JP2018109032A - グリセロールとタンニンを含む局所適用のための組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】新規局所適用製剤及びその適用方法の提供。
【解決手段】グリセロールと植物タンニンとを含む局所適用のための製剤であって、植物タンニンは、グリセロールと結合してグリセロールがフィルム化性を有するようにする能力を有するものである。
【選択図】なし

Description

殆ど全ての皮膚および粘膜傷害は、細菌性、ウィルス性、免疫学的または外傷性の原因
であるか否かにかかわらず細胞の損傷を伴い、その治癒は損傷した細胞の更新と直接的な
関連がある。細胞は、増殖するためには、水分があり清潔な、病原体を含まず、化学薬品
を含まず、汚染タンパク質およびタンパク質分解酵素を含まない環境を必要とする。これ
らの条件下で、母細胞は、娘細胞の付着のための緩衝材を形成するコラーゲン、エラスチ
ン、ラミニン、フィブロネクチンおよびその他のタンパク質の自由粒子で構成される細胞
マトリックスを分泌する。このマトリックスがないと、娘細胞はそこに付着するための支
持体がなく、したがって増殖することができない。その結果として、傷害は治癒できない
細胞の損傷を含む局所の皮膚および粘膜傷害は、細胞の増殖および創傷の修復を妨げる
死細胞、細胞残屑、および複数のタンパク質分解酵素を含有することに加えて、これらの
損傷部位は外部環境に対して開いたままであり夾雑されることが多いので、治癒は極めて
困難である。これが、床ずれ、糖尿病性潰瘍、または静脈下肢潰瘍のような殆どの慢性創
傷が決して治癒せず、ほぼ40%の患者が創傷から回復せずに死に至る理由である。
現在のところ、必要とされる複数の本質的な性質を全て有する単一の物質または製品は
なく、皮膚および粘膜の傷害のための利用可能な完全な治療はない。例えば、現在、慢性
創傷を治癒させるための治療はない。利用可能な全ての薬剤は、微生物の増殖を抑制する
ために消毒剤、抗生物質として、創傷を含水状態に保つためにヒドロゲルもしくはアルギ
ン酸塩として、痛みを和らげるために鎮痛剤もしくは麻酔剤として、細胞マトリックスの
構成成分の1つを供給するためにコラーゲンもしくはヒアルロン酸を含有する製剤として
機能するか、または皮膚を取り替えるための生物工学によって作製された皮膚もしくは表
皮の移植組織からなるが、これらの治療はいずれも、傷害を清潔にして、細胞の増殖を促
進することにより自然の皮膚または粘膜の修復過程に有利な状態にすることを目的とした
ものではない。
同じ効率的な治療の欠如は、大量の遊離ウィルス粒子が感染された生物学的表面に存在
し、局所的に利用可能なプロテアーゼの助けを借りて新しい健康な細胞を攻撃し続ける口
唇ヘルペス、陰部ヘルペス、副鼻腔炎、およびインフルエンザのような局所的なウィルス
感染症にも当てはまる。ウィルス感染症は、傷害の表面に存在する複数のプロテアーゼに
より媒介されることが多い。現在、感染症の主要な作用物質である遊離ウィルス粒子また
はプロテアーゼの量を低減する薬剤はない。ウィルス性咽喉感染症を治療するために、海
水または塩水うがい剤は未だに最良の治療法の1つと考えられている。というのは、これ
らの浸透活性溶液は、咽喉粘膜を覆って高張性フィルムを形成し、結果として生じる低張
性液体の外方滲出は咽喉表面上の夾雑物質負荷を低減するのを助けるからである。残念な
がら、この高張性溶液フィルムは流出する低張性液体によって数分以内に薄められ、その
治療の効果を制限する。塩またはその他の浸透成分の濃度を増大することは推奨されない
。なぜならば、結果として強い刺激、細胞の損傷および粘膜の灼熱感が生じるか、または
細胞の近くに毒性の化学薬品が存在すると細胞の増殖が妨害されるからである。
したがって、感染された表面から、自由浮動性細菌、ウィルス粒子、死細胞、細胞残屑
、死んだタンパク質、マトリックスメタロプロテアーゼ、増殖因子、サイトカイン、プロ
テアーゼ、またはダスト粒子のような夾雑物質を全て除いて、細胞または細胞マトリック
スに対していかなる毒性の影響も及ぼすことなく、細胞増殖および組織修復に必須の環境
を提供するという複数の要件を満たすことができる物質を見出すことが極めて重要である
複数のヒドロキシル基を有するポリオールであるグリセロールは、天然または合成起源
の、粘性の、透明な、安全な、浸透活性で親水性の溶液である。グリセロールは食物成分
、保存剤、および保湿剤として一般に使用されており、多くの化粧品および医薬品の組成
中に入っている。グリセロールは、創傷およびやけどに、多くの場合他の活性成分と共に
賦形剤として、局所適用用に広く使用されている。これら全ての製剤で、グリセロールは
、局所の皮膚または粘膜病を治療するための活性成分としてではなく、ビヒクル、希釈剤
、粘度上昇剤、加湿剤、または味覚調節剤として使用されている。
損傷した皮膚または粘膜は、半透膜として機能し、浸透現象を発生させる。半透膜を通
る溶媒の流れは浸透圧流または浸透現象を構成する。浸透平衡を達成するのに必要とされ
る圧力は浸透圧といわれる。溶媒の濃度が高いほど、それだけ大きい浸透圧が作用する。
新鮮な水は等張で密度1000kg/mを有すると考えられる。海水およびグリセロー
ルはそれぞれ1025kg/mおよび1259kg/mの密度を有する。グリセロー
ルにより発揮される浸透圧は海水と比較してほぼ10倍高い。また、グリセロールの溶質
濃度も海水と比較してかなり高い。浸透現象は半透膜を横切って存在する溶質/溶媒濃度
差により発生するので、液体の浸透圧流を決定するのは溶液の全溶質濃度である。全溶質
濃度は溶液のオスモル濃度によって決定することができる。3.4%のNaClを含有す
る海水のオスモル濃度は0.581mols/kg(全溶質/mol wt/kg)であ
り、これに対してグリセロールは10.86mols/kgである。これは、純粋なグリ
セロールが海水よりほぼ18倍浸透活性であることを示している。したがって、グリセロ
ールは、低張性液体の浸透流出を生じさせ、損傷部を清潔にするために感染した表面に適
用するには最適な製品であるはずであった。しかし残念ながら、滲出する低張性液体は直
ちにグリセロールを薄め、数分以内に創傷表面から排出させ、これらの清浄効果を限定す
る。
したがって、水和する、清浄化する、除菌するという多重の特性を備え、かつ抗菌、抗
ウィルス、および抗プロテアーゼ活性も有する安全な非刺激性の治療が必要とされている
国際公開第00/74668号は、潰瘍または表面の傷害の治療のための局所適用用の
粘性溶液としてのグリセロールの使用に関して、グリセロールを有効成分として、かつア
ルケミラ・ウルガリス(Alchemilla vulgaris)の含水グリセリン抽
出物を細胞成長促進剤として含む、局所傷害の治療のための高張性の浸透活性溶液の使用
を開示している。しかしながら、国際公開第00/74668号で使用されているグリセ
ロールはフィルム化性(filmogen)はなく、したがって上に詳述した利点を提供すること
ができない。感染または損傷した組織を清浄化するために治療薬としてグリセロールを単
独で使用することは一般的ではない。なぜならば、浸透現象、すなわち低張性液体が組織
の内部部分から流出するという現象のために、グリセロールは数分以内に薄められ、次第
にその浸透特性および活性を失い、全清浄化剤として満足に機能することがないからであ
る。グリセロールフィルムは生物学的組織表面を清浄化するのに充分な浸透現象を生じさ
せるために少なくとも30分にわたり半透過性の生きている組織膜上に存続するべきであ
る。
本発明は、上述の不利益を克服するために、生きている生体表面によるグリセロールフ
ィルムの保持時間をいかに改善するかという問題に取り組むものである。
次に、凍結保存は、化学薬品反応性または時間により引き起こされる損傷を受け易い細
胞、全組織、またはその他の物質を零下の温度に冷却することによって保存するプロセス
である。十分に低い温度では、問題の物質に対して損傷を引き起こす可能性があるあらゆ
る酵素または化学薬品活性が有効に抑えられる。凍結保存法は、凍結中に氷の結晶の形成
によって生じる追加の損傷を発生させることなく低い温度に到達することを目指している
。生きている細胞の長期貯蔵の場合、凍結保護物質は細胞に対して非毒性でなければなら
ず、結晶の形成を防止することができなければならない。これは、死んだまたは死にかけ
ている細胞の数が増大すると細胞再生または組織移植が成功する機会が減少するので、生
きている細胞および組織の貯蔵または保存(例えば皮膚移植組織)にとって特に重要であ
る。
現在のところ、DMSO(ジメチルスルホキシド)、ヒトまたはウシ胎児血清(FCS
)、およびグリセロールが、凍結温度および水の結晶による損傷から細胞を保護し、した
がって細胞の死亡率を最小にするために凍結保護培地として使用されている。残念ながら
、これらの凍結保存剤のいずれも、細胞を長期間にわたって、すなわち数カ月から数年に
わたって保存することができない。通常、特に水の結晶の形成により引き起こされる細胞
の損傷のため、30〜40%の細胞が生の細胞凍結保存の数日以内に、また50%超が数
カ月以内に死ぬ(Bravoら、Burns 26(4)、367〜78、2000)。
したがって、細胞または組織の周辺に薄いフィルムを形成することができ、細胞の生存
率を高めるために外界の攻撃や水の結晶の形成からそれらを保護する凍結保存剤を見出す
ことが緊急に必要である。
上に詳述した問題を解決するために、本発明者は、グリセロール分子に結合することが
できる特定の植物タンニンを含有するグリセロール製剤(glycerol preparation)を提供
し、これにより半透過性の生体膜上におけるグリセロール製剤のフィルム化特性(filmog
enic properties)および保持時間を改良する。このフィルム化性グリセロール(filmoge
n glycerol)は、様々な皮膚および粘膜の感染症を治療するために、また凍結保存中の生
きている組織を保護するために、局所適用のための自然で安全な処置として使用すること
ができる。
したがって、本発明は、グリセロールと植物タンニンとを含む局所適用のための製剤を
