前記法線方向を長手方向として調整ねじ86を挿通する長孔87が形成されている。
接近離間手段82を用いて他方の絞り部材80の端面81を、一方の絞り部材77の外周面78に接近離間させるには、すなわちロービング2を通す隙間83の大きさを設定するには、調整ねじ86を緩める。そうすると、調整ねじ86は長孔87に沿って前記法線方向に移動可能となり、調整ねじ86が固定されている他方の絞り部材80が、調整ねじ86の移動に伴って前記法線方向に移動して、端面81を外周面78に接近離間させられる。これによって外周面78に対する端面81の離間距離である隙間83の大きさを設定できる。隙間83の大きさが設定されたら、調整ねじ86を締付けて、他方の絞り部材80を下側の挟持板84に固定する。
他方の絞り部材80の端面81は、一方の絞り部材77の外周面78の接線方向に平行な平面である。すなわち、樹脂を含浸したロービング2は、曲面と平面との間の隙間83を通過する際に絞られて、余剰な樹脂が除去される。なお、端面81における角部は、円弧状に形成されている。また、一方の絞り部材77では、ロービング2が接触する面は外周面78であって曲面である。これによって、ロービング2のガラスフィラメントへの損傷、あるいはガラスフィラメントの切断が抑制できる。しかも、他方の絞り部材80はロービング2を一方の絞り部材77に対して押し付ける部材ではなく、ロービング2が走行する隙間83を形成する部材である。
換言すると、樹脂絞り手段57は、樹脂を含浸したロービング2を、隙間83を挿通させることで、ロービング2の表面に付着した樹脂を、外周面78と端面81とで拭う。このため樹脂絞り手段は、余剰の樹脂を拭うための樹脂拭い手段と称することもできる。樹脂絞り手段57は、余剰の樹脂を拭うのみである。このことからも、ロービング2のガラスフィラメントへの損傷、あるいはガラスフィラメントの切断が抑制できる。
なお、ロービング2は、水平方向に対して走行方向側を上とするよう傾斜してレジンバス54から出るように走行する。そして、樹脂絞り手段57は、レジンバス54の出口側54Aに配置され、樹脂絞り手段57により絞られた(余剰の樹脂が拭われた)ロービング2の走行方向は、水平方向へ変えられて、巻装機構6側へ走行する。
ロービング分離導出手段58は、レジンバス54の出口側54Aにおいて、樹脂絞り手段57に対して走行方向側に配置されている。ロービング分離導出手段58は、図9および図10に示すように、上下方向に沿う13本の分離導出杆部材88と、その走行方向両側に上下方向に離間して左右方向に沿う一対の導出補助杆部材90とを備える。12本のロービング2は、レジンバス54側から樹脂絞り手段57を介して導出補助杆部材90の間に導出され、分離導出杆部材88の間に入ることで分離状態を確保されて、巻装機構6へ向けて走行する。そして本実施形態では、上記で説明した樹脂含浸機構5が、左右方向に3個並べられている。
上記のように、筒状繊維体Cから導出されたロービング2は、張力付与機構4において走行抵抗を付与されつつ巻装機構6側へ走行され、走行途中において樹脂含浸機構5において未硬化の樹脂を含浸し、また、樹脂絞り手段57により余剰な樹脂が除去される。このように、ロービング2は、張力付与機構4において走行抵抗を付与されるだけでなく、例えばロービング2がそれ以外の部材と接触する樹脂含浸機構5において、浸漬手段60により走行方向を変更されたり、レジンバス54の出口側において樹脂絞り手段57によって走行方向を変更されたりすることで、樹脂含浸機構5が走行抵抗部となって走行抵抗が付与された状態で、駆動部の駆動により巻装機構6に向けて走行する。
〔巻装機構(ライナーへのロービング設置機構)〕
巻装機構6は、長手方向を左右方向に沿って配置されて長手方向の軸心回りに回転するライナーRの外面に、樹脂が含浸された12本のロービング2をまとめた状態で巻装するよう構成されている。巻装機構6は、樹脂含浸機構5に対し走行方向側に配置されたトラバース91に支持されている。
