以下に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づき説明する。なお、本明細書において、「前」とはクローラ式走行装置の前進方向を、「後」とは後進方向を、「左右」とはそれぞれ前進方向に向かって「左右」を、「上下」とはそれぞれクローラ式走行装置の「上下」を意味するものとする。
図1及び図2に示すように、一実施形態のクローラ式走行装置1は、駆動輪2と、従動輪3と、駆動輪2と従動輪3の間に複数の転輪4と、無端帯状のクローラ5と、クローラフレーム6と、駆動輪2を駆動させるクローラ駆動装置7と、複数のバッテリ8などを備える。クローラ5は、駆動輪2、従動輪3及び転輪4に掛け回されている。
クローラフレーム6は、クローラ5の長さ方向に延設される左右一対の下フレーム6aと、各下フレーム6aに前後に間隔をもって立設された複数の縦フレーム6bと、縦フレーム6bの上端に連結される左右一対の上フレーム6cを備える。上フレーム6cはクローラ5の長さ方向に延設される。フレーム6a,6cの前端に左右一対の平面視略L字形の駆動装置支持フレーム6dを介して駆動輪2及びクローラ駆動装置7が支持されている。左右の下フレーム6aの後部に、左右一対のテンション調節装置9が取り付けられるとともに、テンション調節装置9の後端部に従動輪3が回転自在に軸支される。また、転輪4は、左右の下フレーム6aの間に前後に間隔をもって配置される複数の横フレーム6eのぞれぞれに支持される複数の転輪支持部材10に回転自在に軸支される。バッテリ8は、左右の下フレーム6aの両中央部の間に横架されるバッテリ配置台11の上に配置されている。クローラフレーム6、クローラ駆動装置7、バッテリ8、テンション調節装置9、転輪支持部材10及びバッテリ配置台11は、クローラ5のループ内かつ幅内に配置される。
図2及び図3に示すように、クローラ駆動装置7は、駆動輪2を電動モータ12で複合減速機13を介して駆動する一方で、駆動輪2を制動するブレーキ装置14を備える。電動モータ12は左側の駆動装置支持フレーム6dに支持され、複合減速機13及びブレーキ装置14は右側の駆動装置支持フレーム6dに支持される。電動モータ12のモータ軸12aは、筒状の減速機出力軸13aの内部を通って複合減速機13の減速機入力軸13b(図4参照)に連結される。減速機入力軸13bには、ブレーキ軸14aを介してブレーキ装置14も連結される。減速機出力軸13aの外周に駆動輪2が連結される。ブレーキ装置14は、無励磁作動形の電磁ブレーキで構成され、例えば特開2013−18386号公報に開示されている。また、電動モータ12は、電磁力により回転力を生み出すものであり、例えば特開2016−191448号公報に開示されている。電動モータ12及びブレーキ装置14は、バッテリ8からの電力供給により作動する。
図4に示すように、複合減速機13は、トラクションドライブ減速機15とサイクロイド減速機16を組み合わせた減速機で構成される。複合減速機13では、サイクロイド減速機16の出力側にトラクションドライブ減速機15の入力側が直列連結されている。
サイクロイド減速機16は、入力軸に連結された偏心体により、外歯歯車を偏心揺動回転させ、外歯歯車に形成された複数の貫通孔にキャリアピンをそれぞれ挿通し、キャリアピンの両端を円板状の一対のキャリアにそれぞれ固定し、一方のキャリアに出力軸を連結したもので、入力軸からの入力された回転速度を大きく減速させて、出力軸から出力させることができるものである。このようなサイクロイド減速機16は例えば特開2016−191448号公報に開示されている。また、トラクションドライブ減速機15は、転がり軸受を転用したマイクロトラクションドライブ減速機であり、例えば特開2016−161056号公報に開示されている。なお、本発明のクローラ駆動装置において、電動モータ、ブレーキ装置、トラクションドライブ減速機及びサイクロイド減速機は上記特許文に開示されたものに限定されない。