扱う。植物タンニンは、グリセロールに結合して、グリセロールがフィルム化性質(film
ogen qualities)を有するようにする能力を有するものである。
1つの実施形態において、植物タンニンは、プロアントシアニジンから選択される。
好ましい実施形態において、これらのプロアントシアニジンは、ビルベリー(Vacc
inium myrtillus)、クランベリー(Vaccinium macroc
arpon)、ブドウ(Vitis vinifera)、セイヨウニワトコ(Euro
pean elder)、チャノキ(Camellia sinensis)、ダイズ(
Glycine max)、アカシア(Acacia catechu)、シナトネリコ
(Fraxinus chinensis)、イチョウ(Gingko biloba)
、クロスグリ(Ribes nigrum)、ナツシロギク(Tenacetum pa
rthenium)、セイヨウシロヤナギ(Salix alba)、ヤクヨウサルビア
(Salvia officinalis)、マンネンロウ(Rosmarinus o
fficinalis)、ウチワサボテン属種(Opunitia sp.)、マクワ(
Morus alba)、キイチゴ属種(Rubus sp.)、コナラ属種(Quer
cus sp.)、マツ属種(Pinus sp.)、およびこれらの組合せから選択さ
れる植物の部分、または植物全体から得られる。
より好ましい実施形態において、プロアントシアニジン豊富なタンニン画分は、ビルベ
リー、クランベリー、ブドウ、セイヨウニワトコ、チャノキ、クロスグリ、アカシア、シ
ナトネリコ、イチョウ、ダイズ、およびこれらの組合せから選択される植物の部分、また
は植物全体から得られる。
別の実施形態において、プロアントシアニジンは、植物から取得される代わりに、合成
される。
1つの実施形態において、製剤のグリセロールの含有率は、30%〜99.99%(v
/v)を構成する。
1つの実施形態において、製剤は活性成分を含む。活性成分は、薬剤、抗生物質、消毒
剤、栄養素、抗体、増殖因子またはタンパク質から選択することができる。
本発明はさらに、皮膚および粘膜の感染症の治療のための上記製剤の使用を扱う。
上記の製剤は、さらに、細胞、組織または臓器を保護、輸送、貯蔵または凍結するため
に使用することができる。1つの実施形態において、最終の溶液中のフィルム化性グリセ
ロールの濃度は、最終溶液中に存在する例えばFCS、培地、およびDMSOのような他
の希釈剤と比較して、2〜50%(v/v)、好ましくは10〜30%(v/v)、より
好ましくは15〜20%(v/v)の範囲で変化させてよい。
本発明はまた、生体表面によるグリセロールフィルムの保持時間を向上させる方法であ
って、グリセロールと、グリセロール分子に結合する能力を有する植物タンニンとの溶液
を調製し、そして、この溶液を生体表面上に適用することによる方法にも関する。
また本発明は、皮膚および粘膜の感染症を治療する方法であって、上記の製剤を、罹患
した場所に適用するステップを含む方法にも関する。
本発明は、フィルム化性グリセロールを調製する方法であって、グリセロールまたはポ
リオール溶液を、グリセロールと結合する植物タンニンと混合することを含む方法にも関
する。1つの実施形態において、植物タンニンは、粉末または液体として添加することが
できる。
タンニンの添加によるグリセロールのフィルム化性の改善、および非フィルム化性グリ
セロールと比較したフィルム化性の治療効果の実質的な増大は、実施例および以下の図に
記載される研究で示される。
熱重量分析(TGA)によるフィルム化性グリセロールと比較したグリセロール単独の溶解度の測定を示す図である。 糖尿病性創傷上における、通常のグリセロールと比較したフィルム化性グリセロールのフィルム保持持続時間を示す図である。 乾癬、湿疹および皮膚炎(PED:Psoriasis、Eczema&Dermatitis)の兆候の平均全体症状重篤度の測定を示す図であり、グリセロール単独の効果が対照群である。 乾癬、湿疹および皮膚炎(PED)の兆候の平均全体症状重篤度の測定を示す図である。フィルム化性グリセロール積極的治療群の効果:実施例5の製剤番号11および51によるフィルム化性グリセロールVB−DERMで処置した。結果は、フィルム化性グリセロールが増殖刺激性のサイトカイン、インターロイキン、およびインターフェロンの全ての自由粒子をすっかり除去し、皮膚細胞の増殖を正常化することを示している。 通常のグリセロールと比較したフィルム化性グリセロールで処置したPED患者のクオリティーオブライフの改善を示す図である。 それぞれの処置(通常のグリセロールと比較したフィルム化性グリセロール)の全体PED重篤度に対する効果を示す図である。 全副鼻腔炎症状を示す図である。通常のグリセロールスプレーで処置した対照群;実施例5の製剤番号5によるフィルム化性グリセロールのスプレーで処置したフィルム化性グリセロール群。 抗生物療法;対照群およびフィルム化性グリセロール群における抗生物質処置を使用する相対的必要性を示す図である。 対照処置(グリセロール単独)と比較した粘膜炎に対するOrosol(フィルム化性グリセロール)の効果を示す図である。
本発明は、グリセロールと植物タンニンとを含む局所適用のためのフィルム化性グリセ
ロール製剤に取り組むものである。この植物タンニンは、グリセロールと結合して、グリ
セロールがフィルム化性を有するようにする能力を有するものである。フィルム化性によ
って、生きている生体表面によるグリセロールフィルムの保持時間が向上する。したがっ
て、この製剤は、皮膚および粘膜の感染症の治療のために使用することが意図される。
フィルム化性グリセロールという用語は、特定の天然もしくは合成のタンニンまたはタ
ンニンの画分を含有するグリセロール溶液を示し、これは、半透過性の生きている生体膜
に適用されると、それに作用する機械的な力に通常のグリセロールよりいっそう良好に耐
えるフィルムを形成する。通常の市販グリセロールを半透過性の生体膜に適用すると、グ
リセロールの高張性が生きている組織の内部部分から低張性液体を引き付け、これがグリ
セロールを急速に薄めさせ、適用後10〜15分以内に浸透能を失い、その活性を停止さ
せる。一方、フィルム化性グリセロールはそれに作用する外方液体流圧力に耐え、単にゆ
っくり薄められるのみであり、したがって通常のグリセロールよりもかなり長い期間、す
なわち適用部位および外に向かう液体流の圧力に応じて30分〜数時間その浸透能を保持
する。
グリセロールは、グリセリンとも知られており、定義によれば、脂肪族骨格の別の炭素
原子に結合した1より多くのヒドロキシル基(OH)を含有する糖アルコール化合物を含
む。この群は、グリコール、グリセロール、およびペンタエリスリトール、ならびにまた
トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、ソ
ルビトール、イノシトール、キシリトール、およびポリ(ビニルアルコール)のような製
品を含む。ポリオールは天然の起源から得てもよいし、または合成することができる。本
発明者らは最も普通に使用されているポリオールすなわちグリセロールを選択した。グリ
セロールは高張性の粘性糖アルコール溶液であり、生きている生体表面の下にあるより深
部の組織に存在する低張性液体を浸透現象によって引き付けることによりその表面を水和
する。残念ながら、そのようにして生成した外に向かう低張性液体流はグリセロールを希
釈し、この効果を数分以内に徐々に縮小する。低張性液体の外方滲出、その結果としての
グリセロールの清浄効果はわずか5〜20分間しか続かいために頻繁な適用を必要とする
が、これは実用的ではない。これが、良好な浸透圧剤であるにもかかわらず、なぜグリセ
ロールが保湿剤としてのみ使用され、局所傷害の治療に適切な薬剤ではないかの理由であ
る。
フィルム化性グリセロールは、適用された生きている生体表面から低張性液体を引き付
けることができ、標準的なグリセロールと比較して崩壊または水への溶解に対してより良
好に抵抗することができる薄い浸透活性、半透過性、可撓性の、非可塑性フィルムを形成
する粘性液体グリセロールを意味する。
タンニンは、タンパク質および糖のような様々な他の巨大分子と強い複合体を形成する
のに充分なヒドロキシルおよびカルボキシルのような他の適切な基を含有する天然の渋味
のあるポリフェノール性化合物を含む。
タンニンは植物タンニンのような天然起源でもよいし、または合成でもよい。高度に分
岐した大きい分子であるので、モノマー、ダイマーおよびポリマーのタンニンは小さい単
純なフラボンと比較して、隣接する糖またはその他の分子と結合する機会が大きい。タン
ニン上のヒドロキシル基の存在はポリオールのような巨大分子との安定な架橋の形成を可
能にし、この架橋はポリオール(グリセロール)フィルムの機械抵抗を改良する助けにな
る。文献に記載されている合成ポリマーの複数の毒性効果のために、本発明者は、タンパ
ク質と結合する強い親和性を有しているが多糖類、炭水化物および糖のような他の巨大分
子との強い親和性も等しく有する植物性タンニンが、ポリオールに添加されたときポリオ
ール、例えばグリセロールのフィルム化性を改良する可能性があるとの仮説を立てた。(
1)タンニンは不活性な分子であり、細胞構造体と相互作用をもたず、(2)タンニンは
生きている組織に適用されたとき非毒性で非刺激性であり、(3)タンニンは非常に大き
な分子であり、細胞内に入り込むことはできず、(4)タンニンはグリセロールと一緒に
して均質な溶液を形成することができる。
一般に、タンニンは2つの広い群、すなわち加水分解性と縮合型のタンニンに分類され
る。名前が示すように、加水分解性タンニンは酸または酵素により急速に加水分解され、
この加水分解の生成物は没食子酸またはエラグ酸である。乾留により、没食子酸およびそ
の他の構成成分はピロガロールに変換される。縮合型タンニンは、加水分解に対してかな
り高い耐性を有する。これらはフラボノイド顔料により形成される。鉱酸または酵素の存
在下で、これらは分解して、水不溶性である赤色のフロバフェンになる。プロアントシア
