JP2018104912A - 地盤改良体及び地盤改良方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】地盤改良範囲を自由に設定できる地盤改良体及び地盤改良方法を提供する。【解決手段】地盤改良体10は、過冷却溶液が地盤G中で固化して形成されている。【選択図】図4

Description

本発明は、地盤改良体及び地盤改良方法に関する。
下記特許文献1には、地盤土砂とセメント及び水を混ぜたスラリーとを攪拌混合して改良体を造成する地盤改良工法が示されている。
特開2001−355230号公報
上記特許文献1に示された地盤改良工法のように、セメントを用いて地盤改良する場合、地盤とセメントとを攪拌するための攪拌装置を用いる必要があり、地盤改良範囲は撹拌翼が届く範囲に限定される。また、セメントは粘性が高いため地盤に浸透しにくく、さらに時間の経過と共に固化が進む。このため、一度の施工にて地盤改良できる範囲が制限される。
本発明は上記事実を考慮して、地盤改良範囲を自由に設定できる地盤改良体及び地盤改良方法を提供することを目的とする。
請求項1の地盤改良体は、過冷却溶液が地盤中で固化して形成されている。
請求項1の地盤改良体は、過冷却溶液を地盤に浸透させ、任意のタイミングで刺激を与えるか結晶剤を投入して固化させることで形成される。このため、地盤改良範囲を自由に設定できる。
これに対して例えば地盤に浸透しにくいセメントを用いた地盤改良体は、セメントと地盤中の土とを混合して形成するため、オーガーなどの攪拌装置が必要となり、地盤改良範囲はオーガー翼が届く範囲に限定される。また、薬液を注入する場合、使用する薬剤の種類や配合にもよるが、時間の経過とともに固化が進む。このため、一度の施工における地盤改良範囲には制限がある。
請求項2の地盤改良方法は、地盤を掘削して注入管を挿入する工程と、前記注入管を引き抜きながら前記注入管の先端から前記地盤へ過冷却溶液を注入する工程と、前記過冷却溶液が浸透した前記地盤へ結晶剤を投入し、前記過冷却溶液を固化させて地盤改良体を形成する工程と、を有する。
請求項2の地盤改良方法では、過冷却溶液を地盤に浸透させ、任意のタイミングで結晶剤を投入して固化させることで地盤改良体を形成できる。このため、地盤改良範囲を自由に設定できる。また、注入管を引き抜きながら過冷却溶液を注入するため、地盤の深い部分から浅い部分まで過冷却溶液を浸透させることができる。
請求項3の地盤改良方法は、前記過冷却溶液には凝固点を下げる界面活性剤が添加されている。
請求項3の地盤改良方法では、界面活性剤により過冷却溶液の凝固点が下げられている。過冷却溶液は、融点よりも温度が低く凝固点に温度が近くなればなるほど、過冷却状態が不安定になり、結晶剤を与えなくても刺激を受けて固化し易くなる。すなわち、意図しないタイミングで固化し易くなる。界面活性剤により過冷却溶液の凝固点を下げることで、温度が低い状態でも過冷却状態を安定させることができる。
本発明に係る地盤改良体及び地盤改良方法によると、地盤改良範囲を自由に設定できる。
本発明の実施形態に係る地盤改良体及び地盤改良方法に用いる過冷却溶液を冷却した際の冷却時間と過冷却溶液の温度との関係を示すグラフである。 本発明の実施形態に係る過冷却溶液としての酢酸ナトリウム3水和物を用いた強度試験体において、水の混合割合に応じた一軸圧縮強度を示すプロット図である。 本発明の実施形態に係る過冷却溶液としての酢酸ナトリウム3水和物を用いた強度試験体において、水の混合割合に応じた歪みと圧縮応力との関係を示すグラフである。 本発明の実施形態に係る地盤改良方法を示す断面図であり、(A)は地盤に地盤改良装置のロッドを挿入した状態を示し、(B)は地盤に過冷却溶液を注入している状態を示し、(C)は地盤からロッドを引き抜いた状態を示し、(D)は地盤へ結晶剤を投入している状態を示し、(E)は結晶剤により過冷却溶液の固化反応が進行している状況を示し、(F)は過冷却溶液が固化して地盤改良体が形成された状態を示している。
