JP2018123275A - 細胞接着防止剤 - Google Patents

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清 須田
Kiyoshi Suda
清 須田
良介 飯沼
Ryosuke Iinuma
良介 飯沼
和弘 一久
Kazuhiro Ikkyu
和弘 一久
翔一 加藤
Shoichi Kato
翔一 加藤
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Abstract

【課題】細胞毒性が低く、且つ、優れた細胞接着防止効果を有する細胞接着防止剤、これを用いて表面が改質された器具および装置、該器具および装置の製造方法、生体内医療構造体およびその製造方法、マイクロ流路デバイスおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】下記繰り返し単位(A):2.5〜95質量%と、下記繰り返し単位(B):5〜97.5質量%とを有する共重合体を含有する、細胞接着防止剤。
(A)親水性繰り返し単位
(B)側鎖が少なくとも1個のアルド基またはケト基を有する炭素数4〜12の有機基から構成される繰り返し単位
【選択図】なし

Description

本発明は、細胞接着防止剤、これを用いて表面が改質された器具および装置、該器具および装置の製造方法、生体内医療構造体およびその製造方法、マイクロ流路デバイスおよびその製造方法に関する。
マクロファージや繊維芽細胞のような接着細胞は、表面や基材に付着した場合にのみ活性となり増殖するため、足場依存性細胞と呼ばれる。この細胞による接着は、細胞外マトリクス中に見出されるビトロネクチンやフィブロネクチン等のタンパク質のファミリー(付着分子やタンパク質)を介して引き起こされる。この細胞の接着が、医療をはじめとする種々の分野で問題となっている。
例えば、培地に添加した繊維芽細胞は、細胞外マトリクスタンパク質を介して組織培養プレートに付着する。これと同様に、泌尿器用カテーテル中では、細菌細胞がカテーテル壁に付着し、動脈カテーテル中では、血小板がカテーテルの先端に付着し、更に、コンタクトレンズではタンパク質を介して細胞がレンズ表面を覆う状態となる。特に、医療用器具や装置等において斯様な細胞接着が生じた場合、それが単に汚れとなるばかりでなく、目詰まりや分析の精度や感度の低下が生じるため大きな問題となる。
そのため、容器へのマウス線維芽細胞の非特異的な接着を防ぐための技術として、2−メタクリロイルホスホリルコリンおよびメタクリロイルヒドラジド等から誘導されるポリマーでのコーティングが提案されている(特許文献1)。
また、タンパク質吸着防止剤として、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸メチルまたはスチレンとの共重合体等を含むものが知られている(特許文献2)。
ところで、生体組織が損傷を受けた場合に、損傷を受けた組織同士や損傷を受けた組織と他の生体組織との間で癒着が生じ、種々の機能不全を起こすことがあり、この癒着を防止するための癒着防止膜を形成するものとして、例えば、ヒト由来の天然コラーゲン膜からなる癒着防止材(特許文献3)、特定のヒアルロン酸化合物からなる癒着防止材(特許文献4)、ポリアニオン性物質とポリカチオン性物質から形成されるポリイオンコンプレックスの乾燥フィルムからなる癒着防止用材料(特許文献5)が知られている。
また、マイクロ流路の水に対する濡れ性を改善し、マイクロポンプ中の薬液の残留を防ぎ、定量精度又は検出精度を安定させることを目的として、マイクロ流路の金属層表面に、末端基に親水性基を有する硫黄化合物層を形成することが提案されている(特許文献6)。また、マイクロ流路内壁をフッ素系樹脂等で表面修飾すること(特許文献7)や、ポリエチレングリコール、エバール、ポバール、またはホスホリルコリン基を有するポリマーで表面コート処理すること(特許文献8)が提案されている。
特開2005−080579号公報 特開平07−083923号公報 特開平9−225018号公報 特開2006−296916号公報 特開2000−116765号公報 特開2001−252896号公報 特開2005−125280号公報 特開2008−82961号公報
本発明は、細胞毒性が低く、且つ、優れた細胞接着防止効果を有する細胞接着防止剤、これを用いて表面が改質された器具および装置、該器具および装置の製造方法、生体内医療構造体およびその製造方法、マイクロ流路デバイスおよびその製造方法を提供することに関する。
そこで、本発明者は鋭意検討した結果、特定の組成の共重合体が、細胞毒性が低く、且つ、優れた細胞接着防止効果を示すことを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の〔1〕〜〔16〕を提供するものである。
〔1〕 下記繰り返し単位(A):2.5〜95質量%と、下記繰り返し単位(B):5〜97.5質量%とを有する共重合体を含有する、細胞接着防止剤。
(A)親水性繰り返し単位
(B)側鎖が少なくとも1個のアルド基またはケト基を有する炭素数4〜12の有機基から構成される繰り返し単位
〔2〕 繰り返し単位(A)が、下記式(1)で表される繰り返し単位、下記式(2)で表される繰り返し単位、下記式(3)で表される繰り返し単位、下記式(4)で表されるベタイン性繰り返し単位、アニオン性繰り返し単位、下記式(5)で表されるカチオン性繰り返し単位、および下記式(6)で表されるベタイン性繰り返し単位から選ばれる1種以上である〔1〕に記載の細胞接着防止剤。
〔式(1)中、
1は、水素原子またはメチル基を示し、
2およびR3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基またはヒドロキシアルキル基を示す。〕
〔式(2)中、
4は、水素原子またはメチル基を示し、
5およびR6は、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルカンジイル基を示す。〕
〔式(3)中、
7は、炭素数1〜5のアルカンジイル基を示す。〕
〔式(4)中、
Yは、−(C=O)O、−(O=S=O)O、−O(O=S=O)O、−(S=O)O、−O(S=O)O、−OP(=O)(OR13)O、−OP(=O)(R13)O、−P(=O)(OR13)O、または−P(=O)(R13)Oを示し(R13は炭素数1〜3のアルキル基を示す)、
8は、水素原子またはメチル基を示し、
9およびR12は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の2価の有機基を示し、
10およびR11は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の炭化水素基を示す。〕
〔式(5)中、
14は、水素原子又はメチル基を示し、
15は、−O−、*−(C=O)−O−、*−(C=O)−NR20−、*−NR20−(C=O)−(R20は、水素原子または炭素数1〜10の有機基を示し、*は、式(5)中のR14が結合している炭素原子と結合する位置を示す)またはフェニレン基を示し、
16は、炭素数1〜10の2価の有機基を示し、
17、R18およびR19は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の炭化水素基を示す。〕
〔式(6)中、
は、水素原子またはメチル基を示し、
は、炭素数2〜4のアルカンジイル基を示し、
は、炭素数1〜10のアルカンジイル基を示し、
、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を示し、
qは、平均値で1〜10を示す。〕
〔3〕 繰り返し単位(B)が、下記式(7)で表されるものである〔1〕又は〔2〕に記載の細胞接着防止剤。
〔式(7)中、
21は、水素原子またはメチル基を示し、
Zは、少なくとも1個のアルド基またはケト基を有する炭素数4〜12の有機基を示す。〕
〔4〕 繰り返し単位(B)が、下記式(8)で表されるものである〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の細胞接着防止剤。
〔式(8)中、
22は、水素原子またはメチル基を示し、
23は、酸素原子またはNHを示し、
24は、少なくとも1個のアルド基またはケト基を有する炭素数3〜10の有機基を示す。〕
〔5〕 〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の共重合体を、表面の少なくとも一部に有する、表面が改質された器具。
〔6〕 前記器具が、フローサイトメーターのマイクロ流路デバイス、キュベット、細胞培養基材、細胞スフェロイドアレイ、細胞分離カラム、マイクロウェルプレート、マイクロチャネルチップ、マイクロウェルアレイチップ、アッセイチップ、バイオチップ、磁気ビーズ、全自動分析機用測定セル、又はプラスチック若しくはガラス基材である、〔5〕に記載の器具。
〔7〕 〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の共重合体を、器具表面の少なくとも一部にコーティングする工程を含むことを特徴とする、表面が改質された器具の製造方法。
〔8〕 前記器具が、フローサイトメーターのマイクロ流路デバイス、キュベット、細胞培養基材、細胞スフェロイドアレイ、細胞分離カラム、マイクロウェルプレート、マイクロチャネルチップ、マイクロウェルアレイチップ、アッセイチップ、バイオチップ、磁気ビーズ、全自動分析機用測定セル、又はプラスチック若しくはガラス基材である、〔7〕に記載の製造方法。
〔9〕 〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の共重合体を、表面の少なくとも一部に有する、表面が改質された装置。
〔10〕 前記装置が、フローサイトメーターである、〔9〕に記載の装置。
〔11〕 〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の共重合体を、装置表面の少なくとも一部にコーティングする工程を含むことを特徴とする、表面が改質された装置の製造方法。
〔12〕 前記装置が、フローサイトメーターである、〔11〕に記載の製造方法。
〔13〕 〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の共重合体を、表面の少なくとも一部に有する、生体内医療構造体。
〔14〕 〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の共重合体を、構造体表面の少なくとも一部にコーティングする工程を含むことを特徴とする、生体内医療構造体の製造方法。
