JP2018122295A - ピラーアレイミキサー及びこれを使用した試料処理装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】成分の分離状態を維持しつつ高い混合特性を有するピラーアレイミキサー及びこれを使用した試料処理装置を提供する。【解決手段】断面が矩形のトンネル状の流路と、上記流路の対向する面の一方と他方との間を接続する柱状のマイクロピラー12と、を備え、上記マイクロピラー12は、断面が菱形であり、上記菱形の1辺の長さが1〜500μmであり、各辺の間の距離が0.1〜200μmとなるように整列しているピラーアレイミキサー。また、上記菱形は、正方形であってもよい。また、分離流路と上記ピラーアレイミキサーとを同一チップ上に形成し、上記ピラーアレイミキサーを分離流路の下流側に接続し、分離流路で分離された成分毎に処理液と混合する試料処理装置。【選択図】図2
Description
本発明は、ピラーアレイミキサー及びこれを使用した試料処理装置に関する。
従来、複数の成分が混合された試料について、液体クロマトグラフィー(LC)等の分離装置で各成分を分離し、成分毎に誘導体化する処理を行うポストカラム誘導体化法が知られている。このようなポストカラム誘導体化法では、分離流路出口のチューブ内で分離成分と誘導体化試薬を混合していた。
ところが、現在使用されているマイクロチップLCでは流路が狭く、混合が進行しにくい層流条件で溶液が流れているため、分離成分と誘導体化試薬との混合を積極的に行う構造が必要となる。例えば、下記非特許文献1には、マイクロチップ上で2液を混合するためのミキサー(反応装置)の例が開示されている。
しかし、上記従来のミキサーは、そもそもマイクロチップLC(ポストカラム誘導体化)用のミキサーではなく、マイクロチップ(マイクロ流路)用のミキサーであり、流体の流れ方向に直交する方向の混合のみならず、流れ方向の混合も促進されるため、マイクロチップLC等で分離した成分の分離状態(分離ピーク)を維持しながら流体の流れ方向に直交する方向の混合を促進することが困難であった。
Bing He et al.,Analytical Chemistry,2001,73.1942-1947
本発明の目的は、成分の分離状態を維持しつつ高い混合特性を有するピラーアレイミキサー及びこれを使用した試料処理装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態は、ピラーアレイミキサーであって、断面が矩形のトンネル状の流路と、前記流路の対向する面の一方と他方との間を接続する柱状の障害物と、を備え、前記柱状の障害物は、断面が菱形であり、前記菱形の1辺の長さが1〜500μmであり、各辺の間の距離が0.1〜200μmとなるように整列していることを特徴とする。
上記柱状の障害物は、断面が正方形であるのが好適である。
また、上記柱状の障害物は、断面が、短対角線の長さをaとし、長対角線の長さをbとしたときに、b/aが1から10である菱形であってもよい。
また、本発明の他の実施形態は、試料処理装置であって、試料を導入するための試料用流路と、前記試料中の成分を移動相と共に流すことによって分離する分離流路と、前記分離流路の下流側に接続され、前記分離流路により分離された成分毎に処理液と混合する、上記ピラーアレイミキサーと、を備え、前記試料用流路と分離流路とピラーアレイミキサーとが同一チップ上に形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、成分の分離状態を維持しつつ高い混合特性を有するピラーアレイミキサー及びこれを使用した試料処理装置を実現できる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
図1(a)、(b)には、実施形態にかかるピラーアレイミキサーの構成例が示される。図1(a)が斜視図であり、図1(b)が図1(a)のb−b断面図である。
図1(a)において、ピラーアレイミキサー10には、後述するマイクロピラー12が、図1(a)には示されない壁に囲まれた断面が矩形状であるトンネル状の流路内に配列されている。また、ピラーアレイミキサー10には、その前段で液体クロマトグラフィー(LC)等の分離装置により分離された試料成分が移動相としての流体と共に流入する試料入り口Iaと、試料成分に対して所定の反応をする誘導体化試薬等の試薬が流入する試薬入り口Ibと、ピラーアレイミキサー10内で反応後の液体が排出される排出口Oとが設けられている。
