本発明の導電パターン形成用フィルムは、離型性フィルム上に、特定量の導電粒子(a)、カルボキシル基含有樹脂(b)および感光剤(c)を含有する層Aを有する。層Aは、パターン形成および加熱硬化により、導電パターンを形成するものであり、離型性フィルム上に層Aを有することにより、層Aを構成する導電性組成物の乾燥膜やそのパターン、導電パターンを、任意の段階において任意の基板に転写することができることから、耐溶剤性の低い基材や曲面を有する基材上にも、耐屈曲性および耐マイグレーション性の高い微細配線を形成することができる。
本発明における離型性フィルムとは、フィルム基材表面に離型剤を塗布したものをいう。離型剤としては、例えば、長鎖アルキル系離型剤、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも転写時に離型剤移りが生じた場合であっても、後工程、特に現像工程において、現像液のハジキなどの現象を生じにくく、面内ムラを抑制して微細パターンを形成することができることから、長鎖アルキル系離型剤が好ましい。離型剤の塗布厚みは50〜500nmが好ましい。剥離剤の厚みが50nm以上であれば、転写時の転写ムラを抑制することができ、500nm以下であれば、転写時の離型剤移りを低減することができる。
離型性フィルムの剥離力は、500〜5000mN/20mmが好ましい。剥離力が500mN/20mm以上であれば、層Aを形成する際にハジキの発生を抑制することができ、剥離力が5000mN/20mm以下であれば、層Aの基材への転写時のプロセスマージンを広くすることができる。ここで、本発明における離型性フィルムの剥離力とは、剥離処理面に日東電工(株)製アクリル粘着テープ「31B」を2kgローラーを用いて貼付し、30分後に剥離角度180°、剥離速度0.3m/minで剥離したときの剥離力を指す。
離型性フィルムに用いられるフィルム基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィン、ポリカーボネート、ポリイミド、アラミド、フッ素樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂を含むフィルムなどが挙げられる。光学特性の観点から、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィン、ポリカーボネートを含むフィルムが好ましい。光学特性の高い基材であれば、離型性フィルム越しに露光することができ、層Aとフォトマスクが接触しないため、マスク汚染を抑制することができる。フィルム基材の厚みは、5〜150μmが好ましい。フィルム基材の厚みが5μm以上であれば、層Aを形成する際にフィルム基材を安定に搬送することができ、層Aの厚みムラを抑制することができる。フィルム基材の厚みは10μm以上がより好ましい。一方、フィルム基材の厚みが150μm以下であれば、離型性フィルム越しの露光の際に露光光の回折の影響を小さくすることができ、より微細なパターンを形成することができる。フィルム基材の厚みは30μm以下がより好ましい。
層Aは、導電粒子(a)、カルボキシル基含有樹脂(b)および感光剤(c)を含有し、層A中の導電粒子(a)の含有量は65〜90質量%である。導電粒子(a)はパターン形成後の加熱工程で粒子同士の接点部が一部焼結し、パターンに導電性を付与する作用を有する。カルボキシル基含有樹脂(b)はアルカリ性現像液への溶解性を示し、現像によるパターン加工を可能とする作用を有する。感光剤(c)は光によって変化することにより、未露光部と露光部との間に現像液への溶解度差を設け、フォトリソ加工性を付与する作用を有する。
導電粒子(a)としては、例えば、銀、金、銅、白金、鉛、スズ、ニッケル、アルミニウム、タングステン、モリブデン、クロム、チタン、インジウムやこれら金属の合金が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、導電性が高いことから銀、金、銅が好ましく、安定性が高いことから銀がより好ましい。
導電粒子(a)の形状としては、長軸長を短軸長で除した値であるアスペクト比が1.0〜2.0であることが好ましい。導電粒子(a)のアスペクト比が1.0以上であると、導電粒子(a)同士の接触確率が向上することから、配線抵抗のばらつきを小さくすることができる。一方、導電粒子(a)のアスペクト比が2.0以下であると、露光工程において露光光が遮蔽されにくく、現像マージンを広くすることができる。導電粒子(a)のアスペクト比は、1.5以下がより好ましい。導電粒子(a)のアスペクト比は、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型顕微鏡(TEM)を用いて、15000倍の倍率で導電粒子(a)を拡大観察し、無作為に選択した100個の導電粒子について、それぞれの長軸長および短軸長を測定し、両者の平均値から算出することができる。
導電粒子(a)の平均粒径は、0.05〜2.0μmが好ましい。導電粒子(a)の平均粒径が0.05μm以上であると、導電粒子(a)の分散性を向上させることができる。導電粒子(a)の平均粒径は、0.1μm以上がより好ましい。一方、導電粒子(a)の平均粒径が2.0μm以下であると、導電パターンのエッジをシャープにすることができる。導電粒子(a)の平均粒径は、1.5μm以下がより好ましい。導電粒子(a)の平均粒径は、層Aをテトラヒドロフラン(以下、「THF」と称すことがある。)に溶解し、沈降した導電粒子(a)を回収し、ボックスオーブンを用いて70℃で10分間乾燥した後、電子顕微鏡を用いて、15000倍の倍率で導電粒子(a)を拡大観察し、無作為に選択した20個の導電粒子について、それぞれの長軸径(最大幅)を測定し、それらの平均値を求めることにより算出することができる。
