本願に係る発明(以下「本発明」と称す)の実施例として、二次元コード1が表示される印刷物100を用いて説明する。尚、以下に示す実施例における二次元コード1は、専用のコード読取装置や専用のアプリケーションがインストールされたスマートフォンなどを利用した二次元コード読取装置2(二次元コード読取装置については、後に詳述する)により、記録された文字情報が音声を使った読み上げにより聴取できるように構成された音声コード(Uni−Voice(登録商標))のことであり、以下の説明では音声コード1と称する。尚、印刷物100の実施例としてチケットに前記音声コード1を備えさせた例を用いて説明するが、この実施例に限定されるものでない。
図1は印刷物100の実施例として、音声コード1を備えたチケット100を示す概略平面図である。図1において、前記音声コード1は印字領域110にプリンタにより印字された印字情報であり、「TICKET」などの文字情報121、背景模様122などはそれぞれ印刷領域120に印刷された印刷情報である。更に、本発明の実施例では、印刷情報として、前記チケット(印刷物)100の真贋判定用として、単色インキによりベタ印刷されてなる所定の大きさの判定領域130(この判定領域については、後に詳述する)が、前記音声コード1に対して所定の位置に、所定の大きさで設けられている。
前記印字領域110は、前記音声コード1の外形寸法と略同じ大きさか、もしくは前記音声コード1の外形寸法より広い領域を有すればよいが、前記音声コード1の読み取りに際して、前記印刷領域120に印刷される前記文字情報121などによる影響を受けないように、好ましくは前記音声コード1の外形寸法より広い領域とするのが良い。図1、図2に前記印刷領域110を具体的に示す。これらの図において破線で示されるのが前記印刷領域110であり、この実施例では前記音声コード1より広い領域を有するように形成されている。図に示した破線は前記印字領域110を説明するための仮想線である。この仮想線は前記印字領域110を説明するために示したものであり無くてもよいが、好ましくは、上述したスマートフォン等を使って前記音声コード1を撮影する際の画角(写し込む範囲)を示すものとして形成されていても良い。前記印刷領域120は、前記印字領域110を除く一部の領域、或いは全ての領域に配設させることができる。尚、この実施例では、前記印字領域110はチケット100の半券部分に形成されているが、この実施例に限定されるものではなく、前記印字領域110及び前記印刷領域120の領域の場所や大きさは問わない。また、印刷物100を構成する媒体105は紙に限定されるものではなく、前記印刷情報である前記文字情報121、背景模様122などが印刷可能で、前記印字情報である前記音声コード1が印字可能であれば、何れの材質から構成されていてもよい。
次に、前記音声コード1の概略構成について説明する。前記音声コード1は、バイナリデータがセル化され、当該セルが縦横の2方向に配列されることで二次元マトリックス状に構成されたデータ要素領域5と、前記データ要素領域5を囲むように配設された、前記データ要素領域5の切り出しと位置決めを行うためのデータ認識用T字形マーカ3とを備える。
図2、図3を基に前記音声コード1を詳しく説明する。これらの図において図2は前記音声コード1の構成を説明する概略説明図であり、図3は図2で示す前記音声コード1の部分拡大図である。尚、これらの図において左斜め線のハッチングで示されるのが前記データ要素領域5を示している。
前記音声コード1は、前記データ要素領域5を囲うように配設された破線20、30、40、50を一辺とする矩形部10と、前記矩形部10を成す前記破線20、30、40、50の各線分21、31、41、51から垂直に延出された見出し線22、32、42、52とから構成されると共に、前記破線20、30、40、50の前記線分21、31、41、51及び前記見出し線22、32、42、52から構成され、前記線分21、31、41、51の内、線分21、31のように、線分が前記データ要素領域5における一方の縦辺a側及びこの縦辺と直交する一方の横辺b側に向けて配設されるようにT字形に形成されたマーカ23、33と、前記見出し線22、32、42、52の内、見出し線42、52のように、見出し線が前記データ要素領域5における互いに直交し前記一方の縦辺aと前記一方の横辺bにそれぞれ対向する他方の縦辺c側及び他方の横辺d側に向けて配設されるようにT字形に形成されたマーカ43、53と、からなるデータ認識用T字形マーカ3とを備える。
これらの構成において、前記データ要素領域5と前記データ認識用T字形マーカ3とは、前記データ要素領域5における前記一方の縦辺a及び一方の横辺bと前記データ認識用T字形マーカ3における前記マーカ23、33(より詳しくは前記線分21、31)との間に第一の間隙(図3参照)11を有し、前記データ要素領域5における前記他方の縦辺c及び他方の横辺dと前記データ認識用T字形マーカ3における前記マーカ43、53 (より詳しくは前記見出し線42、52)との間には第二の間隙(図2参照)12を有するように配設されることで前記音声コード1が形成されている。
前記データ要素領域5について図3を用いて説明する。前記データ要素領域5は、記録される文字情報に基づいて黒色セル6、白色セル7が縦横の2方向に配列された二次元マトリックスからなる。本発明においてはセルの一辺の長さは、1/150インチ(例えば、解像度600dpiにおいて4ドット分の長さ)乃至1/100インチ(解像度200dpiにおいて2ドット分の長さ)の範囲内であればよいが、好ましくは1/150インチの長さであるのが良い。この音声コード1は、コードサイズが変わっても前記データ要素領域5を構成するセルサイズは一定の大きさからなり、コードサイズの違いはセルの数の違い、即ちデータ容量の違いとなるように構成されている。尚、解像度600dpiにおける1ドットの長さは25.4/600≒0.0423mmであるから、4ドット分の長さは約0.1692mm(1/150インチ)である。
次に、前記第一の間隙11について図3を用いて更に詳しく説明する。この図によく示されているように、前記データ要素領域5の辺a(一方の縦辺)と前記マーカ23を構成する前記線分21が成す間隙、辺b(一方の横辺)と前記マーカ33を構成する前記線分31が成す間隙が上述した第一の間隙11である。
前記第一の間隙11の幅寸法Wは1/600インチ以上、且つ、前記セルの外周を成す辺のうち最短の一辺の長さ以下であればよいが、好ましくは1/600インチ(約0.0423mm)が良い。また、前記第二の間隙12の幅寸法は、前記見出し線42、52がデータ要素領域5の前記他方の縦辺c及び他方の横辺dから1/600インチ以上離れていれば良いが、好ましくは前記データ要素領域5の構成要素である前記セルの一辺の長さと同程度とするのが良い。これにより、前記データ要素領域5の周囲に配置されたすべてのマーカ23、33、43、53を、データ認識用T字形マーカ3としてより正確に検出することができるようになる。また、前記音声コード1の外形寸法を必要以上に大きくすることがない。
