JP2018112123A - 車両の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】トルクダウン時の変速ショックを抑制する車両の制御装置を提供する。【解決手段】コントローラは、アップシフト中に、自動変速機の入力回転数が変速後の変速段での同期回転数に向けて変化するイナーシャ相にてエンジンの出力トルクについての要求トルクを設定し、アップシフト開始時の要求トルクの低下量が、点火時期制御および吸入空気量制御によるトルクの低下量では実現できない場合に、点火時期制御および吸入空気量制御により実現可能なトルクの最低値と要求トルクの低下量との差と、燃料供給を停止することにより実現可能なトルクの最低値と要求トルクの低下量との差とに基づいてFC制御時間を算出し(S4)、算出されたFC制御時間だけ燃料供給を停止し(S5)、燃料供給の停止を終了した後に、その時点の運転状態に基づいて決められる目標変速時間が経過するまで吸入空気量制御および点火時期制御を実行する。【選択図】図2
Description
この発明は、エンジンの出力軸側に自動変速機を備えた車両の制御装置に関するものである。
車両の変速制御装置は、所定の変速段を設定して走行している状態でアクセルペダルが踏み込まれ、あるいは車速が増大するなど、車両の走行状態が変化すると、その走行状態に適したエンジン回転数となるように変速を実行する。例えば、アクセルペダルが踏み込まれるパワーオン時に、高車速側の変速段にアップシフトする場合、変速前の低速段で係合していた係合機構を解放させ、変速後の高速段を設定するための他の係合機構を係合させる。このように複数の係合機構が係合状態および解放状態に変更されることによって自動変速機での変速比が変化するので、変速比の変化に伴って自動変速機の入力回転数あるいはエンジン回転数が変化する。
変速比の低下によってエンジン回転数を低下させるアップシフトの場合、高車速側の変速段を設定する係合機構(係合側係合機構)が係合することによりエンジン回転数を変速後の同期回転数に引き下げることになる。その制御は、例えば係合側係合機構が滑りを伴って次第に係合、つまりトルク容量を増大することにより、その過程の摩擦によってエネルギを吸収し、エンジン回転数を引き下げる。その場合、回転数の変化が急激であれば変速ショックが生じるので、所定の時間を掛けてエンジン回転数を徐々に変化させる。このようにしてエンジン回転数を同期回転数に低下させるために吸収するエネルギ量は変速の際に自動変速機に入力されるトルク、例えばエンジン出力トルクに応じて大きくなり、変速の遅れや係合機構の耐久性の低下などを改善するためには、変速時の自動変速機の入力トルクを低下させることが好ましい。
変速時の自動変速機の入力トルクを低下させるためのトルクダウン制御を実行する装置が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の装置は、変速時に所定時間だけエンジンに対する燃料供給を停止することにより、エンジン出力トルクを低下させている。所定時間は、変速情報とタービン回転数とに基づいて検出される変速終了までの変速時間と予め設定された目標変速時間との差に応じて学習により修正される。
また、トルクダウン制御として、エンジンの点火時期を補正する点火時期補正手段または燃料供給をカットする燃料カット手段の少なくとも一方の手段と、エンジンに供給する空気量を補正する吸入空気量補正手段とでエンジンダウン制御を実行する装置が知られている(例えば、特許文献2)。特許文献2に記載の装置は、点火時期補正手段および燃料カット手段は、変速開始時、最初から動作された後、吸入空気量補正手段の動作が終了する前に動作を終了するように構成されている。
上記特許文献1に記載の所定時間は、エンジンの負荷が高く、かつ自動変速機の入力回転数と変速後の変速段での同期回転数との差が大きい場合に小さい値になりやすい。この場合には、エンジントルクダウン制御による実現可能なトルク低下量の総量が要求トルクのトルク低下量の総量よりも少なくなる。このため、エンジン出力トルクが充分に低下しないことがある。このようになると、変速終了時においてエンジン回転数が変速後の同期回転数に同期するときの回転数の変化量が大きく、それに伴うトルク変動が変速ショックを悪化させる可能性がある。
また、一般的に、燃料カット手段の動作は、吸入空気量補正手段の動作によりスロットルバルブが全閉になった時点で開始され、エンジン回転数が目標回転数に同期した時点で終了される。この場合、変速終了時にエンジン回転数を目標回転数に同期させるのに要する変速時間は、スロットルの開閉速度やエンジン回転数の変化速度に依存して決まってしまうため、精度良く制御することができない。したがって、変速時間のバラツキが大きくなると、変速完了のタイミングに合わせて実行される係合側摩擦係合機構の係合動作の精度が悪化し、これに伴って変速ショックが悪化するおそれがある。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、トルクダウン時にエンジンに対する燃料供給の停止時間を管理して変速ショックを抑制するように工夫した車両の制御装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、この発明は、エンジンの出力軸側に連結された自動変速機を備えた車両の制御装置において、アップシフト中における前記エンジンの出力トルクを制御するコントローラを備え、前記コントローラは、前記アップシフト中に、前記自動変速機の入力回転数が変速後の変速段での同期回転数に向けて変化するイナーシャ相にて前記エンジンの出力トルクについての要求トルクを設定し、アップシフト開始時の前記要求トルクの低下量が、点火時期制御および吸入空気量制御によるトルクの低下量では実現できない場合に、下記式(1)を用いて求められる所定時間だけ前記エンジンへの燃料供給を停止し、前記燃料供給の停止を終了した後に、その時点の運転状態に基づいて決められる目標変速時間が経過するまで、前記入力回転数が前記同期回転数に近づくように前記吸入空気量制御と前記点火時期制御との少なくとも一方を実行することを特徴とするものである。
