JP2018109388A - 回転式圧縮機 - Google Patents

回転式圧縮機 Download PDF

Info

Publication number
JP2018109388A
JP2018109388A JP2017000632A JP2017000632A JP2018109388A JP 2018109388 A JP2018109388 A JP 2018109388A JP 2017000632 A JP2017000632 A JP 2017000632A JP 2017000632 A JP2017000632 A JP 2017000632A JP 2018109388 A JP2018109388 A JP 2018109388A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
blade
bush
rotation angle
high pressure
groove
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2017000632A
Other languages
English (en)
Inventor
公佑 西村
Kosuke Nishimura
公佑 西村
熊倉 英二
Eiji Kumakura
英二 熊倉
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Daikin Industries Ltd
Original Assignee
Daikin Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Daikin Industries Ltd filed Critical Daikin Industries Ltd
Priority to JP2017000632A priority Critical patent/JP2018109388A/ja
Publication of JP2018109388A publication Critical patent/JP2018109388A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Applications Or Details Of Rotary Compressors (AREA)

Abstract

【課題】高圧側のブッシュがブッシュ溝の内縁に高速で衝突することを抑制できるとともに、高圧側のブッシュに過剰な荷重が作用することを抑制できる回転式圧縮機を提供する。
【解決手段】ブレード(70)は、ブレード(70)の先端側に形成される先端側ブレード部(76)と、先端側ブレード部(76)からピストン(60)側に向かって延びるとともに先端側ブレード部(76)の幅W2よりも大きい幅W1を有する基端側ブレード部(75)とを含む。ブレード(70)は、ピストン(60)の一回転中の回転角のうち圧縮機構(50)の吐出行程の少なくとも一部の期間に対応する回転角を含む第1の回転角範囲において、基端側ブレード部(75)がブレード溝(67)に内嵌し、残りの第2の回転角範囲おいて、基端側ブレード部(75)がブレード溝(67)から外れるとともに先端側ブレード部(76)が上記ブッシュ溝(63)に内嵌するように構成される。
【選択図】図3

