JP2018117695A - ポリオレフィン系樹脂積層フィルムおよび医療用包装体 - Google Patents
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Abstract
Description
血液バッグに分画採取された血漿製剤は、凍結保存され、使用時には恒温槽や融解装置を用いて融解させた後に使用される。
しかし、ポリエチレン系樹脂組成物を主として使用したものは柔軟性、耐寒性に優れるが、耐熱性に乏しく(特許文献1)、耐熱性の向上には電子線架橋が必要となり装置の維持に多大なエネルギーとコストを要するという問題がある(特許文献2)。
他方、ポリプロピレン系樹脂を主として使用したものは耐熱性に優れるが、柔軟性、耐寒性に乏しいという問題がある(特許文献3)。
また、本発明において、「X以上」(Xは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルム(以下、単に「積層フィルム」ということがある。)は、少なくとも表層、中間層、裏層の3層から構成されることが重要である。3層以上であれば中間層の柔軟性と、表裏層の耐熱性との両方を具備することができる為、好ましい。また、層間密着性やさらなる機能性賦与の観点から、4層以上の構成にしても良い。上限については特に制限は無いが、生産設備が複雑になり生産性が悪化する可能性がある為、20層以下が好ましい。
本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルムは、表裏層のいずれもがポリオレフィン系樹脂組成物からなることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂を含む組成物である。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ―4―メチルペンテン、或いはこれらの共重合体などが挙げられるが、溶出性の観点でポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレン−プロピレン)共重合体が好ましい。各層を構成するポリオレフィン系樹脂組成物に占めるポリオレフィン系樹脂の割合としては、層間密着性の観点から、50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、60質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上100質量%以下であることが更に好ましい。
本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルムは少なくとも表層、中間層、裏層の3層からなり、かつ該積層フィルムの少なくとも中間層に、エチレンブロックとα−オレフィンブロックとを有するブロック共重合体(以下、bEOPと表記することもある。)を含んでなることが重要である。積層フィルムの少なくとも中間層が前述のブロック共重合体を含むことで、フィルムに良好な柔軟性と耐熱性が賦与される。
なお、bEOPが、積層フィルムの中間層のみに含まれる場合が最も好ましい。
α−オレフィンの炭素数が4以上であることで、bEOPの柔軟性と耐熱性とが向上し、フィルムとした際の柔軟性が賦与されるという効果がある。上限としては、共重合体の製造が困難になる為、20以下が好ましい。
このようなbEOPとしては、それぞれエチレンとα−オレフィンとを混合し、重合触媒を使用して重合する以外に、ダウケミカル社「INFUSE」として市販されており、入手することができる。
本発明に用いられるbEOPにおいて、α−オレフィンの共重合比率は、30質量%以上50質量%以下であることが好ましい。30質量%以上であることで、フィルムにした際の柔軟性を発現するという効果がある。50質量%以下であることで、フィルムにした際の耐熱性を発現するという効果がある。より好ましくは32質量%以上48質量%以下、更に好ましくは34質量%以上46質量%以下である。
試料約200mgを外径10mmのNMR試料管に量りとり、重オルトジクロロベンゼンと重パラジクロロベンゼンとの質量比7/1の混合溶液2.7mLを加えて130℃で溶解した。Variant社製Unity400を用い、周波数100MHz、フリップ角900°、パルス繰り返し時間20s、積算回数3200回、温度130℃にて測定し、エチレン主鎖のシグナルを30.0ppmとして13C−NMRスペクトルを帰属し、α−オレフィンの含有量を求めた。
本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルムは、本発明の主旨を逸脱しない範囲で前述の3層以外に、更なる層を積層していても良い。更なる層の例としては、層間強度を向上する為の接着層、フィルムの透過性を阻害する為のバリア層、フィルムの視認性を向上する為の着色層などが挙げられる。更なる層は、どの順番で積層していても構わない。
