JP2018123737A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】予混合気の自着火時期が目標自着火時期に対してずれるのを抑制する。【解決手段】燃焼室11内に第1燃料を噴射することができるように構成されると共に、燃焼室11内に第1燃料よりもオクタン価の低い第2燃料を、噴射圧を変更して噴射することができるように構成された燃料供給装置2を備える内燃機関100を制御するための制御装置200が、燃焼室11内に噴射された第1燃料及び第2燃料の混合噴霧のオクタン価及び噴霧到達距離が、機関負荷に応じた目標オクタン価及び目標到達距離となるように、第1燃料の噴射後に第2燃料を噴射する燃料噴射制御部を備える。燃料噴射制御部は、燃焼室11内のガス密度が高いときほど、第2燃料の噴射圧を高くする。【選択図】図1
Description
本発明は内燃機関の制御装置に関する。
特許文献1には、従来の内燃機関の制御装置として、着火性(オクタン価)の異なる2種類の燃料を燃焼室内で混合させて、予混合気を圧縮自着火燃焼させるように構成されたものが開示されている。
しかしながら、着火性の異なる2種類の燃料を例えば燃焼室内で混合させて予混合気を圧縮自着火燃焼させる場合、燃焼室内での2種類の燃料の混合の仕方次第では、例えば過早着火が生じて予混合気の自着火時期が目標自着火時期に対してずれるおそれがあることがわかった。
本発明はこのような問題点に着目してなされたものであり、着火性の異なる2種類の燃料を混合させて予混合気を圧縮自着火燃焼させることが可能な内燃機関において、予混合気の自着火時期が目標自着火時期に対してずれるのを抑制することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明のある態様によれば、機関本体と、機関本体の燃焼室内に第1燃料を噴射することができるように構成されると共に、燃焼室内に第1燃料よりもオクタン価の低い第2燃料を、噴射圧を変更して噴射することができるように構成された燃料供給装置と、を備える内燃機関を制御するための内燃機関の制御装置が、燃焼室内に噴射された第1燃料及び第2燃料の混合噴霧のオクタン価及び噴霧到達距離が、機関負荷に応じた目標オクタン価及び目標到達距離となるように、第1燃料の噴射後に第2燃料を噴射する燃料噴射制御部を備える。そして燃料噴射制御部が、燃焼室内のガス密度が高いときほど、前記第2燃料の噴射圧を高くするように構成される。
本発明のこの態様によれば、着火性の異なる2種類の燃料を混合させて予混合気を圧縮自着火燃焼させることが可能な内燃機関において、予混合気の自着火時期が目標自着火時期に対してずれるのを抑制することができる。
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
図1は、本発明の一実施形態による内燃機関100及び内燃機関100を制御する電子制御ユニット200の概略構成図である。図2は、内燃機関100の機関本体1の断面図である。
図1に示すように、内燃機関100は、複数の気筒10を備える機関本体1と、燃料供給装置2と、吸気装置3と、排気装置4と、吸気動弁装置5と、排気動弁装置6と、を備える。
機関本体1は、各気筒10に形成される燃焼室11内(図2参照)で燃料を燃焼させて、例えば車両などを駆動するための動力を発生させる。機関本体1には、気筒毎に一対の吸気弁50と一対の排気弁60とが設けられる。
燃料供給装置2は、燃焼室11内に着火性(オクタン価)の異なる2つの燃料を供給することができるように構成される。本実施形態による燃料供給装置2は、第1燃料を燃焼室11内に供給するための第1燃料供給装置2aと、第2燃料を燃焼室11内に供給するための第2燃料供給装置2bと、を備える。第1燃料は、着火性の低い高オクタン価の燃料であり、例えばガソリンやメタンである。第2燃料は、着火性の高い低オクタン価の燃料であり、例えば軽油である。
第1燃料供給装置2aは、電子制御式の第1燃料噴射弁20aと、第1デリバリパイプ21aと、第1サプライポンプ(フューエルポンプ)22aと、第1燃料タンク23aと、第1圧送パイプ24aと、を備える。
第1燃料噴射弁20aは、燃焼室11内に直接第1燃料を噴射することができるように、各気筒10に1つ設けられている。第1燃料噴射弁20aの開弁時間(噴射量)及び開弁時期(噴射時期)は電子制御ユニット200からの制御信号によって変更され、第1燃料噴射弁20aが開弁されると燃焼室11内に第1燃料が噴射される。
第1デリバリパイプ21aは、第1圧送パイプ24aを介して第1燃料タンク23aに接続される。第1圧送パイプ24aの途中には、第1燃料タンク23aに貯蔵された第1燃料を第1デリバリパイプ21aに圧送するための第1サプライポンプ22aが設けられる。第1デリバリパイプ21aは、第1サプライポンプ22aから圧送されてきた燃料を一時的に貯蔵する。なお図示はしないが、デリバリパイプ21aには、デリバリパイプ21a内の燃料圧力を所定値以下に制御するためのプレッシャレギュレータが設けられている。
第1サプライポンプ22aは、電子制御ユニット200からの制御信号によって駆動され、第1燃料タンク23aに貯蔵された第1燃料を、一定の吐出量で第1圧送パイプ24aを介して第1デリバリパイプ21aに圧送する。したがって本実施形態では、第1デリバリパイプ21a内の燃料圧力は一定圧に制御されており、第1燃料噴射弁20aの噴射圧も一定圧に制御されることになる。
第1燃料タンク23aは、外部から供給された第1燃料を貯蔵する。本実施形態では、第1燃料としてガソリンを使用している。
第2燃料供給装置2bは、電子制御式の第2燃料噴射弁20bと、第2デリバリパイプ(コモンレール)21bと、第2サプライポンプ22bと、第2燃料タンク23bと、第2圧送パイプ24bと、燃圧センサ211と、を備える。
第2デリバリパイプ21bは、第2圧送パイプ24bを介して第2燃料タンク23bに接続される。第2圧送パイプ24bの途中には、第2燃料タンク23bに貯蔵された燃料を加圧して第2デリバリパイプ21bに供給するための第2サプライポンプ22bが設けられる。第2デリバリパイプ21bは、第2サプライポンプ22bから圧送されてきた高圧燃料を一時的に貯蔵する。第2燃料噴射弁20bが開弁されると、第2デリバリパイプ21bに貯蔵された高圧燃料が第2燃料噴射弁20bから燃焼室11内に直接噴射される。第2デリバリパイプ21bには、第2デリバリパイプ21b内の燃料圧力、すなわち第2燃料噴射弁20bから燃焼室11内に噴射される燃料の圧力(噴射圧)を検出するための燃圧センサ211が設けられる。
第2サプライポンプ22bは、吐出量を変更することができるように構成されており、第2サプライポンプ22bの吐出量は、電子制御ユニット200からの制御信号によって変更される。第2サプライポンプ22bの吐出量を制御することで、第2デリバリパイプ21b内の燃料圧力、すなわち第2燃料噴射弁20bの噴射圧が制御される。
第2燃料タンク23bは、外部から供給された第2燃料を貯蔵する。本実施形態では、第1燃料として軽油を使用している。
吸気装置3は、燃焼室11内に吸気を導くための装置であって、燃焼室11内に吸入される吸気の状態(吸気圧、吸気温、EGR(Exhaust Gas Recirculation)ガス量)を変更することができるように構成されている。吸気装置3は、吸気通路となる吸気管30及び吸気マニホールド31と、EGR通路32と、を備える。
吸気管30は、一端がエアクリーナ34に接続され、他端が吸気マニホールド31の吸気コレクタ31aに接続される。吸気管30には、上流から順にエアフローメータ212、ターボチャージャ7のコンプレッサ71、インタークーラ35及びスロットル弁36が設けられる。
