JP2018115244A - 押出ラミネート用エチレン・α−オレフィン共重合体及びラミネート積層体 - Google Patents

押出ラミネート用エチレン・α−オレフィン共重合体及びラミネート積層体 Download PDF

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拓也 松本
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由之 石濱
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Abstract

【課題】押出ラミネート向けとしてポリオレフィン系樹脂の有機溶剤等への溶出成分が少なく、押出時負荷が小さい為、低温加工が可能であり、低発煙・低臭気でありクリーン性に優れた、押出ラミネート向けエチレン・α−オレフィン共重合体を提供。【解決手段】下記の条件(1)〜(4)を満足することを特徴とする押出ラミネート用エチレン・α−オレフィン共重合体。(1)MFRが1g/10分を超え、100g/10分以下である。(2)密度が0.895〜0.940g/cm3である。(3)GPCにより測定される分子量分布(Mw/Mn)が3.0〜7.0である。(4)分岐指数(g’)の分子量10万から100万の間での最低値(gc)が0.40〜0.85である。【選択図】なし

Description

本発明は、エチレン・α−オレフィン共重合体に関し、さらに詳しくは、押出ラミネート向けに低溶出成分・低発煙と高い加工性のバランスを有したエチレン・α−オレフィン共重合体に関する。
従来、押出ラミネート用の素材としてポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などの合成樹脂が使用され、特に高圧ラジカル法低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)が汎用されている。これらの押出ラミネート用材料は、紙やプラスチックフィルムなどの基材との良好な接着性が求められるだけでなく、良好な成形加工性を有することが求められる。
なお、ポリエチレンは、押出ラミネート用の他に、インフレーション成形法やTダイ成形法により成形するフィルム用、中空成形用や射出成形用、発泡PE用等各種の用途に用いられることが知られているが、各々の用途に適したポリエチレンは、MFRや密度等や、各種分子構造の要求性能が異なるため、適するポリエチレンが異なり、またその予期し得られる効果が異なることが多い。
通常、これらの押出ラミネート用樹脂は、紙やプラスチックフィルムなどの基材との良好な接着性を得るため、300℃前後の高温で加工される。その為、低分子量・低沸点成分が気化し、発煙が起こる。また、熱により酸化した成分は、強い臭気をも発生させる。この発煙や臭気は、加工時に問題があるだけでなく、製造したラミネートフィルムに悪影響を与え、トラブルの原因をなる場合がある。
これらの問題を解決するために、樹脂の製造過程において水等を樹脂に添加し、一定の条件において押出混練することで、押出機シリンダーのベント口から揮発成分を除去するなどの方法がある(特許文献1)。しかしながら、この方法は、水の添加口やベントが必要であり、既存の設備では実施できない場合もある。
また、樹脂の製造後に脱臭装置を用いる方法もあるが、これらは設備の追加が必要であり、経済的な面で効率的ではない。
こうした状況下、従来の押出ラミネート向けエチレン系重合体のもつ問題点を解消し、有機溶剤等への溶出成分が少なく、加工性に優れた、押出ラミネート向けエチレン系重合体の開発が継続されている。
特開平10−193436
本発明の課題は、上記した従来技術の問題点に鑑み、ポリオレフィン系樹脂の有機溶剤等への溶出成分が少なく、成形時の押出負荷が小さいため、低温ラミネート成形が可能であり、低発煙性に優れた、押出ラミネート向けエチレン・α−オレフィン共重合体を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた結果、近年開発中の新触媒を用い、従来は主にフィルム用に重合設計をしていた重合体の重合設計を変更して、若干高MFRの分子構造を有する重合体を重合したところ、かかる特定の長鎖分岐指数と組成分布指数を有し、かつ、特定のMFR、密度を有するエチレン・α−オレフィン共重合体が、押出ラミネート向け材料として良好な特性を示すことを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記の条件(1)〜(4)を満足することを特徴とする押出ラミネート用エチレン・α−オレフィン共重合体が提供される。
(1)190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が1g/10分を超え、100g/10分以下である。
(2)密度が0.895〜0.940g/cmである。
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布(Mw/Mn)が3.0〜7.0である。
(4)示差屈折計、粘度検出器及び光散乱検出器を組み合わせたGPC測定装置により測定される分岐指数g’の分子量10万から100万の間での最低値(gc)が、0.40〜0.85である。
本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、該エチレン・α−オレフィン共重合体が、下記の(1’)を満たすことを特徴とする押出ラミネート用エチレン・α−オレフィン共重合体が提供される。
(1’)190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が2g/10分を超え、50g/10分以下である。
本発明の第3の発明によれば、第1又は第2の発明において、更に、下記の条件(5)を満足することを特徴とする押出ラミネート用エチレン・α−オレフィン共重合体が提供される。
(5)クロス分別クロマトグラフィー(CFC)により測定される積分溶出曲線から求められた溶出量が50wt%となる温度以下で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量以上の成分の割合(W)及び積分溶出曲線から求められた溶出量が50wt%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量未満の成分の割合(W)の和(W+W)が、40〜80重量%である。
また、本発明の第4の発明によれば、該エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれるヘキサン抽出成分量が、1.6重量%以下であることを特徴とする第1〜3のいずれかの発明における押出ラミネート用エチレン・α−オレフィン共重合体が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、α−オレフィンは、炭素数が3〜10であることを特徴とする押出ラミネート用エチレン・α−オレフィン共重合体が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、下記の触媒成分(A)、(B)及び(C)を含むオレフィン重合用触媒によって製造されることを特徴とする押出ラミネート用エチレン・α−オレフィン共重合体が提供される。
触媒成分(A):遷移金属元素を含む架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物。
触媒成分(B):成分(A)の化合物と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物。
触媒成分(C):無機化合物担体。
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6の発明の押出ラミネート用エチレン・α−オレフィン共重合体を含む樹脂組成物によりラミネートされたラミネート積層体が提供される。
