図7は、従来のコモンレール噴射システムの一例を示す構成図である。
図7に示す従来のコモンレール噴射システム101は、高圧ポンプ110、コモンレール104、及び複数のインジェクター105(燃料噴射弁)を備えている。高圧ポンプ110は、燃料タンク102に貯留されている燃料を加圧して高圧燃料とし、コモンレール104に供給(圧送)するものである。詳しくは、高圧ポンプ110の吸入口には、低圧配管106の一端が接続されている。低圧配管106の他端は、燃料タンク102内に配置されている。また、高圧ポンプ110の吐出口は、高圧配管107を介してコモンレール104に接続されている。すなわち、高圧ポンプ110は、燃料タンク102内の燃料を、低圧配管106を通して吸入する。そして、高圧ポンプ110は、吸入した燃料を加圧機構で加圧して高圧燃料とし、高圧配管107を通して高圧燃料をコモンレール104に供給する。なお、図7に示す従来のコモンレール噴射システム101は、低圧配管106に、高圧ポンプ110へ燃料を送る供給ポンプ103も備えている。
コモンレール104は、高圧ポンプ110から供給された高圧燃料を蓄えるものである。複数のインジェクター105は、コモンレール104に蓄えられた高圧燃料を、エンジンの燃焼室に噴射するものである。
このように構成されたコモンレール噴射システム101の高圧ポンプ110は、コモンレール104に高圧燃料を供給する燃料供給機構として、例えば図8に示すような燃料供給機構109を備えている。
図8は、従来の高圧ポンプが備える燃料供給機構の一例を示す構成図である。
高圧ポンプ110の燃料供給機構109は、加圧機構111、低圧燃料供給流路114、燃料供給弁120、高圧燃料供給流路115、及び吐出弁130を備えている。加圧機構111は、燃料を加圧する加圧室112を備えている。この加圧室112の一端は、往復動自在なプランジャー113で構成されている。このため、プランジャー113が往復動(図8において上下動)することにより、加圧室112の容積つまり圧力が変動する。
低圧燃料供給流路114は、燃料タンク102に貯留されている燃料を加圧室112に供給するものである。この低圧燃料供給流路114の一端は、加圧室112に接続されている。また、低圧燃料供給流路114の他端は、低圧配管106を介して燃料タンク102に連通している。燃料供給弁120は、低圧燃料供給流路114に設けられている。燃料供給弁120は、加圧室112から流出する燃料の流れを規制する逆止弁である。換言すると、加圧室112の圧力が燃料供給弁120よりも上流側(燃料タンク102側)となる低圧燃料供給流路114部分の圧力よりも所定量以上低くない場合には、燃料供給弁120は閉じている。そして、加圧室112の圧力が燃料供給弁120よりも上流側(燃料タンク102側)となる低圧燃料供給流路114部分の圧力よりも所定量以上低くなった際、燃料供給弁120が開き、加圧室112へ燃料が流れ込む。
高圧燃料供給流路115は、加圧室112で加圧された燃料(高圧燃料)をコモンレール104に供給するものである。この高圧燃料供給流路115の一端は、加圧室112に接続されている。また、高圧燃料供給流路115の他端は、高圧配管107を介してコモンレール104に接続されている。吐出弁130は、高圧燃料供給流路115に設けられている。吐出弁130は、加圧室112へ流入する燃料の流れを規制する逆止弁である。換言すると、加圧室112の圧力が吐出弁130よりも下流側(コモンレール104側)となる高圧燃料供給流路115部分の圧力よりも所定量以上高くない場合には、吐出弁130は閉じている。そして、加圧室112の圧力が吐出弁130よりも下流側(コモンレール104側)となる高圧燃料供給流路115部分の圧力よりも所定量以上高くなった際、吐出弁130が開き、加圧室112からコモンレール104側へ高圧燃料を吐出させる。
このように構成された図8に示す高圧ポンプ110の燃料供給機構109は、次のように動作する。
プランジャー113が下降して加圧室112の圧力が低下すると、燃料供給弁120が開く。これにより、燃料タンク102に貯留されている燃料は、低圧燃料供給流路114を通って加圧室112に吸入される。そして、プランジャー113が上昇し始め、加圧室112の圧力がある圧力以上になると、燃料供給弁120が閉じて、加圧室112の燃料の吸入が終了する。燃料供給弁120が閉じた後もプランジャー113が上昇し続けることにより、加圧室112内の燃料は、加圧されて高圧燃料となる。そして、プランジャー113が上昇し続け、加圧室112内の圧力がさらに上昇すると、吐出弁130が開き、加圧室112内の高圧燃料が高圧燃料供給流路115へ吐出される。この吐出された高圧燃料は、高圧燃料供給流路115を通ってコモンレール104に流入し、該コモンレール104に蓄えられる。