Description

本発明は、回転式圧縮機に関する。
従来より、流体を圧縮する圧縮機が知られている。この圧縮機として、シリンダ室内でピストンが偏心回転する回転式圧縮機がある。
特許文献1に記載の圧縮機は、揺動ピストン型の圧縮機構を有している。圧縮機構のシリンダには、ピストンが偏心回転するシリンダ室と、一対のブッシュが揺動可能に嵌合するブッシュ溝とが形成される。一対のブッシュの間には、ブレードが進退可能に保持されるブレード溝が形成される。ブレードはピストンから径方向外方に延び、シリンダ室を低圧室と高圧室とに区画する。
電動機によって駆動軸が回転駆動されると、シリンダ室でピストンが偏心回転する。この際、ピストンと連結するブレードは、ブレード溝に沿って進退するととともに、一対のブッシュとともに揺動する。シリンダ室では、まず、容積が徐々に大きくなる低圧室(吸入室)へ流体が吸い込まれた後、この低圧室が吸入ポートと遮断される。その後、この部屋(高圧室)の容積が徐々に小さくなると、高圧室の内部で流体が圧縮される。高圧室の内圧が所定の圧力以上になると、高圧室に連通する吐出ポートの吐出弁が開放され、圧縮機構から流体が吐出される。
この圧縮機構では、一対のブッシュを挟んでシリンダ室と反対側に背圧室が形成される。背圧室には、圧縮機構の吐出流体が満たされるとともに、ブッシュ溝の内面とブッシュとの摺接部や、ブッシュとブレードとの摺接部を潤滑する潤滑油が供給される。
特開平10−54383号公報
一対のブッシュのうち高圧室側のブッシュ(以下、高圧側ブッシュともいう)が、ブッシュを挟んでシリンダ室と反対側の背圧室へと移動し、その後、逆方向に移動してブッシュ溝の内縁に高速で衝突してしまうことがある。この点について詳細に説明する。
上述したように、シリンダ室では、ピストンの回転に伴い高圧室の容積が徐々に小さくなり、これに伴い高圧室の内圧が上昇する。高圧室の内圧が、圧縮機構の外部の圧力よりも高くなると、吐出弁が開放され、高圧室の流体が圧縮機構の外部へ吐出される。このような吐出行程では、高圧室の流体が過剰に圧縮されることで(いわゆる過圧縮となることで)、高圧室の圧力が、上記背圧室よりも高くなることがある。
吐出行程において、高圧室の圧力が背圧室よりも高くなると、高圧室の流体の圧力を受けたブッシュが、背圧室側へと移動する。その後、吐出行程が終了し、高圧室の圧力が背圧室の圧力よりも低くなると、背圧室側へ押し付けられていたブッシュが、逆向き(高圧室側)へと急峻に移動する。この結果、ブッシュは、ブッシュ溝の内縁のうち高圧室寄りの部分に激しく衝突する。
このようなブッシュの衝突は、ピストンが一回転する毎に行われる。従って、圧縮機の運転時には、ブッシュがブッシュ溝の内縁に高頻度で衝突する、いわゆるチャタリングが生じてしまう。この結果、このチャタリングに起因して、騒音が発生したり、ブッシュの摩耗が促進されて圧縮機構の信頼性が損なわれたりする、という問題が生じる。
このような課題を解決するために、本願発明者らは、ブレードの幅(ブレードのうち一対のブッシュが対向する方向に対応する寸法)を大きくすることを検討した。即ち、ブレードの幅を大きくすれば、ブレードないし油膜によって高圧側ブッシュがブッシュ溝の内面に押し付けられるため、ブッシュ溝の内面と高圧側ブッシュの間の隙間や、ブレードと高圧側ブレードとの間の隙間を低減できる。このため、吐出行程において過圧縮が生じたとしても、高圧側ブッシュが背圧室側へ移動しにくくなるため、上述のようなチャタリングの発生を抑制できる。
一方、このように単純にブレードの幅を拡大して高圧側ブッシュの周囲の隙間を小さくすると、ブレードから高圧側ブッシュの内面に作用する荷重や、高圧側ブッシュの円弧部に生じる荷重が常に大きくなってしまう。この結果、このような荷重の増大に起因して、例えば摺動部の信頼性が低下したり、動力の損失が増大したりする問題が生じてしまう。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、高圧側のブッシュがブッシュ溝の内縁に高速で衝突することを抑制できるとともに、高圧側のブッシュに過剰な荷重が作用することを抑制できる回転式圧縮機を提供することである。
第1の発明は、電動機(20)と、該電動機(20)に連結する駆動軸(30)と、該駆動軸(30)に駆動される圧縮機構(50)とを備え、該圧縮機構(50)は、シリンダ室(55)及び一対のブッシュ溝(63)が形成されるシリンダ(51)と、該シリンダ室(55)に収容されるピストン(60)と、上記各ブッシュ溝(63)に揺動可能に内嵌するブッシュ(61)と、一対の該ブッシュ(61)の間に形成されるブレード溝(67)に進退可能に保持されるブレード(70)とを備え、上記一対のブッシュ(61,62)における上記シリンダ室(55)と反対側の部位に上記圧縮機構(50)の吐出圧力に相当する圧力が作用するように構成され、上記ブレード(70)は、該ブレード(70)の先端側に形成される先端側ブレード部(76)と、該先端側ブレード部(76)から上記ピストン(60)側に向かって延びるとともに上記先端側ブレード部(76)の幅W2よりも大きい幅W1を有する基端側ブレード部(75)とを含み、上記ピストン(60)の一回転中の回転角のうち、上記圧縮機構(50)の吐出行程の少なくとも一部の期間に対応する回転角を含む第1の回転角範囲において、上記基端側ブレード部(75)が上記ブレード溝(67)に内嵌し、残りの第2の回転角範囲おいて、上記基端側ブレード部(75)が上記ブレード溝(67)から外れるとともに上記先端側ブレード部(76)が上記ブッシュ溝(63)に内嵌するように構成されることを特徴とする。
第1の発明のブレード(70)は、先端側ブレード部(76)と基端側ブレード部(75)とを有し、基端側ブレード部(75)の幅W1が、先端側ブレード部(76)の幅W2よりも大きくなっている。ピストン(60)の回転角が、吐出行程の少なくとも一部の期間を含む第1の回転角範囲であるときには、幅広の基端側ブレード部(75)がブレード溝(67)に内嵌する。このため、高圧側のブッシュ(62)は、基端側ブレード部(75)ないし油膜によってブッシュ溝(63)の内周面側へ押し付けられ、高圧側ブッシュ(62)の周囲の隙間が小さくなる。従って、ピストン(60)の回転角が第1の回転角範囲であるときには、高圧側のブッシュ(62)が、ブレード(70)の進退方向において変位しにくくなる。この結果、吐出行程において過圧縮が生じた場合にも、ピストン(60)が背圧室(64)側へ移動してしまうことを抑制でき、ひいてはいわゆるチャタリングの発生を防止できる。
吐出行程では、シリンダ室(55)のうち高圧室の内圧が高くなるため、ブレード(70)は、シリンダ室(55)の高圧室から低圧室への方向(高圧側のブッシュから低圧室側のブッシュへの方向)へ押し付けられる。このため、第1の回転角範囲において、ブレード溝(67)に幅広の基端側ブレード部(75)を内嵌させたとしても、ブレード(70)から高圧側のブッシュ(62)へ作用する荷重が過剰に大きくなることはない。
一方、ピストン(60)の回転角が第2の回転角範囲であるときには、幅広の基端側ブレード部(75)がブッシュ溝(63)から外れ、幅狭の先端側ブレード部(76)がブッシュ溝(63)に内嵌する。このため、高圧側のブッシュ(62)の隙間が比較的広くなるため、ブッシュ(61)から高圧側のブッシュ(62)に作用する荷重が小さくなる。
以上のようにして、本発明では、ピストン(60)の1回転中(即ち、第1の回転角範囲及び第2の回転角範囲に亘る全範囲)において、ブレード(70)から高圧側のブッシュ(62)へ作用する荷重が過剰に大きくなることがない。
第2の発明は、上記先端側ブレード部(76)には、該先端側ブレード部(76)の幅を小さくするための切欠部(77,81,82)が形成されることを特徴とする。
第2の発明では、先端側ブレード部(76)に切欠部(77,81,82)を形成することで、比較的簡易な加工により、基端側ブレード部(75)の幅W1を先端側ブレード部(76)の幅W2よりも大きくできる。
第3の発明は、第1の発明において、上記先端側ブレード部(76)には、該先端側ブレード部(76)の幅を小さくするための切欠部(77,81,82)が形成される。
第3の発明では、先端側ブレード部(76)に切欠部としての段差面(77)を形成することで、比較的容易な加工により、基端側ブレード部(75)の幅W1を先端側ブレード部(76)の幅W2よりも大きくできる。
第4の発明は、第2又は第3の発明において、上記切欠部(77,81,82)は、上記先端側ブレード部(76)のうち吐出側の上記ブッシュ(62)に対向する側面(72)に形成されることを特徴とする。
