JP2018103609A - 金箔装飾法 - Google Patents
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Abstract
Description
そこで、本発明者は、金箔の純度と厚さ、使いやすい道具類として箔離紙、箔把持器、箔のり、筆、刃、定規、箔の切り方、箔の貼り方を検討し、より短期間で箔装飾の技を修得できるように工夫した。
一方、従来の截金技法は、木製の仏像の表面装飾を主に、一部の工芸品に使われているが、本発明の金箔装飾法は、このような工芸品の装飾に加えて、本発明者が以前に考案した高温加熱下で制作する、陶磁器、七宝焼き、ガラスなどの‘やきもの’への応用が可能であり、したがってより広い分野で活用することができる。
金箔装飾の代表的な技法の一つとして古くから截金技法が存在しているが、知名度は低く、道具を揃え、技をマスターするには長年を要するために、これは一部の限られた職人のみが使うことができる技法である。
本発明は、きりかね技法において、使用する道具類、製作工程をより簡略化し、作業の難易度を下げることで、例えば、日本画家、木工作家、陶芸家、切り絵・貼り絵作家など、多方面の人が利用できるようにした技法を提供し、それぞれの分野で優美で繊細な黄金の美しさを表現した作品を産み出せるようにすることを目的とする。また、歯科分野では、身元確認のため歯冠修復物(硬質レジンジャケット冠、オールセラミック冠、金属焼付ポーセレン、ハイブリットセラミック冠など)の表面に、あるいは、義歯(入れ歯)の一部に本人確認の印として、イニシャルなどの細かな絵柄を施すことが行われているが、本発明の方法はこのような歯冠修復物や義歯の装飾に有効に利用することができる。
さらに、きりかね技法を広め、きりかね作品を身近に感じてほしいとの思いから、本発明者はより簡単かつ確実に箔を切って基台に貼ることができる技法を考案した。(筑泉きりかね技法)
箔離紙に金箔を挟むことによって静電気の影響を受けることなく金属箔をきりわけることができ、ワンタッチで開閉できる箔把持器を使用することで作業を容易にすることができる。以下に、詳細に説明する。
金箔:従来から行われている截金技法では、厚さ0.4μm程の金箔を4枚ほど重ねたうえで熱を加えて圧着して金箔をはり合わせる箔合わせとよばれる手間のかかる作業をなくした。本発明の方法では厚さ1〜3μmの金箔の使用が適しており、特に3号色の金箔を使用する場合は2μmの厚さの金箔が貼りやすく取り扱いやすい。
また、金箔には純度によって3号色、2号色、1号色、五耗色、純金箔といった種類があるが、金箔が持つ輝きの特性を最大限に生かせる厚さと、それぞれの金箔の純度との組み合わせを適宜変えることで趣の異なる作品を制作することができる。色調の変化を求める場合は、色箔の他にも4号色以下の純度の金箔を使用するようにしてもよく、4号色以下の金箔を他の金属箔と組み合わせて使用することも考えられる。
そこで、従来から存在する柿渋に含まれる柿タンニンが硬化して皮膜を形成することに着目し、基材となる紙に柿渋を塗布することで、紙が薄茶色に染色され、切断作業中での紙の表面からの反射が抑えられ、箔との境界が見やすくなる。さらに、柿渋を塗布することで紙全体を硬めで樹脂状の皮膜が形成され、挟まれた金箔と一体となって刃が切り進むことができるようになる。
箔離紙の基材としては、光透過性の高い、紙やプラスチックフィルム類があるが、その中で、繊維密度の高いグラシン紙や「金箔打紙製法」による箔打ち紙(いわゆる、あぶらとり紙)が好適である。また、塗布材料として、天然素材からなる柿渋やシリコーン化合物をはじめとする合成樹脂類があるが、柿渋が安価で手に入りやすく、大掛かりな設備がなくても塗布作業が簡単に行える利点がある。
