JP2018105620A - 漏洩磁束探傷装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】被検査体の疵に対して信号対雑音比(S/N比)が高い漏洩磁束探傷方法を提供する。【解決手段】被検査体を磁化する第1磁化器30と、被検査体の磁化を補助する補助磁化を行う第2磁化器32と、第1磁化器30により被検査体が磁化されている期間において被検査体からの漏洩磁束を検出するホールセンサ33と、を備える漏洩磁束探傷装置を用いる。【選択図】図2
Description
本発明は、漏洩磁束探傷装置に関する。
被検査体の内部欠陥や表面欠陥を検出する探傷方法として漏洩磁束探傷法が知られている。漏洩磁束探傷法において被検査体を磁化させる方法として、永久磁石を用いる永久磁石方式と、電磁石(磁性材料から成る磁気コアに巻いたコイルに電流を印加して磁束を発生させるもの)を用いる電磁石方式がある。
永久磁石方法及び電磁石方法には、それぞれ以下に示す短所が存在する。
(1)永久磁石方式:磁化性能を調整できない。したがって、過剰な磁化性能を有する永久磁石を用いた場合、被検査体との聞に働く吸引力が大きくなるため、検査後に永久磁石を被検査体から脱離することが困難である。また、永久磁石の磁化性能が不十分な場合、被検査体の健全性を正しく評価できない可能性がある。
(2)電磁石方式:コイルの巻数と印加電流によって磁化性能を調節できる。したがって、永久磁石による磁化の場合のように、被検査体からの脱離が困難になることがない。しかしながら、被検査体の健全性を正しく評価するのに必要な磁化性能を実現するために大電力が必要であり、大きな電力を供給することができない環境には向かない。
(1)永久磁石方式:磁化性能を調整できない。したがって、過剰な磁化性能を有する永久磁石を用いた場合、被検査体との聞に働く吸引力が大きくなるため、検査後に永久磁石を被検査体から脱離することが困難である。また、永久磁石の磁化性能が不十分な場合、被検査体の健全性を正しく評価できない可能性がある。
(2)電磁石方式:コイルの巻数と印加電流によって磁化性能を調節できる。したがって、永久磁石による磁化の場合のように、被検査体からの脱離が困難になることがない。しかしながら、被検査体の健全性を正しく評価するのに必要な磁化性能を実現するために大電力が必要であり、大きな電力を供給することができない環境には向かない。
そこで、永久磁石と電磁石を組み合わせることで永久磁石方式と電磁石方式の課題を解決する磁化器が提案されている(特許文献1)。被検査体に対して磁化性能が不十分なときは、電磁石のコイルに電流を印加し、その電流値を調節することで所望の磁化性能を得ることができる。また、検査後に被検査体から磁化器を脱離することが困難なときは、永久磁石により発生する磁束の向きと逆方向の磁束が発生するように電磁石のコイルに電流を印加することで、容易に被検査体から磁化器を脱離することが可能となる。
ところで、永久磁石により磁化器の磁極部と被検査体の表面間に吸引力が常時働くと、探傷プローブを被検査体表面上で走査することが困難になる。また、探傷プローブを走査するためには、磁化器の磁化性能を低下させるように印加電流を制御する必要があり、永久磁石の磁化強度が大きい場合、磁化性能を低下させるために大電流を印加しなければならず、消費電力が増加する。
本発明の1つの態様は、被検査体を磁化したときに疵の周辺部で発生する漏洩磁束を検出することによって疵を評価する漏洩磁束探傷装置であって、前記被検査体を磁化する第1磁化器と、前記被検査体の磁化を補助する補助磁化を行う第2磁化器と、前記第1磁化器により前記被検査体が磁化されている期間において前記被検査体からの漏洩磁束を検出する磁気センサと、を備えることを特徴する漏洩磁束探傷装置である。
ここで、前記第1磁化器及び前記第2磁化器の励磁コイルに印加する電流の波形を任意に設定する電流印加回路を備えることが好適である。
また、前記第2磁化器にパルス状の電流を印加することによって前記被検査体を磁化し、前記第2磁化器に印加される電流より小さい電流を前記第1磁化器に印加することによって前記被検査体を磁化している期間において前記磁気センサによって前記被検査体からの漏洩磁束を検出することが好適である。
