JP2018104788A - 電気化学式水素ポンプ - Google Patents

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Abstract

【課題】カソードおよびアノード間の差圧によって電解質膜が破断する可能性を低減し得る電気化学式水素ポンプを提供する。【解決手段】電圧印加器13により、膜電極接合体15のアノードとカソードの間に電圧を印加する。次にアノード入口配管11を通じて、アノードガスをアノード室8に供給すると、アノードガス中の水素は、アノード上で電子を遊離してプロトンとなる。遊離した電子は、電圧印加器を介してカソードへ移動する。一方、プロトンは水分子を同伴しながら電解質膜4内を透過し、カソードに触れる。カソードでは、電解質膜を透過したプロトンと、カソードガス拡散層2Cからの電子とによる還元反応が行われ、カソードガス(H2)が生成される。これにより、CO2ガスなどの不純物は膜電極接合体において除去される。【選択図】図2

Description

本開示は電気化学式水素ポンプに関する。
近年、地球の温暖化などの環境問題、石油資源の枯渇などのエネルギー問題から、化石燃料に代わるクリーンな代替エネルギー源として、水素が注目されている。水素は燃焼しても水しか放出せず、地球温暖化の原因となる二酸化炭素および窒素酸化物などが排出されないので、クリーンエネルギーとして期待されている。水素を燃料として利用する装置としては、例えば、燃料電池があり、自動車用電源向け、家庭用自家発電向けに、燃料電池の開発および普及が進んでいる。そして、来るべき水素社会では、水素を製造することはもとより、水素を高密度で貯蔵し、小容量かつ低コストで輸送または利用し得る技術開発が求められている。更に、燃料電池の普及の促進には、燃料供給インフラを整備する必要がある。そこで、高純度の水素を精製および昇圧する様々な提案が行われている。
例えば、特許文献1には、図12に示すように、高差圧用電気化学セルの電解質膜の支持部材30が、電解質膜に接触するガス拡散層として用いられている。つまり、支持部材30の一方の面には、複数の矩形の凹部が形成され、他方の面には複数の菱形の凹部が形成されている。そして、両方の凹部同士の重畳部が、流体が通過する貫通孔31を構成している。これにより、従来のメッシュタイプのガス拡散層で発生する恐れがあった流体流路の詰まりを抑制できるとともに、電気化学セルの高圧側と低圧側との差圧に耐え得る剛性を確保できる。よって、電解質膜の破損点に至るような変形が支持部材30の支持により抑制される。
また、特許文献2には、図13に示すように、燃料電池のセパレータの積層方向に隣接するガス拡散板112およびガス拡散板113の開口の中心がずれるように、これらの拡散板を配置する構成が提案されている。これにより、燃料電池のセパレータのガス拡散性を向上できる。
特許第4733380号公報 特開2008−235060号公報
しかし、特許文献1では、電気化学セルの高圧側と低圧側との差圧によってガス拡散層の貫通孔上で電解質膜が押圧される場合の電解質膜の破断について十分に検討されていない。また、特許文献2は、燃料電池のセパレータのガス拡散板を対象としているので、ガス拡散板の開口部上で電解質膜が押圧される場合の電解質膜の破断という問題が想定されていない。
本開示の一態様(aspect)は、このような事情に鑑みてなされたものであり、カソードおよびアノード間の差圧によってアノードガス拡散層に押圧された電解質膜が破断する可能性を従来よりも低減し得る電気化学式水素ポンプを提供する。
上記課題を解決するため、本開示の一態様の電気化学式水素ポンプは、一対の主面を備える電解質膜と、前記電解質膜の一方の主面に設けられたカソード触媒層と、前記電解質膜の他方の主面に設けられたアノード触媒層と、前記カソード触媒層に設けられたカソードガス拡散層と、前記アノード触媒層に設けられたアノードガス拡散層と、前記カソード触媒層および前記アノード触媒層の間に電圧を印加する電圧印加器と、を備え、前記アノードガス拡散層は、複数の通気孔が設けられた、複数の金属シートの積層体を備え、前記アノードガス拡散層において、前記アノード触媒層に隣接する第1の金属シートの複数の通気孔の配設位置と前記第1の金属シートに隣接する第2の金属シートの複数の通気孔の配設位置とがずれており、前記第1の金属シートの通気孔の開口の一部は、前記第2の金属シートの通気孔の開口と重なっており、前記第1の金属シートの通気孔の開口の残りの部分は、前記第2の金属シートの通気孔が設けられていない領域により塞がれている。
本開示の一態様の電気化学式水素ポンプは、カソードおよびアノード間の差圧によってアノードガス拡散層に押圧された電解質膜が破断する可能性を従来よりも低減し得るという効果を奏する。
図1は、アノードガス拡散層の通気孔上で、電気化学式水素ポンプのカソードおよびアノード間の差圧によって押圧された電解質膜の一例を断面視した図である。 図2は、第1実施形態の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。 図3は、第1実施形態の電気化学式水素ポンプのアノードガス拡散層の一例を示す図である。 図4は、第1実施形態の第1変形例の電気化学式水素ポンプのアノードガス拡散層の一例を平面視した図である。 図5は、第1実施形態の第2変形例の電気化学式水素ポンプのカソードガス拡散層の一例を示す図である。 図6は、第1実施形態の第2変形例の電気化学式水素ポンプのカソードガス拡散層の一例を平面視した図である。 図7Aは、第2実施形態の電気化学式水素ポンプのアノードガス拡散層の一例を断面視した図である。 図7Bは、第2実施形態の電気化学式水素ポンプのアノードガス拡散層の一例を断面視した図である。 図8Aは、アノードガス拡散層の積層体の金属シートの一例を平面視した図である。 図8Bは、アノードガス拡散層の積層体の金属シートの一例を平面視した図である。 図8Cは、アノードガス拡散層の積層体の金属シートの一例を平面視した図である。 図9は、第2実施形態の第1実施例の電気化学式水素ポンプのアノードガス拡散層の一例を断面視した図である。 図10は、第2実施形態の第2実施例の電気化学式水素ポンプのアノードガス拡散層の一例を断面視した図である。 図11は、第2実施形態の変形例の電気化学式水素ポンプのアノードガス拡散層の一例を断面視した図である。 図12は、従来のガス拡散層の一例を示す図である。 図13は、従来のガス拡散層の一例を示す図である。
電気化学式水素ポンプのカソードおよびアノード間の差圧によってアノードガス拡散層の通気孔上で電解質膜が押圧される場合の電解質膜の破断について鋭意検討が行われ、以下の知見が得られた。
例えば、図1に示すように、上記の差圧により、電解質膜104がアノードガス拡散層102Aの通気孔125上で押圧される場合、可とう性の電解質膜104は、アノードガス拡散層102Aの通気孔125で凹状に垂れる。すると、通気孔125のエッジ部125Eで電解質膜104が曲げられることにより、このエッジ部125Eにおける電解質膜104にクラックなどが発生して、電解質膜104が破断する可能性がある。
ここで、通気孔125を微細に加工する程、電解質膜104が通気孔125上で押圧されても、通気孔125における電解質膜104の垂れ込み量を低減できるので、電解質膜104が破断しにくくなる。しかし、アノードガス拡散層102Aに対して、このような通気孔125の微細加工が困難な場合がある。例えば、通気孔125の孔径が小さくなる程、通気孔125の孔径のバラツキが大きくなる傾向がある。また、通気孔125の孔径が小さくなる程、通気孔125の加工コストが嵩む傾向がある。
そこで、本開示の第1の態様の電気化学式水素ポンプは、以上の知見に基づいて案出されたものであり、一対の主面を備える電解質膜と、電解質膜の一方の主面に設けられたカソード触媒層と、電解質膜の他方の主面に設けられたアノード触媒層と、カソード触媒層に設けられたカソードガス拡散層と、アノード触媒層に設けられたアノードガス拡散層と、カソード触媒層およびアノード触媒層の間に電圧を印加する電圧印加器と、を備え、アノードガス拡散層は、複数の通気孔が設けられた、複数の金属シートの積層体を備え、アノードガス拡散層において、アノード触媒層に隣接する第1の金属シートの複数の通気孔の配設位置と第1の金属シートに隣接する第2の金属シートの複数の通気孔の配設位置とがずれており、第1の金属シートの通気孔の開口の一部は、第2の金属シートの通気孔の開口と重なっており、第1の金属シートの通気孔の開口の残りの部分は、第2の金属シートの通気孔が設けられていない領域により塞がれている。
かかる構成によると、本態様の電気化学式水素ポンプは、カソードおよびアノード間の差圧によってアノードガス拡散層に押圧された電解質膜が破断する可能性を従来よりも低減し得る。