次に、前記音声コード1の実施例について具体的に説明する。前記音声コード1は少なくとも4つのモードからなり、セルの大きさが1/150インチである条件において、XSモードは6.8×6.8mm、Sモードは12.3×12.3mm、Mモードは17.9×17.9mm、Lモードは19.8×19.8mmの大きさからなる。そして、夫々のモードにおける前記データ要素領域5を構成するセルの数は、XSモードは40セル、Sモードは73セル、Mモードは106セル、Lモードは117セルである。前記データ認識用T字形マーカ3を構成する前記線分21、31、41、51及び前記見出し線22、32、42、52の幅はセルの一辺と同じである。
次に、本発明の印刷物100に備えられた判定領域130について説明する。図1、図2において右斜め線のハッチングで示されるのが前記判定領域130である。この判定領域130は、前記音声コード1が表示される印刷物100の真贋判定に用いる領域である。即ち本発明は、上述したスマートフォンなどを利用した二次元コード読取装置2により前記音声コード1に記録された情報データを取得すると共に、前記判定領域130を利用して前記印刷物100(換言すれば、前記音声コード1)の真贋判定を行なう構成となっている(真贋判定方法の詳細については後述する)。
この判定領域130は、前記印刷領域120における前記文字情報121、前記背景模様122などとは異なり、掛け合わせではない単色インキによりベタ印刷135がなされる領域である。尚、前記ベタ印刷135がなされた領域が、即ち前記判定領域130のことであり、以下の説明において判定領域130と記載する場合は、特に明示する場合を除いて掛け合わせではない単色インキによるベタ印刷135がなされたものとする。
(第一の実施形態)
前記判定領域130の第一の実施形態について図1、図2を用いて説明する。この第一の実施形態における前記判定領域130は、前記音声コード1が印字される前記印字領域110内の前記音声コード1とは重合しない位置に形成されている。これらの図によく示されているように、前記音声コード1と前記判定領域130とを近接するように配設すれば、二次元コード読取装置2により前記音声コード1と前記判定領域130とを同じタイミングで撮影するのに都合が良い。このため、前記印字領域110は、スマートフォンなどにより前記音声コード1を撮影する際に、同じ撮像画像内に前記判定領域130が一緒に写り込む必要がある撮影領域であることも示す役割も有する。尚、この実施例では、前記判定領域130が前記印字領域110内に形成されている例を示したが、この実施例に限定されるものではなく、前記文字情報121、背景模様122などと重合しなければ、前記印字領域110の外側、即ち前記印刷領域120における所定の位置に、所定の大きさで設けられていてもよい。
前記音声コード1は、前記判定領域130と重合しない前記印刷領域110内に、プリンタ等による印字によって形成される。即ち、この第一の実施形態では、本発明の音声コード1が表示される印刷物100は、少なくとも、掛け合わせではない単色インキによりベタ印刷135された前記判定領域130と、プリンタ等により印字された前記音声コード1が、相互に重合せず、且つ前記判定領域130が前記音声コード1に対して所定の位置に、所定の大きさで配設された構成を有している。
ここで前記判定領域130について、更に具体的に説明する。この判定領域130は、この判定領域130(より詳しくは、前記音声コード1)が備えられた印刷物100の真贋判定を行なうための領域であり、本発明の実施例では、前記判定領域130に対して画像解析することにより真贋判定を行なう(画像解析の方法、真贋判定方法などの詳細については後述する)。このため、前記判定領域130のサイズは、少なくとも、画像処理、画像解析を正確に行なうための最小限に必要とする所定の大きさを要する。また、前記判定領域130の位置は、印刷物100の原本(尚、以下の説明において単に原本と記載した場合は、特に明示しない限り印刷物100を示す)における判定領域130と、この原本を複写した複写物における判定領域130とが異ならないように、予め判定領域130として検出する領域の位置を決めておく。これは、二次元コード読取装置2により前記音声コード1と前記判定領域130を撮影する際に、前記判定領域130の座標位置を、前記音声コード1を基準として決めておくことで、撮影の度に前記音声コード1の角度が異なって撮影されても、常に同一エリアを判定領域130として取出すことができるようにするためである。
先ず、前記判定領域130のサイズについて説明する。発明者が画像解析に適した前記判定領域130のサイズについて検討したところ、最小でも解像度が1000dpiにおいて、50ピクセル角(2500ピクセル。)であればよく、好ましくは200ピクセル角以上の大きさがあれば良いことが分かった。尚、この大きさは解像度が1000dpiの場合であり、例えば、解像度が2000dpiの場合は、それぞれ100ピクセル角、400ピクセル角となる。
次に、前記判定領域130の位置について説明する。前記判定領域130は、上述したスマートフォンなどを利用した二次元コード読取装置2により撮影する際に、前記二次元コード1と共に撮像エリア内に位置するように、前記音声コード1と同一面上に配設されており、しかも、前記音声コード1に記録された情報データが読み出し可能で、且つ前記判定領域130に対する画像処理が可能であれば何れの位置に配設されていてもよい。しかしながら上述したように、前記音声コード1と前記判定領域130とを同じタイミングで撮影するためには、前記音声コード1と前記判定領域130とが近接するように配設されていることが好ましい。この場合における前記音声コード1と前記判定領域130との最小の間隔は、前記音声コード1の読み取りに影響しないように、少なくとも1/600インチ(例えば、解像度が600dpiにおいて1ドット)程度の間隔を設けるように配設されていれば良い。
前記判定領域130の位置は、例えば、前記音声コード1における前記データ要素領域5内のデータセルを等分割してその座標位置を決めるデータベースライン(DBL 図2参照)の交点や、T字形状の前記マーカにおける黒領域における全てのピクセルのX座標及びY座標の平均値である検出用基準センターポイントなどの周知技術(特許文献1 特許第4865844号公報)を基準点として座標位置を決めることができる。このように決められた位置に配設された前記判定領域130のサイズが、例えば解像度が1000dpiにおいて50ピクセル角であるとすると、印刷物100の原本も、この印刷物100を複写した複写物も、前記判定領域130は同じサイズ、同じ位置に配設されることになり、前記判定領域130の存在が明確に視認できるので、二次元コード読取装置2により撮影する際に、前記音声コード1と前記判定領域130を撮像エリア内に位置させるのに利便性が良い。
