JP2018107405A - 熱電変換素子 - Google Patents
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Abstract
Description
特に、有機物からなる熱電変換材料を用いた場合には、熱電変換層を印刷パターンで形成できるため、軽量化、低コスト化、大面積による高出力化が可能となる。有機物からなる熱電変換材料としては、例えば特許文献1に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とドーパントアニオンと高沸点溶媒を含む導電性組成物が記載されている。
特許文献3には、芯部と鞘部とからなる芯鞘構造を有し、芯部が少なくとも一種の無機系熱電ナノ構造体を含有する熱電変換材料が記載されている。熱電ナノ構造体を担持するガスバリア性高分子として、多糖類(多糖)が例示されている。
この発明の課題は、有機物の熱電変換材料からなる熱電変換層を有する熱電変換素子において、熱電変換材料の印刷性能を改善することである。
図2に示すように、隣り合う下部電極31の間に絶縁層35が形成されている。絶縁層35は熱電変換層4の上面までの高さで形成されている。絶縁層35を挟んだ熱電変換層4の隣に導電層32aが形成されている。導電層32aはn型導電性高分子の代替層である。導電層32aと熱電変換層4との間に絶縁層36が形成されている。基板2の周縁部に絶縁層37が形成されている。
実施形態の熱電変換素子1は、p型導電性高分子と適量の多糖およびゲル化促進剤を含有する材料からなる熱電変換層4を備えることで、p型導電性高分子を含有し多糖およびゲル化促進剤を含有しない材料からなる熱電変換層を備えた熱電変換素子よりも、熱電変換性能が高くなる。また、多糖およびゲル化促進剤を含有することで、熱電変換材料の印刷性能が改善される。
実施形態の熱電変換素子1は、無線センサ送信装置の自立電源として使用できる。
図3に示す無線センサ送信装置5は、回路基板51に形成されたアンテナ回路52およびセンサ端子53と、熱電変換素子1からなる自立電源と、信号処理・送信回路54と、電圧増幅部・バッテリー55と、で構成されている。
上述のように、実施形態の熱電変換素子1は、熱電変換層4がp型導電性高分子と適量の多糖を含有する材料からなるため、吸熱部に付与する熱エネルギーが小さい場合でも、無線センサを駆動させるに十分な電力を供給できる。よって、実施形態の熱電変換素子1を電源として用いた無線センサ送信装置5は、太陽電池が使用できない照明のない場所においても、常時稼動できる自立型無線センサ送信装置として使用できる。
<多糖>
多糖としては、 単糖分子の重合により生じたグルコシド結合を有する高分子化合物、およびその誘導体を用いることができる。
多糖としては、天然由来の材料、およびその材料を化学的または物理的手法で人工的に改質した材料のいずれを用いてもよい。使用する多糖について、繰り返し単位である単糖の基本構造、置換度、分枝の割合、鎖長、分子量分布は限定されないが、熱電変換層の構成材料として導電性高分子とともに含有させるため、以下の性質を有するものであることが好ましい。
これらの性質を有する多糖としては、カラギーナン、キサンタンガム、ダイユータンガム、グァーガム、ジェランガム、ウェランガム、アルギン酸ナトリウム、一部のセルロース改質材(化学改質されたセルロース)などが挙げられる。これらを単独でまたは組み合わせて使用することができる。ダイユータンガムは、特に優れた擬塑性付与剤である。
また、多糖の種類に応じたゲル化促進剤を添加することで、多糖の添加量を少なくすることができる。ゲル化促進剤の添加量は、導電性高分子による導電性を大きく低下させない範囲の量とする。
多糖の種類によって、改善される性能(印刷性能、熱電変換性能)の度合いが異なるため、複数種類の多糖を組み合わせて添加することも有効である。
熱電変換層の構成材料として、 多糖とともに含有させる導電性高分子としては、共役系の分子構造を有する高分子化合物(共役系高分子)を用いることができる。
共役系高分子としては、ポリチオフェン系化合物、ポリピロール系化合物、ポリアニリン系化合物、ポリアセチレン系化合物、ポリ(p−フェニレン)系化合物、ポリ(p−フェニレンビニレン)系化合物(PPV系化合物)、ポリ(p−フェニレンエチニレン)系化合物、ポリ(p−フルオレニレンビニレン)系化合物、ポリアセン系化合物、ポリフェナントレン系化合物が挙げられる。これらは、p型導電性高分子(p型半導体特性を有する導電性高分子)である。