具体的には、第1の金属シートの通気孔の配設位置と第2の金属シートの通気孔の配設位置とは、両者の通気孔の一部が重なり合うようにずれているので、第1の金属シートに対して通気孔の微細加工を行わずに、第1の金属シートの通気孔における電解質膜の垂れ込み量を低減できる。つまり、電解質膜が第1の金属シートの通気孔上で押圧されても、第2の金属シートの通気孔が設けられていない領域で電解質膜を保持することができるので、第1の金属シートの通気孔において、電解質膜が第2の金属シートを超えて垂れ込むことが適切に抑制される。これにより、電気化学式水素ポンプのカソードおよびアノード間の差圧によって、第1の金属シートの通気孔上で電解質膜が押圧されても、この通気孔のエッジ部で電解質膜が曲げられることを抑制できるので、電解質膜が破断しにくくなる。
なお、特許文献1に記載のガス拡散層では、第1側面の凹部と第2側面の凹部が非対称であり、第1側面の凹部の一部が第2側面の凹部が形成されていない領域で塞がれているが、このガス拡散層は一体型ガス拡散層、つまり一つのシートである。このように、特許文献1では、本開示のガス拡散層のように、一体型ガス拡散層を複数積層した場合、第1側面の凹部と第2側面の凹部とが重なる一体型ガス拡散層のガス流路は、隣接する他の一体型ガス拡散層のガス流路が形成されていない領域により塞がれることはない。従って、本開示の第1の態様の電気化学式水素ポンプは、特許文献1の発明よりも、電解質膜が破断する可能性を従来よりも低減し得る。
本開示の第2の態様の電気化学式水素ポンプは、第1の態様の電気化学式水素ポンプにおいて、第1の金属シートの厚みは電解質膜の厚みよりも小さくてもよい。
かかる構成によると、第1の金属シートの通気孔における電解質膜の垂れ込みは第1の金属シートの厚みにより規制され、この垂れ込み量は電解質膜の厚みよりも小さい。よって、本態様の電気化学式水素ポンプは、両者の厚みが逆の場合に比べて第1の金属シートの通気孔における電解質膜の垂れ込み量を低減できる。これにより、電気化学式水素ポンプのカソードおよびアノード間の差圧によって、第1の金属シートの通気孔上で電解質膜が押圧されても、この通気孔のエッジ部で電解質膜が曲げられることを更に効果的に抑制できる。
本開示の第3の態様の電気化学式水素ポンプは、第1の態様または第2の態様の電気化学式水素ポンプにおいて、第1の金属シートの通気孔の開口と第2の金属シートの通気孔の開口が重なる部分の面積は、8×円周率×(電解質膜の引張り強度)×(電解質膜の厚み)/3×(電解質膜の理論破断圧力)×(3+(電解質膜のポアソン比))よりも小さくてもよい。
かかる構成によると、第1の金属シートの通気孔の開口と第2の金属シートの通気孔の開口が重なる部分の面積を適切に設定することができる。
本開示の第4の態様の電気化学式水素ポンプは、第1の態様−第3の態様のいずれかの電気化学式水素ポンプにおいて、カソードガス拡散層は、複数の通気孔が設けられた、複数の金属シートの積層体を備え、カソードガス拡散層において、カソード触媒層に隣接する第3の金属シートの複数の通気孔の開口の少なくとも一部が、第3の金属シートに隣接する第4の金属シートの複数の通気孔が設けられていない領域により塞がれている面積の総計は、アノードガス拡散層において、第1の金属シートの複数の通気孔の開口が、第2の金属シートの複数の通気孔が設けられていない領域により塞がれている面積の総計に比べ小さくてもよい。
本開示の第5の態様の電気化学式水素ポンプは、第1の態様−第3の態様のいずれかの電気化学式水素ポンプにおいて、カソードガス拡散層は、複数の通気孔が設けられた、複数の金属シートの積層体を備え、カソードガス拡散層において、カソード触媒層に隣接する第3の金属シートの複数の通気孔のうち、その開口の少なくとも一部が、第3の金属シートに隣接する第4の金属シートの複数の通気孔が設けられていない領域により塞がれている、第3の金属シートの通気孔の数は、アノードガス拡散層において、第1の金属シートの通気孔のうち、その開口の少なくとも一部が、第2の金属シートの複数の通気孔が設けられていない領域により塞がれている、第1の金属シートの通気孔の数に比べ少なくてもよい。
金属シートの通気孔が塞がれているとカソードガス拡散層のガス拡散性が低下する。ここで、カソードガス拡散層は、アノードガス拡散層に比べ、電気化学式水素ポンプのカソードおよびアノード間の差圧による変形を受けにくいので、第4の態様および第5の態様の電気化学式水素ポンプを上記の如く構成することで、カソードガス拡散層をアノードガス拡散層と同様に構成する場合に比べ、カソードガス拡散層のガス拡散性の低下が軽減する。
本開示の第6の態様の電気化学式水素ポンプは、第1の態様−第5の態様のいずれかの電気化学式水素ポンプにおいて、複数の金属シートのうち、少なくとも1つの金属シートは、貫通孔同士を連絡する連絡路を備えてもよい。
かかる構成によると、本態様の電気化学式水素ポンプは、従来に比べアノードガスを均一に拡散し得る。つまり、アノードガス拡散層の積層体の金属シートが連絡路を備えることで、適宜の流路部材からアノードガス拡散層内を通過するアノードガスを一方向だけではなく、任意の方向に送ることができる。すると、連絡路の配置パターンが異なる金属シートを積層させることで、アノードガス拡散層内のアノードガス流れの向きを任意に設定できる。これにより、アノードガス拡散層のガス拡散性が向上する。
また、例えば、適宜の流路部材のガス流路を通じてアノードガス拡散層の積層体の貫通孔にアノードガスを流入させる構成を取る場合、この積層体が上記の連絡路を備えないと、流路部材のガス流路が設けられていない部分の垂直線上に位置するアノードガス拡散層の積層体の貫通孔にはアノードガスが流れずに、アノードガス拡散層のガス拡散が不均一化する恐れがある。しかし、本態様の電気化学式水素ポンプのアノードガス拡散層では、上記の連絡路を介して、このようなアノードガス拡散層の積層体の貫通孔にもアノードガスを流すことができるので、アノードガス拡散層のガス拡散が不均一化することを抑制できる。
また、本開示の第7の態様の電気化学式水素ポンプは、第6の態様の電気化学式水素ポンプにおいて、上記の連絡路は、連絡路が設けられた金属シートに隣り合う同一の金属シートに設けられた貫通孔同士を連絡してもよい。
また、本開示の第8の態様の電気化学式水素ポンプは、第6の態様または第7の態様の電気化学式水素ポンプにおいて、上記の連絡路は、連絡路が設けられた金属シートに隣り合う異なる金属シートに設けられた貫通孔同士を連絡してもよい。
アノードガス拡散層の積層体が、以上の連絡路を備えることで、積層体内を通過するアノードガスを、積層体を貫通する方向だけではなく、積層体の主面と平行な方向にも送ることができる。よって、アノードガス拡散層のガス拡散性が向上する。
また、本開示の第9の態様の電気化学式水素ポンプは、第1の態様−第8の態様のいずれかの電気化学式水素ポンプにおいて、アノードガス拡散層の積層体は、ガスを拡散させる金属焼結体の金属シートを含んでもよい。
かかる構成によると、本態様の電気化学式水素ポンプは、アノードガス拡散層の積層体が金属焼結体の金属シートを備えることで、積層体が、金属焼結体の金属シートを備えずに、通気孔が設けられた複数の金属鋼板で構成される場合に比べて、アノードガス拡散層に必要なガス通気性およびガス拡散性を確保しやすくなる。
以下、添付図面を参照しつつ、本開示の上記の各態様の具体例について説明する。以下で説明する具体例は、いずれも上記の各態様の一例を示すものである。よって、以下で示される形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態などは、請求項に記載されていない限り、上記の各態様を限定するものではない。また、以下の構成要素のうち、本態様の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、図面において、同じ符号が付いたものは、説明を省略する場合がある。また、図面は理解しやすくするために、それぞれの構成要素を模式的に示したもので、形状および寸法比などについては正確な表示ではない場合がある。
(第1実施形態)
[装置構成]
図2は、第1実施形態の電気化学式水素ポンプの一例を示す図である。
電気化学式水素ポンプ16は、膜電極接合体15(以下、MEA15)と、第1プレート1Aと、第2プレート1Cと、電圧印加器13と、を備える。MEA15は、電解質膜4と、カソード触媒層3Cと、アノード触媒層3Aと、カソードガス拡散層2Cと、アノードガス拡散層2Aと、を備え、これらの各層が積層状態で接合されている。