第4の発明では、第1の回転角範囲において、切欠部(77,81,82)を有さない基端側ブレード部(75)がブレード溝(67)に内嵌する。第2の回転角範囲において、基端側ブレード部(75)がブレード溝(67)から外れるとともに、先端側ブレード部(76)の切欠部(77,81,82)が高圧側のブッシュ(62)に対向する。これにより、高圧側のブッシュ(62)を基端側ブレード部(75)ないし油膜により押し付ける状態(第1の回転角範囲)と、該高圧側のブッシュ(62)を基端側ブレード部(75)で押し付けない状態(第2の回転角範囲)とを切り換えることができる。
仮に切り欠き部を先端側ブレード部のうち低圧側のブッシュに対向する側面に形成すると、切り欠き部の形状や寸法によっては、切り欠き部の近傍部分と低圧側のブッシュとが干渉してしまうおそれがある。上述したように、ブレードは、シリンダ室高圧室と低圧室との差圧により、低圧側のブッシュへと押し付けられる傾向にあるからである。これに対し、本発明では、切り欠き部(77,81,82)を先端側ブレード部(76)における高圧側ブッシュ(62)に対向する側面(72)に形成しているため、このような干渉を回避できる。
第5の発明は、第1乃至第4のいずれか1つの発明において、上記第1の回転角範囲は、270°から360°までの範囲のうちの少なくとも一部の回転角を含んでいることを特徴とする。
第5の発明では、ピストン(60)が270°から360°までの範囲の少なくとも一部の回転角にあるときに、基端側ブレード部(75)がブレード溝(67)に内嵌する。図6に示すように、発明者らは、ピストン(60)の回転角が270°から360°までの範囲にあるときに、高圧側のブッシュ(62)の背圧室(64)側への変位量が大きくなることを発見した。また、発明者らは、この範囲において、高圧側のブッシュ(62)の周囲の隙間を低減することで、該変位量を低減できることを発見した。従って、これらの回転角において、基端側ブレード部(75)をブレード溝(67)に内嵌させることで、いわゆるチャタリングを効果的に防止できる。
第6の発明は、第1乃至第5のいずれか1つの発明において、上記第2の回転角範囲は、90°から150°までの範囲のうちの少なくとも一部の回転角を含んでいることを特徴とする。
第6の発明では、ピストン(60)が90°から150°までの範囲の少なくとも一部の回転角にあるときに、基端側ブレード部(75)がブレード溝(67)から外れる。図7に示すように、発明者らは、ピストン(60)の回転角が90°から150°までの範囲にあるときに、高圧側ブッシュ(62)の円弧部に生じる荷重が極めて大きくなることを発見した。また、発明者らは、この範囲において、高圧側のブッシュ(62)の周囲の隙間を増大させることで、この荷重を低減できることを発見した。従って、これらの回転角において、基端側ブレード(75)をブレード溝(67)から外すことで、高圧側ブッシュ(62)に作用する荷重を効果的に低減できる。
本発明によれば、特に高圧側のブッシュ(62)の変位量が大きくなり易い第1回転角範囲において、幅広の基端側ブレード部(75)をブレード溝(67)に内嵌させている。これにより、高圧側のブッシュ(62)の変位量を効果的に抑制でき、チャタリングの発生を抑制できる。
また、特に高圧側のブッシュ(62)に生じる荷重が大きくなり易い第2回転角範囲において、幅広の基端側ブレード部(75)をブレード溝(67)から外している。これにより、この範囲においては、高圧側ブッシュ(62)の周囲の隙間を拡大でき、ひいては高圧側ブッシュ(62)に生じる荷重を低減できる。
図1は、実施形態に係る圧縮機の縦断面図である。 図2は、シリンダの横断面図である。 図3は、一対のブッシュの近傍を拡大した横断面図である。 図4は、シリンダの横断面図であり、図4(A)は回転角が0°(360°)の状態を、図4(B)は回転角が45°の状態を、図4(C)は回転角が90°の状態をそれぞれ表している。 図5は、シリンダの横断面図であり、図5(A)は回転角が180°の状態を、図5(B)は回転角が270°の状態を、図4(C)は回転角が315°の状態をそれぞれ表している。 図6は、比較例1及び比較例2において、高圧側ブッシュの変位量と回転角の関係を表したグラフである。 図7は、比較例1及び比較例2において、ブレードから高圧側ブッシュに作用する荷重と回転角の関係を表したグラフである。 図8は、変形例1に係るブレードの要部を拡大した横断面図である。 図9は、変形例2に係るブレードの要部を拡大した横断面図である。 図10は、変形例3に係るブレードの要部を拡大した横断面図である。 図11は、その他の実施形態に係る圧縮機構の横断面図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
〈圧縮機の全体構成〉
図1は、本実施形態に係る圧縮機(10)の縦断面図である。本実施形態に係る圧縮機(10)は、全密閉式の回転式圧縮機である。圧縮機(10)は、冷媒が充填された冷媒回路(図示省略)に接続されている。冷媒回路では、蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。つまり、冷媒回路では、圧縮機(10)で圧縮された冷媒が、凝縮器で凝縮し、膨張弁で減圧された後、蒸発器で蒸発し、に吸入される。
圧縮機(10)は、ケーシング(11)と、ケーシング(11)の内部に収容される電動機(20)と、電動機(20)と連結する駆動軸(30)と、該駆動軸(30)によって駆動される圧縮機構(50)とを備えている。
〈ケーシング〉
ケーシング(11)は、縦長の円筒状の密閉容器で構成される。ケーシング(11)は、胴部(12)、下部鏡板(13)、及び上部鏡板(14)を有している。胴部(12)は、上下に延びる円筒状に形成され、軸方向の両端が開口している。下部鏡板(13)は、胴部(12)の下端に固定されている。上部鏡板(14)は、胴部(12)の上端に固定されている。
胴部(12)の下部には、吸入管(15)が貫通して固定されている。上部鏡板(14)には、吐出管(16)が貫通して固定されている。上部鏡板(14)には、電動機(20)へ電力を供給するためのターミナル(17)が取り付けられている。
ケーシング(11)の底部には、油貯留部(18)が形成されている。油貯留部(18)は、下部鏡板(13)及び胴部(12)の下部の内壁によって構成される。油貯留部(18)には、圧縮機構(50)や駆動軸(30)の摺動部を潤滑するための潤滑油(冷凍機油)が貯留される。
ケーシング(11)の内部は、圧縮機構(50)で圧縮された高圧冷媒で満たされる。つまり、は、ケーシング(11)の内部空間(S)の内圧が高圧冷媒の圧力と実質的に等しい、いわゆる高圧ドーム型に構成されている。
〈電動機〉
電動機(20)は、圧縮機構(50)の上方に配置されている。電動機(20)は、固定子(21)と回転子(22)とを有している。固定子(21)は、ケーシング(11)の胴部(12)の内周面に固定されている。回転子(22)は、固定子(21)の内部を上下方向に貫通している。回転子(22)の軸心内部には、駆動軸(30)が固定される。電動機(20)が通電されると、回転子(22)とともに駆動軸(30)が回転駆動される。
〈駆動軸〉
駆動軸(30)は、ケーシング(11)の胴部(12)の軸心上に位置している。駆動軸(30)は、圧縮機構(50)の各軸受(41,42,43)に回転可能に支持されている。
駆動軸(30)は、上側から下側に向かって順に、主軸(31)、クランク軸(32)、及び副軸(33)を有している。主軸(31)の上部は、電動機(20)の回転子(22)に固定される。クランク軸(32)は、主軸(31)の下端に連結している。副軸(33)は、クランク軸(32)の下端に連結している。主軸(31)の軸心と副軸(33)の軸心は一致している。クランク軸(32)の軸心は、主軸(31)及び副軸(33)の軸心に対して所定量だけ偏心している。クランク軸(32)の外径は、主軸(31)及び副軸(33)の外径よりも大きい。
主軸(31)の上部は、電動機(20)の回転子(22)に固定される。主軸(31)の下部は、フロントヘッド(52)の主軸側貫通口(52c)の内部に位置している。主軸(31)の軸方向の中間部は、上部主軸受(41)に回転可能に支持されている。主軸(31)の下部は、下部主軸受(42)に回転可能に支持されている。副軸(33)の上部は、リアヘッド(53)の副軸側貫通口(53a)の内部に位置している。副軸(33)の軸方向の中間部は、副軸受(43)に回転可能に支持されている。