エアフローメータ212は、吸気管30内を流れて最終的に気筒10内に吸入される空気の流量を検出する。
コンプレッサ71は、コンプレッサハウジング71aと、コンプレッサハウジング71a内に配置されたコンプレッサホイール71bと、を備える。コンプレッサホイール71bは、同軸上に取り付けられたターボチャージャ7のタービンホイール72bによって回転駆動され、コンプレッサハウジング71a内に流入してきた吸気を圧縮して吐出する。ターボチャージャ7のタービン72には、タービンホイール72bの回転速度を制御するための可変ノズル72cが設けられており、可変ノズル72cによってタービンホイール72bの回転速度が制御されることで、コンプレッサハウジング71a内から吐出される吸気の圧力(過給圧)が制御される。
インタークーラ35は、コンプレッサ71によって圧縮されて高温になった吸気を、例えば走行風や冷却水などによって冷却するための熱交換器である。
スロットル弁36は、吸気管30の通路断面積を変化させることで、吸気マニホールド31に導入する吸気量を調整する。スロットル弁36は、スロットルアクチュエータ36aによって開閉駆動され、スロットルセンサ213によってその開度(スロットル開度)が検出される。
吸気マニホールド31は、機関本体1に形成された吸気ポート14に接続されており、吸気管30から流入してきた吸気を、吸気ポート14を介して各気筒10に均等に分配する。吸気マニホールド31の吸気コレクタ31aには、筒内に吸入される吸気の圧力(吸気圧)Pbを検出するための吸気圧センサ214と、筒内に吸入される吸気の温度(以下「吸気温」という。)Tbを検出するための吸気温センサ215と、が設けられる。なお、本実施形態による内燃機関100は過給機の一種であるターボチャージャ7を備えているので、以下の説明では吸気圧センサ214によって検出される吸気圧Pbのことを、特に実過給圧Pbという。
EGR通路32は、排気マニホールド41と吸気マニホールド31の吸気コレクタ31aを連通し、各気筒10から排出された排気の一部を圧力差によって吸気コレクタ31aに戻すための通路である。以下、EGR通路32に流入した排気のことを「EGRガス」といい、筒内ガス量に占めるEGRガス量の割合、すなわち排気の還流率のことを「EGR率」という。EGRガスを吸気コレクタ31a、ひいては各気筒10に還流させることで、燃焼温度を低減させて窒素酸化物(NOx)の排出を抑えることができる。EGR通路32には、上流から順にEGRクーラ37と、EGR弁38と、が設けられる。
EGRクーラ37は、EGRガスを、例えば走行風や冷却水などによって冷却するための熱交換器である。
EGR弁38は、連続的又は段階的に開度を調整することができる電磁弁であり、その開度は機関運転状態に応じて電子制御ユニット200によって制御される。EGR弁38の開度を制御することで、吸気コレクタ31aに還流させるEGRガスの流量が調節される。
排気装置4は、筒内から排気を排出するための装置であって、排気マニホールド41と、排気通路42と、を備える。
排気マニホールド41は、機関本体1に形成された排気ポート15に接続されており、各気筒10から排出された排気を纏めて排気通路42に導入する。
排気通路42には、上流から順にターボチャージャ7のタービン72と、排気後処理装置43と、が設けられる。
タービン72は、タービンハウジング72aと、タービンハウジング72a内に配置されたタービンホイール72bと、を備える。タービンホイール72bは、タービンハウジング72a内に流入してきた排気のエネルギによって回転駆動され、同軸上に取り付けられたコンプレッサホイール71bを駆動する。
タービンホイール72bの外側には、前述した可変ノズル72cが設けられている。可変ノズル72cは絞り弁として機能し、可変ノズル72cのノズル開度(弁開度)は電子制御ユニット200によって制御される。可変ノズル72cのノズル開度を変化させることでタービンホイール72bを駆動する排気の流速をタービンハウジング72a内で変化させることができる。すなわち、可変ノズル72cのノズル開度を変化させることで、タービンホイール72bの回転速度を変化させて過給圧を変化させることができる。具体的には、可変ノズル72cのノズル開度を小さくする(可変ノズル72cを絞る)と、排気の流速が上がってタービンホイール72bの回転速度が増大し、過給圧が増大する。
排気後処理装置43は、排気を浄化した上で外気に排出するための装置であって、有害物質を浄化する各種の排気浄化触媒や有害物質を捕集するフィルタなどを備える。
吸気動弁装置5は、各気筒10の吸気弁50を開閉駆動するための装置であって、機関本体1に設けられる。本実施形態による吸気動弁装置5は、吸気弁50の開閉時期を制御できるように、例えば電磁アクチュエータによって吸気弁50を開閉駆動するように構成される。しかしながら、これに限らず、吸気カムシャフトによって吸気弁50を開閉駆動するように構成し、当該吸気カムシャフトの一端部に油圧制御によってクランクシャフトに対する吸気カムシャフトの相対位相角を変更する可変動弁機構を設けることによって、吸気弁50の開閉時期を制御できるようにしてもよい。
排気動弁装置6は、各気筒10の排気弁60を開閉駆動するための装置であって、機関本体1に設けられる。本実施形態による排気動弁装置6は、排気弁60の開閉時期を制御できるように、例えば電磁アクチュエータによって排気弁60を開閉駆動するように構成される。しかしながら、これに限らず、排気カムシャフトによって排気弁60を開閉駆動するように構成し、当該排気カムシャフトの一端部に油圧制御によってクランクシャフトに対する排気カムシャフトの相対位相角を変更する可変動弁機構を設けることによって、排気弁60の開閉時期を制御できるようにしてもよい。また例えば、油圧等によってカムプロフィールを変更することで排気弁60の開閉時期やリフト量を変更できるようにしても良い。
電子制御ユニット200は、デジタルコンピュータから構成され、双方性バス201によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)202、RAM(ランダムアクセスメモリ)203、CPU(マイクロプロセッサ)204、入力ポート205及び出力ポート206を備える。
入力ポート205には、前述した燃圧センサ211などの出力信号が、対応する各AD変換器207を介して入力される。また入力ポート205には、機関負荷を検出するための信号として、アクセルペダル220の踏み込み量(以下「アクセル踏込量」という。)に比例した出力電圧を発生する負荷センサ217の出力電圧が、対応するAD変換器207を介して入力される。また入力ポート205には、機関回転速度などを算出するための信号として、機関本体1のクランクシャフトが例えば15°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ218の出力信号が入力される。このように入力ポート205には、内燃機関100を制御するために必要な各種センサの出力信号が入力される。
出力ポート206は、対応する駆動回路208を介して、第1燃料噴射弁20aや第2燃料噴射弁20bなどの各制御部品に接続される。
電子制御ユニット200は、入力ポート205に入力された各種センサの出力信号に基づいて、各制御部品を制御するための制御信号を出力ポート206から出力して内燃機関100を制御する。以下、電子制御ユニット200が実施する内燃機関100の制御について説明する。