電解質膜4は、一対の主面を備える。また、電解質膜4は、プロトン(H)を透過可能なプロトン伝導性高分子膜である。電解質膜4はプロトン伝導性高分子膜であれば、どのような膜であってもよい。例えば、電解質膜4として、フッ素系高分子電解質膜などを挙げることができる。具体的には、電解質膜4として、例えば、Nafion(登録商標、デュポン社製)、Aciplex(商品名、旭化成株式会社製)などを用いることができる。
カソード触媒層3Cは、電解質膜4の一方の主面に設けられている。カソード触媒層3Cは、例えば、触媒金属として白金を含むが、これに限定されない。
アノード触媒層3Aは、電解質膜4の他方の主面に設けられている。アノード触媒層3Aは、例えば、触媒金属としてRuIrFeOxを含むが、これに限定されない。
なお、カソード触媒層3Cもアノード触媒層3Aも、触媒の調製方法としては、種々の方法を挙げることができるので、特に限定されない。例えば、触媒の担体としては、導電性多孔質物質粉末、炭素系粉末などを挙げることができる。炭素系粉末としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、電気導電性を有する活性炭などの粉末を挙げることができる。カーボンなどの担体に、白金若しくは他の触媒金属を担持する方法は、特に限定されない。例えば、粉末混合または液相混合などの方法を用いてもよい。後者の液相混合としては、例えば、触媒成分コロイド液にカーボンなどの担体を分散させ、吸着させる方法などが挙げられる。また、必要に応じて活性酸素除去材を担体として、白金若しくは他の触媒金属を上記と同様の方法で担持することができる。白金などの触媒金属の担体への担持状態は、特に限定されない。例えば、触媒金属を微粒子化し、高分散で担体に担持してもよい。
カソードガス拡散層2Cは、カソード触媒層3Cに設けられている。カソードガス拡散層2Cとしては、例えば、高弾性の黒鉛化炭素繊維、またはチタン粉末焼結体の表面に白金メッキを施した多孔質体などで構成されていてもよく、ペーパー状にしたものを用いることができる。なお、前者の黒鉛化炭素繊維を用いる場合、炭素繊維を、例えば、2000℃以上で熱処理すると黒鉛結晶が発達し黒鉛繊維に変化する。また、カソードガス拡散層2Cは、例えば、複数の金属シートの積層体で構成されていてもよい。金属シートの積層体の具体的な構成は第2変形例で説明する。
アノードガス拡散層2Aは、アノード触媒層3Aに設けられている。アノードガス拡散層2Aは、電気化学式水素ポンプ16のカソードおよびアノード間の差圧による電解質膜4の押し付けに耐え得る程度の剛性が必要である。アノードガス拡散層2Aは、本差圧による電解質膜4の押し付けに耐え得る程度の剛性があれば、どのような構成であってもよい。アノードガス拡散層2Aは、例えば、複数の金属シートの積層体で構成され、その具体的な構成は後で説明する。
第1プレート1A(セパレータ板)は、アノードガスが流れるガス流路14Aが設けられている。つまり、第1プレート1Aは、アノードガス拡散層2Aにアノードガスを供給するための部材である。具体的には、第1プレート1Aは、平面視において、例えば、図示しないマニホルドに連通するサーペンタイン状のガス流路14Aが形成されており、このガス流路14Aの形成領域がアノードガス拡散層2Aの主面に当接するように配されている。
なお、電解質膜4は、乾燥すると膜抵抗(IR損失)、水素がプロトンと電子に解離する際の反応抵抗(反応過電圧)が大きくなるだけでなく、破れ易くなる可能性があるので、アノードガスは、少なくとも水素ガスおよび水分子(水蒸気)を含む。アノードガスとして、例えば、水素含有の改質ガス、水電解法で生成される水素含有ガスなどを挙げることができる。
第2プレート1C(セパレータ板)は、カソードガスが流れるガス流路14Cが設けられている。つまり、第2プレート1Cのガス流路14Cには、カソードガス拡散層2Cからのカソードガスが流れている。具体的には、第2プレート1Cは、平面視において、例えば、図示しないマニホルドに連通するサーペンタイン状のガス流路14Cが形成されており、このガス流路14Cの形成領域がカソードガス拡散層2Cの主面に当接するように配されている。カソードガスとして、例えば、高純度の水素ガスなどを挙げることができる。
そして、MEA15の上下面をそれぞれ、第1プレート1Aおよび第2プレート1Cで挟持することにより電気化学式水素ポンプ16の単セルが構成されている。
電圧印加器13は、カソード触媒層3Cおよびアノード触媒層3Aの間に電圧を印加する。具体的には、電圧印加器13の高電位側端子は、導電性の第1プレート1Aに接続され、電圧印加器13の低電位側端子が、導電性の第2プレート1Cに接続されている。電圧印加器13は、カソード触媒層3Cおよびアノード触媒層3Aの間に電圧を印加できれば、どのような構成であってもよい。
ここで、カソードガス拡散層2Cおよびアノードガス拡散層2Aはそれぞれ、MEA15のカソードおよびアノードにおける給電体である。つまり、カソードガス拡散層2Cおよびアノードガス拡散層2Aは、第1プレート1Aおよび第2プレート1Cと、カソード触媒層3Cおよびアノード触媒層3Aとの間を通電する役割を備える。
また、カソードガス拡散層2Cおよびアノードガス拡散層2Aは、第1プレート1Aのガス流路14Aおよび第2プレート1Cのガス流路14Cと、カソード触媒層3Cおよびアノード触媒層3Aとの間でガスを拡散させる役割も備える。例えば、第1プレート1Aのガス流路14Aを流れるアノードガスは、アノードガス拡散層2Aを通じてアノード触媒層3Aの表面へと拡散する。
なお、必要に応じて、電気化学式水素ポンプ16の単セルに冷却器などが設けられ、2セル以上に積層することで、複数の単セルからなるスタックを構成しても構わない。
図2に示すように、電気化学式水素ポンプ16は、アノード室8とカソード室7とを備える。
アノード室8の内部は、アノード入口配管11と連通するとともに、図示しない流体流路(例えば、配管、マニホールドなど)を介して第1プレート1Aのガス流路14Aとも連通している。これにより、アノード入口配管11を流れるアノードガスは、アノード室8内に流入した後、第1プレート1Aのガス流路14Aへと供給される。
カソード室7の内部は、カソード出口配管12と連通するとともに、図示しない流体流路(例えば、配管、マニホールドなど)を介して第2プレート1Cのガス流路14Cとも連通している。これにより、MEA15を通過したカソードガス(水素ガス)は、第2プレート1Cのガス流路14Cを流れて、カソード室7内に流入した後、カソード出口配管12へと供給される。なお、カソード出口配管12には、開閉弁9(例えば、電磁弁など)が設けられており、開閉弁9を適時に開閉することで、カソードガスが、高圧水素タンク10内に貯えられる。そして、このようなカソードガスは、図示しない水素利用機器(例えば、燃料電池)の燃料などに使用される。
[アノードガス拡散層の構成]
図3は、第1実施形態の電気化学式水素ポンプのアノードガス拡散層の一例を示す図である。図3(a)には、アノードガス拡散層2Aを斜視した図が示されている。図3(b)には、アノードガス拡散層2Aのガス拡散部50の一部の領域100を平面視した図が示されている。図3(c)には、アノードガス拡散層2Aのガス拡散部50の領域100内のC−C部の断面が、電解質膜4とともに示されている。
図3(a)に示すように、アノードガス拡散層2Aは、複数の通気孔(図3(a)では図示せず)が設けられた、複数の金属シート22の積層体20を備える。なお、図3(a)では、複数の金属シート22が分離状態で図示されているが、実際は、金属シート22は積層されている。そして、例えば、金属シート22が、溶接、溶着またはロウ付けなどで一体的に接合されていてもよい。この場合、積層状態の金属シート22の主面は、拡散接合などにより面接合が行われていてもよい。
金属シート22は、通気孔以外の部分は、ガス通気性を備えないように構成されている。例えば、金属シート22は、厚みが数十μm〜数百μm程度(例えば、約100μm程度)の金属鋼板であってもよいが、これに限定されない。この金属シート22は、例えば、金属の鋳造および圧延を行うことで製造し得る。金属の鋳造および圧延の製法は公知であるので詳細な説明を省略する。
ここで、図3(b)および図3(c)に示すように、アノードガス拡散層2Aにおいて、アノード触媒層3Aに隣接する第1の金属シート22Fの複数の通気孔25Fの配設位置と第1の金属シート22Fに隣接する第2の金属シート22Sの複数の通気孔25Sの配設位置とがずれている。また、第1の金属シート22Fの通気孔25Fの開口の一部は、第2の金属シート22Sの通気孔25Sの開口と重なっている。また、第1の金属シート22Fの通気孔25Fの開口の残りの部分は、第2の金属シート22Sの通気孔25Sが設けられていない領域により塞がれている。