また、前記第2磁化器による前記被検査体の磁化がオフとされてから待機時間後に、前記第2磁化器による前記被検査体の磁化をオフに維持しつつ、前記第1磁化器によって前記被検査体を磁化している期間において前記磁気センサによって前記被検査体からの漏洩磁束を検出することが好適である。
本発明によれば、被検査体の疵に対して信号対雑音比(S/N比)が高い漏洩磁束探傷装置を提供することができる。
[漏洩磁束探傷装置の構成]
本発明の実施の形態における漏洩磁束探傷装置100は、図1に示すように、自動ステージ10、ステージコントローラ12、探傷プローブ14、電流印加回路16、ロックインアンプ18及びコンピュータ20を含んで構成される。漏洩磁束探傷装置100は、被検査体102に存在する疵で発生した漏洩磁束を測定するためのシステムである。
本発明の実施の形態における漏洩磁束探傷装置100は、図1に示すように、自動ステージ10、ステージコントローラ12、探傷プローブ14、電流印加回路16、ロックインアンプ18及びコンピュータ20を含んで構成される。漏洩磁束探傷装置100は、被検査体102に存在する疵で発生した漏洩磁束を測定するためのシステムである。
自動ステージ10は、ステージコントローラ12による制御によって、X軸、Y軸及びZ軸方向に移動可能な3軸ステージである。本実施の形態では、便宜上、X軸及びY軸を被検査体102の表面に沿った面内の方向とし、Z軸を被検査体102の表面に対して垂直な方向とする。ステージコントローラ12は、自動ステージ10を制御する制御部を備える。ステージコントローラ12は、コンピュータ20からのステージ制御信号を受けて、ステージ制御信号によって指定された3次元座標(X軸、Y軸及びZ軸の座標)にステージを移動させる。
探傷プローブ14は、被検査体102に対して磁束を発生させることによって被検査体102を磁化させると共に、被検査体102から漏れる磁束(漏洩磁束)を検知する。探傷プローブ14の構成については後述する。探傷プローブ14は、自動ステージ10のステージに取り付けられ、被検査体102に対して3次元的に任意の位置に移動できるように配置される。
探傷プローブ14には、電流印加回路16から電流が印加され、これによって被検査体102に対する磁束が発生させられる。電流印加回路16は、コンピュータ20からの電流制御信号によって制御され、電流制御信号によって指定されたパルス電流及びバースト正弦波電流を探傷プローブ14に印加する。探傷プローブ14で検出された被検査体102からの漏洩磁束による電気信号はロックインアンプ18へ入力される。ロックインアンプ18では、参照信号を用いて、入力された電気信号から漏洩磁束の振幅及び位相成分が抽出される。ロックインアンプ18で抽出された漏洩磁束の振幅及び位相成分はコンピュータ20へ入力される。
[探傷プローブの構成]
探傷プローブ14は、図2に示すように、第1磁化器30、第2磁化器32及びホールセンサ33を含んで構成される。
探傷プローブ14は、図2に示すように、第1磁化器30、第2磁化器32及びホールセンサ33を含んで構成される。
第1磁化器30は、コア30aに第1コイル30bを巻回して構成される。第1磁化器30は、漏洩磁束探傷用磁化器として利用される。コア30aは、樹脂材により構成されるが、強磁性体を用いてもよい。コア30aは、立方体形状又は直方体形状に構成することが好適である。図2に示したコア30aのサイズは一例であり、これに限定されるものではない。第1コイル30bは、漏洩磁束探傷用励磁コイルである。第1コイル30bは、例えば、線径0.16mmの被覆導線をコア30aに60回巻回させたものとすればよい。
第2磁化器32は、コア32aに第2コイル32bを巻回して構成される。第2磁化器32は、補助的に磁化を行うためのパルス磁気飽和用磁化器として利用される。コア32aは、強磁性体により構成される。コア32aは、U字型に構成することが好適である。コア32aは、例えば、45NiFe材をU字型に加工後、熱処理を施したものとすればよい。図2に示したコア32aのサイズは一例であり、これに限定されるものではない。第2コイル32bは、パルス磁化用励磁コイルである。第2コイル32bは、例えば、コア32aの両脚部間に線径0.75mmの被覆導線を26回巻回させたものとすればよい。第1磁化器30は、第2磁化器32のコア32aの両脚部の間(磁極間)に配置される。