電子制御ユニット200は、第1燃料の噴射(以下「第1燃料噴射」という。)G1の実施後に第2燃料の噴射(以下「第2燃料噴射」という。)G2を実施して、燃焼室11内に当量比φが1よりも小さい予混合気(希薄予混合気)を形成し、その予混合気を圧縮自着火燃焼させる予混合圧縮自着火燃焼(PCCI;Premixed Charged Compression Ignition)を実施して機関本体1の運転を行う。本実施形態では、圧縮行程中に第1燃料噴射G1と第2燃料噴射G2とを実施することで、可能な限り燃焼室11内の中央部に予混合気を形成し、予混合気の外縁と気筒内壁面との間に空気層が形成されるようにしている。これにより、予混合気を圧縮自着火燃焼させたときの気筒内壁面からの熱損失を低減することができるので、熱効率を向上させることができる。
また電子制御ユニット200は、予め実験等によって作成されたマップを参照して機関運転状態(機関回転速度及び機関負荷)に基づき目標過給圧Pbtrgを算出し、実過給圧Pbが目標過給圧Pbtrgとなるように、可変ノズル72cのノズル開度を制御している。
ここで予混合圧縮自着火燃焼を実施する場合は、予混合気を希薄化させるための時間、すなわち燃焼室11内に噴射した燃料を燃焼室11内で拡散させるための時間が必要となる。そのため、圧縮行程中の比較的進角側で燃料を早期に噴射する必要がある。しかしながら、仮に1種類の燃料しか燃焼室11内に噴射することができないとすると、以下のような問題が生じるおそれがある。
すなわち機関高負荷時は、機関低負荷時よりも燃料噴射量が多くなると共に目標過給圧も高い値に設定されるため、機関低負荷時と比べて筒内温度T[K]及び筒内圧力P[MPa]が高くなる傾向にある。そのため機関高負荷時は、機関低負荷時よりも燃料が自着火しやすい筒内環境となる。したがって、着火性の高い低オクタン価燃料(本実施形態では第2燃料)を早期に噴射すると、機関高負荷時において予混合気が目標自着火時期(本実施形態では概ね圧縮上死点)よりも進角側で自着火してしまう過早着火が生じ、熱効率が低下するおそれがある。
逆に機関低負荷時は、機関高負荷時よりも燃料が自着火しにくい筒内環境となる。そのため、着火性の低い高オクタン価燃料(本実施形態では第1燃料)しか噴射できない場合には、機関低負荷時において予混合気を自着火させることができずに失火するおそれがある。
このような過早着火や失火が生じないように予混合圧縮自着火燃焼を実施する方法としては、機関負荷に応じて予混合気の着火性を変化させる方法が考えられ、例えば第1燃料噴射G1によって形成される燃料噴霧(予混合気)S1と、第2燃料噴射G2によって形成される燃料噴霧(予混合気)S2と、を燃焼室11内で混合させると共に、その混合割合を機関負荷に応じて変化させることで、所望の着火性を有する予混合気を形成する方法が考えられる。
しかしながら、発明者らの鋭意研究の結果、このような方法をとったとしても過早着火が生じる場合があることがわかった。以下、その理由について説明する。
本実施形態のように、着火性の異なる2つの燃料を燃焼室11内で混合して予混合圧縮自着火燃焼を実施する場合、着火性の高い低オクタン価の第2燃料を、着火性の低い高オクタン価の第1燃料よりも先に噴射してしまうと、各燃料噴霧S1,S2が均一に混合して所望の着火性を有する予混合気が形成される前に、第2燃料が目標自着火時期よりも進角側で自着火を起こし、結果として早期着火が発生するおそれがある。
そこで本実施形態では、前述した通り、圧縮行程中に第1燃料噴射G1、第2燃料噴射G2の順で燃料噴射を実施している。すなわち圧縮行程中に着火性の低い高オクタン価の第1燃料を先に噴射し、その後に着火性の高い低オクタン価の第2燃料を噴射している。
ここで機関負荷が高くなるほど要求トルクが大きくなって、要求トルクを発生させるために必要な燃料量(熱量)が増大する。そのため、機関負荷が高くなるほど基本的に第1燃料及び第2燃料の各目標噴射量A1,A2も多くなる傾向にある。したがって、機関負荷に応じて第1燃料噴射G1による燃料噴霧S1の希薄化を図るために必要な時間(第1燃料を噴射してから目標自着火時期までの時間)が変化し、具体的には機関負荷が高くなるほど当該時間が長くなる。よって、機関高負荷時には、機関低負荷時に比べて第1燃料噴射G1の噴射時期を進角側に設定する必要がある。すなわち、第1燃料の噴射時期は、機関低負荷時と機関高負荷時とで異ならせる必要がある。その結果、機関低負荷時と機関高負荷時とで、第1燃料噴射G1によって形成される燃料噴霧S1の形状が変化する。
図3は、目標自着火時期の直前において、第1燃料噴射G1によって形成される燃料噴霧S1の形状を、機関低負荷時と機関高負荷時とで比較した模式図である。
前述した通り、機関高負荷時は、機関低負荷時と比較して第1燃料の目標噴射量A1が多くなり、機関低負荷時と比較して噴射時期が進角側に設定されるため、第1燃料を噴射してから目標自着火時期までの時間が機関低負荷時と比較して長くなる。そのため図3(B)に示すように、機関高負荷時は、第1燃料噴射弁20aから噴射された第1燃料が燃焼室11内の広範囲に亘って拡散することになる。
一方で機関低負荷時は、機関高負荷時と比較して第1燃料の目標噴射量A1は少なく、予混合気の過剰な希薄化、ひいては失火を抑制するために、機関高負荷時と比較して噴射時期が遅角側に設定されるため、第1燃料を噴射してから目標自着火時期までの時間が機関高負荷時と比較して短くなる。そのため図3(A)に示すように、機関低負荷時は、第1燃料噴射弁20aから噴射された第1燃料が燃焼室11内の広範囲に亘って拡散することなく、燃焼室11内の中央部に留まることになる。
その結果、機関低負荷時と機関高負荷時とで、第1燃料噴射G1によって形成される燃料噴霧S1の噴霧到達距離X1[mm]を比較すると、図3(A)及び図3(B)に示すように、燃料噴霧S1の噴霧到達距離X1は、機関高負荷時の方が機関低負荷時よりも大きくなる。すなわち、機関低負荷時と機関高負荷時とで、燃焼室11内に分布している燃料噴霧S1の範囲が異なることになる。
そのため、第1燃料の噴射後に噴射される第2燃料の目標噴射圧Pc2を仮に一定値に制御していた場合には、第2燃料の目標噴射圧Pc2の設定値次第で以下のような状況が生じるおそれがある。
図4は、第2燃料の目標噴射圧Pc2を相対的に高い或る一定値に制御していた場合の、機関低負荷時における目標自着火時期直前の燃料噴霧S1と第2燃料噴射G2によって形成される燃料噴霧(予混合気)S2との形状とをそれぞれ示した模式図である。
図4に示すように、第2燃料の目標噴射圧Pc2を相対的に高い値に制御していた場合は、機関低負荷時において、第2燃料の噴霧貫徹力が高すぎて、燃料噴霧S1の外縁を超えて第2燃料が気筒内壁面に向かって拡散する場合がある。すなわち、燃料噴霧S1の噴霧到達距離X1に対して、第2燃料噴射弁20bから燃焼室11内に噴射された燃料噴霧S2の噴霧到達距離X2[mm]が大きくなり過ぎる場合がある。
この場合、予混合気S1の外縁を超えて気筒内壁面に向かって拡散した第2燃料は、燃焼室11内で第1燃料と混合しない。そのため、燃料噴霧S1と燃料噴霧S2とが重なっている部分の混合噴霧の着火性(オクタン価)に対して、燃料噴霧S2だけが存在している部分の着火性が高くなる。その結果、この部分の燃料噴霧S2が目標自着火時期よりも進角側で自着火を起こし、結果として早期着火が発生してしまうおそれがある。
一方で図5は、第2燃料の目標噴射圧Pc2を相対的に低い或る一定値に制御していた場合の、機関高負荷時における目標自着火時期直前の燃料噴霧S1と燃料噴霧S2との形状とをそれぞれ示した模式図である。
図5に示すように、第2燃料の目標噴射圧Pc2を相対的に低い値に制御していた場合は、機関高負荷時において、第2燃料の噴霧貫徹力が低すぎて第2燃料が燃焼室11内の中央部に留まってしまい、燃料噴霧S1の体積に対して燃料噴霧S2の体積が小さくなり過ぎる場合がある。すなわち、燃料噴霧S1の噴霧到達距離X1に対して、燃料噴霧S2の噴霧到達距離X2が小さくなり過ぎる場合がある。