〔15〕 〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の共重合体を、マイクロ流路内表面の少なくとも一部に有するマイクロ流路デバイス。
〔16〕 〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の共重合体を、マイクロ流路内表面の少なくとも一部にコーティングする工程を含むことを特徴とする、マイクロ流路デバイスの製造方法。
本発明の細胞接着防止剤は、細胞毒性が低く、且つ、優れた細胞接着防止効果を示す。
本発明の器具、装置は、使用するときに細胞が死滅しにくく、且つ、細胞が接着しにくい、表面が改質されたものである。したがって、本発明の器具の製造方法、装置の製造方法によれば、使用するときに細胞が死滅しにくく、且つ、細胞が接着しにくい、表面が改質された器具および装置を製造できる。
本発明の生体内医療構造体は、生体組織が表面に付着しにくく、且つ生体組織に対する影響が低い。したがって、本発明の生体内医療構造体の製造方法によれば、生体組織が表面に付着しにくく、且つ生体組織に対する影響が低い生体内医療構造体を製造できる。
本発明のマイクロ流路デバイスは、マイクロ流路内表面に生体試料が付着しにくく、且つ生体試料に対する影響が低い。したがって、本発明のマイクロ流路デバイスの製造方法によれば、マイクロ流路内表面に生体試料が付着しにくく、且つ生体試料に対する影響が低いマイクロ流路デバイスを製造できる。
(共)重合体(N−1)〜(N−7)、(X−1)、(X−2)、並びにN101及びN102の細胞接着防止効果を示す図である。 (共)重合体(N−1)〜(N−7)、(X−1)、(X−2)、並びにN101及びN102の細胞接着防止効果を示す図である。 (共)重合体(N−1)〜(N−7)、(X−1)、(X−2)、並びにN101及びN102の細胞接着防止効果を示す図である。 (共)重合体(N−1)〜(N−7)、(X−1)、(X−2)、並びにN101及びN102の低毒性を示す図である。 (共)重合体(N−1)〜(N−7)、(X−1)、(X−2)、並びにN101及びN102の低毒性を示す図である。 (共)重合体(N−1)〜(N−7)、(X−1)、(X−2)、並びにN101及びN102の低毒性を示す図である。 (共)重合体(N−1)〜(N−7)、(X−1)、(X−2)、並びにN101及びN102の低毒性を示す図である。
<細胞接着防止剤>
本発明の細胞接着防止剤は、下記繰り返し単位(A):2.5〜95質量%と、下記繰り返し単位(B):5〜97.5質量%とを有する共重合体(以下、特定共重合体とも称する)を含有する。
(A)親水性繰り返し単位
(B)側鎖が少なくとも1個のアルド基またはケト基を有する炭素数4〜12の有機基から構成される繰り返し単位
(繰り返し単位(A))
繰り返し単位(A)は、親水性繰り返し単位であればよいが、上記式(1)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位(A−1)とも称する)、上記式(2)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位(A−2)とも称する)、上記式(3)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位(A−3)とも称する)、上記式(4)で表されるベタイン性繰り返し単位(以下、繰り返し単位(A−4)とも称する)、アニオン性繰り返し単位(以下、繰り返し単位(A−5)とも称する)、上記式(5)で表されるカチオン性繰り返し単位(以下、繰り返し単位(A−6)とも称する)、および上記式(6)で表されるベタイン性繰り返し単位(以下、繰り返し単位(A−7)とも称する)から選ばれる1種以上であるのが好ましい。
なお、本明細書において、親水性とは、水との親和力が強い性質を持つことを意味する。具体的には1種の繰り返し単位のみからなるホモポリマー(実施例の測定法による数平均分子量が1万程度のもの)とした場合に、常温(25℃)において純水100gに対して1g以上溶解する場合にはその繰り返し単位は親水性である。
(繰り返し単位(A−1))
繰り返し単位(A−1)は、下記式(1)で表されるものである。
〔式(1)中、
1は、水素原子またはメチル基を示し、
2およびR3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基またはヒドロキシアルキル基を示す。〕
式(1)中、R2、R3で示されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜3である。
また、上記R2、R3で示されるアルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。
また、R2、R3で示されるヒドロキシアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜3である。ヒドロキシアルキル基に含まれるアルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、ヒドロキシアルキル基の好適な具体例としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシイソプロピル基が挙げられる。なお、ヒドロキシアルキル基におけるヒドロキシ基の置換位置は任意である。
斯様な繰り返し単位(A−1)を誘導するモノマーとしては、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、繰り返し単位(A−1)は、これらを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いたものでもよい。
(繰り返し単位(A−2))
繰り返し単位(A−2)は、下記式(2)で表されるものである。
〔式(2)中、
4は、水素原子またはメチル基を示し、
5およびR6は、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルカンジイル基を示す。〕
式(2)中、R5およびR6で示されるアルカンジイル基の炭素数は、好ましくは1〜2である。
また、上記アルカンジイル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよいが、直鎖状が好ましい。好適な具体例としては、メタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基が挙げられる。
斯様な繰り返し単位(A−2)を誘導するモノマーとしては、4−(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
(繰り返し単位(A−3))
繰り返し単位(A−3)は、下記式(3)で表されるものである。
〔式(3)中、
7は、炭素数1〜5のアルカンジイル基を示す。〕
式(3)中、R7で示されるアルカンジイル基の炭素数は、好ましくは3〜5である。
また、上記アルカンジイル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよいが、直鎖状が好ましい。好適な具体例としては、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基が挙げられる。
斯様な繰り返し単位(A−3)を誘導するモノマーとしては、1−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−ε−カプロラクタム等が挙げられ、繰り返し単位(A−3)は、これらを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いたものでもよい。
(繰り返し単位(A−4))
繰り返し単位(A−4)は、下記式(4)で表されるベタイン性繰り返し単位である。
〔式(4)中、
Yは、−(C=O)O、−(O=S=O)O、−O(O=S=O)O、−(S=O)O、−O(S=O)O、−OP(=O)(OR13)O、−OP(=O)(R13)O、−P(=O)(OR13)O、または−P(=O)(R13)Oを示し(R13は炭素数1〜3のアルキル基を示す)、
8は、水素原子またはメチル基を示し、
9およびR12は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の2価の有機基を示し、
10およびR11は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の炭化水素基を示す。〕
式(4)中、Yとしては、−(C=O)Oが好ましい。なお、R13で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。
また、式(4)中、R9およびR12は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の2価の有機基を示す。斯かる2価の有機基の炭素数は、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜6である。
また、上記2価の有機基としては、2価の炭化水素基が好ましく、2価の脂肪族炭化水素基がより好ましい。当該2価の脂肪族炭化水素基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。また、2価の脂肪族炭化水素基としては、アルカンジイル基が好ましい。例えば、メタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基等が挙げられる。
また、式(4)中、R10およびR11は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の炭化水素基を示す。当該炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4である。
10およびR11で示される炭化水素基としては、アルキル基;フェニル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基が挙げられるが、アルキル基が好ましい。当該アルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
斯様な繰り返し単位(A−4)を誘導するモノマーとしては、N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−プロピルスルホベタイン等の(メタ)アクリレート系モノマー等が挙げられ、繰り返し単位(A−4)は、これらを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いたものでもよい。