ホールセンサ33は、リニアホールICを含む。本実施の形態では、ホールセンサ33は第1磁化器30内に配置される(図2では、第1磁化器30に隠れてしまうため破線で記載した。)。ホールセンサ33は、例えば、旭化成エレクトロニクス社製EQ−733Lとすることができる。
探傷プローブ14は、第2磁化器32のコア32aの両脚部の端部面Aが被検査体102の表面に向くように自動ステージ10に設置される。探傷処理時には、第2磁化器32の第2コイル32bに任意の電流値/周期/幅のパルス電流を印加することで、被検査体102をコア32aの両脚間の方向(X軸方向)にパルス磁化する。そして、第1磁化器30の第1コイル30bにバースト状の正弦波電流を印加することで、被検査体102を磁化したときに被検査体102から漏洩した磁束をホールセンサ33により電圧信号として測定する。
ここで、第2磁化器32による被検査体102の磁化は、被検査体102の磁化部分が磁気飽和する程度に磁化することが好適である。したがって、第2磁化器32によって被検査体102に与えられる磁束は、第1磁化器30によって被検査体102に与えられる磁束よりも大きいことが好適である。具体的には、第1磁化器30の第1コイル30bに印加されるバースト状の正弦波電流の振幅は、第2磁化器32の第2コイル32bに印加されるパルス状の電流の振幅より小さくすることが好適である。
また、第1磁化器30の第1コイル30bにバースト状の正弦波電流を印加する期間は、第2磁化器32の第2コイル32bにパルス状の電流を印加している期間と全部又は一部が重なっていてもよい。ただし、第2磁化器32による被検査体102の磁化がオフとされてから待機時間後に、第2磁化器32による被検査体102の磁化をオフに維持しつつ、第1磁化器30によって被検査体102を磁化している期間において漏洩磁束を検出することが好適である。すなわち、第1磁化器30による被検査体102のパルス磁化がオフの期間に第2磁化器32による被検査体102の磁化を開始し、ホールセンサ33にて漏洩磁束の検出を行うことが好適である。なお、第1磁化器30の第1コイル30bに印加されるバースト状の正弦波電流の印加時聞は、第2磁化器32の第2コイル32bに印加されるパルス状の電流のオフ期間よりも短くすることが好適である。
[電流印加回路の構成]
電流印加回路16は、図3及び図4に示すように、第1磁化器30に対してバースト状の正弦波電流を供給するバースト正弦波電流発生回路34と、第2磁化器32に対してパルス状の電流を供給するパルス電流発生回路36と、を含んで構成される。
電流印加回路16は、図3及び図4に示すように、第1磁化器30に対してバースト状の正弦波電流を供給するバースト正弦波電流発生回路34と、第2磁化器32に対してパルス状の電流を供給するパルス電流発生回路36と、を含んで構成される。
バースト正弦波電流発生回路34は、図3に示すように、正弦波信号発生器34a、パルス信号発生器34b及びスイッチ34cを含んで構成される。正弦波信号発生器34aは、正弦波信号を発生させる信号発生器である。正弦波信号発生器34aとして、例えば、TEXIO社製のFGX2220を使用することができる。正弦波信号発生器34aは、コンピュータ20からの制御信号を受けて、制御信号で指定された振幅及び周期の正弦波信号を生成して出力する。パルス信号発生器34bは、コンピュータ20からの制御信号を受けて、制御信号で指定されたタイミング、振幅及びパルス幅のパルス信号を生成して出力する。パルス信号発生器34bとして、例えば、Tektronix社製のAFG3252を使用することができる。パルス信号発生器34bからのパルス信号はスイッチ34cへ入力され、パルス信号に応じてスイッチ34cが開閉制御される。スイッチ34cは、例えば、CMOSアナログスイッチICとすることができる。図3の例では、パルス信号発生器34bからのパルス信号がハイ状態であるときにスイッチ34cが閉状態となり、ロー状態であるときにスイッチ34cが開状態となる。これによって、第1磁化器30に対して、パルス信号発生器34bから出力されるタイミング及びパルス幅を有するバースト状の正弦波電流が供給される。