層A中の導電粒子(a)の含有量は、60〜90質量%である。導電粒子(a)の含有量が60質量%未満であると、導電パスの形成が不十分となり、導電性が低下する、導電粒子(a)の含有量は、70質量%以上が好ましい。一方、導電粒子(a)の含有量が90質量%を超えると、フォトリソ加工が困難となり、また、耐屈曲性が低下する。導電粒子(a)の含有量は、85質量%以下が好ましい。
カルボキシル基含有樹脂(b)としては、例えば、アクリル系共重合体、カルボン酸変性エポキシ樹脂、カルボン酸変性フェノール樹脂、ポリアミック酸、カルボン酸変性シロキサンポリマーなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、紫外光透過率の高いアクリル系共重合体、カルボン酸変性エポキシ樹脂、カルボン酸変性フェノール樹脂が好ましい。
アクリル系共重合体としては、アクリル系モノマーと不飽和酸またはその酸無水物との共重合体が好ましい。
アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸(以下、「AA」と称すことがある。)、メチルアクリレート、エチルアクリレート(以下、「EA」と称すことがある。)、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレート(以下、「BA」と称すことがある。)、iso−ブチルアクリレート、iso−プロパンアクリレート、グリシジルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アミノエチルアクリレート、フェニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、チオフェノールアクリレート、ベンジルメルカプタンアクリレート、アリル化シクロヘキシルジアクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド、N−イソブトキシメチルアクリルアミド、メタクリルフェノール、メタクリルアミドフェノール、エポキシ基を不飽和酸で開環させた水酸基を有するエチレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、グリセリンジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、ビスフェノールFのアクリル酸付加物、クレゾールノボラックのアクリル酸付加物等のエポキシアクリレートモノマー、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(2−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、o−ヒドロキシフェニルアクリレート、m−ヒドロキシフェニルアクリレート、p−ヒドロキシフェニルアクリレート、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレートなどのフェノール性水酸基含有モノマーや、それらのアクリル基をメタクリル基に置換した化合物などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
不飽和酸またはその酸無水物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、酢酸ビニルや、これらの酸無水物などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。不飽和酸の共重合比により、アクリル系共重合体の酸価を調整することができる。
カルボン酸変性エポキシ樹脂としては、エポキシ化合物と、不飽和二重結合を有するカルボキシル化合物との反応物が好ましい。
エポキシ化合物としては、例えば、グリシジルエーテル類、グリシジルアミン類、エポキシ樹脂などが挙げられる。より具体的には、グリシジルエーテル類としては、例えば、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、ビフェノールジグリシジルエーテル、テトラメチルビフェノールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートなどが挙げられる。グリシジルアミン類としては、例えば、tert−ブチルグリシジルアミンなどが挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
不飽和二重結合を有するカルボキシル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、α−シアノ桂皮酸などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
前述のアクリル系共重合体やカルボン酸変性エポキシ樹脂に、グリシジル(メタ)アクリレート等の不飽和二重結合を有する化合物を反応させることにより、不飽和二重結合を導入することができる。例えば、層Aがネガ型の感光性を有する場合、カルボキシル基含有樹脂(b)に不飽和二重結合を導入することにより、露光時に露光部の架橋密度を向上させることができ、現像マージンを広くすることができる。
カルボン酸変性フェノール樹脂とはカルボキシル基を有するフェノール樹脂をいい、例えば、フェノール類化合物とアルデヒド類を酸触媒下で重合することにより得られるフェノール樹脂に、多塩基酸無水物を反応させることにより得ることができる。多塩基酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸、3−メチルテトラヒドロ無水フタル酸、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水マレイン酸などが挙げられる。