(繰り返し単位(A−5))
繰り返し単位(A−5)は、アニオン性繰り返し単位である。
繰り返し単位(A−5)としては、酸性基を有する繰り返し単位が挙げられる。
また、繰り返し単位(A−5)としては、導入の容易さ、安全性の観点から、エチレン性不飽和結合を含有するモノマーに由来する単位が好ましい。
また、酸性基としては、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基又はこれらの塩などが挙げられ、これらを1個有していてもよく、2個以上有していてもよい。なお、塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;有機アンモニウム塩等が挙げられる。
繰り返し単位(A−5)を誘導するモノマーとしては、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその塩;(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸又はその塩;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホ基含有重合性不飽和モノマー又はその塩;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等のリン酸基含有重合性不飽和モノマー又はその塩が挙げられる。また、繰り返し単位(A−5)を誘導するモノマーは、アクリル酸エステルの加水分解物;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸の酸無水物の加水分解物;グリシジルメタクリレートや(4−ビニルベンジル)グリシジルエーテル等のエポキシ基への酸性基含有チオールの付加物などを用いて得ることもできる。繰り返し単位(A−5)は、これらを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いたものでもよい。
これらの中では、導入の容易さ、反応性の観点から、アクリル酸、メタアクリル酸が好ましい。
(繰り返し単位(A−6))
繰り返し単位(A−6)は、下記式(5)で表されるカチオン性繰り返し単位である。
〔式(5)中、
14は、水素原子又はメチル基を示し、
15は、−O−、*−(C=O)−O−、*−(C=O)−NR20−、*−NR20−(C=O)−(R20は、水素原子または炭素数1〜10の有機基を示し、*は、式(5)中のR14が結合している炭素原子と結合する位置を示す)またはフェニレン基を示し、
16は、炭素数1〜10の2価の有機基を示し、
17、R18およびR19は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の炭化水素基を示す。〕
式(5)中、R15は、−O−、*−(C=O)−O−、*−(C=O)−NR20−、*−NR20−(C=O)−またはフェニレン基を示す。斯かるフェニレン基としては、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基が挙げられる。
また、上記R20で示される有機基の炭素数は1〜10であるが、好ましくは1〜6である。上記有機基としては、炭化水素基が挙げられる。斯かる炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基および芳香族炭化水素基を包含する概念である。
上記R20における脂肪族炭化水素基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基が挙げられる。
また、上記脂環式炭化水素基は、単環の脂環式炭化水素基と橋かけ環炭化水素基に大別される。上記単環の脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。また、橋かけ環炭化水素基としては、イソボルニル基等が挙げられる。
また、上記芳香族炭化水素基としては、フェニル基等のアリール基が挙げられる。
式(5)中、R16は、炭素数1〜10の2価の有機基を示す。斯かる2価の有機基の炭素数は、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜6である。
また、上記2価の有機基としては、2価の炭化水素基が好ましく、2価の脂肪族炭化水素基がより好ましい。当該2価の脂肪族炭化水素基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。また、2価の脂肪族炭化水素基としては、アルカンジイル基が好ましい。例えば、メタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基等が挙げられる。
式(5)中、R17、R18およびR19は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の炭化水素基を示す。当該炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4である。
17、R18およびR19で示される炭化水素基としては、アルキル基;フェニル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基が挙げられるが、アルキル基が好ましい。当該アルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
なお、繰り返し単位(A−6)は対イオンを有していてもよい。対イオンとしては、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲノイオン;硫酸水素イオン;メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン等のアルキル硫酸イオン;アルキルスルホン酸イオン;ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン等のアリールスルホン酸イオン;2−メチル−2−プロペン−1−スルホン酸ナトリウム等のアルケニルスルホン酸イオン;酢酸イオン等のカルボン酸イオン等が挙げられる。
繰り返し単位(A−6)を誘導するモノマーのモノマー種の好適な具体例としては、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。
(メタ)アクリレート類のモノマー種としては、((メタ)アクリロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウムクロライド等の((メタ)アクリロイルオキシC1−10アルキル)トリC1−10アルキルアンモニウムクロライド、((メタ)アクリロイルオキシエチル)ジメチルベンジルアンモニウムクロライド等の((メタ)アクリロイルオキシC1−10アルキル)ジC1−10アルキルC6−10アラルキルアンモニウムクロライドが挙げられる。(メタ)アクリルアミド類のモノマー種としては、(3−(メタ)アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド等の(3−(メタ)アクリルアミドC1−10アルキル)トリC1−10アルキルアンモニウムクロリド、(3−(メタ)アクリルアミドプロピル)ジメチルベンジルアンモニウムクロリド等の(3−(メタ)アクリルアミドC1−10アルキル)ジC1−10アルキルC6−10アラルキルアンモニウムクロリド等が挙げられる。繰り返し単位(A−6)は、これらを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いたものでもよい。
これらの中では、導入の容易さ、反応性の観点から、(3−(メタ)アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリドが好ましい。
(繰り返し単位(A−7))
繰り返し単位(A−7)は、下記式(6)で表されるベタイン性繰り返し単位である。
〔式(6)中、
は、水素原子またはメチル基を示し、
は、炭素数2〜4のアルカンジイル基を示し、
は、炭素数1〜10のアルカンジイル基を示し、
、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を示し、
qは、平均値で1〜10を示す。〕
式(6)中、Rは、炭素数2〜4のアルカンジイル基を示す。なお、Rが複数ある場合、Rは同一でも異なっていてもよい。
また、Rで示されるアルカンジイル基の炭素数は、好ましくは2または3であり、より好ましくは2である。
また、Rで示されるアルカンジイル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、具体的には、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基等が挙げられる。これらの中でも、入手容易性、親水性付与等の観点から、エタン−1,2−ジイル基が好ましい。
また、Rは、炭素数1〜10のアルカンジイル基を示す。
で示されるアルカンジイル基の炭素数は、好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜4であり、更に好ましくは2または3であり、特に好ましくは2である。
また、Rで示されるアルカンジイル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、好適な具体例としては、上記Rで示されるアルカンジイル基と同様のものが挙げられる。
また、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を示すが、炭素数1〜8の炭化水素基が好ましい。斯かる炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜4であり、より好ましくは1または2であり、特に好ましくは1である。
また、上記炭化水素基としては、アルキル基;フェニル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基が挙げられるが、アルキル基が好ましい。
上記アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
また、qは、平均値で1〜10を示すが、好ましくは平均値で1〜7であり、より好ましくは平均値で1〜4であり、更に好ましくは1である。
なお、上記平均値はNMRで測定することができる。
