JP2018117646A - トマト含有飲料及びその製造方法、トマト含有飲料における苦味マスキング方法、並びにトマト含有飲料用の苦味マスキング剤 - Google Patents

トマト含有飲料及びその製造方法、トマト含有飲料における苦味マスキング方法、並びにトマト含有飲料用の苦味マスキング剤 Download PDF

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Abstract

【課題】高糖酸比のトマト含有飲料における苦味の改善。【解決手段】本願の発明者らが鋭意検討して見出したのは、トマト含有飲料において、香辛料又は香辛料抽出物を配合することで、苦味をマスキングできることである。当該苦味が感じられるのは、飲んだ後半である(後味としての苦味)。この知見の下で本願発明者が完成させた発明は、次のとおりである。本発明に係るトマト含有飲料の糖酸比は、14.0以上である。当該飲料が含有するのは、香辛料及び香辛料抽出物の少なくとも一方である。当該香辛料を列挙すると、シナモン、バジル、及びバニラである。【選択図】なし

Description

本発明が関係するのは、トマト含有飲料及びその製造方法、トマト含有飲料における苦
味マスキング方法、並びにトマト含有飲料用の苦味マスキング剤である。
従来から健康の維持のために人々が飲んでいるのは、トマト含有飲料であり、このトマ
ト含有飲料を例示すると、ストレートトマトジュース、濃縮還元トマトジュース、濃縮ト
マト飲料等である。
近年、人々が好んで飲むトマト含有飲料が呈しているのは、強い甘味である。強い甘味
を実現する原材料は、いくつか知られており、例えば、高糖酸比のトマト(例えば、フル
ーツトマト)の搾汁(非特許文献1及び2)や脱酸トマト汁(特許文献1)等である。当
該トマト含有飲料では、酸度が相対的に低いため、酸味が感じにくい。酸味が感じにくい
ため、僅かな苦味が感じられる。つまり、当該トマト含有飲料が呈するのは、僅かな苦味
である。
苦味を改善する一の方法は、苦味の除去であり、例示すると、プロテアーゼ処理(特許
文献2)や含水ケイ酸ゲル処理(特許文献3)等である。これらの処理の欠点は、製造工
程の煩雑さである。
苦味を改善する他の方法は、苦味のマスキングであり、例示すると、エリスリトールの
添加(特許文献4)である。この方法の欠点は、エリスリトールが食品添加物であること
である。近年、食品添加物は、忌避されるからである。
特許第5189667号公報 特開平3−191767号公報 特開平5−111371号公報 特許平9−117262号公報
「土壌水分制限が大果系トマトのビタミンC,糖,有機酸,アミノ酸およびカロチン含量に与える影響」(園芸学会雑誌Vol.67、No.6、第927乃至933頁、1998年) 「ワインに勝る(?)味と香りとテクスチャー」(「旬」がまるごと 9月号 特集 トマト 02 第94乃至95頁、2007年9月20日発行、株式会社ポプラ社)
本発明が解決しようとする課題は、トマト含有飲料における苦味の改善である。
本願の発明者らが鋭意検討して見出したのは、トマト含有飲料において、香辛料又は香
辛料抽出物を配合することで、苦味をマスキングできることである。当該苦味が感じられ
るのは、飲んだ後半である(後味としての苦味)。この知見の下で本願発明者が完成させ
た発明は、次のとおりである。
本発明に係るトマト含有飲料の糖酸比は、14.0以上である。当該飲料が含有するの
は、香辛料及び香辛料抽出物の少なくとも一方である。当該香辛料の配合量は、0.00
05乃至0.02w/v%である。当該香辛料抽出物の配合量は、0.0005乃至0.