ここで、図8に示した燃料供給機構109は、加圧室112に吸入した燃料の全てを加圧する構成となっている。このため、エンジンにかかる負荷が小さく、インジェクター105から噴射する燃料が少なくてよい条件においては、過剰に燃料を加圧(圧縮)する仕事を行うこととなる。加圧室112での燃料の加圧は上述のようにプランジャー113の往復動作によって行われるが、該プランジャー113は、図示せぬドライブシャフト等を介して、エンジンで駆動される。このため、図8に示した燃料供給機構109では、エンジンの燃費が悪化してしまうという課題があった。
そこで、高圧ポンプの従来の燃料供給機構には、燃料供給弁を強制的に開くプッシュロッドと、該プッシュロッドを駆動する電磁弁とを備えたものも提案されている(特許文献1参照)。
以下、図9を用いて、特許文献1に開示されている燃料供給機構の構成を説明する。なお、図9では、図7及び図8と同一の機能や構成については同一の符号を用いることとする。
図9は、従来の高圧ポンプが備える燃料供給機構の別の一例を示す構成図である。
図9に示す高圧ポンプ110の燃料供給機構109は、図8で示した燃料供給機構109の構成に加えて、プッシュロッド152、バネ154及び電磁弁151を備えている。プッシュロッド152の一端は、燃料供給弁120の弁体122に当接している。また、プッシュロッド152の他端は、バネ154によって、燃料供給弁120の弁体122側に押圧されている。電磁弁151は、通電された際、プッシュロッド152をバネ154の方へ引き戻すものである。つまり、電磁弁151は、バネ154がプッシュロッド152を押圧する力をキャンセルするものである。このため、電磁弁151が通電されていない状態では、燃料供給弁120は、弁体122がプッシュロッド152で押され、強制的に開かれた状態となる。また、電磁弁151が通電されている状態では、バネ154の押圧力がキャンセルされるため、燃料供給弁120は、加圧室112の圧力に応じて開閉することとなる。
図9のように構成された燃料供給機構109においては、プランジャー113が下降する燃料の吸入工程で加圧室112に吸入された燃料の少なくとも一部は、プランジャー113が上昇する燃料の加圧工程で電磁弁151に通電しない間、強制的に開かれた燃料供給弁120を通って低圧燃料供給流路114に戻る。そして、加圧工程で電磁弁151に通電され、燃料供給弁120が閉じると、加圧室112内に残っている燃料を加圧する。このため、図9のように電磁弁151を備えた燃料供給機構109は、加圧する燃料の量を調整できるため、過剰に燃料を加圧(圧縮)する仕事を行うことを防止でき、エンジンの燃費を向上させることができる。
ところで、エンジンの燃費向上及び排気ガス中の汚染物質の低減等、エンジン性能の向上の観点から、インジェクター105からの燃料の噴射量は、より高精度な方が好ましい。この際、インジェクター105からの燃料の噴射量を高精度に制御するためには、コモンレール104内の圧力も重要な要因の1つとなる。未燃焼の燃料を減らすため噴射される燃料の微粒化を促進する高圧が必要とされる一方で、エンジン回転数や燃焼室内の圧力状況に見合わない過度な高圧噴射は、噴射された燃料が燃焼室壁面に到達し液滴となり未燃焼となる。よって、高負荷高回転時は高圧噴射で大噴射量、低負荷低回転時は低圧噴射で低噴射量と言った具合となるのが一般的である。
ここで、エンジンの負荷が大きい状態から小さい状態に変化した際、インジェクター105からの燃料の噴射圧と噴射量を最適に制御するためには、コモンレール104内の圧力を速やかに低下させる必要がある。しかしながら、図8及び図9で示した燃料供給機構109では、コモンレール104内の圧力を速やかに低下させることができない。そこで、従来のコモンレール噴射システムには、図10に示すような構成のものも提案されている。
図10は、従来のコモンレール噴射システムの別の一例を示す構成図である。なお、図10では、図7〜図9と同一の機能や構成については同一の符号を用いることとする。
図10に示すコモンレール噴射システム101は、コモンレール104に圧力調整弁140が接続されている。この圧力調整弁140は、該圧力調整弁140を開閉する電磁弁を備えている。また、圧力調整弁140には、逃がし流路116の一端が接続されている。この逃がし流路116の他端は、燃料タンク102に連通している。
図10に示すコモンレール噴射システム101は、コモンレール104内の圧力を速やかに低下させる場合、電磁弁に通電して、圧力調整弁140を開く。圧力調整弁140を開くことにより、コモンレール104内に蓄えられた高圧燃料は、圧力調整弁140及び逃がし流路116を通って、燃料タンク102へ戻る。これにより、コモンレール104内の圧力を速やかに低下させることができる。
実施の形態.
