以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
(実施の形態)
<半導体装置のデバイス構造>
まず、半導体装置のデバイス構造の一例について説明する。図1は、半導体装置のデバイス構造例を示す断面図である。図1において、例えば、シリコン単結晶からなる半導体基板1S上にMISFETQが形成されている。MISFETQは、半導体基板1Sの主面上に、例えば、酸化シリコン膜からなるゲート絶縁膜を有し、このゲート絶縁膜上にポリシリコン膜とこのポリシリコン膜上に設けられたシリサイド膜(ニッケルシリサイド膜など)の積層膜からなるゲート電極を有している。ゲート電極の両側の側壁には、例えば、酸化シリコン膜からなるサイドウォールが形成されており、このサイドウォール下の半導体基板1S内にソース領域とドレイン領域とがゲート電極に整合して形成されている。以上のようにして半導体基板1S上にMISFETQが形成されている。
続いて、図1に示すように、MISFETQを形成した半導体基板1S上にはコンタクト層間絶縁膜CILが形成されている。このコンタクト層間絶縁膜CILは、例えば、オゾンとTEOS(tetra ethyl ortho silicate)とを原料に使用した熱CVD法により形成されるオゾンTEOS膜と、このオゾンTEOS膜上に設けられたTEOSを原料に使用したプラズマCVD法により形成されるプラズマTEOS膜との積層膜から形成されている。そして、このコンタクト層間絶縁膜CILを貫通してMISFETQのソース領域やドレイン領域に達するプラグPLG0が形成されている。このプラグPLG0は、例えば、チタン/窒化チタン膜(以下、チタン/窒化チタン膜はチタンとこのチタン上に設けられた窒化チタンで形成される膜を示す)よりなるバリア導体膜と、このバリア導体膜上に形成されたタングステン膜をコンタクトホールに埋め込むことにより形成されている。チタン/窒化チタン膜は、タングステン膜を構成するタングステンがシリコン中へ拡散することを防止するために設けられている膜で、このタングステン膜が構成される際のWF6(フッ化タングステン)を還元処理するCVD法において、フッ素アタックがコンタクト層間絶縁膜CILや半導体基板1Sになされてダメージを与えることを防ぐためのものである。なお、コンタクト層間絶縁膜CILは、酸化シリコン膜(SiO2膜)、SiOF膜、あるいは、窒化シリコン膜のいずれかの膜から形成されていてもよい。
次に、コンタクト層間絶縁膜CIL上に第1層配線である配線L1が形成されている。具体的に、配線L1は、プラグPLG0を形成したコンタクト層間絶縁膜CIL上に形成された層間絶縁膜IL1に埋め込まれるように形成されている。つまり、層間絶縁膜IL1を貫通して底部でプラグPLG0が露出する配線溝に銅を主成分とする膜(以下、銅膜と記載する)を埋め込むことにより、配線L1が形成されている。
ここで、本明細書でいう「主成分」とは、部材(層や膜)を構成する構成材料のうち、最も多く含まれている材料成分のことをいい、例えば、「銅を主成分とする膜」とは、膜の材料が銅(Cu)を最も多く含んでいることを意味している。本明細書で「主成分」という言葉を使用する意図は、例えば、導体膜が基本的に銅から構成されているが、その他に不純物を含む場合を排除するものではないことを表現するために使用している。
層間絶縁膜IL1は、例えば、SiOC膜、HSQ(ハイドロジェンシルセスキオキサン、塗布工程により形成され、Si−H結合を持つ酸化シリコン膜、又は、水素含有シルセスキオキサン)膜、あるいは、MSQ(メチルシルセスキオキサン、塗布工程により形成され、Si−C結合を持つ酸化シリコン膜、又は、炭素含有シルセスキオキサン)膜から構成されている。ここで、配線L1が形成されている配線層は、本明細書でファイン層と呼ぶこともある。
続いて、配線L1を形成した層間絶縁膜IL1上には、第2層配線が形成されている。図1では、例えば、第2層配線として、配線幅の異なる幅広配線WL2と細幅配線NL2とが示されている。つまり、図1に示す第2層配線では、配線幅の大きな幅広配線WL2と、配線幅の小さな細幅配線NL2とが形成されている。すなわち、半導体装置では、例えば、第2層配線が形成されている同一配線層において、配線幅の異なる幅広配線WL2と細幅配線NL2とが形成されている。このとき、幅広配線WL2は、例えば、大きな電流を流す電源配線として使用される一方、細幅配線NL2は、それほど大きな電流を流す必要のない信号配線として使用される。ここでは、第2層配線に配線幅の異なる幅広配線WL2と細幅配線NL2とが形成されている例について説明しているが、その他の配線層においても、同一層に配線幅の異なる複数の配線が設けられている。
このように、層間絶縁膜IL1上には第2層配線が形成されているが、具体的には、配線L1を形成した層間絶縁膜IL1上にバリア絶縁膜BIF1(ライナー膜)が形成され、このバリア絶縁膜BIF1上に層間絶縁膜IL2が形成されている。バリア絶縁膜BIF1は、例えば、SiCN膜とこのSiCN膜上に設けられたSiCO膜の積層膜、SiC膜、または、SiN膜のうちのいずれか1つから形成されている。また、層間絶縁膜IL2は、例えば、空孔を有するSiOC膜、空孔を有するHSQ膜、あるいは、空孔を有するMSQ膜から形成されている。空孔のサイズ(径)は、例えば、1nm程度である。そして、このバリア絶縁膜BIF1および層間絶縁膜IL2には、幅広配線WL2、細幅配線NL2、プラグPLG1AおよびプラグPLG1Bが埋め込まれるように形成されている。このとき、プラグPLG1AとプラグPLG1Bは、同一サイズで、かつ、同一層に形成されている。上述した幅広配線WL2、細幅配線NL2、プラグPLG1AおよびプラグPLG1Bは、例えば、銅膜から形成されている。この幅広配線WL2および細幅配線NL2を含む第2層配線が形成されている配線層もファイン層と呼ばれる。
そして、図1に示すように、第2層配線と同様にして、第3層配線〜第4層配線が形成されている。具体的に、層間絶縁膜IL2上にバリア絶縁膜BIF2が形成され、このバリア絶縁膜BIF2上に層間絶縁膜IL3が形成されている。バリア絶縁膜BIF2は、例えば、SiCN膜とこのSiCN膜上に設けられたSiCO膜の積層膜、SiC膜、または、SiN膜のうちのいずれか1つから形成されており、層間絶縁膜IL3は、例えば、空孔を有するSiOC膜、空孔を有するHSQ膜、あるいは、空孔を有するMSQ膜から形成されている。このバリア絶縁膜BIF2および層間絶縁膜IL3には、第3層配線である配線L3およびプラグPLG2が埋め込まれるように形成されている。この配線L3およびプラグPLG2も、例えば、銅膜から形成されている。
続いて、層間絶縁膜IL3上にバリア絶縁膜BIF3が形成され、このバリア絶縁膜BI3上に層間絶縁膜IL4が形成されている。バリア絶縁膜BIF3は、例えば、SiCN膜とこのSiCN膜上に設けられたSiCO膜の積層膜、SiC膜、または、SiN膜のうちのいずれか1つから形成されている。また、層間絶縁膜IL4は、例えば、空孔を有するSiOC膜、空孔を有するHSQ膜、あるいは、空孔を有するMSQ膜から形成されている。このバリア絶縁膜BIF3および層間絶縁膜IL4には、第4層配線である配線L4およびプラグPLG3が埋め込まれるように形成されている。この配線L4およびプラグPLG3も、例えば、銅膜から形成されている。ここで、配線L3が形成されている配線層や、配線L4が形成されている配線層もファイン層と呼ばれる。