一方、前記判定領域130を印刷物100の模様の一部としてデザインし、掛け合わせではない単色インキによるベタ印刷135の領域が、上述した前記判定領域130の最小サイズより広い領域を有するように形成することで、前記判定領域130の存在を目視では視認できないようにする構成も採用できる。この異なる実施例の場合、印刷物100の原本も、この印刷物100を複写した複写物も、それぞれの判定領域130の存在は目視により確認できないが、掛け合わせではない単色インキによりベタ印刷135されたデザインの中の、前記基準点により座標位置が決められた所定の大きさの領域(例えば、解像度が1000dpiにおいて50ピクセル角)を判定領域130として決めておけば、印刷物100の原本の判定領域130も、この印刷物100を複写した複写物の判定領域130も同じサイズ、同じ位置を検出することができる。この異なる実施例の場合、前記判定領域130は掛け合わせではない単色インキによりベタ印刷135されたデザインによりカムフラージュされるので、その存在を目視により確認することができないので、優れた偽造防止効果を備えさせることができる。
次に、二次元コード読取装置2について説明する。図4は前記音声コード1を読み取る二次元コード読取装置2の電気的構成を概略的に示すブロック図である。この二次元コード読取装置2は、主として、撮像部60と、読取部70とを備えており、前記撮像部60によって印刷物100に付された前記音声コード1と前記判定領域130を同じ画像に写り込むように撮像することにより、得られた撮像画像から前記読取部70によって、前記音声コード1を解読すると共に、前記判定領域130の真贋判定を行なうように構成されている。
前記撮像部60は、例えば、撮像素子、制御回路、通信回路などからなる周知のカメラとして構成されており、前記音声コード1、前記判定領域130などを撮影し、この音声コード1に対応するコード画像と前記判定領域130に対応するエリア画像を含んだ画像データを生成するように機能している。この撮像部60は、前記音声コード1と前記判定領域130が撮像エリア内に位置するタイミングで、前記音声コード1、前記判定領域130などを撮像し、音声コード1、判定領域130を撮像したときにはその撮像画像の画像データを前記読取部70に送信する。
前記読取部70は、図4に示されているように情報処理装置として構成されており、CPU等からなる制御部71、液晶モニタ等により構成される表示部72、ROM、RAM、記憶装置等からなる記憶部73、各種操作を行なう操作ボタン等により構成される操作部74、通信インターフェイスとして構成される通信部75、制御部71に実行させる二次元コード読取プログラム76などを備えており、前記撮像部60で生成された画像データが入力されるように構成されている。
前記二次元コード読取装置2により読み取られる前記音声コード1と前記判定領域130について説明する。この実施例に用いられる前記音声コード1は、専用のコード読取装置や専用のアプリケーションがインストールされたスマートフォンなどを利用した二次元コード読取装置2により、記録された文字情報が音声を使った読み上げにより聴取できるように構成された二次元コードである。また、この実施例に用いられる前記判定領域130は、上述したように、そのサイズは所定の大きさに形成され、前記音声コード1に対して所定の位置に配設されたベタ印刷がなされた領域であり、本発明では掛け合わせではない単色のインキからなるベタ印刷135により形成されている。そして、この判定領域130は、前記音声コード1と共に前記撮像部60により撮像された撮像画像の中に写し込まれ、前記音声コード1に対応するコード画像と前記判定領域130に対応するエリア画像とを含む画像データが前記読取部70に送られる。
ここで、図5〜図7を用いて本発明の二次元コード読取プログラム76について説明する。図5は二次元コード読取プログラム76に基づいて前記制御部71が実行するメイン処理S100のフローチャートである。図6は二次元コード読取プログラム76に基づいて前記制御部71が実行する真贋判定処理S300のフローチャートである。図7は二次元コード読取プログラム76に基づいて前記制御部71が実行する選択機能処理S400のフローチャートである。尚、以下のフローチャートの説明において主体を省略した場合は制御部71が二次元コード読取プログラム76に従って、当該動作を行うことを意味する。また、以下の説明中には明示しないが、二次元コード読取プログラム76を実行する制御部71では、公知の技術により、当該制御部71と接続された各部と情報をやり取り可能とされる。
制御部71は、二次元コード読取プログラム76の実行が指示されると、図5に示すメイン処理S100の実行を開始する。メイン処理S100において制御部71は、先ず、表示部72に「撮影時の注意」を表示する(S101)。この注意は、撮像部60において前記音声コード1を撮像する際に、前記音声コード1に加え前記判定領域130が撮像エリア内に位置するように画角を決めることを促す注意文である。そして、制御部71は、前記音声コード1と前記判定領域130が表示部72に示される撮像エリア内に位置するタイミングで操作部74に対して撮影操作がなされたと判断した場合、撮像部60において前記音声コード1、前記判定領域130などを含む画像を撮影し(S102)、その撮像画像の画像データを前記読取部70に送信する。尚、この実施例では、メイン処理S100の最初の手順として、「撮影時の注意」表示S101を行う手順を設けたが、この手順は無くてもよい。
制御部71は、撮像部60から送られてきた画像データを記憶部73に記憶すると共に、先ず、画像データに含まれる前記音声コード1に対応するコード画像を解析することにより、前記音声コード1を解読し、該音声コード1に記録された情報データを取得する二次元コード読取処理を行なう(S200)。そして、前記音声コード1の解析が完了した後に、次の手順である真贋判定処理(S300)に移行する。尚、二次元コード読取処理S200における、撮像画像の画像データ(コード画像)に含まれる二次元コードを復号して情報データを取得する複合ステップなどの処理は周知の技術の利用であり詳細な説明は省略する。
次に真贋判定処理S300について図6を用いて説明する。図6は真贋判定処理S300のフローチャートである。この真贋判定処理S300において前記制御部71は、先ず、前記二次元コード読取処理S200において、前記音声コード1に記録された情報データを取得したか否かを判定する(S301)。
制御部71は,前記音声コード1から情報データが取得できていないと判断した場合(S301:No)、前記表示部72に「警告」を表示する(S309)。この「警告」は、前記音声コード1の読み取りができなかったことを示すものであり、例えば、前記音声コード1が汚れている場合、コードの構成が適正でない場合などを警告するためのものである。そして、この「警告」の表示が完了したら、この真贋判定処理S300を終了し、次のメイン処理S100の判定手順S103に移行する。
制御部71は、前記音声コード1から情報データを取得したと判断した場合(S301:Yes)、取得した情報データを前記記憶部73に記憶し、次の手順である判定領域130の検出手順へ移行する。この判定領域130の検出手順では、制御部71は、記憶部73に記憶された画像データから、前記判定領域130に対応するエリア画像を抽出する(S302)。
制御部71は、前記判定領域130のエリア画像が検出されたか否かを判断し(S303)、エリア画像が検出できなかったと判定した場合(S303:No)、この真贋判定処理S300を終了し、メイン処理S100の判定手順S103に移行する。一方、制御部71は、判定領域130のエリア画像が検出されたと判断した場合(S303:Yes)、次の手順であるエリア画像の画像処理S304、S305へ移行する。