斯様な繰り返し単位(A−7)を誘導するモノマーとしては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシエチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2'−(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2'−(トリブチルアンモニオ)エチルホスフェート等が挙げられ、繰り返し単位(A−7)は、これらを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いたものでもよい。
なお、繰り返し単位(A−1)〜(A−7)以外の繰り返し単位(A)を誘導するモノマーとしては、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等が挙げられる。
これら繰り返し単位(A−1)〜(A−7)の中でも、親水性化性能、生体物質付着防止効果および細胞接着防止効果の観点から、繰り返し単位(A−1)、繰り返し単位(A−2)、繰り返し単位(A−3)、繰り返し単位(A−4)、繰り返し単位(A−7)が好ましく、繰り返し単位(A−1)、繰り返し単位(A−2)、繰り返し単位(A−4)、繰り返し単位(A−7)がより好ましく、繰り返し単位(A−1)、繰り返し単位(A−7)が特に好ましい。また、これら繰り返し単位を組み合わせて用いてもよい。
また、繰り返し単位(A)の合計含有量は、特定共重合体中2.5〜95質量%であるが、細胞接着防止性能、生体物質付着防止効果および剥離耐性の観点から、5〜95質量%が好ましく、10〜95質量%がより好ましく、20〜95質量%が更に好ましく、30〜95質量%が更に好ましく、40〜90質量%が更に好ましい。また、このような範囲とすることにより、基材用コーティング剤として適したものとなる。
なお、各繰り返し単位の含有量は1H−NMR、13C−NMR等により測定可能である。
(繰り返し単位(B))
繰り返し単位(B)は、側鎖が少なくとも1個のアルド基またはケト基を有する炭素数4〜12の有機基から構成される繰り返し単位である。この繰り返し単位により、基材への吸着性能および細胞接着防止効果に優れたものとなる。
繰り返し単位(B)は、下記式(7)で表されるものが好ましく、下記式(8)で表されるものであるのがより好ましい。
〔式(7)中、
21は、水素原子またはメチル基を示し、
Zは、少なくとも1個のアルド基またはケト基を有する炭素数4〜12の有機基を示す。〕
〔式(8)中、
22は、水素原子またはメチル基を示し、
23は、酸素原子またはNHを示し、
24は、少なくとも1個のアルド基またはケト基を有する炭素数3〜10の有機基を示す。〕
式(7)、(8)中、Z、R24に含まれるアルド基、ケト基の個数は、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜3、特に好ましくは1〜2である。
式(8)中、R24における有機基の炭素数は、好ましくは炭素数4〜10、より好ましくは炭素数5〜8である。R24で示される有機基は、アルド基、ケト基の他に、エステル結合を有していてもよい。
24の好適な具体例としては、下記式(9)〜(11)で表される基が挙げられる。中でも、式(9)、(11)で表される基が好ましく、式(12)、(13)で表される基が特に好ましい。
〔式(9)中、
25〜R28は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基またはエチル基を示し、
*は、結合手を示す。〕
〔式(10)中、
29〜R32は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基またはエチル基を示し、
*は、結合手を示す。〕
〔式(11)中、
33〜R38は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基またはエチル基を示し、
39は、水素原子またはメチル基(好ましくはメチル基)を示し、
*は、結合手を示す。〕
〔式(12)および(13)中、*は、結合手を示す。〕
繰り返し単位(B)を誘導するモノマー種としては、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。繰り返し単位(B)を誘導するモノマーとしては、具体的には、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ダイアセトン(メタ)アクリルアミドなどが挙げられ、繰り返し単位(B)は、これらを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いたものでもよい。
また、繰り返し単位(B)の合計含有量は、特定共重合体中5〜97.5質量%であるが、細胞接着防止性能、生体物質付着防止効果および剥離耐性の観点から、5〜95質量%が好ましく、5〜90質量%がより好ましく、5〜80質量%が更に好ましく、5〜70質量%が更に好ましく、10〜60質量%が更に好ましい。また、このような範囲とすることにより、基材用コーティング剤として適したものとなる。
また、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)との含有質量比〔(A):(B)〕としては、細胞接着防止効果の観点から、特定共重合体中、10:90〜90:10が好ましい。
なお、特定共重合体において、繰り返し単位(A)および繰り返し単位(B)をそれぞれ、1種以上含有していればよい。
また、特定共重合体は、繰り返し単位(A)および繰り返し単位(B)以外のその他の繰り返し単位(C)を含有していてもよい。繰り返し単位(C)により、親水/疎水バランスを調節できる。
繰り返し単位(C)を誘導するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリセロール、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンなどの(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
特定共重合体の重量平均分子量は、通常1,000〜1,000,000であるが、細胞接着防止効果やハンドリング性の観点から、好ましくは5,000〜500,000であり、より好ましくは10,000〜100,000である。また、特定共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、通常1〜8であり、好ましくは1.5〜5である。
また、特定共重合体は、水溶性でも水不溶性でもよいが、エタノール等の低級アルコール(好ましくは炭素数1〜3のアルコール)、水、これらの混液のうち少なくとも1種に溶解するものが好ましい。ここで、「溶解する」とは、25℃で1質量%のポリマー固形分となるように、水や低級アルコールに共重合体を添加・混合したときに、目視で透明または半透明に溶解することをいう。また、本発明において、「溶解しない」とは、25℃で1質量%のポリマー固形分となるように、水や低級アルコールに共重合体を添加・混合したときに、目視で透明または半透明にならないことをいう。
特定重合体は、常法に従い製造できる。例えば、繰り返し単位(A)を誘導するモノマー、繰り返し単位(B)を誘導するモノマー、必要に応じて繰り返し単位(C)を誘導するモノマーを、精製して又は未精製のまま、共重合させればよい。なお、モノマーは合成しても市販品を用いてもよい。
共重合反応は、例えば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合など公知の重合法で行うことができ、製造が容易であることから、好ましくはラジカル重合である。
特定共重合体を製造するためのモノマー組成は、全モノマーを100質量%として、好ましくは、繰り返し単位(A)を誘導するモノマー:2.5〜95質量%、繰り返し単位(B)を誘導するモノマー:5〜97.5質量%、および繰り返し単位(C)を誘導するモノマー:0〜92.5質量%からなる組成であり、より好ましくは、繰り返し単位(A)を誘導するモノマー:10〜90質量%、繰り返し単位(B)を誘導するモノマー:10〜90質量%、および繰り返し単位(C)を誘導するモノマー:0〜80質量%からなる組成である。
上記ラジカル重合を行う際に用いられる重合開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤であれば特に限定されるものではないが、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシジイソブチレート、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソジメチルバレロニトリル、過硫酸塩、過硫酸塩一亜硫酸水素塩系等が挙げられる。
また、重合開始剤の仕込み量は、モノマー成分の合計100質量部に対して0.001〜10質量部が好ましく、0.01〜5質量部がより好ましい。また、重合温度は4〜120℃が好ましく、重合時間は0.5〜48時間が好ましい。
本発明の細胞接着防止剤は、上記のようにして得られる特定共重合体の他に、溶剤、殺菌剤、防腐剤等を含んでいてもよい。
上記溶剤としては、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤(好ましくは低級アルコール、より好ましくは炭素数1〜3のアルコール)等が挙げられる。これら溶剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて含まれていてもよい。
また、特定共重合体の含有量としては、基材表面への吸着量と細胞毒性の観点から、細胞接着防止剤中、0.00001〜15質量%が好ましく、0.0001〜10質量%がより好ましく、0.001〜10質量%が更に好ましく、0.01〜10質量%が更に好ましい。
一方、上記溶剤の含有量としては、細胞接着防止剤中、0〜99.9質量%が好ましく、10〜99.9質量%がより好ましい。
そして、特定共重合体(ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体を含む)は、後記実施例に示すように、細胞毒性が低く、且つ、優れた細胞接着防止効果を示す。具体的には、細胞分離装置等において使用するカラムやウェル等へコーティングする方法や、診断薬の希釈剤、反応溶媒、または保存剤へ添加する方法、自動診断機の洗浄剤、リンス液として自動診断工程に取り入れる方法などにより、優れた細胞接着防止効果を付与できる。なお、細胞接着防止とは、足場依存性細胞のような接着細胞と、斯かる細胞が接触する種々の表面や基材等との接着を防止することをいう。
