JP2018119897A - 質量分析を用いた物質同定方法及び質量分析データ処理装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】複数の化合物由来のMS/MSスペクトルが混合している場合でも化合物同定を可能とする。【解決手段】スペクトルDBから異なる化合物由来の二つのMS/MSスペクトルによるピークリストを選択的に読み出し(S1)、複数の混合比率の下でピークリストに基づくベクトルの成分を合成した合成成分を有するベクトルを求める(S2)。そして、合成成分を有するベクトルと実測のMS/MSスペクトルに基づくベクトルとの相関係数等を類似度として求める(S3)。スペクトルDB中の全ての化合物の組合せについて同様に類似度を求めたあと(S4でYes)、最も大きな類似度を示すMS/MSスペクトルの組合せを探索し、対応する複数の化合物を同定結果として表示する(S5)。【選択図】図2

Description

本発明は、質量分析を利用して試料中の物質を同定する方法、及び、該方法により試料中の物質を同定するための質量分析データ処理装置に関する。
分子量が大きな化合物を同定したりその化学構造を解析したりするために、質量分析の一手法であるMS/MS分析(タンデム分析)は有用な手法であり、様々な分野において近年広く利用されている。MS/MS分析を行う質量分析装置としてよく知られているのは、衝突誘起解離(CID)を行うコリジョンセルを挟んでその前後に四重極マスフィルタを配置した三連四重極型質量分析装置や、三連四重極型質量分析装置における後段の四重極マスフィルタを飛行時間型質量分析器(TOFMS)に置き換えたいわゆるQ−TOF型質量分析装置である。また、イオンを電場の作用により保持することが可能なイオントラップを備えたイオントラップ型質量分析装置やイオントラップ飛行時間型質量分析装置でもMS/MS分析や2回以上のイオン解離操作を伴うMSn分析が可能である。ここでは、MS/MS分析やMSn分析が可能である質量分析装置を総称して、タンデム型質量分析装置と呼ぶ。
タンデム型質量分析装置を用いて試料中の化合物を同定するための一般的な手法として、ライブラリサーチ法が知られている。ライブラリサーチ法では、多数の既知化合物を実測することで得られたMS/MSスペクトルが化合物情報に対応付けて収録されているデータベース(ライブラリ)を利用し、同定対象の化合物を測定することで得られたMS/MSスペクトルとスペクトルパターンが類似する化合物をデータベース中で検索することで化合物を同定する。主として代謝物を対象とした公共のMS/MSスペクトルのデータベースとしてMassbankが知られている(非特許文献1参照)。
一方、タンパク質やペプチドはアミノ酸配列の組合せの数が膨大であるために、通常、上記のようなライブラリサーチ法による同定は困難である。そこで、一般的には、次の手順によるデータベース検索法により同定が実施される。
(1)タンパク質データベースに収録されているタンパク質のアミノ酸配列に基づいて、衝突誘起解離によって生成されると推定されるプロダクトイオンのピークの質量電荷比を理論的に計算する。
(2)計算によって求まった理論的なピークリストと実測のMS/MSスペクトルのピークとの類似度を評価する。データベース中のタンパク質(又はペプチド)のアミノ酸配列の中でピークの類似度が最も高いものを探索する。
こうした手法によりペプチドを同定する代表的なデータベース検索ソフトウェアとしては、英国マトリクスサイエンス(MatrixScience)社が提供しているMascotがよく知られている(非特許文献2参照)。
上述したライブラリサーチ法、データベース検索法のいずれでも、二つのマススペクトル又は二つのピークリストの類似度を数値化し、複数の化合物候補の中で最も高い類似度を有し且つその値が所定の閾値を超えている場合に、その化合物である可能性が高いと判断している。
例えば上述したMassbankでは、二つのマススペクトル各々から生成されるピークリストの類似度を多次元ベクトルの類似度で以て評価している。具体的には、二つのマススペクトルのいずれかにピークが存在するm/zにそれぞれ次元を割り当てた多次元ベクトル空間を想定し、各ピークの強度値(intensity)をその多次元ベクトル空間内の各次元における要素(値)としてマススペクトルをベクトル化する。そして、二つのマススペクトルから生成される二つのベクトルv1、v2の類似度Score(v1,v2)を次の(1)式で定義する。
Score(v1,v2)=(v1*v2)/(|v1|・|v2|) …(1)