02w/v%である。当該香辛料を列挙すると、シナモン、バジル、及びバニラである。
本発明に係るトマト含有飲料の製造方法を構成するのは、調合工程である。当該工程に
おいて、トマト加工物に加えてられるのは、香辛料及び香辛料抽出物の少なくとも一方で
ある。当該製法が実現するのは、トマト含有飲料における苦味マスキング方法でもある。
本発明に係る苦味マスキング剤の有効成分は、シナミックアルデヒド、リナロール又は
バニリンである。当該マスキング剤の配合先は、トマト含有飲料であって、その糖酸比が
14.0以上のものである。当該マスキング剤の配合量は、0.0005乃至0.02w
/v%である。
本発明が提供できるのは、トマト含有飲料であって、その苦味が改善されたものである
<本実施の形態に係るトマト含有飲料の概要>
本実施の形態に係るトマト含有飲料(以下、「本飲料」という。)とは、トマト含有飲
料であって、そこに香辛料又は香辛料抽出物が配合されたものである。トマト含有飲料と
は、飲料であって、その主原料がトマトであるものをいい、例示すると、ストレートトマ
トジュース、濃縮還元トマトジュース、濃縮トマト飲料等である。本飲料の流通形態は、
好ましくは、容器詰である。容器を例示すると、PET容器、紙容器、缶などである。
<本飲料の糖度>
本飲料の糖度は、6度以上であり、好ましくは、9度以上且つ17度以下(9乃至17
度)である。本飲料に含まれる成分の一つは、糖であり、例示すると、グルコース、フル
クトース等である。糖度の測定手段は、糖度計である。糖度計を例示すると、屈折計であ
る。この屈折計が利用するのは、糖含量と屈折率との関係である。この屈折計の測定値は
、いわゆるBrix値(%)である。Brix値が示すのは、単位重量あたりの可溶性固
形分の量である。可溶性固形分に含まれるのは、厳密には、糖及び糖以外の可溶性固形分
であるが、本明細書において糖度の指標をBrix値(%)とする。
<本飲料の酸度>
本飲料の酸度は、0.70%以下であり、より好ましくは、0.29%以上且つ0.6
0%以下(0.29乃至0.60%)である。本飲料に含まれる成分の一つは、酸であり
、具体的には、有機酸であり、例示すると、クエン酸、リンゴ酸、乳酸や酢酸等である。
酸度の測定方法は、0.1N水酸化ナトリウム標準液を用いた滴定法である。すなわち、
酸度は、クエン酸当量に換算した値である。
<本飲料の糖酸比>
本飲料の糖酸比は、14.0以上であり、より好ましくは、17.0以上且つ40.0
以下(17.0乃至40.0)である。糖酸比とは、糖度を酸度で除した値である。糖酸
比が高ければ、甘味が強い。他方、糖酸比が低ければ、酸味が強い。本飲料の糖酸比の調
整方法は、後述する。
<本飲料のトマト加工原料>
本飲料が含有するトマト加工原料を列挙すると、トマトの搾汁(ストレート果汁)、濃
縮トマト(トマトピューレ及びトマトペースト)及び濃縮トマトの還元汁、並びにそれら
の加工汁である。
トマトの搾汁(ストレート果汁)及び濃縮トマトの定義を説明するため、本明細書に取
り込まれるのは、トマト加工品の日本農林規格(最終改正平成21年5月19日農林水産
省告示第669号)である。また、搾汁及び濃縮の詳細な説明のため、本明細書に取り込
まれるのは、最新果汁・果実飲料辞典(社団法人日本果汁協会監修)の内容である。
当該加工汁を例示すると、除パルプ汁や高糖酸比トマト汁等である。除パルプ汁とは、
トマトの搾汁又は濃縮トマトの還元汁であって、その不溶性固形分の一部又は全部が取り
除かれたものである。特に、透明トマト汁とは、トマトの搾汁又は濃縮トマトの還元汁で
あって、その不溶性固形分の全部が取り除かれたものである(「トマト漿液」とも言われ
ることもある)。高糖酸比トマト汁とは、トマトの搾汁又は濃縮トマトの還元汁であって
、糖酸比が調整されてその値が相対的に高いものをいう。特に、減酸トマト汁とは、トマ
トの搾汁又は濃縮トマトの還元汁であって、酸度を減らして糖酸比を高めたものをいう(
脱酸トマト汁と言われることもある。)。酸度を減らす方法は、後述する。