本発明の押出ラミネート用エチレン・α−オレフィン共重合体は、押出ラミネート材料として有機溶剤への溶出成分が少なく、加工時の発煙・臭気が少ないと同時に、成形加工特性にも優れる。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で用いられるクロマトグラムのベースラインと区間を示すグラフである。 GPC−VIS測定(分岐構造解析)から算出する分岐指数(g’)と分子量(M)との関係を示すグラフである。
本発明は、特定の長鎖分岐指数と組成分布指数を有し、かつ、特定のMFR、密度を有する押出ラミネート用エチレン・α−オレフィン共重合体に係るものである。以下、本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体、特に該エチレン・α−オレフィン共重合体を特徴付ける条件(1)〜(4)、及び該エチレン・α−オレフィン共重合体の製法、特にその製法に用いられる重合用触媒の各成分やその調製方法、さらには重合方法について、項目毎に、詳細に説明する。
1.本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体は、下記に説明する条件(1)〜(4)、好ましくは更に条件(5)、(6)又は(7)を満たす。
1−1.条件(1)MFR
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR)は、1g/10分を超え、100g/10分以下、好ましくは2g/10分を超え、50g/10分以下、より好ましくは3g/10分を超え、30g/10分以下である。
MFRがこの範囲にあると、押出ラミネートする際の加工特性に優れる。一方、MFRが1g/10分以下では、押出ラミネート成形時に機械に負荷がかかってしまう等の問題が生じる。MFRが100g/10分より大きいと、加工時のネックインが大きくなり、製品の歩留まりが悪くなるだけでなく、発煙・臭気の原因となる為好ましくない。なお、本発明で、エチレン・α−オレフィン共重合体のMFRは、JIS K7210の「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に準拠して、190℃、21.18N(2.16kg)荷重の条件で測定したときの値をいう。
MFRの調整は、エチレン重合中に共存させる連鎖移動剤(水素等)の量を変化させるか、重合温度を変化させることによって、調整することができ、水素の量を増加させる又は重合温度を高くすることにより、大きくすることができる。
1−2.条件(2)密度
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、0.895〜0.940g/cmである。
押出ラミネート用途では、その用途に応じて様々な密度の樹脂が選択される。しかしながら、この密度範囲外の樹脂を製造すると、樹脂の収率が悪く、好ましくない。好ましくは0.910g/cm以上、さらに好ましくは0.920g/cm以上であり、0.935g/cm以下である。
本明細書において、エチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、JIS K7112(1999年版):A法(水中置換法)により測定することができる。
密度は、エチレン・α−オレフィンの重合時のα−オレフィンの量により調整することができる。
1−3.条件(3)Mw/Mn
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、3.0〜7.0、好ましくは3.0〜5.9、より好ましくは3.0以上5.1未満、更に好ましくは3.2以上、5.1未満、特に好ましくは3.3〜5.0である。Mw/Mnが3.0未満では、押出成形時の加工性に劣り、ネックインが大きくなる為、避けるべきである。
Mw/Mnが7.0より大きいと該ポリオレフィン系樹脂やその成形体の有機溶剤への溶出量の増加、発煙・臭気の悪化につながるので好ましくない。なお、本発明で、エチレン・α−オレフィン共重合体のMwやMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定したものをいう。
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー社製の以下の銘柄である。F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々が0.5mg/mLとなるように、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算は森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いる。その際使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PE:K=3.92×10−4、α=0.733
なお、GPCの測定条件は、以下の通りである。
装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
測定温度:140℃
流速:1.0ml/分
注入量:0.2ml
試料の調製:試料は、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて、1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
なお、得られたクロマトグラムのベースラインと区間は、図1に例示されるように行う。
分子量分布(Mw/Mn)は、主に、重合触媒及び重合条件を選択することにより、所定の範囲とすることができ、また、異なる分子量の複数成分を混合することにより、所定の範囲とすることができる。
1−4.条件(4)g
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体は、上記条件(1)〜(3)に加えて更に、示差屈折計、粘度検出器及び光散乱検出器を組み合わせたGPC測定装置により測定される分岐指数(g’)の分子量10万から100万の間での最低値(g)が、0.40〜0.85、好ましくは0.50〜0.80、更に好ましくは0.50〜0.77、特に好ましくは0.51〜0.75である。g値が0.85より大きいと成形加工性の改良効果が十分に発現しないので好ましくない。g値が0.50より小さいと、該ポリオレフィン樹脂の成形加工性は向上するが、衝撃強度が低下したりするので好ましくない。
なお、本発明で、エチレン・α−オレフィン共重合体のg値は、下記のGPC−VIS測定から算出する分子量分布曲線や分岐指数(g’)を用いた長鎖分岐量の評価手法である。
[GPC−VISによる分岐構造解析]
示差屈折計(RI)及び粘度検出器(Viscometer)を装備したGPC装置として、Waters社のAlliance GPCV2000を用いた。また、光散乱検出器として、多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)Wyatt Technology社のDAWN−Eを用いることができる。検出器は、MALLS、RI、Viscometerの順で接続する。移動相溶媒は、1,2,4−trichlorobenzene(酸化防止剤Irganox1076を0.5mg/mLの濃度で添加)である。流量は1mL/分である。カラムは、東ソー社 GMHHR−H(S) HTを2本連結して用いることができる。カラム、試料注入部及び各検出器の温度は、140℃である。試料濃度は1mg/mLとし、注入量(サンプルループ容量)は0.2175mLである。MALLSから得られる絶対分子量(M)、慣性二乗半径(Rg)及びViscometerから得られる極限粘度([η])を求めるにあたっては、MALLS付属のデータ処理ソフトASTRA(version4.73.04)を利用し、以下の文献を参考にして計算を行うことができる。
参考文献:
1.Developments in polymer characterization,vol.4.Essex:Applied Science;1984.Chapter1.