さらに、層間絶縁膜IL4上にバリア絶縁膜BIF4が形成され、このバリア絶縁膜BIF4上に層間絶縁膜IL5が形成されている。バリア絶縁膜BIF4は、例えば、SiCN膜とSiCO膜の積層膜、SiC膜、または、SiN膜のうちのいずれか1つから形成されている。また、層間絶縁膜IL5は、例えば、酸化シリコン膜(SiO2膜)、SiOF膜、TEOS膜から形成されている。バリア絶縁膜BIF4および層間絶縁膜IL5には、プラグPLG4および第5層配線である配線L5が埋め込まれるように形成されている。この配線L5およびプラグPLG4も、例えば、銅膜から形成されている。ここで、配線L5が形成されている配線層はグローバル層と呼ばれる。
続いて、層間絶縁膜IL5上には、第6層配線であるパッドPDが形成されている。パッドPDは、例えば、アルミニウムを主成分とする膜から形成されている。具体的に、パッドは、例えば、アルミニウム膜や、アルミニウムにシリコンを添加したAlSi膜や、アルミニウムにシリコンと銅を添加したAlSiCu膜から構成されている。
パッドPD上には、表面保護膜PAS(パッシベーション膜)が形成されており、この表面保護膜PASに形成された開口部からパッドPDの一部が露出している。表面保護膜PASは、不純物の侵入からデバイスを保護する機能を有し、例えば、酸化シリコン膜とこの酸化シリコン膜上に設けられた窒化シリコン膜から形成されている。そして、表面保護膜PAS上にはポリイミド膜(図示せず)が形成されている。このポリイミド膜もパッドPDの形成されている領域を開口している。
パッドPDには、例えば、ワイヤ(図示せず)が接続されており、ワイヤが接続されたパッドPD上を含むポリイミド膜上は、封止体となる樹脂によって封止されている。このようにして、図1に示す半導体装置のデバイス構造が実現されている。
なお、図1に示すデバイス構造においては、第1配線層〜第6配線層が形成されており、例えば、第1配線層〜第4配線層がファイン層を構成し、第5層がグローバル層を構成している。ここで、「ファイン層」とは、最小加工寸法に近い微細配線が形成されている配線層を意味しており、「グローバル層」とは、「ファイン層」よりもサイズの大きな配線が形成されている配線層を意味している。図1では、多層配線構造の説明を簡略化するために、「ファイン層」上に「グローバル層」が形成されている例が示されているが、実際には、「ファイン層」上に「セミグローバル層」が形成され、この「セミグローバル層」上に「グローバル層」が形成されることが一般的である。「セミグローバル層」とは、「ファイン層」よりもサイズは大きいが、「グローバル層」よりもサイズの小さな配線が形成されている配線層を意味している。つまり、「セミグローバル層」は、配線サイズに着目すると、「ファイン層」と「グローバル層」との中間サイズの配線を有する配線層ということができる。
<改善の余地>
図1では、半導体装置の模式的なデバイス構造について説明したが、例えば、実際の銅配線に着目すると、銅配線は、バリア導体膜と銅膜から構成されている。半導体装置の小型化や集積度の向上を図るためには、銅配線の微細化を図る必要があるが、銅配線の微細化を進めると、銅配線に含まれるバリア導体膜に起因して、半導体装置の性能向上を図る観点から改善の余地が存在することが本発明者の検討によって明らかになった。すなわち、銅配線に含まれるバリア導体膜に着目した場合、現状の半導体装置では、半導体装置の性能を向上する観点から改善の余地が存在するのである。具体的には、「ダマシン法」で形成された銅配線と銅プラグを有する半導体装置において、銅配線の下層に配置されて銅配線と接続する銅プラグの抵抗値を低抵抗化する観点から改善の余地が存在するのである。以下に、この改善の余地について、図面を参照しながら説明する。
図2は、多層配線構造の一部を拡大した構成例を模式的に示す断面図である。図2に示すように、例えば、「シングルダマシン法」で形成された銅を主成分とする配線L1上に、「デュアルダマシン法」で一体的に形成された銅を主成分とするプラグPLGおよび配線L2が配置されている。つまり、下層配線である配線L1と、上層配線である配線L2とは、プラグPLGを介して電気的に接続されている。ここで、プラグPLGは、接続孔CNTにバリア導体膜BCFと銅膜CFとを埋め込むことにより形成され、配線L2は、接続孔CNTと一体的に形成された配線溝WDにバリア導体膜BCFと銅膜CFとを埋め込むことにより形成されている。このとき、バリア導体膜BCFは、例えば、接続孔CNTの内壁および配線溝WDの内壁に形成された窒化タンタル膜TNFと、この窒化タンタル膜TNF上に形成されたタンタル膜TFとから構成されている。
このように接続孔CNTの内壁および配線溝WDの内壁に直接銅膜を形成せずにバリア導体膜BCFを形成しているのは、銅膜を構成する銅が熱処理などによって半導体基板を構成するシリコンへ拡散することを防止するためである。すなわち、銅原子のシリコンへの拡散定数は比較的大きいので容易にシリコン中へ拡散する。この場合、半導体基板にはMISFETなどの半導体素子が形成されており、これらの形成領域に銅原子が拡散すると耐圧不良などに代表される半導体素子の特性劣化を引き起こす。このことから、配線を構成する銅膜から銅原子が拡散しないようにバリア導体膜BCFが設けられているのである。つまり、バリア導体膜BCFは、銅原子の拡散を防止する機能を有する膜であることがわかる。以上のようにして、実際の多層配線は、例えば、図2に示すように、銅を主成分とする配線L1上に、一体的に形成された銅を主成分とするプラグPLGおよび配線L2が配置されていることになる。
ここで、図2では、配線L2の配線幅が最小加工寸法に比べて比較的大きな場合を想定しており、この場合、バリア導体膜BCFの膜厚を厚くしても、銅膜CFを配線溝WDに埋め込む際の埋め込み特性の劣化が問題点として顕在化しにくいため、接続孔CNTの内壁および配線溝WDの内壁に形成されるバリア導体膜BCFの膜厚は厚くなっている。
ところが、例えば、ハーフピッチが60nmやハーフピッチが45nm程度の微細配線を形成する場合には、状況は一変する。図3は、例えば、ハーフピッチが60nmやハーフピッチが45nm程度の微細配線を有する多層配線構造の一部を拡大した構成例を模式的に示す断面図である。図3においても、「シングルダマシン法」で形成された銅を主成分とする配線L1上に、「デュアルダマシン法」で一体的に形成された銅を主成分とするプラグPLGおよび配線L2が配置されている。このとき、配線L2が微細配線である場合には、バリア導体膜BCFの膜厚を厚くすると、銅膜CFを配線溝WDに埋め込む際の埋め込み特性の劣化が問題点として顕在化する。このため、図3において、接続孔CNTの内壁および配線溝WDの内壁に形成されるバリア導体膜BCFの膜厚は、図2に示すバリア導体膜BCFの膜厚よりも薄くする必要がある。
したがって、図2および図3を比較すると、図2に示すプラグPLGのサイズと、図3に示すプラグPLGのサイズが同一であっても、図3に示すプラグPLGの底部に形成されるバリア導体膜BCFの膜厚は、図2に示すプラグPLGの底部に形成されるバリア導体膜BCFの膜厚よりも薄くなる。このことから、図2に示すプラグPLGのプラグ抵抗(ビア抵抗)と、図3に示すプラグPLGのプラグ抵抗とは相違することになる。
具体的には、バリア導体膜BCFの抵抗率(比抵抗)は、銅膜CFの抵抗率よりも高い。このことから、配線L2からプラグPLGを介して配線L1に電流を流す場合(図2および図3の矢印を参照)、一見すると、図2に示すバリア導体膜BCFの膜厚の厚いプラグPLGのプラグ抵抗の方が、図3に示すバリア導体膜BCFの膜厚の薄いプラグPLGのプラグ抵抗よりも高くなると考えられる。しかしながら、実際には、図2に示すバリア導体膜BCFの膜厚の厚いプラグPLGのプラグ抵抗の方が、図3に示すバリア導体膜BCFの膜厚の薄いプラグPLGのプラグ抵抗よりも低くなるのである。言い換えれば、図3に示すバリア導体膜BCFの膜厚の薄いプラグPLGのプラグ抵抗の方が、図2に示すバリア導体膜BCFの膜厚の厚いプラグPLGのプラグ抵抗よりも高くなるのである。すなわち、図3に示すように、配線L2をハーフピッチが60nmやハーフピッチが45nm程度の微細配線から構成する場合、配線L2の下層に配置されて配線L2と接続するプラグPLGのプラグ抵抗が増加するのである。