<糖酸比の調節方法>
本飲料の糖酸比は、14度以上であり、より好ましくは、17.0乃至40.0である
。本飲料の糖酸比が17.0乃至40.0である場合、本飲料が呈するのは、強い甘味で
ある。糖酸比を決める要素は、原料及び技術である。つまり、これらの要素が単独で又は
組み合されることで、糖酸比が調整される。
原料の要素は、多岐にわたり、トマトの品種、収穫地や収穫時期等であるが、これらに
限られない。高糖酸比を実現する原料は、いわゆる高糖度トマトである。高糖度トマトを
例示すると、桃太郎T−93、あいこ、アメーラ(登録商標)等である。また、高糖酸比
トマトの産地を例示すると、地中海地域(イタリア等)等である。これらのトマトは、適
宜、搾汁又は濃縮されて、トマト加工原料となる。
技術の要素は、糖度又は酸度の調整である。すなわち、糖酸比が高くなるのは、糖度が
増加し又は酸度が減少する場合である。糖度を増加させる方法は、トマト加工原料の濃縮
や糖の配合等である。配合される糖を例示すると、果糖、ブドウ糖、ショ糖、液糖、や異
性化液糖などである。酸度を減少させる方法は、有機酸の除去である。有機酸の除去方法
は、公知であり、例示すると、重曹の添加や陰イオン交換などである。陰イオン交換の具
体的手法は、陰イオン交換樹脂、イオン交換膜などである。
<その他甘味の強化方法>
甘味を強化する方法は、好ましくは、前述のとおり、糖酸比の調整である。もっとも、
本実施の形態が排除しないのは、甘味料の使用である。甘味料を例示すると、糖アルコー
ルや高感度甘味料等である。糖アルコールを例示すると、エリスリトール、トレハロース
、ソルビトールなどである。高感度甘味料を例示すると、アスパルテーム、アセスルファ
ムカリウム、スクラロース、ステビアなどである。
<トマト含有飲料における苦味>
トマト含有が呈するのは、苦味である。この苦味は、飲みにくさの要因の一つである。
苦味が感じられるのは、飲んだ後半である。言い換えると、当該苦味は、トマト含有の後
味である。当該苦味が感じられるのは、トマト含有飲料の糖酸比が概ね14.0度以上の
場合である。当該苦味がより強く感じられるのは、糖酸比が17.0乃至40.0の場合
である。推察ではあるが、苦味を感じる原因は、酸による刺激(酸味)の減少である。
<本飲料の香辛料及び香辛料抽出物>
本飲料がトマト加工原料に加えて含有するのは、香辛料及び香辛料抽出物の少なくとも
一方であり、その目的は、苦味のマスキングである。当該苦味が感じされるのは、飲んだ
後半であることから、マスキング効果が発揮される時期は、好ましくは、飲んだ後半(以
下、「後味」という。)である。
<香辛料>
香辛料とは、調味料であって、飲食物に対して辛味又は香気を付与するものをいい、好
ましくは、当該辛味又は香気が後味となるものをいう。香辛料の原材料は、乾燥された植
物片である。植物片を例示すると、葉、茎、花、果実(これらを総称して、「ハーブ」と
いう。)、果皮、つぼみ、樹皮、種子、地下茎など(これらを総称して、「スパイス」と
いう。)である。香辛料を例示すると、シナモン、バジル、バニラ、黒コショウ、白コシ
ョウ、クミン、メッチ、ナツメグ、メース、オールスパイス、コリアンダー、セロリシー
ド、フェンネル、アニスシード、スターシード、カルダモン、キャラウェイ、ディル、サ
ンショウ、マスタード、ニンニク、たまねぎ、ねぎ、リーク、赤唐辛子、パプリカ、レッ
ドピーマン、ローレル、セージ、タイム、マジョラム、オレガノ、パセリ、ローズマリー
、シソ、ジンジャー、ターメリック、ホースラディッシュ、ワサビ、クローブ等である。
香辛料の配合量は、特に限定されないが、具体的には、本飲料100L当たり0.5g以
上であり且つ4g以下(0.5乃至4g/100L又は0.0005乃至0.004w/
v%)であり、好ましくは、本飲料100L当たり1g以上であり且つ2g以下(1乃至
2g/100L又は0.001乃至0.002w/v%)である。香辛料抽出物の配合量
は、特に限定されないが、本飲料100L当たり5g以上であり且つ20g以下(5乃至