2.Polymer,45,6495−6505(2004)
3.Macromolecules,33,2424−2436(2000)
4.Macromolecules,33,6945−6952(2000)
[分岐指数(g)等の算出]
分岐指数(g’)は、サンプルを上記Viscometerで測定して得られる極限粘度(ηbranch)と、別途、線形ポリマーを測定して得られる極限粘度(ηlin)との比(ηbranch/ηlin)として算出する。
ポリマー分子に長鎖分岐が導入されると、同じ分子量の線形のポリマー分子と比較して慣性半径が小さくなる。慣性半径が小さくなると極限粘度が小さくなることから、長鎖分岐が導入されるに従い同じ分子量の線形ポリマーの極限粘度(ηlin)に対する分岐ポリマーの極限粘度(ηbranch)の比(ηbranch/ηlin)は小さくなっていく。したがって分岐指数(g’=ηbranch/ηlin)が1より小さい値になる場合には分岐が導入されていることを意味し、その値が小さくなるに従い導入されている長鎖分岐が増大していくことを意味する。特に本発明では、MALLSから得られる絶対分子量として、分子量10万から100万における上記g’の最低値を、gとして算出する。図2に上記GPC−VISによる解析結果の一例を示した。図2は、分子量(M)における分岐指数(g’)を表す。ここで、線形ポリマーとしては、直鎖ポリエチレンStandard Reference Material 1475a(National Institute of Standards & Technology)を用いることができる。
分岐指数g’の分子量10万から100万の間での最低値(gc)は、主に、重合触媒及び重合条件を選択することにより、所定の範囲とすることができ、好ましくは、特定のメタロセン触媒を使用することにより、所定の範囲とすることができる。
1−5.条件(5)W+W
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体は、上記条件(1)〜(4)に加えて更に、クロス分別クロマトグラフィー(CFC)により測定される積分溶出曲線から求められた溶出量が50wt%となる温度以下で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量以上の成分の割合(W)及び積分溶出曲線から求められた溶出量が50wt%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量未満の成分の割合(W)の和(W+W)が、40〜80重量%が好ましく、さらに好ましくは40重量%を超え、56重量%未満、特に好ましくは43重量%を超え、56重量%未満、更に好適には45重量%を超え、56重量%未満であることが好ましい。W+W値が40重量%未満であると、エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれる該低密度低分子量成分の割合が増大し、該ポリオレフィン系樹脂のヘキサン抽出量が増加してしまう。一方、W+W値が80重量%を超えると、エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれる該高密度高分子量成分の含有量が減少し、押出ラミネート加工時のネックイン等の加工性が悪化し、製品の生産性が低下してしまうので好ましくない。
[CFCの測定条件]
クロス分別クロマトグラフィー(CFC)は、結晶性分別を行う昇温溶出分別(TREF)部と分子量分別を行うゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)部とから成る。
このCFCを用いた分析は、次のようにして行われる。
まず、ポリマーサンプルを0.5mg/mLのBHTを含むオルトジクロロベンゼン(ODCB)に140℃で完全に溶解した後、この溶液を装置のサンプルループを経て140℃に保持されたTREFカラム(不活性ガラスビーズ担体が充填されたカラム)に注入し、所定の第1溶出温度まで徐々に冷却しポリマーサンプルを結晶化させる。所定の温度で30分保持した後、ODCBをTREFカラムに通液することにより、溶出成分がGPC部に注入されて分子量分別が行われ、赤外検出器(FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器、測定波長3.42μm)によりクロマトグラムが得られる。その間、TREF部では次の溶出温度に昇温され、第1溶出温度のクロマトグラムが得られた後、第2溶出温度での溶出成分がGPC部に注入される。以下、同様の操作を繰り返すことにより、各溶出温度での溶出成分のクロマトグラムが得られる。
なお、CFCの測定条件は、以下の通りである。
装置:ダイヤインスツルメンツ社製CFC−T102L
GPCカラム:昭和電工社製AD−806MS(3本を直列に接続)
溶媒:ODCB
サンプル濃度:3mg/mL
注入量:0.4mL
結晶化速度:1℃/分
溶媒流速:1mL/分
GPC測定時間:34分
GPC測定後安定時間:5分
溶出温度:0,5,10,15,20,25,30,35,40,45,49,52,55,58,61,64,67,70,73,76,79,82,85,88,91,94,97,100,102,120,140
[データ解析]
測定によって得られた各溶出温度における溶出成分のクロマトグラムから、総和が100%となるように規格化された溶出量(クロマトグラムの面積に比例)が求められる。
さらに、溶出温度に対する積分溶出曲線が計算される。この積分溶出曲線を温度で微分して、微分溶出曲線が求められる。
また、各クロマトグラムから、次の手順により分子量分布が求められる。保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー社製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.4mL注入して較正曲線を作成する。
較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
分子量への換算は森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いる。その際使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PE:K=3.92×10−4、α=0.733
なお、第1溶出温度でのクロマトグラムでは、溶媒に添加したBHTによるピークと溶出成分の低分子量側とが重なる場合があるが、その際は、図1のようにベースラインを引き分子量分布を求める区間を定める。
さらに、下記の表1のように、各溶出温度における溶出割合(表中のwt%)と重量平均分子量(表中のMw)からwhole(全体)の重量平均分子量を求める。
Figure 2018115244
また、各溶出温度における分子量分布及び溶出量から、文献(S.Nakano,Y.Goto,”Development of automatic Cross Fractionation:Combination of Crystallizability Fractionation and Molecular Weight Fractionation”,J.Appl.Polym.Sci.,vol.26,pp.4217−4231(1981))の方法に従って、溶出温度と分子量に関する溶出量を等高線として示すグラフ(等高線図)を得る。
上記の等高線図を用いて、以下の成分量を求める。
:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度以下で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量未満の成分の割合。
:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度以下で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量以上の成分の割合。
:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量未満の成分の割合。
:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量以上の成分の割合。
なお、W+W+W+W=100である。
+Wの値は、主に、重合触媒及び重合条件を選択することにより、所定の範囲とすることができ、好ましくは、特定のメタロセン触媒を使用することにより、所定の範囲とすることができる。
1−6.ヘキサン抽出量
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体は、特に重合体中に含まれるヘキサンで抽出される成分の量(以下、「ヘキサン抽出量」という)が、低いことも特徴である。すなわち、共重合体全体中、ヘキサン抽出量が2.0wt%以下、特に好ましくは1.6wt%以下のヘキサン抽出量であることにより、押出ラミネート用の樹脂として用いる際に、低溶出成分、低発煙を発揮することができるため、極めて好適である。
ヘキサン抽出量の測定方法は、実施例中の(6)に記載のとおりである。
2.エチレン・α−オレフィン共重合体の組成
