しかしながら、特許文献2の方法では、エッジ検出処理が、隣接する画素同士の単純な輝度の差異抽出に留まるため、本来エッジとして処理すべきでない箇所をエッジとして処理してしまうおそれや、本来エッジとして処理すべき箇所をエッジとして抽出できないおそれがあり、それゆえ、流麗な階調表現を持った画像生成を実現することができない場合があるという問題がある。すなわち、特許文献2におけるエッジ検出処理を含め、従来のエッジ検出処理では、隣接する画素同士の輝度差が大きい箇所を「エッジ」とみなしている。しかしながら、輝度差が大きいからといって必ずしもそこがエッジであるとは限らず、また、例えば同程度の輝度を有する赤色と青色の境等、輝度差が小さくても色味が異なればエッジとなり得るものである。これにより、従来のエッジ検出処理では、例えば連続する画像部分であるにも関わらずエッジ部であると誤検出し、不適切なエッジ強調がなされるおそれがある。そして、特許文献2の方法では、このような誤検出の結果、例えば連続する画像部分のような、誤差拡散法により均一に階調変換処理すべき箇所について、部分的にディザ法による階調変換処理を実行してしまうおそれがあり、これにより、滑らかなグラデーションを再現することができない場合がある。
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、エッジ部を正確に抽出することが可能な画像処理装置、画像処理プログラム及び画像処理方法を提供することを目的とする。
本発明者は、「エッジ部」の特徴として、隣接する画素同士の輝度差が大きいという従来公知の特徴に加え、エッジ部として取り扱うべき画素の周辺には必ず異なった(あるいは離散した)輝度や色味があり、そうでない画素(非エッジ部として取り扱うべき画素)の周辺には同質性の高い輝度や色味を持った画素が存在するという新たな着眼点に基づく特徴を見出し、鋭意研究の結果、これらの特徴に基づく高精度なエッジ抽出を実現可能な画像処理装置、画像処理プログラム及び画像処理方法を発明した。
具体的には、本発明に係る画像処理装置は、多値画像データをデジタル印刷装置で使用可能な二値画像データに変換する画像処理装置であって、多値画像データに対して、エッジ抽出処理を実行するエッジ抽出部と、前記エッジ抽出部によりエッジ抽出処理が実行された前記多値画像データに対して階調変換処理を実行することで、該多値画像データを二値画像データに変換する階調変換処理部とを備え、前記エッジ抽出部は、前記多値画像データに対し、一次微分フィルタ又は二次微分フィルタを用いてエッジ抽出処理を実行する一次エッジ抽出部と、前記多値画像データを構成する画素のそれぞれについて、所定範囲内における複数の画素を統計対象として輝度のばらつきを算出し、該算出したばらつきを所定の閾値と比較することで、前記多値画像データを構成する画素の輝度のばらつきをマップ化するマップ化処理部と、前記一次エッジ抽出部によりエッジ部分が抽出された一次エッジ抽出データと、前記マップ化処理部によって生成された輝度のばらつきを示すマップデータとを論理合成することで、輝度のばらつきが反映された二次エッジ抽出データを生成するエッジ論理合成処理部とを備えることを特徴とする。
本発明に係る画像処理装置において、前記マップ化処理部は、判定対象となる画素を中心とした所定範囲内における複数の画素を統計対象として輝度の分散値を算出し、該算出された分散値が所定の閾値以上又は未満であるか否かを判定する処理を、前記多値画像データを構成する画素のそれぞれについて実行することで、該多値画像データを構成する画素の輝度のばらつきをマップ化するよう構成されるとしても良い。
また、本発明に係る画像処理装置において、前記マップ化処理部は、判定対象となる画素を中心とした所定範囲内における複数の画素を統計対象として、所定の閾値以上又は未満の輝度を有する画素の個数を算出し、該算出された個数が所定の閾値以上又は未満であるか否かを判定する処理を、前記多値画像データを構成する画素のそれぞれについて実行することで、該多値画像データを構成する画素の輝度のばらつきをマップ化するよう構成されるとしても良い。
さらに、本発明に係る画像処理装置において、前記マップ化処理部は、判定対象となる画素を中心とした所定範囲内における複数の画素を統計対象として、輝度の分散値と、所定の閾値以上又は未満の輝度を有する画素の個数とを算出し、該算出された分散値及び個数の双方が所定の閾値以上又は未満であるか否かを判定する処理を、前記多値画像データを構成する画素のそれぞれについて実行することで、該多値画像データを構成する画素の輝度のばらつきをマップ化するよう構成されるとしても良い。