複合減速機13において、サイクロイド減速機16は、互いに平行に配置される円板状の第1キャリア17と第2キャリア18を備えている。第2キャリア18には、第1キャリア17とは反対側に向けて出力軸19が突設されている。第1キャリア17と第2キャリア18とは、円筒状に形成された複数のキャリアピン20により連結される。第1キャリア17と第2キャリア18の間には、円筒状の偏心体からなる減速機入力軸13bが配置される。減速機入力軸13bの外周には第1偏心部21と第2偏心部22が形成されている。各偏心部21,22は、円板状に形成されており、第1偏心部21の軸心及び第2偏心部22の軸心は、ともにサイクロイド減速機16の軸線から偏心するとともに、サイクロイド減速機16の軸線を中心として180度ずれた位置に配置される。
第1偏心部21の外周面には、第1ニードル軸受23を介して、第1外歯歯車24が連結されている。第2偏心部22の外周面には、第2ニードル軸受25を介して、第2外歯歯車26が連結されている。これによって、外歯歯車24,26が、偏心部21,22の周囲を回転自在となっている。偏心部21,22の軸心は、サイクロイド減速機16の軸線から偏心しているため、偏心部21,22が回転すると、外歯歯車24,26は偏心揺動回転する。また、外歯歯車24,26には、キャリアピン20が挿通されるキャリアピン用貫通孔27,28が形成されている。キャリアピン用貫通孔27,28は、キャリアピン20の外周面に回転自在に配置されたローラ29よりも大きい。ローラ29の外周面が、キャリアピン用貫通孔27,28の内周面に接触し、内周面からの押圧力がローラ29を介してキャリアピン20に伝達される。
また、外歯歯車24,26の外周に設けられた外歯は、トロコイド歯形を有し、外歯歯車24,26の外周側に設けられた複数の内歯ピンからなる内歯歯車30に噛み合う。なお、第1外歯歯車24及び第2外歯歯車26の歯数は同じであるが、内歯歯車30の歯数よりも少なくなっている。本実施形態においては、一例として、両外歯歯車24,26の歯数が29であり、内歯歯車30の歯数が30となっている。
減速機入力軸13bが回転すると、第1外歯歯車24は第1偏心部21の周囲で偏心揺動回転を行う。この結果、第1外歯歯車24と内歯歯車30との噛合位置が、順次ずれてゆく現象が発生する。そして、第1外歯歯車24は、内歯歯車30との歯数差分だけ、固定された内歯歯車30に対して相対回転する。すなわち、第1外歯歯車24が自転する。同様に第2外歯歯車26も偏心揺動回転し、内歯歯車30に対して相対的に自転する。こうして、両外歯歯車24,26の自転成分が、キャリアピン20を介して両キャリア17,18に伝達され、出力軸19が回転する。なお、本実施形態では、各外歯歯車24,26の外歯の歯数が29、内歯歯車30の内歯の歯数が30で、その歯数差が1であるため、減速機入力軸13bの1回転毎に、各外歯歯車24,26は、内歯歯車30に対して1歯分だけずれる(自転する)ことになる。これにより、減速機入力軸13bの1回転が各外歯歯車24,26の1/30の回転に減速される。なお、減速機入力軸13bと出力軸19の回転は反対方向になる。
次に、トラクションドライブ減速機15について説明する。トラクションドライブ減速機15は、サイクロイド減速機16の出力軸19の回転動力を減速して複合減速機13の減速機出力軸13aへ伝達する。トラクションドライブ減速機15は、内輪体31と、外輪体32と、複数の転動体33と、複数の転動体33を保持する保持器34と、内輪体31と同軸上に配置された状態で保持器34に対して軸線回り相対回転不能とされた減速機出力軸13aを備える。