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体である。ここで用いられる共重合成分であるα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1等が挙げられる。また、これらα−オレフィンは1種のみでもよく、また2種以上が併用されていてもよい。これらのうち、より好ましいα−オレフィンは炭素数3〜8のものであり、具体的にはプロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1等が挙げられる。更に好ましいα−オレフィンは炭素数4又は炭素数6のものであり、具体的にはブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1が挙げられる。特に好ましいα−オレフィンは、ヘキセン−1である。なお、後述するオレフィン重合用触媒の中には、エチレン単独重合時においても、エチレンオリゴメリゼーション反応による1−ブテンや1−ヘキセン等のα−オレフィンを重合系内で副生したり、「Chain−walking反応」と呼ばれる、オレフィン重合生長末端において活性中心金属−末端炭素間結合の異性化反応からオレフィン重合体主鎖にメチル基やエチル基といった短鎖分岐が生じる反応が今日よく知られており、これらの反応から生じるエチレン単独重合体の中には、その短鎖分岐構造が、α−オレフィンの共重合によって生じる短鎖分岐構造と区別がつかないエチレン系重合体となる場合がある。そのため、これら副生短鎖分岐が外部からコモノマーとしてのα−オレフィンを供給した場合に生じる短鎖分岐と分析的に同じ炭素原子数を有し、かつ、これらのエチレン系重合体が上記の条件を満たす場合においては本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体に含むものとする。
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体中におけるエチレンとα−オレフィンの割合は、エチレン約75〜99.8重量%、α−オレフィン約0.2〜25重量%であり、好ましくはエチレン約80〜99.6重量%、α−オレフィン約0.4〜20重量%であり、より好ましくはエチレン約82〜99.2重量%、α−オレフィン約0.8〜18重量%であり、更に好ましくはエチレン約85〜99重量%、α−オレフィン約1〜15重量%であり、特に好ましくはエチレン約88〜98重量%、α−オレフィン約2〜12重量%である。エチレン含量がこの範囲内であれば、ポリエチレン系樹脂への改質効果が高い。
共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合のいずれであっても差し支えない。もちろん、エチレンやα−オレフィン以外のコモノマーを少量使用することも可能であり、この場合、スチレン、4−メチルスチレン、4−ジメチルアミノスチレン等のスチレン類、1,4−ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等のジエン類、ノルボルネン、シクロペンテン等の環状化合物、ヘキセノール、ヘキセン酸、オクテン酸メチル等の含酸素化合物類、等の重合性二重結合を有する化合物を挙げることができる。ただしジエン類を使用する場合は長鎖分岐構造や分子量分布が上記の条件を満たす範囲内において使用しなくてはいけないことは言うまでもない。
3.エチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体は、上記の条件を全て満たすように製造して使用される。その製造は、オレフィン重合用触媒を用いてエチレンと上述のα−オレフィンとを共重合する方法によって実施される。
オレフィン重合用触媒としては、今日様々な種類のものが知られており、該触媒成分の構成及び重合条件や後処理条件の工夫の範囲内において上記条件を満足するエチレン・α−オレフィン共重合体が準備可能であれば何ら制限されるものではないが、本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体が有する特定の長鎖分岐構造、組成分布構造、MFR、密度を同時に実現するための好適な製造方法例として、以下に説明する特定の触媒成分(A)、(B)及び(C)を含むオレフィン重合用触媒を用いる方法を挙げることができる。
触媒成分(A):遷移金属元素を含む架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物。
触媒成分(B):成分(A)の化合物と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物。
触媒成分(C):無機化合物担体。
3−1.触媒成分(A)
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体を製造するのに好ましい触媒成分(A)は、遷移金属元素を含む架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物であり、より好ましくは下記の一般式[1]で表されるメタロセン化合物であり、更に好ましくは下記の一般式[2]で表されるメタロセン化合物である。
Figure 2018115244
[但し、式[1]中、MはTi、Zr又はHfのいずれかの遷移金属を示す。Aはシクロペンタジエニル環(共役五員環)構造を有する配位子を、Aはインデニル環構造を有する配位子を、QはAとAを任意の位置で架橋する結合性基を示す。X及びYは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基置換アミノ基又は炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。]
Figure 2018115244
[但し、式[2]中、MはTi、Zr又はHfのいずれかの遷移金属を示す。Qはシクロペンタジエニル環とインデニル環を架橋する結合性基を示す。X及びYは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基置換アミノ基又は炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。10個のRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素数1〜6を含む炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、酸素原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基又は炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示す。]
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体を製造するのに特に好ましい触媒成分(A)は、特開2013−227271号公報に記載された一般式(1c)で表されるメタロセン化合物である。
Figure 2018115244
[但し、式(1c)中、略号の説明は全て特開2013−227271号公報の記載に従う。すなわち、M1cは、Ti、Zr又はHfのいずれかの遷移金属を示す。X1c及びX2cは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基置換アミノ基又は炭素数1〜20のアルコキシ基を示す。Q1cとQ2cは、各々独立して、炭素原子、ケイ素原子又はゲルマニウム原子を示す。R1cは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を示し、4つのR1cのうち少なくとも2つが結合してQ1c及びQ2cと一緒に環を形成していてもよい。mは、0又は1であり、mが0の場合、Q1cは、R2cを含む共役5員環と直接結合している。R2c及びR4cは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素数1〜6を含む炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、酸素原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基又は炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示す。R3cは、下記一般式(1−ac)で示される置換アリール基を示す。]
Figure 2018115244
[但し、式(1−ac)中、Y1cは、周期表14族、15族又は16族の原子を示す。R5c、R6c、R7c、R8c及びR9cは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、酸素若しくは窒素を含む炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の炭化水素基置換アミノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、ケイ素数1〜6を含む炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、又は炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基を示し、R5c、R6c、R7c、R8c及びR9cは隣接する基同士で結合して、それらに結合している原子と一緒に環を形成していてもよい。nは、0又は1であり、nが0の場合、Y1cに置換基R5cが存在しない。pは、0又は1であり、pが0の場合、R7cが結合する炭素原子とR9cが結合する炭素原子は直接結合している。Y1cが炭素原子の場合、R5c、R6c、R7c、R8c、R9cのうち少なくとも1つは水素原子ではない。]