この場合、燃料噴霧S1と燃料噴霧S2とが重なっている燃焼室11内の中央部の混合噴霧の着火性が、混合噴霧S1だけが存在している部分の着火性よりも高くなると共に、燃焼室11内の中央部の混合噴霧の当量比φが、燃料噴霧S1と燃料噴霧S2とを均一に混合させた場合の混合噴霧の当量比φと比較して大きくなる。その結果、燃焼室11内の中央部の混合噴霧が目標自着火時期よりも進角側で自着火を起こし、結果として早期着火が発生してしまうおそれがある。
したがって、第1燃料噴射G1による燃料噴霧S1と、第2燃料噴射G2による燃料噴霧S2と、を燃焼室11内で混合させて所望の着火性を有する予混合気を形成し、過早着火や失火が生じないように予混合圧縮自着火燃焼を実施するには、まずは燃料噴霧S1内に燃料噴霧S2を収める必要がある。そしてさらに、燃料噴霧S2の体積が、燃料噴霧S1の体積に対して小さくなり過ぎないようにし、燃料噴霧S1と燃料噴霧S1とを均一に混合させて燃焼室11内で局所的に着火性の高い部分が存在しないようにする必要がある。
すなわち、第1燃料噴射G1による燃料噴霧S1と、第2燃料噴射G2による燃料噴霧S2と、を燃焼室11内で混合させて所望の着火性を有する予混合気を形成し、過早着火や失火が生じないように予混合圧縮自着火燃焼を実施するには、機関負荷に応じて第1燃料の噴射時期を制御しつつ、燃料噴霧S1の噴霧到達距離X1と、燃料噴霧S2の噴霧到達距離X2と、が概ね同じ程度になるように、機関負荷に応じて第2燃料の噴射圧を制御する必要がある。
ここで各燃料噴霧S1,S2の噴霧到達距離X1,X2は、各燃料噴射G1,G2の実施時期における筒内圧力P、すなわち各燃料噴射G1,G2の実施時期における燃焼室11内のガス密度(以下「筒内ガス密度」という)ρの影響を受けて変化する。各燃料噴射G1,G2の実施時期における筒内ガス密度ρは、基本的に実過給圧Pbと相関関係にあり、実過給圧Pbが高くなるほど、各燃料噴射G1,G2の実施時期における筒内ガス密度ρもそれぞれ高くなる。
そのため、例えば過渡時等に吸気の応答遅れによって実過給圧Pbと目標過給圧Pbtとにズレが生じ、定常時と比較して各燃料噴射G1,G2の実施時期における筒内ガス密度ρが変化すると、各燃料噴霧S1,S2の噴霧到達距離X1,X2も定常時と比較して変化することになる。具体的には、各燃料噴射G1,G2の実施時期における筒内ガス密度ρが定常時と比較して高くなれば、各燃料噴霧S1,S2の噴霧到達距離X1,X2は短くなる。逆に各燃料噴射G1,G2の実施時期における筒内ガス密度ρが定常時と比較して低くなれば、各燃料噴霧S1,S2の噴霧到達距離X1,X2は長くなる。
特に本実施形態では、前述した通り、圧縮行程中に第1燃料噴射G1、第2燃料噴射G2の順で燃料噴射を実施すると共に、機関運転状態に応じてターボチャージャ7による過給を実施しているため、第2燃料噴射G2は、相対的に筒内ガス密度ρが高いときに実施されることなる。そのため、燃料噴霧S2の噴霧到達距離X2は、特に筒内ガス密度ρの影響を受けやすく、第2燃料噴射G2の実施時期における筒内ガス密度ρが変化すると、その筒内ガス密度ρの変化によって燃料噴霧S2の噴霧到達距離X2も大きく変化する。
したがって、筒内ガス密度ρの影響を無視してしまうと、例えば過渡時等に各燃料噴霧S1,S2の噴霧到達距離X1,X2がそれぞれ目標とズレてしまい、結果として燃料噴霧S2の噴霧到達距離X2が、燃料噴霧S1の噴霧到達距離X1よりも長くなり過ぎたり、又は短くなり過ぎたりして、過早着火が生じるおそれがある。
そこで本実施形態では、筒内ガス密度ρを考慮して、第1燃料の噴射時期と第2燃料の噴射圧を制御することとした。以下、この本実施形態による燃料噴射制御について説明する。
図6は、本実施形態による燃料噴射制御について説明するフローチャートである。電子制御ユニット200は、本ルーチンを機関運転中に所定の演算周期で繰り返し実行する。
ステップS1において、電子制御ユニット200は、クランク角センサ218の出力信号に基づいて算出された機関回転速度と、負荷センサ217によって検出された機関負荷と、を読み込み、機関運転状態を検出する。
ステップS2において、電子制御ユニット200は、予め実験等によって作成された図7のテーブルを参照し、機関負荷に基づいて、第1燃料の目標噴射量A1、及び第2燃料の目標噴射量A2をそれぞれ決定する。図7において、破線が第1燃料の目標噴射量A1を示し、実線が第2燃料の目標噴射量A2を示す。
図7のテーブルは、第1燃料と第2燃料とを混合した場合の混合燃料のオクタン価が、機関負荷に応じた目標オクタン価となるように、第1燃料の目標噴射量A1、及び第2燃料の目標噴射量A2を設定したテーブルである。言い換えれば、第1燃料噴射G1による燃料噴霧S1と、第2燃料噴射G2による燃料噴霧S2とが、燃焼室11内で均一に混合されたときの混合噴霧の着火性が、機関負荷に応じた所望の着火性となるように、第1燃料の目標噴射量A1、及び第2燃料の目標噴射量A2を設定したテーブルである。
図7のテーブルの示すように、第1燃料の目標噴射量A1、及び第2燃料の目標噴射量A2は、それぞれ機関負荷が低いときに比べて、高いときの方が多くなるように設定される。具体的にはそれぞれ機関負荷が高くなるほど多くなるように設定される。これは、機関負荷が低いときに比べて高いときの方が、要求トルクが大きくなって、要求トルクを発生させるために必要な熱量、ひいては燃料量が増大するためである。
また図7のテーブルに示すように、本実施形態では、第1燃料の目標噴射量A1と第2燃料の目標噴射量A2とを足し合わせた総目標噴射量に占める第2燃料の目標噴射量A2の割合が、機関負荷が低いときに比べて、高いときの方が小さくように設定している。具体的には、機関負荷が高くなるほど、総目標噴射量に占める第2燃料の目標噴射量A2の割合が小さくなるように設定している。これは前述した通り、機関高負荷時は機関低負荷時よりも燃料が自着火しやすい筒内環境となるため、総目標噴射量に占める第2燃料の目標噴射量A2の割合が大きいと、自着火時期が目標自着火時期よりも早くなる早期着火が起こる可能性があるためである。
なお図8は、機関負荷と、混合燃料の目標オクタン価と、の関係を示した図である。図8に示すように、混合燃料(混合噴霧)の目標オクタン価は、機関負荷が低いときに比べて、高いときの方が高くなるように設定される。これは、機関負荷が高くなるほど、燃料量(熱量)及び過給圧の増大に伴って筒内温度T及び筒内圧力Pが高くなる傾向にあるため、機関負荷の増加に伴って混合燃料のオクタン価を高くして予混合気の着火性を低くしていかないと、自着火時期が目標自着火時期(概ねTDC)よりも早くなる早期着火が起こる可能性があるためである。
ステップS3において、電子制御ユニット200は、予め実験等によって作成された図9のテーブルを参照し、機関負荷に基づいて、第1燃料の目標噴射時期W1[deg.CA]、及び第2燃料の目標噴射時期W2[deg.CA]をそれぞれ決定する。図9において、破線が第1燃料の目標噴射時期W1を示し、実線が第2燃料の目標噴射時期W2を示す。
ステップS4において、電子制御ユニット200は、予め実験等によって作成された図10のテーブルを参照し、機関負荷に基づいて、第1燃料の目標噴射圧Pc1、及び第2燃料の目標噴射圧Pc2をそれぞれ決定する。図10において、破線が第1燃料の目標噴射圧Pc1を示し、実線が第2燃料の目標噴射圧Pc2を示す。