第1の金属シート22Fには、例えば、複数の通気孔25Fが、縦および横に等間隔ピッチで形成されていてもよい。そして、通気孔25Fの縦方向に隣接する通気孔25Fの横方向の並びにおいて、通気孔25Fの横方向の位置が、横方向に隣接する通気孔25Fの間隔Lの1/2だけ、ずれていてもよい。通気孔25Fの形状は、どのような形状でも構わない。通気孔25Fは、例えば、直径が数十μm程度の丸孔であってもよい。第1の金属シート22Fの材質として、例えば、ステンレスまたはチタンなどを用いることができるが、これに限定されない。
また、第2の金属シート22Sには、複数の通気孔25Sが、通気孔25Fと同じ間隔のピッチで縦および横に形成されていてもよい。そして、通気孔25Sの縦方向に隣接する通気孔25Sの横方向の並びにおいては、通気孔25Sの横方向の位置が、横方向に隣接する通気孔25Sの間隔Lの1/2だけ、ずれていてもよい。通気孔25Sの形状は、どのような形状でも構わない。通気孔25Sは、例えば、直径が数十μm程度の丸孔であってもよい。通気孔25Fの直径と通気孔25Sの直径とが等しくてもよい。第2の金属シート22Sの材質として、例えば、ステンレスまたはチタンなどを用いることができるが、これに限定されない。
本実施形態の電気化学式水素ポンプ16では、以上の第1の金属シート22Fと第2の金属シート22Sとを積層する場合、第1の金属シート22Fの通気孔25Fの配設位置と第2の金属シート22Sの通気孔25Sの配設位置とが、第1の金属シート22Fおよび第2の金属シート22Sの主面と平行かつ横方向に、両者の通気孔25Fおよび通気孔25Sの一部が重なり合うようにずれている。
これにより、第1の金属シート22Fの通気孔25Fの開口と第2の金属シート22Sの通気孔25Sの開口が重なる部分27A(図3(b)のドット部)が、平面視において、第1の金属シート22Fおよび第2の金属シート22Sの葉形状の通気空間として形成されている。
電気化学式水素ポンプ16の運転中(動作中)は、カソードおよびアノード間の差圧によって、電解質膜4が第1の金属シート22Fの通気孔25F上で押圧されるので、電解質膜4は、図3(c)に示すように、この通気孔25Fで凹状に垂れる。しかし、本実施形態の電気化学式水素ポンプ16では、電解質膜4は、第2の金属シート22Sの通気孔25Sが設けられていない領域で保持されるとともに、第1の金属シート22Fの厚みYは電解質膜4の厚みXよりも小さい。よって、第1の金属シート22Fの通気孔25Fにおける電解質膜4の垂れ込みが第1の金属シート22Fの厚みYにより規制され、この垂れ込み量は、電解質膜4の厚みXよりも小さい。
なお、上記の重なる部分27Aは、通気孔25Fおよび通気孔25Sの一部が重なり合う通気空間として形成されていれば、どのような形状であってもよい。本例では、円形状の通気孔25Fの一部および円形状の通気孔25Sの一部が互いに重なり合うことで、平面視において、葉形状の通気空間が形成されているが、これに限らない。例えば、長円形状の通気孔の長手方向の端部同士が重なり合うことで、平面視において、円形状の通気空間が形成されていてもよい。
このような重なる部分27Aの大きさ(面積)の設定方法については実施例で説明する。また、第1の金属シート22Fおよび第2の金属シート22S以外の積層体20の金属シート22の構成については第2実施形態で説明する。
なお、以上の第1の金属シート22Fの通気孔25Fおよび第2の金属シート22Sの通気孔25Sの形状、配置および寸法などは例示であって、本例に限定されない。
[動作]
以下、実施形態の電気化学式水素ポンプの動作について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の動作の一部または全部は、図示しない制御器の制御プログラムにより行われても構わない。制御器は、制御機能を有するものであれば、どのような構成であっても構わない。制御器は、例えば、演算回路と、制御プログラムを記憶する記憶回路と、を備える。演算回路として、例えば、MPU、CPUなどが例示される。記憶回路として、例えば、メモリが例示される。制御器は、集中制御を行う単独の制御器で構成されていてもよいし、互いに協働して分散制御を行う複数の制御器で構成されていてもよい。
まず、電圧印加器13により、MEA15のアノードとカソードの間に電圧を印加する。
次に、アノード入口配管11を通じて、アノードガスをアノード室8に供給すると、アノードガス中の水素は、アノード上で電子を遊離してプロトン(H)となる(式(1))。遊離した電子は、電圧印加器13を介してカソードへと移動する。
一方、プロトンは、水分子を同伴しながら電解質膜4内を透過し、カソードに触れる。カソードでは、電解質膜4を透過したプロトンと、カソードガス拡散層2Cからの電子とによる還元反応が行われ、カソードガス(水素ガス)が生成される(式(2))。
これにより、COガスなどの不純物を含むアノードガスから高効率にガスの純化が行われる。つまり、COガスなどの不純物は、MEA15において除去される。なお、アノードガスには、不純物としてCOガスを含有する場合がある。この場合、COガスは、アノード触媒層3Aなどの触媒活性を低下させるので、COガスは、図示しないCO除去器(例えば、変成器、CO選択酸化器など)で除去する方がよい。
そして、開閉弁9が閉止される場合、カソード室7内のカソードガスの圧力が上昇し、カソードのガス圧が高圧になる。具体的には、アノードのガス圧P1、カソードのガス圧P2および電圧印加器13の電圧Eの関係は、以下の式(3)で定式化される。
アノード:H(低圧)→2H+2e ・・・(1)
カソード:2H+2e→H(高圧) ・・・(2)
E=(RT/2F)ln(P2/P1)+ir・・・(3)
式(3)において、Rは気体定数(8.3145J/K・mol)、TはMEA15の温度(K)、Fはファラデー定数(96485C/mol)、P2はカソードのガス圧、P1はアノードのガス圧、iは電流密度(A/cm)、rはセル抵抗(Ω・cm)である。
式(3)から、電圧印加器13の電圧Eを上げることで、カソードのガス圧P2を上昇し得ることが容易に理解できる。
よって、本実施形態の電気化学式水素ポンプ16では、開閉弁9を閉止し、電圧印加器13の電圧Eを上げることで、カソード室7内のカソードのガス圧を上昇させる。そして、カソードのガス圧が所定圧以上になると、開閉弁9を開けることで、カソード室7内のカソードガスが、カソード出口配管12を通じて高圧水素タンク10へ充填される。一方、カソード室7内のカソードのガス圧が所定圧力未満になると、開閉弁9を閉めることで、カソード室7と高圧水素タンク10とが遮断される。このため、高圧水素タンク10のカソードガスがカソード室7に逆流することが抑制される。
このようにして、電気化学式水素ポンプ16により、カソードガス(水素ガス)が、所望の目標圧力に昇圧され、高圧水素タンク10へ充填される。
そして、このとき、電気化学式水素ポンプ16のカソードおよびアノード間の差圧が生じ、本差圧によって電解質膜4がアノードガス拡散層2Aに押圧されるが、本実施形態の電気化学式水素ポンプ16は、上記の差圧によってアノードガス拡散層2Aに押圧された電解質膜4が破断する可能性を従来よりも低減し得る。
具体的には、図3(b)および図3(c)に示すように、第1の金属シート22Fの通気孔25Fの配設位置と第2の金属シート22Sの通気孔25Sの配設位置とは、両者の通気孔25Fおよび通気孔25Sの一部が重なり合うようにずれているので、第1の金属シート22Fに対して通気孔の微細加工を行わずに、第1の金属シート22Fの通気孔25Fにおける電解質膜4の垂れ込み量を低減できる。つまり、図3(c)に示すように、電解質膜4が第1の金属シート22Fの通気孔25F上で押圧されても、第2の金属シート22Sの通気孔25Sが設けられていない領域で電解質膜4を保持することができるので、第1の金属シート22Fの通気孔25Fにおいて、電解質膜4が第2の金属シート22Sを超えて垂れ込むことが適切に抑制される。これにより、電気化学式水素ポンプ16のカソードおよびアノード間の差圧によって、第1の金属シート22Fの通気孔25F上で電解質膜4が押圧されても、この通気孔25Fのエッジ部25Eで電解質膜4が曲げられることを抑制できるので、電解質膜4が破断しにくくなる。
また、電解質膜4は、第2の金属シート22Sの通気孔25Sが設けられていない領域で保持されるとともに、第1の金属シート22Fの厚みYが電解質膜4の厚みXよりも小さい。このため、第1の金属シート22Fの通気孔25Fにおける電解質膜4の垂れ込みが第1の金属シート22Fの厚みYにより規制され、この垂れ込み量は電解質膜4の厚みXよりも小さい。よって、本実施形態の電気化学式水素ポンプ16は、両者の厚みが逆の場合に比べて、第1の金属シート22Fの通気孔25Fにおける電解質膜4の垂れ込み量を低減できる。これにより、電気化学式水素ポンプ16のカソードおよびアノード間の差圧によって、第1の金属シート22Fの通気孔25F上で電解質膜4が押圧されても、この通気孔25Fのエッジ部25Eで電解質膜4が曲げられることを更に効果的に抑制できる。