図13および図14に示すように、トラバース91は、左右方向、走行方向に離間して配置された複数本の固定支持柱92と、固定支持柱92の上端部どうしを左右方向で連結する左右方向固定梁93、走行方向で連結する走行方向固定梁94とを、少なくとも備える。その他、巻装機構6の支持のために必要な骨組(例えば鉄骨構造)を備えている。
トラバース91において、走行方向側(下流側)部には、ライナーRを、その長手方向を左右方向にして軸心回りに回転自在に支持するライナー支持手段95が配置されている。ライナー支持手段95は、基台部(符合省略)に、左右方向に離間して配置された一対のライナー支持柱96,97と、ライナー支持柱96,97の上下方向途中部分に配置されて、ライナーRの軸方向両側端部に着脱自在に取付けられるスピンドル98(図1参照)を把持する把持部100と、把持部100を回転駆動させる前記駆動部101とを備える。
把持部100は、ライナー支持柱96,97の上下方向に離間して3箇所に配置されている。把持部100を回転駆動させる駆動部101として、駆動モータが用いられ、1個の駆動部101により3個の把持部100を連動して回転させるよう構成されている(図2参照)。
ライナー支持柱96,97のうちの一方のライナー支持柱96は基台部に固定され、ライナー支持柱96,97のうちの他方のライナー支持柱97は、トラバース91における走行方向側部に配置した左右方向固定梁93に垂下されて、左右方向固定梁93の下面に設けられた下レール102を介して左右方向に移動可能に構成されている。すなわち、他方のライナー支持柱97が一方のライナー支持柱96に接近することで、把持部100が、ライナーRの軸方向両側端部に取付けたスピンドル98を把持するよう構成されている。そして、駆動部101が駆動することで、ライナーRが左右方向に沿う軸心回りに回転し、駆動部101が駆動を停止することで、ライナーRの回転が停止する。
ライナーRにロービング2が巻装される前に、ライナーRは所定の場所からスピンドル98を把持して移動手段(図示せず)によりライナー支持柱96,97に向けて移動させられて、スピンドル98が把持部100に把持されるよう、ライナー支持手段95にセッティングされる。ロービング2を巻装し終えたライナーRは、再び移動手段により次工程の場所に移動させられる。
図15および図16に示すように、巻装機構6は、ライナーRの外面へのロービング2の巻装開始時に、ロービング2の先端部2Aを把持して、先端部2AをライナーRの外面に載せる把持載置手段103と、ライナーRの外面へのロービング2の巻装が終了する際に、ロービング2の巻装終了側端部2Bを切断する切断手段135とを備える。把持載置手段103、および切断手段135は、共通の取付板107に支持され、取付板107は移動支持体106に取付けられている。
ここで、図16に示すように、移動支持体106(取付板107)は、既に所定の場所でスピンドル98を介して把持部100に支持されたライナーRに対しては、走行方向反対側に離間して配置されている。また移動支持体106は、ライナーRの長手方向に沿って移動可能に構成されている。移動支持体106は、左右方向に伸縮可能な移動用シリンダ装置136と、左右方向に長尺なガイド軸137に取付けられて、ライナーRに対向する位置と、ライナーRから側方に退避した位置とに切替え自在とされている。取付板107は移動支持体106に取付けられているから、取付板107は移動支持体106とともに移動する部材である。
取付板107は移動支持体106に、上下方向(垂直方向)に対して傾斜して支持されている。その傾斜方向は、図18ないし図25に示すように、ライナーRの外面に対し、その接線方向に略平行な方向である。この場合の接線方向とは、取付板107の下方側が走行方向寄り(ライナーR側)となる傾斜方向である。移動支持体106の移動に伴い、取付板107に支持されている把持載置手段103および切断手段135は、ライナーRに対向する位置と、ライナーRから側方に退避した位置とに切替え移動される。