本発明のポリオレフィン系樹脂積層フィルムは、Tダイ法、水冷インフレーション法、空冷インフレーション法、ラミネーション法などの製法により製造することができる。これらの中でも衛生性の観点でTダイ法や水冷インフレーション法が好ましい。
先ずは、実施例・比較例で得たサンプルの各種物性値の測定方法及び評価方法について説明する。
1/1000mmのダイアルゲージにて、サーミスタ成分が塗工された部分の面内を不特定に5箇所測定し、その平均値をポリオレフィン系樹脂積層フィルムの厚さとした。
作製したポリオレフィン系樹脂積層フィルムにおいて、その断面SEMを測定することで、表層・裏層のそれぞれの厚さを測定した。なお、本実施例では便宜上、キャスト面側の表裏層を裏層、非キャスト面側の表裏層を表層とした。
作製したポリオレフィン系樹脂積層フィルムにおいて、その断面SEMを測定することで、中間層の厚さを測定した。
作製したポリオレフィン系樹脂積層フィルム及び、既存のポリ塩化ビニル製フィルムの耐寒性を下記の基準で評価した。
なお、脆化温度はJIS K 7216に準拠して測定した。
◎:フィルムの脆化温度が−60℃を下回る。
○:フィルムの脆化温度が−60℃以上、−55℃以下である。
△:フィルムの脆化温度が−55℃以上、−50℃を下回る。
×:フィルムの脆化温度が−50℃を超える。
作製したポリオレフィン系樹脂積層フィルム及び、既存のポリ塩化ビニル製フィルムを50mm×100mmの大きさに切り出し、正方20mmピッチの金網の上に乗せ、121℃の熱処理オーブンで1時間熱処理を行なった後、フィルム外観を下記の基準で評価し、耐熱性を評価した。
◎:フィルムに外観上の変形がない。
○:フィルムに外観上の変形がわずかにみられる。
△:金網のピッチに沿ってフィルムに変形痕が残る。
×:フィルムが明らかに形状を維持していない。
作製したポリオレフィン系樹脂積層フィルム及び、既存のポリ塩化ビニル製フィルムを長手方向、幅方向にそれぞれ10mm×200mmの短冊状に切り出し、121℃の熱処理オーブンで1時間熱処理を行なった後に長手方向、幅方向それぞれの短冊の熱収縮率を下記の計算式にて測定し、相加平均したものをフィルムの熱収縮率とした。
熱収縮率[%] = {(熱処理前の長さ)−(熱処理後の長さ)}/(熱処理前の長さ)×100
作製したポリオレフィン系樹脂積層フィルムを直径3インチのプラスチック製コアに巻取り、その捲回性を以下基準で判断した。
○:フィルム同士が癒着せず、容易に巻き解くことができる。
×:フィルム同士が癒着して、容易に巻き解くことができない。あるいは巻き解けたとしてもフィルムに変形が残る。
層構造がA/B/Aとなる2種3層構造のTダイに2台の三菱重工株式会社製の32mm単軸押出機を接続し(それぞれA押出機、B押出機と呼ぶ)、A押出機からは、121℃の引張貯蔵弾性率が66MPaの直鎖状低密度ポリエチレン「FY−13(東ソー社製)」(比重0.950)を、B押出機からαオレフィン(炭素数8)の共重合比が36質量%のエチレン−αオレフィンブロック共重合体(bEOP)「INFUSE 9000(ダウケミカル社製)」(比重0.877)をそれぞれ厚さ比A:B:A=1:8:1で、200℃で押出し、40℃の冷却ロールにより急冷し巻き取ることにより、2種3層構造の、幅400mm、厚さ300μmの実施例1に係る積層フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
A押出機からは、121℃の引張貯蔵弾性率が59MPaのポリプロピレン系樹脂「ゼラス 7025(三菱化学株式会社製)」(比重0.890)を、B押出機からαオレフィン(炭素数8)の共重合比が36質量%のエチレン−αオレフィンブロック共重合体(bEOP)「INFUSE 9000(ダウケミカル社製)」(比重0.877)と直鎖状低密度ポリエチレン「FY−12(東ソー社製)」(比重0.915)を質量比7:3で混合したものをそれぞれ押出したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2に係る積層フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
A押出機からは、121℃の引張貯蔵弾性率が59MPaのポリプロピレン系樹脂「ゼラス 7025(三菱化学株式会社製)」(比重0.890)を、B押出機からαオレフィン(炭素数8)の共重合比が36質量%のエチレン−αオレフィンブロック共重合体(bEOP)「INFUSE 9000(ダウケミカル社製)」(比重0.877)をそれぞれ押出したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3に係る積層フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
A押出機からは、121℃の引張貯蔵弾性率が59MPaのポリプロピレン系樹脂「ゼラス 7025(三菱化学株式会社製)」(比重0.890)を、B押出機からαオレフィン(炭素数8)の共重合比が48質量%のエチレン−αオレフィンブロック共重合体(bEOP)「INFUSE 9107(ダウケミカル社製)」(比重0.866)をそれぞれ押出したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4に係る積層フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