以下、本発明に係る燃料供給機構及び高圧ポンプの一例について、図面を用いて説明する。なお、以下に示す燃料供給機構及び高圧ポンプの構成及び動作は、あくまでも一例であって本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができる。
図1は、本発明の実施の形態に係るコモンレール噴射システムを示す構成図である。
本実施の形態に係るコモンレール噴射システム1は、高圧ポンプ10、コモンレール4、及び複数のインジェクター5(燃料噴射弁)を備えている。高圧ポンプ10は、燃料タンク2に貯留されている燃料を加圧して高圧燃料とし、コモンレール4に供給(圧送)するものである。詳しくは、高圧ポンプ10の吸入口には、低圧配管6の一端が接続されている。低圧配管6の他端は、燃料タンク2内に配置されている。また、高圧ポンプ10の吐出口は、高圧配管7を介してコモンレール4に接続されている。すなわち、高圧ポンプ10は、燃料タンク2内の燃料を、低圧配管6を通して吸入する。そして、高圧ポンプ10は、吸入した燃料を加圧機構で加圧して高圧燃料とし、高圧配管7を通して高圧燃料をコモンレール4に供給する。なお、図1に示す本実施の形態に係るコモンレール噴射システム1は、低圧配管6に、高圧ポンプ10へ燃料を送る供給ポンプ3も備えている。供給ポンプ3を設けなくても高圧ポンプ10が燃料タンク2内の燃料を吸入できる場合、供給ポンプ3を設けなくてもよい。
コモンレール4は、高圧ポンプ10から供給された高圧燃料を蓄えるものである。複数のインジェクター5は、コモンレール4に蓄えられた高圧燃料を、エンジンの燃焼室に噴射するものである。
このように構成されたコモンレール噴射システム1の高圧ポンプ10は、コモンレール4に高圧燃料を供給する燃料供給機構として、図2に示すような燃料供給機構9を備えている。
図2は、本発明の実施の形態に係る高圧ポンプが備える燃料供給機構を示す構成図である。なお、図2は、駆動装置50のピエゾアクチュエーター51に電圧が印加されていない状態を示している。以下、電圧が印加されていないピエゾアクチュエーター51の状態を、第1状態と称する。
高圧ポンプ10の燃料供給機構9は、加圧機構11、低圧燃料供給流路14、燃料供給弁20、高圧燃料供給流路15、及び吐出弁30を備えている。加圧機構11は、燃料を加圧する加圧室12を備えている。この加圧室12の一端は、往復動自在なプランジャー13で構成されている。このため、プランジャー13が往復動(図2において上下動)することにより、加圧室12の容積つまり圧力が変動する。
低圧燃料供給流路14は、燃料タンク2に貯留されている燃料を加圧室12に供給するものである。この低圧燃料供給流路14の一端は、加圧室12に接続されている。また、低圧燃料供給流路14の他端は、低圧配管6を介して燃料タンク2に連通している。燃料供給弁20は、低圧燃料供給流路14に設けられている。燃料供給弁20は、加圧室12から流出する燃料の流れを規制する逆止弁である。詳しくは、燃料供給弁20は、台座21、弁体22及びバネ23を備えている。台座21は、流路となる貫通孔が形成されている。弁体22は、台座21よりも加圧室12側に設けられている。バネ23は、弁体22を台座21へ押圧し、流路となる台座21の貫通孔を弁体22で閉塞させている。このため、加圧室12の圧力が燃料供給弁20よりも上流側(燃料タンク2側)となる低圧燃料供給流路14部分の圧力よりも所定量以上低くない場合には、弁体22にかかる両圧力の圧力差よりもバネ23の押圧力が勝り、燃料供給弁20は閉じている。そして、加圧室12の圧力が燃料供給弁20よりも上流側(燃料タンク2側)となる低圧燃料供給流路14部分の圧力よりも所定量以上低くなった際、弁体22にかかる両圧力の圧力差がバネ23の押圧力よりも勝って燃料供給弁20が開き、加圧室12へ燃料が流れ込む。
高圧燃料供給流路15は、加圧室12で加圧された燃料(高圧燃料)をコモンレール4に供給するものである。この高圧燃料供給流路15の一端は、加圧室12に接続されている。また、高圧燃料供給流路15の他端は、高圧配管7を介してコモンレール4に接続されている。吐出弁30は、高圧燃料供給流路15に設けられている。吐出弁30は、加圧室12へ流入する燃料の流れを規制する逆止弁である。詳しくは、吐出弁30は、台座31、弁体32及びバネ33を備えている。台座31は、流路となる貫通孔が形成されている。弁体32は、台座31に対して加圧室12とは反対側に設けられている。バネ33は、弁体32を台座31へ押圧し、流路となる台座31の貫通孔を弁体32で閉塞させている。このため、加圧室12の圧力が吐出弁30よりも下流側(コモンレール4側)となる高圧燃料供給流路15部分の圧力よりも所定量以上高くない場合には、弁体32にかかる両圧力の圧力差よりもバネ33の押圧力が勝り、吐出弁30は閉じている。そして、加圧室12の圧力が吐出弁30よりも下流側(コモンレール4側)となる高圧燃料供給流路15部分の圧力よりも所定量以上高くなった際、弁体32にかかる両圧力の圧力差がバネ33の押圧力よりも勝って吐出弁30が開き、加圧室12からコモンレール4側へ高圧燃料を吐出させる。
本実施の形態に係る燃料供給機構9は、さらに、逃がし流路16、圧力調整弁40、及び駆動装置50を備えている。
逃がし流路16は、高圧燃料供給流路15を流れる燃料を、コモンレール4に供給されないように逃がすものである。この逃がし流路16の一端は、高圧燃料供給流路15に接続されている。また、逃がし流路16の他端は、低圧燃料供給流路14に接続されている。なお、逃がし流路16に流入した燃料を加圧室12で再び吸入できる位置に戻すことができれば、逃がし流路16の他端の位置は任意である。逃がし流路16の他端は、例えば、燃料タンク2に連通していてもよい。