上記一般式(1c)中、メタロセン化合物のM1cは、Ti、Zr又はHfを表し、メタロセン化合物のM1cは、好ましくはZr又はHfを表し、メタロセン化合物のM1cは、更に好ましくはZrを表す。また、X1c及びX2cは、それぞれ独立して、水素原子、又は塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、n−プロポキシメチル基、i−プロポキシメチル基、n−ブトキシメチル基、i−ブトキシメチル基、t−ブトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、アセチル基、1−オキソプロピル基、1−オキソ−n−ブチル基、2−メチル−1−オキソプロピル基、2,2−ジメチル−1−オキソ−プロピル基、フェニルアセチル基、ジフェニルアセチル基、ベンゾイル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−フリル基、2−テトラヒドロフリル基、ジメチルアミノメチル基、ジエチルアミノメチル基、ジi−プロピルアミノメチル基、ビス(ジメチルアミノ)メチル基、ビス(ジi−プロピルアミノ)メチル基、(ジメチルアミノ)(フェニル)メチル基、メチルイミノ基、エチルイミノ基、1−(メチルイミノ)エチル基、1−(フェニルイミノ)エチル基、1−[(フェニルメチル)イミノ]エチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、フェノキシ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジn−プロピルアミノ基、ジi−プロピルアミノ基、ジn−ブチルアミノ基、ジi−ブチルアミノ基、ジt−ブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などが挙げられる。
好ましいX1c及びX2cの具体例としては、塩素原子、臭素原子、メチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、フェノキシ基、ジメチルアミノ基、ジi−プロピルアミノ基が挙げられる。これらの具体例の中でも、塩素原子、メチル基、ジメチルアミノ基が特に好ましい。
また、Q1cとQ2cは、炭素原子、ケイ素原子又はゲルマニウム原子を示す。好ましくは炭素原子又はケイ素原子である。より好ましくはケイ素原子である。
さらに、R1cとしては、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基などが挙げられる。また、R1cがQ1c及びQ2cと一緒に環を形成している場合として、シクロブチリデン基、シクロペンチリデン基、シクロへキシリデン基、シラシクロブチル基、シラシクロペンチル基、シラシクロヘキシル基などが挙げられる。
好ましいR1cの具体例として、Q1c又は/及びQ2cが炭素原子の場合、水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、エチレン基、シクロブチリデン基が挙げられ、また、Q1c又は/及びQ2cがケイ素原子の場合、メチル基、エチル基、フェニル基、シラシクロブチル基が挙げられる。
また、R2cとR4cは、水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、3,5−ジ−t−ブチルフェニル基、ビス(トリメチルシリル)メチル基、ビス(t−ブチルジメチルシリル)メチル基、ブロモメチル基、クロロメチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモプロピル基、3−ブロモプロピル基、2−ブロモシクロペンチル基、2,3−ジブロモシクロペンチル基、2−ブロモ−3−ヨードシクロペンチル基、2,3−ジブロモシクロヘキシル基、2−クロロ−3−ヨードシクロヘキシル基、2−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、フリル基、テトラヒドロフリル基、2−メチルフリル基、トリメチルシリル基、トリt−ブチルシリル基、ジt−ブチルメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基などが挙げられる。
また、R2cとR4cは、炭素数1〜20の炭化水素基、ケイ素数1〜6を含む炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、酸素を含む炭素数1〜20の炭化水素基又は炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基であると、特に重合活性が高くなるので、好ましい。
2cとR4cの好ましい具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、2−メチルフリル基、トリメチルシリル基が挙げられる。これらの具体例の中でも、水素原子、メチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、フェニル基、トリメチルシリル基がさらに好ましく、水素原子、メチル基、t−ブチル基、フェニル基、トリメチルシリル基が特に好ましい。
置換基のR3cは、上記一般式(1−ac)で示される構造を有する置換アリール基、好ましくは、特定の置換基を有するPh基、又はフリル基類、チエニル基類を示す。具体的には、4−トリメチルシリルフェニル基、4−(t−ブチルジメチルシリル)フェニル基、3,5−ビストリメチルシリルフェニル基、4−クロロフェニル基、4−ブロモフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、2,4,6−トリクロロフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、4−イソプロポキシフェニル基、4−n−ブトキシフェニル基、2−フリル基、2−(5−メチル)フリル基、2−(5−t−ブチル)フリル基、2−(5−トリメチルシリル)フリル基、2−(4,5−ジメチル)フリル基、2−ベンゾフリル基、2−チエニル基、2−(5−メチル)チエニル基、2−(5−t−ブチル)チエニル基、2−(5−トリメチルシリル)チエニル基、2−(4,5−ジメチル)チエニル基、などが挙げられる。
また、一般式(1c)中、mは、0又は1であり、mが0の場合、Q1cは、R2cを含む共役5員環と直接結合している。
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体を製造するのに最も好ましい触媒成分(A)は、特開2013−227271号公報に記載された一般式(2c)で表されるメタロセン化合物である。
Figure 2018115244
上記の一般式(2c)で示されるメタロセン化合物において、M1c、X1c、X2c、Q1c、R1c、R2c及びR4cは、前述の一般式(1c)で示されるメタロセン化合物の説明で示した原子及び基と同様な構造を選択することができる。また、R10cは前述の一般式(1c)で示されるメタロセン化合物の説明で示したR5c、R6c、R7c、R8c、R9cの原子及び基と同様な構造を選択することができる。
上記メタロセン化合物の具体例として、特開2013−227271号公報の表1c中に記載された化合物を挙げることができるが、これらに限定するものではない。
また、上記に例示した具体的化合物の中にあって、より好ましいものを以下に示す。
該表1c中の、1c〜4c、7c、8c、12c〜38c、44c〜47c、52c〜54c、116c〜123c、127c〜136c、142c、143c、144c〜146c、148c、152c〜155c、157c、161c〜164c、166c、170c〜173c、175c、179c〜182c、184c、188c〜191c、193c、等が挙げられる。
また、上記化合物のジルコニウムを、チタニウム又はハフニウムに代えた化合物等が、好ましいものとして挙げられる。
さらに、上記に例示した具体的化合物の中にあって、更に好ましいものを以下に示す。
該表1c中の、1c〜4c、7c、8c、12c〜38c、44c〜47c、52c〜54c、116c〜123c、127c〜136c、142c、143c、144c〜146c、148c、等が挙げられる。
また、上記化合物のジルコニウムを、チタニウム又はハフニウムに代えた化合物等が、好ましいものとして挙げられる。
さらに、上記に例示した具体的化合物の中にあって、更に好ましいのは該表1c中の、1c〜4c、7c、8c、12c〜37c、44c〜47c、52c〜54c、144c〜146c、148c、等が挙げられる。