ここで、図3に示すバリア導体膜BCFの膜厚の薄いプラグPLGのプラグ抵抗の方が、図2に示すバリア導体膜BCFの膜厚の厚いプラグPLGのプラグ抵抗よりも高くなる理由について説明する。
図2においては、プラグPLGの底部に形成されているバリア導体膜BCFの膜厚が厚くなっている。このとき、バリア導体膜BCFは、窒化タンタル膜TNFと、窒化タンタル膜TNF上に形成されているタンタル膜TFから構成されていることから、窒化タンタル膜TNFの膜厚も充分に厚くなっていると考えることができる。このように窒化タンタル膜TNFの膜厚が確保されている場合には、窒化タンタル膜TNF上に形成されるタンタル膜TFの結晶構造は、体心立方構造であるα−Ta構造となる。
一方、図3においては、プラグPLGの底部に形成されているバリア導体膜BCFの膜厚が薄くなっている。したがって、バリア導体膜BCFの構成膜である窒化タンタル膜TNFの膜厚も薄くなっていると考えることができる。このように窒化タンタル膜TNFの膜厚が薄い場合には、窒化タンタル膜TNF上に形成されるタンタル膜TFの結晶構造は、正方晶系構造であるβ−Ta構造となる。
つまり、図2に示すバリア導体膜BCFの膜厚の厚いプラグPLGでは、タンタルの結晶構造がα−Ta構造となるのに対し、図3に示すバリア導体膜BCFの膜厚の薄いプラグPLGでは、タンタルの結晶構造がβ−Ta構造となる。このことに起因して、図3に示すプラグPLGのプラグ抵抗の方が、図2に示すプラグPLGのプラグ抵抗よりも高くなるのである。なぜなら、α−Ta構造の抵抗率は、β−Ta構造の抵抗率よりも低くなるからである。すなわち、図2に示すバリア導体膜BCFの膜厚の厚いプラグPLGでは、バリア導体膜BCFの膜厚自体が厚いが、バリア導体膜BCFの構成膜であるタンタル膜の結晶構造が抵抗率の低いα−Ta構造となるため、総合的に、図2に示すプラグPLGのプラグ抵抗が低くなるのである。これに対し、図3に示すバリア導体膜BCFの膜厚の薄いプラグPLGでは、バリア導体膜BCFの膜厚自体が薄いが、バリア導体膜BCFの構成膜であるタンタル膜の結晶構造が抵抗率の高いβ−Ta構造となるため、総合的に、図3に示すプラグPLGのプラグ抵抗が高くなるのである。
したがって、バリア導体膜BCFの膜厚自体だけに着目すると、図2に示すプラグPLGのプラグ抵抗の方が、図3に示すプラグPLGのプラグ抵抗よりも大きくなりそうであるが、実際には、図2に示すプラグPLGと図3に示すプラグPLGにおいて、タンタル膜の結晶構造が相違する点を考慮すると、図2に示すプラグPLGのプラグ抵抗の方が、図3に示すプラグPLGのプラグ抵抗よりも小さくなるのである。つまり、窒化タンタル膜の膜厚が厚い場合には、窒化タンタル膜上に形成されるタンタル膜の結晶構造が抵抗率の低いα−Ta構造となるため、プラグPLGのプラグ抵抗を低減する観点からは、タンタル膜の結晶構造がα−Ta構造となる程度に、タンタル膜の下に形成される窒化タンタル膜の膜厚を厚くすることが望ましいのである。
図4は、窒化タンタル膜上にタンタル膜を形成した積層膜の比抵抗(抵抗率)と、窒化タンタル膜の膜厚との関係を示すグラフである。図4において、横軸は窒化タンタル膜の膜厚(TaN膜厚)を示しており、縦軸は積層膜の比抵抗を示している。このとき、図4に示すグラフは、窒化タンタル膜上にタンタル膜を形成した積層膜において、タンタル膜の膜厚(Ta膜厚)を固定した状態で、窒化タンタル膜の膜厚を変化させた場合の積層膜の比抵抗の測定結果を示している。図4に示すように、窒化タンタル膜の膜厚を厚くしていくと、窒化タンタル膜上にタンタル膜を形成した積層膜の比抵抗は減少することがわかる。具体的に、窒化タンタル膜の膜厚が3nm程度の場合、積層膜の比抵抗は210μΩ・cm程度であり、窒化タンタル膜の膜厚が5nm程度の場合、積層膜の比抵抗は150μΩ・cm程度となる。さらに、窒化タンタル膜の膜厚が6nm程度の場合、積層膜の比抵抗は90μΩ・cm程度であり、窒化タンタル膜の膜厚が7nm程度の場合、積層膜の比抵抗は70μΩ・cm程度にまで減少することがわかる。特に、窒化タンタル膜の膜厚が5nm程度である場合を境界にして、積層膜の比抵抗が大幅に変化することがわかる。このことから、例えば、窒化タンタル膜の膜厚が5nm以上ある場合には、窒化タンタル膜上に形成されるタンタル膜の結晶構造がα−Ta構造となって、積層膜の比抵抗が低くなると考えることができる。言い換えれば、例えば、窒化タンタル膜の膜厚が5nm未満の場合には、窒化タンタル膜上に形成されるタンタル膜の結晶構造がβ−Ta構造となって、積層膜の比抵抗が低くなると考えることができる。したがって、図4に示す結果から、プラグPLGのプラグ抵抗を低減する観点からは、タンタル膜の結晶構造がα−Ta構造となる程度に、タンタル膜の下に形成される窒化タンタル膜の膜厚を厚くすることが望ましいことが裏付けられていると考えることができる。
このように、プラグPLGのプラグ抵抗を低減する観点からは、タンタル膜の下に形成される窒化タンタル膜の膜厚を厚くすることが望ましいが、上述したように、配線L2が微細配線(ハーフピッチが60nmやハーフピッチが45nm程度)である場合には、バリア導体膜BCFの膜厚を厚くすると、銅膜CFを配線溝WDに埋め込む際の埋め込み特性の劣化が問題点として顕在化する。このことから、図3に示す微細配線である配線L2においては、埋め込み特性を向上する観点から、接続孔CNTの内壁および配線溝WDの内壁に形成されるバリア導体膜BCFの膜厚を薄くする必要がある。ところが、この場合、図3に示すように、プラグPLGの底部に形成される窒化タンタル膜の膜厚が薄くなり、窒化タンタル膜上に形成されるタンタル膜の結晶構造が抵抗率の高いβ−Ta構造となってしまう。この結果、図3に示す微細配線である配線L2と接続するプラグPLGのプラグ抵抗が高くなる。
ただし、実際に、プラグ抵抗が高くなる問題点が顕在化するのは、例えば、図1に示す細幅配線NL2と同一層に形成されている幅広配線WL2と電気的に接続されるプラグPLG1Aである。すなわち、上述した問題点が顕在化するのは、図1に示す同一層に形成されている幅広配線WL2と細幅配線NL2に着目すると、配線幅の小さい細幅配線NL2と電気的に接続されているプラグPLG1Bではなく、細幅配線NL2と同一層に形成されている配線幅の大きい幅広配線WL2と電気的に接続されているプラグPLG1Aである。以下に、この点について説明する。
図5は、図1に示す多層配線構造の一部を拡大して示す断面図である。図5において、例えば、第1層配線である配線L1が形成された層間絶縁膜IL1上には、バリア絶縁膜BIF1が形成され、このバリア絶縁膜BIF1上に層間絶縁膜IL2が形成されている。そして、バリア絶縁膜BIF1および層間絶縁膜IL2には、このバリア絶縁膜BIF1および層間絶縁膜IL2を貫通するように、一体的に配線溝WD2Aと接続孔CNT1Aが形成されている。同様に、バリア絶縁膜BIF1および層間絶縁膜IL2には、バリア絶縁膜BIF1および層間絶縁膜IL2を貫通するように、一体的に配線溝WD2Bと接続孔CNT1Bも形成されている。
配線溝WD2Aの内壁および接続孔CNT1Aの内壁には、バリア導体膜BCFが形成されており、このバリア導体膜BCF上であって、配線溝WD2Aおよび接続孔CNT1Aを埋め込むように銅膜CFが形成されている。これにより、接続孔CNT1Aにバリア導体膜BCFおよび銅膜CFを埋め込んだプラグPLG1Aと、配線溝WD2Aにバリア導体膜BCFおよび銅膜CFを埋め込んだ幅広配線WL2とが形成されている。