圧力調整弁40は、コモンレール4内の圧力を速やかに低下させたいときに後述の駆動装置50で開かれるものであり、逃がし流路16に設けられている。圧力調整弁40は、高圧燃料供給流路15から低圧燃料供給流路14に流出する燃料の流れを規制する逆止弁である。詳しくは、圧力調整弁40は、台座41、弁体42及びバネ43を備えている。台座41は、流路となる貫通孔が形成されている。弁体42は、台座41よりも高圧燃料供給流路15側に設けられている。バネ43は、弁体42を台座41へ押圧し、流路となる台座41の貫通孔を弁体42で閉塞させている。ここで、高圧燃料供給流路15を流れる燃料の圧力は、低圧燃料供給流路14を流れる燃料の圧力よりも大きい。この両者の圧力差により、弁体42は台座41へ押圧される。また、上述のように、弁体42は、バネ43によっても台座41へ押圧される。このため、圧力調整弁40は、駆動装置50で圧力調整弁40を開こうとしていない状態において、閉じた状態となっている。
また、本実施の形態に係る圧力調整弁40の弁体42は、高圧燃料供給流路15側の受圧面積が、高圧燃料供給流路15側とは反対側(つまり低圧燃料供給流路14側)の受圧面積よりも大きい。このため、圧力調整弁40は、駆動装置50で圧力調整弁40を開こうとしていない状態において、より開くことを防止できる。つまり、コモンレール4内の圧力を低下させたくない場合に、圧力調整弁40が開いてコモンレール4内の圧力が低下することをより防止できる。なお、弁体42の高圧燃料供給流路15側の受圧面積とは、弁体42が台座41に当接(着座)している状態において、高圧燃料供給流路15から逃がし流路16に流入した燃料が弁体42に接触する範囲の面積である。また、弁体42の高圧燃料供給流路15側とは反対側(つまり低圧燃料供給流路14側)の受圧面積とは、弁体42が台座41に当接(着座)している状態において、弁体42よりも低圧燃料供給流路14側となる逃がし流路16部分に存在する燃料が弁体42に接触する範囲の面積である。つまり、弁体42の高圧燃料供給流路15側とは反対側(つまり低圧燃料供給流路14側)の受圧面積は、台座41に形成されている貫通孔の断面積となる。
駆動装置50は、燃料供給弁20の弁体22と圧力調整弁40の弁体42との間に設けられたピエゾアクチュエーター51を有し、該ピエゾアクチュエーター51によって弁体22及び弁体42を押圧して駆動するものである。つまり、駆動装置50は、燃料供給弁20及び圧力調整弁40を強制的に開くことができる。本実施の形態においては、駆動装置50は、ピエゾアクチュエーター51、第1プッシュロッド52、第2プッシュロッド53、バネ54、及びストッパー55を備えている。
ピエゾアクチュエーター51は、伸縮方向に第1端部51a及び第2端部51bを有している。そして、ピエゾアクチュエーター51の第1端部51aと燃料供給弁20の弁体22との間には、第1プッシュロッド52が設けられている。第1プッシュロッド52は、ピエゾアクチュエーター51に電圧が印加され、該ピエゾアクチュエーター51が伸びた際に、燃料供給弁20の弁体22を押圧し、燃料供給弁20を強制的に開くものである。また、ピエゾアクチュエーター51の第2端部51bと圧力調整弁40の弁体42との間には、第2プッシュロッド53が設けられている。第2プッシュロッド53は、ピエゾアクチュエーター51に電圧が印加され、該ピエゾアクチュエーター51が伸びた際に、圧力調整弁40の弁体42を押圧し、圧力調整弁40を強制的に開くものである。
バネ54は、ピエゾアクチュエーター51の第2端部51bに対向して設けられ、ピエゾアクチュエーター51を第2端部51b側から第1端部51aへ押圧するものである。ストッパー55は、ピエゾアクチュエーター51に電圧が印加されていない第1状態においてピエゾアクチュエーター51の第1端部51aから規定距離離れた位置となる箇所に設けられている。
すなわち、ピエゾアクチュエーター51に電圧が印加された際、ピエゾアクチュエーター51は、第2端部51b側(圧力調整弁40の弁体42側)への伸びがバネ54に規制されるので、主に第1端部51a側(燃料供給弁20の弁体22側)に伸びることとなる。また、ピエゾアクチュエーター51がさらに伸びて第1端部51aがストッパー55に当接すると、ピエゾアクチュエーター51は、ストッパー55によって第1端部51a側への伸びが規制されるため、バネ54を押し縮めながら第2端部51b側に伸びることとなる。なお、本実施の形態では、ピエゾアクチュエーター51及びバネ54を筐体内に収納し、該筐体から第1プッシュロッド52及び第2プッシュロッド53が突出している構成となっている。そして、この筐体における第1端部51aと対向する側壁が、ストッパー55として機能している。
ここで、ピエゾアクチュエーター51に電圧が印加されていない第1状態において、ピエゾアクチュエーター51の第1端部51aと第1プッシュロッド52との間、及び、第1プッシュロッド52と燃料供給弁20の弁体22との間の少なくとも一方には、隙間が形成されている。仮にこれらの間に隙間が無い場合、ピエゾアクチュエーター51、第1プッシュロッド52及び燃料供給弁20の部品加工誤差及び取り付け誤差等によっては、ピエゾアクチュエーター51に電圧が印加されていない第1状態でも第1プッシュロッド52が燃料供給弁20の弁体22を押圧し、燃料供給弁20を強制的に開いてしまう場合がある。すなわち、燃料供給弁20が閉じられなくなってしまう。ピエゾアクチュエーター51の第1端部51aと第1プッシュロッド52との間、及び、第1プッシュロッド52と燃料供給弁20の弁体22との間の少なくとも一方に隙間を形成することにより、燃料供給弁20が閉じられなくなってしまうことを防止できる。