また、上記高分子化合物のモノマーに置換基が導入された誘導体からなる繰り返し単位を有する共役系高分子も挙げられる。
n型導電性高分子(n型半導体特性を有する導電性高分子)である共役系高分子は、現時点では不安定な物質が多い。
熱電変換層の構成材料としては、 導電性高分子と多糖とゲル化促進剤以外に、 添加剤が挙げられる。
つまり、使用する導電性高分子の種類によっては、熱硬化性樹脂などのバインダを添加する必要がある。また、導電性を高めるために、CNT(カーボンナノチューブ)分散体やエチレングリコール、ジメチルスルホキシド、n−メチルピロリドンあるいはジメチルホルムアミド、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどの極性高沸点溶媒を添加することもできる。
熱電変換層の構成材料がこのような添加剤を含有する場合でも、導電性高分子と多糖の割合は、質量比で、導電性高分子を100とした時に多糖が1以上15以下であることが好ましく、3〜7以下であることがより好ましい。
基板の種類は特に限定されないが、電極の形成や熱電変換層の形成時に影響を受けにくい基板を使用することが好ましい。プラスチック製基板、ガラス製基板、透明セラミックス製基板、金属製基板のいずれを使用してもよい。
コストや柔軟性の観点から、プラスチックフィルムを使用することが好ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6 −フタレンジカルボキシレート、ビスフェノールAとイソおよびテレフタル酸との重合で得られるポリエステルフィルムなどのポリエステルフィルム、ポリシクロオレフィンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリフェニルスルフィドフィルムなどが挙げられる。
これらのうち、入手の容易性、100℃以上の耐熱性、加工性、経済性および効果の観点から、市販のポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、各種ポリイミドやポリカーボネートフィルムが好ましい。印刷工程を考えると、例えば、片面に接着しやすい加工が施されたシート使用することが好ましい。
この発明の第一態様の熱電変換素子によれば、熱電変換層が、導電性高分子、多糖、およびゲル化促進剤を含有する材料からなることにより、導電性高分子を含み多糖およびゲル化促進剤を含まない材料からなるものと比較して、熱電変換層が印刷により形成され易い。
この発明の第一態様の熱電変換素子は、さらに下記の構成(a) (b) の少なくともいずれかを有することが好ましい。
(a) 前記導電性高分子が、ポリチオフェン系化合物、ポリピロール系化合物、ポリアニリン系化合物、ポリアセチレン系化合物、ポリ(p−フェニレン)系化合物、ポリ(p−フェニレンビニレン)系化合物、ポリ(p−フェニレンエチニレン)系化合物、ポリ(p−フルオレニレンビニレン)系化合物、ポリアセン系化合物、ポリフェナントレン系化合物、およびこれらの化合物のモノマーに置換基が導入された誘導体からなる繰り返し単位を有する共役系高分子から選択される少なくとも一つを有する。
この発明の第二態様としては、下記の構成(c) を有する熱電変換素子が挙げられる。
(c) 基板と、前記基板上に形成された複数の熱電変換単位と、を有し、前記複数の熱電変換単位は直列接続され、前記熱電変換単位は、基板上に形成された下部電極と、前記下部電極上に形成された熱電変換層と、前記熱電変換層上および隣接する前記下部電極上に渡って形成された上部電極と、を有し、前記熱電変換層は導電性高分子、多糖、およびゲル化促進剤を含有する材料からなり、前記直列接続の両端にそれぞれ外部との接続端子を有する。
この発明の第三態様として、前記第二態様の熱電変換素子を備えた無線センサ用電源が挙げられる。
この発明の第四態様として、前記第一態様または第二態様の熱電変換素子からなる自立電源と、信号処理・送信回路と、電圧増幅部・バッテリーと、アンテナ回路およびセンサ端子が形成された回路基板と、を有する無線センサが挙げられる。
<熱電変換材料の調製>
導電性高分子として、ポリチオフェン系化合物を含むコーティング剤であるヘレウス株式会社の「Clevios PH1000(水分散液)」を用意した。ポリチオフェン系化合物はp型導電性高分子であり、このコーティング剤の主成分は「ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリスチレンスルフィド」である。
多糖としては、表1に示すものを三晶(株)から入手した。