把持載置手段103は、把持手段104と繰出手段105と押圧手段132とを備える。このうち、把持手段104と押圧手段132とは組品とされ、共通の移動板107Aに取付けられている。この移動板107Aは後述する移動シリンダ装置112の先端に取付けられ、取付板107と同じ角度で傾斜して、取付板107に移動シリンダ装置112を介して支持されている。
把持手段104は、ロービング2の巻装開始時に、ロービング2の先端部2Aを左右方向から把持する。図15に示すように、把持手段104は、左右方向で一対の把持部材108,109を備えている。一方の把持部材108は他方の把持部材109に対して、左右方向に接近離間可能に構成されている。一方の把持部材108を他方の把持部材109に対して、左右方向に接近離間可能とするために接近離間用シリンダ装置110が用いられている。また把持手段104は、把持部材108,109をロービング2に対して接近離間させる把持シリンダ装置112Aを備えている。
把持手段104を、前記接線方向に対して略直交する方向(ライナーRの上方)へ向けて移動させる移動シリンダ装置112が、取付板107に取付けられている。把持手段104は、移動シリンダ装置112の先端部に取付けられている。移動シリンダ装置112が伸縮することで、把持手段104は前記接線方向に対して略直交する方向に移動される。
繰出手段105は、ロービング2の巻装開始時に、ライナーRの回転に追従するようロービング2をライナーRの外面に対して繰出す。図15に示すように繰出手段105は、取付板107に取付けられて取付板107の傾斜と同方向に傾斜され、把持手段104に対して走行方向反対側に近接して配置されている。繰出手段105は、上下一対の繰出ローラ113,114を備える。繰出ローラ113,114の間の側方(走行方向下流側へ向けて左側)は開放されている。
下側の繰出ローラ113は、駆動モータ115の駆動により、左右方向に沿う軸心回りに回転駆動する。上側の繰出ローラ114は、下側の繰出ローラ113に対して傾斜方向に沿って接近離間可能とされている。上側の繰出ローラ114を下側の繰出ローラ113に対して接近離間可能とするために繰出用シリンダ装置116が用いられている。
押圧手段132は、把持載置手段103によってライナーRの外面に載置されたロービング2の先端部2Aを、ライナーRの外面に対して押える。図16に示すように、押圧手段132は、ロービング2の先端部2Aを、ライナーRの外面に対して押えるアーム部材である。押圧手段132は、把持手段104と同じ移動板107Aに取付けられている。押圧手段132の基端部132aが移動板107Aに回動自在に支持されている。押圧手段132の先端部には、ライナーRの軸心方向と同じ左右方向に沿う軸心回りに回転自在な押圧ローラ133が取付けられている。押圧手段132を左右方向の軸心回りに回動させるための押圧モータ132Aが、移動板107Aに取付けられている。
切断手段135は、ライナーRの外面へのロービング2の巻装が終了する際に、ロービング2の巻装終了側端部2Bを切断する。図15に示すように、切断手段135には、圧縮エアにより駆動するハサミが用いられている。切断手段135は、取付板107に取付けられ、しかも取付板107に対して左右方向に移動自在とされている。切断手段135は、刃部をロービング2側にして取付板107に、左右方向に沿うよう取付けられている。上記のような把持載置手段103および切断手段135は、ライナーRごとに対応するよう、移動支持体106に上下方向に離間して3箇所に設けられている。
巻装機構6は、前記走行抵抗部における走行方向最後位置にあって、ロービング2がライナーRの外面の所定位置に走行されるよう案内する案内手段117を、さらに備える。この案内手段117は、デリバリアイとも称される。
案内手段117の説明のために、トラバース91の構成に戻ると、図13、図14に示すように、走行方向に離間した一対の左右方向固定梁93には、上レール118を介して左右方向に往復移動可能とされた吊持体120が取付けられている。吊持体120は、走行方向(水平方向)に沿うガイド軸121を備える。吊持体120には、ガイド軸121の長手方向に沿って往復移動自在で、上下方向を長手方向とする垂下体122が吊持されている。