同様に、配線溝WD2Bの内壁および接続孔CNT1Bの内壁には、バリア導体膜BCFが形成されており、このバリア導体膜BCF上であって、配線溝WD2Bおよび接続孔CNT1Bを埋め込むように銅膜CFが形成されている。これにより、接続孔CNT1Bにバリア導体膜BCFおよび銅膜CFを埋め込んだプラグPLG1Bと、配線溝WD2Bにバリア導体膜BCFおよび銅膜CFを埋め込んだ細幅配線NL2とが形成されている。
このようにして、幅広配線WL2と細幅配線NL2は同一層に形成され、かつ、プラグPLG1AとプラグPLG1Bは同一層に形成されている。つまり、図5に示すように、同一層に配線幅の異なる幅広配線WL2と細幅配線NL2とが形成されている。このとき、同一層に形成される幅広配線WL2と細幅配線NL2とは、例えば、「ダマシン法」によって同一工程で形成される。細幅配線NL2は、例えば、最小加工寸法で形成される微細配線であり、「ダマシン法」による膜の埋め込み特性を確保するため、細幅配線NL2に含まれるバリア導体膜BCFの膜厚を薄くする必要がある。したがって、細幅配線NL2と同一層に形成される幅広配線WL2においても、細幅配線NL2と同一工程で形成されることから、必然的に、幅広配線WL2に含まれるバリア導体膜BCFの膜厚も薄くなることになる。したがって、幅広配線WL2と接続されるプラグPLG1Aの底部に形成される窒化タンタル膜TNFの膜厚が薄くなり、窒化タンタル膜TNF上に形成されるタンタル膜TFの結晶構造が抵抗率の高いβ−Ta構造となってしまう。この結果、幅広配線WL2と接続するプラグPLG1Aのプラグ抵抗が高くなる。もちろん、細幅配線NL2と接続されるプラグPLG1Bの底部に形成される窒化タンタル膜TNFの膜厚も薄くなり、窒化タンタル膜TNF上に形成されるタンタル膜TFの結晶構造が抵抗率の高いβ−Ta構造となってしまう。この結果、細幅配線NL2と接続するプラグPLG1Bにおいても、プラグ抵抗が高くなる。
このように、同一層に形成される幅広配線WL2と細幅配線NL2とは、同一工程(「デュアルダマシン法」)で形成されることから、バリア導体膜BCFの膜厚が細幅配線NL2の埋め込み特性の観点から律速されてしまう。このため、幅広配線WL2と接続されるプラグPLG1Aと、細幅配線NL2と接続されるプラグPLG1Bの両方で、プラグ抵抗が高くなることになる。この場合、特に、幅広配線WL2と接続されるプラグPLG1Aにおけるプラグ抵抗の増大が半導体装置の性能低下を招く問題点として顕在化することになる。以下に、この理由について説明する。
まず、第1の理由は、例えば、幅広配線WL2が電源電位を供給する電源配線として使用される点である。すなわち、幅広配線WL2は、大きな電流を流す電源配線として使用されるため、配線抵抗が低いことが要求される。したがって、この幅広配線WL2と電気的に接続されるプラグPLG1Aにおいてもプラグ抵抗が低いことが要求される。なぜなら、幅広配線WL2と接続されるプラグPLG1Aのプラグ抵抗が高くなると、幅広配線WL2に大きな電流を流した場合、プラグPLG1Aでの電圧降下が大きくなって、電源電圧からの電圧ドロップが顕在化するからである。
一方、細幅配線NL2と接続されるプラグPLG1Bにおいては、プラグ抵抗がある程度高くなっても、それほど問題点は顕在化しないと考えられる。なぜなら、細幅配線NL2は、例えば、電気信号を伝達する信号配線として使用され、電源配線ほど大きな電流を流すことはないからである。つまり、細幅配線NL2の機能と幅広配線WL2の機能の相違に起因して、細幅配線NL2では、幅広配線WL2に比べて、プラグ抵抗の影響が少ないと考えられるのである。以上のことから、特に、幅広配線WL2と接続されるプラグPLG1Aにおけるプラグ抵抗の増大が半導体装置の性能低下を抑制する観点から重要になるのである。
続いて、第2の理由について説明する。図5に示すように、幅広配線WL2と接続されるプラグPLG1Aの底部におけるバリア導体膜BCFの膜厚は、細幅配線NL2と接続されるプラグPLG1Bの底部におけるバリア導体膜BCFの膜厚よりも厚くなる。すなわち、同一工程でバリア導体膜BCFを形成する場合であっても、プラグPLG1Aの底部に形成されるバリア導体膜BCFの膜厚は、プラグPLG1Bの底部に形成されるバリア導体膜BCFの膜厚よりも厚くなるのである。
この現象は、例えば、以下のように定性的に考えることができる。例えば、バリア導体膜BCFは、スパッタリング法を使用することにより形成される。スパッタリング法では、例えば、成膜材料から構成されるターゲットに、アルゴンを衝突させることにより飛び出してくるターゲット原子を半導体基板に付着させることにより成膜を行なう。ここで、図6に示すように、接続孔CNT1Aの底面と接続孔CNT1Bの底面とに、同一工程でのスパッタリング法により、バリア導体膜を形成することを考える。この場合、接続孔CNT1Aの底部に付着するターゲット原子は、図6に示す角度θ1の範囲内の方向から飛び込んでくるターゲット原子であると考えることができる。一方、接続孔CNT1Bの底部に付着するターゲット原子は、図6に示す角度θ2の範囲内の方向から飛び込んでくるターゲット原子であると考えることができる。ここで、図6に示すように、接続孔CNT1A上に形成されている配線溝WD2Aの幅が、接続孔CNT1B上に形成されている配線溝WD2Bの幅よりも大きいことを考慮すると、角度θ1は、角度θ2よりも大きくなる。このことは、接続孔CNT1Aの底部に付着するターゲット原子の数が、接続孔CNT1Bの底部に付着するターゲット原子の数よりも多くなることを意味する。この結果、接続孔CNT1Aの底部に形成されるバリア導体膜の膜厚は、接続孔CNT1Bの底部に形成されるバリア導体膜の膜厚よりも厚くなるのである。以上のことから、図5に示すように、プラグPLG1Aの底部に形成されるバリア導体膜BCFの膜厚は、プラグPLG1Bの底部に形成されるバリア導体膜BCFの膜厚よりも厚くなるのである。
このことから、細幅配線NL2と接続されるプラグPLG1Bの底部に形成されるバリア導体膜BCFの膜厚は薄いため、細幅配線NL2と接続されるプラグPLG1Bの底部に形成されるタンタル膜TFの結晶構造は抵抗率の高いβ−Ta構造となる。一方、幅広配線WL2と接続されるプラグPLG1Aの底部に形成されるバリア導体膜BCFの膜厚は、プラグPLG1Bの底部に形成されるバリア導体膜BCFの膜厚よりも厚く形成されるものの、タンタル膜TFの結晶構造がα−Ta構造となる程度まで、窒化タンタル膜TNFの膜厚は厚く形成されない。すなわち、プラグPLG1Aの底部に形成されるバリア導体膜BCFの膜厚が、プラグPLG1Bの底部に形成されるバリア導体膜BCFの膜厚よりも厚く形成されることを考慮しても、従来の成膜条件では、プラグPLG1Aの底部に形成される窒化タンタル膜TNFの膜厚は5nm未満であると考えられる。このことから、幅広配線WL2と接続されるプラグPLG1Aの底部に形成されるタンタル膜TFの結晶構造も抵抗率の高いβ−Ta構造となっていると考えられる。
したがって、プラグPLG1Aの底部に形成されるタンタル膜TFの結晶構造と、プラグPLG1Bの底部に形成されるタンタル膜TFの結晶構造は、ともに同じβ−Ta構造となる。このことを前提として、プラグPLG1Aの底部に形成されるバリア導体膜BCFの膜厚が、プラグPLG1Bの底部に形成されるバリア導体膜BCFの膜厚よりも厚くなることを考慮すると、幅広配線WL2と接続されるプラグPLG1Aのプラグ抵抗は、細幅配線NL2と接続されるプラグPLG1Bのプラグ抵抗よりも大きくなると言える。