同様に、ピエゾアクチュエーター51に電圧が印加されていない第1状態において、ピエゾアクチュエーター51の第2端部51bと第2プッシュロッド53との間、及び、第2プッシュロッド53と圧力調整弁40の弁体42との間の少なくとも一方には、隙間が形成されている。仮にこれらの間に隙間が無い場合、ピエゾアクチュエーター51、第2プッシュロッド53及び圧力調整弁40の部品加工誤差及び取り付け誤差等によっては、ピエゾアクチュエーター51に電圧が印加されていない第1状態でも第2プッシュロッド53が圧力調整弁40の弁体42を押圧し、圧力調整弁40を強制的に開いてしまう場合がある。すなわち、圧力調整弁40が閉じられなくなってしまう。ピエゾアクチュエーター51の第2端部51bと第2プッシュロッド53との間、及び、第2プッシュロッド53と圧力調整弁40の弁体42との間の少なくとも一方に隙間を形成することにより、圧力調整弁40が閉じられなくなってしまうことを防止できる。なお、後述する第2状態においても、ピエゾアクチュエーター51の第2端部51bと第2プッシュロッド53との間、及び、第2プッシュロッド53と圧力調整弁40の弁体42との間の少なくとも一方には、隙間が形成されている。
また、本実施の形態に係る燃料供給機構9は、ピエゾアクチュエーター51への電圧を印加するか否か、及び印加時の電圧値を制御する制御装置60を備えている。この制御装置60は、高圧ポンプ10には設けられておらず、例えば、インジェクター5の開閉を制御する図示せぬ制御装置と共に設けられている。なお、制御装置60を高圧ポンプ10に設けても勿論よい。ここで、制御装置60の一部又は全ては、例えば、マイコン、マイクロプロセッサユニット等で構成されてもよく、また、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
続いて、本実施の形態に係る燃料供給機構9の動作について説明する。
図3は、本発明の実施の形態に係る高圧ポンプが備える燃料供給機構を示す構成図であり、ピエゾアクチュエーターが第2状態となっているときの図である。また、図4は、本発明の実施の形態に係る高圧ポンプが備える燃料供給機構を示す構成図であり、ピエゾアクチュエーターが第3状態となっているときの図である。なお、ピエゾアクチュエーター51の第2状態とは、ピエゾアクチュエーター51に第1電圧値の電圧が印加されている状態のことである。また、ピエゾアクチュエーター51の第3状態とは、ピエゾアクチュエーター51に第1電圧値よりも大きな第2電圧値の電圧が印加されている状態のことである。
以下、これら図3及び図4と上述の図2を用いて、本実施の形態に係る燃料供給機構9の動作について説明する。
加圧室12に吸入した燃料の全てを加圧しても、過剰に燃料を加圧することとならない場合、燃料供給機構9は、ピエゾアクチュエーター51が図2に示す第1状態となって動作する。すなわち、加圧室12に吸入した燃料の全てを加圧しても、過剰に燃料を加圧することとならない場合、燃料供給機構9は、ピエゾアクチュエーター51に電圧が印加されていない状態となる。ピエゾアクチュエーター51が第1状態となっている場合、駆動装置50は、燃料供給弁20の弁体22及び圧力調整弁40の弁体42を押圧しない状態となる。この場合、燃料供給機構9は、次のように動作する。
プランジャー13が下降して加圧室12の圧力が低下すると、燃料供給弁20が開く。これにより、燃料タンク2に貯留されている燃料は、低圧燃料供給流路14を通って加圧室12に吸入される。そして、プランジャー13が上昇し始め、加圧室12の圧力がある圧力以上になると、燃料供給弁20が閉じて、加圧室12の燃料の吸入が終了する。燃料供給弁20が閉じた後もプランジャー13が上昇し続けることにより、加圧室12内の燃料は、加圧されて高圧燃料となる。そして、プランジャー13が上昇し続け、加圧室12内の圧力がさらに上昇すると、吐出弁30が開き、加圧室12内の高圧燃料が高圧燃料供給流路15へ吐出される。この吐出された高圧燃料は、高圧燃料供給流路15を通ってコモンレール4に流入し、該コモンレール4に蓄えられる。
加圧室12に吸入した燃料の全てを加圧すると、過剰に燃料を加圧することになる場合、燃料供給機構9は、プランジャー13が上昇する燃料の加圧工程の少なくとも一部の時間、ピエゾアクチュエーター51が図3に示す第2状態となって動作する。すなわち、ピエゾアクチュエーター51は、プランジャー13が上昇する燃料の加圧工程の少なくとも一部の時間、第1電圧値の電圧が印加されている状態となる。この第2状態では、ピエゾアクチュエーター51は、第1状態よりも伸びた状態となる。そして、ピエゾアクチュエーター51は、燃料供給弁20の弁体22を押圧して燃料供給弁20を開き、且つ、圧力調整弁40の弁体42を押圧しない状態となる。より詳しくは、ピエゾアクチュエーター51は、バネ54によって第2端部51b側への伸びが規制されて第1端部51a側に伸びる。これにより、ピエゾアクチュエーター51は、第1端部51aが第1プッシュロッド52を介して燃料供給弁20の弁体22を押圧して燃料供給弁20を開き、且つ、圧力調整弁40の弁体42を第2プッシュロッド53で押圧しない状態となる。この場合、燃料供給機構9は、次のように動作する。