パルス電流発生回路36は、図4に示すように、直流電源36a、パルス信号発生器36b、ゲートドライバ36c及びスイッチ36dを含んで構成される。パルス電流発生回路36は、一定の周期で繰り返されるパルス状の大電流を発生し、第2磁化器32の第2コイル32bに印加する回路である。直流電源36aは、直流電圧を発生させて出力する。直流電源36aとして、例えば、TEXIO社製のPSF−800Lを使用することができる。直流電源36aからの出力電圧は、電流センサ36eを介して、第2磁化器32の第2コイル32bの一端に印加される。第2磁化器32の第2コイル32bの他端は、スイッチ36dを介して、接地される。パルス信号発生器36bは、コンピュータ20からの制御信号を受けて、制御信号で指定されたタイミング、振幅及びパルス幅のパルス信号を生成して出力する。パルス信号発生器36bとして、例えば、Tektronix社製のAFG3252を使用することができる。パルス信号発生器36bからのパルス信号はゲートドライバ36cへ入力される。ゲートドライバ36cは、IGBTやMOSFETなどのパワー素子のゲートを高速に駆動するための駆動回路である。ゲートドライバ36cの主な役割は、電流増幅であり、容量性の負荷であるIGBTのゲートを高速にスイッチング(充放電)するために用いられる。ゲートドライバ36cとして、例えば、TC4422というゲートドライバICを用いることができる。ゲートドライバ36cは、パルス信号発生器36bからのパルス信号に応じたタイミング及びパルス幅のゲート信号をスイッチ36dのゲートへ出力する。スイッチ36dは、IGBT等のパワー素子である。スイッチ36dとしては、例えば、大電力の高速スイッチングが可能な半導体素子であるOn Semiconductor社製のNGTB50N60FLWGを用いることができる。スイッチ36dは、ゲートに印加されるパルス信号に応じて開閉制御される。これによって、第2磁化器32の第2コイル32bにパルス電流が供給される。なお、第2磁化器32の動作時のパルス電流の波形は、電流センサ36e(CKSR50−NP)の出力電圧(Vout)により確認することができる。
[漏洩磁束測定による疵検出処理]
以下、本実施の形態における漏洩磁束探傷装置100を用いた漏洩磁束測定による疵検出処理について実施例及び比較列に基づいて説明する。実施例1では、パルス磁化後の残留磁気を利用した漏洩磁束探傷法(以下、残留磁気利用型漏洩磁束探傷法という。)を行った。実施例2では、パルス磁化を行いつつ漏洩磁束の測定を行う漏洩磁束探傷法を(以下、パルス磁気飽和漏洩磁束探傷法という。)を行った。比較例では、パルス磁化を行わない、一般的な漏洩磁束探傷法を行った。
以下、本実施の形態における漏洩磁束探傷装置100を用いた漏洩磁束測定による疵検出処理について実施例及び比較列に基づいて説明する。実施例1では、パルス磁化後の残留磁気を利用した漏洩磁束探傷法(以下、残留磁気利用型漏洩磁束探傷法という。)を行った。実施例2では、パルス磁化を行いつつ漏洩磁束の測定を行う漏洩磁束探傷法を(以下、パルス磁気飽和漏洩磁束探傷法という。)を行った。比較例では、パルス磁化を行わない、一般的な漏洩磁束探傷法を行った。
(実施例1)
漏洩磁束探傷装置100では、第2磁化器32の第2コイル32bに所定の電流値、周期、パルス幅を有するパルス電流を印加して、設定した期間のみ被検査体102を磁化する。そして、適切なタイミングで第1磁化器30の第1コイル30bにバースト状の正弦波電流を印加し、被検査体102に対して第2磁化器32による磁化方向と同じ方向の磁束を流したときに被検査体102の疵から空気中へと漏洩した磁束をホールセンサ33により検出する。すなわち、被検査体102の残留磁気を利用して漏洩磁束探傷法を適用することによって疵の検出を行う。