T=[a/(a+b)]×c×α ・・・(1)
但し、Tは前記所定時間、aは前記点火時期制御と前記吸入空気量制御との少なくともいずれか一方により実現可能なトルクの最低値と前記要求トルクの低下量との差、bは前記燃料供給を停止することにより実現可能なトルクの最低値と前記要求トルクの低下量との差、cは前記目標変速時間、αは前記エンジンの負荷が高く、かつ前記入力回転数と前記同期回転数との差が大きいほど大きい値に設定される余裕度を示す。
T=[a/(a+b)]×c×α ・・・(1)
但し、Tは前記所定時間、aは前記点火時期制御と前記吸入空気量制御との少なくともいずれか一方により実現可能なトルクの最低値と前記要求トルクの低下量との差、bは前記燃料供給を停止することにより実現可能なトルクの最低値と前記要求トルクの低下量との差、cは前記目標変速時間、αは前記エンジンの負荷が高く、かつ前記入力回転数と前記同期回転数との差が大きいほど大きい値に設定される余裕度を示す。
エンジンの負荷と入力回転数と同期回転数との差がともに大きい場合には、変速期間中における実トルクとFC制御および点火・空気制御により実現可能なトルク値との差の第1の累積値(FC制御開始後の時間積分値)と、実トルクと要求トルクとの差の第2の累積値(FC制御開始後の時間積分値)との差が大きくなる。この発明によれば、エンジンの負荷と入力回転数と同期回転数との差がともに大きい場合に、余裕度αが大きい値に設定され、これに伴って目標変速時間における所定時間の割合がその後に実行される点火・空気制御を実行する時間よりも多くされる。吸入空気量制御および点火時期制御は、量的にも時間的にも制限がある。このため、吸入空気量制御または点火時期制御を実行させる時間を長くすることは好ましくない。制限の中で吸入空気量制御と点火時期制御との少なくとも一方を実行するためには、所定時間を長くとって、吸入空気量制御または点火時期制御を実行する前にエンジントルクを極力低下させる。これにより、第1の累積値と第2の累積値との差を小さくすることが可能となる。したがって、変速後の変速段を設定する係合機構の係合が完了する変速終了時における入力軸の回転数と出力側同期回転数との変化が小さくなって変速ショックを防止または抑制することが可能となる。
図1は、この発明に用いられる車両10の一例を模式的に示す。図1に示すように車両10は、クラッチ・ツウ・クラッチ変速が行われる自動変速機11を備えている。自動変速機11は、エンジン12の出力側に連結されている。自動変速機11の入力軸13には、エンジン12から出力される駆動力が伝達される。自動変速機11の出力軸14は、終減速機を構成している差動歯車機構15から左右の車軸16を介して駆動輪17,18に駆動力(駆動トルク)を伝達する。
エンジン12は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどを含む。なお、この発明の実施形態における車両としては、エンジンとモータとを組み合わせた駆動源を有するハイブリッドタイプの車両を含んでよい。なお、この発明の実施形態は、トルクコンバータを備えた車両の場合には、トルクコンバータを動力源に含ませてよいし、自動変速機11に含ませてもよい。また、駆動輪17,18は、車両10の前輪としてもよいし、前輪および後輪としてもよい。
自動変速機11は、入力軸13と出力軸14との間の動力伝達経路の一部を構成しており、変速要求に応じて変速前の低車速側の変速段を設定する係合機構(解放側係合機構)が解放状態に、かつ変速後の高車速側の変速段を設定する係合機構(係合側係合機構)が係合状態に変更されることより変速比を変化させる。複数の係合機構は、共に回転する部材同士を連結し、またその連結を解除する摩擦係合機構と、回転部材を所定の固定部に連結し、あるいはその連結を解除するブレーキ機構とのいずれであってもよい。したがって、自動変速機11は、クラッチ・ツウ・クラッチ変速を実行する有段式の変速機である。なお、設定可能な変速比の全体に亘るすべての変速がクラッチ・ツウ・クラッチ変速である必要はなく、少なくとも一つの変速がクラッチ・ツウ・クラッチ変速となる変速機であってよい。
複数の係合機構は、板式の摩擦係合機構やブレーキなどのアクチュエータによってトルク容量が制御される油圧式の摩擦係合機構である。アクチュエータは、油圧アクチュエータや電動アクチュエータであってよい。油圧式の摩擦係合機構は、油圧制御部19が有する複数のリニアソレノイドバルブの励磁および非励磁や電流制御により、係合状態と解放状態とに切り換えられる。つまり、油圧制御部19は、電子制御装置(T−ECU)20の制御に基づいて変速タイミングやトルク容量などを含む変速制御を実行する。