図9及び図10のテーブルはそれぞれ、定常時において、燃料噴霧S1の噴霧到達距離X1と、燃料噴霧S2の噴霧到達距離X2とが、機関負荷に応じた目標到達距離Xtrgとなるように、第1燃料の目標噴射時期W1及び目標噴射圧Pc1と、第2燃料の目標噴射時期W2及び目標噴射圧Pc2と、を設定したテーブルである。
なお本実施形態では、各燃料噴霧S1,S2の目標到達距離Xtrgを同じに設定しているが、早期着火が生じない範囲、すなわち局所的に他の噴霧領域と比べて特に着火性が異なる噴霧領域が生じない範囲でそれぞれ目標到達距離Xtrgを異ならせても良い。また本実施形態では、燃料噴霧S1と燃料噴霧S2の混合噴霧(予混合気)の外縁と気筒内壁面との間に空気層が形成されるように、目標到達距離Xtrgを設定している。これにより、予混合気を圧縮自着火燃焼させたときの気筒内壁面からの熱損失を低減することができるので、熱効率を向上させることができる。
図9のテーブルに示すように、第1燃料の目標噴射時期W1は、機関負荷が低いときに比べて、高いときの方がTDCよりも進角側に設定される。具体的には第1燃料の目標噴射時期W1は、機関負荷が高くなるほどTDCよりも進角するように設定される。一方で第2燃料の目標噴射時期W2は、本実施形態では機関負荷にかかわらず、第1燃料噴射G1の目標噴射時期W1よりも遅角側の所定の時期に設定される。なお、第2燃料の目標噴射時期W2は必ずしも一定である必要はなく、過早着火や失火が生じない範囲で適宜変更しても良い。
また図10のテーブルに示すように、第2燃料の目標噴射圧Pc2は、機関負荷が低いときに比べて、高いときの方が高くなるように設定される。具体的には第2燃料の目標噴射圧Pc2は、機関負荷が高くなるほど高くなるように設定される。これにより、機関低負荷時には、燃料噴霧S1の外縁を超えて第2燃料が気筒内壁面に向かって拡散するのを抑制できる。また機関高負荷時には、第2燃料が燃焼室11内の中央部に留まってしまうのを抑制できる。
一方で第1燃料の目標噴射圧Pc1は、本実施形態では機関負荷にかかわらず、第2燃料の目標噴射圧Pc2よりも低い所定の噴射圧に設定される。なお、第1燃料の目標噴射圧Pc1は必ずしも一定である必要はないが、可能な限り低い値に設定することが望ましい。第1燃料の目標噴射圧Pc1を高くすると、その分第1サプライポンプ22aを駆動する際の負荷が増大し、その分だけ燃費が悪化するためである。
ステップS5において、電子制御ユニット200は、予め実験等によって作成されたマップを参照し、機関運転状態に基づいて目標過給圧Pbtrgを算出する。
ステップS6において、電子制御ユニット200は、吸気圧センサ214によって検出された実過給圧Pbを読み込む。前述した通り、この実過給圧Pbが、各燃料噴射G1,G2の実施時期における筒内ガス密度ρと相関のあるパラメータであって、実過給圧Pbが高いほど、各燃料噴射G1,G2の実施時期における筒内ガス密度ρもそれぞれ高くなる。
ステップS7において、電子制御ユニット200は、実過給圧Pbと目標過給圧Pbtrgとのズレが許容範囲内であるか否かを判定する。すなわち電子制御ユニット200は、筒内ガス密度ρに起因して生じる各燃料噴霧S1,S2の噴霧到達距離X1,X2の定常時からの変化が許容範囲内であり、燃料噴霧S2の噴霧到達距離X2が、燃料噴霧S1の噴霧到達距離X1よりも長くなり過ぎたり、又は短くなり過ぎたりして、過早着火が生じるおそれが無いか否かを判定する。
具体的には電子制御ユニット200は、実過給圧Pbから目標過給圧Pbtrgを減算した過給圧差分値ΔPbの絶対値が、所定値Per以下か否かを判定する。電子制御ユニット200は、過給圧差分値ΔPbの絶対値が、所定値Per以下であれば、実過給圧Pbと目標過給圧Pbtrgとのズレが許容範囲内であるとして、ステップS8の処理に進む。一方で電子制御ユニット200は、過給圧差分値ΔPbの絶対値が、所定値Perよりも大きければ、実過給圧Pbと目標過給圧Pbtrgとのズレが許容できず、このままでは燃料噴霧S1の噴霧到達距離X1に対して、燃料噴霧S2の噴霧到達距離X2が大きくなり過ぎたり、又は小さくなり過ぎたりして過早着火が生じるおそれがあるとして、ステップS9の処理に進む。
ステップS8において、電子制御ユニット200は、第1燃料供給装置2aを制御して、目標噴射時期W1に目標噴射圧Pc1で燃焼室11内に目標噴射量A1の第1燃料を噴射する。また第2燃料供給装置2bを制御して、目標噴射時期W2に目標噴射圧Pc2で燃焼室11内に目標噴射量A2の第2燃料を噴射する。
ステップS9において、電子制御ユニット200は、図11のテーブルを参照し、過給圧差分値ΔPbに基づいて、第2燃料の目標噴射圧Pc2の第1補正値Pcor1を算出する。
図11のテーブルに示すように、過給圧差分値ΔPbが正の値のとき、すなわち、実過給圧Pbが目標過給圧Pbtrgよりも高いときは、第2燃料の目標噴射圧Pc2の第1補正値Pcor1も正の値となる。そして過給圧差分値ΔPbが大きくなるほど、第2燃料の目標噴射圧Pc2の第1補正値Pcor1も大きくなる。これは、実過給圧Pbが目標過給圧Pbtrgよりも高いときは、筒内ガス密度ρが定常時よりも高くなっているときなので、その分だけ燃料噴霧S2の噴霧到達距離X2は定常時よりも短くなる。そのため、この短くなった距離の分だけ噴霧到達距離X2が長くなるように、第2燃料の目標噴射圧Pc2を定常時よりも高くする必要があるためである。
逆に過給圧差分値ΔPbが負の値のとき、すなわち、実過給圧Pbが目標過給圧Pbtrgよりも低いときは、第2燃料の目標噴射圧Pc2の第1補正値Pcor1も負の値となる。そして過給圧差分値ΔPbが負の方向に大きくなるほど、第2燃料の目標噴射圧Pc2の第1補正値Pcor1も負の方向に大きくなる。これは、実過給圧Pbが目標過給圧Pbtrgよりも低いときは、筒内ガス密度ρが定常時よりも低くなっているときなので、その分だけ燃料噴霧S2の噴霧到達距離X2は定常時よりも長くなる。そのため、この長くなった距離の分だけ噴霧到達距離X2が短くなるように、第2燃料の目標噴射圧Pc2を定常時よりも低くする必要があるためである。
ステップS10において、電子制御ユニット200は、図12のテーブルを参照し、過給圧差分値ΔPbに基づいて、第1燃料の目標噴射時期W1の第1補正値Wcor1[deg.CA]を算出する。
図12のテーブルに示すように、過給圧差分値ΔPbが正の値のとき、すなわち、実過給圧Pbが目標過給圧Pbtrgよりも高いときは、第1燃料の目標噴射時期W1の第1補正値Wcor1は負の値となる。そして過給圧差分値ΔPbが大きくなるほど、目標噴射時期W1の第1補正値Wcor1は負の方向に大きくなる。すなわち第1補正値Wcor1は、過給圧差分値ΔPbが大きくなるほど、目標噴射時期W1が進角するような値に設定される。
これは、実過給圧Pbが目標過給圧Pbtrgよりも高いときは、目標噴射時期W1における筒内ガス密度ρが定常時よりも高くなっているときなので、目標噴射時期W1に第1燃料を噴射すると、筒内ガス密度ρが定常時よりも高くなっている分だけ燃料噴霧S1の噴霧到達距離X1が定常時よりも短くなる。そのため、噴霧到達距離X1が定常時よりも短くなるのを防止するには、目標噴射時期W1を定常時よりも進角させて、筒内ガス密度ρが定常時と同等程度のときに第1燃料を噴射する必要があるためである。
逆に過給圧差分値ΔPbが負の値のとき、すなわち、実過給圧Pbが目標過給圧Pbtrgよりも低いときは、第1燃料の目標噴射時期W1の第1補正値Wcor1は正の値となる。そして過給圧差分値ΔPが負の方向に大きくなるほど、第1燃料の目標噴射時期W1の補正値Wcor1は大きくなる。すなわち第1補正値Wcor1は、過給圧差分値ΔPbが負の方向に大きくなるほど、目標噴射時期W1が遅角するような値に設定される。