カルボキシル基含有樹脂(b)は、ウレタン結合を有することが好ましい。カルボキシル基含有樹脂(b)がウレタン結合を有することにより、導電パターンの耐屈曲性をより向上させることができる。カルボキシル基含有樹脂(b)にウレタン結合を導入する方法としては、例えば、水酸基を有するアクリル系共重合体や水酸基を有するカルボン酸変性エポキシ樹脂の場合、これらの水酸基にジイソシアネート化合物を反応させる方法が挙げられる。ジイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、トリデンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、アリルシアンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
カルボキシル基含有樹脂(b)は、フェノール性水酸基を有することが好ましい。カルボキシル基含有樹脂(b)がフェノール性水酸基を有することにより、基材表面の水酸基やアミノ基などの極性基と水素結合を形成し、密着性を向上させることができる。また、感光剤(c)としてキノンジアジド化合物を用いる場合、フェノール性水酸基とキノンジアジド化合物が水素結合を形成し、未露光部の層Aの現像液への溶解度を低下させることができ、未露光部と、露光部との溶解度差が大きくなり、現像マージンを広げることができる。
カルボキシル基含有樹脂(b)の酸価は、50〜250mgKOH/gが好ましい。酸価が50mgKOH/g以上であれば、現像液への溶解度が高くなり、現像残渣の発生を抑制することができる。酸価は60mgKOH/g以上がより好ましい。一方、酸価が250mgKOH/g以下であれば、現像液への過度な溶解を抑え、パターン形成部の膜減りを抑制することができる。酸価は200mgKOH/g以下がより好ましい。なお、カルボキシル基含有樹脂(b)の酸価は、JIS K 0070(1992)に準拠して測定することができる。
カルボキシル基含有樹脂(b)の酸価は、例えば、アクリル系共重合体の場合、構成成分中の不飽和酸の割合により、所望の範囲に調整することができる。カルボン酸変性エポキシ樹脂の場合、多塩基酸無水物を反応させることにより、所望の範囲に調整することができる。カルボン酸変性フェノール樹脂の場合、構成成分中の多塩基酸無水物の割合により、所望の範囲に調整することができる。
感光剤(c)としては、光重合開始剤、光酸発生剤が挙げられる。
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、ベンジル誘導体、ベンゾイン誘導体、オキシム系化合物、α−ヒドロキシケトン系化合物、α−アミノアルキルフェノン系化合物、フォスフィンオキサイド系化合物、アントロン化合物、アントラキノン化合物等が挙げられる。ベンゾフェノン誘導体としては、例えば、ベンゾフェノン、O−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、フルオレノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルケトン等が挙げられる。アセトフェノン誘導体としては、例えば、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン等が挙げられる。チオキサントン誘導体としては、例えば、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン等が挙げられる。ベンジル誘導体としては、例えば、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール等が挙げられる。ベンゾイン誘導体としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル等が挙げられる。オキシム系化合物としては、例えば、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、1−フェニル−1,2−ブタンジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム等が挙げられる。α−ヒドロキシケトン系化合物としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等が挙げられる。α−アミノアルキルフェノン系化合物としては、例えば、2−メチル−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)ブタン−1−オン等が挙げられる。フォスフィンオキサイド系化合物としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。アントロン化合物としては、アントロン、ベンズアントロン、ジベンゾスベロン、メチレンアントロン等が挙げられる。アントラキノン化合物としては、例えば、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン等が挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、光感度の高いオキシム系化合物が好ましい。
光酸発生剤としては、ジアゾジスルホン化合物、トリフェニルスルホニウム化合物、キノンジアジド化合物などが挙げられる。ジアゾジスルホン化合物としては、例えば、ビス(シクロヘキシルスルフォニル)ジアゾメタン、ビス(ターシャルブチルスルフォニル)ジアゾメタン、ビス(4−メチルフェニルスルフォニル)ジアゾメタンなどが挙げられる。トリフェニルスルホニウム化合物としては、例えば、ジフェニル−4−メチルフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルフォネート、ジフェニル−2,4,6−トリメチルフェニルスルフォニウムp−トルエンスルフォネート、ジフェニル(4−メトキシフェニル)スルフォニウムトリフルオロメタンスルフォネートなどが挙げられる。キノンジアジド化合物としては、例えば、ポリヒドロキシ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステルで結合したもの、ポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がスルホンアミド結合したもの、ポリヒドロキシポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合および/またはスルホンアミド結合したものなどが挙げられる。これらポリヒドロキシ化合物やポリアミノ化合物の全ての官能基がキノンジアジドで置換されていなくても良いが、官能基全体の50モル%以上がキノンジアジドで置換されていることが好ましい。