基材となる紙(グラシン紙又は箔打ち紙)は、ひとたび水に濡れると破れやすくなり、収縮率が高いので乾くと皺になりやすい。箔離紙として使用する場合は、紙面の凹凸(皺を含めて)は切断時のスムーズな刃おくりを阻害することになり、金箔線の断線につながる原因となる。そこで、本発明では、粘度が低く、比較的皺になりにくい無臭柿渋液を使って塗布する。
まず、平らな板を用意して、板面に薄く水を張る。その上に基材となる紙を置き、スポンジ等で小刻みに軽く叩きながら紙下に残る小さな気泡を押し出しながら、余分な水分を取り除き、平らな面にする。次に、紙の裏側四隅1cm2ほどに水でうすめた糊をつけて板に仮止めを行う。自然乾燥後、切断時の刃送りをスムーズにするために滑剤として微粉体タルクを混ぜた柿渋液(液100ccあたり0.2〜0.5gのタルク)を幅広の刷毛を使って速やかに端から順々に塗布し、全体が均一になるようにする。その後、板につけたまま自然乾燥させる。塗布→乾燥を数回繰り返すことで、紙の色合いが濃くなるので、金箔の切り分け作業がしやすい色合いに仕上げる。紙の四隅を仮止めしておくことで乾燥後、平滑な面を有する箔離紙が得られる。その後、仮止めされた箔離紙の四隅の部分をへらを使って板からはがすことで皺のない箔離紙が出来上がる。
ニカワ溶液は、ニカワを一昼夜水中でふやかし、沸騰させずにゆっくりかき混ぜて作る。
ふのり溶液は、ふのりを入れた水を煮詰めて作る。
混合割合はにかわ液とふのり液を1:1を目安にする。周囲温度、湿度等の作業環境の差によって若干の配合調整が必要となる。
筆の尻の先端に合成樹脂でできた円錐状の突起を設けるとよい。この突起は、金属線を基台に貼っていく途中で金箔線を切りたいときに、その切りたい部位の金箔線面に突起を押し当てたまま、把持器を貼ってきた逆方向に引いて金箔線を切るのに使用できる。
シャープな切り口を確保するためにこまめに刃先を交換する。
実施例で施した北極星は、本発明の特徴を生かした、髪の毛の太さの金箔線を用いて、一点を中心に放射状に8本(12本でも可)貼り合せてできる文様で、揺めく黄金の輝きを表現することができる。
一方で、大きな絵柄を切り取る場合は、金箔を箔離紙に挟んだ状態でテンプレートを使用するか、あるいはフリーハンドで切り取りを行う。また、決まった形を一度に多く切りぬく場合は、ポンチによる型抜き法を使うと便利である。
カッティングマットの材質には、塩化ビニール樹脂とオレフィン樹脂のものがあり、刃当たりの良い、軟硬軟のサンドイッチ構造になっているものが好ましい。
なお、上述の実施形態では、金箔を例にとって説明したが、装飾に使用する材料は金箔に限らず、プラチナ箔、銀箔などを使用するようにしてもよい。
まず、紙に図柄を下書きしておく。下書きを参考に基台の表面の要となるポイントにマーカーで印をつけておき、デザインの大きなずれを防ぐようにした。使用する金箔を、同じ長さ、同じ幅の太さのパーツをあらかじめまとめて切り分けておくとよい。この際、黒色系の紙の上にこのパーツを並べておくと、見分けやすく作業能力を高めることができる。なお、本例では、基台にガラスを用いているが、基台はガラスに限らず、木、陶磁器、樹脂などでもよい。
本発明の方法にしたがって切り分けた種々の太さ、形状の金箔を、基台の所定の場所に順次貼り付けてゆく。金箔が作業途中で切れたり、ねじれが戻らない場合は、その時点で金箔を切断して作業を一時中断し、その後、同じ太さの新しい金箔を切断部から1ないし3ミリメートル重ねて継ぎ足して貼ってゆく。なお、修繕の場合も、この要領で行うことができる。
金箔を貼ってゆく工程で、水を含んだ筆で金箔を軽くなぞって余分な箔のりを取り除いておくことによって、より良好に仕上げることができる。