(地盤改良体)
本実施形態に係る地盤改良体10は図4(F)に示すように、過冷却溶液としての酢酸ナトリウム3水和物(CHCOONa・3HO)が地盤G中で固化して形成された柱状体である。
(過冷却溶液)
図1に示すように、過冷却溶液は融点よりも高い温度域では過冷却溶液以外の液体と同様に、液体状態を保持する(A〜B)。そして過冷却溶液は、融点以下の温度域に冷却されても固体化せず液体状態を保持する(B〜C)。この現象のことを「過冷却」といい、この状態のことを「過冷却状態」という。液体状態(A〜C)の過冷却溶液は、粘度がセメントよりも低く、地盤における透水層若しくは不透水層へ圧入することで地盤へ浸透させることができる。
過冷却状態の過冷却溶液は振動等の刺激が与えられると、刺激が与えられた箇所から結晶化が始まり、凝固熱を発しながら固化する(C〜D)。なお、過冷却状態の過冷却溶液を固化させるためには、刺激を与える方法の他、結晶剤(結晶化した固体状の過冷却溶液)を過冷却状態の過冷却溶液中に投入する方法や、結晶剤に向かって過冷却状態の過冷却溶液を注入する方法や、凝固点まで冷却する方法などがある。
なお、過冷却状態の過冷却溶液は、刺激を与えず、また結晶剤と接触させずに冷却を続けると液体の状態が保持される。液体状態を保持しながら冷却を続けるとやがて凝固点に達し固化する。この融点と凝固点の差を過冷却度と言う。過冷却度が小さくなればなる程、過冷却状態が不安定になり、過冷却度が大きい状態と比較して、より弱い刺激によって固化する。換言すると、過冷却状態の過冷却溶液が2種類ある場合、凝固点が高い過冷却溶液のほうが、凝固点が低い過冷却溶液よりも不安定な状態であり、意図しない刺激で固化する蓋然性が高い。
一旦固化した過冷却溶液は、融点まで加熱されない限り、固体の状態が保持される(D〜E)。本実施形態における地盤改良体10は、土粒子の間へ浸透した固体の状態の過冷却溶液の圧縮強度を利用して地盤改良するものである。
なお、本実施形態における「融点」とは、固化した状態の過冷却溶液が融解する温度のことであり、「凝固点」とは、液体化した状態の過冷却溶液が固化する温度のことである。
本実施形態における過冷却溶液は、酢酸ナトリウム無水に対して水を100:66の割合(分子量比)で混合、加熱融解させて生成された酢酸ナトリウム3水和物を含んでいる。この酢酸ナトリウム3水和物を含んだ過冷却溶液は、地盤中温度(セ氏10〜20℃)で過冷却状態を維持する物質であり、融点は約58.0℃である。また、凝固点は0℃以下である。この凝固点は、後述する界面活性剤により調整されている。これにより過冷却溶液は地盤中で、融点よりも温度が低く、且、凝固点よりも温度が高い過冷却状態が維持され、刺激あるいは結晶剤の投入により固化できる。また、固化した後は地盤が58.0℃以上に熱せられない限り融解しない。
(界面活性剤)
本実施形態における過冷却溶液には、酢酸ナトリウム3水和物の他、界面活性剤として、オキシカルボン酸塩系のフローリック(登録商標)Tが添加されている。これにより、過冷却溶液の凝固点が任意の温度(本実施形態においては0℃以下)に調整されている。
この界面活性剤を用いると、例えば過冷却溶液の凝固点を低くすることができる。過冷却溶液の凝固点が低くなれば、過冷却状態での安定性が高くなるので、意図しない刺激(路面を走る車両の振動や、微細な地震動など)を受けて固化することを抑制できる。
(地盤改良方法)
本実施形態における地盤改良方法は、図4(A)〜(F)に示された地盤Gを地盤改良するために、地盤G中に柱状の地盤改良体10(図4(F)参照)を形成する方法である。地盤改良体10は、地盤改良する面積に応じて、1本〜複数本構築される。
地盤改良体10を形成するには、図4(A)に示すように、まず地盤改良装置20に取付けられたロッド22を用いて地盤Gを掘削する。ロッド22の先端(下端部)には図示しない掘削用ビットが取付けられており、ロッド22を回転させることで掘削用ビットが地盤Gを掘削しロッド22が地盤Gに挿入される。