上記効果が奏される理由は必ずしも明らかではないが、繰り返し単位(B)によって、特定共重合体が、器具、装置等の壁面に吸着し、その一方で、繰り返し単位(A)によって、前記壁面が親水化され、更にタンパク質、脂質等の吸着が防止され、細胞の接着を抑制することができるものと推察される。
したがって、特定共重合体は、細胞接着防止剤としてそのまま用いることができ、また、細胞接着防止剤を製造するための素材として使用することができる。更に、斯かる細胞接着防止剤によれば、細胞接着のみならずタンパク質、脂質、核酸等生体物質の吸着も抑制できる。
また、上記細胞としては、足場依存性細胞、浮遊細胞(例えば、白血球、赤血球、血小板等の血液細胞)が挙げられる。足場依存性細胞としては、HeLa細胞、F9細胞等のガン細胞;3T3細胞等の線維芽細胞;ES細胞、iPS細胞、間葉系幹細胞等の幹細胞;HEK293細胞等の腎細胞;NT2細胞等の神経細胞;UV♀2細胞、HMEC−1細胞等の内皮細胞;H9c2細胞等の心筋細胞;Caco−2細胞等の上皮細胞等が挙げられる。
また、上記細胞は、無機材料、有機材料の他、哺乳動物組織や非哺乳動物組織(骨等の硬い組織および粘膜や非粘膜組織等の軟らかい組織を含む)、哺乳動物や非哺乳動物の細胞(真核生物および原核生物を含む)等から構成されているものに接着する。本発明の細胞接着防止剤を用いることにより、斯様なもの(基材)と上記細胞との接着を防止できる。
上記無機材料としては、ホウケイ酸ガラス等のガラス;チタン、ステンレス等の金属やコバルトクロム合金等の合金;熱分解カーボン、アルミナ、ジルコニア、リン酸カルシウム等のセラミックスの他、酸化チタン等が挙げられ、これらが1種または2種以上含まれていてよい。
また、上記有機材料としては、ポリスチレン、ABS樹脂等のスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系ポリマー(環状オレフィン樹脂を含む);ポリビニルアセテート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピロリドン、ポリブタジエン等のビニル系ポリマー;ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系ポリマー;ポリアミド、ポリアクリルアミド、ナイロン等のアミド系ポリマー;ポリイミド、ポリエチレンイミド等のイミド系ポリマー;ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン系ポリマー;ポリアセトニトリル、ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマー;ポリビニルフェノール等のビニルフェノール系ポリマー;ポリビニルアルコール等のビニルアルコール系ポリマー;ポリウレタン等のウレタン系ポリマー;ポリカーボネート等のカーボネート系ポリマー;ポリベンゾイミダゾール等のベンゾイミダゾール系ポリマー;ポリエーテルエーテルケトン等のポリエーテルエーテルケトン系ポリマー;ポリアニリン等のアニリン系ポリマー;ポリアクリレート等のポリ(メタ)アクリレート類;ポリカプロラクトン等のポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル;ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ乳酸・グリコール酸等のヒドロキシカルボン酸系ポリエステルを含む);エポキシ樹脂(SU−8等を含む);フェノール樹脂;メラミン樹脂;テフロン(登録商標)等のフッ素樹脂の他、糖鎖高分子、タンパク質等が挙げられ、これらが1種または2種以上含まれていてよい。
また、上記糖鎖高分子としては、アガロースまたはその誘導体、セルロースまたはその誘導体(酢酸セルロース等)、キチン、酸化セルロース、コンドロイチン、ヘパリン、ヒアルロン酸等の等の多糖類が挙げられる。また、上記タンパク質としては、コラーゲンまたはその誘導体、フィブロイン、フィブロネクチン、ゼラチン等が挙げられる。また、ペプチドやポリアミノ酸であってもよい。
そして、上記細胞接着防止剤は、医療・バイオ分野(臨床検査・診断薬)等で広く利用することができ、例えば、臨床診断薬、臨床診断装置、バイオチップ、細胞培養基材、生体材料等生体物質等に接触する材料(カラム、ウェル、固相、容器・器具等)のコーティング剤;血液検査等の診断に使用される全自動分析機用測定セルのコンディショニング剤;細胞接着コントロール剤等として特に有用である。また、本発明の細胞接着防止剤を基材や器具、装置の少なくとも一部にコーティングすることにより、使用するときに細胞が死滅しにくく、且つ、細胞が接着しにくい、表面が改質された器具および装置を提供できる。
<表面が改質された器具および装置>
次に、本発明の表面が改質された器具および表面が改質された装置について説明する。
本発明の表面が改質された器具および表面が改質された装置は、特定共重合体を、表面の少なくとも一部に有するものである。具体的には、特定共重合体が少なくとも一部に塗布され、その表面上に細胞接着防止層が形成されることによって、器具、装置の表面(内壁表面、外壁表面のいずれであってもよい)が改質されたものである。
斯様な器具や装置は、その器具や装置を使用するときにその表面の一部または全部が細胞と接触するものであれば特に限定されないが、医療用、培養用のものが好ましい。
また、上述のような器具の具体例としては、生体物質・生体組織等を採取または送液するための器具(例えば、血糖値測定器、注射針、カテーテル等)、上記生体物質等を保存するための容器(血液バッグ、試験管等)、上記生体物質等を分離、単離又は分析するための器具(キャリア、カバーガラス等の顕微鏡周辺器具、セルソーター等のフローサイトメーター等のマイクロ流路デバイス、キュベット、細胞培養基材、細胞スフェロイドアレイ、細胞分離カラム、マイクロウェルプレート、マイクロチャネルチップ、マイクロウェルアレイチップ、アッセイチップ、バイオチップ、磁気ビーズ、全自動分析機用測定セル、又はプラスチック若しくはガラス基材等)、バイオ処理用器具(反応槽、移送管、移送パイプ、精製用器具、細胞培養プレート等)、生体内に埋入するための器具(例えば、インプラント、骨固定材、縫合糸、癒着防止膜、人工血管等)の他、小胞、マイクロ粒子、ナノ粒子等の薬物送達媒体や、胃カメラ、マイクロファイバー、ナノファイバー、磁性粒子等が挙げられる。中でも、フローサイトメーターのマイクロ流路デバイス、キュベット、細胞培養基材、細胞スフェロイドアレイ、細胞分離カラム、マイクロウェルプレート、マイクロチャネルチップ、マイクロウェルアレイチップ、アッセイチップ、バイオチップ、磁気ビーズ、全自動分析機用測定セル、プラスチック又はガラス基材が好ましい。
また、上述のような装置の具体例としては、セルソーター等のフローサイトメーター、医療用デバイス(臨床診断装置、バイオセンサー、心臓ペースメーカー、埋入型バイオチップ)、発酵用ユニット、バイオリアクター等が挙げられる。中でも、フローサイトメーターが好ましい。
また、特定共重合体の塗布は、上記器具、装置を使用するときに該器具や装置と細胞とが接触する部位に細胞接着防止層を形成するようにして塗布するのが好ましい。これにより、斯かる器具や装置と細胞との接触および接着を防止できる。
また、本発明の表面が改質された器具および表面が改質された装置は、特定共重合体を、器具、装置表面の少なくとも一部にコーティングすることにより製造できる。
具体的には、特定共重合体と器具または装置とを準備し、該器具または装置の少なくとも一部(好ましくは、その器具や装置を使用するときに該器具や装置と細胞とが接触する部位)に特定共重合体を塗布させればよい。なお、架橋剤、架橋モノマーを使用して硬化することもできる。
斯かる塗布は、特定共重合体の溶液又は分散液(細胞接着防止剤)をコーティングしたい部位に接触させればよい。例えば、特定共重合体の溶液又は分散液を基材に5分程度接触させた後、水により洗浄し、乾燥する方法が挙げられる。
また、特定共重合体は、後記実施例に示すように、生体組織や生体試料に対する影響が低い。
したがって、上記器具、装置として、生体内医療構造体、マイクロ流路デバイスが好適な具体例として挙げられる。
<生体内医療構造体>
本発明の生体内医療構造体は、特定共重合体を、表面の少なくとも一部に有するもの(例えば、特定共重合体でコーティングされているもの)である。
ここで、生体内医療構造体とは、生体内で使用される医療用の構造体のことをいい、斯様な構造体は、体内へ埋め込んで使用するものと、体内で使用するものとに大別される。なお、生体内医療構造体の大きさや長さは特に限定されるものではなく、微細な回路を有するものや、微量の試料を検出するものも包含される。なお、コーティングに関しては吸着の他、特定共重合体をフィルムコーティングさせてもよく、また、吸着させた特定共重合体を架橋することで水に不溶化し、耐久性をもたせてもよい。
上記体内へ埋め込んで使用する構造体としては、例えば、心臓ペースメーカー等の疾患が生じている生体の機能を補うための機能補助装置;埋入型バイオチップ等の生体の異常を検出するための装置;インプラント、骨固定材、縫合糸、人工血管等の医療用器具が挙げられる。
また、体内で使用する構造体としては、小胞、マイクロ粒子、ナノ粒子等の薬物送達媒体の他、カテーテル、胃カメラ、マイクロファイバー、ナノファイバー等が挙げられる。
また、生体内医療構造体表面の材質は無機材料と有機材料に大別される。これら無機材料、有機材料としては上記と同様のものが挙げられる。この中でも、有機材料が好ましく、高分子材料がより好ましく、スチレン系ポリマー、エポキシ樹脂が更に好ましい。
なお、本発明の生体内医療構造体は、糖鎖高分子やタンパク質、ペプチド、ポリアミノ酸でコーティングされ、斯かるコーティング上に特定共重合体を有するものであってもよい。糖鎖高分子、タンパク質としては上記と同様のものが挙げられる。
また、特定共重合体のコーティングは、特定共重合体を必要に応じて溶剤と混合し、これを構造体表面(内壁及び外壁を含む)の少なくとも一部に公知の方法でコーティングすればよい。具体的には、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、刷毛塗り、スポンジ塗り等の方法が挙げられる。加えて、特定共重合体の溶液又は分散液中に構造体表面を浸漬させ、特定共重合体と構造体を接触させるだけでコーティングすることもできる。
上記コーティングは、体内において、生体内医療構造体と生体組織とが接触する部位に行うのが好ましい。なお、架橋剤、架橋モノマーを使用して硬化することもできる。
なお、上記溶剤としては、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤(好ましくは低級アルコール、より好ましくは炭素数1〜3のアルコール)等が挙げられる。これら溶剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