T−ECU20は、油圧制御部19を介して自動変速機11を制御する。T−ECU20は、マイクロコンピュータを主体として構成されており、エンジン12を制御する電子制御装置(E−ECU)21とデータ通信可能に接続されている。また、T−ECU20は、E−ECU21により統括的に制御される。T−ECU20は、E−ECU21を介して車速やアクセル開度などのデータが入力され、それらの入力されたデータおよび予め記憶しているデータを使用して演算を行い、演算結果を制御指令信号として油圧制御部19に出力するように構成されている。T−ECU20が予め記憶しているデータには、変速線図が含まれる。変速線図は、一例として、車速とアクセル開度とによって変速段の領域を定めた線図であって、アップシフト線とダウンシフト線とが定められ、車速とアクセル開度とによって決まる走行状態がアップシフト線を横切るように変化することによりアップシフトの判断が成立し、また走行状態がダウンシフト線を横切るように変化することによりダウンシフトの判断が成立するように構成されている。
E−ECU21には、アクセル開度センサ23、車速センサ24、エンジン回転数センサ25、吸入空気量センサ26およびノックセンサ27などが接続されている。したがってE−ECU21には、車両10の走行状態を示すデータとしてアクセルペダルの踏込み量、出力軸14に相当する車速(V)、入力軸13の回転数に相当するエンジン回転数(Ne)、エンジン12に供給される吸入空気量(Qa)、エンジン12におけるノッキングの有無などの情報が入力される。
エンジン12は、E−ECU21による制御によってエンジン出力トルクを適宜に制御できるように構成されている。例えばガソリンエンジンにあっては、E−ECU21には、フューエルカット制御部30、および点火・空気制御部31が接続されている。点火・空気制御部31は、吸入空気量制御および点火時期制御のうちの少なくとも一方の制御を実行する。なお、点火・空気制御部31は、E−ECU21が備えた構成としてもよい。
吸入空気量制御は、燃料と空気との混合気を燃焼させる複数の気筒に供給する吸入空気量(Qa)を変化させるスロットルバルブ32のスロットル開度を制御する。
スロットルバルブ32は、エンジン12の吸気管33の途中に設けられており、吸気管33から吸入される吸入空気量を、スロットル開度に応じた吸気量に制御する。スロットルバルブ32は、電気的に制御されるスロットルアクチュエータ34によって開閉させられる。またスロットル開度は、スロットルセンサ35により検出される。スロットルセンサ35は、スロットル開度を検出した信号をEーECU21に出力する。スロットルバルブ32は、例えば電子スロットルバルブと称される従来知られているバルブとしてよい。前述した吸入空気量センサ26は、吸気管33の内部を流れる吸入空気量を検出し、検出した吸入空気量に対応する信号をE−ECU21に出力する。
点火時期制御は、各気筒に設けられた点火プラグによって点火するタイミングを制御して、例えば点火時期を最適点火時期(MBT(MinimumsparkadvanceforBestTorque))よりも遅角させる点火遅角や、点火を禁止して燃料の供給のみを実行する点火カットを実行する。点火時期は、例えばノックセンサ27の出力に基づいて検出可能である。なお、ノックセンサ27の代わりに、気筒の内部に設けられた筒内圧センサから得られる情報に応じて点火時期を制御するタイプの場合には、その情報に基づいて点火時期を検出することが可能である。
フューエルカット制御部(FC制御部)30は、エンジン12に対する燃料供給を停止して点火プラグによる点火のみを実行するフューエルカット制御(FC制御)を実行する。FC制御部30は、車両10が有する走行慣性力によってエンジン12が強制的に回転させられている状態で、エンジントルクダウンを実施するためエンジン12に対する燃料の供給を停止し、また燃料の供給を再開することにより、エンジン12を自律回転に復帰させる。
また、エンジン12は、燃料供給が停止された状態で回転している場合に、吸入空気量(Qa)を増大させることにより動力損失、例えばポンピングロスが低下する特性を有する。このようなエンジン12には、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関が相当するが、ガソリンエンジンが典型的な例である。FC制御部30は、E−ECU21が備えた構成としてもよい。なお、図1には、燃料の供給のための機構が記載されていないが、この発明で対象とするエンジン12は、吸気にかかわらず燃料の供給およびその停止を行うことができるエンジンであればよい。E−ECU21は、この発明の実施形態におけるコントローラの一例である。
図2は、アップシフト時にトルクダウン制御を実行するときのE−ECU21の動作手順を示す。図2に示すようにステップS1にてアップシフトの変速を開始したか否かを判断する。ステップS1にて変速を開始した場合(Yes側の場合)には、ステップS2に移行し、そうでない場合(No側の場合)にはリターンされる。ステップS2では、エンジン出力トルクを増加させる要求が有るか否か、つまりアクセルペダルが踏み込まれた状態(パワーオン状態)に応答してエンジン出力トルクの増加が要求されているか否かが判断される。ステップS2にてエンジン出力トルクを増加させる要求が有る場合(Yes側の場合)には、ステップS3に移行し、そうでない場合(No側の場合)にはリターンされる。