駆動軸(30)は、クランク軸(32)や各軸受(41,42,43)の摺動部に周囲に油を供給するための油供給機構(34)を備えている。油供給機構(34)は、副軸(33)の下端に取り付けられる油ポンプ(35)と、駆動軸(30)の内部を軸心に沿って延びる主流路(図示省略)と、該主流路から各摺動部へ分岐する分岐流路(図示省略)とを有している。
〈圧縮機構〉
図1に示すように、圧縮機構(50)は、電動機(20)の下方に配置されている。図2に示すように、圧縮機構(50)は、揺動ピストン型に構成されている。圧縮機構(50)は、シリンダ(51)と、フロントヘッド(52)と、リアヘッド(53)とを備えている。圧縮機構(50)では、シリンダ(51)の上端部(軸方向一端部)にフロントヘッド(52)が積層され、シリンダ(51)の下端部(軸方向他端部)にリアヘッド(53)が積層される。シリンダ(51)、フロントヘッド(52)、及びリアヘッド(53)は、締結部材(図示省略)を介して一体化されている。フロントヘッド(52)及びリアヘッド(53)は、ヘッド部材を構成している。
シリンダ(51)は、ケーシング(11)の胴部(12)の下部の内周面に固定されている。シリンダ(51)は、扁平な略環状に形成され、その中央部に円柱状のシリンダ室(55)を形成している。シリンダ(51)には、径方向に延びる吸入ポート(56)が貫通形成されている。吸入ポート(56)には、シリンダ室(55)と連通するように吸入管(15)が接続されている。
フロントヘッド(52)では、環状プレート部(52a)及び筒状突出部(52b)の中央部に、主軸(31)が貫通する主軸側貫通口(52c)が形成されている。主軸側貫通口(52c)の上端部の内周面には、上部主軸受(41)が形成される。主軸側貫通口(52c)の下部には、下部主軸受(42)が形成される。フロントヘッド(52)には、シリンダ室(55)の高圧室(55b)と連通する吐出ポート(57)が軸方向に貫通して形成される。吐出ポート(57)には、例えばリード弁等の吐出弁(図示省略)が設けられる。吐出弁は、高圧室(55b)の内圧が、圧縮機構(50)の外部の圧力(即ち、内部空間(S)の圧力)よりも大きくなると、吐出ポート(57)を開放するように構成される。これにより、高圧室(55b)の冷媒が圧縮機構(50)の外部(内部空間(S))へ吐出される、吐出行程が行われる。
リアヘッド(53)は、シリンダ(51)の内部空間を覆うようにシリンダ(51)の下方に配置されている。リアヘッド(53)の径方向中央部には、副軸(33)が貫通する副軸側貫通口(53a)が形成されている。副軸側貫通口(53a)の内周面には、副軸受(43)が形成される。
図2に示すように、本実施形態の圧縮機構(50)は、ピストン(60)、ブッシュ(61)、及びブレード(70)を備えている。ピストン(60)は、シリンダ室(55)に収容されている。ピストン(60)は、真円筒形状に形成され、その内部にクランク軸(32)が内嵌している。
図2及び図3に示すように、シリンダ(51)には、ブッシュ溝(63)と背圧室(64)とが形成される。ブッシュ溝(63)は、シリンダ室(55)と隣接する位置に形成され、シリンダ室(55)と連通している。ブッシュ溝(63)は、横断面が略円形の円柱状の空間を構成している。背圧室(64)は、シリンダ(51)において、ブッシュ溝(63)よりも径方向外方に位置している。背圧室(64)は、横断面が略円形の円柱状の空間を構成している。背圧室(64)は、シリンダ室(55)側の端部がブッシュ溝(63)と連通している。背圧室(64)は、ケーシング(11)の内部空間(S)の圧力(即ち、圧縮機構(50)の吐出冷媒の圧力)に相当する高圧圧力の雰囲気となっている。
一対のブッシュ(61,62)は、横断面が略弓形状ないし半円形状に形成されている。一対のブッシュ(61,62)は、ブッシュ溝(63)の内部に嵌め込まれる。一対のブッシュ(61,62)は、低圧室(55a)ないし吸入ポート(56)寄りの1つの低圧側ブッシュ(61)と、高圧室(55b)ないし吐出ポート(57)寄りの1つの高圧側ブッシュ(62)とで構成される。
一対のブッシュ(61,62)は、ブッシュ溝(63)に対向する円弧部(65)と、ブレード(70)に対向する平坦部(66)とを有している。円弧部(65)の軸直角断面(水平断面)の形状は、略円弧状に形成される。平坦部(66)の軸直角断面(水平断面)の形状は、直線状に形成される。一対のブッシュ(61,62)は、ブッシュ溝(63)の中心を軸心として円弧部(65)がブッシュ溝(63)と摺接しながら揺動運動を行う。
一対のブッシュ(61,62)は、各平坦部(66)が互いに対向するようにブッシュ溝(63)に配置される。これにより、一対のブッシュ(61,62)の各平坦部(66)の間には、ブレード溝(67)が形成される。ブレード溝(67)は、横断面が略矩形状に形成され、その内部にブレード(70)が径方向に進退可能に保持される。
ブレード(70)は、径方向外方に延びる直方体状ないし板状に形成される。ブレード(70)の基端(径方向内方端部)は、ピストン(60)の外周面に連結している。ブレード(70)は、一対のブッシュ(61,62)の間に形成されるブレード溝(67)に進退可能に収容される。ブレード(70)の先端(径方向外方端部)は、背圧室(64)に位置している。
ブレード(70)は、シリンダ室(55)を低圧室(55a)と高圧室(55b)とに区画する仕切部を構成している。低圧室(55a)は、図2におけるブレード(70)の右側の空間であり、吸入ポート(56)と連通している。高圧室(55b)は、図2におけるブレード(70)の左側の空間であり、吐出ポート(57)と連通している。
ブレード(70)のうち低圧室(55a)ないし低圧側ブッシュ(61)に対向する側面(図3の右側の側面)は、第1側面(71)を構成し、ブレード(70)のうち高圧室(55b)ないし高圧側ブッシュ(62)に対向する側面(図3の左側の側面)は、第2側面(72)を構成している。
本実施形態の圧縮機構(50)では、ピストン(60)の回転角が例えば約180°〜約330°の範囲において、吐出行程が行われる。この吐出行程では、高圧室(55b)で圧縮された冷媒が、吐出ポート(57)を通じて圧縮機構(50)の外部(内部空間(S))へ吐出される。
図3に示すように、低圧側ブッシュ(61)は、ブレード(70)の基端側寄りの第1端部(61a)が低圧室(55a)に露出し、ブレード(70)の先端側寄りの第2端部(61b)が背圧室(64)に露出している。従って、低圧側ブッシュ(61)には、低圧室(55a)の圧力と背圧室(64)の圧力とが作用する。一方、高圧側ブッシュ(62)は、ブレード(70)の基端側寄りの第3端部(62a)が高圧室(55b)に露出し、ブレード(70)の先端側寄りの第4端部(62b)が背圧室(64)に露出する。従って、高圧側ブッシュ(62)には、高圧室(55b)の圧力と背圧室(64)の圧力とが作用する。
上述した背圧室(64)には、油ポンプ(35)によって汲み上げられた油が供給される。背圧室(64)の油は、ブッシュ溝(63)やブレード溝(67)を流れ、各ブッシュ(61,62)の周囲に油膜を形成する。これにより、ブッシュ溝(63)の内周面と各ブッシュ(61,62)の円弧部(65)の間の摺動部や、各ブッシュ(61,62)の平坦部(66)のブレード(70)の各側面(71,72)の間の摺動部が潤滑される。
〈ブレードの詳細な構成〉
図3に示すように、本実施形態のブレード(70)は、ピストン(60)に連結する基端側ブレード部(75)と、該基端側ブレード部(75)の先端から径方向外方に延びる先端側ブレード部(76)とを有している。即ち、本実施形態のブレード(70)には、高圧室(55b)に面する第2側面(72)に鉤状の段差面(77)が形成される。段差面(77)は、先端側ブレード部(76)に対応する位置に形成され、先端側ブレード部(76)の幅を狭くするための切欠部を構成している。図3及び他の図においては、基端側ブレード部(75)と先端側ブレード部(76)との境界である段差(78)の寸法を誇張して表している。実際には、この段差(78)の寸法は数ミクロン程度である。また、図3及び他の図においては、ブッシュ(61,62)の周囲に形成される隙間も適宜誇張して表している。
ブレード(70)では、ブレード(70)の長手方向のうち約1/3程度の領域に基端側ブレード部(75)が形成され、残りの部分が先端側ブレード部(76)を構成している。基端側ブレード部(75)の幅W1は、先端側ブレード部(76)の幅W2よりも大きい。ここで、この幅は、ブレード(70)の厚み寸法、ないしブレード(70)における一対のブッシュ(61,62)が互いに対向する方向の寸法である。