図7は、従来技術において、幅広配線WL2と接続されるプラグPLG1Aのプラグ抵抗と、細幅配線NL2と接続されるプラグPLG1Bのプラグ抵抗の測定結果を示すグラフである。図7において、「Wide」と示されているグラフが、幅広配線WL2と接続されるプラグPLG1Aのプラグ抵抗を示しており、「Narrow」と示されているグラフが、細幅配線NL2と接続されるプラグPLG1Bのプラグ抵抗を示している。図7に示すように、幅広配線WL2と接続されるプラグPLG1Aのプラグ抵抗は、細幅配線NL2と接続されるプラグPLG1Bのプラグ抵抗よりも大きくなっていることがわかる。
以上のことから、幅広配線WL2と接続されるプラグPLG1Aにおけるプラグ抵抗の増大が問題点として顕在化するのである。すなわち、幅広配線WL2が大きな電流を流す電源配線として使用される点と、幅広配線WL2と接続されるプラグPLG1Aのプラグ抵抗が細幅配線NL2と接続されるプラグPLG1Bのプラグ抵抗よりも大きくなる点の相乗要因によって、幅広配線WL2と接続されるプラグPLG1Aにおけるプラグ抵抗の増大が問題点として顕在化するのである。
そこで、本実施の形態では、同一層に幅広配線と細幅配線とが形成された半導体装置において、幅広配線と接続されるプラグにおけるプラグ抵抗の増大を抑制する工夫を施している。以下に、この工夫を施した本実施の形態における技術的思想について説明する。
<実施の形態における構造上の特徴>
図8は、本実施の形態における多層配線構造の一部を拡大して示す断面図である。図8において、例えば、第1層配線である配線L1が形成された層間絶縁膜IL1上には、バリア絶縁膜BIF1が形成され、このバリア絶縁膜BIF1上に層間絶縁膜IL2が形成されている。そして、バリア絶縁膜BIF1および層間絶縁膜IL2には、このバリア絶縁膜BIF1および層間絶縁膜IL2を貫通するように、一体的に配線溝WD2Aと接続孔CNT1Aが形成されている。同様に、バリア絶縁膜BIF1および層間絶縁膜IL2には、バリア絶縁膜BIF1および層間絶縁膜IL2を貫通するように、一体的に配線溝WD2Bと接続孔CNT1Bも形成されている。
配線溝WD2Aの内壁および接続孔CNT1Aの内壁には、バリア導体膜BCFが形成されており、このバリア導体膜BCF上であって、配線溝WD2Aおよび接続孔CNT1Aを埋め込むように銅膜CFが形成されている。これにより、接続孔CNT1Aにバリア導体膜BCFおよび銅膜CFを埋め込んだプラグPLG1Aと、配線溝WD2Aにバリア導体膜BCFおよび銅膜CFを埋め込んだ幅広配線WL2とが形成されている。
同様に、配線溝WD2Bの内壁および接続孔CNT1Bの内壁には、バリア導体膜BCFが形成されており、このバリア導体膜BCF上であって、配線溝WD2Bおよび接続孔CNT1Bを埋め込むように銅膜CFが形成されている。これにより、接続孔CNT1Bにバリア導体膜BCFおよび銅膜CFを埋め込んだプラグPLG1Bと、配線溝WD2Bにバリア導体膜BCFおよび銅膜CFを埋め込んだ細幅配線NL2とが形成されている。
以上のように、本実施の形態における半導体装置は、同一層(同一配線層)に形成された銅を主成分とする幅広配線WL2と、銅を主成分とする細幅配線NL2と、幅広配線WL2の下層に配置されて幅広配線WL2と接続された銅を主成分とするプラグPLG1Aと、細幅配線NL2の下層に配置されて細幅配線NL2と接続された銅を主成分とするプラグPLG1Bとを有している。そして、プラグPLG1AおよびプラグPLG1Bのそれぞれは、バリア導体膜BCFを含んでいる。このとき、幅広配線WL2の配線幅は、細幅配線NL2の配線幅よりも大きくなっている一方、プラグPLG1AとプラグPLG1Bは同一サイズで、かつ、同一層に形成されている。そして、例えば、バリア導体膜BCFは、窒化タンタル膜TNFと、この窒化タンタル膜TNF上に形成されたタンタル膜TFから構成されている。
ここで、本実施の形態における特徴点は、例えば、図8に示すように、幅広配線WL2と接続されるプラグPLG1Aの底部に形成されているバリア導体膜BCFの膜厚が、細幅配線NL2と接続されるプラグPLG1Bの底部に形成されているバリア導体膜BCFの膜厚よりも厚くなっている点にある。さらに、詳細には、プラグPLG1Aの底部に形成されている窒化タンタル膜TNFの膜厚が、プラグPLG1Bの底部に形成されている窒化タンタル膜TNFの膜厚よりも厚くなっており、かつ、プラグPLG1Aの底部に形成されている窒化タンタル膜TNFの膜厚は、窒化タンタル膜TNF上に形成されるタンタル膜TFの結晶構造がα−Ta構造となる程度に厚くなっている。具体的に、幅広配線WL2と接続されるプラグPLG1Aの底部に形成されている窒化タンタル膜TNFの膜厚は、5nm以上10nm以下である。これに対し、細幅配線NL2と接続されるプラグPLG1Bの底部に形成されている窒化タンタル膜TNFの膜厚は、0nmよりも大きく3nm以下である。この場合、幅広配線WL2と接続されるプラグPLG1Aの底部において、窒化タンタル膜TNF上に形成されるタンタル膜TFの結晶構造は、抵抗率の低いα−Ta構造となるのである。一方、細幅配線NL2と接続されるプラグPLG1Bの底部において、窒化タンタル膜TNF上に形成されるタンタル膜TFの結晶構造は、抵抗率の高いβ−Ta構造となる。したがって、本実施の形態においては、プラグPLG1Aの底部に形成されているタンタル膜TFの抵抗率は、プラグPLG1Bの底部に形成されているタンタル膜TFの抵抗率よりも低くなる。
具体的に、図9は、本実施の形態において、幅広配線WL2と接続されるプラグPLG1Aのプラグ抵抗と、細幅配線NL2と接続されるプラグPLG1Bのプラグ抵抗の測定結果を示すグラフである。図9において、「Wide」と示されているグラフが、幅広配線WL2と接続されるプラグPLG1Aのプラグ抵抗を示しており、「Narrow」と示されているグラフが、細幅配線NL2と接続されるプラグPLG1Bのプラグ抵抗を示している。図9に示すように、幅広配線WL2と接続されるプラグPLG1Aのプラグ抵抗は、細幅配線NL2と接続されるプラグPLG1Bのプラグ抵抗よりも低くなっていることがわかる。
このように、本実施の形態によれば、幅広配線WL2と接続されるプラグPLG1Aの抵抗値(プラグ抵抗)を、細幅配線NL2と接続されるプラグPLG1Bの抵抗値(プラグ抵抗)よりも低くすることができる。したがって、本実施の形態によれば、例えば、電源配線として使用される幅広配線WL2と接続されるプラグPLG1Aのプラグ抵抗の増加を抑制することができることから、半導体装置の性能を向上することができる。
一方、本実施の形態によれば、配線溝WD2Bの内壁に形成されるバリア導体膜BCFの膜厚を薄くすることができるので、最小加工寸法程度の加工精度で形成される細幅配線NL2を形成するための埋め込み特性の向上を図ることができる。
以上のことから、本実施の形態では、例えば、大きな電流を流す電源配線として使用される幅広配線WL2と、最小加工寸法程度の加工精度で形成される細幅配線NL2とを同一層に形成する半導体装置において、幅広配線WL2と接続されるプラグPLG1Aのプラグ抵抗を低減しながら、微細配線である細幅配線NL2を形成するための埋め込み特性を向上することができるという顕著な効果を得ることができるのである。
<半導体装置の製造方法>
本実施の形態における半導体装置は、上記のように構成されており、以下に、その製造方法について図面を参照しながら説明する。以下に示す製造工程では、半導体基板の上方に形成された層間絶縁膜に「シングルダマシン法」で配線L1を形成した後から、いわゆる「デュアルダマシン法」によって多層配線構造を形成する工程を例に挙げて説明する。