20g/100L、又は、0.005乃至0.02w/v%)であり、好ましくは、本飲
料100L当たり5g以上であり且つ10g以下(5乃至10g/100L又は0.00
5乃至0.01w/v%)である。
当該マスキング効果を特に奏したのは、シナモン、バジル、及びバニラである。一般的
な知見によれば、シナモン、バジル、及びバニラが呈するのは、苦味である。当該一般論
から予想される結果として、トマト含有飲料であってその糖酸比が高いものにおいて、シ
ナモン、バジル、及びバニラを配合すれば、当該飲料の苦味が強まる。ところが、トマト
含有飲料であってその糖酸比が高いものにおいては、当該香辛料を配合すると、苦味がマ
スキングされたのである。当該結果は、全くの予想外であった。更に言えば、当該飲料の
うち酸度が低いものについては、当該マスキング効果がより顕著であった。
シナモンは、クスノキ科の常緑樹の樹皮や葉であり、肉桂、にっき、桂皮と言われるこ
ともある。その主な香気成分は、シナミックアルデヒドであるが、他には、オイゲノール
、ベンジルアルデヒド、カリオフィレンなどがある。シナモンの配合量は、本飲料100
L当たり0.5g以上であり且つ4g以下(0.5乃至4g/100L又は0.0005
乃至0.004w/v%)であり、好ましくは、本飲料100L当たり1g以上であり且
つ2g以下(1乃至2g/100L又は0.001乃至0.002w/v%)である。
バジルは、シソ科メボウキ属の一年草である。その主な香気成分は、リナロールであり
、他には、エステラゴール、シネオール、オイゲノールなどがある。バジルの配合量は、
本飲料100L当たり1g以上であり且つ4g以下(1乃至4g/100L又は0.00
1乃至0.004w/v%)であり、好ましくは、本飲料100L当たり1g以上であり
且つ2g以下(1乃至2g/100L又は0.001乃至0.002w/v%)である。
バニラは、ラン科バニラ属の植物である。その主な香気成分は、バニリンである。バニ
ラ抽出物の配合量は、本飲料100L当たり5g以上であり且つ20g以下(5乃至20
g/100L又は0.005乃至0.02w/v%)であり、好ましくは、本飲料100
L当たり5g以上であり且つ10g以下(5乃至10g/100L又は0.005乃至0
.01w/v%)である。
<香辛料抽出物>
香辛料抽出物とは、香辛料から抽出された辛味成分又は香気成分をいい、好ましくは、
当該辛味又は香気が後味となるものをいう。抽出溶媒は、公知であり、水、水蒸気、二酸
化炭素、エタノール、その他の有機溶剤等である。
当該マスキング効果を特に奏したのは、前述のとおり、シナモン、バジル、及びバニラ
であるから、香辛料抽出物も、好ましくは、シナモン抽出物(例えば、シナミックアルデ
ヒド溶液)、バジル抽出物(例えば、リナロール溶液)、及びバニラ抽出物(例えば、バ
ニリン溶液)である。
<合成香料>
本発明が排除しないのは、合成香料の添加である。すなわち、各香辛料の香気成分を製
出するにあたり、その出発物質を他の化合物又は元素としてもよい。例えば、バニリンの
製出にあたり、その出発物質は、リグニンである。
<苦味マスキング剤>
前述から明らかなとおり、本願発明者らが見出した香辛料及び香辛料抽出物の用途は、
トマト含有飲料の苦味マスキングである。すなわち、そのような苦味マスキング剤の有効
成分は、シナミックアルデヒド、リナロール又はバニリンである。当該苦味マスキング剤
の配合先は、トマト含有飲料であって、その糖酸比が高いものであり、具体的には、当該
糖酸比が14.0以上であり、より詳しくは、当該糖酸比が17.0乃至40.0のもの
であり、さらに詳しくは、その酸度が0.29乃至0.60%のものである。当該苦味マ
スキング剤の配合量は、本飲料100L当たり0.5g以上であり且つ20g以下(0.
5乃至20g/100L又は0.0005乃至0.02w/v%)であり、好ましくは、
本飲料100L当たり1g以上であり且つ10g以下(1乃至10g/100L又は0.