ブレード(70)において、基端側ブレード部(75)と先端側ブレード部(76)との間の境界(段差(78))の位置は、第1回転角範囲と第2回転角範囲とに基づいて決定される。ここで、第1回転角範囲は、ピストン(60)がシリンダ室(55)を一回転する際、ブレード溝(67)に基端側ブレード部(75)が内嵌する、ピストン(60)の回転角の範囲である。また、第2回転角範囲は、ピストン(60)がシリンダ室(55)を一回転する際、ブレード溝(67)から基端側ブレード部(75)が外れ、先端側ブレード部(76)のみが基端側ブレード部(75)に内嵌する、ピストン(60)の回転角の範囲である。なお、ここでいうピストン(60)の「回転角」は、ピストン(60)がブッシュ溝(63)に最接近する位置(図4の(A)の位置、上死点ともいう)を回転角0°とし、この位置を基準に図4の時計回り方向に角度を表したものである。
本実施形態において、第1回転角範囲は270°から90°までの範囲(270°以上90°未満の範囲)に設定され、第2回転角範囲は90°から270°までの範囲(90°以上270°未満の範囲)に設定される。
第1回転角範囲には、圧縮機構(50)の吐出行程の少なくとも一部の期間に対応する回転角が含まれる。つまり、第1回転角範囲は、吐出行程の回転角の範囲(例えば180°から330°まで)の少なくとも一部の回転角を含んでいる。これにより、詳細は後述するように、高圧側ブッシュ(62)のチャタリングを抑制できる。第1回転角範囲は、270°から360°までの範囲の少なくとも一部の回転角を含んでいるのが好ましく、更には270°から360°までの全ての回転角を含んでいるのがより好ましい。
第2回転角範囲は、ピストン(60)が一回転する際の第1回転角範囲以外の範囲である。従って、第2回転角範囲は、圧縮機構(50)の吐出行程の期間に対応する回転角の一部又は全部を含まない。これにより、詳細は後述するように、高圧側ブッシュ(62)に作用する荷重を低減できる。第2回転角範囲は90°から150°までの範囲の少なくとも一部の回転角を含んでいるのが好ましく、更には90°から150°までの全ての回転角を含んでいるのがより好ましい。
−圧縮機の運転動作−
圧縮機(10)の基本的な運転動作について図1〜図5を参照しながら説明する。
図1に示すターミナル(17)から電動機(20)へ電力が供給されると、電動機(20)が作動し、駆動軸(30)が回転駆動される。すると、駆動軸(30)のクランク軸(32)が偏心回転し、これに伴いピストン(60)が揺動運動を行う。
図4及び図5に示すように、圧縮機構(50)では、ピストン(60)の外周面が、シリンダ室(55)の内周面と油膜を介して線接触し、シール部を形成する。ピストン(60)がシリンダ室(55)の内部で揺動運動すると、ピストン(60)とシリンダ(51)との間のシール部が、シリンダ室(55)の内周面に沿って変位し、低圧室(55a)と高圧室(55b)の容積が変化する。この際、ブレード(70)は、ピストン(60)の揺動運動に伴いブレード溝(67)の内部を進退し、且つブッシュ溝(63)の軸心を中心として揺動する。
ピストン(60)の揺動運動に伴い低圧室(55a)の容積が徐々に大きくなると、吸入管(15)を流れる流体(冷媒)が吸入ポート(56)から低圧室(55a)へ吸入されていく。次いで、この低圧室(55a)が吸入ポート(56)から遮断されると、遮断された空間が高圧室(55b)を構成する(図4(B)を参照)。次いで、この高圧室(55b)の容積が徐々に小さくなると、高圧室(55b)の内圧が上昇していく。高圧室(55b)の内圧が内部空間(S)の圧力より大きくなると、吐出行程が行われる。つまり、吐出行程では、吐出ポート(57)のリード弁が開放され、高圧室(55b)の冷媒が吐出ポート(57)を通じて、圧縮機構(50)の外部へ流出する。この高圧冷媒は、ケーシング(11)の内部空間を上方へ流れ、電動機(20)のコアカット(図示省略)等を通過する。電動機(20)の上方に流出した高圧冷媒は、吐出管(16)より冷媒回路へ送られる。
−ブレードの機能−
本実施形態に係るブレード(70)は、高圧側ブッシュ(62)のチャタリングの発生を抑制するとともに、ブレード(70)から高圧側ブッシュ(62)に作用する荷重を低減できる。この点について詳細に説明する。
〈チャタリング〉
従来であれば、高圧側ブッシュ(62)がブッシュ溝(63)の内縁に激しく衝突するチャタリングが発生していた。具体的には、圧縮機構(50)の作動中において、一対のブッシュ(61,62)には、高圧室(55b)の圧力と背圧室(64)の圧力とが作用する。例えば図4に示すピストン(60)の回転角が0°〜90°の範囲では、高圧室(55b)の容積があまり小さくなっておらず、高圧室(55b)から高圧側ブッシュ(62)に作用する圧力は、背圧室(64)から高圧側ブッシュ(62)に作用する圧力と比較して小さい。このため、高圧側ブッシュ(62)は、シリンダ室(55)側に押し付けられた状態となる。一方、ピストン(60)の回転角が90°〜180°の範囲に至ると、高圧室(55b)の圧力が上昇し、例えば回転角が180°において吐出行程が開始される。この際、高圧室(55b)は過圧縮状態になると、高圧室(55b)の圧力が背圧室(64)の圧力よりも一時的に大きくなる。従って、このような過圧縮状態が継続すると、高圧側ブッシュ(62)が背圧室(64)側へと移動してしまう。このような状態から、ピストン(60)が270°、360°と順に回転すると、圧縮機構(50)の吐出行程が終了し、高圧室(55b)の圧力が急激に低下していく。すると、背圧室(64)側へ移動していた高圧側ブッシュ(62)が、背圧室(64)の圧力を受けて急峻に高圧室(55b)側へと移動する。この結果、高圧側ブッシュ(62)がブッシュ溝(63)の内縁に激しく衝突する。このような高圧側ブッシュ(62)の衝突は、ピストンが一回転する毎に繰り返される。この結果、いわゆるチャタリングが生じ、騒音が発生したり、高圧側ブッシュ(62)が摩耗したりする、という不具合が生じる。
このチャタリングの要因となる高圧側ブッシュの変位量を解析した結果を図6に示す。図6は、ピストン(60)の回転角と、高圧側ブッシュの変位量の関係を検証した結果である。ここで、図6の比較例1(実線)は、ブレードの幅が長手方向の全域に亘って等しく、本実施形態のようにブレード(70)に段差面(77)が形成されていない。また、比較例1は、一対のブッシュの周囲の隙間の合計が比較的大きく設定されている。ここで、「一対のブッシュの周囲の隙間の合計」とは、具体的には、ブレードと低圧側ブッシュの間の隙間S1、ブレードと高圧側ブッシュの間の隙間S2、低圧側ブッシュとブッシュ溝の内周面の間の隙間S3、及び高圧側ブッシュとブッシュ溝の内周面の間の隙間S4の合計(=S1+S2+S3+S4)である。
図6の比較例1では、圧縮機構の吐出行程(特に回転角が240°〜360°)の範囲で、過圧縮に起因して高圧側ブッシュが大きく変位しており、このことに起因してチャタリングが発生することがわかる。
本実施形態では、このようなチャタリングを回避するために、圧縮機構(50)の吐出行程を含む第1回転角範囲において、ブレード溝(67)の内部に基端側ブレード部(75)を内嵌するようにしている。即ち、図5に示すように、ピストン(60)の回転角が270°になると、それまでブレード溝(67)の外部に位置していた基端側ブレード部(75)がブレード溝(67)の内部に挿通される。基端側ブレード部(75)は、ピストン(60)の回転角が360(0°)、45°のときにも継続してブレード溝(67)の内部に位置する。そして、ピストン(60)の回転角が90°になると、基端側ブレード部(75)がブレード溝(67)から外れ、シリンダ室(55)に移動する。このように、基端側ブレード部(75)は、ピストン(60)の回転角が270°から90°までの範囲(第1回転角範囲)において、ブレード溝(67)に位置する。
基端側ブレード部(75)の幅W1は、先端側ブレード部(76)の幅W2よりも大きい。このため、第1回転角範囲では、基端側ブレード部(75)における第2側面(72)や、その表面の油膜により、高圧側ブッシュ(62)がブッシュ溝(63)の内周面へ押し付けられ、高圧側ブッシュ(62)の周囲の隙間が小さくなる。これにより、第1回転角範囲において、上記の過圧縮が生じたとしても、高圧側ブッシュ(62)は背圧室(64)側へ移動しにくくなる。従って、過圧縮に起因する高圧側ブッシュ(62)の変位量が小さくなり、高圧側ブッシュ(62)のチャタリングの発生を抑制できる。
図6の比較例2(破線)は、比較例1と同様、ブレードの幅が長手方向の全域に亘って等しく、本実施形態のようにブレード(70)に段差面(77)が形成されていない。一方、比較例2は、比較例1よりも一対のブッシュの周囲の隙間の合計を小さく、この合計が比較例1の約2/3となっている。