これは、実過給圧Pbが目標過給圧Pbtrgよりも低いときは、筒内ガス密度ρが定常時よりも低くなっているときなので、目標噴射時期W1に第1燃料を噴射すると、筒内ガス密度ρが定常時よりも低くなっている分だけ燃料噴霧S1の噴霧到達距離X1が定常時よりも長くなる。そのため、噴霧到達距離X1が定常時よりも長くなるのを防止するには、目標噴射時期W1を定常時よりも遅角させて、筒内ガス密度ρが定常時と同等程度のときに第1燃料を噴射する必要があるためである。
ステップS11において、電子制御ユニット200は、ステップS4で算出した第2燃料の目標噴射圧Pc2を補正する。具体的には電子制御ユニット200は、ステップS4で算出した第2燃料の目標噴射圧Pc2に、第1補正値Pcor1を加算したものを、第2燃料の目標噴射圧Pc2として設定する。ここで図11のテーブルに示すように、第2燃料の目標噴射圧Pc2の第1補正値Pcor1は、実過給圧Pbが目標過給圧Pbtrgよりも高くなるほど、すなわち筒内ガス密度ρが高くなるほど大きくなる。したがって本実施形態では、筒内ガス密度ρが高いときほど、第2燃料の目標噴射圧Pc2が高い値に設定されることになる。
ステップS12において、電子制御ユニット200は、ステップS3で算出した第1燃料の目標噴射時期W1を補正する。具体的には電子制御ユニット200は、ステップS3で算出した第1燃料の目標噴射時期W1に、第1補正値Wcor1を加算したものを、第1燃料の目標噴射時期W1として設定する。ここで図12のテーブルに示すように、第1燃料の目標噴射時期W1の第1補正値Wcor1は、実過給圧Pbが目標過給圧Pbtrgよりも高くなるほど、すなわち筒内ガス密度ρが高くなるほど小さくなる。したがって本実施形態では、筒内ガス密度ρが高いときほど、第1燃料の目標噴射時期W1は進角されることなる。
図13は、本実施形態による燃料噴射制御を実施した場合の、目標自着火時期直前における燃料噴霧S1の形状と燃料噴霧S2の形状とを、機関低負荷時と機関高負荷時とで比較した模式図である。
図13(A)及び図13(B)に示すように、本実施形態による燃料噴射制御を実施し、筒内ガス密度ρを考慮して第1燃料の噴射時期と第2燃料の噴射圧とを制御することで、筒内ガス密度ρが変化したとしても、各燃料噴霧S1,S2の噴霧到達距離X1,X2を同じ距離に制御することができる。そのため、機関負荷にかかわらず、第1燃料噴射G1による燃料噴霧S1内に第2燃料噴射G2による燃料噴霧S2を収めることができる。そしてさらに、燃焼室11内で局所的に着火性の高い部分が生じないように、機関負荷にかかわらず燃料噴霧S1と燃料噴霧S2とを均一に混合させることができる。よって、過早着火の発生を抑制でき、予混合気の自着火時期が目標自着火時期に対してずれるのを抑制することができる。
なお本実施形態では、筒内ガス密度ρに応じて第1燃料の目標噴射時期W1及び第2燃料の目標噴射圧Pc2のそれぞれを補正していたが、少なくとも一方を補正するようにしても良い。なお前述した通り、第2燃料噴射G2は、相対的に筒内ガス密度ρが高いときに実施されることなるため、燃料噴霧S2の噴霧到達距離X2は、特に筒内ガス密度ρの影響を受けやすい。したがって、少なくとも一方を補正する場合は、第2燃料の目標噴射圧Pc2を補正する方が、過早着火の発生を効果的に抑制でき、予混合気の自着火時期が目標自着火時期に対してずれるのを抑制することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、吸気温が変化すると筒内ガス密度ρも変化することから、さらに吸気温を考慮して、第1燃料の噴射時期と第2燃料の噴射圧を制御する点で、第1実施形態と相違する。以下、この相違点を中心に説明する。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、吸気温が変化すると筒内ガス密度ρも変化することから、さらに吸気温を考慮して、第1燃料の噴射時期と第2燃料の噴射圧を制御する点で、第1実施形態と相違する。以下、この相違点を中心に説明する。
各燃料噴射G1,G2の実施時期における筒内ガス密度ρは、実過給圧Pbを或る一定の圧力に制御していたとしても、吸気温に応じて変化する。具体的には、吸気温が高くなるほど、各燃料噴射G1,G2の実施時期における筒内ガス密度ρは低くなる。そのため、吸気温が高くなるほど、各燃料噴霧S1,S2の噴霧到達距離X1,X2は、基本的に長くなる傾向にある。
しかしながら、第1燃料噴射G1の実施時期における筒内ガス密度ρは、第2燃料噴射G2の実施時期における筒内ガス密度ρと比較してもともと低いため、吸気温が変化することによって筒内ガス密度ρが変化したとしても、燃料噴霧S1の噴霧到達距離X1はほとんど変化せず、無視できる程度である。一方で第2燃料噴射G2の実施時期における筒内ガス密度ρは高いため、吸気温が変化することによって筒内ガス密度ρが変化すると、燃料噴霧S2の噴霧到達距離X2も無視できない程度に変化する。
また、各燃料噴射G1,G2の実施時期における筒内温度Tは、吸気温が高くなるほど高くなる。
ここで高オクタン価の第1燃料は、低オクタン価の第2燃料と比較して蒸発しやすい性質を持っている。そのため、高オクタン価の第1燃料は、吸気温が高くなるほど蒸発が促進され、結果として燃料噴霧S1の噴霧到達距離X1が短くなる傾向がある。一方で低オクタン価の第2燃料に関しては、吸気温の上昇による蒸発の影響は少なく、したがって吸気温が高くなっても燃料噴霧S2の噴霧到達距離X2はほとんど変化しない。
そこで本実施形態では、吸気温が高くなるほど、第1燃料の目標噴射時期W1を進角させると共に、第2燃料の目標噴射圧Pc2を低くすることとした。以下、この本実施形態による燃料噴射制御について説明する。
図14は、本実施形態による燃料噴射制御について説明するフローチャートである。電子制御ユニット200は、本ルーチンを機関運転中に所定の演算周期で繰り返し実行する。なお、図14において、ステップS1からステップS5、ステップS7からステップS12までの処理は第1実施形態と同様の処理を実施しているので、ここでは説明を省略する。
ステップS21において、電子制御ユニット200は、吸気圧センサ214によって検出された実過給圧Pbを読み込むと共に、吸気温センサ215によって検出された実吸気温Tbを読み込む。
ステップS22において、電子制御ユニット200は、実吸気温Tbと目標吸気温Tbtrg(本実施形態では一定値)とのズレが許容範囲内であるか否かを判定する。すなわち電子制御ユニット200は、吸気温の変化に起因して生じる各燃料噴霧S1,S2の噴霧到達距離X1,X2の変化が許容範囲内であり、燃料噴霧S2の噴霧到達距離X2が、燃料噴霧S1の噴霧到達距離X1よりも長くなり過ぎたり、又は短くなり過ぎたりして、過早着火が生じるおそれが無いか否かを判定する。
具体的には電子制御ユニット200は、実吸気温Tbから目標吸気温Tbtrgを減算して吸気温差分値ΔTbの絶対値が、所定値Ter以下か否かを判定する。電子制御ユニット200は、吸気温差分値ΔTbの絶対値が所定値Ter以下であれば、実吸気温Tbと目標吸気温Tbtrgとのズレが許容範囲内であるとして、ステップS8の処理に進む。一方で電子制御ユニット200は、吸気温差分値ΔTbの絶対値が、所定値Terよりも大きければ、実吸気温Tbと目標吸気温Tbtrgとのズレが許容できず、このままでは燃料噴霧S1の噴霧到達距離X1に対して、燃料噴霧S2の噴霧到達距離X2が大きくなり過ぎたり、又は小さくなり過ぎたりして過早着火が生じるおそれがあるとして、ステップS23の処理に進む。