ここで、判定領域130のエリア画像に対する画像処理について説明する。本発明の実施例における画像処理は次の2つの手順からなる。先ず、制御部71は、前記判定領域130から検出されたエリア画像を、微分フィルタを用いてエッジ強調処理などを施すことにより画像解析を行なう(S304:図8参照)。
より詳しくは、エリア画像を公知の手順により画素ごとの輝度に基づいてグレースケール化し、該グレースケール化した画像を元に、各画素の輝度の変化をエッジとして強調するよう微分フィルタを適用する。なお、ここでは、発明者の試験において良好な結果を得た輝度に基づくエッジ強調を採用しているが、実施態様に応じて、RGB(赤・緑・青)やHSB(色相・彩度・明度)等の種々の要素およびこれらの組み合わせを微分フィルタによるエッジ強調処理の対象として適宜選択できるものである。
次に、エッジ強調されたエリア画像を用いて、エッジ強度に応じたヒストグラムを作成する(S305:図9参照)。尚、図8、図9についての説明は後述する。
制御部71は、上述の画像処理によって得られたエリア画像のエッジ強度に応じたヒストグラムから、予め設定した抽出条件に応じて画像解析することにより取得したデータを、加工後の評価データとして取得する(S306)と共に、この評価データを前記記憶部73に記憶し、次の機能選択処理S400に移行する。尚、以下の説明で単に評価データと記載するものは、特に明示する場合を除きヒストグラムを加工して得られた加工後のデータのことを示す。この加工後の評価データについての詳細な説明、及び評価データを取得する抽出条件などの詳細については後述する。
上述の評価データの取得が完了したら、制御部71は、機能選択処理S400を実行する。図7はこの機能選択処理S400のフローチャートである。この機能選択処理S400では、制御部71は、二次元コード読取装置2が、前記操作部74においてサンプル作成モードが選択されているか、二次元コード測定モードが選択されているかを判断し(S401)、サンプル作成モードが選択されていると判断した場合(S401:「サンプル作成」)、上述の画像解析により取得した評価データを、基準データとして関連付けして記憶部73に記憶する(S403)。制御部71は、この基準データの記憶が完了したら、次の新しい基準データが取得されるまで記憶部73に記憶した基準データを保持する。尚、制御部71が、この機能選択処理S400において記憶部73に記憶した基準データとは、本発明の前記音声コード1が表示される印刷物100の真正品である原本から得られたデータであり、印刷物100の真贋判定を行なう際の基準となるサンプルデータのことである。
一方、制御部71は、二次元コード測定モードが選択されていると判断した場合(S401:「測定」)、上述の画像処理によって得られたエリア画像のエッジ強度に応じたヒストグラムから、基準データ(換言すれば、評価データ)を取得した場合と同じ抽出条件(抽出条件については後述する)に応じて画像解析することにより取得した評価データを、新たに測定した測定データとして関連付けして前記記憶部73に記憶し(S402)、機能選択処理S400を終了する。尚、制御部71が、この機能選択処理S400において記憶部73に記憶した測定データとは、基準データを取得した原本とは異なる、他の真正品である原本から得られた新たなデータ、若しくは、前記印刷物100を複写した真正品ではない複写物から得られた新たなデータなどである。
機能選択処理S400が終了したら、制御部71は、真贋判定処理S300に戻り、機能選択処理S400において記憶部73に記憶した、基準データと測定データの比較を行なう(S307)。
ここで、前記判定領域130の画像解析の具体例について図8、図9を用いて説明する。図8は判定領域130のエリア画像(画像データ)の例であり、本願発明の実施例では、茶色系の単色インキ用いてベタ印刷135がなされた判定領域130の、(a1)は原本のエリア画像、(a2)は原本のエリア画像をエッジ強調処理した画像、(b1)は原本を複写機Aで複写した複写物Aのエリア画像、(b2)は複写物Aのエリア画像をエッジ強調処理した画像、(c1)は複写機Bで複写した複写物Bのエリア画像、(c2)は複写物Bのエリア画像をエッジ強調処理した画像である。図9は図8(a2)、(b2)、(c2)のエッジ強調処理した画像を画像解析した結果を示す加工前の評価データであり、(a)は原本のエッジ強度のヒストグラム、(b)は原本を複写機Aで複写した複写物Aのエッジ強度のヒストグラム、(c)は原本を複写機Bで複写した複写物Bのエッジ強度のヒストグラムである。
これらのエッジ強度のヒストグラムは、横軸がエッジ強度(右側ほど強い)を示しており、縦軸は各エッジ強度における画素数を示している。横軸のエッジ強度は、ゼロ(濃度差が無い)から最も強いエッジ強度(濃度差が最大)との間を100に区分したものであり、横軸はエッジ強度の変化を示している。図9(a)のヒストグラムを例にすると、X番目のエッジ強度の画素数はY個あることが示されている。尚、本発明の実施例で用いたエッジ強度は、図8(a1)、(b1)、(c1)に示されるエリア画像に対して、sobelフィルタを用いて8近傍の濃度分布を分析し算出することで取得したものであるが、この実施例に限定されるものではなく広く周知の技術が利用できる。
図9(a)に示されるエッジ強度のヒストグラムから、原本はエッジ強度Xにおいて出現頻度がピークをなし、その画素数はYである。一方、図9(b)に示されるエッジ強度のヒストグラムから、複写物Aはエッジ強度X1において出現頻度がピークをなし、その画素数はY1である。また、図9(c)に示されるエッジ強度のヒストグラムから、複写物Bはエッジ強度X2において出現頻度がピークをなし、その画素数はY2である。これらのヒストグラムから、真正品である原本の判定領域130におけるエッジ強度のヒストグラムと、真正品ではない複写物の判定領域130におけるエッジ強度のヒストグラムは相違することが分かる。
ここで、真正品である印刷物100の原本と、原本を複写した複写物とで、それぞれのエッジ強度のヒストグラムが相違する理由について説明する。これは、原本の前記判定領域130は掛け合わせではない単色インキによるベタ印刷135により形成され、複写機により複写された複写物の判定領域130はシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、黒(K)の掛け合わせにより形成されていることに起因する。即ち、掛け合わせではない単色インキでベタ印刷135された判定領域130は、その領域内において殆ど濃度勾配が生じないが、掛け合わせにより形成された判定領域130は、その領域内においてトナー同士や、トナーと紙白部とで濃度差が生じるからである。そして、その掛け合わせの仕方も複写機のメーカーにより異なるからである。