掘削用ビットを用いて地盤Gを所定の深さHまで掘削した後、図4(B)に示すように、ロッド22を回転させつつ引き抜きながら、ロッド22の先端部において掘削用ビットよりも後端(上端部)寄りに形成された図示しない注入(噴射)ノズルから地盤Gへ向かって、横向きに過冷却状態(15℃)の過冷却溶液を注入(噴射)する。これにより地盤Gにおける空隙部分又は地下水部分が過冷却溶液に置換され、過冷却溶液が地盤Gに浸透する。
地盤Gの温度は一般に10〜20℃であり、過冷却溶液の融点(約58.0℃)よりも温度が低く、且、凝固点(0℃以下)よりも温度が高い状態であるため、過冷却溶液は過冷却状態が維持される。
なお、本実施形態におけるロッド22は本発明における注入管の一例である。また本実施形態において掘削用ビット及び噴射ノズルは同一のロッド22に設けられているが、それぞれ別のロッドに設けてもよい。
過冷却溶液が地盤Gに浸透することで、ロッド22及びロッド22により掘削された掘削孔22Aの周囲に、幅(直径)Dの浸透体30が形成される。
ここで、過冷却溶液の噴射圧力を高くすると過冷却溶液の地盤Gへの浸透力が高められ、幅Dが大きくなる。また、ロッド22の引き抜き速度を小さくすると掘削孔22Aの軸方向に沿った単位長さあたりにおける過冷却溶液の噴射量が多くなり、幅Dが大きくなる。
浸透体30を地盤面GLまで形成した後、図4(C)に示すようにロッド22を掘削孔22Aから引き抜き、図4(D)に示すように掘削孔22Aへ結晶剤32を投入する。
結晶剤32は、酢酸ナトリウム3水和物が固化した結晶体であり、掘削孔22Aに投入されて浸透体30における過冷却状態の過冷却溶液と接触し、過冷却溶液を固化させる。さらに過冷却溶液は、結晶剤32と接触することで固化した部分から固化反応が伝播して、固化した部分の周囲の部分から徐々に固化し始める。
なお図4(E)には、掘削孔22Aに充填された過冷却溶液に接触した結晶剤32が、浸透体30を上端部から徐々に固化させて固化体34を形成する様子が示されている。このように浸透体30が上端部から徐々に固化する場合の他、結晶剤32と浸透体30における過冷却溶液との接触状態によっては、中間部や下端部寄りの部分から固化する場合もある。何れの場合においても、固化反応が伝播することにより、最終的には図4(F)に示すように過冷却溶液が固化した幅D、高さHの地盤改良体10が形成される。
(作用・効果)
本実施形態における地盤改良方法においては、セメントよりも粘度が小さい過冷却溶液を地盤Gへ浸透させることで地盤改良体10が形成される。そして、過冷却溶液の注入(噴射)圧力を大きくしたり、ロッド22の引き抜き速度を小さく(注入時間を長く)することで、地盤改良体10の幅Dを大きくすることができる。
このようにすれば地盤改良体10ひとつ当たりが地盤改良できる範囲が大きくなるため、例えばセメントを用いて同じ面積を地盤改良する場合と比較して、地盤改良体の本数を減らすことができる。また、ロッド22の先端から過冷却溶液を注入(噴射)するだけで過冷却溶液は地盤Gへ浸透するので、オーガーなどを用いて地盤Gを攪拌する必要がない。これにより施工手間が削減される。
また、本実施形態における地盤改良方法において、液体状の過冷却溶液は結晶剤32が投入されるまで固化しないので、地盤Gへ注入されている途中で固化することがない。これにより、固化前の過冷却溶液を所望の範囲まで浸透させ、その後で固化させることができる。したがって、地盤改良範囲を自由に設定することができる。
また、本実施形態における地盤改良方法において、液体の過冷却溶液が地盤Gに浸透して形成された浸透体30は、掘削孔22Aへ投入した結晶剤32と接触した部分から固化反応が伝播する。このため例えばセメントの硬化反応と比較して速やかに固化させることができる。したがって地盤改良体10の施工スピードを早くできる。
また、本実施形態における地盤改良方法においては、過冷却状態(15℃)の過冷却溶液を地盤Gへ注入する。このため、地盤Gへ注入後、任意のタイミングで(例えば即座に)固化させることができる。