そして、本発明の生体内医療構造体は、細胞、タンパク質、脂質、核酸等によって構成される生体組織が表面に付着しにくく、且つ生体組織に対する影響が低い。特に、本発明の生体内医療構造体は細胞の付着が生じにくい。なお、細胞としては、足場依存性細胞、浮遊細胞が挙げられ、足場依存性細胞、浮遊細胞は上記と同様のものが挙げられる。
<マイクロ流路デバイス>
本発明のマイクロ流路デバイスは、特定共重合体を、マイクロ流路内表面の少なくとも一部に有するもの(例えば、特定共重合体でコーティングされているもの)である。
上記マイクロ流路デバイスとしては、例えば、微小反応デバイス(具体的にはマイクロリアクターやマイクロプラント等)、集積型核酸分析デバイス、微小電気泳動デバイス、微小クロマトグラフィーデバイス等の微小分析デバイス;質量スペクトルや液体クロマトグラフィー等の分析試料調製用微小デバイス;抽出、膜分離、透析などに用いる物理化学的処理デバイス;環境分析チップ、臨床分析チップ、遺伝子分析チップ(DNAチップ)、タンパク質分析チップ(プロテオームチップ)、糖鎖チップ、クロマトグラフチップ、細胞解析チップ、製薬スクリーニングチップ等のマイクロ流路チップが挙げられる。これらの中でも、マイクロ流路チップが好ましい。
また、上記デバイスに設けられているマイクロ流路は微量の試料(好ましくは液体試料)が流れる部位であり、その流路幅および深さは特に限定されないが、いずれも、通常、0.1μm〜1mm程度であり、好ましくは10μm〜800μmである。
なお、マイクロ流路の流路幅や深さは、流路全長にわたって同じであってもよく、部分的に異なる大きさや形状であってもよい。
また、マイクロ流路内表面の材質は無機材料と有機材料に大別される。これら無機材料、有機材料としては上記と同様のものが挙げられる。この中でも、有機材料が好ましく、高分子材料がより好ましく、スチレン系ポリマーが更に好ましい。
なお、本発明のマイクロ流路デバイスは、その流路内が糖鎖高分子やタンパク質、ペプチド、ポリアミノ酸でコーティングされ、斯かるコーティング上に特定共重合体を有するものであってもよい。糖鎖高分子、タンパク質としては上記と同様のものが挙げられる。
また、上記マイクロ流路デバイスは、例えば、特定共重合体をマイクロ流路内表面の少なくとも一部にコーティングすることにより製造できる。該コーティングは、特定共重合体を必要に応じて溶剤と混合し、これを流路内表面の少なくとも一部に公知の方法でコーティングすればよい。具体的には、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、刷毛塗り、スポンジ塗り等の方法が挙げられる。加えて、特定共重合体の溶液又は分散液中に流路内表面を浸漬させ、特定共重合体と流路内表面を接触させるだけでコーティングすることもできる。
上記コーティングは、流路の略全面(全面を含む)に行うのが好ましい。なお、架橋剤、架橋モノマーを使用して硬化することもできる。
なお、上記溶剤としては、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤(好ましくは低級アルコール、より好ましくは炭素数1〜3のアルコール)等が挙げられる。これら溶剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
そして、本発明のマイクロ流路デバイスは、マイクロ流路内表面に生体試料が付着しにくく、且つ生体試料に対する影響(細胞毒性)が低い。生体試料(例えば、血液等)は、細胞、タンパク質、脂質、核酸等によって構成されるものであるが、本発明のマイクロ流路デバイスは特に細胞、タンパク質が付着・吸着しにくい。なお、細胞としては、足場依存性細胞、浮遊細胞が挙げられ、足場依存性細胞、浮遊細胞は上記と同様のものが挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例における各分析条件は以下に示すとおりである。
(分子量測定)
重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、東ソー社製 TSKgel α−Mカラムを用い、流量:0.5ミリリットル/分、溶出溶媒:NMP溶媒(H3PO4:0.016M、LiBr:0.030M)、カラム温度:40℃の分析条件で、ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
(NMRスペクトル)
1H−NMRスペクトルは、溶媒および内部標準物質としてd6−DMSOを用いて、BRUKER製モデルAVANCE500(500MHz)により測定した。13C−NMRスペクトルも、BRUKER製モデルAVANCE500(500MHz)により測定した。
<合成>
合成例1 共重合体(N−1)の合成
繰り返し単位(A)のモノマーとしてジメチルアクリルアミド50g、繰り返し単位(B)のモノマーとしてダイアセトンアクリルアミド50gを水900gに混合して攪拌機つきセパラブルフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸0.1g、重合開始剤として2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド4gを添加した後、2時間重合を続け、さらに80℃に昇温して3時間エージングした後、室温まで冷却した。得られた共重合体溶液を透析膜により精製し、さらに凍結乾燥することにより、共重合体(N−1)96gを得た。
得られた共重合体(N−1)において、繰り返し単位(A)の含有量は63モル%であり、繰り返し単位(B)の含有量は37モル%であった。なお、これら含有量はH−NMRにより測定した。また、共重合体(N−1)のGPCによる数平均分子量は41,000であり、重量平均分子量は97,000であった。共重合体(N−1)の構造はH−NMRおよび13C−NMRより確認した。
合成例2 共重合体(N−2)の合成
繰り返し単位(A)のモノマーとしてジメチルアクリルアミド35g、繰り返し単位(B)のモノマーとしてダイアセトンアクリルアミド65gを水450gとtert−ブタノール450gに混合して攪拌機つきセパラブルフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温し、連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸0.1g、重合開始剤として2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド4gを添加した後、2時間重合を続け、さらに70℃で3時間エージングした後、室温まで冷却した。得られた共重合体溶液を透析膜により精製し、さらに凍結乾燥することにより、共重合体(N−2)95gを得た。
得られた共重合体(N−2)において、繰り返し単位(A)の含有量は48モル%であり、繰り返し単位(B)の含有量は52モル%であった。なお、これら含有量はH−NMRにより測定した。また、共重合体(N−2)のGPCによる数平均分子量は45,000であり、重量平均分子量は87,000であった。共重合体(N−2)の構造はH−NMRおよび13C−NMRより確認した。
合成例3 共重合体(N−3)の合成
繰り返し単位(A)のモノマーとしてジメチルアクリルアミド10g、繰り返し単位(B)のモノマーとしてダイアセトンアクリルアミド90gを水450gとtert−ブタノール450gに混合して攪拌機つきセパラブルフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温し、連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸0.1g、重合開始剤として2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド4gを添加した後、2時間重合を続け、さらに70℃で3時間エージングした後、室温まで冷却した。得られた共重合体溶液を透析膜により精製し、さらに凍結乾燥することにより、共重合体(N−3)96gを得た。
得られた共重合体(N−3)において、繰り返し単位(A)の含有量は16モル%であり、繰り返し単位(B)の含有量は84モル%であった。なお、これら含有量はH−NMRにより測定した。また、共重合体(N−3)のGPCによる数平均分子量は36,000であり、重量平均分子量は77,000であった。共重合体(N−3)の構造はH−NMRおよび13C−NMRより確認した。
合成例4 共重合体(N−4)の合成
繰り返し単位(A)のモノマーとしてN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド50g、繰り返し単位(B)のモノマーとしてダイアセトンアクリルアミド50gを水900gに混合して攪拌機つきセパラブルフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸0.1g、重合開始剤として2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド4gを添加した後、2時間重合を続け、さらに80℃に昇温して3時間エージングした後、室温まで冷却した。得られた共重合体溶液を透析膜により精製し、さらに凍結乾燥することにより、共重合体(N−4)93gを得た。
得られた共重合体(N−4)において、繰り返し単位(A)の含有量は60モル%であり、繰り返し単位(B)の含有量は40モル%であった。なお、これら含有量はH−NMRにより測定した。また、共重合体(N−4)のGPCによる数平均分子量は11,000であり、重量平均分子量は42,000であった。共重合体(N−4)の構造はH−NMRおよび13C−NMRより確認した。
合成例5 共重合体(N−5)の合成
繰り返し単位(A)のモノマーとして2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン50g、繰り返し単位(B)のモノマーとしてダイアセトンアクリルアミド50gを水900gに混合して攪拌機つきセパラブルフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸0.1g、重合開始剤として2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド4gを添加した後、2時間重合を続け、さらに80℃に昇温して3時間エージングした後、室温まで冷却した。得られた共重合体溶液を透析膜により精製し、さらに凍結乾燥することにより、共重合体(N−5)95gを得た。