(実施例)
第1実施形態の実施例の電気化学式水素ポンプ16は、第1の態様または第2の態様の電気化学式水素ポンプ16において、第1の金属シート22Fの通気孔25Fの開口と第2の金属シート22Sの通気孔25Sの開口が重なる部分27Aの面積は、8×円周率×(電解質膜4の引張り強度)×(電解質膜4の膜厚)/(3×(電解質膜4の理論破断圧力)×(3+電解質膜4のポアソン比))よりも小さい。
一般的に、電解質膜を円形状の開口が形成された適宜の部材に載せ、適宜の圧力を付与した場合、以下の式(4)が成り立つことが知られている。
p=8×γ×(2×h/d)/(3×(3+v))・・・式(4)
式(4)において、pは電解質膜の理論破断圧力であり、γは電解質膜の引張り強度であり、hは電解質膜の膜厚であり、dは円形開口の直径であり、vは電解質膜のポアソン比である。
ここで、発明者らは、第1の金属シート22Fの通気孔25Fの開口と第2の金属シート22Sの通気孔25Sの開口が重なる部分27A(葉形状の通気空間)の長径D(図3(b)参照)を、式(4)の直径dと仮定しても、この式(4)の関係が近似的には成立し得ると判断した。
この場合、第1の金属シート22Fの通気孔25Fの開口と第2の金属シート22Sの通気孔25Sの開口が重なる部分27Aの長径Dが、式(4)により、(32×(電解質膜4の引張り強度)×(電解質膜4の膜厚)/(3×(電解質膜4の理論破断圧力)×(3+電解質膜4のポアソン比)))1/2よりも小さい場合、電解質膜4の理論破断圧力において、電解質膜4が破断することを適切に抑制できる。また、第1の金属シート22Fの通気孔25Fの開口と第2の金属シート22Sの通気孔25Sの開口が重なる部分27Aの面積(つまり、円周率×(D/2))が、式(4)より、8×円周率×(電解質膜4の引張り強度)×(電解質膜4の膜厚)/(3×(電解質膜4の理論破断圧力)×(3+電解質膜4のポアソン比))よりも小さい場合、電解質膜4の理論破断圧力において、電解質膜4が破断することを適切に抑制できる。なお、以上の開口が重なる部分27Aの長径Dおよび面積を導出する際には、電解質膜4の理論破断圧力を、別途、実験などで求めておくとよい。
以上により、本実施例の電気化学式水素ポンプ16では、第1の金属シート22Fの通気孔25Fの開口と第2の金属シート22Sの通気孔25Sの開口が重なる部分27Aの面積を適切に設定することができる。
本実施例の電気化学式水素ポンプ16は、上記特徴以外は、第1実施形態の電気化学式水素ポンプ16と同様であってもよい。
(第1変形例)
図4は、第1実施形態の第1変形例の電気化学式水素ポンプのアノードガス拡散層の一例を平面視した図である。図4には、アノードガス拡散層2Aのガス拡散部50(図3(a)参照)の一部の領域を平面視した図が示されている。
第1実施形態の電気化学式水素ポンプ16では、第1の金属シート22Fの通気孔25Fと第2の金属シート22Sの通気孔25Sとが同一形状である場合について説明した。
本変形例の電気化学式水素ポンプ16では、第1の金属シート22Fの通気孔125Fと第2の金属シート22Sの通気孔125Sとが相似形である場合について説明する。
図4に示す例では、第1の金属シート22Fの円形状の通気孔125Fの直径が、第2の金属シート22Sの円形状の通気孔125Sの直径よりも大きい。本例では、第1の金属シート22Fの通気孔125Fの周囲の3箇所において、この通気孔125Fの開口の一部が、第2の金属シート22Sの3個の通気孔125Sの開口のそれぞれの一部と重なり合っている。これにより、1個の通気孔125Fの開口と3個の通気孔125Sの開口が重なる第1部分127AA、第2部分127ABおよび第3部分127AC(図4のドット部)が、第1の金属シート22Fの通気孔125Fの周囲に、ほぼ等間隔だけ隔てて形成されている。
本変形例の電気化学式水素ポンプ16は、上記特徴以外は、第1実施形態または第1実施形態の実施例の電気化学式水素ポンプ16と同様であってもよい。例えば、上記の第1部分127AA、第2部分127ABおよび第3部分127ACのそれぞれの面積は、第1実施形態の実施例に記載の設定方法に基づいて導出してもよい。
(第2変形例)
図5は、第1実施形態の第2変形例の電気化学式水素ポンプのカソードガス拡散層の一例を示す図である。図5(a)には、カソードガス拡散層2Cを斜視した図が示されている。図5(b)には、カソードガス拡散層2Cのガス拡散部50の一部の領域100を平面視した図が示されている。図5(c)には、カソードガス拡散層2Cのガス拡散部50の領域100内のC−C部の断面が示されている。
本変形例の電気化学式水素ポンプ16は、第1実施形態、第1実施形態の実施例および第1実施形態の第1変形例のいずれかの電気化学式水素ポンプ16において、カソードガス拡散層2Cは、複数の通気孔が設けられた、複数の金属シート22の積層体20を備え、カソードガス拡散層2Cにおいて、カソード触媒層3Cに隣接する第3の金属シート22Gの複数の通気孔25Gの開口の少なくとも一部が、第3の金属シート22Gに隣接する第4の金属シート22Hの複数の通気孔25Hが設けられていない領域により塞がれている面積の総計は、アノードガス拡散層2Aにおいて、第1の金属シート22Fの複数の通気孔25Fの開口が、第2の金属シート22Sの複数の通気孔25Sが設けられていない領域により塞がれている面積の総計に比べ小さい。
カソードガス拡散層2Cの金属シート22の詳細な構成は、アノードガス拡散層2Aの金属シート22の構成と同様であるので説明を省略する。また、カソードガス拡散層2Cの第3の金属シート22Gおよび第4の金属シート22Hの構成はそれぞれ、第3の金属シート22Gと第4の金属シート22Hとが積層した状態以外は、アノードガス拡散層2Aの第1の金属シート22Fおよび第2の金属シート22Sの構成と同様であるので説明を省略する。
本変形例の電気化学式水素ポンプ16では、第3の金属シート22Gと第4の金属シート22Hとを積層する場合、第3の金属シート22Gの通気孔25Gの配設位置と第4の金属シート22Hの通気孔25Hの配設位置とが、第3の金属シート22Gおよび第4の金属シート22Hの主面と平行かつ横方向に、両者の通気孔25Gおよび通気孔25Hの一部が重なり合うようにずれている。
これにより、第3の金属シート22Gの通気孔25Gの開口と第4の金属シート22Hの通気孔25Hの開口が重なる部分27C(図5(b)のドット部)が、平面視において、第3の金属シート22Gおよび第4の金属シート22Hの楕円状の通気空間として形成されている。
そして、以上の開口が重なる部分27Cの大きさ(面積)は、アノードガス拡散層2Aにおいて、第1の金属シート22Fの通気孔25Fの開口と第2の金属シート22Sの通気孔25Sの開口が重なる部分27A(図3(b)のドット部)の面積よりも大きい。つまり、上記のとおり、第3の金属シート22Gの通気孔25Gの開口の少なくとも一部が、第4の金属シート22Hの通気孔25Hが設けられていない領域により塞がれている面積の総計は、アノードガス拡散層2Aにおいて、第1の金属シート22Fの通気孔25Fの開口が、第2の金属シート22Sの通気孔25Sが設けられていない領域により塞がれている面積の総計に比べ小さい。
なお、上記の重なる部分27Cは、通気孔25Gおよび通気孔25Hが重なり合う通気空間として形成されていれば、どのような形状であってもよい。本例では、円形状の通気孔25Gの一部および円形状の通気孔25Hの一部が互いに重なり合うことで、平面視において、楕円状の通気空間が形成されているが、これに限らない。例えば、円形状の通気孔25Gと円形状の通気孔25Hとが完全に重なり合うことによって、平面視において、円形状の通気空間が形成されていてもよい。
図6に示す例では、第3の金属シート22Gの円形状の通気孔125Gの直径が、第4の金属シート22Hの円形状の通気孔125Hの直径よりも大きい。本例では、第3の金属シート22Gの通気孔125Gの周囲の3箇所において、この通気孔125Gの開口の一部が、第4の金属シート22Hの3個の通気孔125Hの開口のそれぞれの一部と重なり合っている。これにより、1個の通気孔125Gの開口と3個の通気孔125Hの開口が重なる第1部分127CA、第2部分127CBおよび第3部分127CC(図6のドット部)が、第3の金属シート22Gの通気孔125Gの周囲に、ほぼ等間隔だけ隔てて形成されている。