サイクロイド減速機16の出力軸19に環状の内輪体31が回転不能に外嵌され、内輪体31の外周に複数の転動体33を介して環状の外輪体32が配置される。保持器34は、複数の転動体33が自転することを許容しつつ、複数の転動体33の内輪体31回りの公転に応じて内輪体31の回転軸線回りに回転するように、複数の転動体33を保持している。
トラクションドライブ減速機15において、サイクロイド減速機16の出力軸19の回転動力は、出力軸19と共に回転する内輪体31及び複数の転動体33を介して、減速機出力軸13aに減速伝達される。なお、サイクロイド減速機16の出力軸19とトラクションドライブ減速機15の減速機出力軸13aの回転は反対方向になる。サイクロイド減速機16において、減速機入力軸13bと出力軸19の回転は反対方向になるので、複合減速機13全体の減速機出力軸13aと減速機入力軸13bの回転は同じ方向になる。
駆動輪2、電動モータ12、複合減速機13及びブレーキ装置14は同一軸線上に配置される。また、電動モータ12と、複合減速機13及びブレーキ装置14は、駆動輪2を挟んでクローラ5の幅方向で振り分けて配置される。この実施形態では、電動モータ12は駆動輪2の左側に配置され、複合減速機13とブレーキ装置14は駆動輪2の右側に配置される。電動モータ12、複合減速機13及びブレーキ装置14を含むクローラ駆動装置7は、クローラ5の幅内に収まるように、クローラ5のループ内に配置される。
電動モータ12のモータ軸12aの先端部は、筒状の減速機出力軸13aの内部を通って筒状の減速機入力軸13bの第2キャリア18寄りの部位にスプライン結合される。ブレーキ軸14aの一端部は、減速機入力軸13bの第1キャリア17寄りの部位にスプライン結合される。ブレーキ軸14aの他端部は、ブレーキ装置14にスプライン結合される。ブレーキ装置14に通電されてブレーキ軸14aの回転が解放された状態で電動モータ12が作動すると、モータ軸12aとともに減速機入力軸13b及びブレーキ軸14aが回転する。モータ軸12aの回転動力は、複合減速機13のサイクロイド減速機16で減速された後、トラクションドライブ減速機15でさらに減速されて減速機出力軸13aに伝達され、減速機出力軸13aを介して駆動輪2に伝達される。ブレーキ装置14に通電されていないときには、ブレーキ軸14a及び複合減速機13を介して駆動輪2の回転が制動される。
この実施形態のクローラ駆動装置7は、クローラ式走行装置1の駆動輪2を電動モータ12で複合減速機13を介して駆動する一方で、駆動輪2を制動するブレーキ装置14を備え、複合減速機13は、トラクションドライブ減速機15とサイクロイド減速機16を組み合わせて構成されるので、減速比を大きく取れる構成でありながら複合減速機13を軸方向に短くでき、複合減速機13のコンパクト化、ひいてはクローラ駆動装置7全体のコンパクト化を図れる。そして、複合減速機13を駆動輪2の回転軸と平行に配置してもクローラ駆動装置7をクローラ5の幅内に収めることができる。
また、この実施形態のクローラ駆動装置7では、駆動輪2、電動モータ12、複合減速機13及びブレーキ装置14が同一軸線上に配置されるので、電動モータ12をクローラ5の長さ方向で駆動輪2とはズレた位置に配置してベルトプーリー等の伝達機構を介して動力伝達する場合と比較して、クローラ駆動装置7のクローラ5長さ方向でのコンパクト化を図れる。そして、クローラ式走行装置1のクローラ5の長さの短縮化や、バッテリ8等の配置スペースの確保を実現できる。
また、この実施形態のクローラ駆動装置7では、電動モータ12と、複合減速機13及びブレーキ装置14が駆動輪2を挟んでクローラ5の幅方向で振り分けて配置されるので、駆動輪2に対してクローラ駆動装置7をクローラ5の幅方向にバランスよく配置でき、クローラ5の幅を大きくしなくても、駆動輪2をクローラ幅方向の中央部に配置しつつ、クローラ駆動装置7をクローラ5の幅内に収めることができる。