上述したように、制御部71は、動作モード選択手順S401において「サンプル作成」(即ち、サンプル作成モード)が選択されていると判断した場合は、加工前の評価データとして取得した原本のエッジ強度のヒストグラム(図9(a)参照)から、予め設定しておいた所定の抽出条件に基づいてデータを取出し、基準となる原本の基準データとして記憶部73に記憶するのである。そして制御部71は、操作部74において「測定」(即ち、二次元コード測定モード)が選択されていると判断した場合は、加工前の評価データとして取得した他の真正品の原本におけるエッジ強度のヒストグラム、或いは真正品の原本を複写した複写物におけるエッジ強度のヒストグラム(図9(b)、図9(c)参照)から、予め設定しておいた所定の抽出条件に基づいてデータを取出し、測定品(被評価対象印刷物)の測定データとして、記憶部73に記憶するのである。
次に、エッジ強度のヒストグラムから、基準データと測定データを取出すための抽出条件について具体的に説明する。本発明の実施例では、真正品と真正品ではない複写物(偽造品)との違いを正確に判断することができる抽出条件を採用している。例えば、制御部71は、原本のエッジ強度のヒストグラム(図9(a)参照)から、画素数Yがピークをなすエッジ強度Xを含む、所定のエッジ強度の範囲(Xmin<X<Xmax)を設定し、このエッジ強度の範囲内における各エッジ強度の画素数(Ymin、…、Y、…、Ymax)を取出し、これらの画素数の合計Yttl(=Ymin+ … +Y+ … +Ymax)を算出する。そして、算出した画素数の合計Yttlがエッジ強調したエリア画像の全画素数Ptllに対して占める割合を計算することで占有率S(Yttl÷Ptll×100)を求め、この占有率Sをエッジ強度の範囲と関連付けし基準データとして記憶部73に記憶する。
同様に、制御部71は、二次元コード測定モードにおいて、基準データ作成の抽出条件である、エッジ強度の範囲(Xmin<X<Xmax)に応じた画素数の合計Yttl´を算出し、この画素数の合計Yttl´の占有率S´をエッジ強度の範囲と関連付けし測定データとして記憶部73に記憶する。
制御部71は、上述した抽出条件において取得した基準データと測定データを記憶部73に記憶したら、基準データと測定データの比較を行なう(S307)。この比較手順S307では、制御部71は、基準データの占有率Sを基に予め設定した閾値Sstdを呼び出すと共に、二次元コード測定モードにおいて取得し測定データとして記憶した占有率S´を呼び出す。そして制御部71は、この閾値Sstdと、測定データの占有率S´とを比較する(S307)。尚、閾値Sstdは、基準データの占有率Sと測定データの占有率S´の範囲内における所定の占有率を設定する。
次に、制御部71は、閾値Sstdと測定データの占有率S´との比較結果に基づいて、占有率S´が閾値Sstdに対して大きいか小さいかを判断する(S308)。
制御部71は、測定データの占有率S´が、閾値stdに対して大きい(S308:Yes(閾値の範囲内))と判断した場合、二次元コード測定モードにおいて新たに測定データを取得した印刷物100は真正品であると判定し、メイン処理S100の判定手順S103に移行する。
一方、制御部71は、測定データの占有率S´が、閾値stdに対して小さい(S308:No(閾値の範囲外))と判断した場合、二次元コード測定モードにおいて新たに測定データを取得した印刷物は真正品ではないと判定し、二次元コード測定モードにおいて新たに測定データを取得した印刷物は真正品ではない旨の表す「警告」を表示部72に表示する(S309)。そして、メイン処理S100の判定手順S103に移行する。
真贋判定処理S300が終了した後の手順について図5を用いて説明する。制御部71は、真贋判定処理S300において「警告」の表示を、表示部72に表示したか否かを判断する(S103)。
制御部71は、「警告」の表示を表示部72で表示したと判断した場合(S103:Yes)、メイン処理S100を終了する。
一方、「警告」の表示を表示部72で表示していないと判断した場合(S103:No)、次の判定手順S104に移行する。この判定手順S104では、制御部71は、判定領域130が検出できたか否かを判断し、前記判定領域130が検出できていない(真贋判定処理S330の判定手順S303:No)と判断した場合(S104:No)、もう一度メイン処理S100の始めに戻り、手順S101以降の処理を行なう。
一方、制御部71は、前記判定領域130が検出できたと判定した場合(S104:Yes)、二次元コード読取処理S200において既に取得済みの音声コード1の情報データを表示部72に表示し(S105)、メイン処理100を終了する。
このように、本発明を用いると、印刷物100に形成された前記音声コード1と前記判定領域130とを同じ画像の中に写し込ませて、前記音声コード1、及び前記判定領域に対する画像処理、画像解析などを行なうことにより、前記音声コード1に記録された情報データが正常に取得でき、且つ、前記判定領域130に対する画像処理に基づいて、前記印刷物100が真正品であることが確認された条件において、前記情報データを表示するように構成されていることから、印刷物100の真贋判定を拡大鏡や判別具などを用いることなく、正確、且つ簡単に行なうことができるのである。
ここで、前記真贋判定処理S300が、前記音声コード1から情報データを取得できたことを判断してから前記判定領域130に対する画像処理を行なう手順としたことの理由について説明する。この手順は、二次元コード読取装置2が前記音声コード1と前記判定領域130などを撮影する際の、二次元コード読取装置2と前記音声コード1と前記判定領域130との間の距離を適正に保つために必要な手順である。即ち、二次元コード読取装置2により前記音声コード1の情報データを取得するためには、該二次元コード読取装置2は前記音声コード1に対してピントを合わせる必要があることから、前記音声コード1の情報データが取得できると言うことは、前記音声コード1と同一面上に形成された前記判定領域130にもピントが合っていることになるからである。このため、真正品である原本の印刷物100でも、真正品でない複写物であっても、常に前記判定領域130にピントを合わせた状態で該判定領域130を撮影することができ、次の真贋判定処理S300において判定領域130に対する画像処理、画像解析を行うのに適したエリア画像を取得することができるのである。
また、前記音声コード1から情報データを取得できたことを判断してから判定領域130に対する処理を行う構成としたことにより、前記音声コード1から情報データが取得できない場合、前記音声コード1が汚れている、或いは明らかに音声コード1が偽造されている可能性があるなどが事前に判断できるので、それ以降の無駄な処理を行なう必要が無く、迅速な真偽判定を行うことができる。
次に、前記判定領域130に対してピントを合わせることの作用について説明する。上述したように複写機により複写された判定領域130は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、黒(K)の掛け合わせにより形成されていることから、この掛け合わせを正しく認識するためには1000dpi以上の解像度が望ましい。つまり、複写物におけるトナーのアミ点は略0.05〜0.1mmピッチで配置されており、少なくとも500dpi(1ピクセル=0.05mm)程度の解像度がないとアミ点を認識できないからである。