本発明において、キノンジアジド化合物は5−ナフトキノンジアジドスルホニル基、4−ナフトキノンジアジドスルホニル基のいずれも好ましく用いられる。同一分子中にこれらの基を両方有する化合物を用いてもよいし、異なる基を用いた化合物を併用してもよい。
キノンジアジド化合物は、例えば、5−ナフトキノンジアジドスルホニルクロライドとフェノール化合物をトリエチルアミン存在下で反応させることにより得ることができる。フェノール化合物の合成方法としては、酸触媒下で、α−(ヒドロキシフェニル)スチレン誘導体を多価フェノール化合物と反応させる方法などが挙げられる。
層A中の感光剤(c)の含有量は、カルボキシル基含有樹脂(b)100質量部に対して、0.05〜30質量部が好ましい。感光剤の含有量が0.05質量部以上であると、感光剤が光重合開始剤の場合、露光部の硬化密度が増加することから現像後の残膜率を高くすることができる。感光剤が光酸発生剤の場合、露光部の現像液への溶解性が向上することから、剥離現像によるエッジのガタツキを抑制することができる。一方、感光剤の含有量が30質量部以下であると、感光剤が光重合開始剤の場合、光重合開始剤による過剰な光吸収が抑制される。その結果、得られる導電パターンの断面形状が矩形となり、基材との密着性を向上させることができる。感光剤が光酸発生剤の場合、光酸発生剤による過剰な光吸収が抑制される。その結果、膜深部へ光が到達し、残渣の発生が抑制される。
本発明において、層A中のカルボキシル基含有樹脂(b)が不飽和二重結合を有し、感光剤(c)が光重合開始剤であることが好ましい。カルボキシル基含有樹脂(b)が不飽和二重結合を有することにより、露光部の単位反応あたりの分子量の上昇量が大きくなるため低露光量時でも未露光部と露光部との現像液への溶解度差が大きくなる。それにより、露光感度と現像マージンが向上する。
本発明において、層Aは、さらにヒドロキシピリジン骨格を有する化合物(d)を含有することが好ましい。層Aがヒドロキシピリジン骨格を有する化合物を含有することにより、現像時にヒドロキシピリジン骨格を有する化合物がパターンから溶出するため、その後の加熱工程での収縮量を大きくすることができる。これにより、導電粒子同士の接触確率および接触点数が増加するため、導電パターンの比抵抗をより低くすることができる。ヒドロキシピリジン骨格を有する化合物(d)は、分子内にヒドロキシピリジン骨格を有していればよく、ヒドロキシピリジンの塩の形で導入されていてもよい。ヒドロキシピリジン骨格を有する化合物(d)としては、例えば、2−ヒドロキシピリジン、3−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジン、2,4−ジヒドロキシピリジン、2,4−ジヒドロキシキノリン、2,6−ジヒドロキシキノリン、2,8−ジヒドロキシキノリン、5−ヒドロキシ−2−メチルピリジン、2−ヒドロキシ−4−メチルピリジン、2−ヒドロキシ−5−メチルピリジン、2−ヒドロキシ−6−メチルピリジン、2,4−ジヒドロキシ−6−メチルピリジン、2−エチル−3−ヒドロキシ−6−メチルピリジン、ピリドキシン−3,4−ジバルミタート、4−デオキシピリドキシン、ピリドキサミン、ジカプリル酸ピリドキシン、4−ブロモ−2−ヒドロキシピリジン、4−クロロ−2−ヒドロキシピリジン、2−ヒドロキシ−5−ヨードピリジン、3−ヒドロキシイソキノリン、2−キノリノール、3−キノリノール、2−メチル−4−キノリノール、シトラジン酸、6−ヒドロキシニコチン酸、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサール−5−ホスフェート、4−ピリドキシ酸、イソピリドキサール、2−ヒドロキシメチル−3−ピリジノール、2−ヒドロキシメチル−6−メチル−3−ピリジノール、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ピリジノール、ギンコトキシン、ピリドキサールオキシム、6−(ヒドロキシメチル)−3,4−ピリジンジオール、2−ブロモ−6−(ヒドロキシメチル)−3−ピリジノール、2,5−ジクロロ−6−(ヒドロキシメチル)−3−ピリジノール、2−クロロ−6−(ヒドロキシメチル)−4−ヨード−3−ピリジノール、3−(ヒドロキシメチル)−6−メチル−4−キノリノールなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。中でも、メチロール基を有するピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサール−5−ホスフェート、4−ピリドキシ酸、イソピリドキサール、2−ヒドロキシメチル−3−ピリジノール、2−ヒドロキシメチル−6−メチル−3−ピリジノール、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ピリジノール、ギンコトキシン、ピリドキサールオキシム、6−(ヒドロキシメチル)−3,4−ピリジンジオール、2−ブロモ−6−(ヒドロキシメチル)−3−ピリジノール、2,5−ジクロロ−6−(ヒドロキシメチル)−3−ピリジノール、2−クロロ−6−(ヒドロキシメチル)−4−ヨード−3−ピリジノール、3−(ヒドロキシメチル)−6−メチル−4−キノリノールは、配線の比抵抗をより低減することができるため好ましい。