プランジャー13が下降する燃料の吸入工程で加圧室12に吸入された燃料の少なくとも一部は、プランジャー13が上昇する燃料の加圧工程でピエゾアクチュエーター51に第1電圧値の電圧が印加されている間、強制的に開かれた燃料供給弁20を通って低圧燃料供給流路14に戻る。そして、加圧工程でピエゾアクチュエーター51への電圧印加を終了し、燃料供給弁20が閉じると、加圧室12内に残っている燃料を加圧する。このため、加圧する燃料の量を調整できるため、過剰に燃料を加圧(圧縮)する仕事を行うことを防止でき、エンジンの燃費を向上させることができる。
また、コモンレール4内の圧力を速やかに低下させたい場合、燃料供給機構9は、ピエゾアクチュエーター51が図4に示す第3状態となって動作する。すなわち、ピエゾアクチュエーター51は、第1電圧値よりも大きな第2電圧値の電圧が印加されている状態となる。この第3状態では、ピエゾアクチュエーター51は、第2状態よりも伸びた状態となる。そして、ピエゾアクチュエーター51は、燃料供給弁20の弁体22を押圧して燃料供給弁20を開き、且つ、圧力調整弁40の弁体42を押圧して圧力調整弁40を開く状態となる。より詳しくは、ピエゾアクチュエーター51は、ストッパー55によって第1端部51a側への伸びが規制されることにより、バネ54を押し縮めながら第2端部51b側に伸びる。これにより、ピエゾアクチュエーター51は、第1端部51aが第1プッシュロッド52を介して燃料供給弁20の弁体22を押圧して燃料供給弁20を開き、且つ、第2端部51bが第2プッシュロッド53を介して圧力調整弁40の弁体42を押圧して圧力調整弁40を開く状態となる。これにより加圧室12は加圧を停止すると同時に、圧力調整弁40を開くことにより、コモンレール4内に蓄えられた高圧燃料は、圧力調整弁40及び逃がし流路16を通って、低圧燃料供給流路14へ戻る。これにより、コモンレール4内の圧力を速やかに低下させることができる。
以上、本実施の形態に係る燃料供給機構9は、加圧室12で燃料を加圧する加圧機構11と、一端が加圧室12に接続され、燃料タンク2に貯留されている燃料を加圧室12に供給する低圧燃料供給流路14と、低圧燃料供給流路14に設けられ、加圧室12から流出する燃料の流れを規制する逆止弁である燃料供給弁20と、一端が加圧室12に接続され、加圧室12で加圧された燃料をコモンレール4に供給する高圧燃料供給流路15と、高圧燃料供給流路15に設けられ、加圧室12へ流入する燃料の流れを規制する逆止弁である吐出弁30と、を備えた燃料供給機構である。本実施の形態に係る燃料供給機構9は、一端が高圧燃料供給流路15に接続され、高圧燃料供給流路15を流れる燃料をコモンレール4に供給されないように逃がす逃がし流路16と、逃がし流路16に設けられ、高圧燃料供給流路15から流出する燃料の流れを規制する逆止弁である圧力調整弁40と、燃料供給弁20の弁体22と圧力調整弁40の弁体42との間に設けられたピエゾアクチュエーター51を有する駆動装置50と、を備えている。そして、本実施の形態に係る燃料供給機構9のピエゾアクチュエーター51は、ピエゾアクチュエーター51に電圧が印加されていない状態においては、燃料供給弁20の弁体22及び圧力調整弁40の弁体42を押圧しない第1状態となり、ピエゾアクチュエーター51に第1電圧値の電圧が印加されている状態においては、第1状態よりも伸びて、燃料供給弁20の弁体22を押圧して燃料供給弁20開き、且つ、圧力調整弁40の弁体42を押圧しない第2状態となり、ピエゾアクチュエーター51に第1電圧値よりも大きな第2電圧値の電圧が印加されている状態においては、第2状態よりも伸びて、燃料供給弁20の弁体22を押圧して燃料供給弁20を開き、且つ、圧力調整弁40の弁体42を押圧して圧力調整弁40を開く第3状態となる。
例えば、ピエゾアクチュエーター51は伸縮方向に第1端部51a及び第2端部51bを有し、駆動装置50は、ピエゾアクチュエーター51の第1端部51aと燃料供給弁20の弁体22との間に設けられた第1プッシュロッド52と、ピエゾアクチュエーター51の第2端部51bと圧力調整弁40の弁体42との間に設けられた第2プッシュロッド53と、ピエゾアクチュエーター51を第1端部51a側から第2端部51b側へ押圧するバネ54と、ピエゾアクチュエーター51に電圧が印加されていない第1状態においてピエゾアクチュエーター51の第1端部51aから規定距離離れた位置となる箇所に設けられたストッパー55と、を備えている。そして、ピエゾアクチュエーター51は、第2状態においては、バネ54によって第2端部51b側への伸びが規制されて第1端部51a側に伸び、第1端部51aが第1プッシュロッド52を介して燃料供給弁20の弁体22を押圧して燃料供給弁20を開き、且つ、圧力調整弁40の弁体42を第2プッシュロッド53で押圧しない状態となり、第3状態においては、ストッパー55によって第1端部51a側への伸びが規制されることにより、バネ54を押し縮めながら第2端部51b側に伸びて、第1端部51aが第1プッシュロッド52を介して燃料供給弁20の弁体22を押圧して燃料供給弁20を開き、且つ、第2端部51bが第2プッシュロッド53を介して圧力調整弁40の弁体42を押圧して圧力調整弁40を開く状態となる。