001乃至0.01w/v%)である。
<本飲料の製造方法>
本飲料の製造方法(以下、「本製法」という。)を主に構成するのは、搾汁工程、脱酸
工程、調合工程、殺菌工程、充填工程、密封工程及び冷却工程である。これらの工程の一
般的な説明のために本願明細書が取り込むのは、最新果汁・果実飲料辞典(社団法人日本
果汁協会監修)の内容である。各工程は、適宜省略可能である。
本製法を主に構成するのは、調合工程である。この調合工程において、本飲料の糖酸比
を調整して14.0以上とし、より好ましくは、17.0乃至40.0とする。調合され
る原材料は、トマト加工原料に加えて、香辛料又は香辛料抽出物である。これらの詳細は
、前述のとおりである。本製法が同時に実現するのは、トマト含有飲料における苦味マス
キング方法である。
本発明に係るトマト飲料を具現化したのは、実施例1乃至23である。言うまでもなく
、これらの実施例によって、本発明に係る特許請求の範囲は限定されない。
<実施例1乃至14>
実施例1乃至14において配合したのは、トマトペースト(Brix=29、糖酸比=
14.5)、及び、シナモンパウダー(ヤスマ社製)である。該トマトペーストは適宜希
釈してBrixを6.6乃至15.8%とした。その上で、酸度を減じて、0.29乃至
0.69%に調整した。また、各実施例において、本発明品におけるシナモンパウダーの
配合量は、0.002kg/100Lとした。これらの原材料に加水して混合した。得ら
れた調合液を加熱して95℃到達直後にPETボトルに充填した。充填後のPETボトル
を5分程度放置してから水冷した。得られたトマト飲料は、同じ配合量で且つシナモンパ
ウダーを配合していないもの(比較品)を対照として、苦味のマスキング効果を評価した
<実施例15乃至21>
実施例15乃至21において配合する原料は、香辛料がバジルパウダー(ヤスマ社製)
であること以外は、実施例1乃至14のものと同様である。各実施例において、該トマト
ペーストは適宜希釈してBrixは9.9乃至10.1%とした。その上で、酸度を減じ
て0.29乃至0.69%に調整した。また、各実施例において、本発明品におけるバジ
ルパウダー(ヤスマ社製)の配合量は、0.001kg/100Lとした。これらの原材
料に加水して混合した。得られた調合液を加熱して95℃到達直後にPETボトルに充填
した。充填後のPETボトルを5分程度放置してから水冷した。得られたトマト飲料は、
同じ配合量で且つバジルパウダーを配合していないもの(比較品)を対照として、苦味の
マスキング効果を評価した。
<実施例22乃至28>
実施例22乃至28において配合する原料は香辛料がバニラ抽出物(小川香料社製)で
あること以外は、実施例1乃至21のものと同様である。各実施例において、該トマトペ
ーストは適宜希釈してBrixは9.9乃至10.1%とした。その上で、酸度を減じて
0.29乃至0.69%に調整した。また、各実施例において、本発明品のおけるバニラ
抽出物(小川香料社製)の配合量は、0.02kg/100Lとした。これらの原材料に
加水して混合した。得られた調合液を加熱して95℃到達直後にPETボトルに充填した
。充填後のPETボトルを5分程度放置してから水冷した。得られたトマト飲料は、同じ
配合量で且つバニラ抽出物を配合していないもの(比較品)を対照として、苦味のマスキ
ング効果を評価した。
<Brixの測定方法>
本測定で採用したBrixの測定器は、屈折計(NAR−3T ATAGO社製)であ
る。測定時の品温は、20℃であった。
<酸度の測定方法>
本測定で採用した酸度の算出方法は、0.1N水酸化ナトリウム標準液を用いた滴定法
であり、滴定値よりクエン酸当量に換算して算出した。
<各サンプルにおける苦味マスキング効果の評価>
実施例1乃至28を官能評価するにあたり、評価した項目は後味の苦味である。特に甘
味の強いトマト飲料において苦味を感じるのは、飲み込んだ後であり、故に、後味を評価
した。評価において採用したのは、評点法である。苦味を感じるものほど、低い評点であ
り、マスキング効果が高いものほど、高い評点である。香辛料あるいは香辛料抽出物によ
る苦味のマスキング効果を比較する為、添加したものと、添加していない対照品とを比較
し、1点以上の差があるものを苦味のマスキング効果があるものと判断した。評価基準は
、以下のとおりである。
1点:苦味を非常に強く感じる
2点:苦味を強く感じる
3点:苦味をやや感じる
4点:苦味をわずかに感じる
5点:苦味がまったく感じられない
評価は、専門パネラー5名で行った。評価結果は、表1乃至3のとおりである。
Figure 2018117646
Figure 2018117646
Figure 2018117646
表1によれば、本飲料において苦味のマスキング効果が良好なのは、その糖酸比が14
.5以上の場合であり、より良好なのは、当該糖酸比が14.6乃至35.0の場合であ