漏洩磁束探傷装置100では、第2磁化器32の第2コイル32bに所定の電流値、周期、パルス幅を有するパルス電流を印加して、設定した期間のみ被検査体102を磁化する。そして、適切なタイミングで第1磁化器30の第1コイル30bにバースト状の正弦波電流を印加し、被検査体102に対して第2磁化器32による磁化方向と同じ方向の磁束を流したときに被検査体102の疵から空気中へと漏洩した磁束をホールセンサ33により検出する。すなわち、被検査体102の残留磁気を利用して漏洩磁束探傷法を適用することによって疵の検出を行う。
被検査体102となる試験体は以下のものを使用した。実験用の試験体として、一般構造用圧延鋼材SS400の人工疵試験片を準備した。人工疵試験片は、一辺が150mmの矩形部材であり、板厚が10mmとした。図5に示すように、試験片の中央部に幅方向に貫通した溝状の疵102aを放電加工により形成した。疵の長さは150mm、疵の幅は0.3mm、疵の深さは1mmとした。
本実施例では、探傷プローブ14の両脚部の端部面Aを被検査体102の疵のある表面に向けて配置した。このとき、第1磁化器30による漏洩磁束測定時の磁束発生方向及び第2磁化器32によるパルス磁界印加時の磁化方向が疵の長手方向と直交(図5におけるX方向)するように探傷プローブ14を配置した。そして、疵の中央部を原点として、図5におけるX方向へ±20mmの範囲を0.1mm刻みで探傷プローブ14を走査しながら疵近傍の漏洩磁束の分布を測定した。
図6は、本実施例(残留磁気利用型漏洩磁束探傷法)における実験時の印加電流の時間変化(タイミングチャート)を示す。第2磁化器32の第2コイル32bにパルス電流を印加することによって、被検査体102をパルス磁化する。パルス磁化は、パルス周期が8msであり、振幅18.2A及びパルス幅0.8msのパルス電流により行った。
なお、図7に示すように、パルス電流の振幅(iPULSE)は、直流電源36aの電圧設定値(VDC)により決定され、パルス幅(tW1)と周期(T1)は、パルス信号発生器36bからのパルス電流制御信号(VG)により決定される。第2コイル32bに電圧を加え電流を流すとき、誘導起電力の影響により電圧を印加しても電流は直ぐに設定値まで上昇せず、図6及び図7に示すようなカーブを描きながら徐々に増加する。なお、電流値が一定となるまでに要する時間は第2コイル32bのインダクタンスと抵抗の値で決まる。
パルス磁化を開始してから一定の時間経過後に、第1磁化器30の第1コイル30bにバースト状の正弦波電流を印加して漏洩磁束の測定を行った。本実施例では、第2磁化器32によるパルス磁化が行われていない期間、すなわち第2磁化器32によるパルス磁化をオフに維持しつつ、第1磁化器30による漏洩磁束の測定を行った。
図7に示すように、バースト状の正弦波電流の振幅(iBURST)は、正弦波信号発生器34aの正弦波電圧信号(VIN)の振幅で決定され、パルス幅(tW2)、周期(T2)及び遅れ時間(tD)は、パルス信号発生器34bからのバースト正弦波電流制御信号(VSW)により決定される。バースト正弦波電流制御信号(VSW)は、被検査体102へのパルス磁化が開始されてから一定の時間経過後にオン状態とし、パルス磁化がオフ状態である期間内の一定時間のみオン状態を継続させた。具体的には、パルス磁化の開始から0.95ms後、パルス磁化を停止してから0.15ms後に振幅300mA及びバースト幅0.2msの正弦波電流を印加して漏洩磁束を測定した。
(実施例2)
図8は、実施例2(パルス磁気飽和漏洩磁束探傷法)における実験時の印加電流の時間変化(タイミングチャート)を示す。第2磁化器32の第2コイル32bにパルス電流を印加することによって、被検査体102をパルス磁化する。パルス磁化は、実施例1と同様に、パルス周期が8msであり、振幅18.2A及びパルス幅0.8msのパルス電流により行った。パルス磁化を開始してから一定の時間経過後に、第1磁化器30の第1コイル30bにバースト状の正弦波電流を印加して漏洩磁束の測定を行った。本実施例では、第2磁化器32によるパルス磁化が行われている期間、すなわち第2磁化器32によるパルス磁化をオンに維持しつつ、第1磁化器30による漏洩磁束の測定を行った。具体的には、パルス磁化の開始から0.55ms後、パルス磁化を停止する前に振幅300mA及びバースト幅0.2msの正弦波電流を印加して漏洩磁束を測定した。