図6の比較例2では、圧縮機構の吐出行程における高圧側ブッシュの変位量が、比較例1と比べて極めて小さい。これは、高圧側ブッシュの周囲の隙間が小さくなることに起因して、高圧側ブッシュの背圧室側への移動が規制されているからといえる。
本実施形態では、第1回転角範囲において基端側ブレード部(75)をブレード溝(67)に挿通することで、比較例2と同様に高圧側ブッシュ(62)の周囲の隙間が小さくなり、ひいては高圧側ブッシュ(62)の変位量を抑制できる。特に、図6の270°から360°までの回転角の範囲において、基端側ブレード部(75)をブレード溝(67)に内嵌することで、高圧側ブッシュ(62)の変位量を効果的に低減できる。
〈荷重の低減〉
ピストン(60)の一回転中には、ブレード(70)から高圧側ブッシュ(62)の平坦部(66)、ひいては高圧側ブッシュ(62)の円弧部(65)に荷重が作用する。この荷重を解析した結果を図7に示す。図7では、上述した比較例1及び比較例2について、ブレードから高圧側ブッシュに荷重が作用することにより、高圧側ブッシュの円弧部に発生する荷重を表している。なお、この荷重は、比較例2の高圧側ブッシュ(62)で発生した最大の荷重(回転角=約120°)を基準(1.0)とした場合の相対比である。
図7から明らかのように、高圧側ブッシュ(62)の円弧部(65)に作用する荷重は、ピストン(60)の回転角に応じて大きく変化する。まず、回転角が180°〜360°の範囲では、高圧室(55b)の圧力が比較的高くなるため、ピストン(60)ないしブレード(70)は、高圧室(55b)側から低圧室(55a)側に向かって押し付けられやすい。つまり、この範囲では、ブレード(70)は高圧側ブッシュ(62)から離れる方向に押し付けられるため、円弧部(65)に作用する荷重は小さくなる。
一方、回転角が0°〜180°の範囲では、高圧室(55b)側から低圧室(55a)側に向かう方向の押し付け力が極めて小さくなるため、円弧部(65)に作用する荷重は比較的大きくなる。
特に回転角が90°であるときには、これまで反時計回り方向に揺動していた一対のブッシュ(61,62)が逆方向(時計回り方向)に傾こうとする。つまり、この回転角付近では、一対のブッシュ(61,62)の揺動する速度が0に近くなる。このため、回転角付近では、一対のブッシュ(61,62)の揺動運動に伴い該一対のブッシュ(61,62)の周囲に移動していた油の供給量が減少傾向になり、一対のブッシュ(61,62)の油膜が薄くなる。このような現状は、回転角90°、及びそれよりも若干遅れた約120°あたりで顕著となる。従って、図7では、このような油膜の厚さの減少に起因して、回転角が90°から150°までの範囲において、ブッシュの円弧部に作用する荷重が増大したものと推察できる。このようにして、高圧側ブッシュ(62)に作用する荷重が局所的に増大すると、高圧側ブッシュ(62)の摺動部の信頼性が低下したり、圧縮機構(50)の動力損失が増大したりする。
そこで、本実施形態では、このような高圧側ブッシュ(62)に作用する荷重を低減するために、吐出行程以外の第2回転角範囲において、ブレード溝(67)からブレード(70)を外すようにしている。即ち、ピストン(60)の回転角が90°になると、それまでブレード溝(67)の内部に位置していた基端側ブレード部(75)がブレード溝(67)の外部へ外れる。この状態では、先端側ブレード部(76)はブレード溝(67)の内部に残ったままである。基端側ブレード部(75)は、ピストン(60)の回転角が90°から270°までの範囲(第2回転角範囲)において、ブレード溝(67)の外部に位置する。一方、先端側ブレード部(76)は、この回転角が90°から270°までの範囲においても、ブレード溝(67)の内部に位置する。
先端側ブレード部(76)の幅W2は、基端側ブレード部(75)の幅W1よりも小さい。このため、第2回転角範囲では、ブレード(70)と高圧側ブッシュ(62)の間の隙間が拡大される。この結果、第2回転角範囲では、高圧側ブッシュ(62)に作用する荷重を、図7の比較例2のように低下させることができる。特に、図7の比較例2のように、90°から150°までの回転角の範囲において、基端側ブレード部(75)をブレード溝(67)から外すことで、高圧側ブッシュ(62)の隙間を比較例2と同様に拡大でき、ひいては高圧側ブッシュ(62)に作用する荷重を効果的に低減できる。
−実施形態の効果−
上記実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
上記実施形態では、図6に示すように、特に高圧側ブッシュ(62)の変位量が大きくなり易い第1回転角範囲において、幅広の基端側ブレード部(75)をブレード溝(67)に内嵌させている。これにより、高圧側ブッシュ(62)の変位量を効果的に抑制でき、チャタリングの発生を抑制できる。
また、図7に示すように、特に高圧側ブッシュ(62)に作用する荷重が大きくなり易い第2回転角範囲において、幅広の基端側ブレード部(75)をブレード溝(67)から外している。これにより、この範囲においては、高圧側ブッシュ(62)の周囲の隙間を拡大でき、ひいては高圧側ブッシュ(62)に作用する荷重を低減できる。
−実施形態の変形例−
上記実施形態に係るブレード(70)を以下の各変形例の構成としてもよい。
〈変形例1〉
図8に示す変形例1は、ブレード(70)において、先端側ブレード部(76)の幅を狭くするための切欠部の構成が上記実施形態と異なる。変形例1の切欠部は、凹形の円弧面(81)で構成される。これにより、先端側ブレード部(76)は、その先端に向かうにつれて幅が徐々に狭くなっている。
〈変形例2〉
図9に示す変形例2の切欠部は、傾斜面(82)で構成されている。これにより、先端側ブレード部(76)は、その先端に向かうにつれて幅が徐々に狭くなっている。
〈変形例3〉
図10に示す変形例3は、ブレード(70)の第1側面(71)に切欠部としての段差面(77)が形成されている。これにより、基端側ブレード部(75)の幅が先端側ブレード部(76)の幅よりも大きくなっている。変形例3においても、第1回転角範囲に基端側ブレード部(75)がブレード溝(67)に内嵌することで、高圧側ブッシュ(62)の周囲の隙間が小さくなり、チャタリングの発生を抑制できる。また、第2回転角範囲に基端側ブレード部(75)がブレード溝(67)から外れることで、高圧側ブッシュ(62)の周囲の隙間が大きくなり、高圧側ブッシュ(62)に作用する荷重を低減できる。なお、ブレード(70)の第1側面(71)に切欠部としての円弧面(81)や傾斜面(82)を用いてもよい。
《その他の実施形態》
上記実施形態や各変形例については、以下のような構成としてもよい。
上記実施形態の圧縮機構(50)は、真円形のピストン(60)が揺動回転するように構成される。しかしながら、図11に示すように、圧縮機構(50)は、非円形のピストン(60)を有する、非円形式であってもよい。この例の圧縮機構(50)のピストン(60)の外周面形状は、吸入側及び吐出側(図11に示す左側及び右側)の部分が径方向外方へ膨出した楕円形、ないし卵形に形成されている。換言すると、ピストン(60)の外周面においては、下死点に対応する部分の曲率半径が他の部分の曲率半径よりも大きくなっている。シリンダ室(55)の内周面形状は、このピストン(60)の外周面の包絡線の軌跡によって定められている。従って、シリンダ室(55)の内周面形状も、吸入側及び吐出側が径方向に膨出した楕円形、ないし卵形に形成されている。
また、上記実施形態の圧縮機構(50)は、1つのシリンダ(51)と、このシリンダの内部に設けられる1つのピストン(60)を有する、いわゆる1シリンダ式(1気筒式)である。しかし、2つのシリンダと、これらのシリンダの内部にそれぞれ設けられる2つのピストンを有する2シリンダ式(2気筒式)であってもよい。また、3つ以上のシリンダと、これらのシリンダの内部にそれぞれ設けられる3つ以上のピストンを有する多気筒式であってもよい。
以上説明したように、本発明は回転式圧縮機について有用である。
10 圧縮機
20 電動機
30 駆動軸
50 圧縮機構
51 シリンダ
55 シリンダ室
60 ピストン
61 ブッシュ(低圧側ブッシュ)
62 ブッシュ(高圧側ブッシュ)
63 ブッシュ溝
67 ブレード溝
70 ブレード
72 第2側面(側面)
75 基端側ブレード部
76 先端側ブレード部
77 段差面(切欠部)
81 円弧面(切欠部)
82 傾斜面(切欠部)