垂下体122には、案内手段117を、走行方向に沿う水平方向の軸心回り往復回動させる往復回動手段123が設けられている。往復回動手段123は、垂下体122に取付部材124を介して取付けられる回動環部材125と、回動環部材125を水平方向の軸心回りに回動させる回動用駆動モータとを備える。
回動環部材125の中心部には、樹脂含浸機構5を走行し終えたロービング2を挿通して走行させ得る円形挿通孔126が形成されている(図13参照)。回動環部材125は、環状の回動板127を備えた環状の部材である。案内手段117は、回動環部材125においてライナーR側に設けられた回動板127に、水平方向に延長された延長杆128を介してその先端に、垂直平面内に沿うよう取付けられている。
案内手段117は、回動環部材125の円形挿通孔126に対応する位置に案内孔130を備える。案内孔130の周壁面のうち上部は、径方向外方へ向けて凸となるよう湾曲した湾曲面131である。回動環部材125の円形挿通孔126を、分離された状態で走行し終えた12本のロービング2は、ライナーR側へ向けて走行する際に、湾曲面131により、左右方向で隣接するように集約されて、含浸された樹脂により帯状に接着された状態となる。
フィラメントワインディング装置1は、繰出手段105に対するロービング2の走行方向反対側に、ロービング2の先端部2Aの繰出し前に、ロービング2の走行方向を変更させてロービング2の途中部分に弛みを形成する弛み形成手段138を備える(図1および図2参照)。
弛み形成手段138は、張力付与機構4および樹脂含浸機構5に共通とした支持台12に対し、その走行方向側端部に配置されている。弛み形成手段138は、上下方向に伸縮する複数本の押えシリンダ140と、押えシリンダ140の下端に、左右方向に渡された押え杆141とを備える。押え杆141の左右方向の幅は、3個のレジンバス54から導出されるロービング2を全て押えることができるよう設定されている。
ここで、巻装機構6の動作について、樹脂含浸機構5により樹脂が含浸され、その後に余剰な樹脂を取除かれたロービング2が、回動環部材125の円形挿通孔126から案内手段117の案内孔130を走行し終えて、巻装機構6によって、ライナーRの外面への巻装が開始される状態を説明する。なお以下の説明では、便宜上すでに一つ前のライナーRに、その外面にロービング2を巻装し終えた時点から説明する。
図17(a)、図18(a),(b)を参照して、ライナーRにロービング2がフープ巻、ヘリカル巻として巻装し終えた時点では、駆動部101の駆動が停止して、ライナーRの軸方向両側端部に装着されたスピンドル98を把持した108,109の回転が停止される。そして、巻装動作がなされている際にライナーRの対向位置から退避位置に移動していた把持載置手段103、押圧手段132、および切断手段135は、移動用シリンダ装置136の駆動による移動支持体106の移動に伴い、ライナーRに対向する対向位置に移動する。この場合、移動支持体106は、ロービング2が繰出ローラ113,114の間に入るまで移動する。繰出ローラ113,114の側方は開放されているから、ロービング2は繰出ローラ113,114の間に入ることができる。ロービング2においては、ライナーRに対する走行方向反対側のロービング2の途中部分が張力付与機構4、案内手段117等の走行抵抗部から走行抵抗を受けて、緩く張られている。
次に、図19を参照して、把持シリンダ装置112Aが駆動し、把持部材108,109がライナーRの接線方向と平行に斜め下方に移動し、ライナーRに対し、ライナーRの外面から走行方向反対側に導出されているロービング2に至ると、接近離間用シリンダ装置110が駆動して、一方の把持部材108が他方の把持部材109に対して接近し、ロービング2を左右方向から把持する。