層A中のヒドロキシピリジン骨格を有する化合物(d)の含有量は、カルボキシル基含有樹脂(b)100質量部に対し、0.01〜20質量部が好ましい。ヒドロキシピリジン骨格を有する化合物(d)の含有量が0.01質量部以上であると、導電パターンの比抵抗をより小さくすることができる。ヒドロキシピリジン骨格を有する化合物(d)の含有量は0.1質量部以上がより好ましい。一方、ヒドロキシピリジン骨格を有する化合物(d)の含有量が20質量部以下であると、パターン部の現像マージンを広くすることができる。ヒドロキシピリジン骨格を有する化合物(d)の含有量は10質量部以下がより好ましい。層Aが含有するヒドロキシピリジン骨格を有する化合物(d)の構造および含有量については、層Aを溶媒抽出して得られた試料について、IR、1H−NMR、MS測定などを実施することにより求めることができる。
本発明において、層Aは、その所望の特性を損なわない範囲であれば不飽和結合を有する光重合性化合物、可塑剤、レベリング剤、界面活性剤、シランカップリング剤、消泡剤、顔料等の添加剤を含有することもできる。
不飽和結合を有する光重合性化合物としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1.4−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、エトキシ化(4)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化(10)ビスフェノールAジアクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物などの2官能モノマー、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレートなどの3官能モノマー、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートなどの4官能モノマー、ダイセル・サイテック社製EBECRYL204、EBECRYL210、EBECRYL220、EBECRYL264、EBECRYL265、EBECRYL284やサートマー社製CN972、CN975、CN978などのウレタン結合含有モノマーなどが挙げられる。これらの中でも、ウレタン結合含有モノマーは、導電パターンの耐屈曲性をより向上させることができることから好ましい。
可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ポリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
レベリング剤としては、例えば、特殊ビニル系重合物、特殊アクリル系重合物などが挙げられる。
シランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどが挙げられる。
層Aの軟化点は10〜80℃が好ましい。層Aの軟化点が10℃以上であれば、タックを抑制することができ、ロール状に巻き取る際にブロッキングを抑制することができる。一方、層Aの軟化点が80℃以下であれば、転写時のプロセスマージンが広がると共に導電パターンの耐屈曲性をより向上させることができる。層Aの軟化点は、熱機械分析装置(TMA)を用いて測定することができる。
本発明において、層Aは、例えば、導電粒子(a)を、カルボキシル基含有樹脂(b)、感光剤(c)および必要に応じてヒドロキシピリジン骨格を有する化合物(d)やその他の成分を含む有機成分中に分散したペーストを、必要に応じて溶剤などを用いて塗布方法に適した粘度に調整し、離型性フィルム上に塗布することにより形成することができる。導電粒子(a)の分散装置としては、例えば、三本ローラー、ボールミル、遊星式ボールミル、クリアミックス、ジェットミルなどが挙げられる。ペーストを離型性フィルム上に塗布する方法としては、例えば、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法などが挙げられる。塗布後、ペースト中に含まれる溶剤を揮発乾燥させることが好ましく、層Aのタックを抑制することができる。乾燥温度は約60〜100℃が好ましい。本発明の導電パターン形成用フィルムをロール状に巻き取る場合、必要に応じて合紙を入れながら巻きとってもよい。合紙としては、離型性フィルムよりも剥離力の小さいものが、保存安定性の観点から好ましい。
層Aの厚みは、0.5〜10.0μmが好ましい。層Aの厚みが0.5μm以上であると、凹凸のある基材上に対しても容易にパターン形成することができる。層Aの厚みは1.0μm以上がより好ましい。一方、層Aの厚みが10.0μm以下であれば、露光時に光が層Aの膜深部まで到達しやすくなり、現像マージンを広げることができる。層Aの厚みは5.0μm以下がより好ましい。なお、層Aの膜厚は、例えば、“サーフコム”(登録商標)1400((株)東京精密製)などの触針式段差計を用いて測定することができる。より具体的には、ランダムな3つの位置の膜厚を触針式段差計(測長:1mm、走査速度:0.3mm/sec)でそれぞれ測定し、その平均値を膜厚とすることができる。
本発明の導電パターン形成用フィルムを用いて微細な導電パターンを基材上に形成する方法としては、例えば、(1)層Aを基材に熱圧着させて転写し、露光、現像、加熱する方法、(2)離型性フィルム上の層Aを露光、現像して作製したパターンを基材に熱圧着させて転写し、加熱する方法などが挙げられる。中でも(2)の方法は、現像工程において基材の耐アルカリ性が不要となるため、基材の選択自由度が高く好ましい。本発明の導電パターン形成用フィルムを露光、現像してパターンを形成する工程、形成したパターンを基材に転写する工程、転写したパターンを加熱して導電パターンを形成する工程により、回路配線を製造することができる。
基材を構成する材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド、ポリアミド、エポキシ樹脂、アラミド樹脂、フェノール樹脂、グリーンシート、シリコン、ガラス、セラミックスなどが挙げられる。基材を構成する材料は、ウレタン骨格を有する樹脂および/またはアクリル系樹脂が好ましい。ウレタン骨格を有する樹脂またはアクリル系樹脂により、作製される積層部材の耐屈曲性をより高めることができる。