Claims (6)

  1. 電動機(20)と、該電動機(20)に連結する駆動軸(30)と、該駆動軸(30)に駆動される圧縮機構(50)とを備え、
    上記圧縮機構(50)は、
    シリンダ室(55)及び一対のブッシュ溝(63)が形成されるシリンダ(51)と、該シリンダ室(55)に収容されるピストン(60)と、各上記ブッシュ溝(63)に揺動可能に内嵌するブッシュ(61)と、一対の該ブッシュ(61)の間に形成されるブレード溝(67)に進退可能に保持されるブレード(70)とを備え、上記一対のブッシュ(61,62)における上記シリンダ室(55)と反対側の部位に上記圧縮機構(50)の吐出圧力に相当する圧力が作用するように構成され、
    上記ブレード(70)は、
    該ブレード(70)の先端側に形成される先端側ブレード部(76)と、
    上記先端側ブレード部(76)から上記ピストン(60)側に向かって延びるとともに上記先端側ブレード部(76)の幅W2よりも大きい幅W1を有する基端側ブレード部(75)とを含み、
    上記ピストン(60)の一回転中の回転角のうち、上記圧縮機構(50)の吐出行程の少なくとも一部の期間に対応する回転角を含む第1の回転角範囲において、上記基端側ブレード部(75)が上記ブレード溝(67)に内嵌し、
    残りの第2の回転角範囲おいて、上記基端側ブレード部(75)が上記ブレード溝(67)から外れるとともに上記先端側ブレード部(76)が上記ブッシュ溝(63)に内嵌するように構成されることを特徴とする回転式圧縮機。
  2. 請求項1において、
    上記先端側ブレード部(76)には、該先端側ブレード部(76)の幅を小さくするための切欠部(77,81,82)が形成されることを特徴とする回転式圧縮機。
  3. 請求項2において、
    上記切欠部(77,81,82)は、段差面(77)で構成されることを特徴とする回転式圧縮機。
  4. 請求項2又は3において、
    上記切欠部(77,81,82)は、上記先端側ブレード部(76)のうち吐出側の上記ブッシュ(62)に対向する側面(72)に形成されることを特徴とする回転式圧縮機。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1つにおいて、
    上記第1の回転角範囲は、270°から360°までの範囲のうちの少なくとも一部の回転角を含んでいることを特徴とする回転式圧縮機。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1つにおいて、
    上記第2の回転角範囲は、90°から150°までの範囲のうちの少なくとも一部の回転角を含んでいることを特徴とする回転式圧縮機。
JP2017000632A 2017-01-05 2017-01-05 回転式圧縮機 Pending JP2018109388A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017000632A JP2018109388A (ja) 2017-01-05 2017-01-05 回転式圧縮機