また、図1(b)において、ピラーアレイミキサー10は、上述したように、断面が矩形のトンネル状の流路13中に形成されており、マイクロピラー12はトンネル状の流路13の互いに対向する底面Uと天井面Cとの間を接続する柱状の障害物として形成されている。また、マイクロピラー12の高さ、すなわち底面Uと天井面Cとの距離Hは、取り扱う液体(試薬及び移動相と共に流入する試料等)の性質、流量等により適宜決定する。なお、図1(b)では、マイクロピラー12が5本記載されているが、これは断面図に現れるマイクロピラー12の概要を模式的に表現したものであり、マイクロピラー12の正確な配列を表現したものではない。
図2(a)、(b)には、実施形態にかかるピラーアレイミキサーのマイクロピラーの配置例が示される。図2(a)が平面図であり、図2(b)が図2(a)の部分平面図である。なお、図2(a)、(b)では、流路13の底面U及び天井面Cは、説明の便宜上記載が省略されている。
図2(a)において、上記ピラーアレイミキサー10は、マイクロピラー12が規則的に配列されて構成されている。このマイクロピラー12は、断面が菱形の柱状の障害物である。なお、菱形には正方形も含まれる。
図2(b)に示されるように、マイクロピラー12は、断面である菱形の対向する一対の頂点を結ぶ線(対角線の一方)が、試料入り口Ia及び試薬入り口Ibから流入する試料及び試薬の流れ方向(図2(a)の矢印F方向)と平行になるように配列されており、菱形模様状の配列となっている。この場合、隣接するマイクロピラー12の面同士は一定の間隔dだけ離間して平行に対向配置される。ここで、マイクロピラー12の断面(正方形を含む菱形)の辺の長さw及び上記間隔dは、上記距離Hとともに、取り扱う液体の性質、流量等により適宜決定するが、辺の長さwは1〜500μm、面同士の間隔dは0.1〜200μm、距離H(マイクロピラー12の高さ。図1(b)参照)は1〜500μmの範囲が好ましい。また、菱形の2つの対角線は、その長さが同じであっても、異なっていてもよい。
ピラーアレイミキサー10の入り口には、ピラーアレイミキサー10に流入する流体の流れ方向を制御する整流用ピラーアレイ14a、14bが配置されている。整流用ピラーアレイ14aは、試料入り口Ia側に設置され、整流用ピラーアレイ14bは、試薬入り口Ib側に設置されている。整流用ピラーアレイ14a、14bも、断面が正方形を含む菱形のマイクロピラー16で構成されており、整流用ピラーアレイ14a、14bを構成するマイクロピラー16も、上記マイクロピラー12と同様に、断面である菱形の対角線の一方が液体の流れ方向Fと平行に配列されている。また、図2(b)では、マイクロピラー16の断面の辺の長さがwi、面同士の間隔がdiとして記載されている。これらの辺の長さwi及び面同士の間隔diを適宜調整することにより、液体の流量を適切に確保しつつ、流れ方向を制御することができる。ここで、流れ方向の制御とは、矢印F方向の流れを維持しつつ、矢印Fに直交する方向の流れを抑制して、ピラーアレイミキサー10に栓流で液体を流入させることをいう。
なお、整流用ピラーアレイ14aと14bとの間は、隔壁18により、試薬及び試料が分離されてピラーアレイミキサー10に流入するよう構成されている。
以上に説明した図2(a)、(b)の例では、マイクロピラー12及びマイクロピラー16の断面形状を正方形を含む菱形としているが、これには限定されない。五角形以上(頂点の数が5個以上)の多角形であってもよい。この場合、溶液の流れ方向(矢印F方向)の軸に線対称な形状が好ましい。また、断面形状が円形である円柱を使用することもできる。
図3には、本実施形態にかかるピラーアレイミキサーを使用した試料処理装置の構成例が示される。この試料処理装置は、シリコン等を基材としたマイクロチップとして構成されている。
図3において、試料処理装置は、移動相インレット20a、試料インレット20b、試薬インレット20cを備え、それぞれ水、緩衝液等の移動相、誘導体化等の処理の対象となる試料、誘導体化試薬等の試薬が装置に導入される。試料インレット20bから導入された試料は、試料注入部22で移動相インレット20aから導入された移動相と混合され、移動相と共に分離流路24に導入される。移動相と共に導入された試料に含まれる各成分は、分離流路24で流れ方向に分離されてピラーアレイミキサー10に移動相と共に流入する。なお、分離流路24としては、マイクロチップLC等の従来公知の分離器を使用することができる。この場合、試料及び移動相は、図1(a)及び図2(a)に示される試料入り口Iaからピラーアレイミキサー10に流入する。また、試薬インレット20cから導入された試薬は、図1(a)及び図2(a)に示される試薬入り口Ibからピラーアレイミキサー10に流入する。