図8は、実施例2(パルス磁気飽和漏洩磁束探傷法)における実験時の印加電流の時間変化(タイミングチャート)を示す。第2磁化器32の第2コイル32bにパルス電流を印加することによって、被検査体102をパルス磁化する。パルス磁化は、実施例1と同様に、パルス周期が8msであり、振幅18.2A及びパルス幅0.8msのパルス電流により行った。パルス磁化を開始してから一定の時間経過後に、第1磁化器30の第1コイル30bにバースト状の正弦波電流を印加して漏洩磁束の測定を行った。本実施例では、第2磁化器32によるパルス磁化が行われている期間、すなわち第2磁化器32によるパルス磁化をオンに維持しつつ、第1磁化器30による漏洩磁束の測定を行った。具体的には、パルス磁化の開始から0.55ms後、パルス磁化を停止する前に振幅300mA及びバースト幅0.2msの正弦波電流を印加して漏洩磁束を測定した。
(比較例)
比較例では、一般的な漏洩磁束探傷法を適用した。比較例では、被検査体102に磁束を印加したときに、疵において空気中へ漏洩した磁束を磁気センサやコイルを用いて検出する。本比較例では、被検査体102に磁束を印加するための励磁コイルと、漏洩磁束を検出するために使用したホールセンサと、を一体化した探傷プローブを作成して疵の検出・評価に用いた。
比較例では、一般的な漏洩磁束探傷法を適用した。比較例では、被検査体102に磁束を印加したときに、疵において空気中へ漏洩した磁束を磁気センサやコイルを用いて検出する。本比較例では、被検査体102に磁束を印加するための励磁コイルと、漏洩磁束を検出するために使用したホールセンサと、を一体化した探傷プローブを作成して疵の検出・評価に用いた。
探傷プローブは、一辺が5mmの立方体形状の樹脂に線径0.16mmの被覆導線を60回(30回巻きの2層構造)巻回して励磁コイルを製作した。ホールセンサは、励磁コイル内の底部に配置し、感磁部が励磁コイルの中央部に位置するように配置した。ホールセンサは、±Z方向の磁界の変化を検出するように配置した。本比較例では、ホールセンサとして、旭化成エレクトロニクス社製のEQ−733Lを使用した。
励磁コイルに電流を印加することによって、図5に示す被検査体102のX方向に磁束を発生させた。磁束の流れを妨げるように疵が存在する場合、疵において漏洩磁束が発生するので、その磁界の変化をホールセンサにより検出した。励磁コイルに印加する電流は、連続的な正弦波電流とした。
図9は、本比較例における実験時の印加電流の時間変化(タイミングチャート)を示す。パルス磁化は行わず、連続的な正弦波電流による励磁を行いつつ、ホールセンサにより漏洩磁束を検出した。具体的には、振幅300mA及び周波数100kHzの正弦波電流を励磁コイルに印加しつつ漏洩磁束の測定を行った。
(結果及び評価)
図10は、実施例1、実施例2及び比較例において測定した疵の周辺部の漏洩磁束の分布を示す。図10(a)は、比較例(一般的な漏洩磁束探傷法)の結果を示す。図10(b)は、実施例2(パルス磁気飽和漏洩磁束探傷法)の結果を示す。図10(c)は、実施例1(残留磁気利用型漏洩磁束探傷法)の結果を示す。
図10は、実施例1、実施例2及び比較例において測定した疵の周辺部の漏洩磁束の分布を示す。図10(a)は、比較例(一般的な漏洩磁束探傷法)の結果を示す。図10(b)は、実施例2(パルス磁気飽和漏洩磁束探傷法)の結果を示す。図10(c)は、実施例1(残留磁気利用型漏洩磁束探傷法)の結果を示す。
図10において、各図の縦軸の値は、漏洩磁束探傷用の励磁コイルに印加した電流との位相差を示し、横軸の値は、疵の中央部からの距離(疵の中心からホールセンサの感磁部までの距離)を示す。また、各図中の左上に信号対雑音比を求めた結果を示した。この値は、信号と雑音の比を計算した結果であり、信号は、疵の近傍で現れる最大値と最小値の差分値とし、雑音は、疵による漏洩磁束の変化の影響がないと思われる疵から離れた範囲(疵の中心から±約4mm離れた点)で測定された漏洩磁束の最大値と最小値の差分とした。以下、信号及び雑音の振幅をそれぞれ疵信号、雑音信号という。