ここで、v1*v2はベクトルv1、v2の内積である。また、|v1|はベクトルv1の大きさ(スカラー量)である。
二つのマススペクトルの類似度の計算例を図4により説明する。いま、二つのマススペクトルが図4(a)、(b)に示すものであるとする。ここでは、両マススペクトルのいずれかに存在するピークのm/z値、つまりm1〜m6をそれぞれ一つの次元とする6次元のベクトル空間を考える。ベクトルv1はピークi1〜i4を含むベクトルであり、ベクトルv2はピークj1〜j4を含むベクトルである。ピークi1とピークj1、ピークi3とピークj3はそれぞれm/z値が同じであって強度値は0より大きいので、(1)式による類似度Score(v1,v2)は次の式に基づいて算出される。
v1*v2=i1・j1+i3・j3
|v1|=√(i12+i22+i32+i42
|v2|=√(j12+j22+j32+j42
なお、一方のマススペクトル上のピークと他方のマススペクトル上のピークのm/z値が完全に同じでなくても、この二つのピークのm/z値が質量分析装置の性能や測定方法などにより決まる許容誤差範囲に収まる場合には、それら二つのピークのm/z値は同じであると判断され、そのm/z値には一つの次元が割り当てられる。
ところで、MS/MSスペクトルに基づく化合物同定処理において化合物を同定できない場合がある。その原因は様々であり、例えば、試料が劣化している、試料の量が少なすぎる、或いは、試料前処理が不適切である等の理由によってMS/MSスペクトルの品質が悪い(信号強度が低い、ノイズが多いなど)ことが一因として挙げられる。また、物質の変異や翻訳後修飾等のために、対応する化合物がデータベースやライブラリに登録されていない場合もある。
そのほかに、実測で得られたMS/MSスペクトルが一種類の化合物由来のものでなく、実は2種類以上の化合物由来のMS/MSスペクトルが混合したものであるという場合もある。こうしたことは、例えば試料に含まれる化合物を液体クロマトグラフ等で分離することなく分析に供する場合や、液体クロマトグラフ等を用いた前処理を行う場合であっても複数の化合物の保持時間が近いために分離しきれないような場合に生じる。この場合、データベースやライブラリ中に該当する化合物が見つからず同定不能となることもあるが、偶然に全く別の化合物由来のMS/MSスペクトルと類似してしまい、別の化合物であると誤同定されることもよくある。単に同定不能となるのであれば、他の方法等により同定を再度試みればよい。ところが、誤って別の化合物として同定してしまうと、特に医薬品開発の分野、薬毒物の検査分野などにおいて大きな問題を引き起こすことがある。
蓬莱(H.Horai)ほか34名、「マスバンク:ア・パブリック・リポジトリー・フォー・シェアリング・マス・スペクトラル・データ・フォー・ライフ・サイエンス(MassBank: a public repository for sharing mass spectral data for life sciences)」、ジャーナル・オブ・マス・スペクトロメトリー(J Mass Spectrom.)、2010年7月、Vol.45、No.7、pp.703-714 「MASCOT MS/MS Ions search」、[online]、英国マトリクスサイエンス社(Matrixscience)、[平成28年9月15日検索]、インターネット<http://www.matrixscience.com/cgi/search_form.pl?FORMVER=2&SEARCH=MIS>
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、複数の化合物由来のマススペクトルが混合してしまっている場合であっても、その複数の化合物を的確に同定することができる物質同定方法及び質量分析データ処理装置を提供することにある。
上記課題を解決するために成された本発明に係る物質同定方法は、質量分析を用いて試料中の物質を同定する物質同定方法であって、
a)試料に対する質量分析を実行して実測マススペクトルを取得する測定ステップと、
b)複数の既知の物質についてのマススペクトル上のピーク及び前記実測マススペクトル上のピークの質量電荷比をそれぞれ次元とした多次元ベクトル空間において、前記複数の既知の物質についてのマススペクトル上のピークの強度値を要素とした複数のベクトルを合成することにより求まる合成ベクトルと、前記実測マススペクトル上のピークの強度値を要素としたベクトルとの近接度合に基づいて、前記試料中の物質を同定する処理ステップと、
を有することを特徴としている。