なお、ピラーアレイミキサー10に流入した移動相、試料及び試薬は、アウトレット26a(図1(a)及び図2(a)に示される排出口O)から排出される。また、試料インレット20bから試料処理装置に導入され、試料注入部22で移動相に混合されなかった試料は、試料アウトレット26bから排出される。なお、試料インレット20bから試料アウトレット26bまでは、シリコンのマイクロチップに形成した溝である試料流路28で接続されている。なお、試料処理装置を構成するピラーアレイミキサー10、移動相インレット20a、試料インレット20b、試薬インレット20c、分離流路24、アウトレット26a、試料流路28等は、シリコン等の基板上に溝として形成され、必要に応じてマイクロピラー等も形成され、溝の上部(開口部分)をガラスで覆った構造とすることができる。
シリコン等の基板に上記各構成要素を形成する方法としては、例えばフォトリソグラフィ法又はドライエッチング法(ボッシュプロセスまたは深堀反応性イオンエッチング)等が挙げられ、ガラスとシリコン基板とは陽極接合法で接合できる。
なお、上記移動相インレット20aには、マイクロ液体クロマトグラフィーポンプを使用して、試料インレット20bには圧送により、試薬インレット20cにはシリンジポンプを使用してそれぞれ送液する。
以上のような構成により、ピラーアレイミキサー10に、流れ方向に分離された試料が成分毎に試料入り口Iaから流入したときに、各成分に対応する試薬を試薬入り口Ibからピラーアレイミキサー10に流入させて、成分毎に誘導体化反応等の処理を行うことができる。
本実施形態にかかるピラーアレイミキサー10は、図1(a)、(b)、図2(a)、(b)に示される構成を有しており、流体の流れ方向(図2(a)の矢印F方向)の混合性(実施例における混合効率。以下同じ)が低く、且つ流れ方向に直交する方向(流路の幅方向)の混合性が高いので、分離流路24で流れ方向に分離された試料の各成分が再混合することを抑制しつつ、試薬と十分に混合することができる。
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。なお、以下の実施例は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
実施例1
実施例の試料処理装置として、図3に示される構成において1辺20mmの正方形マイクロチップ上に、試料流路28として深さ60μmの溝を形成し、移動相及び試料が流れるその他の流路を深さ30μmの溝として形成した。また、分離流路24は、幅400μmとした。また、整流用ピラーアレイ14a、14bを構成するマイクロピラー16は、図2(b)に示された辺の長さwiが3μm、面同士の間隔diが2μmで整列した構造とした。
実施例の試料処理装置として、図3に示される構成において1辺20mmの正方形マイクロチップ上に、試料流路28として深さ60μmの溝を形成し、移動相及び試料が流れるその他の流路を深さ30μmの溝として形成した。また、分離流路24は、幅400μmとした。また、整流用ピラーアレイ14a、14bを構成するマイクロピラー16は、図2(b)に示された辺の長さwiが3μm、面同士の間隔diが2μmで整列した構造とした。
実施例1では、ピラーアレイミキサー10の幅(流れ方向に直交する方向の長さ)が220μm、流れ方向の長さが8mmであり、マイクロピラー12は、図2(b)に示された辺の長さwが5μm、面同士の間隔dが2μmで整列した構造とした。
以上の試料処理装置は、シリコン基板に従来公知のフォトリソグラフィ法及び深掘り反応性イオンエッチングによって各構造を形成した後、従来公知の陽極接合法によってガラスと貼り合わせることにより製造した。
実施例2
実施例2では、ピラーアレイミキサー10におけるマイクロピラー12の上記辺の長さwを10μmとした他は、実施例1と同じ試料処理装置とした。
実施例2では、ピラーアレイミキサー10におけるマイクロピラー12の上記辺の長さwを10μmとした他は、実施例1と同じ試料処理装置とした。
実施例3、4
実施例1の試料処理装置において、マイクロピラー12の形状を図7に示される断面が菱形の柱状とし、溶液の流れ方向を矢印F方向とした。
実施例1の試料処理装置において、マイクロピラー12の形状を図7に示される断面が菱形の柱状とし、溶液の流れ方向を矢印F方向とした。
図7における菱形の短い対角線(以後、短対角線という)の長さをaとし、長い対角線(以後、長対角線という)の長さをbとしたときに、b/aの値をARとし、ARの値を1とし、上記辺の長さwが10μm(a=b=10√2μm)、面同士の間隔dが5μmで整列した構造として、実施例3のピラーアレイミキサー10とした。