露光工程において、所望のパターンを有するマスクを通して本発明の導電パターン形成用フィルムの層Aに化学線を照射することが好ましい。露光に用いられる化学線としては、紫外線、可視光線、電子線、X線などが挙げられる。本発明においては、水銀灯のi線(波長365nm)、h線(波長405nm)、g線(波長436nm)が好ましい。本発明の導電パターン形成用フィルムを露光する方法としては、例えば、(1)離型性フィルムを剥離して、層Aとマスクを密着させて露光する方法、(2)離型性フィルムにマスクを密着させて露光する方法、(3)基材にマスクを密着させて露光する方法などが挙げられる。中でも(2)の方法はマスクの汚染を防止することができるため好ましい。また、層Aがポジ型の感光性を有する場合、(3)の方法は膜深部を直接露光することができるリフトオフ現像が可能になり、低露光量で露光を完了させることができるため好ましい。
現像工程とは、現像液を用いて未硬化部を除去する工程をいい、層Aがネガ型の感光性を有する場合には、現像工程により未露光部を除去することができる。アルカリ現像を行う場合の現像液としては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの化合物の水溶液が好ましい。これらを2種以上用いてもよい。また、場合によっては、これらの水溶液に、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトンなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、界面活性剤などを1種以上添加してもよい。有機現像を行う場合の現像液としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどの極性溶媒が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。また、これらの極性溶媒に、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、キシレン、水、メチルカルビトール、エチルカルビトールなどを添加してもよい。
現像方法としては、例えば、導電パターン形成用フィルムを搬送、静置または回転させながら上記の現像液を層Aにスプレーする方法、導電パターン形成用フィルムを現像液中に浸漬する方法、導電パターン形成用フィルムを現像液中に浸漬しながら超音波をかける方法などが挙げられる。
現像後、水によるリンス処理を施してもよい。ここでもエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを水に加えてリンス処理をしてもよい。
離型性フィルム上に形成したパターンを基材に転写する方法としては、例えば、熱圧着する方法が挙げられる。熱圧着温度は100℃〜150℃が好ましい。熱圧着温度が100℃以上であれば、パターンの粘性が上がることから、転写性を向上させることができる。一方、熱圧着温度が150℃以下であれば、転写パターンの形状を転写後も容易に維持することができる。
加熱工程により、形成した配線パターンに導電性を発現させることができる。加熱温度は、100〜200℃が好ましい。加熱温度が100℃以上であれば、導電粒子(a)同士の接点部での焼結をより効果的に進行させ、得られる導電パターンの比抵抗をより低くすることができる。加熱温度は120℃以上がより好ましい。一方、加熱温度が200℃以下であれば、基材や離型性フィルムの選択自由度を高めることができる。加熱温度は150℃以下がより好ましい。
加熱方法としては、例えば、オーブン、イナートオーブン、ホットプレートによる加熱乾燥、紫外線ランプ、赤外線ヒーター、ハロゲンヒーター、キセノンフラッシュランプ等の電磁波やマイクロ波による加熱乾燥、真空乾燥などが挙げられる。
以下に本発明を実施例及び比較例を挙げて詳細に説明するが、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。
各実施例及び比較例で用いた材料は、以下のとおりである。
[離型性フィルム原反]
・“ルミラー”(登録商標)FB40(東レ(株)製)(厚み:16μm)
・“ルミラー”(登録商標)T60(東レ(株)製)(厚み:50μm)。
[離型剤]
・AL−5(リンテック社(株)製)
・6010(リンテック社(株)製)
・T157(リンテック社(株)製)。
[導電粒子]
・Ag粉(平均粒径0.5μm、アスペクト比1.0)。
[カルボキシル基含有樹脂(b)]
(合成例1)カルボキシル基含有アクリル系共重合体(b−1)
共重合比率(質量基準):EA/メタクリル酸2−エチルヘキシル(以下、「2−EHMA」)/BA/N−メチロールアクリルアミド(以下、「MAA」)/AA=20/20/20/15/25
窒素雰囲気の反応容器中に、150gの2−メトキシ−1−メチルエチルアセテート(以下、「PMA」)を仕込み、オイルバスを用いて80℃まで昇温した。これに、20gのEA、20gの2−EHMA、20gのBA、5gのMAA、25gのAA、0.8gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリル及び10gのPMAからなる混合物を、1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに80℃で6時間加熱して重合反応を行った。その後、1gのハイドロキノンモノメチルエーテルを添加して、重合反応を停止した。得られた反応溶液をメタノールで精製することにより未反応不純物を除去し、さらに24時間真空乾燥することにより、カルボキシル基含有アクリル系共重合体(b−1)を得た。得られたカルボキシル基含有樹脂(b−1)の酸価は153mgKOH/gであった。
(合成例2)不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有アクリル系共重合体(b−2)