また、この実施形態のクローラ式走行装置1では、上記クローラ駆動装置7を備え、クローラ駆動装置7の電動モータ12及びブレーキ装置14に電力を供給するバッテリ8と、クローラ駆動装置7は、クローラ5のループ内かつ幅内に配置されるので、コンパクトなクローラ式走行装置1を実現できる。また、クローラ式走行装置1は、クローラ駆動装置7とバッテリ8を備えているので、単体で自走可能なクローラ式走行装置を実現できる。
次に、図5を参照して、複合減速機13の他の例を説明する。図5に示す複合減速機13では、サイクロイド減速機16の第2キャリア18の外周に配置される軸受部材をトラクションドライブ減速機15の一部として用いる。
トラクションドライブ減速機15の内輪体31、外輪体32及び複数の転動体33と後述する転動体保持部34bは、サイクロイド減速機16の第2キャリア18の外周面とケーシング筒35の内周面の間に配置される。内輪体31、外輪体32、転動体33及び転動体保持部34bは、第2キャリア18を回転自在に支持する軸受として機能する。
内輪体31は第2キャリア18の外周面に回転不能に外嵌される。内輪体31の外周に、複数の転動体33を介して環状の外輪体32が配置される。詳細は後述するが、転動体保持部34bの先端部は、内輪体31と外輪体32の間に挿入される。このトラクションドライブ減速機15の例では、内輪体31、外輪体32、転動体33及び転動体保持部34bは、転動体33と内輪体31及び外輪体32との接触点を結ぶ直線がラジアル方向に対して角度(接触角)をもつ所謂アンギュラ玉軸受を転用した構造を有する。
トラクションドライブ減速機15の保持器34は、円板形の円板部34aと、円板部34aの外周縁部に立設された円環状の転動体保持部34bと、円板部34aを貫通して円板部34aの中央部に設けられた円筒形の軸部34cを備える。
円板部34aは、第2キャリア18の外径よりも大きな外径をもち、外周縁部が転動体33に対峙するようにして第2キャリア18に対向配置される。転動体保持部34bは、転動体33に向けて円板部34aの外周縁部に突設されており、複数の転動体33を個別に収容する切欠き状凹部34dを複数備える。転動体保持部34bは、各転動体33が自転することを許容しつつ、転動体33の内輪体31回りの公転に応じて内輪体31の回転軸線回りに回転するように、各切欠き状凹部34d内に転動体33を保持する。
軸部34cは、第2キャリア18中央部に設けられた貫通孔に配置される軸受71と、略円板形の第1ケーシング蓋35bの中央部に設けられた貫通孔に配置された軸受72に回転自在に支持される。円板部34aを挟んで配置される軸受71,72によって、保持器34は回転軸線方向での移動が制限される。軸部34cの第2キャリア18とは反対側の端部は、減速機出力軸13aを構成する。
図5に示す複合減速機13では、トラクションドライブ減速機15の内輪体31、外輪体32、転動体33及び転動体保持部34bは、第2キャリア18の外周に配置されて第2キャリア18の軸受を兼ねる。そして、トラクションドライブ減速機15とサイクロイド減速機16の間の動力伝達は、サイクロイド減速機16の第2キャリア18の外周面にトラクションドライブ減速機15の内輪体3が回転不能に外嵌されることで実現されている。つまり、サイクロイド減速機16の回転動力を出力する出力軸19(図4参照)を設ける必要がない。したがって、図5に示す複合減速機13は、複合減速機13の全体的な構造の簡素化と軸方向幅の圧縮化(コンパクト化)を図ることができ、複合減速機13をクローラ5のループ内かつ幅内に収める際に有利になる。