また、ARの値を3とし、上記辺の長さwが10√5μm(a=10√2μm、b=30√2μm)、面同士の間隔dが5μmで整列した構造として、実施例4のピラーアレイミキサー10とした。
実施例3、4においては、上記溶液の流れ方向(矢印F方向)が短対角線と平行な(長対角線に直交する)方向となっている。
比較例
比較例では、ピラーアレイミキサー10の代わりに、内部にマイクロピラー12が形成されていない流路(中空流路)を使用した他は、実施例1と同じ試料処理装置とした。
比較例では、ピラーアレイミキサー10の代わりに、内部にマイクロピラー12が形成されていない流路(中空流路)を使用した他は、実施例1と同じ試料処理装置とした。
<流路の幅方向の混合効率の評価>
実施例1、2、3、4及び比較例の試料処理装置について、マイクロ液体クロマトグラフィーポンプ(ジーエルサイエンス株式会社製〈型式〉MP711)により移動相インレット20aから移動相としての超純水を供給しつつ、試薬インレット20cからシリンジポンプ(KD Scientific Inc.製〈型式〉KDS101)により試薬としてのフルオレセイン水溶液(和光純薬工業株式会社製 2.5μmol/L)を供給した。それぞれの流量は、実施例1、2及び比較例の場合が(超純水、フルオレセイン水溶液ともに)1μL/minとし、実施例3、4の場合が0.5μL/minとした。
実施例1、2、3、4及び比較例の試料処理装置について、マイクロ液体クロマトグラフィーポンプ(ジーエルサイエンス株式会社製〈型式〉MP711)により移動相インレット20aから移動相としての超純水を供給しつつ、試薬インレット20cからシリンジポンプ(KD Scientific Inc.製〈型式〉KDS101)により試薬としてのフルオレセイン水溶液(和光純薬工業株式会社製 2.5μmol/L)を供給した。それぞれの流量は、実施例1、2及び比較例の場合が(超純水、フルオレセイン水溶液ともに)1μL/minとし、実施例3、4の場合が0.5μL/minとした。
以上のように移動相及び試薬を流しつつ、ピラーアレイミキサー10の入り口(図2(b)における整流用ピラーアレイ14a、14bからピラーアレイミキサー10に流れ込む位置)の直後(以後、上流側という)と出口の直前(ピラーアレイミキサー10の入り口から約長8mmの地点。以後、下流側という)において静止画を撮影した。静止画像は、ピラーアレイミキサー10にキセノンランプを光源として励起光を照射し、蛍光色素であるフルオレセインが発する蛍光を蛍光顕微鏡で検出し、顕微鏡に接続されているカメラ(EMCCDカメラ)で撮影した。また、この撮影は、上記上流側と下流側に注目領域(ROI)を、ピラーアレイミキサー10の流路の幅方向に約220μm(ピラーアレイミキサー10の幅とほぼ等しい)、ピラーアレイミキサー10の流路の長さ方向(流れ方向)に約55μmで設定し、そのROIについて行った。
得られた静止画から、流路の幅方向の蛍光強度のプロファイルを得た。この場合、ROIの蛍光強度をy軸にとり、流路幅方向の距離をx軸にとってプロット(蛍光強度の流路幅方向における分布)を上記上流側と下流側について作成し、両プロットを上流側のプロットを基準(最大蛍光強度を1、最低蛍光強度を0)に規格化した。これらの規格化蛍光強度プロットに対して算出した標準偏差(σ)を、流体の流れ方向に直交する方向(流路の幅方向)の混合効率の基準とした。理論的には、完全未混合でσ=0.5、完全混合でσ=0となる。
図4には、以上のようにして求めた混合効率の評価結果が示される。図4において、縦軸が規格化蛍光強度プロットに対して算出した標準偏差である。図4の結果では、中空流路を使用した比較例よりも、実施例1〜4のピラーアレイミキサー方がσの値が小さくなった(混合効率が高くなった)。また、マイクロピラーの辺の長さwが5μmの実施例1よりも10μmの実施例2の方が、混合効率が高くなった。さらに、AR=1である実施例3よりもAR=3の実施例4の方が、混合効率が高くなった。従って、中空流路よりもピラーミキサーの方が流路の幅方向の混合効率が高いことが示された。なお、図4の結果では、マイクロピラーの辺の長さwが大きいほど上記混合効率が高い可能性もあるが、周辺装置や実験条件(流速、d、H、ピラー形状)によって左右されるので、現状ではw=10程度が適当であると考えられる。また、ARの最適値についても実験条件により左右されるが、AR=1〜10が好適であり、1〜5がより好適であり、1〜3がさらに好適であると考えられる。
<流れ方向の試料拡散の評価>
実施例1、2、3、4及び比較例の試料処理装置について、移動相インレット20aと試薬インレット20cから超純水をそれぞれ1μL/min程度で送液した。また、試料インレット20bからは、フルオレセイン水溶液(和光純薬工業株式会社製 100μmol/L)を注入した。