ここで、図20(a)に示すように、把持部材108,109がロービング2を把持した状態で、把持シリンダ装置112Aのロッドが斜め上方に後退する。そうすると、ロービング2が、繰出手段105の繰出ローラ113,114のうちの上側の繰出ローラ114の外周面に当接される。この状態になるのを切断手段135が待機して(図20(b)参照)、その後、切断手段135は、ロービング2に向けて水平方向に移動し(図21(b)参照)、ロービング2の巻装終了側端部2Bを、把持手段104に対して走行方向下流側の位置で切断する(図22参照)。このようにすることで、ライナーRの外面に樹脂を含浸したロービング2が巻装されてなる圧力容器が製造される。切断手段135によりロービング2の巻装終了側端部2Bが切断されても、把持手段104ではロービング2の把持を解除しない。
ロービング2を巻装し終えたライナーRは、不図示の移動手段により、未硬化の樹脂を硬化させる次工程が行われる場所に移動させられる。そして、図23に示すように、ロービング2が巻装されていない新たなライナーRが、所定の場所からスピンドル98を把持されて移動手段によりライナー支持柱96,97に向けて移動させられ、スピンドル98が把持部材108,109に把持されるようライナー支持手段95にセッティングされて(図23参照)、ライナーRの外面にロービング2を巻装し始める準備がされる。既にロービング2を巻装したライナーRが次工程の場所に移動させられても、ロービング2は把持手段104により把持されている。そして把持手段104によって把持されているロービング2の一部分を先端部2Aとして、この先端部2Aが、把持載置手段103によって新たなライナーRの外面に載せられる。
ロービング2の巻装開始時には、把持手段104によりロービング2の先端部2Aが把持されており、先端部2AがライナーRの外面に載せられ、先端部2AをライナーRの外面に載せたロービング2は、回転するライナーRに追従するように繰出手段105により、ライナーRの外面に向けて繰出される。
具体的に説明すると、図24を参照して、ロービング2の巻装開始時には、切断手段135は、ライナーRの軸心に沿う方向に後退しており、ロービング2の先端部2Aが把持手段104により把持された状態で、繰出用シリンダ装置116が伸長することで、ロービング2を当接させた上側の繰出ローラ114が、下側の繰出ローラ113に接近して、ロービング2の先端部2Aを挟持する。
ロービング2の巻装開始時には、駆動部101が駆動して、ライナーRは左右方向に沿う軸心回りに、図24の矢印の方向(反時計方向)に回転する。そして、移動シリンダ装置112が伸長して、移動板107Aとともに、移動板107Aに支持されている把持手段104、押圧手段132、および切断手段135が、水平方向に対して傾斜した方向である、ライナーRの上方向けて移動する。この移動する速度、すなわち移動シリンダ装置112の伸長速度は、ライナーRの回転速度に対応している。
移動シリンダ装置112が伸長を開始すると同時に、駆動モータ115が駆動することで、上側の繰出ローラ114と下側の繰出ローラ113とで挟まれているロービング2が、ライナーRの外面へ向けて繰出される。駆動モータ115の駆動によるロービング2の繰出し速度は、移動板107Aの移動速度に対応している。したがって、繰出手段105に対する走行方向側では、ロービング2の先端部2Aは緊張した状態を確保されている。
ところで、ロービング2の先端部2Aを繰出すと、ロービング2はライナーRの外面へ向けて繰出された分だけ走行する。いっぽう、ロービング2は走行方向反対側において、張力付与機構4、樹脂含浸機構5等の複数箇所の走行抵抗部において走行抵抗を受け、走行方向において最終的に走行抵抗を受ける部分は案内手段117である。しかしながら、ロービング2の先端部2Aでは、これらの走行抵抗部による走行抵抗を受け終え、弛んでいる。このため、繰出手段105の繰出し力に対して走行抵抗が働かず、繰出手段105の繰出力により、ロービング2を円滑に繰出して走行させることができる。