なお、図5に示す複合減速機13では、第1キャリア17の外周面とケーシング筒71aの内周面の間に配置される軸受73は、アンギュラ玉軸受で構成されている。また、キャリアピン20は、ねじ付きのピンで構成されている。そして、キャリアピン20が締め込まれることで、第1キャリア17を支持する軸受73と、第2キャリア18を支持するアンギュラ玉軸受構造に、与圧が付与される。
また、図5に示す複合減速機13の組立て時には、内輪体31と外輪体32の間に所定数の転動体33を配置した後、着脱可能な円環状の仮止め保持器で転動体33の位置を保持して玉軸受状部材を形成しておく。その玉軸受状部材を第2キャリア18の外周に配置するようにして、ケーシング筒71a内にサイクロイド減速機16を組み込む。そして、上記玉軸受状部材から上記仮止め保持器を取り外す。このとき、内輪体31は第2キャリア18の外周面に外嵌され、外輪体32の外周面はケーシング筒71aの内周面に当接している。したがって、内輪体31と外輪体32は同一軸線上に位置固定されており、内輪体31と外輪体32の両中心位置が偏心して転動体33が内輪体31と外輪体32の間から抜け落ちることはない。
次に、保持器34の転動体保持部34bの各切欠き状凹部に転動体33が収容されるようにして転動体保持部34bの先端部を内輪体31と外輪体32の間に挿入する一方で、軸部34cの第2キャリア18側の端部を軸受72に挿通して、サイクロイド減速機16に保持器34を回転自在に連結する。その後、保持器34の軸部34cに軸受72を外嵌し、ケーシング筒71aの一端面側に第1ケーシング蓋71bを配置し、ケーシング筒71aの他端面側に第2ケーシング蓋71cを配置する。そして、ボルト74によってケーシング筒71aに両ケーシング蓋71b,71cを固着することで、複合減速機13の組立が完了する。
また、図5に示すトラクションドライブ減速機15では、上述のように、内輪体31、外輪体32、転動体33及び転動体保持部34bは、所謂アンギュラ玉軸受を転用した構造を有する。ただし、トラクションドライブ減速機15において第2キャリア18の軸受を兼ねる転がり軸受構造は、アンギュラ玉軸受構造に限定されず、どのような転がり軸受構造であってもよい。また、軸受73は、どのような転がり軸受構造であってもよい。
次に、図6から図8を参照して、クローラ式走行装置1及びクローラ駆動装置7の他の実施形態を説明する。この実施形態のクローラ駆動装置7では、電動モータ12は、クローラ5のループ内かつ幅内で駆動輪2の後方に配置され、右側の駆動装置支持フレーム6dの左側面に支持される。この実施形態の右側の駆動装置支持フレーム6dは、図1から図3に示す右側の駆動装置支持フレーム6dと比較して後方へ延設され、中途部及び後端部が下フレーム6a及び上フレーム6cに連結されている。
また、この実施形態のクローラ式走行装置1では、複合減速機13及びブレーキ装置14が同一軸線上に配置される。複合減速機13はクローラ5の幅方向略中央部に配置され、駆動輪2は、複合減速機13の外周に軸受(図示省略)を介して配置される。駆動輪2はクローラ5の幅方向略中央部に配置され、駆動輪2と複合減速機13は平面視で互いに重なる位置に配置される。複合減速機13は、左側の駆動装置支持フレーム6dの右側面に支持される。ブレーキ装置14は、右側の駆動装置支持フレーム6dの左側面に支持される。
電動モータ12のモータ軸12aは、電動モータ12から左側へ突設され、モータ軸12aの先端部に駆動プーリ36が取り付けられる。また、複合減速機13の減速機入力軸13b(図4参照)に減速機軸37の右側端が連結され、減速機軸37の左側端部に従動プーリ38が取り付けられる。両プーリ36,38に無端帯状の伝達ベルト39が掛け回されて、モータ軸12aの回転動力が駆動プーリ36、伝達ベルト39、従動プーリ38及び減速機軸37を介して複合減速機13に伝達される。