つまり、ステップS1およびステップS2にて、その時点の車速(V)およびアクセルペダルの踏込み量の組み合わせで決まる運転状態が、変速線図におけるアップシフトの変速線を越えたか否かを判断している。ステップS3に移行されることで、アップシフトの条件が成立して、アップシフトの制御が実行される。
アップシフト時には、エンジン12がトルクを出力している状態で、低速側の変速段で油圧によって係合させられる解放側係合機構(解放クラッチ)を解放し、かつ低速側の変速段より変速比が小さい高速側の変速段で油圧によって係合させられる係合側係合機構(係合クラッチ)を係合させる。そして、解放クラッチを解放させた以降に、エンジントルクダウン制御を実行してイナーシャ相を開始させる。
ステップS3にて、エンジン要求トルクに基づいて、エンジントルクダウン制御としてFC制御が必要か否かを判定する。つまり、その時点のエンジン12の運転状態などに基づいて、点火時期制御および吸入空気量制御のうちの少なくと一方(両方を含む)を実施したときのトルクの最低値(推定値)を求める。求めたトルクの最低値と、要求トルクの低下量とを比較して、エンジントルクダウン制御として実行する点火時期制御および吸入空気量制御のうちの一方または両方の制御で、要求トルクを実現可能か否かを判断する。FC制御が必要と肯定的に判断された場合(Yes側の場合)には、ステップS4に移行し、そうでない場合(No側の場合)にはリターンされる。
ステップS4にて要求トルクと目標変速時間T1とに基づいてFC制御を実行する時間(FC制御時間)T2を算出する。例えばE−ECU21は、目標変速時間決定部36、要求トルク決定部37、記憶部38およびFC制御時間決定部39(図1参照)を備える。目標変速時間決定部36は、アップシフト時の運転応対や変速情報に基づいて目標変速時間T1を決定する。目標変速時間T1は、車両10の種類などに基づいて最短の変速時間として実験などによって予め決められている。
要求トルク決定部37は、少なくともアップシフト時の要求トルク(Td)を決定する。要求トルク(Td)は、現時点の車両10の走行状態を表す第1パラメータ、例えば変速段(ギヤ比)、アクセルペダルの踏込み量および車速(V)などと目標トルク(Td)との関係を表すマップを用いて決定されてよい。マップは、記憶部38に予め格納されている。例えばガソリンエンジンの場合には、点火時期、燃料供給量およびアクセル開度に対応するスロットル開度あるいは吸入空気量(Qa)などの第2パラメータと要求トルク(Td)との関係を表すマップを参照して要求トルク(Td)が決められる。
FC制御時間決定部39は、次式(1)を用いてFC制御時間T2を算出する。なお、FC制御時間T2は、この発明の実施形態における所定時間の一例である。
T2=[a/(a+b)]×c×余裕度α・・・(1)
T2=[a/(a+b)]×c×余裕度α・・・(1)
式(1)におけるaは点火時期制御と吸入空気量制御との少なくともいずれか一方により実現可能なトルクの最低値と要求トルクとの差を、bはFC制御により実現可能なトルクの最低値と要求トルクとの差を、cはその時点の運転状態に基づいて決められる目標変速時間T1を、αは余裕度をそれぞれ示す。なお、余裕度αは、詳しくは後述するが、エンジン12の負荷が高く、かつ変速前の変速段における同期回転数(入力回転数)と変速後の変速段における同期回転数との差が大きいほど大きい値に設定される。
ステップS5では、FC制御をFC制御時間T2だけ実施する。このとき、T−ECU21が備えたカウント部40(図1参照)によりFC制御を開始した時点から計時を開始する。
ステップS6にて、カウント部40の値がFC制御時間T2に相当する値に達したか否かを判断する。FC制御時間T2に達した場合には、ステップS7に移行し、そうでない場合にはステップS5に移行してFC制御を継続する。
ステップS7にてFC制御を終了してFC復帰を実行する。FC復帰は、エンジン12に対する燃料供給を開始するとともに、FC制御時間T2が経過した時刻から目標変速時間T1が終了するまでの残りの時間で、点火時期制御および吸入空気量制御の少なくとも一方を実行して、エンジン回転数Neを変速後の変速段の同期回転数に近づける。その後、カウント部40の値をクリアした後にリターンに移行して図2に示すルーチンを一旦終了する。
図3は、アップシフト時の動作の一例を示す。図3では、一定の走行負荷にてアクセルペダルを踏み込んで、例えば第2速から第3速への変速を実行している期間における各パラメータの変化を時系列に示している。各パラメータは、縦軸の上から順にエンジン回転数Ne、解放クラッチの油圧(油圧指令値)、係合クラッチの油圧(油圧指令値)およびエンジントルク(実トルク)となっている。なお、図3にて時刻t2から時刻t5がトルク相、時刻t5から時刻t6がイナーシャ相に相当する。
図3に示すように、まず時刻t1にてアップシフトの条件が成立し、変速が開始される。アップシフトは、ここで説明している制御の一例では、解放クラッチを解放し、かつ係合クラッチを係合させる変速である。
時刻t1にて変速が開始されると、まず解放クラッチのトルク(伝達トルク容量に設定される油圧)が算出され、かつドライバーが要求する駆動力を伝達可能なエンジン12の要求トルクが求められる。エンジントルクは、吸入空気量や燃料噴射量などに応じて推定されたトルクである。また、アップシフト前の変速段での変速比やその変速段を設定している解放クラッチの歯車機構中の位置などによって、解放クラッチトルクの入力トルクに対する比率が決まる。これにより、解放クラッチにかかるトルクは、エンジントルクや歯車機構の構成などに基づいて算出可能となる。また、ドライバーの要求トルクは、車速やアクセル開度ならびに予め用意されている駆動力マップに基づいて求められる。その要求トルクに応じた解放クラッチのトルク、すなわち要求トルクに基づいて、滑りを生じることなく伝達できる解放クラッチの最低油圧が算出される。