共重合比率(質量基準):EA/2−EHMA/BA/グリシジルメタクリレート(以下、「GMA」)/AA=20/40/20/5/15
窒素雰囲気の反応容器中に、150gのPMAを仕込み、オイルバスを用いて80℃まで昇温した。これに、20gのEA、40gの2−EHMA、20gのBA、15gのAA、0.8gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリルおよび10gのPMAからなる混合物を、1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに80℃で6時間加熱して重合反応を行った。その後、1gのハイドロキノンモノメチルエーテルを添加して、重合反応を停止した。引き続き、5gのGMA、1gのトリエチルベンジルアンモニウムクロライド及び10gのPMAからなる混合物を、0.5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間加熱して付加反応を行った。得られた反応溶液をメタノールで精製することにより未反応不純物を除去し、さらに24時間真空乾燥することにより、不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有アクリル系共重合体(b−2)を得た。得られたカルボキシル基含有樹脂(b−2)の酸価は107mgKOH/gであった。
(合成例3)エポキシカルボキシレート化合物(b−3)
窒素雰囲気の反応溶液中に、492.1gのPMA、860.0gのEOCN−103S(日本化薬(株)製;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;エポキシ当量:215.0g/当量)、288.3gのAA、4.92gの2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール及び4.92gのトリフェニルホスフィンを仕込み、98℃の温度で反応液の酸価が0.5mg・KOH/g以下になるまで加熱して反応させ、エポキシカルボキシレート化合物を得た。引き続き、この反応液に169.8gのPMAおよび201.6gのテトラヒドロ無水フタル酸を仕込み、95℃で4時間加熱して反応させ、エポキシカルボキシレート化合物(b−3)を得た。得られたカルボキシル基含有樹脂(b−3)の酸価は104mgKOH/gであった。
(合成例4)カルボキシル基、フェノール性水酸基含有アクリル系共重合体(b−4)
共重合比率(質量基準):EA/p−ヒドロキシフェニルアクリレート/BA/MAA/AA=20/20/20/15/25
窒素雰囲気の反応容器中に、150gのPMAを仕込み、オイルバスを用いて80℃まで昇温した。これに、20gのEA、20gのp−ヒドロキシフェニルアクリレート、20gのBA、15gのMAA、25gのAA、0.8gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリルおよび10gのPMAからなる混合物を、1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに80℃で6時間加熱して重合反応を行った。その後、1gのハイドロキノンモノメチルエーテルを添加して、重合反応を停止した。得られた反応溶液をメタノールで精製することにより未反応不純物を除去し、さらに24時間真空乾燥することにより、カルボキシル基、フェノール性水酸基含有アクリル系共重合体(b−4)を得た。得られたカルボキシル基含有樹脂(b−4)の酸価は159mgKOH/gであった。
(合成例5)ウレタン結合含有エポキシカルボキシレート化合物(b−5)
窒素雰囲気の反応容器中に、368.0gのRE−310S(日本化薬(株)製;エポキシ当量:184.0g/当量)、141.2gのAA、1.02gのハイドロキノンモノメチルエーテルおよび1.53gのトリフェニルホスフィンを仕込み、98℃の温度で反応液の酸価が0.5mgKOH/g以下になるまで加熱して反応させ、エポキシカルボキシレート化合物を得た。その後、この反応溶液に755.5gのPMA、268.3gの2,2−ビス(ジメチロール)−プロピオン酸、1.08gの2−メチルハイドロキノン及び140.3gのスピログリコールを加え、45℃に昇温した。この溶液に485.2gのトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートを、反応温度が65℃を超えないように徐々に滴下した。滴下終了後、反応温度を80℃に上昇させ、赤外吸収スペクトル測定法により、2250cm−1付近の吸収がなくなるまで6時間加熱して反応させ、ウレタン結合含有エポキシカルボキシレート化合物(b−5)を得た。得られたカルボキシル基含有樹脂(b−5)の酸価は80.0mgKOH/gであった。
(合成例6)カルボン酸変性フェノール樹脂(b−6)
反応容器中にフェノール100.0g、亜麻仁油43.0gおよびトリフロオロメタンスルホン酸0.1gを混合し、120℃で2時間撹拌して、植物油変性フェノール誘導体を得た。次いで、植物油変性フェノール誘導体130g、パラホルムアルデヒド16.3g及びシュウ酸1.0gを混合し、90℃で3時間撹拌した。120℃に昇温して減圧下で3時間撹拌した後、反応液に無水コハク酸29gおよびトリエチルアミン0.3gを加え、大気圧下、100℃で1時間撹拌した。反応液を室温(25℃)まで冷却し、カルボン酸変性フェノール樹脂(b−6)を得た。得られたカルボキシル基含有樹脂(b−6)の酸価は120mgKOH/gであった。
[感光剤(c)]
(光重合開始剤)
・“IRGACURE”(登録商標)OXE−01(以下、「OXE−01」;チバジャパン(株)製)
(光酸発生剤)
・WPAG−199(ジアゾジスルホン化合物 和光純薬工業(株)製)
(合成例7)キノンジアジド化合物(c−1)