ニジン(PCD)は、C4−C6またはC4−C8結合を介して互いに結合したフラバン
−3−オール単位を含有する縮合型フェノール系ポリマーである。プロアントシアニジン
の構造的なバリエーションは、カテキン結合の数、ヒドロキシル化、および加水分解によ
り開裂することができないC環の3つのキラル中心(炭素2、3および4)における立体
化学に応じて、ダイマーおよびトリマーからより複雑なオリゴマーおよびポリマーまで多
岐にわたる。本発明者は、2〜5のカテキンまたはエピカテキン分子から形成されたプロ
シアニジン(PCD)が巨大分子の結合に殊によく適していることを観察した。
本発明の1つの実施形態において、植物タンニンはプロアントシアニジンまたはプロシ
アニジン(PCD)から選択される。
好ましい実施形態において、これらのプロアントシアニジンは、ビルベリー、クランベ
リー、ブドウ、セイヨウニワトコ、チャノキ、ダイズ、アカシア、シナトネリコ、イチョ
ウ、クロスグリ、ナツシロギク、セイヨウシロヤナギ、ヤクヨウサルビア、マンネンロウ
、ウチワサボテン属種、マクワ、キイチゴ属種、コナラ属種、マツ属種、レム・エモディ
(Rheum emodi)およびこれらの組合せから選択される植物の部分、または植
物全体から得られる。
別の実施形態において、プロアントシアニジンは植物から得られる代わりに合成される
本発明者は、その研究(実施例3−薬理学的研究参照)において、ある種のPCDまた
はその組合せが非常に高度にフィルム化性であることを見出した。これは、それらがグリ
セロールフィルム保持持続時間をグリセロール単独と比較して200〜300%増大する
ことを意味する。これらの組合せは、好ましくは、ビルベリー(果実抽出物)+クランベ
リー(果実抽出物)、ブドウ(種子抽出物)+セイヨウニワトコ(果実抽出物)、チャノ
キ(葉抽出物)+ビルベリー(V.myrtillus)、ビルベリー+セイヨウニワト
コ(E.elder)、チャノキ(C.sinensis)+ブドウ(V.vinife
ra)+セイヨウニワトコ、ブドウ+セイヨウニワトコ+ダイズ(種子抽出物)、クラン
ベリー(V.macrocarpon)+チャノキ+ブドウ、およびクランベリー+チャ
ノキ+ビルベリー+ブドウからなる。
これに対して、次のタンニン豊富な植物抽出物の組合せは高いフィルム化性を有するこ
とが判明し、これはフィルム保持持続時間をグリセロール単独と比較して100〜200
%増大することを意味する。アカシア+シナトネリコ(樹皮および植物全体)、シナトネ
リコ(F.chinensis)+ヤクヨウサルビア+イチョウ(G.biloba)、
マンネンロウ+クロスグリ、イチョウ(根)+合成ポリマー。
加えて、もう1つ別の群が中程度のフィルム化性を有するとして特定され、これはフィ
ルム保持持続時間をグリセロール単独と比較して20〜99%増大することを意味する。
マクワ(果実)+キイチゴ属種(果実)、コナラ属種(果実、樹皮)+マツ属種(樹皮、
果実)。ナツシロギク(花および葉)+セイヨウシロヤナギ(植物全体)、レム・エモデ
ィ+ウチワサボテン属種(果実)+マツ属種(樹皮)。
これらの組合せは互いに交換可能である。
ポリオールおよびポリマーがフェノール系化合物のヒドロキシル基と強い水素結合を形
成するのに充分な遊離の酸素分子を含有することはよく知られている。合成または天然、
水溶性または水不溶性、精製または未精製のポリマーを用いて、植物タンニンの生物学的
利用能および消化可能性を調べ、合成のポリマーおよびプラスチックを製造し、材料の粘
度または剛性を改良し、またはタンニンを定量するために多くの研究が行われて来ている
が、皮膚または粘膜の傷害を治療するための局所適用用のグリセロールのフィルム化性を
改善するためにタンニンまたはポリマーを使用することは全く研究されていない。
本発明がグリセロールの可塑剤としての使用または皮膚に対するグリセロールの保湿剤
としての使用に関するものではないことが理解されよう。グリセロールに対するタンニン
の添加はグリセロールまたは生体膜上のグリセロールフィルムの粘度を変化させないが、
生きている生体膜に対するグリセロールの付着力を高める。
本発明者が行った研究調査の目標は、グリセロール分子と結合して、低張性液体の滲出
中生体膜の上で完全なままで存続可能な機械的に抵抗性のグリセロールフィルムを形成す
ることができる植物タンニン、特に植物タンニンのプロシアニジン(PCD)画分を明ら
かにすることであった。目的は、この最適な生体付着性、浸透活性、高張性の安全なフィ
ルムを、損傷部を清浄化し、損傷部から夾雑物質を除去し、損傷部を含水状態に保ち、細
胞マトリックスを保護し、非毒性で化学薬品を含まない環境において細胞増殖に好都合の
下地を調製するために、効果的な処置として実施することであった。
本発明者は、グリセロールフィルムの機械抵抗を改良することにより、グリセロール単
独と比較してかなり長い期間の間生きている細胞を覆ってフィルムを完全なままで保つこ
とができる特定のグリセロール結合性植物タンニンを確認した。この損傷した皮膚または
粘膜表面を覆うフィルム化性グリセロールの保持の増大した持続時間は、生体表面を有効
に水和し清浄化すると共に、表面上に存在する全ての自由浮動性の夾雑物質を除去する。
夾雑物質がないこと、および清浄で湿った環境は損傷した組織の治癒を促進する。グリセ
ロールフィルムは損傷した表面を外界の攻撃から同様に保護する。
グリセロールはまた、細胞および組織を低い温度(−70〜−196℃)で凍結する際
に凍結保護物質として使用される。グリセロールのヒドロキシル基はHOと相互作用し
て水の結晶を形成する性質をブロックする。HOの分子組織が変更され、凍結中の水の
結晶の形成を少なくし、細胞の損傷を低くする。グリセロールは一般に、細胞および生き
ている組織を凍結するために、DMSO(1〜5%)、血清(10〜20%)および培地
と共に、5〜20%の濃度で使用される。DMSOは解凍中細胞を損傷から保護する細胞
膜を多孔質にし、一方グリセロールは膜構造を保護し、内部タンパク質の性質を維持する
。20%の濃度を超えると、グリセロールは高張性になり過ぎ、その浸透効果のために細
胞を損傷する。残念ながら、これらの凍結保護物質を用いた細胞生存率はめったに60%
を超えることがなく、貯蔵した組織の移植はよくない。より高い濃度のこれらのいずれの
成分も細胞生存率を高めないことが判明した。この貧しい細胞生存率は、生きている細胞
膜の周辺に存在するグリセロール分子の高い濃度にも関わらず、凍結中の細胞の脱水によ
り膜表面上で多数のHO分子が遊離するという事実に起因する。この水はグリセロール
により捕捉されるが、グリセロールはフィルムとして存在しないので、幾らかの水分子は
結晶化する。水の結晶は遊離のグリセロール分子と細胞膜との間の間隔をさらに増大させ
、さらなる水の結晶の形成および続いて起こる細胞の損傷を助長する。完全な細胞表面を
保護し、細胞内部から拡散する全ての水分子を捕捉することができるフィルム化性凍結保
護物質を見出そうとする相当な努力がなされてきたにもかかわらず、未だ安全なフィルム
化性凍結保護物質は発見されていない。
細胞膜と密着したままで存続するフィルム化性グリセロールはグリセロール単独と比較
して生きている細胞をより良好に保存することができるということが本発明者によって見
出された。したがって、上記の製剤はさらに、細胞、組織または臓器を保護し、輸送し、
貯蔵し、または凍結するために使用することができる。1つの実施形態において、サンプ
ル中のフィルム化性グリセロールの正味の濃度は、2〜50%(v/v)、好ましくは1
0〜30%(v/v)、特に15〜20%(v/v)で変化する。したがって、フィルム
化性グリセロールは、この困難を克服し、細胞を損傷する水の結晶を防止する優れた溶液
を構成する。
本発明の1つの実施形態において、製剤のグリセロールの含有率は、30%〜99.9
9%(v/v)を構成する。局所適用用の製剤のグリセロールの%は、製品が適用される
身体部分に応じて変更してもよく、例えば、開いた慢性創傷に適用するにはより厚い製品
が使用され、膣腔内に適用するにはより薄い製品が使用され、または鼻腔または口腔内に
適用するにはよりいっそう薄い製剤が使われる。製剤中のグリセロールの割合は30〜9
9.99%(v/v)、例えば膣内適用には90〜99%(v/v)、皮膚創傷への適用
には70〜99.9%(v/v)、鼻の粘膜のような敏感な粘膜への適用には30〜60
%(v/v)で変化することができる。
別の実施形態において、製剤は活性成分をさらに含む。活性成分は、薬剤、抗生物質、
消毒剤、栄養素、抗体、タンパク質、増殖因子、またはグリセロールフィルムが適用され
る損傷した表面と接触することを必要とする他のあらゆる物質から選択することができる
製剤は、チューブ、プラスチック容器、注射器、アンプル、噴霧器、金属容器中に、容
器のタイプに応じて1〜500mlの容量で充填することができる。フィルム化性グリセ
ロールはまた、綿、ポリマー、プラスチック、セルロースまたは創傷および損傷部に適用
するのに一般に使われる他のタイプの包帯に配合することもできる。
本発明はまた、生体表面によるグリセロールフィルムの保持時間を向上させる方法であ
って、グリセロールとグリセロール分子に結合する能力を有する植物タンニンとの溶液を
調製すること、ならびにその溶液を生体表面上に適用することによる、方法にも関する。
グリセロール中のタンニン豊富な植物抽出物の濃度はフィルム形成効果を得るために使
用するタンニンの初期濃度と組成に応じて変化し得る。
本発明者は製剤の作用機序に関して次の仮説を建てた。細胞原形質膜が外部環境(皮膚
ケラチノサイトが損傷され、下にある細胞が露出されている皮膚傷害、粘膜、例えば咽喉
、ならびに口、鼻および膣腔)に露出されている生体表面に浸透活性溶液を適用して生体
膜の上に浸透活性なフィルムを形成し、低張性液体の外に向かう流れを作り出すことがで
きる。この液体の外に向かう流れは不純物、例えば死細胞、細胞膜、ダスト粒子、細菌、
ウィルス粒子、自由浮動性のタンパク質分子、例えばプロテアーゼ、等を引き剥がし排出