自動変速機11で変速を生じることなく車両10が定常的に走行している場合には、解放クラッチにはライン圧もしくはこれに近い油圧が供給されている(符号3A)。また解放クラッチの伝達トルク容量は、要求トルクに応じた伝達トルク容量よりも大きくなっている。そこで、解放クラッチの最低トルク(バランス圧)が算出されると、時刻t1にてアップシフトを実行するために、解放クラッチの油圧が、バランス圧に相当する油圧まで低下させられる(符号3B)。係合クラッチの油圧は、時刻t1にてファーストフィル制御により一時的に高い値に設定される(符号3C)。その後、係合クラッチの油圧は、トルクを持たない伝達トルク容量を設定する油圧に維持される(符号3D)。
ファーストフィル制御が完了した後の時刻t2にて、解放クラッチの油圧は、予め決められた一定勾配にしたがってバランス圧からスイープダウンさせられる(符号3E)。
時刻t3にて、エンジン回転数Neの吹き上がりが検出される。エンジン回転数Neの吹き上がりとは、エンジン回転数Neが想定もしくは規定している回転数より高い回転数になることであり、この実施形態では、エンジン回転数Neが変速前の低速側変速段での同期回転数より高回転数になることである。なお、同期回転数は、低速側変速段での変速比と車速(もしくはプロペラシャフトの回転数である出力軸回転数)とに基づいて求められる。したがって、吹き上がりの判定は、エンジン回転数Neが変速前の同期回転数に対して予め定められた回転数(例えば数十rpm)上回ったことによって行うことができる。
なお、解放側クラッチの油圧のスイープダウンは、解放クラッチが滑りを生じることなく要求駆動力を伝達できる最低油圧となっている状態からの油圧の低下であるから、スイープダウンの制御を開始した後に、解放クラッチに滑りが生じてエンジン回転数Neが吹き上がる。なお、エンジン回転数Neが吹き上がらないと判断されている間は、解放クラッチの油圧のスイープダウン制御が継続される。
エンジン回転数Neが吹き上がり検出すると、エンジントルクTeと係合クラッチのトルクが、自動変速機のギヤトレーンの構成に応じた運動方程式(以下に示す式(2)および式(3))から算出される。
TO=A・Tt−B・TC1+C・TC2 ・・・(2)
dωt/dt=D・Tt+E・TC1−F・TC2 ・・・(3)
dωt/dt=D・Tt+E・TC1−F・TC2 ・・・(3)
ここで、上記式(2)および式(3)において、TOは出力軸14のトルク(自動変速機11から出力されるトルク)であり、Ttは自動変速機11におけるトルクコンバータのタービントルクであって入力軸13のトルクに相当する。また、TC1は解放クラッチのトルク、TC2は係合クラッチのトルク、ωtはタービンの回転速度である。さらに、「A」,「B」,「C」,「D」,「E」,「F」のそれぞれは、実験などに基づいて求められた定数である。
エンジントルクTeおよび係合クラッチのトルクTC2を演算するのにあたって、出力軸14のトルクTOの値は、一定値に設定される。すなわち変化量ΔTOが「0」(ΔTO=0)となる値に設定される。その一定値は、アップシフトの判断が成立した時点のトルク値であってよい。また、タービン回転数ωtの変化率(dωt/dt)は、変速開始の前後で同じになるように設定し、具体的にはアップシフトの判断が成立した時点の同期回転数の変化率(Δ変速前同期回転数)と同じに設定する。そして、解放クラッチのトルクは、スイープダウンされている油圧に応じた値となる。したがって、上記運動方程式に基づいてエンジントルクTeおよび係合クラッチのトルクTC2を算出することができる。
また、エンジン回転数Neは、エンジン回転数Neを維持する制御により、アップシフト前の変速段(低速段)での同期回転数に所定の偏差(スリップ回転数)を加算した回転数に維持される。エンジントルクTeは、設計上定められたスリップ回転数と検出された実際の回転数との差を制御偏差としてフィードバック(FB)制御される。そのFB制御は、上記運動方程式から求めたエンジントルクTeを補正する制御であってよい。エンジン12の出力トルクは、吸入空気量および燃料噴射量によって変化し、またガソリンエンジンであれば、点火時期によっても変化するから、エンジントルクTeのFB制御は、スロットル開度あるいは点火時期を変化させることにより行ってもよい。なお、上記運動方程式から求められたエンジントルクTeをFB制御によって補正する代わりに、アップシフト制御開始時のエンジントルクTeや適宜に設定したエンジントルクTeの値を上記のFB制御によって補正してもよい。
エンジン回転数Neの吹き上がりを検出した後の時刻t4にて、係合クラッチのトルクが演算され、その演算結果に応じた油圧が係合クラッチに供給される。その結果、係合クラッチの油圧指令値が次第に増大する(符号3F)。
また、時刻t4にて解放クラッチが受け持っていたトルクの一部を係合クラッチが受け持つようになり、その後、受け持つトルクの大小の関係が次第に逆転する。このようなクラッチ・ツウ・クラッチ変速において、トルクを受け持つクラッチを変更する制御がクラッチの掛け替えと称される制御である。