これに対して過冷却状態ではない(融点よりも温度が高い、例えば60℃)過冷却溶液を地盤Gへ注入する場合、過冷却溶液を固化させるためには、地盤Gの地熱(10〜20℃)によって融点(58℃)以下まで冷やす必要がある。このため、過冷却溶液が冷やされて温度が融点以下になるまでは、固化させることができない。
なお、本実施形態における過冷却溶液に用いられている酢酸ナトリウム3水和物は、酢酸ナトリウム無水に対して水が100:66の割合で混合、加熱融解させて生成されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。
例えば、酢酸ナトリウム無水と水との混合比を変えてもよい。水の混合比を大きくすると、過冷却溶液の過冷却状態における安定性が高くなる。
酢酸ナトリウム無水と水の混合比を変えた過冷却溶液の具体例として、図2、図3には、酢酸ナトリウム無水に対する水の分子量比を100:66、75、80、90とした酢酸ナトリウム3水和物に関するデータが示されている。
図2に示されたデータは、硅砂5号(粒径約5mm程度の硅砂)を35%の間隙率で充填した柱状体に、酢酸ナトリウム無水に対する水の分子量比を100:66、75、80、90とした酢酸ナトリウム3水和物を浸透させ、固化させた試験体の一軸圧縮強度である。また、図3に示されたデータは、一軸圧縮強度試験において各試験体に圧力をかけた際に発生する圧縮応力と歪みの関係である。
酢酸ナトリウム無水に対する水の分子量比が多くなると、図2に示されるように、一軸圧縮強度が小さくなる。一方で、図3に示されるように、圧縮応力に対する歪みが多くなる。すなわち、酢酸ナトリウム3水和物における水の混合割合が多くなると、地盤改良体の支持力が小さくなる一方で、展性が高く脆性破壊しにくくなる。
このように、酢酸ナトリウム無水と水との混合比を変えることにより、求められる性能に応じた地盤改良体を形成することができる。
なお、本実施形態においては、過冷却溶液に酢酸ナトリウム3水和物を用いたが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば硫酸ナトリウム10水和物(NaSO・10HO、融点32.0〜38.0℃)、チオ硫酸ナトリウム5水和物(Na・5HO、融点48.3℃)、リン酸2ナトリウム12水和物(NaHPO・12HO、融点35.0℃)、塩化カルシウム6水和物(CaCl・6HO、融点30.0℃)、酢酸カルシウム1水和物(CCaO・HO、融点100〜150℃)、酢酸マグネシウム4水和物(CMgO・4HO、融点79.0℃)、酢酸カリウム(CKO、融点292℃)、フッ化カリウム4水和物(KF・4HO、融点18.5℃)、エリスリトール(C12、融点119℃)、マンニトール(C14、融点167℃)など、地盤Gの温度よりも融点が高い各種の物質を用いることができる。
また、これらの過冷却溶液は、界面活性剤を添加することで凝固点を任意の温度に調整し、地盤中において安定した過冷却状態を維持することができる。なお、過冷却溶液に界面活性剤を添加することは必ずしも必要ではなく、地盤の温度、過冷却状態を安定に保つ必要性などに応じて適用の有無を選択することができる。
10 地盤改良体
22 ロッド(注入管)
32 結晶剤
G 地盤

Claims (3)

  1. 過冷却溶液が地盤中で固化して形成された地盤改良体。
  2. 地盤を掘削して注入管を挿入する工程と、
    前記注入管を引き抜きながら前記注入管の先端から前記地盤へ過冷却溶液を注入する工程と、
    前記過冷却溶液が浸透した前記地盤へ結晶剤を投入し、前記過冷却溶液を固化させて地盤改良体を形成する工程と、
    を有する地盤改良方法。
  3. 前記過冷却溶液には凝固点を下げる界面活性剤が添加されている、請求項2に記載の地盤改良方法。
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