さらに、貼り終えた金箔が剥離しないように、また、黄金の輝きをより美しく発現させるために、保護層として透明樹脂又は透明釉薬で表面をコーティングするようにしてもよい。
本発明において、基台となりうる素材として、陶磁器、ガラス、樹脂、木、紙、石などがある。また、図柄を描く材料として、金属箔単独使用の他に、金属粉、顔料、漆、切り絵用素材と併用することで色彩豊かな作品を作り出すことができる。
図1は、本実施例の磁器製の小筥を示す平面図である。基台の表面に「TOKYO」の文字と、北極星および五大陸の外縁を、本発明のきりかね技法を用いて装飾を施した。図2は、図1に示す小筥のA−A線の断面図である。磁器の基台1の上に「TOKYO」の文字2と、北極星3、および五大陸の外縁4が、金箔を用いたきりかね技法で貼り付けられている。図3は、基台に貼り付けた金箔の詳細を示す図であり、金箔2(3、4)は、基台1の上に箔のり5を介して貼り付けられている。なお、北極星3の輝き3aの部分は人の毛髪ほどの太さ(約0.05mm程度)であり、本発明の技法によればこのような細密線状に金箔を容易に切り分けることができる。
本例では、金箔を切り分けて図柄を作成するようにしているが、本発明は金箔のみを用いたデザインに限定されるものではなく、例えば、顔料や色うるしを使った図柄や、あるいはその他の技法で作成した図柄と、金箔を切り分けた図柄を組み合わせたデザインにも応用することができる。また、本発明の方法は、毛髪程度の太さ(0.05mm)から約2mm程度の太さに金箔を切り分けるのに好適であるが、これ以上の幅を有する金箔と本発明によって切り分けた細密な金箔とを組み合わせたデザインを基台に施すことができる。
2 金箔
3 北極星の輝き(髪の毛の太さ)
4 五大陸の外縁
5 箔のり
Claims (4)
- 基台に金属箔を貼りつける方法において、
金属箔の上下を箔離紙で挟む工程と;
前記箔離紙で挟んだ金属箔をカッターで0.05〜2mm幅の金属箔線に切り
分ける工程と、
当該切り分けた金属箔線の一端を箔把持器で挟み、一方でその把持器を保持したまま、他方で箔のりの付いた筆で金属箔線の他端を拾う工程と、
前記筆で前記箔のりを付けつつ、金属箔線を前記基台上に導いて前記基台に貼って、絵柄を仕上げる工程と;
を具えることを特徴とする箔装飾法。 - 前記金属箔が、金箔、プラチナ箔、銀箔のいずれかであって、それぞれの箔が純度95%以上、厚さ1〜3μmであることを特徴とする請求項1に記載の箔装飾法。
- 前記箔把持器が、金属製の逆作用タイプのピンセットであり、金属製の口先部内側に溝を設けたピンセットであることを特徴とする請求項1又は2に記載の箔装飾法。
- 前記箔離紙が、光透過性の高い基材に、滑剤を混ぜた柿渋を塗布したものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の箔装飾法。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN110816141A (zh) * | 2019-11-26 | 2020-02-21 | 深圳市生华珠宝首饰有限公司 | 一种云龙蚕丝饰品及其制作方法 |
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江場佛像彫刻所, 彩色による絢爛な世界観と荘厳の最高峰、截金の精密, JPN6021025302, 8 May 2016 (2016-05-08), ISSN: 0004545696 * |
静岡県立美術館, 5/28-29 実技講座「日本画・金箔貼り」, JPN6021025301, 2 June 2016 (2016-06-02), ISSN: 0004545697 * |
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