そして、以上の開口が重なる第1部分127CA、第2部分127CBおよび第3部分127CCの大きさ(面積)はそれぞれ、アノードガス拡散層2Aにおいて、第1の金属シート22Fの1個の通気孔125Fの開口と第2の金属シート22Sの3個の通気孔125Sの開口が重なる第1部分127AA、第2部分127ABおよび第3部分127AC(図4のドット部)のそれぞれの面積よりも大きい。つまり、上記のとおり、第3の金属シート22Gの通気孔125Gの開口の少なくとも一部が、第4の金属シート22Hの通気孔125Hが設けられていない領域により塞がれている面積の総計は、アノードガス拡散層2Aにおいて、第1の金属シート22Fの通気孔125Fの開口が、第2の金属シート22Sの通気孔125Sが設けられていない領域により塞がれている面積の総計に比べ小さい。
以上により、本変形例の電気化学式水素ポンプ16は、カソードガス拡散層2Cをアノードガス拡散層2Aと同様に構成する場合に比べ、カソードガス拡散層2Cのガス拡散性の低下を軽減できる。具体的には、第3の金属シート22Gの複数の通気孔25G、125Gが塞がれているとカソードガス拡散層2Cのガス拡散性が低下する。ここで、カソードガス拡散層2Cは、アノードガス拡散層2Aに比べ、電気化学式水素ポンプ16のカソードおよびアノード間の差圧による変形を受けにくい。このため、カソードガス拡散層2Cにおける通気孔25G、125Gの開口が、通気孔25H、125Hが設けられていない領域により塞がれている面積の総計を、アノードガス拡散層2Aにおける通気孔25F、125Fの開口が、通気孔25S、125Sが設けられていない領域により塞がれている面積の総計よりも小さくすることにより、カソードガス拡散層2Cのガス拡散性の低下が軽減する。
なお、以上の第3の金属シート22Gの通気孔25G、125Gおよび第4の金属シート22Hの通気孔25H、125Hの形状および配置などは例示であって、本例に限定されない。
本変形例の電気化学式水素ポンプ16は、上記特徴以外は、第1実施形態、第1実施形態の実施例および第1実施形態の第1変形例のいずれかの電気化学式水素ポンプ16と同様であってもよい。
(第3変形例)
本変形例の電気化学式水素ポンプ16は、第1実施形態、第1実施形態の実施例および第1実施形態の第1変形例のいずれかの電気化学式水素ポンプ16において、カソードガス拡散層2Cは、複数の通気孔が設けられた、複数の金属シート22の積層体20を備え、カソードガス拡散層2Cにおいて、カソード触媒層3Cに隣接する第3の金属シート22Gの複数の通気孔25Gのうち、その開口の少なくとも一部が、第3の金属シート22Gに隣接する第4の金属シート22Hの複数の通気孔25Hが設けられていない領域により塞がれている、第3の金属シート22Gの通気孔25Gの数は、アノードガス拡散層2Aにおいて、第1の金属シート22Fの通気孔25Fのうち、その開口の少なくとも一部が、第2の金属シート22Sの複数の通気孔25Sが設けられていない領域により塞がれている、第1の金属シート22Fの通気孔25Fの数に比べ少ない。
カソードガス拡散層2Cの金属シート22の詳細な構成は、アノードガス拡散層2Aの金属シート22の構成と同様であるので説明を省略する。また、カソードガス拡散層2Cの第3の金属シート22Gおよび第4の金属シート22Hの構成はそれぞれ、第3の金属シート22Gと第4の金属シート22Hとが積層した状態以外は、アノードガス拡散層2Aの第1の金属シート22Fおよび第2の金属シート22Sの構成と同様であるので説明を省略する。
図示を省略するが、例えば、同一形状(例えば、直径が等しい円形状)の通気孔25Gと通気孔25Hとが完全に重なり合う数が多い程、複数の通気孔25Gのうち、その開口の少なくとも一部が、通気孔25Hが設けられていない領域により塞がれている、通気孔25Gの数は少なくなる。
よって、本変形例の電気化学式水素ポンプ16では、第3の金属シート22Gと第4の金属シート22Hとを積層する場合、通気孔25Gと通気孔25Hとの間での完全な重なりが、ガス拡散部50の少なくとも一部の領域において存在するように構成されている。これにより、第3の金属シート22Gの通気孔25Gが塞がれることが適切に抑制される。
以上により、本変形例の電気化学式水素ポンプ16は、カソードガス拡散層2Cをアノードガス拡散層2Aと同様に構成する場合に比べ、カソードガス拡散層2Cのガス拡散性の低下を軽減できる。具体的には、カソードガス拡散層2Cの第3の金属シート22Gの複数の通気孔25Gが塞がれているとカソードガス拡散層2Cのガス拡散性が低下する。ここで、カソードガス拡散層2Cは、アノードガス拡散層2Aに比べ、電気化学式水素ポンプ16のカソードおよびアノード間の差圧による変形を受けにくい。このため、カソードガス拡散層2Cにおける複数の通気孔25Gのうち、その開口の少なくとも一部が、複数の通気孔25Hが設けられていない領域により塞がれている通気孔25Gの数を、アノードガス拡散層2Aにおける複数の通気孔25Fのうち、その開口の少なくとも一部が、複数の通気孔25Sが設けられていない領域により塞がれている通気孔25Fの数に比べ少なくすることにより、カソードガス拡散層2Cのガス拡散性の低下が軽減する。
なお、以上の第3の金属シート22Gの通気孔25Gおよび第4の金属シート22Hの通気孔25Hの形状および配置などは例示であって、本例に限定されない。
本変形例の電気化学式水素ポンプ16は、上記特徴以外は、第1実施形態、第1実施形態の実施例および第1実施形態の第1変形例のいずれかの電気化学式水素ポンプ16と同様であってもよい。
(第2実施形態)
[装置構成]
図7Aおよび図7Bは、第2実施形態の電気化学式水素ポンプのアノードガス拡散層の一例を断面視した図である。図7Aおよび図7Bには、アノードガス拡散層2Aの積層体20の一部の断面が示されている。なお、アノード触媒層3Aに隣接する積層体20の部分には、上記のとおり、第1の金属シート22Fおよび第2の金属シート22Sが設けられているが、図7Aおよび図7Bでは、これらの第1の金属シート22Fおよび第2の金属シート22Sの図示を省略している。
図8A、図8Bおよび図8Cは、アノードガス拡散層の積層体の金属シートの一例を平面視した図である。
本実施形態の電気化学式水素ポンプ16は、第1実施形態、第1実施形態の実施例および第1実施形態の第1変形例−第3変形例のいずれかの電気化学式水素ポンプ16において、複数の金属シート22のうち、少なくとも1つの金属シート22は、貫通孔21同士を連絡する連絡路23を備える。
具体的には、図7Aおよび図7Bに示すように、積層体20は、ガスが通過する、複数の貫通孔21を有する金属シート22を備える。また、積層体20の複数の金属シート22のうち、少なくとも1つの金属シート22は、貫通孔21同士を連絡する連絡路23を備える。
積層体20は、複数の貫通孔21を有する金属シート22を備え、少なくとも1つの金属シート22が、貫通孔21同士を連絡する連絡路23を備えていれば、どのような構成であってもよい。
図7Aに示す例では、積層体20を貫通する方向に延伸するガス流路(以下、基準ガス流路)を構成する貫通孔21および連絡路23の両端部と、基準ガス流路から枝分かれし、隣の基準ガス流路に至るように積層体20の主面と平行な方向に延伸するガス流路を構成する連絡路23とが、積層体20に設けられている。これにより、連絡路23は、連絡路23が設けられた金属シート22に隣り合う、金属シート22の貫通孔21同士を連絡する。
図7Bに示す例では、階段状に延伸するガス流路(以下、階段状ガス流路)のうちの積層体20を貫通する方向に延伸する貫通路を構成する貫通孔21と、階段状ガス流路のうち貫通路同士を連絡する連絡路23とが、積層体20に設けられている。これにより、連絡路23は、連絡路23が設けられた金属シート22に隣り合う、金属シート22の貫通孔21同士を連絡する。
積層体20を平面視した場合、例えば、図8Aに示すように、積層体20の金属シート22Aに、複数の貫通孔21Aが、縦および横に等間隔ピッチでマトリクス状(格子状)に形成されていてもよい。貫通孔21Aの形状は、どのような形状でも構わない。貫通孔21Aは、例えば、直径が数十μm程度の丸孔であってもよい。金属シート22Aの材質として、例えば、ステンレスまたはチタンなどを用いることができるが、これに限定されない。なお、図8Aの金属シート22Aは、上記の連絡路を備えていない。
また、図8Bに示すように、積層体20の金属シート22Bに、複数の貫通孔21Bが、縦および横に等間隔ピッチで形成されていてもよい。貫通孔21Bの形状は、どのような形状でも構わない。貫通孔21Bは、例えば、直径が数十μm程度の丸孔であってもよい。金属シート22Bの材質として、例えば、ステンレスまたはチタンなどを用いることができるが、これに限定されない。