また上記課題を解決するために成された本発明に係る質量分析データ処理装置は、試料を質量分析することで収集されたデータに基づいて、該試料中の物質を同定する質量分析データ処理装置であって、
a)既知の物質についてのマススペクトル又は該マススペクトルに基づくピークを集めたピークリストが収録されたデータベースと、
b)前記データベース中の複数の物質に各々対応する複数のマススペクトル上のピーク及び試料に対する質量分析を実行することで取得された実測マススペクトル上のピークの質量電荷比をそれぞれ次元とした多次元ベクトル空間において、前記複数の既知の物質についてのマススペクトル上のピークの強度値を要素とした複数のベクトルを合成することにより求まる合成ベクトルと、前記実測マススペクトル上のピークの強度値を要素としたベクトルとの近接度合に基づいて、前記試料中の物質を同定する処理部と、
を備えることを特徴としている。
ここでいうマススペクトルは、MS/MSスペクトルやnが3以上であるMSnスペクトルを含む。また、ピークリストは、そのマススペクトル上で観測される一又は複数のピークの情報をリスト化したものである。
本発明に係る物質同定方法及び質量分析データ処理装置において、多次元ベクトル空間における合成ベクトルと実測ベクトルとの近接度合として、二つの多次元ベクトルの距離、例えばユークリッド距離、マラハノビス距離、マンハッタン距離、チェビシェフ距離、ミンコフスキー距離などを用いることができる。また、上記近接度合として、二つの多次元ベクトルの類似度、例えば相関係数(ピアソンの相関係数)やコサイン類似度などを用いることもできる。
本発明に係る物質同定方法において、処理ステップでは、或る複数種の物質(化合物)のマススペクトル上のピークに基づく複数のベクトルを合成(線形結合)することで求まる合成ベクトルと実測ベクトルとの近接度合が高いとき、具体的には例えば相関係数による類似度が高いとき、そのときの実測マススペクトルはその複数種類の物質由来のマススペクトルが混合したものであると推定する。その推定に基づき、試料中の未知の物質は一つの物質ではなくその複数種類の物質であると同定する。例えばデータベース中に同定候補となり得る多数の物質が収録されている場合には、その中の複数種の物質の組合せについてそれぞれその物質のマススペクトルに基づく複数のベクトルを合成した合成ベクトルと実測ベクトルとの近接度合を調べ、最も近接度合が高い組合せに対応する物質を同定結果として挙げればよい。
また本発明に係る質量分析データ処理装置において、好ましくは、前記処理部は、
b1)前記データベースから取得したN個(Nは2以上の整数)の物質に各々対応するN個のマススペクトル上のピーク又はピークリストに挙げられているピークに基づくベクトルの成分を合成した成分を有する合成ベクトルを算出する合成成分算出部と、
b2)前記合成成分算出部で算出された合成ベクトルと前記実測ベクトルとの近接度合を示す指標値を算出する指標値算出部と、
b3)前記データベースから取得された異なるN個の物質の組合せについてそれぞれ算出された前記指標値を比較し、最も近接度合の高い物質の組合せを同定結果として決定する同定処理部と、
を含む構成とするとよい。
なお、合成成分算出部は、複数のベクトルの成分を合成する際にその合成比率を所定の範囲で変えた合成ベクトルをそれぞれ算出し、指標値算出部は、その異なる合成ベクトル毎に実測ベクトルとの近接度合を示す指標値を算出するとよい。そして、同定処理部は、同じN個の物質の組合せについて異なる合成比率の下での近接度合を示す指標値も比較対象とするとよい。これによれば、複数の物質の合成比率に依らず、その複数の物質を同定結果として挙げることができる。
本発明に係る物質同定方法及び質量分析データ処理装置によれば、解析対象のマススペクトルが複数の物質由来のマススペクトルが混合したものであり、混合したものであることが分からない場合であっても、その複数の物質を的確に同定することが可能である。それによって、そうした複数の物質由来のマススペクトルが混合した状態であるマススペクトルに基づいて物質を同定する際に、別の物質であるとの誤った同定をしてしまうことや、データベースに存在しない物質であると結論付けて同定不能に陥ることを回避することができる。
本発明に係る質量分析データ処理装置を含む質量分析システムの概略構成図。 本実施例の質量分析システムにおける化合物同定処理の手順を示すフローチャート。 本実施例の質量分析システムにおける化合物同定処理を説明するためのマススペクトルを示す図。 従来の化合物同定処理の際のマススペクトルの類似度算出方法を説明するためのマススペクトルを示す図。
本発明に係る物質同定方法を実施する質量分析データ処理装置を含む質量分析システムの一実施例について、添付図面を参照して説明する。