複合減速機13の減速機出力軸13aの先端部はブレーキ装置14に連結される。また、減速機出力軸13aの中途部には、減速機出力軸13aと駆動輪2を連結する連結部材40の小径部40aが連結されている。連結部材40は、断面視略凸状の円筒形状を有し、環状の小径部40a、大径部40b及びフランジ部40cを有する。大径部40bの左側端部にフランジ部40cが連結されている。フランジ部40cと駆動輪2に同心円上で設けられた複数の貫通孔にそれぞれ挿入されるボルト41aと、ボルト41aに螺合されるナット41bでフランジ部40cと駆動輪2が共締めされることで、連結部材40が駆動輪2に固定される。
ブレーキ装置14に通電されて減速機出力軸13aの回転が解放された状態で電動モータ12が作動すると、モータ軸12aの回転動力は、駆動プーリ36、伝達ベルト39、従動プーリ38及び減速機軸37を介して複合減速機13の減速機入力軸13b(図4参照)に伝達され、複合減速機13で減速されて減速機出力軸13aに伝達され、連結部材40を介して駆動輪2に伝達される。ブレーキ装置14に通電されていないときには、減速機出力軸13a及び連結部材40を介して駆動輪2の回転が制動される。
この実施形態のクローラ駆動装置7では、複合減速機13はトラクションドライブ減速機15とサイクロイド減速機16を組み合わせて構成されるとともに、駆動輪2は複合減速機13の外周に配置されているので、減速比を大きく取れる構成でありながら複合減速機13を軸方向に短くでき、さらに複合減速機13を平面視で駆動輪2と重なる位置に配置できるので、クローラ幅方向でのクローラ駆動装置7のサイズを大幅に減少でき、複合減速機13のコンパクト化、ひいてはクローラ駆動装置7全体のコンパクト化を図れる。そして、複合減速機13を駆動輪2の回転軸と平行に配置してもクローラ駆動装置7をクローラ5の幅内に収めることができる。
また、この実施形態のクローラ駆動装置7では、電動モータ12とブレーキ装置14が駆動輪2を挟んでクローラ5の幅方向で振り分けて配置されるので、駆動輪2に対してクローラ駆動装置7をクローラ5の幅方向にバランスよく配置でき、クローラ5の幅を大きくしなくても、駆動輪2をクローラ幅方向の中央部に配置しつつ、クローラ駆動装置7をクローラ5の幅内に収めることができる。
また、この実施形態のクローラ式走行装置1でも、図1から図4を参照して説明した上記実施形態のクローラ式走行装置1と同様に、クローラ駆動装置7とバッテリ8は、クローラ5のループ内かつ幅内に配置されるので、コンパクトなクローラ式走行装置1を実現できるとともに、単体で自走可能なクローラ式走行装置を実現できる。
次に、図9から図11を参照して、クローラ式走行装置1及びクローラ駆動装置7のさらに他の実施形態を説明する。この実施形態のクローラ式走行装置1では、駆動輪2、電動モータ12、複合減速機13及びブレーキ装置14は同一軸線上に配置されるとともに、駆動輪2は複合減速機13の外周に軸受(図示省略)を介して配置される。
電動モータ12は、左側の駆動装置支持フレーム6dの左方に複数の固定用ボルト42を介して固定される。電動モータ12は左側の駆動装置支持フレーム6dとは離間して配置され、電動モータ12のモータ軸12aは断面視凸状のカップリング部材43を介して複合減速機13の減速機入力軸13bに連結される。
ブレーキ装置14に通電されて減速機出力軸13aの回転が解放された状態で電動モータ12が作動すると、モータ軸12aの回転動力は、カップリング部材43を介して複合減速機13の減速機入力軸13b(図4参照)に伝達され、複合減速機13で減速されて減速機出力軸13aに伝達され、連結部材40を介して駆動輪2に伝達される。また、ブレーキ装置14に通電されていないときには、減速機出力軸13a及び連結部材40を介して駆動輪2の回転が制動される。