このように、掛け合わせの微妙な斑を検出するためには、1000dpi以上の解像度を持つ画像が取得できる二次元コード読取装置2によって、正しくピントが合った状態で前記判定領域130の撮影を行なう必要がある。ピントが合っていないと、掛け合わせの斑が検出できず、原本と同様の掛け合わせのない単色インキによるベタ印刷135と認識され、印刷物100の真贋判定ができない恐れが生じるからである。また、ピントが合っていたとしても、撮影時に手振れなどにより画像がぼやけてしまっても掛け合わせが認識できないことになる。
ところで、本発明の実施例に用いた前記音声コード1は、既に詳述したように、前記データ要素領域5を構成するセルは、一辺が1/150インチ(約0.1692mm)と小さく、前記データ要素領域5と前記データ認識用T字形マーカ3との間に施された、白色領域である前記第一の間隙11の幅寸法Wも、1/600インチ(約0.0423mm)と極めて微細である。解像度が1000dpiの1ピクセルは0.0254mmであるから、前記第一の間隙の幅寸法Wである0.0423mmの間隔を認識するには1〜2ピクセルで再現する必要が生じるので、前記音声コード1を認識して読み取るためには、極めて正確なピント合わせが必要となる。逆に言えば、前記音声コード1を認識して情報データを読み取ることができれば、二次元コード読取装置2は極めて正確に前記音声コード1、及び前記判定領域130にピントが合った状態で、正しい画像を撮影することができるのである。
したがって、本発明の実施例のように、印刷物100に備える二次元コードとして、前記音声コード1を用いたものであれば、二次元コード読取装置2は、該音声コード1に沿うように配設された前記判定領域130のエリア画像を極めて正確にピントを合わせた状態で撮影することができるので、前記真贋判定処理S300における前記判定領域130の画像処理、画像解析において、解像度が非常に良好なエリア画像を使用することができ、印刷物100の真贋判定を一層正確に行うことができる。
(第二の実施形態)
次に、前記判定領域130の第二の実施形態について図10を用いて説明する。この図に良く示されているように、第二の実施形態における前記判定領域130は、前記音声コード1と重合する位置に形成されており、この点において上述の第一の実施形態と異なるものの、それ以外は同じ構成である。
ここで、前記判定領域130と前記音声コード1が重合する領域である重合領域130Aについて具体的に説明する。尚、以下の説明において重合領域130Aと記載する場合は、前記判定領域130と同様に、特に明示する場合を除いて掛け合わせではない単色インキによるベタ印刷135がなされたものとする。
前記音声コード1は、その仕様において、前記データ要素領域5における白色領域(黒色セルの無い領域)に対して、所定の大きさの範囲内であれば、汚れなどがあっても音声コード1に記録されている誤り訂正により、前記データ要素領域5から情報データが取得できることが決められている。例えば、誤り訂正が「強」の場合、前記データ要素領域5における白色領域に対して25%以下の範囲内、誤り訂正が「弱」の場合、前記データ要素領域5における白色領域に対して10%以下の範囲内の大きさであれば、汚れなどがあっても前記データ要素領域5から情報データを取得することできる。つまり、前記重合領域130Aは、前記音声コード1に記録された誤り訂正に応じてその大きさが決まる。このため、この第二の実施形態における判定領域130は、判定領域130と音声コード1が重合する部分である前記重合領域130Aが、少なくとも前記テータ要素領域5における白色領域の面積に対して、所定の面積を超えない大きさに構成されていることが条件となる。
この第二の実施形態の説明では、図10に示すように前記判定領域130と前記音声コード1との一部が重合する例を示したが、前記重合領域130Aが上述した誤り訂正が効く所定の大きさ以下なら、前記重合領域130A(換言すれば判定領域130)と前記データ要素領域5とが完全に重合していても良い。
ここで、前記重合領域130Aの考え方について、前記音声コード1を用いて詳しく説明する。この第二の実施形態では、重合領域130Aは前記音声コード1の黒色領域(黒色セル)及び/或いはデータ認識用T字形マーカ3の黒色領域と重なる。従って、前記重合領域130Aは、黒色領域と重なる領域を除いた白色領域と重なる部分が、実際に利用する判定領域130となる。つまり、この第二の実施形態における判定領域130は、前記判定領域130と前記音声コード1との重合の度合いに関わらず、前記重合領域130Aにおける黒色領域と重なる領域を除いた領域の合計が判定領域130の大きさとなる。
以上のことから、この第二の実施形態における前記判定領域130は、最小でも解像度が1000dpiにおいて、黒色領域と重なる領域を除いた領域の合計が2500ピクセルの大きさであり、且つ、前記重合領域130Aは、少なくとも前記テータ要素領域5における白色領域の面積に対して、誤り訂正により決まる所定の面積を超えない大きさに構成されておれば、前記音声コード1から情報データを取得できると共に、上述した第一の実施形態と同様に印刷物100の真贋判定処理を行うことができる。
(第三の実施形態)
次に、前記判定領域130の第三の実施形態について図11を用いて説明する。この図に良く示されているように、この第三の実施形態における前記判定領域130は、前記音声コード1と重合する領域である前記重合領域130Aが、上述の第二の実施形態において規定した所定の大きさを超える場合の実施例が示されている。
ここで、前記重合領域130Aの大きさについて、前記音声コード1を用いて具体的に説明する。既に詳述したように、前記音声コード1は、その仕様において、誤り訂正が「強」の場合、前記データ要素領域5における白色領域に対して25%以下の大きさであれば、汚れなどがあっても前記データ要素領域5から情報データを取得することできるように決められている。つまり、前記データ要素領域5における白色領域に対して25%を越える大きさの重合領域130Aが存在すれば、前記データ要素領域5から情報データを取得することができないのである。
そこで、第三の実施形態における前記判定領域130は、判定領域130にベタ印刷135された掛け合わせではない単色インキの光学濃度に着目することにより、前記重合領域130Aが所定の大きさを超えるものであっても、前記音声コード1から情報データを取得すると共に、印刷物100の真贋判定処理が行なえるようにするものである。
以下に、前記音声コード1と前記判定領域130を重合した場合における前記判定領域130の作用について、図12、図13を用いて説明する。図12は前記音声コード1が表示される印刷物100において、濃度が異なる黒色の掛け合わせではない単色インキによりベタ印刷135された前記判定領域130に対して、当該判定領域130と重なるように、プリンタを使って前記音声コード1を印字した原本と、この原本を複写した複写物を、専用の読取装置を使って前記音声コード1に記録された情報データが読み取れるか否かを評価した結果であり、(a)は原本の読取結果、(b)は原本を複写した複写物の読取結果である。