本発明に係る画像処理装置において、前記階調変換処理部は、前記エッジ抽出部によりエッジ部分であると判定された部分に対する階調変換処理と、前記エッジ抽出部により非エッジ部分であると判定された部分に対する階調変換処理とを、それぞれ異なる条件下で実行するよう構成されることが好ましい。
具体的には、前記階調変換処理部は、前記エッジ抽出部によりエッジ部分であると判定された部分を対象として、階調変換処理を実行するエッジ部量子化処理部と、前記エッジ抽出部により非エッジ部分であると判定された部分を対象として、階調変換処理を実行する非エッジ部量子化処理部と、前記エッジ部量子化処理部により処理された量子化データと、前記非エッジ部量子化処理部により処理された量子化データとを論理合成することで、前記二値画像データを生成する量子化論理合成処理部とを備えることが好ましい。
また、本発明に係る画像処理装置において、前記エッジ部分に対する階調変換処理と、前記非エッジ部分に対する階調変換処理とは、互いに異なる閾値を基準とした誤差拡散法に基づく階調変換処理であることが好ましい。
本発明に係る画像処理プログラムは、多値画像データをデジタル印刷装置で使用可能な二値画像データに変換する画像処理を、画像処理装置に実行させる画像処理プログラムであって、前記画像処理装置に、多値画像データに対して、エッジ抽出処理を実行するエッジ抽出工程と、前記エッジ抽出工程によりエッジ抽出処理が実行された前記多値画像データに対して階調変換処理を実行することで、該多値画像データを二値画像データに変換する階調変換処理工程とを実行させ、前記エッジ抽出工程は、前記多値画像データに対し、一次微分フィルタ又は二次微分フィルタを用いてエッジ抽出処理を実行する一次エッジ抽出工程と、前記多値画像データを構成する画素のそれぞれについて、所定範囲内における複数の画素を統計対象として輝度のばらつきを算出し、該算出したばらつきを所定の閾値と比較することで、前記多値画像データを構成する画素の輝度のばらつきをマップ化するマップ化処理工程と、前記一次エッジ抽出工程によりエッジ部分が抽出された一次エッジ抽出データと、前記マップ化処理工程によって生成された輝度のばらつきを示すマップデータとを論理合成することで、輝度のばらつきが反映された二次エッジ抽出データを生成するエッジ論理合成処理工程とを含むことを特徴とする。
本発明に係る画像処理プログラムにおいて、前記マップ化処理工程は、判定対象となる画素を中心とした所定範囲内における複数の画素を統計対象として輝度の分散値を算出し、該算出された分散値が所定の閾値以上又は未満であるか否かを判定する処理を、前記多値画像データを構成する画素のそれぞれについて実行することで、該多値画像データを構成する画素の輝度のばらつきをマップ化する工程を含むとしても良い。
また、本発明に係る画像処理プログラムにおいて、前記マップ化処理工程は、判定対象となる画素を中心とした所定範囲内における複数の画素を統計対象として、所定の閾値以上又は未満の輝度を有する画素の個数を算出し、該算出された個数が所定の閾値以上又は未満であるか否かを判定する処理を、前記多値画像データを構成する画素のそれぞれについて実行することで、該多値画像データを構成する画素の輝度のばらつきをマップ化する工程を含むとしても良い。
さらに、本発明に係る画像処理プログラムにおいて、前記マップ化処理工程は、判定対象となる画素を中心とした所定範囲内における複数の画素を統計対象として、輝度の分散値と、所定の閾値以上又は未満の輝度を有する画素の個数とを算出し、該算出された分散値及び個数の双方が所定の閾値以上又は未満であるか否かを判定する処理を、前記多値画像データを構成する画素のそれぞれについて実行することで、該多値画像データを構成する画素の輝度のばらつきをマップ化する工程を含むとしても良い。
本発明に係る画像処理プログラムにおいて、前記階調変換処理工程は、前記エッジ抽出工程によりエッジ部分であると判定された部分に対する階調変換処理と、前記エッジ抽出工程により非エッジ部分であると判定された部分に対する階調変換処理とを、それぞれ異なる条件下で実行する工程を含むことが好ましい。