時刻t5にてスイープダウンされる解放クラッチの油圧が解放状態の油圧に相当する所定値、例えば「0」Nm相当に達する(符号3G)。E−ECU21は、解放クラッチの油圧が所定値に達した時に、エンジントルクダウン制御を実行してイナーシャ相を開始させる。エンジントルクダウン制御は、目標変速時間T1の期間において、図2で説明したように要求トルクを実現するのにFC制御が必要な場合にはFC制御を実行し、その後に点火時期制御および吸入空気量制御の少なくとも一方を実行する。係合クラッチの油圧は、時刻t5にてエンジン回転数Neの低下に基づいてスイープアップさせられる。
時刻t6にて係合クラッチの油圧が係合圧相当の値(符号3H)に達することにより、前述した係合クラッチのスイープアップを終了する。この時点から、エンジン回転数Neをエンジン回転数Neよりも予め決めた所定回転数だけ高回転数に維持するようにエンジントルクが制御される(符号I)。係合クラッチの油圧は、エンジントルクに基づいて増大される(符号3J)。エンジン回転数Neは、第3速同期回転数(変速後の変速段の同期回転数)に向けて変化する(符号3K)。
時刻t7にて、エンジン回転数Neが第3速同期回転数に一致する(符号3L)。このとき、係合クラッチの油圧が、例えば油圧制御部19におけるライン圧に相当する圧力に向けて増大させられる(符号3M)。
イナーシャ相におけるエンジントルクTeは、係合クラッチの油圧と予め決められる目標変速時間T1とに基づいて決められる。エンジン回転数Neは、係合クラッチの油圧が増大される程、低下される。このため、エンジントルクTeを低下させる量は、係合クラッチの油圧が増大される程、少なくて済む。エンジン回転数Neを低下させる勾配は、変速後の変速段における同期回転数まで低下させる量と目標変速時間T1とに基づいて決められる。目標変速時間T1を短くしようとすると、エンジン回転数Neの勾配を急勾配にする必要がある。係合クラッチの油圧が一定であれば、エンジントルクを低下させる量は大きくする必要がある。つまり、目標変速時間T1を決める要素は、係合クラッチの油圧とエンジントルクTeとであるが、係合クラッチの油圧は、制御の応答速度が遅いことや、変速完了のタイミング(エンジン回転数が変速後の変速段における同期回転数に収束するタイミング)に合わせて係合クラッチの伝達トルクをライン圧相当のトルクにする必要がある。このため、係合クラッチの油圧の制御は自由度が低い。そこで、目標変速時間T1を、エンジントルクの低下率の大きさにより調節することが望ましい。
図4は、図3で説明したエンジントルクダウン時(時刻t5)にて実施されるFC制御の動作の一例を示す。図4では、縦軸がトルクを、横軸が時間をそれぞれ示す。図4に示すように要求トルクと目標変速時間T1とに基づいてエンジントルク(実トルク)41が決められる。同図では要求トルク42を二点鎖線で示す。目標変速時間T1を短時間で完了させるためには、実トルク41をより小さく(負方向に大きく)する必要がある。同図に示すトルクTQ1は、点火時期制御と吸入空気量制御とを併用して実トルク41を低下させられるトルクの最低値(限界値)を示す。トルクTQ2は、FC制御により実トルク41を低下させられるトルクの最低値(限界値)を示す。トルクTQ3は、要求トルク42の最低値である。なお、符号43(点線)は吸入空気量制御によるトルクの低下量を、符号44は点火時期制御によるトルクの低下量をそれぞれ示す。つまり、図4に示す例では、吸入空気量制御および点火時期制御との両方を時間T3にて実行している。なお、吸入空気量制御は、FC制御時間T2が経過する時刻t8に対して、タルクダウンの遅延分を考慮して前出しに実行されている。要求トルク42の最低値TQ3が点火時期制御と吸入空気量制御とを併用したときに得られるトルクの最低値TQ1より小さい場合には、FC制御を実行する必要がある。
トルクTQ2は、FC制御により低下されるトルクの最低値であり、点火時期制御や吸入空気量制御とは異なり、トルクの制御幅がなく、よってトルクTQ1とトルクTQ2との間の任意のトルクに精度良く設定することはできない。なお、時間T3は、点火時期制御および吸入空気量制御の少なくとも一方を実行する時間である。
余裕度αを大きくすると、FC制御時間T2が長くなる。余裕度αは、FC制御時間T2を長くすることで、FC復帰後の目標エンジン回転数を実現するのに必要なトルクが小さくなるように、トルク精度を考慮した値となっている。つまり、余裕度αは、FC制御が完了した時(FC復帰するの前)に、エンジントルクを極力低下させて点火時期制御や入空気量制御によるトルクダウンに余裕を確保させる目的で、大きい値が設定される。
吸入空気量制御は、制御量の応答性が悪く、また点火時期制御は、点火時期を遅角すると排気温度が上昇して排気浄化触媒に影響を与える。つまり吸入空気量制御や点火時期制御は、量的にも時間的にも制限がある。このため、吸入空気量制御または点火時期制御を実行させる時間T3の目標変速時間T1における割合を多くすることは好ましくない。制約の中で吸入空気量制御と点火時期制御との少なくとも一方を実行するためには、FC制御時間T2の目標変速時間T1における割合を多くとって、吸入空気量制御または点火時期制御を実行する前にエンジントルクを極力低下させておくことが望ましい。
同図に示すaは、点火時期制御および吸入空気量制御の両方により実現可能なトルクの最低値TQ1と要求トルク42の低下量TQ3との差(絶対値)、bは燃料供給を停止することにより実現可能なトルクの最低値TQ2と要求トルク42の低下量TQ3との差(絶対値)を示す。この実施形態では、aとbと目標変速時間T1とを前述した式(1)に代入してFC制御時間T2を算出し、時刻t5からFC制御時間T2が経過する時刻t8までFC制御を実行する。