また、上記化合物のジルコニウムを、チタニウム又はハフニウムに代えた化合物等が、好ましいものとして挙げられる。
上記具体例の化合物はジルコニウム化合物又はハフニウム化合物であることが好ましく、ジルコニウム化合物であることが更に好ましい。
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体を製造するのに好ましい触媒成分(A)として、上述の架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物を2種以上用いることもできる。
3−2.触媒成分(B)
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体を製造するのに好ましい触媒成分(B)は、成分(A)の化合物と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物であり、より好ましくは特開2013−227271号公報[0064]〜[0083]に記載された成分(B)であり、更に好ましくは同[0065]〜[0069]に記載された有機アルミニウムオキシ化合物である。
3−3.触媒成分(C)
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体を製造するのに好ましい触媒成分(C)は、無機化合物担体であり、より好ましくは特開2013−227271号公報[0084]〜[0088]に記載された無機化合物である。この時、無機化合物として好ましいのは該公報[0085]に記載された金属酸化物である。
3−4.オレフィン重合用触媒の製造方法
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体は、上記触媒成分(A)〜(C)を含むオレフィン重合用触媒を用いてエチレンと上述のα−オレフィンとを共重合する方法によって好適に製造される。該オレフィン重合用触媒の好ましい調製方法は特開2013−227271号公報[0089]〜[0107]に記載された方法である。
3−5.エチレン・α−オレフィン共重合体の重合方法
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体は、好適には上記2−4に記載された製法により準備されたオレフィン重合用触媒を用いて、エチレンと上述のα−オレフィンとを共重合して製造される。
コモノマーであるα−オレフィンとしては、上述したように、炭素数3〜10のα−オレフィンが使用可能であり、2種類以上のα−オレフィンをエチレンと共重合させることも可能であり、該α−オレフィン以外のコモノマーを少量使用することも可能である。
本発明において、上記共重合反応は、好ましくは気相法又はスラリー法にて、行うことができる。気相重合の場合、実質的に酸素、水等を断った状態で、エチレンやコモノマーのガス流を導入、流通、又は循環した反応器内においてエチレン等を重合させる。また、スラリー重合の場合、イソブタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等から選ばれる不活性炭化水素溶媒の存在下又は不存在下で、エチレン等を重合させる。また、液状エチレンや液状プロピレン等の液体モノマーも溶媒として使用できることは言うまでもない。本発明において、更に好ましい重合は、気相重合である。重合条件は、温度が0〜250℃、好ましくは20〜110℃、更に好ましくは60〜100℃であり、圧力が常圧〜10MPa、好ましくは常圧〜4MPa、更に好ましくは0.5〜2MPaの範囲にあり、重合時間としては5分〜20時間、好ましくは30分〜10時間が採用されるのが普通である。
生成共重合体の分子量は、触媒成分(A)や触媒成分(B)の種類、触媒のモル比、重合温度等の重合条件を変えることによってもある程度調節可能であるが、重合反応系に水素を添加することで、より効果的に分子量調節を行うことができる。また、重合系中に、水分除去を目的とした成分、いわゆるスカベンジャーを加えても何ら支障なく実施することができる。
なお、かかるスカベンジャーとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物、前記有機アルミニウムオキシ化合物、分岐アルキルを含有する変性有機アルミニウム化合物、ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛などの有機亜鉛化合物、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、エチルブチルマグネシウムなどの有機マグネシウム化合物、エチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムクロリドなどのグリニヤ化合物などが使用される。これらのなかでは、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、エチルブチルマグネシウムが好ましく、トリエチルアルミニウムが特に好ましい。
生成共重合体の長鎖分岐構造(すなわちg)やコモノマー共重合組成分布(すなわちW〜W等)は、触媒成分(A)や触媒成分(B)の種類、触媒のモル比、重合温度や圧力、時間等の重合条件や重合プロセスを変えることによって調節可能である。長鎖分岐構造を形成しやすい触媒成分種を選択しても、例えば重合温度を下げたりエチレン圧力を上げたりして長鎖分岐構造の少ない共重合体を製造することも可能である。また、分子量分布や共重合組成分布の広い触媒成分種を選択しても、例えば触媒成分モル比、重合条件や重合プロセスを変えることによって分子量分布や共重合組成分布の狭い共重合体を製造することも可能である。
水素濃度、モノマー量、重合圧力、重合温度等の重合条件が互いに異なる2段階以上の多段階重合方式においても、重合条件を適切に設定するならば、本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体を製造することが可能であり得るだろうが、本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体は、一段階重合反応により製造される場合、複雑な重合運転条件を設定することなく、より経済的に製造できるので好ましい。
4.配合
本発明の押出ラミネート用エチレン・α−オレフィン共重合体は、常法に従い、ペレタイザーやホモジナイザー等による機械的な溶融混合によりペレット化した後、各種成形機により成形を行って所望の成形品とすることができる。
また、上記の方法により得られる押出ラミネート用エチレン・α−オレフィン共重合体は、性能を損なわない範囲で、常法に従い、他のオレフィン系重合体やゴム等のほか、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、加工助剤、着色顔料、架橋剤、発泡剤、無機又は有機充填剤、難燃剤等の公知の添加剤を配合して押出ラミネート用樹脂組成物とすることができる。
添加剤として、例えば、酸化防止剤(フェノール系、リン系、イオウ系)、滑剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等を1種又は2種以上、適宜併用することができる。また、充填材(剤)としては、炭酸カルシウム、タルク、金属粉(アルミニウム、銅、鉄、鉛など)、珪石、珪藻土、アルミナ、石膏、マイカ、クレー、アスベスト、グラファイト、カーボンブラック、酸化チタン等が使用可能であり、なかでも炭酸カルシウム、タルク及びマイカ等を用いるのが好ましい。いずれの場合でも、本発明のポリエチレンに、必要に応じ、各種添加剤を配合し、混練押出機、バンバリーミキサー等にて混練し、成形用材料とすることができる。ただし、食品容器向けに使用する場合は、添加剤の使用は、極力少なくする方が容器自体の味・臭い、及び内容物の味・臭いに対し影響が少なくなるため、好ましい。
5.成形方法
本発明の押出ラミネート用エチレン・α−オレフィン共重合体は、主に押出ラミネート成形法により成形され、好適には押出ラミネート品などの各種成形品が得られる。
6.用途
本発明の押出ラミネート用エチレン・α−オレフィン共重合体は、各種特性を満足するものであるので、有機溶剤への低溶出性、成形時の押出負荷低減による低温加工性、低発煙性、低臭性、強度などに優れる。従って、このような特性を必要とする押出ラミネートなどの用途に適する。
7.ラミネート積層体
本発明の押出ラミネート用エチレン・α−オレフィン共重合体を含む樹脂組成物を用いてラミネートされたラミネート積層体としては、紙、アルミニウム箔等の金属箔、その他ナイロンやPET等の他樹脂から構成される他の基材層の上に直接、又は、他のPE樹脂層を含む他層を介してラミネート積層された積層体が挙げられ、食品用、医薬・医療品、化粧品及びその他産業資材や工業資材等の包装用途、剥離紙、工程紙などに代表される加工紙用途に用いられる。特に本発明の押出ラミネート用エチレン・α−オレフィン共重合体は、有機溶剤等への溶出成分が少なく、押出時の負荷が低い為に低温加工が可能で、低発煙、低臭気の成形製品を提供することが可能であるので、このような望ましいクリーンな特性を有する用途の積層体を経済的に有利に得ることができる。