させて、結果として損傷部および粘膜を清浄化するはずである。この機械的な作用様式は
抗菌、抗ウィルス、除菌、清浄化および水和効果を産み出し、これらは細胞増殖および治
癒を促進するために必須である。3〜3.4%のNaCl(塩)を含有する海水は損傷部
を清浄化するため、またはうがいに普通に使われているが、極めて有効ではない。という
のは、低張性液体の外に向かう流れは浸透フィルムを直ちに薄め、除去し、生理食塩水溶
液の作用の持続時間をたった数分に制限する。生体表面による高張性フィルムの保持の持
続時間が短いと、その清浄化効果はそれだけ低くなる。
グリセロールは海水または3%生理食塩水溶液よりかなり粘性であり、海水より比較的
長い時間生体膜の上に残留する。グリセロールは消毒、抗ウィルス、清浄化および水和剤
として局所適用用の非毒性、非刺激性の、全く安全で安価な製品であるので、局所感染症
を治療し、創傷を清浄化し、創傷の治癒を促進するのに広く使用されたはずである。しか
し、そうではない。なぜならば、グリセロールもそれが生成する低張性液体の外に向かう
流れによりその極めて浸透性の活性によって薄められ、その結果としてその適用からわず
か数分後に表面から除去され、それがグリセロールの作用の持続時間をかなり短縮し、十
分な表面清浄化に充分な時間がないからである。これは、粘膜または損傷した表面を清浄
化するのにグリセロール単独の使用が満足でない理由を説明している。
グリセロールの3つのヒドロキシル基は、水との水素結合の形成を通して、水に容易に
溶解できるようにする。薄められたグリセロールは低張性液体の流れにより直ちに排除さ
れ、その結果グリセロールの浸透効果が次第に、ただし急速に(5〜10分以内に)減少
する。この問題を克服する唯一の解決策は、10〜15分毎に製品を繰り返し再適用し続
けて浸透活性なフィルムを再構成することと予想されるが、これは実際的ではない。
したがって、最良の解決策は、生体表面を清浄化するための効果的で安全安価な方法を
提供するために、製品の浸透性または安全プロフィールを変更することなく、グリセロー
ルのフィルム保持持続時間を改良することを含む。
グリセロールは、生体表面上で、下にある生きている生体膜または細胞となんら生物学
的、薬理学的、代謝的または免疫学的相互作用をすることなく、専らその機械的な特性に
よって機能しているので、グリセロールのフィルム化性を改良するというその能力で選択
される物質は同様または不活性であることが重要である。
本発明はまた、上記の製剤を罹患した場所に適用するステップを含む、皮膚および粘膜
の感染症を治療する方法に関する。本出願において、皮膚という用語は、身体の全ての場
所の皮膚をいい、また例えば唇の非常に敏感な皮膚も含む。本製剤は皮膚および粘膜、例
えば口腔、咽喉、鼻孔、鼻洞、身体の表面の損傷した皮膚および組織、膣腔ならびにその
他の身体の自然に開いた穴に等しく適用することができる。皮膚および粘膜の感染症は、
通常の細胞機能または治癒過程を妨害する皮膚または粘膜の表面上の何らかの望ましくな
い病原体または物質の存在を意味する。
本発明はまた、グリセロールまたはポリオール溶液をグリセロールと結合する植物タン
ニンと混合することを含む、フィルム化性グリセロールを調製する方法に関する。1つの
実施形態において、植物タンニンは粉末または液体として添加することができる。
以下の実施例により本発明をさらに例証するが、その内容に限定されない。
[実施例1:タンニン豊富な植物抽出物の製剤]
最初に、186のタンニン豊富な植物物質を、プロアントシアニジン(PCD)豊富な
乾燥植物抽出物の製剤のために選択した。
PCD豊富な植物抽出物を、果実、種子、皮、野菜の葉肉、木の実、樹皮、およびあら
ゆるその他のタンニン豊富な植物材料のようなタンニンを豊富に含む種々の植物材料から
調製した。原料はいずれもそのまま(湿ったまま)使用したが、乾燥し、分離し、タンニ
ンが少ない構成成分を除去することによって予め分類してあってもよい。
文献(Ajila CM.Crit Rev Biotechno、31(3)227
〜249、2011)に記載されており当業者には公知の標準的な方法を用いて、タンニ
ン豊富な植物抽出物を調製した。簡単に言えば、初期段階中、プロアントシアニジンを含
有する固体の植物材料の水性混合物を、処理された植物材料の剛性に応じて、およそ4k
gの固体の植物材料を24〜40リットルの脱イオン水と共に(固体材料対水の比1:6
〜1:10)、場合により上昇した圧力(60〜100psi圧力)下180〜250℃
の温度に30分〜5時間の範囲の時間加熱することによって調製した。加熱後、混合物を
綿包帯地に通すことによって大きめの残屑から液体抽出物を分離した。分離した固体を捨
て、PCD豊富な液体を集めた。次に、抽出物を加熱する(180〜200℃)ことによ
り、または霧化により乾燥し、PCD豊富な抽出物として様々な実験に、またグリセロー
ル中へ配合するために使用した。
抽出物中のプロアントシアニジン含有率を、Porterらの方法(Porterら、
Phytochemistry、1986)に従って酸ブタノールアッセイにより決定し
た。簡単にいうと、200μgの乾燥した植物抽出物を300μlの70%アセトンで薄
め、溶液をピペットで100×12mmの試験管中に移した。3.0mlのブタノール−
HCL試薬(95:5)およびHCl 2N中で調製した0.1mlの2%鉄酸を添加し
た。試験管をボルテックスした後、試験管の口を原料ガラスで覆い、97〜100℃の加
熱ブロックに60分間入れた。次に、管を放冷し、550nmで吸光度を記録した。縮合
型タンニンの割合をロイコアントシアニジン当量として計算するための式は、(吸光度5
50nm×78.26×希釈係数)/(%乾燥物質)である。
高濃度のPCDを意味する200を超えるPorter値を有する植物抽出物のみ(試
験した186のうち42)をさらなる試験に使用した。最良の結果は特定のタイプのタン
ニンではなくPCDの混合物で得られたので、特定のタイプのタンニンを濃縮するために
抽出物を精製することはしなかった。乾燥した植物抽出物は主としてダイマー、トリマー
およびペンタマーカテキン構成ブロックを含有する。
[実施例2:フィルム化性グリセロールの製剤]
局所適用に必要とされるグリセロールフィルムのタイプに従って、0.1〜8.0%の
PCDを含有する乾燥粉末をグリセロール中に配合し、6時間37℃で撹拌下に十分に混
合して均質な溶液を得た。野菜起源のグリセロールはフランスのInterchimie
のような供給業者から購入することができる。製剤を、チューブ、プラスチック容器、注
射器、アンプル、噴霧器、金属容器中に、容器のタイプおよび所望の用途に応じて1〜5
00mlの容量で充填した。
[実施例3(a):薬理学的研究:いろいろな植物タンニンを含有するグリセロールと比
較したグリセロール単独のフィルム保持能力の測定]
PCD豊富な植物抽出物(フィルム化性グリセロール)を含有する新しいグリセロール
フィルムの効果を、非PCDグリセロールフィルム(通常のグリセロール)と比較して同
じ条件下で研究するために実験を行った。この研究の目的は、生体膜によるグリセロール
フィルムの保持を改良する個々のPCD、またはそれらの組合せを選択することであった
試験モデル:
生体表面によるフィルム保持の持続時間を研究するためのいかなる具体的なインビボモ
デルもないので、ヒト多層表皮のインビトロモデルを使用して、非細胞毒性濃度のいろい
ろなPCD豊富な植物抽出物の単独またはいろいろな組合せの添加のグリセロールフィル
ム保持に対する効果を評価した。ヒト表皮を浸透性のポリカーボネートフィルター(直径
1cm)上で増殖させ、インビボの場合と同様に、培地を浸したスポンジ上に保った。そ
の外面は空気と接触させたままであった。培地は毛管作用によってポリカーボネートフィ
ルターを通って拡散し、表皮細胞に栄養を供給して細胞を生きている状態に保つ。
1つまたは2つの追加のポリカーボネートフィルターを挿入すると培地と細胞との間の
間隔が増大し、次いで細胞に到達する利用可能な培地の量が減少し、栄養素および水和が
ないと細胞は死ぬ。細胞死はバイタルMTT染色(Ferrari MJ.J Immu
nol methods 13(2)、165〜172、1990)によって測定するこ
とができる。生きている細胞の割合は表皮の表面によるグリセロールフィルムの保持の持
続時間に比例する。
試験製品:
0.1〜5.0%で変化する濃度で試験製品(主としてPCD豊富な植物抽出物)を含
有する様々なグリセロール製剤。植物抽出物をフィルム物質に加えてフィルムの細胞付着
特性に対する効果を研究した。
表皮当たりの適用した試験製品の量:20μl
露出の方法:
グリセロール製剤を、ピペットの助けを借りて薄い層として表皮に直接適用した(濃度
当たりn=6)。表皮を2つのフィルターの上に載せ、試験製品を表皮表面に適用した。
フィルターをスポンジ上に保持し、これを適当な量の培地を含有するペトリ皿に挿入して
細胞に栄養を供給した。実験期間中、6時間、24時間および48時間の時点で細胞培養
フィルターを静かに取り出し、血清を含まない培地中で20秒間撹拌して製品フィルムを
剥離させた(フィルムまたはフィルム成分が表皮の表面にうまく付着しなかったとき)。
表皮上に浸透フィルムがないと、細胞への液体培地の供給が最小になって細胞死を引き起
こす。グリセロール中の各試験製品濃度に対して得られた初期の結果に従い、植物タンニ
ンの濃度を増大または減少して最大のフィルム形成効果を得た。
露出条件:37℃、5%CO、72時間。
細胞生存率測定:
MTT着色および組織学的分析。細胞生存率は次のようにスコアを付けた。
スコア4:100%細胞(対照との比較)、濃い青色
3:およそ75%生細胞、濃い青色
2:およそ50%生細胞、中間の青色
1:およそ25%生細胞、薄い青色
0:生細胞なし、白っぽい表皮の色。
各実験中、各時点で6つの表皮に対して得られたスコアを平均して細胞生存率を決定し
た。次に3つの個々の実験の平均スコアを平均して、グリセロール単独で処置した細胞と
比較した平均細胞生存率パーセントを計算した。
対照:
陽性対照:試験製品なしだが、試験製品と同じ試験条件にする。これらの条件下ではほ