図8Bに示す例では、隣接する貫通孔21Bの中心が結ばれると、二点鎖線で示す菱形Sとなるように、貫通孔21Bが縦および横に配列されている。本例では、連絡路23Bは、隣り合う菱形Sのそれぞれの中心PBを斜めに結ぶ開口となるように形成されている。また、連絡路23Bは、貫通孔21B同士が連絡路23Bを横断せずに結ばれる第1方向と平行な方向に延伸しているとも言える。また、連絡路23Bは、第1方向と異なる方向で隣り合う貫通孔21B同士のうち離間距離のより長い隣り合う貫通孔21B同士(縦方向および横方向に隣り合う貫通孔21B同士)を結ぶ直線の中点(PB)を結ぶ開口となるように形成されているとも言える。そして、例えば、金属シート22Bと金属シート22Aとを積層する場合、貫通孔21Aと貫通孔21Bとが重なり合うとともに、貫通孔21Aと連絡路23Bの両端部とが重なり合うように、貫通孔21Bおよび連絡路23Bが配列されている。よって、この場合、連絡路23Bは、貫通孔21A同士を連絡することができる。
連絡路23Bは、どのような形状でも構わない。例えば、貫通孔21Bが、直径が数十μm程度の丸孔である場合、連絡路23Bは、幅が数十μm程度のスリットであってもよい。
また、図8Cに示すように、積層体20の金属シート22Cに、複数の貫通孔21Cが形成されていてもよい。貫通孔21Cの形状は、どのような形状でも構わない。貫通孔21Cは、例えば、直径が数十μm程度の丸孔であってもよい。金属シート22Cの材質として、例えば、ステンレスまたはチタンなどを用いることができるが、これに限定されない。
図8Cに示す例では、連絡路23Cを横断せずに、隣接する貫通孔21Cの中心が結ばれると、二点鎖線で示す傾斜直線Lとなるように、貫通孔21Cが縦および横に配列されている。本例では、連絡路23Cは、横方向に隣り合う貫通孔21C同士を結ぶ直線を三等分した場合の2つの中間点PCを横に結ぶ開口となるように形成されている。そして、例えば、金属シート22Aと金属シート22Cと積層する場合、貫通孔21Aと貫通孔21Cとが重なり合うとともに、貫通孔21Aと連絡路23Cの両端部とが重なり合うように、貫通孔21Cおよび連絡路23Cが配列されている。よって、この場合、連絡路23Cは、貫通孔21A同士を連絡することができる。
連絡路23Cは、どのような形状でも構わない。例えば、貫通孔21Cが、直径が数十μm程度の丸孔である場合、連絡路23Cは、幅が数十μm程度のスリットであってもよい。
以上により、アノードガス拡散層2Aの積層体20は、従来に比べアノードガスを均一に拡散し得る。つまり、積層体20が連絡路23を備えることで、積層体20内を通過するアノードガスを一方向だけではなく、任意の方向に送ることができる。すると、連絡路23の配置パターンが異なる金属シート22を積層体20に積層させることで、積層体20内のアノードガスの流れの向きを任意に設定できる。これにより、アノードガス拡散層2Aのガス拡散性が向上する。
なお、連絡路23の配置パターンが異なる金属シート22の組合せはどのようなものであってもよい。例えば、金属シート22Cとは配置パターンが異なる金属シートは、連絡路23Cの位置が横にずれた金属シートでもよいし、金属シート22Bでもよい。
また、例えば、図示しない流路部材のガス流路を通じてアノードガス拡散層2Aの積層体20の貫通孔21にアノードガスを流入させる構成を取る場合、この積層体20が上記の連絡路を備えないと、流路部材のガス流路が設けられていない部分の垂直線上に位置するアノードガス拡散層2Aの積層体20の貫通孔21にはアノードガスが流れずに、アノードガス拡散層2Aのガス拡散が不均一化する恐れがある。しかし、本実施形態の電気化学式水素ポンプ16のアノードガス拡散層2Aでは、上記の連絡路23を介して、このようなアノードガス拡散層2Aの積層体20の貫通孔21にもアノードガスを流すことができるので、アノードガス拡散層2Aのガス拡散が不均一化することを抑制できる。
以上により、アノードガス拡散層2Aのガス拡散性が向上するので、電気化学式水素ポンプ16の反応過電圧の増加を抑制できる。つまり、アノードガス中の水素がプロトンと電子に解離する際の反応抵抗(反応過電圧)の増大、すなわち、電気化学式水素ポンプ16の水素圧縮運転に必要な消費電力の増加が従来よりも抑制される。
また、アノードガス拡散層2Aの積層体20の金属シート22は連絡路23の数が少ない程、アノード触媒層3Aと金属シート22との間の接触面積が増える。ここで、図4に示すように、アノード触媒層3Aに隣接する第1の金属シート22Fは、このような連絡路を備えないので、第1の金属シート22Fとアノード触媒層3Aとの間の接触面積は、アノード触媒層3Aが、連絡路を備える金属シートに隣接する場合に比べ増える。よって、第1の金属シート22Fとアノード触媒層3Aとの間の拡散抵抗を適切に低減できる。
また、アノードガス拡散層2Aの積層体20の金属シート22の連絡路の数が多くなる場合、この金属シート22の面内の流体抵抗のバラツキが増大する傾向がある。例えば、連絡路が多い領域とそうでない領域とが、金属シート22の面内に混在する場合、連絡路23の方が貫通孔21よりも開口面積が大きいため、前者の領域が後者の領域に比べ流体抵抗が低くなる。すると、前者の領域が後者の領域よりもガスが流れやすくなる。このため、仮に連絡路23の数が多い金属シート22がアノード触媒層3Aと接触する場合、アノードガス拡散層2Aからアノード触媒層3Aの全域にガスを万遍なく供給することが阻害される可能性がある。しかし、本実施形態の電気化学式水素ポンプ16のアノードガス拡散層2Aでは、このような連絡路を備えない第1の金属シート22Fがアノード触媒層3Aと接触することで、このような可能性が低減される。
なお、本実施形態の電気化学式水素ポンプ16は、上記特徴以外は、第1実施形態、第1実施形態の実施例および第1実施形態の第1変形例−第3変形例のいずれかの電気化学式水素ポンプ16と同様であってもよい。
また、以上の貫通孔21および連絡路23の形状および寸法は例示であって、本例に限定されない。
(第1実施例)
図9は、第2実施形態の第1実施例の電気化学式水素ポンプのアノードガス拡散層の一例を断面視した図である。図9には、アノードガス拡散層2Aの積層体20の一部の断面が示されている。なお、アノード触媒層3Aに隣接する積層体20の部分には、上記のとおり、第1の金属シート22Fおよび第2の金属シート22Sが設けられているが、図9では、これらの第1の金属シート22Fおよび第2の金属シート22Sの図示を省略している。
本実施例の電気化学式水素ポンプ16は、第2実施形態の電気化学式水素ポンプ16において、連絡路23は、連絡路23が設けられた金属シート22に隣り合う同一の金属シート22Dに設けられた貫通孔21LDおよび貫通孔21RD同士を連絡する。つまり、連絡路23は、連絡路23が設けられた金属シート22の下方の同一の金属シート22Dに存在する左の貫通孔21LDと右の貫通孔21RDとを連絡している。なお、貫通孔21LDと貫通孔21RDとは、連絡路23の長さ分、積層体20の主面と平行な方向に偏倚している。
また、図9に示すように、連絡路23が設けられた金属シート22の上方の金属シート22Uが、貫通孔21LDの直上の貫通孔21Uを備えてもよい。この場合、連絡路23は、貫通孔21Uと貫通孔21RDとを連絡する。なお、連絡路23が設けられた金属シート22の上方の金属シート22Uが、貫通孔21RDの直上の貫通孔(図示せず)を備えてもよい。この場合、連絡路23は、上記の直上の貫通孔と貫通孔21LDとを連絡する。
アノードガス拡散層2Aの積層体20が、上記の連絡路23を備えることで、積層体20内を通過するアノードガスを、積層体20を貫通する方向だけではなく、積層体20の主面と平行な方向にも送ることができる。よって、アノードガス拡散層2Aのガス拡散性が向上する。
本実施例の電気化学式水素ポンプ16は、上記特徴以外は、第2実施形態の電気化学式水素ポンプ16と同様であってもよい。
(第2実施例)
図10は、第2実施形態の第2実施例の電気化学式水素ポンプのアノードガス拡散層の一例を断面視した図である。図10には、アノードガス拡散層2Aの積層体20の一部の断面が示されている。なお、アノード触媒層3Aに隣接する積層体20の部分には、上記のとおり、第1の金属シート22Fおよび第2の金属シート22Sが設けられているが、図10では、これらの第1の金属シート22Fおよび第2の金属シート22Sの図示を省略している。
本実施例の電気化学式水素ポンプ16は、第2実施形態または第2実施形態の第1実施例の電気化学式水素ポンプ16において、連絡路23は、連絡路23が設けられた金属シート22に隣り合う、異なる金属シート22Uおよび金属シート22Dに設けられた貫通孔21Uおよび貫通孔21D同士を連絡する。つまり、連絡路23は、連絡路23が設けられた金属シート22の上方の金属シート22Uの貫通孔21Uと下方の金属シート22Dの貫通孔21Uとを連絡している。なお、貫通孔21Uと貫通孔21Dとは、連絡路23の長さ分、積層体20の主面と平行な方向に偏倚している。