ゲル化促進剤としては、和光純薬工業(株)製の硫酸ナトリウム(和光一級)を用意した。
サンプルNo.2用として、質量比で、ポリチオフェン系化合物100に対してカラギーナンを5の比率で含有し、硫酸ナトリウムを質量比で5の比率で含有するゲル状の熱電変換材料を調製した。すなわち、カラギーナンおよび硫酸ナトリウムを、それぞれ質量比でPH1000の有効成分100に対して5となる量だけ添加した後、エチレングリコールをPH1000に対して5体積%となるように添加した。その後、攪拌しながら加温して水分を蒸発させることにより、ゲル状の熱電変換材料を得た。
上述方法で得られた各熱電変換材料を、それぞれ幅10mm×長さ30mmのPETフィルム上にメタルマスクを載せて印刷した後、室温での乾燥工程と120℃で4時間の加熱処理を行うことで、PETフィルム上に熱電変換層を形成した。使用したメタルマスクの開口は5mm×25mmの長方形であり、厚さは1mmである。これにより、5mm×25mm×約100μmの熱電変換パターンがPETフィルム上に形成されたNo.1〜No.3の各試験片が得られた。
No.1〜No.3の各試験片を複数個ずつ作製し、熱電変換パターンに滲みや掠れが生じず精度よく印刷されているか否か、熱電変換パターンが自重で流動するか否か、熱電変換パターンが滑らかに印刷されているか否か、を調べた。その結果を、以下の四段階で評価した。
◎:自重で流動することなく、滑らかに精度よく印刷されている。
○:自重で流動することなく、滑らかさや精度もほぼ問題なく印刷されている。
△:自重で流動することはないが、滑らかさや精度の点で問題が生じる割合が0.5〜10%程度ある。
×:自重で流動する場合と滑らかさや精度の点で問題が生じる場合を含む不良率が10%以上ある。
No.1〜No.3の各試験片を用いてゼーベック係数を測定した。各試験片のゼーベック係数の値をNo.1の値で除算することでNo.1の値を基準とした相対値を得た。
多糖であるカラギーナンとゲル化促進剤である硫酸ナトリウムの添加により、熱電変換材料の印刷性能が改善された。
カラギーナンの含有比率が、質量比で、ポリチオフェン系化合物100に対して5であるNo.2は、カラギーナンおよび硫酸ナトリウムを含有しないNo.1よりもゼーベック係数が高く、熱電変換性能が向上した。
カラギーナンの含有比率が、質量比で、ポリチオフェン系化合物100に対して7であるNo.3は、カラギーナンおよび硫酸ナトリウムを含有しないNo.1よりもゼーベック係数が若干低下したが、許容範囲であった。
図1に示す熱電変換素子1は、以下の方法で製造することができる。図4は各工程における図1のA−A断面に対応する断面を示す図である。
先ず、厚さ100μmのPETフィルムからなる基板2に、図5に示すパターンで下部電極31を形成する。図4(a)はこの状態を示す断面である。下部電極31は、スクリーン印刷で銀ペーストパターンを厚さ0.5μmで印刷した後に、銀ペーストパターンの上にカーボンペーストパターンを同じ厚さで印刷し、両ペースト層を乾燥させることにより形成する。カーボンペーストパターンは銀ペーストパターンの表面酸化を防止するために形成する。
銀ペーストとしては、例えば、藤倉化成(株)製の「ドータイトFA−333」などが使用できる。カーボンペーストとしては、例えば、藤倉化成(株)製の「ドータイトFC−415」や「FC−413」などが使用できる。
次に、図4(d)に示すように、レジストパターンPの上に、図7に示す開口パターンを有する厚さ1mmのメタルマスクMを置き、例えば、上述のNo.2と同じゲル状の熱電変換材料(ポリオレフィン系化合物100質量部+カラギーナン5質量部+硫酸ナトリウム5質量部)を印刷する。これにより、基板2上の全ての下部電極31の上に、No.2と同じ熱電変換材料からなる印刷パターンを形成する。
次に、銀ペーストを図9に示すパターンで印刷し、120℃で2時間加熱することで銀ペーストを乾燥させる。この印刷はスクリーン印刷により例えば厚さ0.5μmで行う。図4(f)はこの状態を示す断面図である。
10 熱電変換単位
2 基板
31 下部電極
32 上部電極
33 接続端子
4 熱電変換層
5 無線センサ送信装置
51 回路基板
52 アンテナ回路
53 センサ端子
54 信号処理・送信回路
55 電圧増幅部・バッテリー
Claims (2)
- 導電性高分子、多糖、およびゲル化促進剤を含有する材料からなる熱電変換層を備える熱電変換素子。
- 前記多糖がカラギーナンである請求項1記載の熱電変換素子。
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