具体的には、前記階調変換処理工程は、前記エッジ抽出工程によりエッジ部分であると判定された部分を対象として、階調変換処理を実行するエッジ部量子化処理工程と、前記エッジ抽出工程により非エッジ部分であると判定された部分を対象として、階調変換処理を実行する非エッジ部量子化処理工程と、前記エッジ部量子化処理工程により処理された量子化データと、前記非エッジ部量子化処理工程により処理された量子化データとを論理合成することで、前記二値画像データを生成する量子化論理合成処理工程とを含むことが好ましい。
また、本発明に係る画像処理プログラムにおいて、前記エッジ部分に対する階調変換処理と、前記非エッジ部分に対する階調変換処理とは、互いに異なる閾値を基準とした誤差拡散法に基づく階調変換処理であることが好ましい。
本発明に係る画像処理方法は、多値画像データをデジタル印刷装置で使用可能な二値画像データに変換する画像処理方法であって、多値画像データに対して、エッジ抽出処理を実行するエッジ抽出工程と、前記エッジ抽出工程によりエッジ抽出処理が実行された前記多値画像データに対して階調変換処理を実行することで、該多値画像データを二値画像データに変換する階調変換処理工程とを備え、前記エッジ抽出工程は、前記多値画像データに対し、一次微分フィルタ又は二次微分フィルタを用いてエッジ抽出処理を実行する一次エッジ抽出工程と、前記多値画像データを構成する画素のそれぞれについて、所定範囲内における複数の画素を統計対象として輝度のばらつきを算出し、該算出したばらつきを所定の閾値と比較することで、前記多値画像データを構成する画素の輝度のばらつきをマップ化するマップ化処理工程と、前記一次エッジ抽出工程によりエッジ部分が抽出された一次エッジ抽出データと、前記マップ化処理工程によって生成された輝度のばらつきを示すマップデータとを論理合成することで、輝度のばらつきが反映された二次エッジ抽出データを生成するエッジ論理合成処理工程とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、エッジ部を正確に抽出することが可能な画像処理装置、画像処理プログラム及び画像処理方法を提供することができる。
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
本実施形態に係る画像処理装置1は、主として、他の情報処理端末や記憶媒体等から入力された入稿画像データ(元画像データ)に種々の画像処理を施すことによって、該入稿画像データをインクジェット式のデジタル印刷装置100で使用可能な二値画像データに変換する機能を有している。ここで、入稿画像データとしては、例えば、PDF(Portable Document Format)やPS(PostScript)等の形式で表現される画像データが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
デジタル印刷装置100は、図1に示すように、巻取紙Rから送り出された連続紙Wにインクジェット印刷を施すプリントヘッド部102と、プリントヘッド部102を制御するプリントヘッド制御部104とを備えている。以下、デジタル印刷装置100として、4色カラー印刷が可能な所謂シングルパス方式のデジタル印刷装置を例に挙げて説明するが、これに限定されず、例えば、単色印刷又は4色以外の多色印刷用のデジタル印刷装置や、所謂スキャン方式のデジタル印刷装置等の種々のデジタル印刷装置を使用可能である。
プリントヘッド部102は、シアン(C)のインクを吐出可能なプリントヘッド群102cと、マゼンダ(M)のインクを吐出可能なプリントヘッド群102mと、イエロー(Y)のインクを吐出可能なプリントヘッド群102yと、ブラック(K)のインクを吐出可能なプリントヘッド群102kとを備えており、連続紙Wに対してカラー印刷を施すことが可能に構成されている。これらプリントヘッド群102c,102m,102y,102kは、それぞれ、連続紙Wの幅寸法よりも小さい複数(例えば4つ)のプリントヘッド(図示せず)を連続紙Wの幅方向に千鳥状に配置させることで構成されており、プリントヘッド群102c,102m,102y,102kの幅寸法(千鳥状に配置した複数のプリントヘッドの全長)が連続紙Wの幅寸法よりも大きくなるよう構成されている。このようなプリントヘッド部102の構成は、周知であるため、その詳細な説明は省略する。