このように、エンジントルクダウン時に要求トルク42と目標変速時間T1とに基づいてFC制御時間T2を演算し、演算されたFC制御時間T2に基づいてFC制御を実施することで、FC制御と、点火時期制御または吸入空気量制御との切り替え回数の抑制、および目標変速時間T1の実現精度の向上を両立することができる。
図5は、FC制御時間に付与する余裕度αを求める一例を示す。図5に示す縦軸は変速前のエンジントルク(負荷)を、横軸は、変速前の変速段における同期回転数と変速後の変速段における同期回転数との差回転を示す。この例では、変速前のエンジントルクと前述した差回転との関係に基づいて余裕度αを決定する。余裕度αは、トルク精度として0(1.0)の値を基準にして正方向に増大させた値、例えば0(1.0)〜20%(1.2)までの値が設定される。
FC制御時間T2は、変速前のエンジントルクが大きく、かつ差回転が大きいほど要求トルクが小さくなるため長くなる。一方、FC制御を開始する時のエンジントルクと要求トルクとの差は小さくなる。つまり、単位時間当たりの実トルクと要求トルクとの差が小さくなる。小さくなる場合は、大きくなる場合と比べて、同じ余裕度αを確保しようとすると、FC制御時間T2が長くなる。余裕度αは、差回転やエンジン12の負荷が大きくなるにつれて、大きい値となる関係に決められている。この発明によれば、エンジンの負荷と入力回転数と同期回転数との差がともに大きい場合に、余裕度αが大きい値に設定される。
図6は、要求トルク42が図4の例に対して小さい場合のトルクダウン制御の動作の一例を示す。なお、図4で説明したように符号41は実トルク、符号42は、要求トルク、符号43は吸入空気量制御によるトルクダウン量、符号44は点火時期制御によるトルクダウン量をそれぞれ示す。図6に示すトルクQ1は、図4で説明したように点火時期制御と吸入空気量制御とを併用して実現可能なトルクの最低値(限界値)、TQ2は、FC制御により実現可能なトルクの最低値をそれぞれ示す。
目標変速時間T1を実現するのに必要な要求トルク42は、図4の例よりも小さい。図6の例では、FC制御時間T2’が図4で説明した例のFC制御時間T2よりも長くされ、点火時期制御および吸入空気量制御を実施する時間T3’は、図4で説明した例の点火時期制御および吸入空気量制御を実施する時間T3よりも短くされる。この例では、FC制御時間T2’の開始が時刻t5、終了が時刻t9となっている。要求トルクの最低値TQ3がFC制御により実現可能なトルクの最低値TQ2に近い値となる。このため、FC制御時間T2’の目標変速時間T1における割合が、点火時期制御および吸入空気量制御を実行する時間T3’の割合よりも多くなっている。
この実施形態では、FC制御時間T2’を前述した式(1)を用いて算出するにあたって、FC制御時間T2’に余裕度αを持たせるため、目標変速時間T1における実トルク41のトルクTQ0と、FC制御ならびに点火時期制御および吸入空気量制御により実現可能なトルクTQ2との差のFC制御開始時の時間積分値(第1の累積値)と、実トルク41のトルクTQ0と要求トルク42のトルクTQ3’との差のFC制御開始時の時間積分値(第2の累積値)との差が小さくなる。
ところで、FC制御を終了させる時刻t9では、FC制御時間T2に余裕度αを持たせるため、第1の累積値と第2の累積値とが必ずしも一致しない。このため、時刻t9から目標変速時間T1が経過する時刻t6までの残りの時間T3’にて点火時期制御および吸入空気量制御を実行することにより、第1の累積値と第2の累積値とが一致するように、つまり入力軸13の回転数が変速後の変速段での同期回転数に近づくようにトルクダウン制御を補正する。
図7は、目標変速時間T1が図4の例よりも短い場合のトルクダウン制御の動作の一例を示す。図7では、図6で説明したと同じものには同符号を付与してここでは詳しい説明を省略する。目標変速時間T1’は、図6で説明した目標変速時間T1よりも短い時間に設定されている。
図7にてトルクTQ2は、FC制御を併用することにより実現可能な実トルク41の最低値となっている。目標変速時間T1’は、図6で説明した目標変速時間T1よりも短く設定されている。この目標変速時間T1’でエンジントルクダウンを実現するのに必要な要求トルク42は、FC制御時間T2''が図6で説明したFC制御時間T2’よりも短く算出される。この例では、FC制御時間T2''の開始が時刻t5で、終了が時刻t10となっている。要求トルク42の最低値TQ3は、FC制御による実現可能なトルクの最低値TQ2に近い値となる。このため、FC制御時間T2''の目標変速時間T1における割合が点火時期制御および吸入空気量制御を実行する時間T3’の目標変速時間T1における割合よりも多くなっている。
この実施形態では、FC制御時間T2''に余裕度αを持たせるため、FC制御時間T2が終了する時刻t10にて前述した第1の累積値と第2の累積値とが必ずしも一致しない。このため、時刻t10から目標変速時間T1’が経過する時刻t6までの残りの時間T3''にて点火時域制御および吸入空気量制御を実行して、第1の累積値と第2の累積値とが一致するように、つまり入力軸13の回転数が変速後の変速段での同期回転数に近づくようにトルクダウン制御を補正する。