まず、図10に示すように、配線L1を形成した層間絶縁膜IL1に、バリア絶縁膜BIF1を形成し、このバリア絶縁膜BIF1上に層間絶縁膜IL2を形成する。バリア絶縁膜BIF1は、例えば、SiCN膜とこのSiCN膜上に設けられたSiCO膜の積層膜、SiC膜、または、SiN膜のうちのいずれか1つから形成されており、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成することができる。また、層間絶縁膜IL2は、例えば、酸化シリコン膜よりも誘電率の低い低誘電率膜から形成されている。具体的に、層間絶縁膜IL2は、例えば、CVD法で形成されるSiOC膜や、塗布法で形成されるHSQ膜およびMSQ膜などの低誘電率膜から形成することができる。
次に、図11に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、バリア絶縁膜BIF1および層間絶縁膜IL2を貫通するように、一体化した配線溝WD2Aおよび接続孔CNT1Aと、一体化した配線溝WD2Bおよび接続孔CNT1Bとを形成する。このとき、接続孔CNT1Aおよび接続孔CNT1Bの底部には、層間絶縁膜IL1に埋め込むように形成された配線L1の表面が露出する。この工程では、図11に示すように、配線溝WD2Aの幅を配線溝WD2Bの幅よりも大きく形成し、かつ、接続孔CNT1Aのサイズと接続孔CNT1Bのサイズを同一サイズで形成する。すなわち、配線溝WD2Bは、例えば、最小加工寸法程度の精度で形成され、配線溝WD2Aは、例えば、最小加工寸法よりも緩やかな精度で形成される。
続いて、図12に示すように、配線溝WD2Aの内壁および接続孔CNT1Aの内壁と、配線溝WD2Bの内壁および接続孔CNT1Bの内壁と、を含む層間絶縁膜IL2上に、例えば、スパッタリング法を使用することにより、窒化タンタル膜TNFを形成する。このとき、図12に示すように、接続孔CNT1Aの底面に形成される窒化タンタル膜TNFの膜厚は、接続孔CNT1Bの底面に形成される窒化タンタル膜TNFの膜厚よりも厚く形成される。具体的に、本実施の形態では、スパッタリング法での成膜条件を工夫することにより、例えば、接続孔CNT1Aの底面に形成される窒化タンタル膜TNFの膜厚が、5nm以上10nm以下となり、かつ、接続孔CNT1Bの底面に形成される窒化タンタル膜TNFの膜厚が、0nmよりも大きく3nm以下となるように実施される。この窒化タンタル膜TNFを形成するスパッタリング法での成膜条件の詳細については後述することにする(製法上の第1特徴点)。
そして、図13に示すように、窒化タンタル膜TNF上に、例えば、スパッタリング法を使用することにより、タンタル膜TFを形成する。このとき、接続孔CNT1Aの底面においては、窒化タンタル膜TNFの膜厚が5nm以上10nm以下であるため、窒化タンタル膜TNF上に形成されるタンタル膜TFの結晶構造は、抵抗率の低いα−Ta構造となる。一方、接続孔CNT1Bの底面においては、窒化タンタル膜TNFの膜厚が0nmよりも大きく3nm以下であるため、窒化タンタル膜TNF上に形成されるタンタル膜TFの結晶構造は、抵抗率の高いβ−Ta構造となる。ここで、本実施の形態では、タンタル膜TFを形成するスパッタリング法での成膜条件にも工夫を施しており、この工夫によって、本実施の形態では、窒化タンタル膜TNF上に形成されるタンタル膜TFの結晶構造がα−Ta構造になりやすくなる。このタンタル膜TFを形成するスパッタリング法での成膜条件の詳細については後述することにする(製法上の第2特徴点)。
以上のようにして、配線溝WD2Aの内壁および接続孔CNT1Aの内壁と、配線溝WD2Bの内壁および接続孔CNT1Bの内壁と、を含む層間絶縁膜IL2上に、窒化タンタル膜TNFとタンタル膜TFからなるバリア導体膜BCFを形成することができる。
次に、図14に示すように、配線溝WD2Aおよび接続孔CNT1Aの内部と、配線溝WD2Bおよび接続孔CNT1Bの内部と、を含むバリア導体膜BCF上に、例えば、薄い銅膜からなるシード膜SLを形成する。このシード膜SLは、例えば、スパッタリング法を使用することにより形成することができるが、これに限らず、例えば、CVD法や、ALD(Atomic Layer Deposition)法や、めっき法を使用することもできる。
そして、図15に示すように、例えば、シード膜SLを電極とした電解めっき法により銅膜CFを形成する。この銅膜CFは、配線溝WD2Aおよび接続孔CNT1Aの内部と、配線溝WD2Bおよび接続孔CNT1Bの内部とを埋め込むように形成される。このとき、本実施の形態では、最小加工寸法程度の加工精度で加工された配線溝WD2Bの内壁および接続孔CNT1Bの内壁に形成されるバリア導体膜BCFの膜厚は薄いままであるため、配線溝WD2Bに銅膜CFを埋め込む際の埋め込み特性を向上することができる。
この銅膜CFは、例えば、銅を主成分とする膜から形成される。具体的には、銅(Cu)または銅合金(銅(Cu)とアルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、In(インジウム)、ランタノイド系金属、アクチノイド系金属などの合金)から形成される。また、銅膜CFの形成方法は、電解めっき法に限らず、例えば、スパッタリング法やCVD法であってもよい。
続いて、図8に示すように、層間絶縁膜IL2上に形成された不要なバリア導体膜BCFおよび銅膜CFをCMP(Chemical Mechanical Polishing)法で除去する。一方、配線溝WD2Aの内部および接続孔CNT1Aの内部に銅膜CFとバリア導体膜BCFを残し、かつ、配線溝WD2Bの内部および接続孔CNT1Bの内部に銅膜CFとバリア導体膜BCFを残す。これにより、本実施の形態によれば、図8に示すように、配線溝WD2Aにバリア導体膜BCFおよび銅膜CFを埋め込んだ幅広配線WL2と、接続孔CNT1Aにバリア導体膜BCFおよび銅膜CFを埋め込んだプラグPLG1Aとを形成することができる。同様に、本実施の形態によれば、配線溝WD2Bにバリア導体膜BCFおよび銅膜CFを埋め込んだ細幅配線NL2と、接続孔CNT1Bにバリア導体膜BCFおよび銅膜CFを埋め込んだプラグPLG1Bとを形成することができる。このように、本実施の形態においては、幅広配線WL2(第1銅配線)に含まれる銅膜CFおよびプラグPLG1A(第1銅プラグ)に含まれる銅膜CFと、細幅配線NL2(第2銅配線)に含まれる銅膜CFおよびプラグPLG1B(第2銅プラグ)に含まれる銅膜CFは、それぞれ一体化して形成されていることになる。
以後の工程は、上述した工程とほぼ同様の工程の繰り返しであるため省略する。以上のようにして、本実施の形態における半導体装置を製造することができる。
<実施の形態における製法上の特徴>
本実施の形態における半導体装置では、製法上の第1特徴点および製法上の第2特徴点を含む半導体装置の製造方法を採用することにより、プラグPLG1Aのプラグ抵抗(抵抗値)が、プラグPLG1Bのプラグ抵抗(抵抗値)よりも低くなる。具体的に、プラグPLG1Aの底部に形成されたタンタル膜TFの抵抗率は、プラグPLG1Bの底部に形成されたタンタル膜TFの抵抗率よりも低い。すなわち、本実施の形態では、プラグPLG1Aの底部に形成されたタンタル膜TFの結晶構造は、抵抗率の低いα−Ta構造となっており、プラグPLG1Bの底部に形成されたタンタル膜TFの結晶構造は、β−Ta構造となっている。したがって、本実施の形態における製造方法によれば、例えば、電源配線として使用される幅広配線WL2と接続されるプラグPLG1Aのプラグ抵抗の増加を抑制することができることから、半導体装置の性能を向上することができる。
一方で、本実施の形態における半導体装置の製造方法によれば、配線溝WD2Bの内壁に形成されるバリア導体膜BCFの膜厚を薄くすることができるため、最小加工寸法程度の加工精度で形成される細幅配線NL2を形成するための埋め込み特性の向上を図ることができる。つまり、本実施の形態における半導体装置の製造方法を採用することによって、例えば、大きな電流を流す電源配線として使用される幅広配線WL2と、最小加工寸法程度の加工精度で形成される細幅配線NL2とを同一層に形成する半導体装置において、幅広配線WL2と接続されるプラグPLG1Aのプラグ抵抗の低減と、微細配線である細幅配線NL2を形成するための埋め込み特性の向上を両立することができるという顕著な効果を得ることができる。