実施例1、2、3、4及び比較例の試料処理装置について、移動相インレット20aと試薬インレット20cから超純水をそれぞれ1μL/min程度で送液した。また、試料インレット20bからは、フルオレセイン水溶液(和光純薬工業株式会社製 100μmol/L)を注入した。
以上の状態で、ピラーアレイミキサー10の上流側と下流側において動画を撮影した。動画は、ピラーアレイミキサー10にキセノンランプを光源として光を照射し、蛍光色素であるフルオレセインが発する蛍光を蛍光顕微鏡で検出し、顕微鏡に接続されているカメラ(EMCCDカメラ)で撮影した。また、この撮影は、上記上流側と下流側に注目領域(ROI)を、ピラーアレイミキサー10の流路の幅方向に約110μm、ピラーアレイミキサー10の流路の長さ方向(流れ方向)に約55μmで設定し、そのROIについて行った。
得られた動画からピラーアレイミキサー10の流路上の蛍光強度の情報を得た。蛍光強度は、動画を構成する画素の画素値として得られる。この場合、ROIの蛍光強度を平均化し、この平均蛍光強度を、試料注入部22から分離流路24に試料が導入されてからの経過時間に対してプロットし、クロマトグラムを得た。実施例1、2及び比較例におけるピラーアレイミキサー10で得られた結果(クロマトグラム)について、上記下流側におけるピーク半値全幅を上記上流側におけるピーク半値全幅で除し、ピーク幅増加率を得た。ピーク幅増加率は1以上の値をとり、1のときに流れ方向の試料拡散がないことを示す。
図5には、以上のようにして求めた流れ方向の試料拡散の実施例1、2及び比較例の評価結果が示される。図5において、縦軸がピーク幅増加率である。図5の結果では、中空流路を使用した比較例ではピーク幅が大きく増加するが、実施例1、2のピラーアレイミキサーの場合には、ピーク幅の増加が抑制されることがわかる。また、マイクロピラーの辺の長さwが5μmの実施例1と10μmの実施例2では、ピーク幅の増加率にほとんど差はなかった。
また、図8には、実施例1、3、4及び比較例について行った流れ方向の試料拡散の評価結果が示される。図8では、縦軸がピーク半値全幅となっており、実施例1、3、4及び比較例について上記上流側と下流側におけるピーク半値全幅が示されている。なお、図8の実施例1、3、4及び比較例の各グラフの上の括弧内には、図5と同様に求められたピーク幅増加率が示されている。
図8に示されるように、実施例1、3、4のいずれの場合も、比較例と比べて、上記上流側と下流側におけるピーク半値全幅の差が小さい(ピーク幅増加率が1に近い数値となっている)ことがわかる。
<分離及び蛍光誘導体化実験>
実施例1及び比較例の試料処理装置について、移動相インレット20aからは酢酸ナトリウム溶液(和光純薬工業株式会社製 10mmol/L、pH6.5)/アセトニトリル(Merck KGaA製)=10/90(v/v)を、試薬インレット20cからは蛍光誘導体化溶液(naphthalene−2,3−dicarboxaldehyde(NDA) 和光純薬工業株式会社製 5mmol/L)とメルカプトエタノール(和光純薬工業株式会社製 50mmol/L)をリン酸緩衝液(和光純薬工業株式会社製 20mmol/L、pH6.8)/アセトニトリル(Merck KGaA製)=50/50(v/v)に溶解したもの)を、それぞれ0.5μL/min程度で送液した。試料インレット20bからは、アセトニトリルと水の混合溶液にフルオレセイン(5μmol/L)とエチルアミン(和光純薬工業株式会社製 50mmol/L)とを溶解したものを試料として注入した。フルオレセインは蛍光色素であり、蛍光誘導体化溶液と反応しない。一方、エチルアミンは蛍光誘導体化溶液と反応してはじめて蛍光を発する。
実施例1及び比較例の試料処理装置について、移動相インレット20aからは酢酸ナトリウム溶液(和光純薬工業株式会社製 10mmol/L、pH6.5)/アセトニトリル(Merck KGaA製)=10/90(v/v)を、試薬インレット20cからは蛍光誘導体化溶液(naphthalene−2,3−dicarboxaldehyde(NDA) 和光純薬工業株式会社製 5mmol/L)とメルカプトエタノール(和光純薬工業株式会社製 50mmol/L)をリン酸緩衝液(和光純薬工業株式会社製 20mmol/L、pH6.8)/アセトニトリル(Merck KGaA製)=50/50(v/v)に溶解したもの)を、それぞれ0.5μL/min程度で送液した。試料インレット20bからは、アセトニトリルと水の混合溶液にフルオレセイン(5μmol/L)とエチルアミン(和光純薬工業株式会社製 50mmol/L)とを溶解したものを試料として注入した。フルオレセインは蛍光色素であり、蛍光誘導体化溶液と反応しない。一方、エチルアミンは蛍光誘導体化溶液と反応してはじめて蛍光を発する。