また、弛み形成手段138においては、押えシリンダ140を伸長して押え杆141を下方に移動させることで、ロービング2の走行方向途中部分を下方に移動させ、押えシリンダ140を縮める。これによってロービング2の走行方向途中部分にロービング2の弛み部分を積極的に形成しておく。このようにすることで、繰出手段105によってロービング2は、弛みを解消するようにして繰出されるから、その分だけ走行抵抗を減らして、ロービング2を繰出すことができる。
図25に示すように、ロービング2の巻装開始時には、移動シリンダ装置112が最も伸長した位置において、把持手段104の接近離間用シリンダ装置110のロッドが後退し、一方の把持部材108が他方の把持部材109から離れて、ロービング2の先端部2Aの把持を解除する。そうすると、すでに樹脂を含浸した先端部2Aが繰出手段105を中心として回動するように、ライナーRの外面に落下して重ねられる。この際、ライナーRは回転していて、繰出手段105においてはライナーRの回転速度に対応した繰出し速度でもって、ロービング2が繰出されている。
ライナーRの外面にロービング2が巻装し始められると、押圧モータ132Aが駆動し、押圧手段132がその基端部132a回りに回動して、押圧ローラ133がライナーRの外面に落下したロービング2を、ライナーRに対して押える。そして、ロービング2には樹脂が含浸されているので、その接着力がロービング2とライナーRの外面に働くことから、押圧ローラ133でロービング2を押える時間はわずかでよく、ライナーRの回転によりライナーRの外面にロービング2が順次巻装されたら、押圧ローラ133の押圧、および繰出手段105でのロービング2の繰出しが解除される。すなわち、押圧モータ132Aが駆動し、押圧手段132がその基端部132a回りに回動してロービング2から離れて押圧ローラ133の押圧が解除され、繰出用シリンダ装置116が縮み、上側の繰出ローラ114が下側の繰出ローラ113から離れて、繰出手段105でのロービング2の繰出しが解除される。
その後は、駆動部101の駆動力により、走行抵抗部での抵抗に抗してロービング2が走行を継続され、ライナーRの外面に巻装される。ロービング2がライナーRの外面に巻装されはじめると、図17を用いて説明したように、移動支持体106の移動に伴い、取付板107に支持されている把持載置手段103および切断手段135は、ライナーRから側方に退避させられる。
本実施形態において、ロービング2のフープ巻、およびヘリカル巻は、案内手段117を支持した垂下体122が、上レール118によって左右方向に往復移動され、駆動部101の駆動力により回転するライナーRの外面に、ロービング2が案内手段117の案内孔130を走行して供給され続けることで行われる。
フープ巻の巻装においては、案内手段117は案内孔130の湾曲面131を上とする姿勢で行われ、12本のロービング2が湾曲面131に倣うようひとまとめにされた帯状になって、ライナーRに巻装される。
ヘリカル巻の巻装においては、案内手段117が回動して、ロービング2がライナーRの外面のうちのドーム状部分の所定位置に走行されるよう案内される。すなわち、案内手段117がライナーRの端部であるドーム状部分に走行方向で対向した際、往復回動手段123の回動用駆動モータが駆動することで回動環部材125が回動し、回動環部材125に取付けられている案内手段117が走行方向に沿う水平軸回りに回動することで、所定位置に走行される。なお、ヘリカル巻の巻装において、案内手段117がライナーRのドーム状部分に走行方向で対向した際、垂下体122は、ガイド軸121に案内されて走行方向下流側へ変位して、案内手段117が回動する。
フープ巻、ヘリカル巻の順でライナーRにロービング2が巻装されると、駆動部101の駆動が停止して、ライナーRの軸方向両側端部に装着されたスピンドル98を把持した108,109の回転が停止され、ライナーRから側方に退避した位置にあった、把持載置手段103および切断手段135は、ライナーRに対向する位置に移動し、切断手段135によりロービング2が切断され、ロービング2が巻装されたライナーRは、移動手段により次工程の場所に移動させられる。