この実施形態のクローラ式走行装置1及びクローラ駆動装置7では、駆動輪2、電動モータ12、複合減速機13及びブレーキ装置14は同一軸線上に配置されるとともに、駆動輪2は複合減速機13の外周に配置されているので、図1から図4又は図6から図8を参照して説明した両実施形態と同様の作用及び効果が得られるとともに、よりコンパクトなクローラ式走行装置1及びクローラ駆動装置7を実現できる。
上記実施形態では、トラクションドライブ減速機15とサイクロイド減速機16を組み合わせた複合減速機13が用いられているが、電動モータ12の回転動力を減速して駆動輪2に伝達する減速機は、図12に示すサイクロイド減速機16単体で構成されてもよい。この場合、サイクロイド減速機16の出力軸19が減速機出力軸13aを構成する。なお、複合減速機13、及びサイクロイド減速機16単体の減速機に関し、減速機出力軸13aをモータ軸12aが貫通しない構成(図6から図8の実施形態及び図9から図11の実施形態)においては、減速機出力軸13aは筒状ではなく棒状であってもよい。
次に、図13を参照しながら、クローラ式走行装置1が適用される不整地走行車両の一例について説明する。不整地走行車両50は、車体フレーム51と、前部に備える左右一対の前車輪52と、後部に備える1本のクローラ式走行装置1と、各装置を制御する制御部53などを備える。クローラ式走行装置1は、例えば図1から図4を参照して説明した実施形態のものと同様である。クローラ式走行装置1のクローラフレーム6の上フレーム6aは車体フレーム51の後部に連結される。
車体フレーム51は本体カバー54で覆われている。本体カバー54は、クローラ式走行装置1の前部の上方に運転シート55を備え、運転シート55の後方でクローラ式走行装置1の上方にリアフェンダ56を備える。
運転シート55の前方には、不整地走行車両50の左右一対の前車輪52を操向するためのステアリング57を備える。ステアリング57は、ステアリングシャフト58と、ステアリングシャフト58の上端に設けられた左右の外方に突出するステアリングバー59と、ステアリングバー59の一端に設けられるアクセルグリップ60などから構成される。
ステアリングシャフト58は、車体フレーム51に対して回動自在に支持される。ステアリングバー59の操舵角に応じて、図示しない操舵機構により左右一対の前車輪52が操向される。本体カバー54は、運転シート55の下方に、左右のステップフロア61を備える。不整地走行車両50は鞍乗型走行車両である。乗員は運転シート55に跨って座り、左右のステップフロア61に足を乗せて乗車する。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明における各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
例えば、駆動輪2及びクローラ駆動装置7は、クローラ式走行装置1が適用される走行車両の車体フレームに支持される構成であってもよい。例えば、図13に示す不整地走行車両50において、車体フレーム51にクローラ駆動装置7が支持され、駆動輪2はクローラ駆動装置7を介して車体フレーム51に支持されるようにしてもよい。この構成でも、クローラ駆動装置7はクローラ式走行装置1のクローラ5のループ内かつ幅内に配置される。
また、本発明のクローラ駆動装置及びクローラ式走行装置が適用される走行車両は、図13に示すものに限定されず、クローラ式走行装置を備える走行車両であれば、適用可能である。また、複数のクローラ式走行装置を備える走行車両等の各クローラ式走行装置に、本発明のクローラ駆動装置又はクローラ式走行装置を適用することも可能である。
また、クローラ式走行装置1の側面視の形状は、略台形状に限定されるものではなく、例えば、特許文献1に示すような三角形状であってもよいし、直線状や台形以外の四角形状等であってもよい。