比較例では、雑音信号の変動が大きく表れた。これは、被検査体102の透磁率のばらつきによる磁気雑音であると推定される。一方、実施例1及び2では、磁気雑音が大きく低減され、当該2つの手法が磁気雑音の低減に効果があることが確認できた。また、磁気雑音の低減効果は、実施例1(残留磁気利用型漏洩磁束探傷法)の方が優れていることが分かった。
なお、実施例1では、第2磁化器32によるパルス磁化の停止と同時に第1磁化器30による漏洩磁束探傷法を適用するのではなく、パルス磁化の停止から一定の時間経過後に第1磁化器30による漏洩磁束探傷法を適用した。これにより、第2磁化器32へのパルス電流を遮断したときに第2コイル32bによる急激な磁場変化により被検査体102内に渦電流が発生し、その影響が漏洩磁束測定時の雑音になることを抑制できたものと推定される。
また、第2磁化器32に印加するパルス電流の値と信号対雑音比の関係を調査した。パルス電流発生回路36の直流電源36aで発生させる直流電圧を2V、4V、6V及び8Vと変化させて漏洩磁束の分布を測定した。なお、実施例1は、直流電圧が8Vのときに相当する。パルス電流の値を変化させたときの疵の周辺部の漏洩磁束の分布を測定し、疵信号の強度、雑音信号の強度及び信号対雑音比を求めた。
疵信号の強度は、パルス電流の値の増加と共に大きくなる傾向を示すことが分かった。この結果から、第2磁化器32によるパルス磁化の強度を増加したことで、磁化を停止した際に試験片に残留する磁化の強度(残留磁束密度)を増加させることができ、疵における漏洩磁束も増加させることができたものと推定される。
また、雑音信号の強度は、直流電源36aの電圧が2V〜4Vの範囲では減少傾向を示し、4V〜8Vの範囲では増加傾向を示した。減少傾向を示す範囲では、残留磁束密度の増加により被検査体102の局所的な透磁率のばらつきが小さくなったと推定される。一方、増加傾向を示す範囲では、過剰な磁化により、被検査体102の疵のない部分からも漏洩磁束が発生するようになり、結果として、雑音となる成分が増加したものと推定される。
また、信号対雑音比は、本試験の範囲では、疵信号に比べ雑音信号の方がパルス電流の値の変化に対する依存性が高く、結果として、雑音信号が最も小さくなった4Vのときに高い信号対雑音比を得られた。
次に、漏洩磁束の測定開始時間と信号対雑音比の関係を調査した。第2磁化器32によるパルス磁化の停止後に第1磁化器30による漏洩磁束探傷法を適用した際に、磁化停止後からの経過時間によって信号対雑音比に変化が現れないか調査した。具体的には、パルス磁化の停止から漏洩磁束の測定を開始するまでの時間(遅延時間)を変化させて、疵の近傍の漏洩磁束の分布を測定した。
疵信号は、遅延時間が0.02ms〜0.2ms間で増加し、0.2ms〜1ms間で著しく減少後、ゆっくりと減少する傾向を示すことが分かった。パルス磁化の停止直後(0.02ms)から0.2msの範囲において疵信号が増加する現象については、理由は不明である。一方、疵信号の大きさが最大値を示した後は経過時間の増加に対して減少する傾向を示し、これは磁化の停止後に残留磁化の強度が残留磁束密度と呼ばれる値に収束することに対応していると推定される。
また、雑音信号は、パルス磁化を停止してから0.08ms経過後に漏洩磁束の測定を行ったときに最も小さくなった。パルス磁化の停止直後(0.02ms)から0.08ms間では減少傾向を示した。これは、パルス電流を遮断したときに第2磁化器32の第2コイル32bによる急激な磁場変化により渦電流が発生し、第1磁化器30による漏洩磁束の測定時に雑音信号として現れたのではないかと推定される。遅延時間が0.08ms以降では雑音信号は増加傾向を示した。これは、残留磁化の強度が経過時間と共に減少したことで、磁気雑音の低減効果が低下したためと推定される。
また、信号対雑音比は、本試験の範囲ではパルス磁化の停止から0.08ms経過後に漏洩磁束探傷法を適用するのが最適であることが分かった。