ステップS23において、電子制御ユニット200は、図15のテーブルを参照し、吸気温差分値ΔTbに基づいて、第2燃料の目標噴射圧Pc2の第2補正値Pcor2[MPa]を算出する。なお図14のテーブルに示すように、第2燃料の目標噴射圧Pc2の第2補正値Pcor2は、第1補正値Pcor1よりもその絶対値は小さい値となる。
図15のテーブルに示すように、吸気温差分値ΔTbが正の値のとき、すなわち、実吸気温Tbが目標吸気温Tbtrgよりも高いときは、第2燃料の目標噴射圧Pc2の第2補正値Pcor2は負の値となる。そして吸気温差分値ΔTbが大きくなるほど、第2燃料の目標噴射圧Pc2の第2補正値Pcor2は負の方向に大きくなる。これは、実吸気温Tbが目標吸気温Tbtrgよりも高いときは、筒内ガス密度ρが通常時(実吸気温Tbが目標吸気温Tbtrgとなっているとき)よりも低くなっているときなので、その分だけ燃料噴霧S2の噴霧到達距離X2は定常時よりも長くなる。そのため、この長くなった距離の分だけ噴霧到達距離X2が短くなるように、第2燃料の目標噴射圧Pc2を低くする必要があるためである。
逆に吸気温差分値ΔTbが負の値のとき、すなわち、実吸気温Tbが目標吸気温Tbtrgよりも低いときは、第2燃料の目標噴射圧Pc2の第2補正値Pcor2は正の値となる。そして吸気温差分値ΔTbが負の方向に大きくなるほど、第2燃料の目標噴射圧Pc2の第2補正値Pcor2は大きくなる。これは、実吸気温Tbが目標吸気温Tbtrgよりも低いときは、筒内ガス密度ρが通常時よりも高くなっているときなので、その分だけ燃料噴霧S2の噴霧到達距離X2は通常時よりも短くなる。そのため、この短くなった距離の分だけ噴霧到達距離X2が長くなるように、第2燃料の目標噴射圧Pc2を高くする必要があるためである。
ステップS24において、電子制御ユニット200は、図16のテーブルを参照し、吸気温差分値ΔTbに基づいて、第1燃料の目標噴射時期W1の第2補正値Wcor2[deg.CA]を算出する。なお図15のテーブルに示すように、第1燃料の目標噴射時期W1の第2補正値Wcor2は、第1補正値Wcor1よりもその絶対値は小さい値となる。
図16のテーブルに示すように、吸気温差分値ΔTbが正の値のとき、すなわち、実吸気温Tbが目標吸気温Tbtrgよりも高いときは、第2燃料の目標噴射時期W1の第2補正値Wcor2は負の値となる。そして吸気温差分値ΔTbが大きくなるほど、目標噴射時期W1の第2補正値Wcor2は負の方向に大きくなる。すなわち第2補正値Wcor2は、吸気温差分値ΔTbが大きくなるほど、目標噴射時期W1が進角するような値に設定される。
これは、実吸気温Tbが目標吸気温Tbtrgよりも高いときは、目標噴射時期W1における筒内温度Tが通常時よりも高くなっているときなので、目標噴射時期W1に第1燃料を噴射すると、第1燃料の蒸発が促進されて燃料噴霧S1の噴霧到達距離X1が通常時よりも短くなる。そのため、噴霧到達距離X1が通常時よりも短くなるのを防止するには、目標噴射時期W1を通常時よりも進角させて、筒内温度Tが通常時と同等程度のときに第1燃料を噴射する必要があるためである。
逆に吸気温差分値ΔTbが負の値のとき、すなわち、実吸気温Tbが目標吸気温Tbtrgよりも低いときは、第1燃料の目標噴射時期W1の第2補正値Wcor2は正の値となる。そして吸気温差分値ΔTbが負の方向に大きくなるほど、第2補正値Wcor2は大きくなる。すなわち第1燃料の目標噴射時期W1の第2補正値Wcor2は、吸気温差分値ΔTbが負の方向に大きくなるほど、目標噴射時期W1が遅角するような値に設定される。
これは、実吸気温Tbが目標吸気温Tbtrgよりも低いときは、目標噴射時期W1における筒内温度Tが通常時よりも低くなっているときなので、第1燃料が蒸発しにくく、燃料噴霧S1の噴霧到達距離X1が通常時よりも長くなる。そのため、噴霧到達距離X1が通常時よりも長くなるのを防止するには、目標噴射時期W1を通常時よりも遅角させて、筒内温度Tが通常時と同等程度のときに第1燃料を噴射する必要があるためである。
ステップS25において、電子制御ユニット200は、ステップS4で算出した第2燃料の目標噴射圧Pc2を補正する。具体的には電子制御ユニット200は、ステップS4で算出した第2燃料の目標噴射圧Pc2に、第2補正値Pcor2を加算したものを、第2燃料の目標噴射圧Pc2として設定する。ここで図15のテーブルに示すように、第2燃料の目標噴射圧Pc2の第2補正値Pcor2は、実吸気温Tbが目標吸気温Tbtrgよりも低くなるほど(吸気温差分値ΔTbが負の方向に大きくなるほど)、すなわち筒内ガス密度ρが高くなるほど大きくなる。したがって本実施形態においても、筒内ガス密度ρが高いときほど、第2燃料の目標噴射圧Pc2が高い値に設定されることになる。
ステップS26において、電子制御ユニット200は、ステップS3で算出した第1燃料の目標噴射時期W1を補正する。具体的には電子制御ユニット200は、ステップS3で算出した第1燃料の目標噴射時期W1に、第2補正値Wcor2を加算したものを、第1燃料の目標噴射時期W1として設定する。ここで図16のテーブルに示すように、第1燃料の目標噴射時期W1の第2補正値Wcor2は、実吸気温Tbが目標吸気温Tbtrgよりも低くなるほど(吸気温差分値ΔTbが負の方向に大きくなるほど)、すなわち筒内ガス密度ρが高くなるほど小さくなる。したがって本実施形態では、筒内ガス密度ρが高いときほど、第1燃料の目標噴射時期W1は進角されることなる。
ステップS27において、電子制御ユニット200は、前述したステップS22と同様の処理を実施する。
ステップS28において、電子制御ユニット200は、前述したステップS23と同様の処理を実施する。
ステップS29において、電子制御ユニット200は、前述したステップS24と同様の処理を実施する。
ステップS30において、電子制御ユニット200は、ステップS4で算出した第2燃料の目標噴射圧Pc2を補正する。具体的には電子制御ユニット200は、ステップS4で算出した第2燃料の目標噴射圧Pc2に、第1補正値Pcor1、及び第2補正値Pcor2を加算したものを、第2燃料の目標噴射圧Pc2として設定する。
ステップS31において、電子制御ユニット200は、ステップS3で算出した第1燃料の目標噴射時期W1を補正する。具体的には電子制御ユニット200は、ステップS3で算出した第1燃料の目標噴射時期W1に、第1補正値Wcor1、及び第2補正値Wcor2を加算したものを、第1燃料の目標噴射時期W1として設定する。
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られる他、さらに吸気温を考慮して、第1燃料の噴射時期と第2燃料の噴射圧とが制御されるため、過早着火の発生を一層効果的に抑制でき、予混合気の自着火時期が目標自着火時期に対してずれるのを抑制することができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、第2燃料の目標噴射圧Pc2の設定方法が、前述した各実施形態と相違する。以下、この相違点を中心に説明する。
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、第2燃料の目標噴射圧Pc2の設定方法が、前述した各実施形態と相違する。以下、この相違点を中心に説明する。
前述した第1及び第2実施形態では、機関負荷に応じて算出した第2燃料の目標噴射圧Pc2に対して、筒内ガス密度ρを考慮した補正を施すことで、燃料噴霧S1の噴霧到達距離X1と、燃料噴霧S2の噴霧到達距離X2と、が概ね同じ程度になるようにしていた。これに対して本実施形態では、筒内ガス密度ρを考慮した第2燃料の目標噴射圧Pc2を、補正を施すことなく直接的に算出する。以下、この本実施形態による燃料噴射制御について説明する。