ぼ95〜100%の細胞が72時間以内に死ぬ。
グリセロール対照:陽性対照と同じだが、いかなるPCD抽出物も含まないグリセロー
ルを培養表面に適用したことを例外とする。これらの条件下では乏しい栄養供給のためほ
ぼ60〜70%の細胞が72時間以内に死ぬ。
結果:
72時間後の細胞生存率%は次の通りであった。
陽性対照:6.32(±2.4)%
グリセロール単独:23.85(±4.8)%。これは陽性対照と比較して17.53
%高い細胞生存率を意味する。これは、グリセロールが浸透効果を発揮して細胞に栄養を
供給し続け、水和し続けることを示す。
フィルム化性グリセロール:PCD豊富な植物抽出物または合成のポリマーを0.1〜
5.0%の濃度でグリセロールに添加すると、細胞生存率は以下のような影響を受けた。
非常に高いグリセロールフィルム保持能力(グリセロール単独と比較して+200〜+
300%の生細胞):
(1)ビルベリー単独、ならびに(2)ビルベリー(果実抽出物)+クランベリー(果
実抽出物)、ブドウ(種子抽出物)+セイヨウニワトコ(果実抽出物)、チャノキ(葉抽
出物)+ビルベリー、ビルベリー+セイヨウニワトコ、チャノキ+ブドウ+セイヨウニワ
トコ、ブドウ+セイヨウニワトコ+ダイズ(種子抽出物)、クランベリー+チャノキ+ブ
ドウ、およびクランベリー+チャノキ+ビルベリー+ブドウのPCD豊富な植物タンニン
の組合せ由来のPCD。
高いフィルム保持能力(グリセロール単独と比較して+100〜+199%の生細胞)

(1)アカシア(樹皮および植物全体)、ナツシロギク(花および葉)、セイヨウシロ
ヤナギ(植物全体)、ヤクヨウサルビア、マンネンロウ、クランベリー、ブドウ、チャノ
キ、セイヨウニワトコ、ウチワサボテン属種(果実)単独、および(2)シナトネリコ+
イチョウ、シナトネリコ+イチョウ+チャノキ、ブドウ+クロスグリの組合せ由来のPC
D。
中程度のフィルム保持能力(グリセロール単独と比較して+10〜+99%の生細胞)

マクワ(果実)、キイチゴ属種(果実)、コナラ属種(果実、樹皮)、マツ属種(樹皮
、果実)。
中程度のフィルム化活性はまた、シンタン含有ポリマー(例、イタリアのSilvat
eam s.p.a.から購入することができるBlancotan SH2およびLe
dosol CRP)または ポリマー性樹脂(例えば、インドのArihant Dy
echem社から購入することができるアニオン性窒素含有ポリマー性樹脂Aritan
A7)のような合成のポリマーでも得られた。
結論:
これらの結果は、多くの異なるタンニン、殊に天然または合成のダイマー乃至ペンタマ
ーのカテキンが、グリセロール分子に結合することによりフィルム化性グリセロールを生
成することができ、生体表面を覆うグリセロールフィルムの機械的な性質を改良すること
ができるということを立証している。
実施例2で調製された製剤のフィルム化性を測定するために、グリセロールのフィルム
化性が増大したことを間接的に示す試験を行った。
[実施例3(b):薬理学的研究:インビトロでフィルム化性グリセロールと比較したグ
リセロール単独の溶解度の測定]
自身の浸透圧活性を通して引き付けられる水中溶解度に対するグリセロールの機械的抵
抗に及ぼすタンニンの添加の効果を確かめるために、本発明者らはグリセロール単独対フ
ィルム化性グリセロール(1%のタンニン豊富な植物抽出物を含有する)の熱重量分析(
TGA)を行った。それぞれの試験物質のフィルムを一定の温度(30℃)および相対湿
度(20%)の雰囲気に曝露し、時間に関連する質量増大を測定した。こうして水溶解度
を定量することができた(図1)。
予備的な結果は、タンニンが水中グリセロールの溶解度を低下させることを示している
。低下した溶解度は、タンニンがグリセロールのヒドロキシル基の幾らかを占め、したが
ってこれらの基が水分子との結合に使用できなくなることが原因であると推定される。
[実施例3(c):薬理学的研究:糖尿病性潰瘍におけるフィルム化性グリセロールと比
較したグリセロール単独のフィルム保持持続時間の測定]
インビボでのグリセロールのフィルム化能力:およそ4(±1.5)cmの表面積に
わたる糖尿病性潰瘍を有する患者で実験を行った。2mlのグリセロール(群1、n=6
潰瘍)または2mlのフィルム化性グリセロール(群2、n=6潰瘍)を創傷表面に適用
し、適用後創傷を垂直の位置に保った。創傷流体のサンプル(100μl)を1時間毎に
6時間にわたり集め、グリセロールの量を測定した。
以下の結果が得られた(図2参照)。
結果は、この研究の実験条件下で、通常のグリセロールはほぼ92%が1時間以内に、
100%が2時間以内に除去され、これと比較してフィルム化性グリセロールではたった
34%および56%の低下が見られたことを示した。フィルム化性グリセロールの活性は
6時間持続した。
[実施例4:タンニン−グリセロール結合およびフィルム化性グリセロールの生成の測定
の結果]
実施例3の薬理学的研究に示されているように、単独または様々な組合せとしていろい
ろな濃度でグリセロールと混合された42のタンニン豊富な植物抽出物のうち、次の植物
タンニン(PCD)がいろいろな程度のフィルム化性を示した。
非常に高いフィルム化性:6つの植物抽出物、ビルベリー、クランベリー、ブドウ、セ
イヨウニワトコ、チャノキおよびダイズが、グリセロール単独と比較してフィルム保持持
続時間を200〜300%増大したので、極めて高活性と分類された。グリセロールフィ
ルムの非常に高い特性は、(1)ビルベリー単独に由来するPCD、ならびに(2)ビル
ベリー(果実抽出物)+クランベリー(果実抽出物)、(3)ブドウ(種子抽出物)+セ
イヨウニワトコ(果実抽出物)、(4)チャノキ(葉抽出物)+ビルベリー、(5)ビル
ベリー+セイヨウニワトコ、(6)チャノキ+ブドウ+セイヨウニワトコ、(7)ブドウ
+セイヨウニワトコ+ダイズ(種子抽出物)、(8)クランベリー+チャノキ+ブドウ、
および(9)クランベリー+チャノキ+ビルベリー+ブドウのPCD豊富な植物タンニン
の組合せで得られた。
高いフィルム化性:9つの植物抽出物、アカシア(樹皮および植物全体)、ナツシロギ
ク(花および葉)、セイヨウシロヤナギ(植物全体)、ヤクヨウサルビア、マンネンロウ
、シナトネリコ、イチョウ、クロスグリ(果実)、およびウチワサボテン属種(果実)、
ならびにAritan−A7、Ledosol CRP、およびBlancotan S
H2のような合成ポリマーが、グリセロール単独と比較してフィルム保持持続時間を10
0〜200%増大したので、高活性と分類された。
中程度のフィルム化性:4つの植物抽出物、マクワ(果実)、キイチゴ属種(果実)、
コナラ属種(果実、樹皮)、マツ属種(樹皮、果実)が、グリセロール単独と比較してフ
ィルム保持持続時間を10〜99%増大したので、中活性と分類された。
これらの結果は、1.タンニンはグリセロールと結合する、2.幾つかの植物タンニン
はグリセロール分子と非常に強く結合するが、他のものはより弱い強さで結合することを
示している。これは、グリセロールのタンニンとの結合が特異的であることを示しており
、3.タンニンのグリセロールへの結合は、タンニンがグリセロールに添加されると直ぐ
に始まる、4.タンニンのダイマー、トリマーおよびペンタマーがポリマーまたは大きい
縮合型タンニンと比較してより強い結合およびフィルム形成効果を示す。これは、より小
さいタンニン分子がグリセロールと結合する多重の可能性を有するという事実と関連して
いるかもしれない。ほぼ50%のPCD−グリセロール結合が両方の成分を混合し保存し
たときに起こり、残りの50%は溶液を皮膚または粘膜表面の上に薄いフィルムとして適
用したときに起こる。合成のポリマーもグリセロール分子に結合してグリセロールフィル
ムのフィルム保持持続時間を改良することができる。
これらの知見に基づいて、フィルム化性グリセロールは、グリセロールまたはその他の
あらゆるポリオール溶液をグリセロール結合性植物PCDと混合することによって、製造
することができる。
[実施例5:皮膚および粘膜の感染症の治療用製剤の例]
実施例2に詳述したようにしていろいろなフィルム化性グリセロール製剤を調製した。
パーセントは乾燥したPCD豊富な植物抽出物のwt/wtを意味する。
1.外傷性口腔潰瘍を治療するために10mlのチューブに充填した、グリセロール−
69.22%、クランベリー抽出物−0.18%、ビルベリー抽出物−0.18%、賦形
剤:ハチミツ−29.0%、水−1.42%。
2.口腔粘膜炎の治療用に20mlの噴霧器に充填した、グリセロール−72.92%
、クランベリー抽出物−0.30%、ビルベリー抽出物−0.36%、賦形剤:ハチミツ
−12.0%、水−14.42%。
3.咽喉適用用に30mlの噴霧器に充填した、グリセロール−74.265%、ブド
ウ種子抽出物−0.48%、S.nigra(E.elder)(セイヨウニワトコ)果
実抽出物−0.32%、賦形剤:ハチミツ−12.0%、水−12.935%。
4.小児の咽喉適用用に20mlの噴霧器に充填した、グリセロール−73.94%、
ブドウ種子抽出物−0.48%、S.nigra(E.elder)(セイヨウニワトコ
)果実抽出物−0.32%、ダイズ種子抽出物0.07、賦形剤:ハチミツ−12.0%
、水−13.19%。
5.副鼻腔炎の治療用に15mlのプラスチック噴霧器に充填した、グリセロール−3
2.488%、クランベリー抽出物−0.12%、ビルベリー抽出物−0.12%、チャ
ノキ抽出物−0.22%、S.nigra(E.elder)(セイヨウニワトコ)果実
抽出物−0.10%、賦形剤:水−66.952%。
6.床ずれの局所適用用に50mlのチューブに充填した、グリセロール−68.66
%、ビルベリー抽出物−0.18%、チャノキ抽出物−0.30%、賦形剤:ハチミツ−
29.0%、水−1.76%、キサンタンガム0.1%。
7.膣乾燥および感染症の治療用に10mlのカニューレ付きチューブに充填した、グ
リセロール−99.16%、ビルベリー抽出物−0.18%、pH4.5とする量のクエ
ン酸、賦形剤:水−0.66%。
8.皮膚損傷の局所適用用に100mlのチューブに充填した、グリセロール−72.