図13は、図12の評価において用いた黒色の単色インキの濃度の区分A−Fに対応する光学濃度(OD値:Optical Density 以下の説明ではOD値と記載する)を示すものであり、この6段階の区分では一番濃いAからFの順に黒色が薄くなる。評価に利用した前記判定領域130は、これらの濃度が異なる黒色の単色インキを使ってベタ印刷135されたものである。尚、評価用として使用した黒色の単色インキの濃度は、発明者が調合し6つの異なる濃度区分になるよう作成したものである。
以下の説明、及び図面に表示されるOD値は、マクベス反射濃度計 RD914(GretagMacbeth(製))を用いて発明者が測定した値である。
読取評価に使用した原本となる印刷物100について説明する。まずこの原本を構成する媒体に濃度Aの黒色の掛け合わせではない単色インキ(尚、以下の説明を簡単にするために、単色インキと記載されているだけの場合であっても、特に明示した場合を除き掛け合わせではない単色インキのことを示す)を使って前記判定領域130を形成する。次に、前記判定領域130に対して、プリンタを使って前記音声コード1が重なるように印字する(図11参照)。ところで、前記音声コード1は、コード作成時に誤り訂正の強弱を設定することができように構成されているため、評価用の原本として、誤り訂正が「強」に設定された場合と、誤り訂正が「弱」に設定された場合の2通りを作成した。これらの原本を上述したモード毎に作成する。つまり、濃度Aの黒色の単色インキによる判定領域130の場合、XSモード、Sモード、Mモード、Lモードで8つの原本となる。同様に、濃度B〜濃度Fの黒色の単色インキを使った判定領域130の場合についても、それぞれの濃度に対して8つずつの原本を作成したので、合計で48通り(前記判定領域130の濃度区分×前記音声コード1のモードの種類×誤り訂正の強弱)の原本となる。尚、今回の読取評価では、前記音声コード1を印字するプリンタの違いによる評価も行なうことができるよう、メーカーの異なる2つのプリンタを用いて原本を作成したため、全部で96通りの原本を作成した。
つまりこの読取評価では、プリンタAで印字した前記音声コード1を備えた原本に対して48通りの判定数となり、同様にプリンタBで印字した前記音声コード1を備えた原本に対しても48通りの判定数となることから、全部で96通りの判定を行なった。
この評価結果が図12(a)に示されている。この評価結果によると、例えばプリンタAにおいて、濃度Aの黒色の単色インキにより判定領域130が印刷された原本の場合、XSモードの音声コード1に対して誤り訂正が「強」で読み取ると、安定読み取りまではいかないが読めた(図中の評価は△)。ところが誤り訂正が「弱」での読み取りはできなかった(図中の評価は×)。同様にSモードの音声コード1に対して誤り訂正が「強」で読み取ると、安定読み取りまではいかないが読め(図中の評価は△)、誤り訂正が「弱」での読み取りはできなかった(図中の評価は×)。Mモードの音声コード1に対しては、誤り訂正が「強」でも「弱」でも読み取ることができなかった(図中の評価は×)。同様にLモードの音声コード1に対しても、誤り訂正が「強」でも「弱」でも読み取ることができなかった(図中の評価は×)。以下、濃度Bから濃度Fの黒色の単色インキにより判定領域130が印刷された原本のそれぞれの場合について同様の評価を行なった。また、プリンタBに対しても同様の評価を行なった。
これらの結果に着目すると、プリンタAの場合もプリンタBの場合も、「前記音声コード1+濃度Cの黒色の単色インキより薄い(濃度区分C、D、E、Fの)黒色の単色インキによる判定領域130」からなる原本は、何れのモードでも、誤り訂正の強弱に関わらず、全ての前記音声コード1の読み取りができたことが分かる(図中の評価は○)。
次に、読取評価用に作成した複写物について説明する。この複写物は、上述したプリンタAで印字した前記音声コード1を備えた48通りの原本と、プリンタBで印字した前記音声コード1を備えた48通りの原本を、複写機を用いて複写したものであり、原本と同様に96通りの複写物を作成した。そして、それぞれの複写物に対して上述した原本の読取判定と同様に96通りの判定を行なった。尚、原本を複写する際の複写機の設定条件は、フルカラー、濃度自動で行なった。
この評価結果が図12(b)に示されている。この結果に着目すると、プリンタAの場合もプリンタBの場合も、「前記音声コード1+濃度Cの黒色の単色インキより濃い(濃度区分C、B、Aの)黒インキによる判定領域130」からなる原本の複写物は、何れのモードでも、誤り訂正の強弱に関わらず、全ての読取ができないことが分かる(図中の評価は×)。
このように、前記音声コード1と前記判定領域130を重ねるように配設した実施形態において、前記判定領域130に黒色の単色インキを使う場合、
評価条件1:OD値が0.47乃至0.49の範囲内である黒色の単色インキ(濃度区分Cの黒色の単色インキ)
によりベタ印刷135すれば、原本においては、前記重合領域130A(判定領域130)の存在があっても、全く影響を受けることなく前記音声コード1の読み取りが可能であるものの、原本を複写した複写物においては、前記判定領域130の存在の影響を受け、前記音声コード1の読み取りが不可能とすることができる。このように、前記音声コード1と前記判定領域130とが重なるように配設されてなる本発明の印刷物100は、例え複写機により偽造されたとしても、専用の読取装置や専用のアプリケーションがインストールされたスマートフォンなどにより簡単に真贋判定ができる。
一方、前記判定領域130に対して、濃度区分CよりOD値が低い(濃度が薄い)黒色の単色インキによりベタ印刷135すれば、原本であっても原本を複写した複写物であっても、前記重合領域130A(判定領域130)の存在に関係なく前記音声コード1の読み取りができてしまうものの、上述した判定領域130に対する真贋判定処理により簡単且つ正確に真贋判定を行なうことができる。
これまで、前記判定領域130が黒色の単色インキにより形成された実施例に基づいて説明したが、以下では、有色の単色インキを用いてベタ印刷135を施した場合の実施例について図14を用いて説明する。図14は前記判定領域130に印刷される有色の単色インキの具体的な例として、薄青、ピンク色、濃オレンジを使用する場合を説明する表である。
有色の単色インキにより形成された前記判定領域130に、黒色の単色インキで形成された判定領域130の場合と同様の作用を持たせるための評価を、上述した黒色の単色インキの場合と同様な評価方法で行ない、有色の単色インキに求められるOD値の検討を行なった。前記判定領域130を有色の単色インキによりベタ印刷で構成する場合、単色インキのシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、黒色(K)の各OD値を測定したときに、前記判定領域130は、
評価条件2:シアンの光学濃度がマゼンタおよびイエローの光学濃度より高く、且つ、黒色の光学濃度が0.8乃至1.2の範囲内である、又は、
評価条件3:マゼンタの光学濃度がシアンおよびイエローの光学濃度より高く、且つ、黒色の光学濃度が0.3乃至0.7の範囲内にある、又は、
評価条件4:イエローの光学濃度がシアンおよびマゼンタの光学濃度より高く、且つ、黒色の光学濃度が0.4乃至0.8の範囲内にある、
のいずれかの条件を満たすインキを前記有色の単色インキとしてベタ印刷135されていれば良いことが分かった。