った。この範囲では、シナモンパウダーの配合によって、当該苦味のマスキング効果が感
じられ、当該トマト飲料は飲みやすいものであった。特に、酸度が0.60以下では、酸
味が抑えられ、より甘さを感じると共に、後味に感じる苦味をマスキングする効果が顕著
であった。更に、Brix9.9%以上では、全体の糖度が高く、より甘さを感じると共
に、後味に感じる苦味をマスキングする効果が顕著であった。
表2によれば、本飲料において苦味のマスキング効果が良好なのは、その糖酸比が14
.6以上の場合であり、より良好なのは、当該糖酸比が17.0乃至35.0の場合であ
った。この範囲では、バジルパウダーの配合によって、当該苦味のマスキング効果が感じ
られ、当該トマト飲料は飲みやすいものであった。特に、酸度が0.60以下では、酸味
が抑えられ、より甘さを感じると共に、後味に感じる苦味をマスキングする効果が顕著で
あった。更に、Brix9.9%以上では、全体の糖度が高く、より甘さを感じると共に
、後味に感じる苦味をマスキングする効果が顕著であった。
表3によれば、本飲料において苦味のマスキング効果が良好なのは、その糖酸比が14
.6以上の場合であり、より良好なのは、当該糖酸比が17.0乃至35.0の場合であ
った。この範囲では、バニラ抽出物の配合によって、当該苦味のマスキング効果が感じら
れ、当該トマト飲料は飲みやすいものであった。特に、酸度が0.60以下では、酸味が
抑えられ、より甘さを感じると共に、後味に感じる苦味をマスキングする効果が顕著であ
った。更に、Brix9.9%以上では、全体の糖度が高く、より甘さを感じると共に、
後味に感じる苦味をマスキングする効果が顕著であった。
以上に加えて、香辛料又は香辛料抽出物の配合量に応じた苦味のマスキング効果を確認
した(表4)。使用したトマト含有飲料において、そのBrixは、10.0%であり、
糖酸比は、36.6であった。表4において、「〇」の意味は、「良」である。「×」の
意味は、「不良」である。
Figure 2018117646
表4によれば、本飲料において苦味のマスキング効果が良好なシナモンパウダーの配合
量は、本飲料100L当たり0.5g(0.0005kg)以上であり且つ4g(0.0
04kg)以下(0.5乃至4g/100L又は0.0005乃至0.004w/v%)
であった。本飲料において苦味のマスキング効果が良好なバジルパウダーの配合量は、本
飲料100L当たり1g(0.001kg)以上であり且つ4g(0.004kg)以下
(1乃至4g/100L又は0.001乃至0.004w/v%)であった。本飲料にお
いて苦味のマスキング効果が良好なバニラ抽出物の配合量は、本飲料100L当たり5g
(0.005kg)以上であり且つ20g0.02kg)以下(5乃至20g/100L
又は0.005乃至0.02w/v%)であった。以上から、香辛料の配合量が不足する
と苦味のマスキング効果が感じられなかった。また、香辛料の配合量が多すぎると香辛料
の味が強くトマト飲料の風味が損なわれた。
本発明が産業上利用可能な分野は、トマト含有飲料及びその製造方法、トマト含有飲料
における苦味マスキング方法、並びにトマト含有飲料用の苦味マスキング剤である。

Claims (6)

  1. 濃縮トマト飲料であって、
    その糖酸比は、14.0以上であり、
    含有するのは、少なくとも、香辛料であり、
    当該香辛料は、少なくとも、シナモンであり、
    前記シナモンの濃縮トマト飲料に対する含有量は、0.0005乃至0.004w/v%である。
  2. 請求項1の濃縮トマト飲料であって、
    その糖酸比は、17.0乃至40.0である。
  3. 請求項1または2の濃縮トマト飲料であって、
    その酸度は、0.60%以下である。
  4. 請求項1乃至3の何れかの濃縮トマト飲料であって、
    その糖度は、9.0度以上である。
  5. 濃縮トマト飲料の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、調合工程であり、
    ここで調合されるのは、トマト加工原料に加えて、少なくとも、香辛料であり、前記香辛料は、少なくとも、シナモンであり、
    前記シナモンの濃縮トマト飲料に対する調合量は、0.0005乃至0.004w/v%であり、
    前記濃縮トマト飲料の糖酸比は14.0以上である。
  6. 濃縮トマト飲料における苦味マスキング方法であって、それを構成するのは、少なくとも、調合工程であり、
    ここで調合されるのは、トマト加工原料に加えて、少なくとも、香辛料であり、前記香辛料は、少なくとも、シナモンであり、
    前記シナモンの濃縮トマト飲料に対する調合量は、0.0005乃至0.004w/v%であり、
    前記濃縮トマト飲料の糖酸比は14.0以上である。
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