得られた共重合体(N−5)において、繰り返し単位(A)の含有量は36モル%であり、繰り返し単位(B)の含有量は64モル%であった。なお、これら含有量はH−NMRにより測定した。また、共重合体(N−5)のGPCによる数平均分子量は28,000であり、重量平均分子量は67,000であった。共重合体(N−5)の構造はH−NMRおよび13C−NMRより確認した。
合成例6 共重合体(N−6)の合成
繰り返し単位(A)のモノマーとして2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン20g、繰り返し単位(B)のモノマーとしてダイアセトンアクリルアミド80gを水450gとtert−ブタノール450gに混合して攪拌機つきセパラブルフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸0.1g、重合開始剤として2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド4gを添加した後、2時間重合を続け、さらに80℃に昇温して3時間エージングした後、室温まで冷却した。得られた共重合体溶液を透析膜により精製し、さらに凍結乾燥することにより、共重合体(N−6)96gを得た。
得られた共重合体(N−6)において、繰り返し単位(A)の含有量は13モル%であり、繰り返し単位(B)の含有量は87モル%であった。なお、これら含有量はH−NMRにより測定した。また、共重合体(N−6)のGPCによる数平均分子量は28,000であり、重量平均分子量は59,000であった。共重合体(N−6)の構造はH−NMRおよび13C−NMRより確認した。
合成例7 共重合体(N−7)の合成
繰り返し単位(A)のモノマーとしてジメチルアクリルアミド40g、繰り返し単位(B)のモノマーとして2−アセトアセトキシエチルメタクリレート60gを水450gとtert−ブタノール450gに混合して攪拌機つきセパラブルフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、60℃まで昇温し、連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸0.1g、重合開始剤として2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド4gを添加した後、2時間重合を続け、さらに70℃で3時間エージングした後、室温まで冷却した。得られた共重合体溶液を透析膜により精製し、さらに凍結乾燥することにより、共重合体(N−7)95gを得た。
得られた共重合体(N−7)において、繰り返し単位(A)の含有量は59モル%であり、繰り返し単位(B)の含有量は41モル%であった。なお、これら含有量はH−NMRにより測定した。また、共重合体(N−7)のGPCによる数平均分子量は24,000であり、重量平均分子量は74,000であった。共重合体(N−7)の構造はH−NMRおよび13C−NMRより確認した。
参考例1 重合体(X−1)の合成
ジメチルアクリルアミド100gを水900gに混合して攪拌機つきセパラブルフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸0.1g、重合開始剤として2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド4gを添加した後、2時間重合を続け、さらに80℃に昇温して3時間エージングした後、室温まで冷却した。得られた重合体溶液を透析膜により精製し、さらに凍結乾燥することにより、重合体(X−1)94gを得た。
重合体(X−1)のGPCによる数平均分子量は34,000であり、重量平均分子量は105,000であった。重合体(X−1)の構造はH−NMRおよび13C−NMRより確認した。
参考例2 共重合体(X−2)の合成
ジメチルアクリルアミド50gとN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド50gを水900gに混合して攪拌機つきセパラブルフラスコに入れた。これに窒素を吹き込み、70℃まで昇温し、連鎖移動剤として3−メルカプトプロピオン酸0.1g、重合開始剤として2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド4gを添加した後、2時間重合を続け、さらに80℃に昇温して3時間エージングした後、室温まで冷却した。得られた共重合体溶液を透析膜により精製し、さらに凍結乾燥することにより、共重合体(X−2)95gを得た。
得られた共重合体(X−2)において、ジメチルアクリルアミド由来の繰り返し単位の含有量は54モル%であり、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド由来の繰り返し単位の含有量は46モル%であった。なお、これら含有量はH−NMRにより測定した。また、共重合体(X−2)のGPCによる数平均分子量は40,000であり、重量平均分子量は93,000であった。共重合体(X−2)の構造はH−NMRおよび13C−NMRより確認した。
<溶解度の確認>
合成例1〜7並びに参考例1及び2で得た(共)重合体(N−1)〜(N−7)、(X−1)、(X−2)1.0質量部と純水99.0質量部を混合し、25℃で6時間、マグネティックスターラー上で撹拌した。撹拌後、目視で(共)重合体の水への溶解性を判断した。
<細胞接着防止剤の調製>
実施例1
合成例1で得た共重合体(N−1)1.0質量部と純水99.0質量部とを混合してサンプルを得た。
実施例2、3
合成例2、3で得た共重合体(N−2)又は共重合体(N−3)1.0質量部と90質量%エタノール水溶液99.0質量部とを混合してサンプルを得た。
実施例4、5
合成例1で得た共重合体(N−1)を、合成例4、5で得た共重合体(N−4)又は共重合体(N−5)に変更する以外は、実施例1と同様にしてサンプルを得た。
実施例6、7
合成例2で得た共重合体(N−2)を、合成例6、7で得た共重合体(N−6)又は共重合体(N−7)に変更する以外は、実施例2と同様にしてサンプルを得た。
比較例1、2
参考例1、2で得た重合体(X−1)又は共重合体(X−2)1.0質量部と純水99.0質量部とを混合してサンプルを得た。
参考例3
市販のブロッキング試薬であるN101(日油社製)をサンプルとして使用した。
参考例4
市販のブロッキング試薬であるN102(日油社製)をサンプルとして使用した。
実施例1〜7、参考例1、2のサンプルの組成を以下の表2に示す。
参考例3、4のサンプルの組成を以下の表3に示す。表3中、共重合体N101およびN102は、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)と、n−ブチルメタクリレート(n−BMA)の共重合体である。
<試験例1 細胞接着試験(1)>
表面がポリスチレンで構成されている6ウェルプレートのウェルに、表2と表3に示す実施例1〜7および参考例1〜4のサンプルを1mLずつ加え2時間静置した後、超純水で3回洗浄し未吸着ポリマーを除去した。
次いで、6.7×104cell/mLに調整したHeLa細胞(ヒト子宮頸ガン細胞)を含む液体培地(FBSフリー)を1.5mLずつ各ウェルに添加し、37℃、5%CO2条件で4時間培養した。
その後、培地交換で未接着細胞を除去し、次いで、培地交換直後、交換後20時間培養(37℃、5%CO2条件)後、および交換後44時間培養(37℃、5%CO2条件)後、それぞれの接着細胞をトリプシン−EDTAで剥離し、ヘモサイトメーターにより細胞数を計数し、以下の式により接着細胞密度を算出した。
接着細胞密度(%)=〔(接着細胞数)/(コンフルエント時の細胞数)〕×100
また、コントロールとして、サンプルの代わりに水を用いること以外は上記と同様にして接着細胞密度を確認した。試験結果を図1に示す。
<試験例2 細胞接着試験(2)>
HeLa細胞を3T3細胞(マウス線維芽細胞)に変更した以外は試験例1と同様にして接着細胞密度を確認した。試験結果を図2に示す。
<試験例3 細胞接着試験(3)>
HeLa細胞をUV♀2細胞(マウス内皮細胞)に変更した以外は試験例1と同様にして接着細胞密度を確認した。試験結果を図3に示す。
<試験例4 抗体吸着量測定>
(実施例1〜7および参考例1〜2)
表2に示す実施例1〜7および参考例1〜2のサンプルを、ポリスチレン製96穴プレートのウェルにそれぞれ満たし、室温で5分間インキュベートした後、超純水で3回洗浄した。次いで、西洋ワサビパーオキシダーゼ標識マウスIgG抗体(AP124P:ミリポア社製)水溶液を各ウェルに満たし、室温で1時間インキュベートした後、PBSバッファーで3回洗浄し、TMB(3,3',5,5'−テトラメチルベンジジン)/過酸化水素水/硫酸で発色させて450nmの吸光度を測定し、この吸光度から検量線法により抗体吸着量を算出した。
また、コントロールとして、サンプルの代わりに水を用いること以外は上記と同様にして抗体吸着量を算出した。
(参考例5)
サンプルの代わりに、ウシ血清アルブミン(BSA)を用いること以外は上記と同様にして抗体吸着量を算出した。
(参考例6)
サンプルの代わりに、市販のポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いること以外は上記と同様にして抗体吸着量を算出した。
試験例4の試験結果を表4に示す。
<試験例5 細胞毒性試験(1)>
細胞培養用に親水化処理された市販の48ウェルプレート(IWAKI製)のウェルに、25×104cell/mLに調整したHeLa細胞を含む液体培地(10体積%FBS)を200μLずつ添加し37℃、5%CO2条件で12時間前培養した。
一方、表1、3に示す(共)重合体(N−1)、(N−4)、(N−5)、(X−1)、(X−2)、N101又はN102の水溶液、共重合体(N−2)、(N−3)、(N−6)又は(N−7)の分散液を調製した。なお、この分散液は、凍結乾燥した共重合体の固体を50質量%tertブタノール水溶液に濃度が10質量%になるように溶解し、透析膜で溶媒を純水に置換することで作製した。上記水溶液又は分散液を用いて、(共)重合体の濃度が0.10質量%、かつ水溶液又は分散液の濃度が10質量%となるように、(共)重合体含有培地を調製した。
次いで、前培養したHeLa細胞の培地を上記(共)重合体含有培地に交換し、37℃、5%CO2条件で24時間培養した。
(共)重合体の水溶液を超純水に変更した以外は上記と同様にして培養したものをコントロールとして、MTTアッセイにて(共)重合体の細胞毒性を確認した。MTTアッセイにはMTTアッセイキット(MTT Cell Proliferation Assay Kit 10009365:Cayman Chemical Company製)を使用し、使用説明書に従って試験した。試験結果を図4に示す。