図1は本実施例の質量分析システムの概略構成図である。
本実施例の質量分析システムは、図1に示すように、質量分析部1と、データ処理部2と、スペクトルデータベース3と、表示部4と、を備える。
質量分析部1は、MS/MS分析が可能であれば、その種類を問わない。したがって、質量分析部1としては、三連四重極型質量分析装置、Q−TOF型質量分析装置、イオントラップ型質量分析装置、イオントラップ飛行時間型質量分析装置、TOF/TOF型質量分析装置、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析装置などを用いることができる。
データ処理部2は、機能ブロックとして、データ収集部21、合成成分計算部22、類似度計算部23、同定処理部24などを含み、パーソナルコンピュータに予めインストールされた専用のデータ処理ソフトウェアを該コンピュータ上で動作させることでそれら機能ブロックを具現化する構成とすることができる。
スペクトルデータベース3は、様々な既知の化合物についてのMS/MSスペクトル又はMS/MSスペクトル上で観測される一又は複数のピークのピーク情報(質量電荷比及び強度情報)を含むピークリストが収録されているデータベースである。以下の説明では、MS/MSマススペクトル上のピークリストが化合物情報(化合物名や構造式など)に対応付けて収録されているものとする。このMS/MSスペクトルは実測によるものでも、化合物の化学構造に基づいて理論的に計算されたものでもよい。例えば、代謝物などの場合には実測によるMS/MSスペクトルを利用すればよく、タンパク質やペプチドなどの場合には理論計算によるMS/MSスペクトルを利用すればよい。
本実施例の質量分析システムにおいて、質量分析部1は所定の分析条件に従って同定対象である化合物を含む試料に対するMS/MS分析を実行し、所定の質量電荷比範囲に亘るMS/MSスペクトル(プロダクトイオンスペクトル)を表すプロファイルデータを取得する。このデータはデータ収集部21においてセントロイド処理されてスペクトルデータとして一旦保存される。通常、この実測により得られた実測スペクトルデータとデータベースに収録されているマススペクトルとを照合することで試料中の化合物が同定されるが、本実施例の質量分析システムでは以下に述べる特徴的な処理によって化合物同定が行われる。
図2は本実施例の質量分析システムにおける化合物同定処理の手順を示すフローチャートである。ここでは同定処理の際に複数の化合物由来のマススペクトルの混合を想定するが、混合している化合物の数の上限は予め設定しておくものとする。いま、本例ではその上限を2、つまりは二つの化合物由来のMS/MSスペクトルの混合のみを想定するものとしている。なお、この上限数は予め装置に設定されていてもよいし、ユーザが自由に設定できるようにしてもよい。
化合物同定処理が開始されると、合成成分計算部22はスペクトルデータベース3から任意の二つのMS/MSスペクトルを選択し、そのMS/MSスペクトルのピークリストを読み出す(ステップS1)。
実測スペクトルにおいて仮に或る二つの化合物由来のMS/MSスペクトルが混合しているとしても、その混合比率は不明である。いま、MS/MSスペクトルAとMS/MSスペクトルBとの混合比率をα:βとする。このα、βはそれぞれ、MS/MSスペクトルの各ピークの強度値を定数倍(α倍、β倍)する重付け係数であると捉えることができる。この重付け係数の組合せ(α,β)の範囲は予め定めておく。ここでは、係数α、βがそれぞれ1〜3の範囲の整数であるものとする。この場合、重付け係数の組合せ(α,β)は、(1,1)のほか、(1,2)、(1,3)、(2,3)、(3,2)、(2,1)、(3,1)の合計7種類となる。
合成成分計算部22は、読み出した二つのピークリストについて、重付け係数(α,β)の全ての組合せについてそれぞれ、二つのピークリストに基づく多次元ベクトルの成分を合成した成分を計算する(ステップS2)。
ここで、図3を参照してベクトル成分の合成の一例を具体的に説明する。
スペクトルデータベース3から取得した二つの化合物由来のMS/MSスペクトルは図3(a)及び(b)に示すものであり、これらMS/MSスペクトルに基づくピークリストを表すベクトルをv2、v3とする。即ち、ベクトルv2は四つのピークj1、j2、j3、j4を成分として含む。ベクトルv3は三つのピークk1、k2、k3を成分として含む。