以上の結果から、第2磁化器32によるパルス磁化を停止した際に被検査体102に残存する磁化の大きさは、時間と共に過渡的に変化すると考えられ、適切なタイミングで第1磁化器30を用いた漏洩磁束探傷法を適用することで高い信号対雑音比が得られることが分かった。
10 自動ステージ、12 ステージコントローラ、14 探傷プローブ、16 電流印加回路、18 ロックインアンプ、20 コンピュータ、30 第1磁化器、30a 第1コア、30b 第1コイル、32 第2磁化器、32a 第2コア、32b 第2コイル、33 ホールセンサ、34 バースト正弦波電流発生回路、34a 正弦波信号発生器、34b パルス信号発生器、34c スイッチ、36 パルス電流発生回路、36a 直流電源、36b パルス信号発生器、36c ゲートドライバ、36d スイッチ、36e 電流センサ、100 漏洩磁束探傷装置、102 被検査体、102a 疵。
Claims (4)
- 被検査体を磁化したときに疵の周辺部で発生する漏洩磁束を検出することによって疵を評価する漏洩磁束探傷装置であって、
前記被検査体を磁化する第1磁化器と、
前記被検査体の磁化を補助する補助磁化を行う第2磁化器と、
前記第1磁化器により前記被検査体が磁化されている期間において前記被検査体からの漏洩磁束を検出する磁気センサと、
を備えることを特徴する漏洩磁束探傷装置。 - 請求項1に記載の漏洩磁束探傷装置であって、
前記第1磁化器及び前記第2磁化器の励磁コイルに印加する電流の波形を任意に設定する電流印加回路を備えることを特徴とする漏洩磁束探傷装置。 - 請求項1又は2に記載の漏洩磁束探傷装置であって、
前記第2磁化器にパルス状の電流を印加することによって前記被検査体を磁化し、
前記第2磁化器に印加される電流より小さい電流を前記第1磁化器に印加することによって前記被検査体を磁化している期間において前記磁気センサによって前記被検査体からの漏洩磁束を検出することを特徴とする漏洩磁束探傷装置。 - 請求項1〜3のいずれか1に記載の漏洩磁束探傷装置であって、
前記第2磁化器による前記被検査体の磁化がオフとされてから待機時間後に、前記第2磁化器による前記被検査体の磁化をオフに維持しつつ、前記第1磁化器によって前記被検査体を磁化している期間において前記磁気センサによって前記被検査体からの漏洩磁束を検出することを特徴とする漏洩磁束探傷装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016248848A JP2018105620A (ja) | 2016-12-22 | 2016-12-22 | 漏洩磁束探傷装置 |
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JP2016248848A JP2018105620A (ja) | 2016-12-22 | 2016-12-22 | 漏洩磁束探傷装置 |
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ID=62787705
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JP (1) | JP2018105620A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2024028935A1 (ja) * | 2022-08-01 | 2024-02-08 | 株式会社日立製作所 | 検査装置 |
-
2016
- 2016-12-22 JP JP2016248848A patent/JP2018105620A/ja active Pending
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WO2024028935A1 (ja) * | 2022-08-01 | 2024-02-08 | 株式会社日立製作所 | 検査装置 |
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