A押出機からは、121℃の引張貯蔵弾性率が66MPaの直鎖状低密度ポリエチレン「FY−13(東ソー社製)」(比重0.950)を、B押出機からαオレフィン(炭素数8)の共重合比が36質量%のエチレン−αオレフィンブロック共重合体(bEOP)「INFUSE 9000(ダウケミカル社製)」(比重0.877)をそれぞれ厚さ比A:B:A=1:3:1で押出したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5に係る積層フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
A押出機からαオレフィン(炭素数8)の共重合比が36質量%のエチレン−αオレフィンブロック共重合体(bEOP)「INFUSE 9000(ダウケミカル社製)」(比重0.877)を押出し、B押出機からは、121℃の引張貯蔵弾性率が66MPaの直鎖状低密度ポリエチレン「FY−13(東ソー株式会社製)」(比重0.950)をそれぞれ押出したこと以外は実施例1と同様にして、比較例1に係る積層フィルムを得たが、巻き付けによりブロッキングが生じ、生産上問題が生じた。評価結果を表1に示す。
B押出機からαオレフィン(炭素数8)の共重合比が36質量%のエチレン−αオレフィンランダム共重合体(rEOP)「AFFINITY PL1880G(ダウケミカル社製)」(比重0.902)を押出したこと以外は実施例1と同様にして、比較例2に係る積層フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
B押出機からαオレフィン(炭素数3)の共重合比が36質量%のエチレン−プロピレンブロック共重合体「プライムTPO T310E(プライムポリマー社製)」(比重0.890)を押出したこと以外は実施例1と同様にして、比較例3に係る積層フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
A押出機からは、121℃の引張貯蔵弾性率が66MPaのポリプロピレン系樹脂「ゼラス 7025(三菱化学社製)」(比重0.890)を、B押出機からもポリプロピレン系樹脂「ゼラス 7025(三菱化学社製)」(比重0.890)をそれぞれ押出したこと以外は実施例1と同様にして、比較例4に係る積層フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
既存のポリ塩化ビニル製フィルムの評価結果を表1に示す。
一方で、比較例1では、表裏層と中間層とが逆であり、常温弾性率の低いエチレン−αオレフィンブロック共重合体(bEOP)が外層にある為、捲回性に問題が生じた。比較例2では、エチレン−αオレフィンランダム共重合体(rEOP)を用いた為、耐熱性が十分でなかった。比較例3では、αオレフィンが炭素数3のポリプロピレンであった為、耐熱性が十分でなかった。比較例4に係る積層フィルムはポリプロピレンのみからなる為、耐寒性が十分でなかった。比較例5に係る既存のポリ塩化ビニル製フィルムは、耐寒性が良くなかった。
Claims (6)
- 少なくとも表層、中間層、裏層の3層からなる積層フィルムであって、かつ該積層フィルムの少なくとも中間層が、エチレンブロックとα−オレフィンブロックとを有するブロック共重合体を含んでなり、かつ該α−オレフィンの炭素数が4以上20以下であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂積層フィルム。
- 前記積層フィルムの前記表層及び前記裏層のいずれもがポリオレフィン系樹脂組成物からなり、全層中に占める前記ブロック共重合体の質量割合が50質量%以上99質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂積層フィルム。
- 前記ブロック共重合体におけるα−オレフィンの共重合割合が30質量%以上50質量%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリオレフィン系樹脂積層フィルム。
- 前記表層、前記裏層の前記ポリオレフィン系樹脂組成物の121℃における引張貯蔵弾性率が1MPa以上80MPa以下であることを特徴とする請求項2又は3に記載のポリオレフィン系樹脂積層フィルム。
- 前記積層フィルムの121℃における熱収縮率が1%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂積層フィルム。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂積層フィルムを用いた医療用包装体。
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