アノードガス拡散層2Aの積層体20が、上記の連絡路23を備えることで、積層体20内を通過するガスを、積層体20を貫通する方向だけではなく、積層体20の主面と平行な方向にも送ることができる。よって、アノードガス拡散層2Aのガス拡散性が向上する。
本実施例の電気化学式水素ポンプ16は、上記特徴以外は、第2実施形態または第2実施形態の第1実施例の電気化学式水素ポンプ16と同様であってもよい。
(変形例)
図11は、第2実施形態の変形例の電気化学式水素ポンプのアノードガス拡散層の一例を断面視した図である。図11には、アノードガス拡散層2Aの積層体20の一部の断面が示されている。なお、アノード触媒層3Aに隣接する積層体20の部分には、上記のとおり、第1の金属シート22Fおよび第2の金属シート22Sが設けられているが、図11では、これらの第1の金属シート22Fおよび第2の金属シート22Sの図示を省略している。
本変形例の電気化学式水素ポンプ16は、第1の態様−第2の態様、第1実施形態の実施例、第1実施形態の第1変形例−第3変形例、第2実施形態および第2実施形態の第1実施例−第2実施例のいずれかの電気化学式水素ポンプ16において、アノードガス拡散層2Aの積層体20は、ガスを拡散させる金属焼結体の金属シート222を含む。
金属焼結体の金属シート222は、例えば、金属粉を焼結することで得られ、骨格部54および複数の空孔部53からなる多孔質化された構成を備える。空孔部53は、直径が数十μm程度(例えば、約50μm程度)の空間であって互いに連通している。これにより、アノードガスが、金属シート222をその厚み方向に通過するとき、アノードガスを拡散することができる。なお、金属シート222は、平滑に表面処理されている。
以上により、本変形例の電気化学式水素ポンプ16は、アノードガス拡散層2Aの積層体20が金属焼結体の金属シート222を備えることで、積層体20が、金属焼結体の金属シートを備えずに、通気孔が設けられた複数の金属鋼板で構成される場合に比べて、アノードガス拡散層2Aに必要なガス通気性およびガス拡散性を確保しやすくなる。
本変形例の電気化学式水素ポンプ16は、上記特徴以外は、第1実施形態、第1実施形態の実施例、第1実施形態の第1変形例−第3変形例、第2実施形態および第2実施形態の第1実施例−第2実施例のいずれかの電気化学式水素ポンプ16と同様であってもよい。
なお、第1実施形態、第1実施形態の実施例、第1実施形態の第1変形例−第3変形例、第2実施形態、第2実施形態の第1実施例−第2実施例および第2実施形態の変形例は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせても構わない。
また、上記説明から、当業者にとっては、本開示の多くの改良および他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本開示を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本開示の精神を逸脱することなく、その構造および/または機能の詳細を実質的に変更できる。
本開示の一態様は、カソードおよびアノード間の差圧によってアノードガス拡散層に押圧された電解質膜が破断する可能性を従来よりも低減し得る電気化学式水素ポンプに利用できる。
1A :第1プレート
1C :第2プレート
2A :アノードガス拡散層
2C :カソードガス拡散層
3A :アノード触媒層
3C :カソード触媒層
4 :電解質膜
7 :カソード室
8 :アノード室
9 :開閉弁
10 :高圧水素タンク
11 :アノード入口配管
12 :カソード出口配管
13 :電圧印加器
14A :ガス流路
14C :ガス流路
15 :膜電極接合体(MEA)
16 :電気化学式水素ポンプ
20 :積層体
21 :貫通孔
21A :貫通孔
21B :貫通孔
21C :貫通孔
21D :貫通孔
21LD :貫通孔
21RD :貫通孔
21U :貫通孔
22 :金属シート
22A :金属シート
22B :金属シート
22C :金属シート
22D :金属シート
22F :第1の金属シート
22S :第2の金属シート
22G :第3の金属シート
22H :第4の金属シート
22U :金属シート
23 :連絡路
23B :連絡路
23C :連絡路
25E :エッジ部
25F :通気孔
25S :通気孔
25G :通気孔
25H :通気孔
27A :開口が重なる部分
27C :開口が重なる部分
50 :ガス拡散部
53 :空孔部
54 :骨格部
100 :領域
125E :エッジ部
125F :通気孔
125S :通気孔
125G :通気孔
125H :通気孔
127AA :第1部分
127AB :第2部分
127AC :第3部分
127CA :第1部分
127CB :第2部分
127CC :第3部分
222 :金属シート

Claims (9)

  1. 一対の主面を備える電解質膜と、
    前記電解質膜の一方の主面に設けられたカソード触媒層と、
    前記電解質膜の他方の主面に設けられたアノード触媒層と、
    前記カソード触媒層に設けられたカソードガス拡散層と、
    前記アノード触媒層に設けられたアノードガス拡散層と、
    前記カソード触媒層および前記アノード触媒層の間に電圧を印加する電圧印加器と、
    を備え、
    前記アノードガス拡散層は、複数の通気孔が設けられた、複数の金属シートの積層体を備え、
    前記アノードガス拡散層において、前記アノード触媒層に隣接する第1の金属シートの複数の通気孔の配設位置と前記第1の金属シートに隣接する第2の金属シートの複数の通気孔の配設位置とがずれており、
    前記第1の金属シートの通気孔の開口の一部は、前記第2の金属シートの通気孔の開口と重なっており、
    前記第1の金属シートの通気孔の開口の残りの部分は、前記第2の金属シートの通気孔が設けられていない領域により塞がれている、電気化学式水素ポンプ。
  2. 前記第1の金属シートの厚みは、前記電解質膜の厚みよりも小さい請求項1に記載の電気化学式水素ポンプ。
  3. 前記第1の金属シートの通気孔の開口と前記第2の金属シートの通気孔の開口が重なる部分の面積は、8×円周率×(電解質膜の引張り強度)×(電解質膜の厚み)/(3×(電解質膜の理論破断圧力)×(3+電解質膜のポアソン比))よりも小さい請求項1または2に記載の電気化学式水素ポンプ。
  4. 前記カソードガス拡散層は、複数の通気孔が設けられた、複数の金属シートの積層体を備え、
    前記カソードガス拡散層において、前記カソード触媒層に隣接する第3の金属シートの複数の通気孔の開口の少なくとも一部が、前記第3の金属シートに隣接する第4の金属シートの複数の通気孔が設けられていない領域により塞がれている面積の総計は、前記アノードガス拡散層において、前記第1の金属シートの複数の通気孔の開口が、前記第2の金属シートの複数の通気孔が設けられていない領域により塞がれている面積の総計に比べ小さい、請求項1−3のいずれか1項に記載の電気化学式水素ポンプ。
  5. 前記カソードガス拡散層は、複数の通気孔が設けられた、複数の金属シートの積層体を備え、
    前記カソードガス拡散層において、前記カソード触媒層に隣接する第3の金属シートの複数の通気孔のうち、その開口の少なくとも一部が、前記第3の金属シートに隣接する第4の金属シートの複数の通気孔が設けられていない領域により塞がれている、前記第3の金属シートの通気孔の数は、前記アノードガス拡散層において、前記第1の金属シートの通気孔のうち、その開口の少なくとも一部が、前記第2の金属シートの複数の通気孔が設けられていない領域により塞がれている、前記第1の金属シートの通気孔の数に比べ少ない、請求項1−3のいずれか1項に記載の電気化学式水素ポンプ。
  6. 前記複数の金属シートのうち、少なくとも1つの前記金属シートは、貫通孔同士を連絡する連絡路を備える請求項1−5のいずれか1項に記載の電気化学式水素ポンプ。
  7. 前記連絡路は、前記連絡路が設けられた金属シートに隣り合う同一の金属シートに設けられた貫通孔同士を連絡する請求項6に記載の電気化学式水素ポンプ。
  8. 前記連絡路は、前記連絡路が設けられた金属シートに隣り合う異なる金属シートに設けられた貫通孔同士を連絡する請求項6または7に記載の電気化学式水素ポンプ。
  9. 前記積層体は、ガスを拡散させる金属焼結体の金属シートを含む請求項1−8のいずれか1項に記載の電気化学式水素ポンプ。
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