以下では、製法上の第1特徴点および製法上の第2特徴点について説明する。本実施の形態における製法上の第1特徴点および第2特徴点は、例えば、図12および図13に示される窒化タンタル膜の成膜工程およびタンタル膜の成膜工程で実現される。すなわち、本実施の形態における製法上の第1特徴点および第2特徴点は、配線溝WD2Aの内壁および接続孔CNT1Aの内壁と、配線溝WD2Bの内壁および接続孔CNT1Bの内壁と、を含む層間絶縁膜IL2上に、窒化タンタル膜TNFとタンタル膜TFからなるバリア導体膜BCFを形成する工程で実現される。これらの工程は、スパッタリング法による成膜工程であり、製法上の第1特徴点および第2特徴点は、スパッタリング法における成膜条件に関するものである。
そこで、まず、スパッタリング法での成膜工程を実施するためのスパッタリング装置の構成および簡単な成膜動作について説明することにする。
図16は、本実施の形態で使用するスパッタリング装置の模式的な構成を示す図である。図16において、スパッタリング装置は、処理室CBを有し、処理室CBの内部には、ステージSTが配置されており、このステージST上に半導体基板1Sが載置されている。具体的に、ステージSTには、静電チャック(図示せず)が備えられており、この静電チャックによって半導体基板1Sが保持されるようになっている。そして、静電チャックの中央部には、センタタップ(図示せず)が設けられており、このセンタタップは半導体基板と直接接触するように構成されている。センタタップは、バイアス電源BPSと電気的に接続されており、このバイアス電源BPSによって半導体基板1Sに基板引き込みバイアスが印加されるようになっている。
一方、処理室CB内において、ステージ上に載置された半導体基板1Sと対向する位置には、成膜材料から構成されるターゲットTAGが配置されている。このターゲットTAGは、処理室CBの外部に設けられたDC電源DCPSと電気的に接続されており、DC電源DCPSからターゲットTAGに電力(ターゲットDCパワー)が供給されるように構成されている。また、処理室CB内には、アルゴンガス(Arガス)が導入される。
本実施の形態で使用するスパッタリング装置は、上記のように構成されており、以下に、その成膜動作について簡単に説明する。図16において、まず、半導体基板1Sを処理室CB内に配置されているステージST上に配置する。その後、処理室CB内にアルゴンガス(Arガス)を導入するとともに、DC電源DCPSからターゲットTAGにターゲットDCパワーを供給し、かつ、バイアス電源BPSから半導体基板1Sに基板引き込みバイアスを印加する。すると、半導体基板1SとターゲットTAGとの間に加えられた高電界により、処理室CB内でプラズマ放電を開始する。これにより、処理室CB内に導入されているアルゴンガスはイオン化し、高電界で加速した高エネルギーのアルゴンイオンは、ターゲットTAGに衝突する。この結果、アルゴンイオンがターゲットTAGに衝突した反動でターゲットTAGからターゲット原子が飛び出し、飛び出したターゲット原子が半導体基板1Sに付着する。これにより、半導体基板1Sに膜が成膜される。以上のようにして、スパッタリング装置による成膜処理が実施される。
具体的に、本実施の形態における半導体装置の製造方法においては、図12に示すように、配線溝WD2Aの内壁および接続孔CNT1Aの内壁と、配線溝WD2Bの内壁および接続孔CNT1Bの内壁と、を含む層間絶縁膜IL2上に、例えば、上述したスパッタリング装置を使用したスパッタリング法により、窒化タンタル膜TNFを形成する。この窒化タンタル膜の成膜工程は、タンタルをターゲットTAGとし、かつ、処理室CB内に窒素ガスを導入したスパッタリング法により実施され、この工程の成膜条件に、本実施の形態における製法上の第1特徴点がある。
図17は、窒化タンタル膜の成膜工程における成膜条件を示す表である。図17において、窒化タンタル膜の成膜工程における従来条件は、ターゲットDCパワーが20kW、基板引き込みバイアスの電力が650W、成膜時間が4.6秒である。これに対し、窒化タンタル膜の成膜工程における本実施の形態の条件は、ターゲットDCパワーが20kW、基板引き込みバイアスの電力が650W、成膜時間が6.9秒である。このことから、本実施の形態における製法上の第1特徴点は、成膜時間を4.6秒から6.9秒に長くしている点にある。言い換えれば、本実施の形態における製法上の第1特徴点は、成膜時間を長くして、窒化タンタル膜の膜厚を厚くする点にある。具体的に、本実施の形態では、図12に示す接続孔CNT1Aの底部に形成される窒化タンタル膜TNFの膜厚が5nm以上10nm以下の範囲内となるように成膜時間を長くしている。すなわち、従来条件の成膜時間では、接続孔CNT1Aの底部に形成される窒化タンタル膜TNFの膜厚が5nm未満となり、これによって、窒化タンタル膜TNF上に形成されるタンタル膜TFの結晶構造が抵抗率の高いβ−Ta構造となってしまう。これに対し、本実施の形態の成膜条件では、成膜時間を従来条件よりも長くしているため、接続孔CNT1Aの底部に形成される窒化タンタル膜TNFの膜厚が5nm以上10nm以下となる。これにより、本実施の形態によれば、窒化タンタル膜TNF上に形成されるタンタル膜TFの結晶構造をα−Ta構造とすることができる。つまり、接続孔CNT1Aの底部に形成される窒化タンタル膜TNFの膜厚が5nm以上10nm以下となる場合には、窒化タンタル膜TNFの結晶構造によって、窒化タンタル膜TNF上に形成されるタンタル膜TFの結晶構造がα−Ta構造となるのである。
ここで、窒化タンタル膜TNFの成膜工程における成膜時間を長くするということは、接続孔CNT1Aの底部に形成される窒化タンタル膜TNFの膜厚が、従来条件での膜厚よりも厚くなるとともに、接続孔CNT1Bの底部に形成される窒化タンタル膜TNFの膜厚も厚くなることを意味している。この場合、細幅配線NL2を形成するための埋め込み特性が劣化することが考えられるが、本実施の形態における成膜条件においても、接続孔CNT1Bの底部に形成される窒化タンタル膜TNFの膜厚は3nm以下となることから、細幅配線NL2を形成するための埋め込み特性への影響は少ないと考えられる。
この点に関し、細幅配線NL2を形成するための埋め込み特性の向上を図る観点からは、例えば、窒化タンタル膜TNFの成膜工程における成膜時間を長くする一方、窒化タンタル膜TNF上に形成されるタンタル膜TFの成膜工程における成膜時間を短くすることで対応することができる。つまり、窒化タンタル膜TNFの膜厚を厚くした分だけ、タンタル膜TFの膜厚を薄くすれば、窒化タンタル膜TNFとタンタル膜TFを合わせたバリア導体膜BCFの膜厚は変わらないことになるため、細幅配線NL2を形成するための埋め込み特性の劣化を抑制することができる。具体的に、例えば、窒化タンタル膜TNFの膜厚を1nmだけ厚く形成する場合には、タンタル膜TFの膜厚が1nmだけ薄くなるようにタンタル膜TFの成膜工程における成膜時間を短くすればよい。この場合、さらに、接続孔CNT1Bの底部および配線溝WD2Bの内壁だけでなく、接続孔CNT1Aの底部においても、窒化タンタル膜TNF上に形成されるタンタル膜TFの膜厚が薄くなる。このため、タンタル膜TFの結晶構造が抵抗率の低いα−Ta構造となる点に加えて、タンタル膜TFの膜厚自体が薄くなる点の相乗要因によって、幅広配線WL2と接続されるプラグPLG1Aのプラグ抵抗を低減することができる。すなわち、幅広配線WL2と接続されるプラグPLG1Aのプラグ抵抗の低減と、微細配線である細幅配線NL2を形成するための埋め込み特性の向上を高次元で両立する観点からは、窒化タンタル膜TNFの成膜工程における成膜時間を長くする一方、窒化タンタル膜TNF上に形成されるタンタル膜TFの成膜工程における成膜時間を短くすることが望ましいことになる。