<試験例6 細胞毒性試験(2)>
HeLa細胞を3T3細胞に変更した以外は試験例5と同様にして細胞毒性を確認した。MTTアッセイの試験結果を図5に示す。
<試験例7 細胞毒性試験(3)>
HeLa細胞をUV♀2細胞(マウス内皮細胞)に変更した以外は試験例5と同様にして細胞毒性を確認した。MTTアッセイの試験結果を図6に示す。
<試験例8 細胞毒性試験(4)>
HeLa細胞をF9細胞に変更した以外は試験例5と同様にして細胞毒性を確認した。MTTアッセイの試験結果を図7に示す。
試験例5〜8の結果から、共重合体(N−1)〜(N−7)は細胞毒性が低いことがわかる。
したがって、斯かる共重合体が塗布された本発明の表面が改質された器具、表面が改質された装置、生体内医療構造体、及びマイクロ流路デバイスは、生体組織に対する影響が低い。
<試験例9 癒着試験>
10mm四方のエポキシ樹脂フィルムを、表2に示す実施例1〜7および参考例1〜2のサンプルに浸漬させ2時間静置した後、超純水で3回洗浄し未吸着ポリマーを除去した。
次いで、雄SDラットを各群6匹ずつ10群準備し(平均体重250g)、第1群〜第7群のラットはそれぞれ実施例1〜7のサンプルを用いた試験に使用し、第8群〜第9群のラットはそれぞれ参考例1〜2のサンプルを用いた試験に使用し、第10群のラットは基準(コントロール)として使用した。
すなわち、上記で準備した第1群〜第10群のラットの盲腸の漿膜をガーゼで摩擦して、その約1/2を剥離し、これらラットのうち、第1群〜第7群のラットについては、漿膜を剥離した盲腸の表面に、実施例1〜7のサンプルをコーティングしたエポキシ樹脂フィルムを、第8群〜第9群のラットについては、参考例1〜2のサンプルをコーティングしたエポキシ樹脂フィルムを、第10群のラットについては、サンプルをコーティングしていないエポキシ樹脂フィルムを、それぞれラット1匹当たり1枚ずつ貼付した。
次いで、切開部の筋層を連続縫合した後、皮膚を4〜5針縫合した。縫合後1週間後に剖検し、腹腔内癒着状態を肉眼で観察し、下記に示す評価基準にしたがって点数評価し、6匹の平均値を採った。試験結果を表5に示す。
(点数表)
0点:癒着が認められない状態
1点:細くて容易に分離できる程度の癒着
2点:狭い範囲ではあるが、軽度の牽引に耐え得る程度の弱い癒着
3点:かなりしっかりとした癒着又は2箇所に癒着が認められる状態
4点:3箇所以上に癒着が認められる状態
上記試験例9の結果から、共重合体(N−1)〜(N−7)を表面に有する生体内医療構造体は、生体組織が表面に付着しにくいことがわかる。
<試験例10 血液送液試験>
幅150μm、深さ100μm、長さ5cmの溝と、溝の末端に設けられた直径1mmの貫通孔とを有するポリスチレン樹脂の流路基板を射出成形により成形した。また、この基板と同じ大きさのポリスチレン樹脂の平板基板を成形した。
溝を有する流路基板と平板基板を、ともに上記表2に示す実施例1〜7および参考例1〜2のサンプルに浸漬し2時間静置した後、超純水で3回洗浄し未吸着ポリマーを除去した。
次いで、平板基板の樹脂コート層と溝側を合わせ、超音波溶着により基板同士を貼り合わせ、流体が流通できる基板(マイクロ流路デバイス)を作製した。溝の末端に設けられた孔から、血液検体を一定圧力下、2μL/minのスピードで6分間送液し、送液直後から1分後と、送液開始5分後から6分後の液量をそれぞれ計量し、その時の平均流量を計算した。試験結果を表6に示す。
試験例10の結果から、本発明のマイクロ流路デバイスは、生体試料を含む流体を送液しても、流路表面に汚れが堆積せず、流量が衰えないことがわかる。

Claims (16)

  1. 下記繰り返し単位(A):2.5〜95質量%と、下記繰り返し単位(B):5〜97.5質量%とを有する共重合体を含有する、細胞接着防止剤。
    (A)親水性繰り返し単位
    (B)側鎖が少なくとも1個のアルド基またはケト基を有する炭素数4〜12の有機基から構成される繰り返し単位
  2. 繰り返し単位(A)が、下記式(1)で表される繰り返し単位、下記式(2)で表される繰り返し単位、下記式(3)で表される繰り返し単位、下記式(4)で表されるベタイン性繰り返し単位、アニオン性繰り返し単位、下記式(5)で表されるカチオン性繰り返し単位、および下記式(6)で表されるベタイン性繰り返し単位から選ばれる1種以上である請求項1に記載の細胞接着防止剤。
    〔式(1)中、
    1は、水素原子またはメチル基を示し、
    2およびR3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基またはヒドロキシアルキル基を示す。〕
    〔式(2)中、
    4は、水素原子またはメチル基を示し、
    5およびR6は、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルカンジイル基を示す。〕
    〔式(3)中、
    7は、炭素数1〜5のアルカンジイル基を示す。〕
    〔式(4)中、
    Yは、−(C=O)O、−(O=S=O)O、−O(O=S=O)O、−(S=O)O、−O(S=O)O、−OP(=O)(OR13)O、−OP(=O)(R13)O、−P(=O)(OR13)O、または−P(=O)(R13)Oを示し(R13は炭素数1〜3のアルキル基を示す)、
    8は、水素原子またはメチル基を示し、
    9およびR12は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の2価の有機基を示し、
    10およびR11は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の炭化水素基を示す。〕
    〔式(5)中、
    14は、水素原子又はメチル基を示し、
    15は、−O−、*−(C=O)−O−、*−(C=O)−NR20−、*−NR20−(C=O)−(R20は、水素原子または炭素数1〜10の有機基を示し、*は、式(5)中のR14が結合している炭素原子と結合する位置を示す)またはフェニレン基を示し、
    16は、炭素数1〜10の2価の有機基を示し、
    17、R18およびR19は、それぞれ独立して、炭素数1〜10の炭化水素基を示す。〕
    〔式(6)中、
    は、水素原子またはメチル基を示し、
    は、炭素数2〜4のアルカンジイル基を示し、
    は、炭素数1〜10のアルカンジイル基を示し、
    、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を示し、
    qは、平均値で1〜10を示す。〕
  3. 繰り返し単位(B)が、下記式(7)で表されるものである請求項1又は2に記載の細胞接着防止剤。
    〔式(7)中、
    21は、水素原子またはメチル基を示し、
    Zは、少なくとも1個のアルド基またはケト基を有する炭素数4〜12の有機基を示す。〕
  4. 繰り返し単位(B)が、下記式(8)で表されるものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の細胞接着防止剤。
    〔式(8)中、
    22は、水素原子またはメチル基を示し、
    23は、酸素原子またはNHを示し、
    24は、少なくとも1個のアルド基またはケト基を有する炭素数3〜10の有機基を示す。〕
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の共重合体を、表面の少なくとも一部に有する、表面が改質された器具。
  6. 前記器具が、フローサイトメーターのマイクロ流路デバイス、キュベット、細胞培養基材、細胞スフェロイドアレイ、細胞分離カラム、マイクロウェルプレート、マイクロチャネルチップ、マイクロウェルアレイチップ、アッセイチップ、バイオチップ、磁気ビーズ、全自動分析機用測定セル、又はプラスチック若しくはガラス基材である、請求項5に記載の器具。
  7. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の共重合体を、器具表面の少なくとも一部にコーティングする工程を含むことを特徴とする、表面が改質された器具の製造方法。
  8. 前記器具が、フローサイトメーターのマイクロ流路デバイス、キュベット、細胞培養基材、細胞スフェロイドアレイ、細胞分離カラム、マイクロウェルプレート、マイクロチャネルチップ、マイクロウェルアレイチップ、アッセイチップ、バイオチップ、磁気ビーズ、全自動分析機用測定セル、又はプラスチック若しくはガラス基材である、請求項7に記載の製造方法。
  9. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の共重合体を、表面の少なくとも一部に有する、表面が改質された装置。
  10. 前記装置が、フローサイトメーターである、請求項9に記載の装置。
  11. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の共重合体を、装置表面の少なくとも一部にコーティングする工程を含むことを特徴とする、表面が改質された装置の製造方法。
  12. 前記装置が、フローサイトメーターである、請求項11に記載の製造方法。
  13. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の共重合体を、表面の少なくとも一部に有する、生体内医療構造体。
  14. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の共重合体を、構造体表面の少なくとも一部にコーティングする工程を含むことを特徴とする、生体内医療構造体の製造方法。
  15. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の共重合体を、マイクロ流路内表面の少なくとも一部に有するマイクロ流路デバイス。
  16. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の共重合体を、マイクロ流路内表面の少なくとも一部にコーティングする工程を含むことを特徴とする、マイクロ流路デバイスの製造方法。
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WO2021079610A1 (ja) * 2019-10-25 2021-04-29 国立大学法人九州大学 生体適合性接着剤

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