この実施形態では、図6で説明したように要求トルクが小さい場合、または図7で説明したように目標変速時間T1が短い場合に、FC制御時間T2’または時間T2''が、点火時期制御および吸入空気量制御を実行する時間T3’または時間T3''よりも長めに設定される。このため、FC復帰後に第1累積値と第2累積値とを一致させ易くなる。
図8は、FC制御を用いたトルクダウン制御の動作の一例を示す。図8では、図3で説明した時刻と同じまたは同様な時刻に同じ符号を付与している。
図8に示すように、従来、アップシフト時におけるエンジン12のトルクダウン制御にてFC制御を実施する場合には、エンジン回転数Neが所定の回転数に達した時点(時刻t11)でFC復帰を実施している(符号8A)。FC復帰のときには、係合クラッチが係合したときに変速ショックが発生しないように、エンジン回転数Neを所定の回転数に適合させている(符号8B)。しかしながら、エンジン回転数Neが適切でなかったり、外部要因によりエンジン回転数Neにバラツキが生じて結果的にエンジン回転数Neが適切でない回転数でFC復帰が実行された場合には、係合クラッチの係合タイミングが目標値と乖離してしまい、係合ショックが発生してしまう(符号8C)。そのため、従来では、常に適切なタイミングでFC復帰を実行させるために、様々な要因や様々な条件を考慮してエンジン回転数Neを適切な回転数に適合させなければならない。このため、エンジン回転数Neを適合させるための制御が複雑化する問題があった。
この実施形態では、エンジン回転数Neを所定の回転数に適合させるための制御を実施することなく、要求トルクおよび目標変速時間T1に基づいて、余裕度αを持たせたFC制御時間T2、つまりFC復帰を適切なタイミングで実行させることが可能な時間(時刻t12)を算出することができる。このため、従来と比較してエンジン回転数Neを適合させるための制御を複雑化することなく、高いロバスト性を確保した変速を実現することができる。
以上、上記で説明した各実施形態はこの発明の例示であり、上述した各実施形態に限定されないのであって、この発明の目的を逸脱しない範囲で適宜に変更することができる。例えば上記実施形態では、FC制御としては、エンジン12の全部の気筒を休止させる制御に限らず、一部の気筒を休止させる制御としてもよい。
また、上記実施形態では、パワーオン・アップシフト時に適用しているが、この発明ではこれに限らず、例えば緩やかな下り坂での変速を考慮すると、パワーオフ・アップシフト時にも適用することができる。
さらに、本発明では、余裕度αを用いて所定時間Tを算出しているが、余裕度αを省略して所定時間Tを算出してもよい。また上記実施例では、aを、点火時期制御および吸入空気量制御の両方により実現可能なトルクの最低値TQ1と要求トルク42の最低値TQ3との差としているが、点火時期制御と吸入空気量制御との少なくともいずれか一方により実現可能なトルクの最低値TQ1と要求トルク42の最低値TQ3との差としてもよい。
10…車両、 11…自動変速機、 12…エンジン、 19…油圧制御部、 21…E−ECU、 30…フューエルカット制御、 31…点火・空気制御装置、 36…目標変速時間決定部、 37…要求トルク決定部、 39…FC制御時間決定部。
Claims (1)
- エンジンの出力軸側に連結された自動変速機を備えた車両の制御装置において、
アップシフト中における前記エンジンの出力トルクを制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、前記アップシフト中に、前記自動変速機の入力回転数が変速後の変速段での同期回転数に向けて変化するイナーシャ相にて前記エンジンの出力トルクについての要求トルクを設定し、
アップシフト開始時の前記要求トルクの低下量が、点火時期制御および吸入空気量制御によるトルクの低下量では実現できない場合に、下記式(1)を用いて求められる所定時間だけ前記エンジンへの燃料供給を停止し、
前記燃料供給の停止を終了した後に、その時点の運転状態に基づいて決められる目標変速時間が経過するまで、前記入力回転数が前記同期回転数に近づくように前記吸入空気量制御と前記点火時期制御との少なくとも一方を実行することを特徴とする車両の制御装置。
T=[a/(a+b)]×c×α ・・・(1)
但し、Tは前記所定時間、aは前記点火時期制御と前記吸入空気量制御との少なくとも一方により実現可能なトルクの最低値と前記要求トルクの低下量との差、bは前記燃料供給を停止することにより実現可能なトルクの最低値と前記要求トルクの低下量との差、cは前記目標変速時間、αは前記エンジンの負荷が高く、かつ前記入力回転数と前記同期回転数との差が大きいほど大きい値に設定される余裕度を示す。
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CN111946479A (zh) * | 2020-07-31 | 2020-11-17 | 东风汽车集团有限公司 | 汽油机降扭与升扭控制方法 |
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JP5333901B2 (ja) * | 2008-09-30 | 2013-11-06 | ティーエムエー・コーポレイション・プロプライエタリ・リミテッド | 建物の防蟻構造及び建物の基礎防蟻工法 |
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