以下においては、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明し、本発明の卓越性と本発明の構成における優位性を実証するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において使用した測定方法は、以下の通りである。また、以下の触媒合成工程及び重合工程は、すべて精製窒素雰囲気下で行い、かつ、使用した溶媒は、モレキュラーシーブ4Aで脱水精製したものを用いた。
[物性の測定方法]
(1)MFR
JIS K7210の「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に準拠して、190℃、21.18N(2.16kg)荷重の条件で測定した。
(2)密度
JIS K7112(1999年版):A法(水中置換法)により測定した。
(3)GPCにより測定される分子量分布(Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した。GPCの測定条件は、以下の通りである。
装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
測定温度:140℃
流速:1.0ml/分
注入量:0.2ml
試料の調製:試料は、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて、1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
なお、得られたクロマトグラムのベースラインと区間は、図1に例示されるように行った。
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行った。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー社製の以下の銘柄である。F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々が0.5mg/mLとなるように、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いた。分子量への換算は森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いた。その際使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いた。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PE:K=3.92×10−4、α=0.733
(4)示差屈折計、粘度検出器及び光散乱検出器を組み合わせたGPC測定装置により測定される分岐指数(g’)の分子量10万から100万の間での最低値(gc)
示差屈折計(RI)及び粘度検出器(Viscometer)を装備したGPC装置として、Waters社のAlliance GPCV2000を用いた。また、光散乱検出器として、多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)Wyatt Technology社のDAWN−Eを用いた。検出器は、MALLS、RI、Viscometerの順で接続した。移動相溶媒は、1,2,4−trichlorobenzene(酸化防止剤Irganox1076を0.5mg/mLの濃度で添加)である。流量は1mL/分である。カラムは、東ソー社 GMHHR−H(S) HTを2本連結して用いた。カラム、試料注入部及び各検出器の温度は、140℃である。試料濃度は1mg/mLとした。注入量(サンプルループ容量)は0.2175mLである。MALLSから得られる絶対分子量(M)、慣性二乗半径(Rg)及びViscometerから得られる極限粘度([η])を求めるにあたっては、MALLS付属のデータ処理ソフトASTRA(version4.73.04)を利用し、上述した文献を参考にして計算を行った。
[分岐指数(g)等の算出]
分岐指数(g’)は、サンプルを上記Viscometerで測定して得られる極限粘度(ηbranch)と、別途、線形ポリマーを測定して得られる極限粘度(ηlin)との比(ηbranch/ηlin)として算出した。
MALLSから得られる絶対分子量として、分子量10万から100万における上記g’の最低値を、gとして算出した。ここで、線形ポリマーとしては、直鎖ポリエチレンStandard Reference Material 1475a(National Institute of Standards & Technology)を用いた。
(5)W+W
結晶性分別を行う昇温溶出分別(TREF)部と分子量分別を行うゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)部とから成る、クロス分別クロマトグラフィー(CFC)により行った。
即ち、ポリマーサンプルを0.5mg/mLのBHTを含むオルトジクロロベンゼン(ODCB)に140℃で完全に溶解した後、この溶液を装置のサンプルループを経て140℃に保持されたTREFカラム(不活性ガラスビーズ担体が充填されたカラム)に注入し、所定の第1溶出温度まで徐々に冷却しポリマーサンプルを結晶化させた。
所定の温度で30分保持した後、ODCBをTREFカラムに通液することにより、溶出成分がGPC部に注入されて分子量分別が行われ、赤外検出器(FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器、測定波長3.42μm)によりクロマトグラムが得られた。その間、TREF部では次の溶出温度に昇温され、第1溶出温度のクロマトグラムが得られた後、第2溶出温度での溶出成分がGPC部に注入された。以下、同様の操作を繰り返すことにより、各溶出温度での溶出成分のクロマトグラムが得られた。
なお、CFCの測定条件は、以下の通りである。
装置:ダイヤインスツルメンツ社製CFC−T102L
GPCカラム:昭和電工社製AD−806MS(3本を直列に接続)
溶媒:ODCB
サンプル濃度:3mg/mL
注入量:0.4mL
結晶化速度:1℃/分
溶媒流速:1mL/分
GPC測定時間:34分
GPC測定後安定時間:5分
溶出温度:0,5,10,15,20,25,30,35,40,45,49,52,55,58,61,64,67,70,73,76,79,82,85,88,91,94,97,100,102,120,140
データ解析
測定によって得られた各溶出温度における溶出成分のクロマトグラムから、総和が100%となるように規格化された溶出量(クロマトグラムの面積に比例)を求めた。
また、各クロマトグラムから、上述のGPCと同じ手順により分子量分布を求めた。
各溶出温度における分子量分布及び溶出量から、文献(S.Nakano,Y.Goto,”Development of automatic Cross Fractionation:Combination of Crystallizability Fractionation and Molecular Weight Fractionation”,J.Appl.Polym.Sci.,vol.26,pp.4217−4231(1981))の方法に従って、溶出温度と分子量に関する溶出量を等高線として示すグラフ(等高線図)を得た。
上記の等高線図を用いて、以下の成分量を求めた。
:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度以下で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量未満の成分の割合。
:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度以下で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量以上の成分の割合。
:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量未満の成分の割合。
:積分溶出曲線から求められる溶出量が50wt%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量以上の成分の割合。
なお、W+W+W+W=100である。
(6)ヘキサン抽出量の評価
各樹脂を粉砕し、約5g精秤した後、円筒ろ紙に入れ、ソックスレー抽出器にセットする。約200mLのヘキサンを用い、6時間還流した後、アセトンによる洗浄を行い、十分乾燥した後、再度精表秤を行った。(抽出前の重量−抽出後の重量)×100/抽出前の重量=ヘキサン抽出量(wt%)とした。
(7)押出負荷の評価
各樹脂を、単軸押出機(ユニオン・プラスチックス社製USV型30φ押出機)を用いて下記条件にて混練押出した時の押出機先端の樹脂圧力を評価した。
スクリュー:フルフライト、設定温度:180℃、スクリュー回転数:80rpm
[実施例1]
(1)架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物の合成
ジメチルシリレン(4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドを、特開2013−227271号公報[0140]〜[0143]記載の方法に従い合成した。