乾燥窒素気流下、TrisP−PA(商品名、本州化学工業(株)製)21.22g(0.05モル)と5−ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド33.58g(0.125モル)を1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合したトリエチルアミン15.18gを、系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間撹拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、ろ液を水に投入した。その後、析出した沈殿をろ過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、キノンジアジド化合物(c−1)を得た。
[ヒドロキシピリジン骨格を有する化合物(d)]
・4−ヒドロキシピリジン
・ピリドキシン。
[エステル系溶剤]
・2−メトキシ−1−メチルエチルアセテート(以下、「PMA」)。
[不飽和結合を有する光重合性化合物]
・ペンタエリスリトールテトラアクリレート
・CN972(ウレタン結合含有光重合性化合物 サートマー(株)製)。
[基材]
・“タフグレイス”(登録商標)(武田産業(株)製)(厚み:100μm)
・“ルミラー”(登録商標)T60(東レ(株)製)(厚み:100μm)。
各実施例および比較例における評価方法を以下に示す。
<離型性フィルムの剥離力測定>
各実施例および比較例において得られた剥離性フィルムの剥離処理面に、2kgローラーを用いて、日東電工(株)製アクリル粘着テープ「31B」を貼付し、30分後に剥離角度180°、剥離速度0.3m/minで剥離したときの剥離力を測定した。
<層Aの軟化点測定>
熱機械分析装置TMA8311((株)リガク製)を用いて、各実施例および比較例において得られた導電パターン形成用フィルムの層A上に測定プローブを20mNの荷重をかけて押し当て、10℃/minで昇温したときの降伏値を測定し、層Aの軟化点とした。
<耐マイグレーション性の評価>
図2に示すマイグレーション評価用回路基板を、85℃、85%RHの高温高湿槽に投入し、端子部からDC5Vの電圧を印加して、急激に抵抗値が3桁低下する短絡時間を測定した。計10個の回路基板について同評価を繰り返し、測定した短絡時間の平均値を、耐マイグレーション性の値とした。
<屈曲性の評価>
各実施例および比較例において得られた図3に示す耐屈曲性評価用回路基板について、テスターを用いて抵抗値を測定した。その後、回路配線が内側、外側、内側、外側と交互になるように回路基板を折り曲げて、図3に示す短辺Cと短辺Dとを接触させては元に戻す屈曲動作を1万回繰り返してから、再度テスターを用いて抵抗値を測定し、抵抗値の変化率(%)を算出し、耐屈曲性の値とした。
<曲面基板上に形成した配線の比抵抗測定>
各実施例および比較例において得られた図3に示す耐屈曲性評価用回路基板を、φ100mmの円柱ガラスに130℃、1.0m/minの速度で熱圧着し、離型性フィルムを剥離後、熱風オーブンにて140℃、30分間加熱処理を行い、テスターを用いて抵抗値を測定した。以下の式(1)に基づいて比抵抗を算出した。
比抵抗 = 抵抗値×膜厚×線幅/ライン長 ・・・ (1)
なお、線幅は、無作為に選択した3つの位置の線幅を光学顕微鏡で観察し、画像データを解析して得られた幅の平均値とした。
(実施例1)
<離型性フィルムの作製>
“ルミラー”FB40の基材片面に、離型剤AL−5を塗布し、熱処理および乾燥をして基材表面に厚さ100nmの離型剤層を形成し、離型性フィルムF1を作製した。
<層Aを形成するための組成物の調製>
100mLクリーンボトルに、10.0gのカルボキシル基含有樹脂(b−1)、2.0gのOXE−01および30.0gのPMAを入れ、自転−公転真空ミキサー“あわとり錬太郎”(登録商標)ARE−310((株)シンキー製)で混合して、42.0gの樹脂溶液(固形分28.6質量%)を得た。
得られた42.0gの樹脂溶液と平均粒径0.5μmのAg粉42.5gを混ぜ合わせ、3本ローラーミル(EXAKT M−50;EXAKT社製)を用いて混練し、84.5gの組成物A1を得た。
<離型性フィルム上への層Aの形成>
離型性フィルムF1の離型剤層面に組成物A1をコーターで層A厚みが3.5μmになるように塗布し、100℃、2分間乾燥して図1に示す導電パターン形成用フィルムを得た。
<回路配線の作製>
“ルミラー”T60の基材に導電パターン形成用フィルムの層Aが接するように60℃、1.0m/minのスピードで熱圧着した。離型性フィルム面にフォトマスクを密着させ、超高圧水銀ランプを有する露光機で50mJ/cm2の露光量で層Aを露光し、離型性フィルムを剥離後、30℃の0.2質量%炭酸ナトリウム水溶液で20秒間スプレー現像し、基材上にパターンを形成し、熱風オーブンにて140℃、30分間加熱処理を行い、図2に示すマイグレーション評価用回路基板および図3に示す耐屈曲性評価用回路基板を得た。
前述の方法により評価した結果を表3に示す。
(実施例2〜26)
表1〜2に示す層A、離型性フィルム、基材を用いて導電パターン形成用フィルムを実施例1と同様の方法で製造し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
(比較例1)
基板上に組成物A−1をスクリーン印刷機で塗布して乾燥し、熱風オーブンにて140℃、30分間加熱処理をして回路基板を得て、実施例1と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
(比較例2)
基板上に組成物A−1をスクリーン印刷機で塗布して乾燥後、実施例1と同様の方法で露光、現像、加熱処理をして回路基板を得て、実施例1と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
(比較例3〜5)
表1〜2に示す層A、離型性フィルム、基材を用いて導電パターン形成用フィルムを実施例1と同様の方法で製造し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表3に示す。