06%、ブドウ種子抽出物−0.18%、賦形剤:ハチミツ27.0%、水−0.66%
、キサンタンガム0.10%。
9.口辺ヘルペス(口唇ヘルペス)の損傷部位への局所適用用に6mlのPETチュー
ブに充填した、グリセロール−76.166%、チャノキ抽出物−0.24%、ブドウ種
子抽出物−0.36%、S.nigra(E.elder)(セイヨウニワトコ)果実抽
出物−0.20%、賦形剤:ハチミツ−20.0%、水−2.934%、キサンタンガム
0.10%。
10.陰部ヘルペスおよび細菌性膣疾患を治療するために膣内適用用の10mlのカニ
ューレ付きチューブに充填した、グリセロール−97.48%、クランベリー抽出物−0
.18%、S.nigra(E.elder)(セイヨウニワトコ)果実抽出物−0.3
6%、pH4.5とする量のクエン酸、賦形剤:水−1.98%。
11.乾癬、湿疹および皮膚炎の損傷部位への局所適用用に50mlのチューブに充填
した、グリセロール−76.42%、クランベリー抽出物−0.12%、チャノキ抽出物
−0.48%、ブドウ種子抽出物−0.36%、賦形剤:ハチミツ−19.0%、水−3
.52%。
12.静脈下肢潰瘍の局所適用用に20mlのチューブに充填した、ソルビトール−9
4.7%、クランベリー抽出物−2.1%、アカシア3.2%。
13.糖尿病性潰瘍の局所適用用に50mlのチューブに充填した、グリセロール−9
0.60%、クランベリー抽出物−1.30%、セイヨウシロヤナギ−5.0%、賦形剤
:水−3.10%。
14.皮膚のやけどへの局所適用用に100mlのプラスチック容器に充填した、ソル
ビトール−74.265%、ブドウ種子抽出物−0.48%、S.nigra(E.el
der)(セイヨウニワトコ)果実抽出物−0.32%、賦形剤:ハチミツ−12.0%
、水−12.935%。
15.慢性創傷への局所適用用に10mlの注射器に充填した、ソルビトール−73.
94%、ブドウ種子抽出物−0.48%、S.nigra(E.elder)(セイヨウ
ニワトコ)果実抽出物−0.32%、ダイズ種子抽出物0.07、賦形剤:ハチミツ−1
2.0%、水−13.19%。
16.インフルエンザを治療するために咽喉適用用に50mlの噴霧器に充填した、ソ
ルビトール−32.488%、クランベリー抽出物−0.12%、ビルベリー抽出物−0
.12%、チャノキ抽出物−0.22%、S.nigra(E.elder)(セイヨウ
ニワトコ)果実抽出物−0.10%、賦形剤:水−66.952%。
17.慢性乾燥潰瘍の治療用に100mlのチューブに充填した、キシリトール−68
.66%、ビルベリー抽出物−0.18%、チャノキ抽出物−0.30%、賦形剤:ハチ
ミツ−29.0%、水−1.76%、キサンタンガム0.1%。
18.細菌性膣疾患を治療するために膣内導入用に4mlの胚珠に充填した、グリセロ
ール−95%、ビルベリー抽出物−5.0%、pH4.5とする量のクエン酸。
19.慢性創傷への適用用のポリエステル包帯を浸すのに使用される、グリセロール−
50%、キシリトール−20%、ブドウ種子抽出物−1.0%、賦形剤:ハチミツ28.
8%、キサンタンガム0.20%。
20.4×5cmの綿ガーゼに振りかけた、400mgのブドウ抽出物、350mgの
クランベリー、100mgのビルベリーおよび150mgの粉末化コメデンプンを含有す
る1gの植物タンニン製剤。最初に純粋なグリセロールを損傷した表面(慢性潰瘍の表面
10cmに6ml)に適用し、振りかけたタンニン部分を創傷表面に向けて創傷表面を
包帯で覆う。
21.グリセロール(82%)、S.nigra(E.elder)(セイヨウニワト
コ)の0.5%植物抽出物および17.5%のハチミツを含有する溶液に浸し、アルミニ
ウム袋に詰めた、5×5cmの綿非粘着性ガーゼ−タイプの包帯。ガーゼは、損傷した表
面に局所的に直接貼付する。
22.床ずれ、糖尿病性潰瘍および静脈下肢潰瘍の局所適用用にヒドロゲル中で混合さ
れ、架橋ポリマー表面に固定された(ポリマー表面10cmに付き10g)、グリセロ
ール−76.0%、チャノキ抽出物−0.5%、ブドウ種子抽出物−0.5%、S.ni
gra(E.elder)(セイヨウニワトコ)果実抽出物−0.5%、賦形剤:ハチミ
ツ−22.5%。
23.慢性の床ずれおよび糖尿病性潰瘍のための創傷治癒用包帯として可撓性の酸化亜
鉛ナノ複合体包帯に吸着された、グリセロール−97.48%、クランベリー抽出物−2
.10%、S.nigra(E.elder)(セイヨウニワトコ)果実抽出物−0.4
2%。
24.床ずれの局所適用用に50mlのチューブに充填した、グリセロール−68.6
6%、Aritan−A7−0.18%、シナトネリコ−0.30%、賦形剤:ハチミツ
−29.0%、水−1.76%、キサンタンガム0.1%。
25.膣乾燥および感染症の治療用に10mlのカニューレ付きチューブに充填した、
グリセロール−99.16%、クロスグリ(R.nigrum)抽出物−0.18%、p
H4.5とする量のクエン酸、賦形剤:水−0.66%。
26.皮膚損傷への局所適用用に100mlのチューブに充填した、グリセロール−7
2.06%、イチョウ根抽出物−0.18%、Blancotan SH2 0.20%
、賦形剤:ハチミツ27.0%、水−0.46%、キサンタンガム0.10%。
27.乾癬、湿疹および皮膚炎の皮膚損傷部位への局所適用用に50mlのジャーに充
填した、グリセロール99.5%、Ledosol CRP粉末0.5%。
28.ウィルス性咽喉および静脈洞感染を治療するために咽喉表面への局所適用用に5
0mlの容器に充填した、グリセロール30%、ハチミツ69.5%、シナトネリコの乾
燥抽出物0.50%。
[実施例6:凍結保存実験;グリセロール対フィルム化性グリセロールに関する比較研究

この研究の目的は、生きている組織表面を覆ってグリセロールフィルムを形成すること
ができるグリセロール単独またはタンニンもしくはポリマーとの組合せの保護効果を比較
すること、および細胞生存率に対して得られる効果を評価することであった。
使用した生きている細胞および組織:
血管ヒト平滑筋細胞(SMC)、皮膚線維芽細胞、ラット腎臓上皮細胞、MDBKおよ
びMDCK細胞株の初代培養物を25cmのプラスチック組織培養フラスコで増殖させ
た。細胞をトリプシン−EDTA溶液で分散させ、培地で洗浄し、1×10細胞/ml
を含有する細胞懸濁液を調製した。また、非接着性細胞のサンプルとしてヒト血液リンパ
球の懸濁液も調製した。同様に、病院用に集めた新鮮な生きているヒト皮膚サンプルを1
cmの断片に切断し、各皮膚サンプルの2つの断片を以下に挙げるいろいろな培地中に
凍結保存した。
(1)5%DMSO、10%FCSおよび100mlとする量の培養培地、(2)2%
DMSO+10%血清および100mlとする量の培養培地、(3)グリセロール20%
、FCS10%、2%DMSOおよび100mlとする量の培養培地、または(4)グリ
セロール20%、植物PCD1%、FCS10%、DMSO2%および100mlとする
量の培養培地(フィルム化性グリセロールといわれる)を含有する4つの凍結用培地をD
MEM(ダルベッコ最小必須培地)中で調製した。培地は使用するまで2°〜8℃で貯蔵
した。適当な凍結用培地は特定の細胞株に依存することに留意。
細胞懸濁液をおよそ100〜200×gで5〜10分遠心し、細胞ペレットを掻き乱す
ことなく上澄みをデカントした。細胞ペレットを1×10細胞/mlの密度で冷たい凍
結用培地に再懸濁させた。細胞懸濁液の試料を低温貯蔵バイアル中に分配し、温度をおよ
そ1℃/分で−70℃まで低下させる制御された速度の凍結装置で凍結した。次に組織お
よび細胞培養バイアルを液体窒素容器(−196℃)に移し、6カ月間保った。同じ技法
を皮膚移植組織に対して使用した。
解凍するために、アンプルを取り出し、室温におよそ1分間放置した後、完全に解凍す
るまで2〜3分37℃の水浴に移した。アンプルを70%アルコールで拭った後無菌の環
境に開放した。細胞を、5%FCSを含有する10mlのDMEMで希釈し、遠心し、ペ
レット化し、培養培地に再希釈し、生きている細胞の数をトリパンブルーおよびMTT染
色を使用して決定した。
同様にして皮膚移植組織を処理したが、これら移植組織は5つの薄片に切断し、15m
lの細胞増殖培地を10%FCSと共に含有する25cmの組織培養フラスコに導入し
、10日間増殖させた。10日間の培養後、増殖する移植組織細胞をトリプシン−EDT
A溶液で分散させ、細胞懸濁液を調製し、生きている細胞の数をカウントした。
結果:
生きている細胞培養細胞の平均数は:(1)培養培地中5%DMSO、10%FCS=
65.2%、(2)培養培地中2%DMSO+10%血清=62.6%、(3)培養培地
中20%グリセロール、10%FCSおよび2%DMSO=68.4%、(4)培養培地
中に1%植物PCD、10%FCS、2%DMSOを含有する20%グリセロール(フィ
ルム化性グリセロールといわれる)=91%。
生きている皮膚移植組織細胞の平均数は:(1)培養培地中5%DMSO、10%FC
S=51.1%、(2)培養培地中2%DMSO+10%血清=54.9%、(3)培養
培地中20%グリセロール、10%FCSおよび2%DMSO=63.3%、(4)培養
培地中20%グリセロール、クランベリー(0.5%)およびクロスグリ(0.5%)由
来の1%植物PCD、10%FCS、2%DMSO(フィルム化性グリセロールといわれ
る)=83.8%。
結論:フィルム化性グリセロールは、個々の分散した細胞および組織移植組織の凍結保
存に対して、グリセロール単独と比較してかなり効率的である。
[実施例7:凍結保存剤フィルム化性グリセロールの例]
実施例2に詳述したようにいろいろな製剤を調製した。割合パーセントは、乾燥したP
CD豊富な植物抽出物重量を基準にしたwt/wtを示す。
1.分散した生きている細胞を貯蔵するために使用される、グリセロール20%、ビルベ
リー0.5%、アカシア(A.catachu)0.4%、およびセイヨウシロヤナギ(
S.alba)0.1%の植物PCD、DMSO5.0%、ウシ胎児血清20%、100
mlとする量の培養培地。
2.100%とする量の培養培地中のグリセロール20%、植物PCD1%(クランベリ
ー0.5%およびクロスグリ0.5%由来)、FCS10%、DMSO2.0%。
3.移植し輸送する前に皮膚移植組織を貯蔵するのに使用される、グリセロール10%、
ブドウ種子1.0%およびセイヨウニワトコ0.5%の植物PCD、DMSO2.0%、
ウシ胎児血清10%、100mlとする量の培養培地。
[実施例8:実施例5の製剤番号2に従った植物PCDの1%の組合せを含有するグリセ
ロール(コード−Orosol)と比較したグリセロール単独のインビトロ浸透性]