いま、混合比率つまりは重付け係数がα=2、β=1である場合、ベクトルの合成成分は図3(c)に示すようになる。ベクトルv2とベクトルv3とでm/z値が同じ(m/z=m1)であるピークはj1、k1のみであり、他のピークは全てm/z値が相違する。そのため、合成成分では、m/z=m1のピークj1’はピークj1とピークk1の強度値が(2,1)の比率で加算されたものとなる。また、ベクトルv2に含まれる各ピークj2、j3、j4の強度値は2倍され、ベクトルv3に含まれる各ピークk2、k3の強度値はそのまま、合成成分に反映される。
上述のようして合成成分計算部22では、全ての重付け係数の組合せについて二つのピークリストの合成成分が計算される。類似度計算部23はデータ収集部21から実測のマススペクトルデータを読み出してピークリストを作成する。そして、重付け係数の組合せ毎に、実測のピークリストに基づくベクトルと上記合成成分を有するベクトル(合成ベクトル)との類似度を計算する(ステップS3)。ここでは、実測のピークリストに基づくベクトルv1と、合成成分を有するベクトルvxとの類似度Score(v1,vx)を次の(2)式に基づき計算する。
Score(v1,vx)=(v1*vx)/(|v1|・|vx|) …(2)
vx=α・v2+β・v3
いま、実測のMS/MSスペクトルが図3(d)に示すような4本のピークi1、i2、i3、i4を有しているものである場合、この実測のMS/MSスペクトルに基づくベクトルと、図3(e)に示した合成比率が(2,1)である合成成分を有するベクトルとの類似度は次の式を上の(2)式に代入したものとなる。なお、ピークのm/z値はm1〜m7の7種類であるから、それらベクトルは7次元ベクトル空間に位置付けられ、類似度はその7次元ベクトル空間における二つのベクトルの類似度である。
v1*vx=v1*(α・v2+β・v3)=i1・j1’+i3・j3+i4・k3
|vx|=|α・v2+β・v3|=√(j1’2+j22+k22+j32+j42+k32
同様にして、重付け係数の全ての組合せにおける合成成分を有するベクトルvxについて、実測MS/MSスペクトルに基づくピークリストから得られるベクトルv1との類似度Score(v1,vx)が求まる。
こうしてステップS1で選択された二つのMS/MSスペクトルを混合したMS/MSスペクトルと実測MS/MSスペクトルとの類似度が求まるから、次に類似度計算部23はスペクトルデータベース3中の全てのMS/MSスペクトルの組合せについて類似度を計算したか否かを判定する(ステップS4)。そして、未算出のMS/MSスペクトルの組合せがあればステップS4からS1へと戻り、新たなMS/MSスペクトルの組合せを選択してステップS1〜S3の処理を実行する。選択すべきMS/MSスペクトルの組合せがなくなるまでステップS1〜S4の処理を繰り返すことで、二つのMS/MSスペクトルの全ての組合せによる混合MS/MSスペクトルと実測のMS/MSスペクトルとの類似度が求まる。
そのあと同定処理部24は、最も大きな類似度を与える二つのMS/MSスペクトルの組合せを抽出し、各MS/MSスペクトルに対応する化合物を同定結果として表示部4に表示する(ステップS5)。なお、同定処理部24では、最も大きな類似度が所定の閾値以上であるか否かを判定し、最も大きな類似度が閾値に達しない場合には同定の信頼度が低いと判断して同定不能との結果を出力してもよい。
なお、実際には、通常、実測のMS/MSスペクトルが一種類の化合物由来のものか、或いは、複数の異なる種類の化合物由来のMS/MSスペクトルが混合したものであるのかが不明である。そこで、実測のMS/MSスペクトルが一種類の化合物由来のものであることを前提とした従来行われている化合物同定処理も並行して実施するようにしてもよい。その場合、その化合物同定処理により得られた最大の類似度が、上述した複数のMS/MSスペクトルの混合を前提とした化合物同定処理で求まった類似度よりも大きければ、実測のMS/MSスペクトルは一種類の化合物由来のものであると判断すればよい。
また図2に示した処理では、二つのMS/MSスペクトルの全ての組合せにおける異なる混合比率の合成成分を求め、それらの類似度を算出したあとに、その類似度を比較して類似度が最大である組合せを探索しているが、類似度を一つ求める毎にそれがその直前に求めた類似度よりも大きいか否かを判定してもよい。こうして逐次的に類似度を判定し、最終的に残った組合せを選定してもよい。このように、類似度が最も高い、つまりは最も正解である確率が高いと推定されるMS/MSスペクトルの組合せ(化合物の組合せ)を探索するアルゴリズムは上記記載のものに限らず、適宜に変形することができる。