上記流れ方向の試料拡散の評価と同様にして、上記下流側においてクロマトグラムを得た。ただし、この場合のROIの大きさは、流路の幅方向に約220μm、流路の長さ方向に約47μmとした。
図6(a)、(b)には、以上のようにして求めた分離及び蛍光誘導体化実験の結果が示される。図6(a)が比較例の試料処理装置の場合であり、図6(b)が実施例1の試料処理装置の場合である。また、図6(a)、(b)において、横軸が保持時間(試料注入部22から分離流路24に試料が導入されてからの経過時間)、縦軸が規格化蛍光強度である。規格化は、クロマトグラムのベースラインを0、フルオレセイン(蛍光色素)のピーク高さを1として行った。図6(a)、(b)から、比較例では、蛍光誘導体化エチルアミンのピークは小さく、形状が悪いが、実施例1では、同ピークが高く良好な形状を有することがわかる。これは、ピラーアレイミキサーは中空流路と比較して流れ方向に直交する方向(流路の幅方向)の混合効率が高いことに加え、流れ方向の試料拡散が小さいことから、誘導体化エチルアミンの検出感度及びフルオレセインとの分離が向上したものと考えられる。この結果から、中空流路よりもピラーアレイミキサーの方が、ポストカラムミキサー構造としてより適しているということが示された。
10 ピラーアレイミキサー、12、16 マイクロピラー、13 流路、14a、14b 整流用ピラーアレイ、18 隔壁、20a 移動相インレット、20b 試料インレット、20c 試薬インレット、22 試料注入部、24 分離流路、26a アウトレット、26b 試料アウトレット、28 試料流路。
Claims (4)
- 断面が矩形のトンネル状の流路と、
前記流路の対向する面の一方と他方との間を接続する柱状の障害物と、
を備え、前記柱状の障害物は、断面が菱形であり、前記菱形の1辺の長さが1〜500μmであり、各辺の間の距離が0.1〜200μmとなるように整列していることを特徴とするピラーアレイミキサー。 - 前記柱状の障害物は、断面が正方形である、請求項1に記載のピラーアレイミキサー。
- 前記柱状の障害物は、断面が、短対角線の長さをaとし、長対角線の長さをbとしたときに、b/aが1から10である菱形である、請求項1に記載のピラーアレイミキサー。
- 試料を導入するための試料用流路と、
前記試料中の成分を移動相と共に流すことによって分離する分離流路と、
前記分離流路の下流側に接続され、前記分離流路により分離された成分毎に処理液と混合する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のピラーアレイミキサーと、
を備え、前記試料用流路と分離流路とピラーアレイミキサーとが同一チップ上に形成されている試料処理装置。
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JP2017018648 | 2017-02-03 | ||
JP2017018648 | 2017-02-03 |
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2018018368A Pending JP2018122295A (ja) | 2017-02-03 | 2018-02-05 | ピラーアレイミキサー及びこれを使用した試料処理装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2018122295A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2023032883A1 (ja) | 2021-08-30 | 2023-03-09 | 株式会社ダイセル | マイクロ流体デバイス、及びその製造方法 |
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2018
- 2018-02-05 JP JP2018018368A patent/JP2018122295A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2023032883A1 (ja) | 2021-08-30 | 2023-03-09 | 株式会社ダイセル | マイクロ流体デバイス、及びその製造方法 |
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