口腔または膣粘膜からの低張性液体の浸透滲出を擬するためのインビボモデルがないの
で、ポリカーボネートフィルター上で空気/液体段階に増殖させた正常なヒト上皮細胞を
含有するヒト表皮の細胞培養モデルを使用した。最適の条件下で、粘膜表面と粘膜表面と
同等の多層の細胞培養がポリカーボネート支持体上に得られる。この支持体を規定量の培
養培地と接触したスポンジ上に置く。培地はスポンジおよびフィルター内に拡散し、水分
補給と共に栄養素を細胞に供給する。これらの条件下で、細胞培養は少なくとも1週間生
きている状態に保つことができる。
粘膜の乾燥状態の実験モデルを製作するために、本発明者らは1つまたは2つの余分の
フィルターを細胞とスポンジの間に挿入することにより、細胞が利用可能な液体培地の量
を減らした。水分補給がないと細胞は死に、細胞の死亡率は生体染色色素MTTを用いて
測定することができる。細胞の死亡率は培養表面の乾燥度に比例する。
浸透活性な高張性の溶液を乾燥に曝露された表皮表面に適用すると、培養培地は浸透現
象により表皮の方に引き付けられ、細胞が利用可能な培地の量を増大する。したがって細
胞生存率は浸透現象および細胞の水分補給の程度に比例する。
この研究の目的は、フィルム化性グリセロールの水分補給特性を通常のグリセロールと
比較して評価することであった。製品を正常な(フィルターなし)、やや脱水した(1つ
のフィルター)またはひどく脱水した(2つの余分のフィルター)表皮の表面に適用し(
20μl)、細胞を37℃−5%COで1週間インキュベートした。第1、3および5
日目に培養物を培養培地中で20秒間撹拌することにより各表皮を洗浄し、7日目にMT
T染色を用いて細胞生存率を測定した。
1週間培養後の細胞生存率の平均スコアは次の通りであった。
1.通常の湿った培養(フィルターなし):100%
2.一部脱水した対照(製品なし):43.11%
3.ひどく脱水した培養(製品なし):11.57%
4.一部脱水した培養(グリセロールあり):62.3%
5.ひどく脱水した培養(グリセロールあり):43.15%
6.一部脱水した培養(フィルム化性グリセロールあり):89.46%
7.ひどく脱水した培養(フィルム化性グリセロールあり):77.89%
結論:フィルム化性グリセロールは通常のグリセロールと比較してより長い期間にわた
って表皮の表面上に残留し、より高い浸透効果をもち、脱水に対して細胞を保護する。
[実施例9:通常のグリセロールと比較したフィルム化性のインビボラット創傷治癒特性

実験的損傷部位の誘導の方法:
ラット背部皮膚の毛を剃り、直径と深さが0.8mmの3つの円形の損傷部位を皮膚採
取器により角皮下層に作成した。0.2mlの各試験製品を7日間連続して各々の損傷部
位に適用した。損傷部位の直径を毎日測定し、平均値を比較した。
試験製品:
群1:蒸留水、群2:グリセロール単独、群3:実施例番号6.によるフィルム化性グ
リセロール(各群10匹のラット)。
結果:
平均の損傷部位の大きさ(7日間の直径/日/損傷部位)は、蒸留水群=3.32cm
、グリセロール群=2.95cm、フィルム化性グリセロール群=2.03cm
あった。
結論:
グリセロール単独でも治癒を促進するが、治癒速度はフィルム化性グリセロールの適用
の方がかなり速かった。
グリセロールおよびタンニン製剤の安定性:
実施例に挙げた製剤の30℃±2℃および40℃±2℃で36カ月の貯蔵の間の安定性
を評価するために研究を行った。製剤は最低36カ月間安定であった。
内容物−容器相互作用:
実施例に挙げた製剤をプラスチック(PE、PET)チューブおよびアルミニウム容器
に充填し、規則的な間隔で内容物を分析して内容物と容器との間の相互作用を評価した。
調製直後および37℃で12カ月貯蔵後のサンプルの赤外分光分析は、内容物と容器との
間に何の相互作用もないことを示していた。
使用中安定性:
実施例に挙げた組成物のサンプルの使用期間中の分解または夾雑を検討した。得られた
結果から、1〜3カ月の期間製品の使用時の安定性が確認された。
細胞毒性:
NF−ISO 10993ガイドラインに従って評価したフィルム化性グリセロールの
細胞毒性は、製品はL929細胞の培養培地中で5%の濃度まで細胞毒性でないことを示
した。
過敏性:
この研究は、実施例の製剤番号2、3、および5を用いて、FDA Good Lab
oratory Practice(GLP)Regulations(21 CFR、
Part 58、2005年4月1日)およびOECD Good Laborator
y Practices,reference ENV/MC/CHEM(98)17(
1997年11月26日の会議の決定により採択された)の要件に従って行った。
製品を皮内に注射し、また毛を剃ったモルモットの皮膚にパッチを用いて局所的に直接
適用して、局所反応および遅延過敏性を評価した。比較のために、同じ陰性対照試験を0
.9%NaCl溶液の皮内注射および局所適用により行った。製品は皮内注射により皮膚
を感作したが局所適用では感作を誘発しなかった。
インビボ経口毒性:
実施例番号2、7、8および20によるフィルム化性グリセロールのサンプルを5g/
kg体重の用量でラットに投与した。研究はGLP規格に従って行った。全く異常がなか
ったので、急性致死量は試験した全ての製品で5g/kg超と見積もられた。
局所刺激:
研究は、実施例試験製品組成物番号2、7、9、10および12を用いて、1982年
2月21日のフランス共和国の官報に公表された皮膚およびインビトロBCOP眼刺激試
験のプロトコルに従って行った。原発性皮膚刺激指数は0.50未満であり、製品は皮膚
に対して非刺激性と分類された。平均のBovine Corneal Opacity
指数は全ての製品に対して10〜25であり、したがって製品は眼に対してやや刺激性と
分類された。
[実施例11:臨床効果]
本明細書に記載した組成物の実施例に従っていろいろな製剤を調製し、組成物の臨床効
果を皮膚または粘膜の症状を有する患者で評価した。研究の概要を以下に示す。
[研究1:乾癬、湿疹および皮膚炎の治療に関するグリセロール単独対フィルム化性(実
施例5の製剤番号11−VB−DERMといわれる)の治療効果]
乾癬、湿疹および皮膚炎(PED)の皮膚障害を有する107人の患者に対して6週に
わたる一重盲検試験を実施し、実施例5の製剤番号11による組成物の臨床効果を乾癬、
湿疹または皮膚炎(PED)に基づく皮膚障害の治療に関してグリセロール単独と比較し
た。56人の患者はフィルム化性グリセロール製剤VB−DERM(フィルム化性グリセ
ロール群)で、51人はグリセロール単独(対照群)で治療した。製品は6週間の間1日
に2回局所的に適用した。傷害を0、1、2、4および6週でスケール0〜4に評価した
研究の間中、乾癬、湿疹、および皮膚炎に対するフィルム化性グリセロール製剤(VB
−DERM)の効果の非常に陽性の結果が観察された。
6週間にわたり規則的な時間間隔で記録されたスコアの分析により、フィルム化性グリ
セロールはグリセロール単独と比較してPED傷害の治療中効果的であることが明確に立
証された(図3、4および6)。フィルム化性グリセロールの創傷の清浄化および治癒効
果は、紅斑および掻痒、浮腫、乾燥、滲出、錆皮落としおよび痂皮形成、ならびにかゆみ
のような病気に伴う全ての症状を治療するのに統計的に有意であった(p<0.005)
。治療の開始後2週から研究者および患者により評価されたクオリティーオブライフもま
た有意に改良された(図5)。
これらの結果は、フィルム化性グリセロールが、かなり長い期間PED損傷部位の表面
上に存続することにより、損傷部を全ての遊離の夾雑物質(死細胞、細胞残屑、タンパク
質分解酵素、MMP、サイトカイン、インターロイキン、インターフェロン、ウィルス、
細菌、ダスト粒子)がない状態に保ち、正常な皮膚細胞生成を回復させることを示してい
る。このように、フィルム化性グリセロールは、過度の皮膚増殖、損傷部位における夾雑
物質の存在、傷害の部位における死細胞、サイトカイン、MMP、およびその他のタンパ
ク質分子のような複数の自由浮動性の不純物の関与を伴う皮膚の病気の治療に関して、非
フィルム化性グリセロールと比較してかなり高活性である。これらの夾雑物質は損傷部位
から永久的に除去され、正常な皮膚増殖のために好都合の下地がもたらされる。
[研究2:陰部ヘルペスの治療に対するグリセロール単独およびフィルム化性グリセロー
ル(実施例5の製剤番号10による組成物(HG−VB))の治療効果]
陰部ヘルペスおよび感染症を患う女性で、通常の標準的なグリセロールと比較してフィ
ルム化性グリセロール(HG−VB)の効果を評価するために、非盲検単一群前向き多施
設予備的研究を実施した。
陰部ヘルペスの目に見える損傷部位を有する60人の女性を連続14日間HG−VB(
10ml/日)で治療した。製品を毎日膣腔に投与し、治療前ならびに1日目(2時間)
、4日目、7日目、および14日目に陰部ヘルペスの症状を評価した。生殖器の損傷部位
からの塗抹標本も収集し、Tzanck試験を用いてウィルス負荷多核化巨大細胞の数を
評価した。20人の女性を同じ臨床条件下でグリセロールのみで治療した。
結果:HG−VBの最初の適用から2時間後、グリセロール単独での治療と比較して、
膣のかゆみ、発赤、疼痛、乾燥、うみ、水ぶくれの存在、および膣内pHの正常化におけ
る統計的に有意な低下が観察された。この研究の結果は、フィルム化性グリセロールが、
作用の持続時間がより短い(0.5〜1時間)グリセロール単独と比較して、6〜8時間
にわたって膣腔の内部部分から低張性液体を排出させ続け、全ての夾雑物質を除去するこ
とを明確に立証していた。
[研究3:口唇ヘルペス損傷部位の表面上に存在する遊離のウィルス粒子を排除する際の
グリセロール単独およびフィルム化性グリセロール(実施例5の製剤番号9によるPCD
豊富な植物抽出物を伴うグリセロール(HL−VB))の効果]
開いた口唇ヘルペス損傷部位を有する60人の患者に対して、非盲検単一群前向き多施
設予備研究を実施した。30人の患者を通常のグリセロールで、30人は数滴の製品を適
用することによりHL−VBで、各群同様に、1日に2回最大で連続14日間治療した。
口唇損傷部位塗抹標本を収集し、Tzank試験を用いて各損傷部位の多核化ウィルスに
感染した巨大細胞の数を定量することにより平均ウィルス濃度を測定し、遊離のウィルス
粒子の平均の量を両方の群で決定した。
遊離のウィルス粒子の平均の量は、1、4、7および14日に、グリセロールで治療し
た群で>750、635(±17.51)、542(±22.35.)、および522(
±13.50)であり、これと比較してそれぞれ465(±10.8)、359(±6.