このため、本実施の形態に係る燃料供給機構9をコモンレール噴射システムに採用することにより、燃料供給弁20の弁体22を駆動することによって加圧室12にて加圧する燃料の量を調整でき、圧力調整弁40の弁体42を駆動することによってコモンレール4内の圧力を速やかに低下させることができる。この際、本実施の形態に係る燃料供給機構9は、1つの駆動源(ピエゾアクチュエーター51)によって、燃料供給弁20の弁体22及び圧力調整弁40の弁体42を駆動することができる。このため、本実施の形態に係る燃料供給機構9は、従来の燃料供給機構よりもスペースを必要としない。したがって、本実施の形態に係る燃料供給機構9は、エンジンの性能を向上させることができると共に、エンジンルームの大型化及びエンジンレイアウトの自由度の減少等も抑制することもできる。
例えば、本実施の形態に係る燃料供給機構9は、1つの駆動源(ピエゾアクチュエーター51)によって燃料供給弁20の弁体22及び圧力調整弁40の弁体42を駆動することができるので、図2〜図4で示したように、高圧ポンプ10に設けられることも可能である。図10で示したように、従来の燃料供給機構においては、圧力調整弁140から流出した燃料が通る逃がし流路116は、高圧ポンプ110の外部に設けられていた。一方、本実施の形態に係る燃料供給機構9は高圧ポンプ10に設けることもできるので、従来の逃がし流路116に相当する逃がし流路16を高圧ポンプ10内に形成することができる。このため、本実施の形態に係る燃料供給機構9を高圧ポンプ10が備えることにより、従来の逃がし流路116をエンジンルームに配置する必要がなくなるので、エンジンルームの大型化及びエンジンレイアウトの自由度の減少等をさらに抑制することができる。
また、本実施の形態に係る燃料供給機構9は、駆動源であるピエゾアクチュエーター51の電力供給線が断線した場合でも、高圧燃料を圧送でき、エンジンの駆動を継続することができるという効果も有する。図2〜図4からわかるように、本実施の形態に係る燃料供給機構9は、駆動源であるピエゾアクチュエーター51の電力供給線が断線した場合、燃料供給弁20及び圧力調整弁40を強制的に開けなくなるだけであり、図8で示した燃料供給機構109と同様に動作することができるからである。一方、図9で示した従来の燃料供給機構109は、電磁弁151の電力供給線が断線した場合、燃料供給弁120が常時開いた状態となるため、加圧室112で燃料を加圧することができなくなり、エンジンの駆動を継続することができなくなってしまう。
また、本実施の形態に係る燃料供給機構9は、第1状態において、ピエゾアクチュエーター51の第1端部51aと第1プッシュロッド52との間、及び、第1プッシュロッド52と燃料供給弁20の弁体22との間の少なくとも一方には、隙間が形成されている。このため、本実施の形態に係る燃料供給機構9は、ピエゾアクチュエーター51、第1プッシュロッド52及び燃料供給弁20の部品加工誤差及び取り付け誤差等によって燃料供給弁20が閉じられなくなってしまうことを防止できる。
また、本実施の形態に係る燃料供給機構9は、ピエゾアクチュエーター51の第2端部51bと第2プッシュロッド53との間、及び、第2プッシュロッド53と圧力調整弁40の弁体42との間の少なくとも一方には、隙間が形成されている。このため、本実施の形態に係る燃料供給機構9は、ピエゾアクチュエーター51、第2プッシュロッド53及び圧力調整弁40の部品加工誤差及び取り付け誤差等によって圧力調整弁40が閉じられなくなってしまうことを防止できる。
また、本実施の形態に係る燃料供給機構9においては、圧力調整弁40の弁体42は、高圧燃料供給流路15側の受圧面積が、高圧燃料供給流路15側とは反対側の受圧面積よりも大きい。このため、圧力調整弁40は、駆動装置50で圧力調整弁40を開こうとしていない状態において、より開くことを防止できる。
なお、本実施の形態では、燃料供給機構9の構成のうち、制御装置60以外の構成を高圧ポンプ10に設けた。これに限らず、本実施の形態において高圧ポンプ10に設けられていた燃料供給機構9の一部を、高圧ポンプ10の外部に設けてもよい。
また、本実施の形態に係る燃料供給機構9に、低圧燃料供給流路の一部として、燃料供給弁20よりも燃料タンク2側となる範囲から分岐した排出流路を備えてもよい。そして、該排出流路を燃料タンク2と連通させ、加圧室12での燃料の圧縮過程において燃料供給弁20から低圧燃料供給流路14に戻った燃料を、該排出流路を通して燃料タンク2に戻してもよい。
また、本実施の形態では特に言及しなかったが、高圧ポンプ10に備えるプランジャー13の数は任意である。
また、本実施の形態に係る燃料供給機構9において、ピエゾアクチュエーター51の第1端部51aと第1プッシュロッド52との間、及び、ピエゾアクチュエーター51の第2端部51bと第2プッシュロッド53との間の少なくとも一方に、図5で示すようなカップリング70を設けてもよい。
図5は、本発明の実施の形態に係るカップリングを示す断面図である。なお、図5は、ピエゾアクチュエーター51の第1端部51aと第1プッシュロッド52との間にカップリング70を設けた例を示している。ピエゾアクチュエーター51の第2端部51bと第2プッシュロッド53との間にカップリング70を設ける場合には、後述の説明において、第1端部51aを第2端部51bと読み替え、第1プッシュロッド52を第2プッシュロッド53と読み替えればよい。
カップリング70は、両端が開口した筒状の本体部71と、本体部71の一方の開口部を閉塞し、ピエゾアクチュエーター51の第1端部51aに対向して設けられた第1ピストン72と、本体部71の他方の開口部を閉塞し、第1プッシュロッド52に対向して設けられた第2ピストン73と、本体部71の内部に充填された流体74(例えば作動油等)と、を備えている。そして、第1ピストン72の流体74側の受圧面積が、第2ピストン73の流体74側の受圧面積よりも大きい構成となっている。