次に、本実施の形態における半導体装置の製造方法においては、図13に示すように、窒化タンタル膜TNF上に、例えば、上述したスパッタリング装置を使用したスパッタリング法により、タンタル膜TFを形成する。このタンタル膜の成膜工程は、処理室CBから窒素ガスを排気した後、タンタルをターゲットとし、半導体基板に基板引き込みバイアスを印加しながらのスパッタリング法により実施され、この工程の成膜条件に、本実施の形態における製法上の第2特徴点がある。
図18は、タンタル膜の成膜工程における成膜条件を示す表である。図18において、タンタル膜の成膜工程における従来条件は、ターゲットDCパワーが20kW、基板引き込みバイアスの電力が250W、半導体基板の電位が−255Vである。これに対し、タンタル膜の成膜工程における本実施の形態の条件は、ターゲットDCパワーが20kW、基板引き込みバイアスの電力が400W、半導体基板1Sの電位が−350Vである。このことから、本実施の形態における製法上の第2特徴点は、半導体基板1Sの電位を−255Vから−350Vにしている点にある。言い換えれば、本実施の形態における製法上の第2特徴点は、半導体基板1Sの電位の絶対値を従来条件よりも大きくする点にある。これにより、本実施の形態によれば、窒化タンタル膜TNF上に形成されるタンタル膜TFの結晶構造をα−Ta構造にしやすくすることができる。例えば、半導体基板1Sの電位の絶対値を大きくするということは、ターゲットTAGから飛び出したタンタル原子が加速されて窒化タンタル膜TNF上に付着することを意味する。この場合、タンタル原子の運動エネルギーが大きいことから、窒化タンタル膜TNF上にタンタル原子が付着した後も、窒化タンタル膜の結晶構造を反映するようにタンタル原子が移動しやすくなるのである。この結果、本実施の形態によれば、窒化タンタル膜TNF上に形成されるタンタル膜TFの結晶構造が抵抗率の低いα−Ta構造となりやすいのである。
したがって、窒化タンタル膜TNF上に形成されるタンタル膜TFの結晶構造を抵抗率の低いα−Ta構造とする観点からは、半導体基板1Sの電位の絶対値を大きくすることが望ましく、例えば、半導体基板1Sの電位を−350Vから−800Vの範囲内となるように、基板引き込みバイアスを印加することが望ましい。この条件を実現するためには、例えば、400W以上1000W以下の電力で基板引き込みバイアスを半導体基板1Sに印加することで実現することができる。ただし、半導体基板1Sの電位を−350Vから−800Vの範囲内とするための電力は、スパッタリング装置の種類によって異なると考えられるため、いずれの種類のスパッタリング装置においても、最終的に、半導体基板1Sの電位が−350Vから−800Vの範囲内となるように基板引き込みバイアスを印加する電力を供給するようにすればよい。
以上のことから、本実施の形態における半導体装置の製造方法によれば、製法上の第1特徴点と製法上の第2特徴点との相乗効果により、幅広配線WL2と接続されるプラグPLG1Aのプラグ抵抗の低減と、微細配線である細幅配線NL2を形成するための埋め込み特性の向上を両立することができる。なお、幅広配線WL2と接続されるプラグPLG1Aのプラグ抵抗の低減と、微細配線である細幅配線NL2を形成するための埋め込み特性の向上を両立する観点からは、上述した製法上の第1特徴点と製法上の第2特徴点とを組み合わせることが望ましいが、これに限らず、例えば、製法上の第1特徴点だけを実施する構成や、製法上の第2特徴点だけを実施する構成を採用してもよい。特に、製法上の第1特徴点は、窒化タンタル膜の成膜工程に関するものであり、製法上の第2特徴点は、タンタル膜の成膜工程に関するものであることから、独立別個に実施することができる。
<変形例>
続いて、本実施の形態の変形例について説明する。本変形例は、図12に示す窒化タンタル膜TNFの成膜工程において、スパッタリング装置の処理室CBに導入する窒素ガスの導入タイミングを従来技術よりも早める技術的思想である。
図19は、本変形例における窒化タンタル膜TNFの成膜工程において、窒素ガスの導入タイミングを説明する図である。図19において、スパッタリング装置では、まず、アルゴンガスのプラズマ放電を開始する着火工程を実施した後、窒化タンタル膜TNFの成膜工程(TaN成膜工程)が実施され、その後、タンタル膜TFの成膜工程(Ta成膜工程)が連続して実施される。このとき、図19に示すように、ターゲットDCパワーを着火工程において段階的に増加させることによりプラズマ放電を開始する。そして、ターゲットDCパワーは、TaN成膜工程とTa成膜工程を通じて一定値に保持される。一方、図19において、従来技術では、着火工程が終了した後に窒素ガスを導入している。実際には、着火工程においてターゲットDCパワーを段階的に増加する過程でスパッタリングが発生する。したがって、従来技術では、着火工程の段階でタンタル膜が形成され、その後、TaN成膜工程で窒素ガスが導入されると、窒化タンタル膜の形成が始まることになる。これに対し、図19に示すように、本変形例では、着火工程を開始する段階(TaN成膜工程よりも前の工程)で、処理室CB内に窒素ガスを導入している。これにより、本変形例によれば、着火工程の段階からTaN成膜工程にわたって窒化タンタル膜を形成することができる。つまり、本変形例では、着火工程を開始する段階で、処理室CB内に窒素ガスを導入しているため、着火工程の段階でも窒化タンタル膜を形成することができる。この結果、本変形例によれば、TaN成膜工程における成膜時間を長くしなくても、実質的な窒化タンタル膜TNFの成膜時間を長くすることができ、これによって、製法上の第1特徴点を実現することができる。このことから、本変形例によれば、スパッタリング装置におけるスループットを低下させることなく、接続孔CNT1Aの底部に形成される窒化タンタル膜TNFの膜厚を5nm以上10nm以下にすることができる。これにより、本変形例によれば、窒化タンタル膜TNF上に形成されるタンタル膜TFの結晶構造をα−Ta構造とすることができる。
<実施の形態の効果>
本実施の形態(変形例も含む)によれば、例えば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)本実施の形態によれば、例えば、大きな電流を流す電源配線として使用される幅広配線WL2と、最小加工寸法程度の加工精度で形成される細幅配線NL2とを同一層に形成する半導体装置において、幅広配線WL2と接続されるプラグPLG1Aのプラグ抵抗を低減しながら、微細配線である細幅配線NL2を形成するための埋め込み特性を向上することができるという顕著な効果を得ることができる。
(2)本実施の形態によれば、例えば、一度のスパッタリング工程によって、同一配線層に形成されている配線幅の異なる幅広配線WL2と細幅配線NL2のそれぞれと接続するプラグ(PLG1A、PLG1B)の底部に膜厚の異なる窒化タンタル膜TNFを形成することができる。このため、本実施の形態によれば、幅広配線WL2と接続するプラグPLG1Aの底部に形成される窒化タンタル膜と、細幅配線NL2と接続するプラグPLG1Aの底部に形成される窒化タンタル膜とを別々のスパッタリング工程で実施する必要がないため、膜厚の異なる窒化タンタル膜を成膜するスパッタリング工程の簡略化を図ることができ、これによって、半導体装置の製造コストを低減することができる。
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。