35)、226(±10.22)、および0.0であった。これらの結果は、HL−VB
、すなわちPCDを含有するグリセロールすなわちフィルム化性グリセロールが、グリセ
ロール単独よりも長い期間その効果を発揮することを示している。
[研究4:グリセロール単独およびフィルム化性グリセロールといわれるPCD豊富な植
物抽出物を伴うグリセロール(実施例5の製剤番号5による組成物(G−PCD))の、
副鼻腔炎を患う患者において洞開口部をブロックする細菌性生体膜を開く効果]
鼻腔静脈洞感染の急性症状を患う患者におけるグリセロール単独と比較したG−PCD
の21日の比較臨床試験を行った。
この研究の目的は、グリセロール単独(32%グリセロール、水中)と比較した実施例
番号5によるG−PCD溶液(32%グリセロール、1%植物PCD、水中)の洞を開く
効果を評価することであった。急性および慢性の副鼻腔炎を患う127人の患者のうち、
109人を研究用に選択した。58人の患者をG−PCDで、51人をグリセロールで治
療した。製品はスプレーとして(各治療適用に3人)、1日に2〜3回最大21日間投与
した。
検討したパラメーターは、1.鼻づまりおよび鼻水に対する効果、2.副鼻腔表面の周
辺に圧力をかけた際の疼痛に対する効果、3.静脈洞感染に関する患者の全体症状、4.
抗生物質療法に対する影響であった。30分、3日および7日後に記録された結果は、グ
リセロール群と比較してG−PCD群では、鼻づまり(−20.40%、−19.09%
および−30.25%と比較して−31.02%、−57.23%および−73.79%
)、副鼻腔痛(−1.69%、−8.36%および−53.36%と比較して−6.91
%、−79.02%および−85.18%)、ならびに全副鼻腔炎症状(−22.56%
、+3.52%および−17.62%と比較して−4.15%、−69.84%および−
79.89%)(図7)に関して有意に大きい症状低下を示した。鼻水の強さは最初の製
品投与から30分以内にグリセロール群のたった31.71%と比較してG−PCD群で
は164.79%も増大した。これらの結果は、G−PCDがグリセロールと比較して同
じ条件下で非常に高い浸透圧を発揮し、生物膜を破壊して洞を開くことを示している。G
−PCD群では21%の患者のみが平均7.41日の間抗生物質療法を必要としたのと比
較して、グリセロール群では40%が10.5日間必要とした(図8)。
これらの結果は、フィルム化性グリセロールが標準的なグリセロール溶液と比較してよ
り長い期間鼻の粘膜表面の上に存続することを明確に示している。
[研究5:口腔粘膜炎損傷部位に対する、1%植物PCDを含有するグリセロール(実施
例5の製剤番号2によるフィルム化性グリセロール組成物(Orosol))と比較した
グリセロール単独の比較のフィルム化性グリセロールおよび浸透特性]
化学療法および放射線療法で誘発された口腔粘膜炎傷害は高度に損傷された口腔粘膜を
示し、損傷部位に感染および毒性化学品の存在が見られる。これはひどい痛み、灼熱感を
引き起こし、食事が困難になる。この研究に登録された全部で69人の患者のうち、48
人をOrosol溶液で、21人をグリセロールでスプレーとして治療した。製品は1日
に4〜5回28日間適用した。全体粘膜炎の程度、痛みおよび灼熱感の強さ、新しい潰瘍
の形成ならびに摂食障害に対する影響を治療前、最初の製品適用後30分ならびに1、2
、3、4、7、14、21および28日に評価した。グリセロール群と比較してOros
ol群では粘膜炎の治癒に統計的に有意な差が観察された(図9)。Orosol活性の
持続時間は対照群においてグリセロール単独と比較してほぼ3倍長く、治癒効果も比例し
て増大した。フィルム化性グリセロールは低張性液体をかなり長い時間引き付け、損傷部
位を清浄化し、回復を促進する助けになる。
これら5つの臨床研究の結果は、
1.植物PCDを含有するグリセロールは、グリセロール単独と比較して、損傷した表面
および粘膜の上に長く持続する高度に浸透性のフィルムを形成する
2.損傷した表面に対する清浄効果は、損傷部の上の浸透圧性グリセロールフィルムの保
持の持続時間に直接比例する
3.低張性液体の浸透滲出は、浸透活性フィルムの非薬理学的であるが機械的な特性に基
づいて、夾雑物質の性質に関わりなく全ての自由浮動性の夾雑物質を排除する
4.PCDを含有するフィルム化性グリセロールは安全で非刺激性である
ことを立証している。

Claims (15)

  1. グリセロールと植物タンニンとを含む局所適用のための製剤であって、前記植物タンニ
    ンが、前記グリセロールと結合して前記グリセロールがフィルム化性質を有するようにす
    る能力を有するものである製剤。
  2. 前記植物タンニンが、プロアントシアニジンから選択される請求項1に記載の製剤。
  3. 前記プロアントシアニジンが、ビルベリー、クランベリー、ブドウ、セイヨウニワトコ
    、チャノキ、ダイズ、アカシア、シナトネリコ、イチョウ、クロスグリ、ナツシロギク、
    セイヨウシロヤナギ、ヤクヨウサルビア、マンネンロウ、ウチワサボテン属種、マクワ、
    キイチゴ属種、コナラ属種、マツ属種、レム・エモディ、およびこれらの組合せから選択
    される植物の部分または植物全体から得られる請求項2に記載の製剤。
  4. 前記プロアントシアニジンが、ビルベリー、クランベリー、ブドウ、セイヨウニワトコ
    、チャノキ、ダイズ、およびこれらの組合せから選択される植物の部分または植物全体か
    ら得られる請求項2に記載の製剤。
  5. 前記プロアントシアニジンが、合成されたものである請求項2に記載の製剤。
  6. 前記製剤中の前記グリセロールの含有率が、30%〜99.99%(v/v)を構成す
    る請求項1から5のいずれか1項に記載の製剤。
  7. 活性成分をさらに含む請求項1から6のいずれか1項に記載の製剤。
  8. 前記活性成分が、薬剤、抗生物質、消毒剤、栄養素、抗体、増殖因子またはタンパク質
    から選択される請求項7に記載の製剤。
  9. 皮膚および粘膜の感染症の治療のための請求項1から8のいずれか1項に記載の製剤の
    使用。
  10. 細胞、組織または臓器を保護、輸送、貯蔵または凍結するための請求項1から8のいず
    れか1項に記載の製剤の使用。
  11. 最終溶液中のフィルム化性グリセロールの正味の濃度が、2〜50%(v/v)、好ま
    しくは10〜30%(v/v)、より好ましくは15〜20%(v/v)の範囲を有する
    請求項10に記載の使用。
  12. 生体の表面におけるグリセロールフィルムの保持時間を向上させる方法であって、この
    方法は、グリセロールと、グリセロール分子と結合する能力を有する植物タンニンとの溶
    液を調製し、この溶液を前記生体の表面に適用することによる方法。
  13. 皮膚および粘膜の感染症を治療する方法であって、請求項1から8のいずれか1項に記
    載の製剤を、罹患した場所に適用するステップを含む方法。
  14. フィルム化性グリセロールを調製する方法であって、グリセロールまたはポリオール溶
    液を、グリセロールと結合する植物タンニンと混合することを含む方法。
  15. 前記植物タンニンが、粉末または液体として添加される請求項14に記載の方法。
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CN102579702A (zh) * 2012-03-14 2012-07-18 山东赛克赛斯药业科技有限公司 一种治疗口腔溃疡的药物及其制备方法

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