このような構成のカップリング70においては、第1ピストン72がピエゾアクチュエーター51の第1端部51aに押圧されて第2ピストン73側に移動すると、流体74を介して第2ピストン73も押圧される。そして、第2ピストン73が第1プッシュロッド52側に移動し、第1プッシュロッド52を押圧する。この際、第1ピストン72の流体74側の受圧面積が第2ピストン73の流体74側の受圧面積よりも大きいので、第1ピストン72の移動量よりも、第2ピストン73の移動量の方が大きくなる。つまり、ピエゾアクチュエーター51の伸び量以上に、第1プッシュロッド52を移動させることができる。このため、ピエゾアクチュエーター51を構成するピエゾ素子の使用量を削減でき、燃料供給機構9の製造コストを削減することができる。
また、本実施の形態に係る燃料供給機構9の制御装置60に、ピエゾアクチュエーター51に印加する電圧値を補正する機能を付加してもよい。
図6は、ピエゾアクチュエーターに電圧が印加された際の、ピエゾアクチュエーターの両端にかかる電圧を示した特性図である。なお、図6の横軸が時間を示し、図6の縦軸が、ピエゾアクチュエーターの両端にかかる電圧を示している。また、図6に示す実線は、ピエゾアクチュエーターに経時劣化が発生していない状態を示している。図6に示す二点鎖線は、ピエゾアクチュエーターに経時劣化が発生している状態を示している。
ピエゾアクチュエーターに電圧を印加すると、ピエゾアクチュエーターの両端にかかる電圧も上昇していく。そして、ピエゾアクチュエーターに経時劣化が発生していない場合、ピエゾアクチュエーターの両端にかかる電圧は、ピエゾアクチュエーターに電圧が印加されている間、一定の値となる。一方、ピエゾアクチュエーターに経時劣化が発生し、内部崩壊等が発生している場合、ロスが大きくなる。このため、ピエゾアクチュエーターに経時劣化が発生している場合、ピエゾアクチュエーターに電圧が印加されている間、ピエゾアクチュエーターの両端にかかる電圧は、一旦最大値V1まで上昇するものの、その後に徐々に低下していって最小値V2となる。このため、ピエゾアクチュエーターに経時劣化が発生している場合、ピエゾアクチュエーターの伸び量が所望の伸び量よりも小さくなってしまう。
この場合、図1及び図2で示しているように制御装置60を構成し、ピエゾアクチュエーター51に印加する電圧値を補正することにより、ピエゾアクチュエーター51の伸び量を常に所望値近傍とすることができ、燃料供給機構9の動作をより安定させることができる。詳しくは、図1及び図2で示す制御装置60は、記憶部61、検出部62、算出部63、補正部64、及び制御部65を備えている。記憶部61は、ピエゾアクチュエーター51に印加する電圧の値である第1電圧値及び第2電圧値を記憶するものである。検出部62は、ピエゾアクチュエーター51に電圧が印加されている際、ピエゾアクチュエーター51の両端にかかる電圧を検出するものである。算出部63は、検出部62の検出値から、ピエゾアクチュエーター51にかかる電圧の最大値V1と該最大値の後の最小値V2を抽出し、最大値V1と最小値V2との差を算出するものである。補正部64は、最大値V1と最小値V2との差が規定量以上となった場合、記憶部61に記憶されている第1電圧値及び第2電圧値の値を大きくする補正を行い、該補正された第1電圧値及び第2電圧値を記憶部61に記憶させるものである。制御部65は、記憶部61に記憶されている第1電圧値又は第2電圧値の電圧をピエゾアクチュエーター51に印加するものである。
このように構成された制御装置60においては、検出部62は、ピエゾアクチュエーター51に第1電圧値の電圧が印加されている間、ピエゾアクチュエーター51の両端にかかる電圧を検出する。また、算出部63は、検出部62の検出値から、ピエゾアクチュエーター51にかかる電圧の最大値V1と該最大値V1の後の最小値V2を抽出し、最大値V1と最小値V2との差を算出する。また、補正部64は、最大値V1と最小値V2との差が規定量以上となった場合、記憶部61に記憶されている第1電圧値の値を大きくする補正を行い、該補正された第1電圧値を記憶部61に記憶させる。そして、制御部65は、次回にピエゾアクチュエーター51に第1電圧値の電圧を印加する際、記憶部61に記憶されている補正された第1電圧値の電圧をピエゾアクチュエーター51に印加する。
また例えば、検出部62は、ピエゾアクチュエーター51に第2電圧値の電圧が印加されている間、ピエゾアクチュエーター51の両端にかかる電圧を検出する。また、算出部63は、検出部62の検出値から、ピエゾアクチュエーター51にかかる電圧の最大値V1と該最大値V1の後の最小値V2を抽出し、最大値V1と最小値V2との差を算出する。また、補正部64は、最大値V1と最小値V2との差が規定量以上となった場合、記憶部61に記憶されている第2電圧値の値を大きくする補正を行い、該補正された第2電圧値を記憶部61に記憶させる。そして、制御部65は、次回にピエゾアクチュエーター51に第2電圧値の電圧を印加する際、記憶部61に記憶されている補正された第2電圧値の電圧をピエゾアクチュエーター51に印加する。
このようにピエゾアクチュエーター51に印加する電圧値を補正することにより、ピエゾアクチュエーター51の伸び量を常に所望値近傍とすることができ、燃料供給機構9の動作をより安定させることができる。