また、例えば試料の種類や分析目的などの情報によって、スペクトルデータベース3に登録されている多数の化合物の中で同定候補となり得ない化合物を始めから除外することで、類似度の算出や判定を行う対象の化合物の組合せを絞るようにしてもよい。即ち、必ずしもスペクトルデータベース3に登録されている化合物全てについて図2に示した化合物同定処理の対象とするとは限らない。
また、上記実施例における化合物同定処理では、二つのベクトルの類似度の計算に相関係数(ピアソンの相関係数)を用いているが、相関係数以外の類似度を利用することもできる。例えば、多次元ベクトル空間における二つのベクトルの成す角度を利用した、コサイン類似度などを用いてもよいし、多次元ベクトル空間における二つのベクトルの距離を類似度として用いることができる。この距離としては、ユークリッド距離、マラハノビス距離、マンハッタン距離、チェビシェフ距離、ミンコフスキー距離などの周知のものを用いることができる。或いは、算出方法の相違する二以上の類似度を組み合わせることで、類似性の判定の信頼度を高めるようにしてもよい。
また、上記実施例では本発明に係る物質同定方法をMS/MSスペクトルに適用したが、nが3以上のMSnスペクトルに適用することもできるし、CID等によるイオン解離操作を伴わないマススペクトル、インソース分解等によるイオン解離が生じたマススペクトルなどに本発明を適用することができる。
さらにまた、上記実施例はあくまでも本発明の一例であって、上記の変形以外に、本発明の趣旨の範囲で適宜修正、変更、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
1…質量分析部
2…データ処理部
21…データ収集部
22…合成成分計算部
23…類似度計算部
24…同定処理部
3…スペクトルデータベース
4…表示部

Claims (4)

  1. 質量分析を用いて試料中の物質を同定する物質同定方法であって、
    a)試料に対する質量分析を実行して実測マススペクトルを取得する測定ステップと、
    b)複数の既知の物質についてのマススペクトル上のピーク及び前記実測マススペクトル上のピークの質量電荷比をそれぞれ次元とした多次元ベクトル空間において、前記複数の既知の物質についてのマススペクトル上のピークの強度値を要素とした複数のベクトルを合成することにより求まる合成ベクトルと、前記実測マススペクトル上のピークの強度値を要素としたベクトルとの近接度合に基づいて、前記試料中の物質を同定する処理ステップと、
    を有することを特徴とする質量分析を用いた物質同定方法。
  2. 試料を質量分析することで収集されたデータに基づいて、該試料中の物質を同定する質量分析データ処理装置であって、
    a)既知の物質についてのマススペクトル又は該マススペクトルに基づくピークを集めたピークリストが収録されたデータベースと、
    b)前記データベース中の複数の物質に各々対応する複数のマススペクトル上のピーク及び試料に対する質量分析を実行することで取得された実測マススペクトル上のピークの質量電荷比をそれぞれ次元とした多次元ベクトル空間において、前記複数の既知の物質についてのマススペクトル上のピークの強度値を要素とした複数のベクトルを合成することにより求まる合成ベクトルと、前記実測マススペクトル上のピークの強度値を要素としたベクトルとの近接度合に基づいて、前記試料中の物質を同定する処理部と、
    を備えることを特徴とする質量分析データ処理装置。
  3. 請求項2に記載の質量分析データ処理装置であって、前記処理部は、
    b1)前記データベースから取得したN個(Nは2以上の整数)の物質に各々対応するN個のマススペクトル上のピーク又はピークリストに挙げられているピークに基づくベクトルの成分を合成した成分を有する合成ベクトルを算出する合成成分算出部と、
    b2)前記合成成分算出部で算出された合成ベクトルと前記実測ベクトルとの近接度合を示す指標値を算出する指標値算出部と、
    b3)前記データベースから取得された異なるN個の物質の組合せについてそれぞれ算出された前記指標値を比較し、最も近接度合の高い物質の組合せを同定結果として決定する同定処理部と、
    を含むことを特徴とする質量分析データ処理装置。
  4. 請求項3に記載の質量分析データ処理装置であって、
    前記合成成分算出部は、複数のベクトルの成分を合成する際にその合成比率を所定の範囲で変えた合成ベクトルをそれぞれ算出し、前記指標値算出部は、その異なる合成ベクトル毎に実測ベクトルとの近接度合を示す指標値を算出することを特徴とする質量分析データ処理装置。
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