図14は、この評価において検討した前記判定領域130に適した色の例を示すものであり、シアン(C)のOD値が最大値を示す場合の代表例として薄青色の単色インキと、マゼンタ(M)のOD値が最大値を示す場合の代表例としてピンク色の単色インキと、イエロー(Y)のOD値が最大値を示す場合の代表例として濃オレンジの単色インキについて、それぞれOD値を測定した表である。この表に良く示されるように、評価に用いたシアン(C)のOD値が最大値を示した薄青色のインキは、黒色(K)のOD値=0.99であったことから、上記評価条件2を満足していることが分かる。同様にマゼンタ(M)のOD値が最大値を示したピンク色は、黒色(K)のOD値=0.51であり、イエロー(Y)のOD値が最大値を示す濃オレンジ色は、黒色(K)のOD値=0.62であったことから、何れも上記評価条件3、上記評価条件4を満足していることが分かる。
つまり、図11に示される第三の実施形態の判定領域130は、上述した評価条件2、3,4のOD値を満足する有色の単色インキの内のいずれかを選択的に用いることにより、黒色の単色インキを用いた場合と同様な作用を備えさせることができる。しかも、この第三の実施形態における判定領域130は、有色の単色インキを用いた実施例の場合であっても、黒色(K)のOD値を限定したものであるから、偽造防止効果を一層優れたものとすることができる。
このように、前記音声コード1と前記判定領域130を重ねるように配設した実施形態において、前記判定領域130に有色の単色インキを使う場合、前記判定領域130に上述した評価条件2、3、4のOD値を満足する有色の単色インキによりベタ印刷135すれば、原本においては、前記重合領域130A(判定領域130)の存在があっても、全く影響を受けることなく前記音声コード1の読み取りが可能であるものの、原本を複写した複写物においては、前記判定領域130の存在の影響を受け、前記音声コード1の読み取りが不可能とすることができる。このように、前記音声コード1と前記判定領域130とが重なるように配設されてなる本発明の印刷物100は、例え複写機により複写されたとしても、専用の読取装置や専用のアプリケーションがインストールされたスマートフォンなどにより簡単に真贋判定ができる。
一方、前記判定領域130に対して、上述した評価条件2、3、4よりOD値が低い(光学濃度が薄い)有色の単色インキによりベタ印刷135すれば、原本であっても原本を複写した複写物であっても、前記重合領域130A(判定領域130)の存在に関係なく前記音声コード1の読み取りができてしまうものの、上述した判定領域130に対する真贋判定処理により簡単且つ正確に真贋判定を行なうことができる。
これらの読取評価に用いた前記音声コード1と前記判定領域130との重なりの状態は、前記判定領域130が前記音声コード1の全体を覆うように配設された実施例(図11参照)を用いて説明したが、この実施例に限定されるものではない。即ち、既に詳述したように、この第三の実施形態における前記判定領域130は、前記判定領域130にベタ印刷135された単色インキの光学濃度を限定することにより、前記データ要素領域5における白色領域に対して25%を越える大きさの重合領域130Aが存在しても、前記データ要素領域5から情報データを取得することができるものであるから、前記重合領域130A(判定領域130)が、前記テータ要素領域5における白色領域の面積に対して、少なくとも25%を超える面積を有すれば、前記音声コード1と部分的に重なるように配設されていてもよい。
以上のことから、この第三の実施形態における判定領域130は、解像度が1000dpiにおいて、黒色領域と重なる領域を除いた領域の合計が2500ピクセルより大きく、且つ、前記重合領域130A(判定領域130)は、少なくとも前記テータ要素領域5における白色領域の面積に対して、25%を超える大きさに構成されており、且つ、前記判定領域130をなすベタ印刷135に用いられる単色インキは、
《判定領域130を黒色の単色インキで構成する場合》
評価条件1:OD値が0.49以下(好ましくは0.18〜0.49)であること。
《前記判定領域130を有色の単色インキで構成する場合》
単色インキのシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、黒色(K)の各OD値を測定したときに、
評価条件2:シアンの光学濃度がマゼンタおよびイエローの光学濃度より高く、且つ、黒色の光学濃度が0.8乃至1.2の範囲内である、又は、
評価条件3:マゼンタの光学濃度がシアンおよびイエローの光学濃度より高く、且つ、黒色の光学濃度が0.3乃至0.7の範囲内にある、又は、
評価条件4:イエローの光学濃度がシアンおよびマゼンタの光学濃度より高く、且つ、黒色の光学濃度が0.4乃至0.8の範囲内にある、
のいずれかの条件を満たしておれば、前記音声コード1から情報データを取得できると共に、上述した第一、第二の実施形態と同様に印刷物100の真贋判定処理を行うことができる。
尚、この第三の実施形態では、重合領域130Aは前記音声コード1の黒色領域(黒色セル)及び/或いはデータ認識用T字形マーカ3の黒色領域と重なる。従って、前記重合領域130Aは、黒色領域と重なる領域を除いた白色領域と重なる部分が、実際に利用する判定領域130となる。つまり、この第三の実施形態の場合においても、前記重合領域130Aにおける黒色領域と重なる領域を除いた領域の合計が判定領域130の大きさとなる。
以上、本発明の実施形態の幾つかについて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲内で種々変形して実施できる。
例えば、本発明の実施例における画像処理は、前記判定領域130から検出されたエリア画像を、微分フィルタを用いてエッジ強調処理を行なう処理と、エッジ強調されたエリア画像を用いて、エッジ強度に応じたヒストグラムを作成する処理の2つの手順からなる例を示したが、この実施例に限定されるものではなく、前記判定領域130から検出されたエリア画像を利用するものであれはこの実施例に限定されるものではない。
本発明の実施例における評価データ(基準データ、測定データ)の抽出条件として、原本のエッジ強度のヒストグラムから、画素数がピークをなすエッジ強度を含む、所定のエッジ強度の範囲と、このエッジ強度の範囲内における画素数の合計Yttlがエッジ強調したエリア画像の全画素数Ptllに対して占める占有率Sを条件とした例を示したが、この実施例に限定されるものではなく、前記判定領域130から検出されたエリア画像を画像処理、画像分析の仕方に応じて適宜選択すればよいことは言うまでもない。
また、本発明の実施例における評価データ(基準データ、測定データ)の比較方法も一例を示したものであり、取得した評価データに応じて適宜決めれば良い。これに伴い、比較に用いた閾値Sstdも一例を示したものであり、取得した評価データに応じて適宜選択すれば良く、実施例に限定されるものではない。
本発明の実施例では、二次元コードの例として、前記音声コード1を用いて説明を行なったが、この実施例に限定されるものではなく、他の二次元コードにも利用できることはいうまでもない。