図17は、本実施形態による燃料噴射制御について説明するフローチャートである。電子制御ユニット200は、本ルーチンを機関運転中に所定の演算周期で繰り返し実行する。なお、図16において、ステップS1からステップS3、ステップS5からステップS7、ステップS11、及びステップS12の処理は第1実施形態と同様の処理を実施しているので、ここでは説明を省略する。
ステップS41において、電子制御ユニット200は、第1燃料の目標噴射圧Pc1を決定する。本実施形態においても前述した第1実施形態と同様に、第1燃料の目標噴射圧Pc1は、機関負荷にかかわらず第2燃料の目標噴射圧Pc2よりも低い所定の噴射圧に設定される。
ステップS42において、電子制御ユニット200は、第2燃料の目標噴射圧Pc2の算出処理を実施する。第2燃料の目標噴射圧Pc2の算出処理については、図18を参照して説明する。
図18は、第2燃料の目標噴射圧Pc2の算出処理について説明するフローチャートである。
ステップS421において、電子制御ユニット200は、吸気圧センサ214によって検出された実過給圧Pbを読み込むと共に、吸気温センサ215によって検出された実吸気温Tbを読み込む。
ステップS422において、電子制御ユニット200は、下記の(1)式に基づいて、吸気弁閉弁時期における筒内ガス量Gcylを算出する。なお(1)式において、V1は吸気弁閉弁時期における筒内体積であり、Rは気体定数である。
Gcyl=(Pb・V1)/(R・Tb) …(1)
Gcyl=(Pb・V1)/(R・Tb) …(1)
なお本実施形態では、マップ等を参照して機関運転状態に基づいて吸気弁閉時期を算出し、同じくマップ等を参照して吸気弁閉時期に基づいて筒内体積V1を算出している。また本実施形態では、上記の(1)式に基づいて筒内ガス量Gcylを算出しているが、その算出方法がこれに限られるものではない。例えばエアフローメータ212によって検出された空気量や、EGR率などから算出するようにしてもよい。
ステップS423において、電子制御ユニット200は、下記の(2)式に基づいて、第2燃料の目標噴射時期W2における筒内ガス密度ρLを算出する。なお(2)式において、V2は、第2燃料の目標噴射時期W2における筒内体積である。なお本実施形態では、マップ等を参照して第2燃料の目標噴射時期W2に基づいて筒内体積V2を算出している。
ρL=Gcyl/V2 …(2)
ρL=Gcyl/V2 …(2)
ステップS424において、電子制御ユニット200は、以下のようにして、筒内ガス密度ρLに基づいて後述する目標差圧ΔPtを算出する。
燃料噴霧の噴霧到達距離Xは、燃料噴射弁の噴射圧から筒内圧力を減算した差圧をΔPとすると、下記の(3)式に示すように、差圧ΔPの0.25乗に比例し、筒内ガス密度ρの−0.25乗に比例することが知られている。
X∝(ΔP/ρ)0.25 …(3)
X∝(ΔP/ρ)0.25 …(3)
そこで本実施形態では、筒内ガス密度ρがステップS423で算出した筒内ガス密度ρLのときに、燃料噴霧S2の噴霧到達距離X2が機関負荷に応じた目標到達距離Xtrgとなる目標差圧ΔPtを、(3)式に基づいて予め実験等によって算出し、図19に示す筒内ガス密度ρLと目標差圧ΔPtとを関連付けたテーブルを予め作成している。そして電子制御ユニット200にこのテーブルを記憶させておくことで、当該テーブルを参照して筒内ガス密度ρLに基づいて目標差圧ΔPtを算出できるようにしている。
ステップS425において、電子制御ユニット200は、予め実験等によって作成したマップを参照し、機関運転状態に基づいて、第2燃料の目標噴射時期W2における筒内圧力Pcylを算出する。
ステップS426において、電子制御ユニット200は、第2燃料の目標噴射時期W2における筒内圧力Pcylに、目標差圧ΔPを加算することで、燃料噴霧S2の噴霧到達距離X2が機関負荷に応じた目標到達距離Xtrgとなる第2燃料の目標噴射圧Pc2を算出する。ここで図17のテーブルに示すように、筒内ガス密度ρLが高くなるほど、目標差圧ΔPも高くなる。したがって、第2燃料の目標噴射圧Pc2も、筒内ガス密度ρLが高くなるほど高くなることになる。
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られる他、第2燃料の目標噴射圧Pc2を直接的に算出することができるので、第1実施形態等と比較して電子制御ユニット200に記憶させておくマップ等の数を少なくすることができる。そのため、実験工数や電子制御ユニット200の記憶容量を下げることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
例えば上記の実施形態では、2つの独立した第1燃料供給装置2a及び第2燃料供給装置2bを備えていたが、2つの異なる燃料を噴射できるように一体化した1つの燃料供給装置を備えたものでも良い。
1 機関本体
11 燃焼室
2 燃料供給装置
100 内燃機関
200 電子制御ユニット(制御装置)
11 燃焼室
2 燃料供給装置
100 内燃機関
200 電子制御ユニット(制御装置)
Claims (1)
- 機関本体と、
前記機関本体の燃焼室内に第1燃料を噴射することができるように構成されると共に、前記燃焼室内に前記第1燃料よりもオクタン価の低い第2燃料を、噴射圧を変更して噴射することができるように構成された燃料供給装置と、
を備える内燃機関を制御するための内燃機関の制御装置であって、
前記燃焼室内に噴射された前記第1燃料及び前記第2燃料の混合噴霧のオクタン価及び噴霧到達距離が、機関負荷に応じた目標オクタン価及び目標到達距離となるように、前記第1燃料の噴射後に前記第2燃料を噴射する燃料噴射制御部を備え、
前記燃料噴射制御部は、
前記燃焼室内のガス密度が高いときほど、前記第2燃料の噴射圧を高くする、
内燃機関の制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017015724A JP2018123737A (ja) | 2017-01-31 | 2017-01-31 | 内燃機関の制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2017015724A JP2018123737A (ja) | 2017-01-31 | 2017-01-31 | 内燃機関の制御装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2018123737A true JP2018123737A (ja) | 2018-08-09 |
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ID=63110144
Family Applications (1)
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JP2017015724A Pending JP2018123737A (ja) | 2017-01-31 | 2017-01-31 | 内燃機関の制御装置 |
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Country | Link |
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-
2017
- 2017-01-31 JP JP2017015724A patent/JP2018123737A/ja active Pending
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