(2)オレフィン重合用触媒の合成
窒素雰囲気下、500ml三口フラスコに400℃で5時間焼成したシリカ30グラムを入れ、次いで脱水トルエン195mlを追加してスラリーとした。別途用意した200ml二口フラスコに窒素雰囲気下で、上記(1)で合成したジメチルシリレン(4−(4−トリメチルシリル−フェニル)−インデニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド412ミリグラムを入れ、脱水トルエン80.7mlで溶解した後、更に室温でアルベマール社製の20%メチルアルミノキサン/トルエン溶液78.9mlを加え30分間撹拌した。シリカのトルエンスラリー液の入った500ml三口フラスコを40℃のオイルバスで加熱及び撹拌しながら、上記ジルコノセン錯体とメチルアルミノキサンの反応物のトルエン溶液を全量加えた。40℃で1時間撹拌した後、40℃に加熱したまま15分静沈して上澄み221mlを除去し、次いでトルエン溶媒を減圧留去して粉状触媒を得た。
(3)エチレン・1−ヘキセン共重合体の製造
上記(2)で得た粉状触媒を使用してエチレン・1−ヘキセン気相連続共重合を行った。すなわち、温度85℃、ヘキセン/エチレンモル比0.33%、水素/エチレンモル比0.65%、窒素濃度を33mol%、全圧を0.75MPaに準備された気相連続重合装置(内容積100L、流動床直径10cm、流動床種ポリマ−(分散剤)1.8kg)に該粉状触媒を0.32g/時間の速さで間欠的に供給しながらガス組成と温度を一定にして重合を行った。また、系内の清浄性を保つためトリエチルアルミニウム(TEA)のヘキサン稀釈溶液0.03mol/Lを12.7ml/hrでガス循環ラインに供給した。その結果、生成ポリエチレンの平均生成速度は149g/時間となった。累積5kg以上のポリエチレンを生成した後に得られたエチレン・1−ヘキセン共重合体のMFRと密度は各々7.5g/10分、0.933g/cmであった。得られた樹脂のパウダーを単軸押出機(ユニオン・プラスチックス社製USV型30φ押出機)を用いて押出温度180℃で押し出すことでペレット化した。
[実施例2]
実施例1で得られた樹脂と、高圧法で製造された低密度ポリエチレンである、日本ポリエチレン株式会社ノバテックLD LC600A(MFR7g/10分、密度0.92g/cm)を70:30の割合で混合したものを、
単軸押出機(ユニオン・プラスチックス社製USV型30φ押出機)を用いて押出温度180℃で押し出すことでペレット化した樹脂(密度が0.929g/cm、MFRが6.5g/10分)を用い、実施例1と同様にして材料物性及び成形性を評価した。
[比較例1]
メタロセン触媒を用いて気相法で製造されたエチレン・1−ヘキセン共重合体(密度が0.935g/cm、MFRが4.2g/10分)を用い、実施例1と同様にして材料物性及び成形性を評価した。
[比較例2]
高圧法で製造された低密度ポリエチレン(密度が0.936g/cm、MFRが7g/10分)を用い、実施例1と同様にして材料物性及び成形性を評価した。
[比較例3]
クロム触媒を用いて気相法で製造されたエチレン・1−ブテン共重合体(密度が0.935g/cm、MFRが7g/10分)を用い、実施例1と同様にして材料物性及び成形性を評価した。
[比較例4]
高圧法で製造された低密度ポリエチレン(密度が0.923g/cm、MFRが4g/10分)を用い、実施例1と同様にして材料物性及び成形性を評価した。
[比較例5]
市販の長鎖分岐を有するメタロセンポリエチレン(密度が0.922g/cm、MFRが0.3g/10分)を用い、実施例1と同様に材料物性及び成形性を評価した。
Figure 2018115244
実施例1のエチレン・α−オレフィン共重合体は、本発明の要件を満足し、ヘキサン抽出量・押出負荷共に優れている。
また、実施例2は、実施例1には及ばないものの、ヘキサン抽出量・押出負荷の値は小さい。
これに対して、比較例1のエチレン・α−オレフィン共重合体は、分岐指数(g’)の分子量10万から100万の間での最低値(gc)が本発明の要件を外れており、押出負荷が大きい。
比較例2の低密度ポリエチレンは、分子量分布(Mw/Mn)に加えて、分岐指数(g’)の分子量10万から100万の間での最低値(gc)、クロス分別クロマトグラフィー(CFC)により測定される(W+W)が本発明の要件を外れており、ヘキサン抽出量がやや多いだけでなく、押出負荷が大きい。
比較例3のエチレン・1−ブテン共重合体は、分岐指数(g’)の分子量10万から100万の間での最低値(gc)が本発明の要件を外れており、押出負荷が大きい。
比較例4の低密度ポリエチレンは、分子量分布(Mw/Mn)に加えて、分岐指数(g’)の分子量10万から100万の間での最低値(gc)、クロス分別クロマトグラフィー(CFC)により測定される(W+W)が本発明の要件を外れており、ヘキサン抽出量が多い。
比較例5のメタロセンポリエチレンは、MFR、分子量分布(Mw/Mn)が本発明の要件を外れており、ヘキサン抽出量がやや多いだけでなく、押出負荷が大きい。
以上から明らかなように、本発明の押出ラミネート用エチレン・α−オレフィン共重合体は、ポリオレフィン系樹脂の有機溶剤等への溶出成分が少なく、押出時の負荷が低い為に低温加工が可能で、低発煙、低臭気の成形製品を提供することが可能である。
したがって、このような望ましいクリーンな特性を有する成形製品を経済的に有利に提供することのできる本発明の押出ラミネート用エチレン・α−オレフィン共重合体及びラミネート積層体の工業的価値は極めて大きい。

Claims (7)

  1. 下記の条件(1)〜(4)を満足することを特徴とする押出ラミネート用エチレン・α−オレフィン共重合体。
    (1)190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が1g/10分を超え、100g/10分以下である。
    (2)密度が0.895〜0.940g/cmである。
    (3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布(Mw/Mn)が3.0〜7.0である。
    (4)示差屈折計、粘度検出器及び光散乱検出器を組み合わせたGPC測定装置により測定される分岐指数(g’)の分子量10万から100万の間での最低値(gc)が0.40〜0.85である。
  2. 該エチレン・α−オレフィン共重合体が、下記の(1’)を満たすことを特徴とする請求項1記載の押出ラミネート用エチレン・α−オレフィン共重合体。
    (1’)190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が2g/10分を超え、50g/10分以下である。
  3. 更に、下記の条件(5)を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の押出ラミネート用エチレン・α−オレフィン共重合体。
    (5)クロス分別クロマトグラフィー(CFC)により測定される積分溶出曲線から求められた溶出量が50wt%となる温度以下で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量以上の成分の割合(W)及び積分溶出曲線から求められた溶出量が50wt%となる温度より高い温度で溶出する成分のうち分子量が当該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量未満の成分の割合(W)の和(W+W)が、40〜80重量%である。
  4. 該エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれるヘキサン抽出成分量が、1.6重量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の押出ラミネート用エチレン・α−オレフィン共重合体。
  5. 該エチレン・α−オレフィン共重合体におけるα−オレフィンは、炭素数が3〜10であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の押出ラミネート用エチレン・α−オレフィン共重合体。
  6. 該エチレン・α−オレフィン共重合体は、触媒成分(A)、(B)及び(C)を含むオレフィン重合用触媒によって重合されたエチレン・α−オレフィン共重合体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の押出ラミネート用エチレン・α−オレフィン共重合体。
    触媒成分(A):遷移金属元素を含む架橋シクロペンタジエニルインデニル化合物。
    触媒成分(B):成分(A)の化合物と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物。
    触媒成分(C):無機化合物担体。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載された押出ラミネート用エチレン・α−オレフィン共重合体を含む樹脂組成物によりラミネートされたラミネート積層体。
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