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017000632A JP2018109388A (ja) 2017-01-05 2017-01-05 回転式圧縮機

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2018109388A true JP2018109388A (ja) 2018-07-12

Family

ID=62844844

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017000632A Pending JP2018109388A (ja) 2017-01-05 2017-01-05 回転式圧縮機

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2018109388A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2014034940A (ja) 回転式圧縮機と冷凍サイクル装置
JP6131769B2 (ja) 回転式圧縮機
US11668308B2 (en) Compressor having sliding portion provided with oil retainer
US20110176942A1 (en) Sealed compressor
JP5413493B1 (ja) 回転式圧縮機
JP2018109388A (ja) 回転式圧縮機
JP2010275974A (ja) ロータリ式圧縮機
JP2876922B2 (ja) ローリングピストン型圧縮機
JP6256643B2 (ja) 揺動ピストン式圧縮機
US11674514B2 (en) Compressor with a fitted shaft portion having two sliding surfaces and an oil retainer
JP4887790B2 (ja) 回転式流体機械
JP2017008826A (ja) 回転式圧縮機
JP5861456B2 (ja) 回転式圧縮機
JP2017008819A (ja) 回転式圧縮機
JP2017002734A (ja) ロータリー圧縮機
JP2018009497A (ja) 回転式圧縮機
JP2018109372A (ja) 回転式圧縮機
JP2009115067A (ja) 2段圧縮ロータリー圧縮機
JPH1047278A (ja) スイング圧縮機
JP5018008B2 (ja) 回転式流体機械
JP2008082267A (ja) 圧縮機
JP6464583B2 (ja) 回転式圧縮機
JP2014202200A (ja) ロータリ圧縮機
JP2006170213A5 (ja)
KR200164299Y1 (ko) 밀폐형 회전식 압축기의 크랭크축 표면 코팅구조