以上のように、本発明の実施形態におけるフィラメントワインディング装置1では、ロービング2の巻装開始時には、把持載置手段103によりロービング2の先端部2Aが把持されて、先端部2AがライナーRの外面に載せられ、先端部2AがライナーRの外面に載せられたロービング2は、回転するライナーRに追従するように繰出手段105により繰出されてライナーRの外面に巻装される。このような動作により、必要な部分にのみロービング2を巻装させられるから無駄がない。また、無駄なロービング2の発生が抑えられることから、ロービング2の巻装に伴う作業が楽になる。
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の範囲内で変更が可能である。例えば、上記実施形態ではライナーRとして合成樹脂製の場合を例示したが、金属製のライナーにロービング2を巻装するようにしてもよい。
上記実施形態では、一方の絞り部材77および他方の絞り部材80をともに金属製とした場合を例示した。しかしながら、一方の絞り部材77および他方の絞り部材80のうち、少なくとも一方の絞り部材の対向する部分を弾性材料とすることも可能である。このようにすることで、ロービング2とロービング2との結び目が隙間を通過する際に、弾性材料が撓んで、無理な通過を回避することができる。
上記実施形態では、弛み形成手段138はロービング2を下方に押下げることで、ロービング2の走行方向途中に弛みを形成する場合を例示した。しかしながら、ロービング2の走行方向途中に弛みを形成することができれば、例えば横方向へ弛ませてもよい。
1…フィラメントワインディング装置、2…ロービング、2A…先端部、2B…巻装終了側端部、4…張力付与機構、5…樹脂含浸機構、6…巻装機構、16…個別張力付与部、17…統合張力付与部、22…張力付与体、25,25…付与ばね体、37…統合付与手段、53…樹脂、54…レジンバス、54A…出口側、57…樹脂絞り手段、60…浸漬手段、77…一方の絞り部材、80…他方の絞り部材、82…接近離間手段、83…隙間、87…長孔、100…把持部、101…駆動部、103…把持載置手段、104…把持手段、105…繰出手段、108,109…把持部材、113,114…繰出ローラ、117…案内手段、130…案内孔、131…湾曲面、132…押圧手段、135…切断手段、C…筒状繊維体、R…合成樹脂製ライナー

Claims (3)

  1. 複数本の長尺のロービングをライナーの外面に巻装するための巻装部と、前記複数本のロービングを前記巻装部へ向けて走行させる駆動部とを備えたフィラメントワインディング装置において、
    前記複数本のロービングを前記巻装部に向けて走行させる途中に配置されるロービングへの樹脂含浸絞り機構であって、
    未硬化の樹脂を貯留するレジンバスと、該レジンバスの出口に配置される樹脂絞り部とを備え、
    該樹脂絞り部は、前記レジンバス内の樹脂を潜って走行してくる前記ロービングを通過させる隙間を保持して対向するするとともに、前記ロービングに接触可能な一方側の絞り部材および他方側の絞り部材を備え、該両絞り部材は非回転とされるとともに、前記隙間の大きさを調整可能に相対的に接近離間可能とされたことを特徴とするフィラメントワインディング装置におけるロービングへの樹脂含浸絞り機構。
  2. 前記一方側の絞り部材および他方側の絞り部材における、少なくとも何れかの絞り部材における少なくとも対向部分が、前記ロービングの走行方向に向けて可撓可能な弾性を有している請求項1に記載のフィラメントワインディング装置におけるロービングへの樹脂含浸絞り機構。
  3. 請求項1または請求項2に記載のロービングへの樹脂含浸絞り機構を備えたことを特徴とするフィラメントワインディング装置。
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