プリントヘッド制御部104は、画像処理装置1とデータ通信可能に構成されており、画像処理装置1から取得した4色分の二値画像データに基づいて、プリントヘッド部102を制御するよう構成されている。具体的には、プリントヘッド制御部104は、画像処理装置1から取得した4色分の二値画像データのそれぞれについて、各色に対応する各プリントヘッド群102c,102m,102y,102kのプリントヘッドの配置に基づいて並び替える処理を実行可能に構成されている。また、プリントヘッド制御部104は、並び替えた二値画像データに基づき、プリントヘッド群102c,102m,102y,102kの各プリントヘッドにおけるインク吐出のオン/オフを、二値画像データの画素単位で制御するよう構成されている。このようなプリントヘッド制御部104の構成は、周知であるため、その詳細な説明は省略する。
画像処理装置1は、CPU等の制御部10を備える例えば処理サーバーであり、図2に示すように、入稿画像データ(元画像データ)の入力を受け付ける入力部12と、必要に応じて入稿画像データを多値画像データに変換するラスター変換処理部14と、多値画像データに対してエッジ抽出処理を実行するエッジ抽出部18と、多値画像データを各色に分版する色分版処理部16と、各色の多値画像データを印刷用の二値画像データに変換する階調変換処理部(量子化処理部)20と、各二値画像データをデジタル印刷装置100のプリントヘッド制御部104等に出力する出力部22と、画像処理装置1における画像処理に必要な各種データ及び画像処理プログラムを含む各種プログラム等が格納される記憶部24とを備えている。また、画像処理装置1は、デジタル印刷装置100に印刷データを提供するために必要なその他の処理(例えば面付け処理等)を実行可能に構成されている。
入力部12は、他の情報処理端末や記憶媒体等から、例えばPDFやPS等の形式の入稿画像データ(元画像データ)の入力を受け付けるよう構成されている。出力部22は、階調変換処理部20によって生成された、後述するシアン成分の二値画像データと、マゼンタ成分の二値画像データと、イエロー成分の二値画像データと、ブラック成分の二値画像データとを、デジタル印刷装置100のプリントヘッド制御部104等に受け渡すよう構成されている。なお、入力部12及び出力部22は、種々の公知のインターフェースを採用可能であるため、その詳細な説明を省略する。
ラスター変換処理部14は、入力部12を介して入力された入稿画像データがベクターデータ(ベクトル量で表現された線画像のデータ)等の非ラスターデータである場合に、この非ラスターデータをラスター変換処理(RIP)して、ドット(画素)の集合であるラスターデータに変換するよう構成されている。なお、ラスター変換処理部14により生成されたラスターデータは、画像を構成する画素のそれぞれが2ビット以上の階調情報を有する多値画像データ(例えば、各画素がそれぞれ8ビット(=256階調)の階調情報を有するフルカラー画像データ)である。なお、入稿画像データが多値画像である場合には、ラスター変換処理部14によるラスター変換処理は実行されなくても良い。また、ラスター変換処理部14で実行するラスター変換処理(RIP)は、種々の公知の処理手法を採用可能であるため、その詳細な説明を省略する。
エッジ抽出部18は、入力部12を介して入力された多値画像データ又はラスター変換処理部14によってラスター変換された多値画像データについて、それぞれ、エッジ抽出処理を実行するよう構成されている。具体的には、エッジ抽出部18は、図3に示すように、多値画像データに対し、エッジ抽出フィルタを用いてエッジ抽出処理を実行する一次エッジ抽出部18aと、多値画像データにおける画素の輝度のばらつきをマップ化するマップ化処理部18bと、一次エッジ抽出部18aで得られた一次エッジ抽出データとマップ化処理部18bで得られたマップデータとを論理合成(AND,NOR等)することで二次エッジ抽出データを生成するエッジ論理合成処理部18cとを備えている。なお、本実施形態に係るエッジ抽出部18において、各画素が複数の色成分についてそれぞれ輝度情報を有する場合には、各色成分の輝度の加重平均を画素の輝度として取り扱い、エッジ抽出処理を実行することとするが、これに限定されず、例えば、各色成分の輝度の合計値を画素の輝度として取り扱う方法や、任意の色成分の輝度を画素の輝度として取り扱う方法等の種々の方法を採用することが可能である。
一次エッジ抽出部18aは、従来のエッジ検出処理と同様に、隣接する画素同士の輝度差が大きい箇所を「エッジ」とみなす手法により、画像に含まれるエッジ部を抽出するよう構成されている。具体的には、一次エッジ抽出部18aは、Robertsフィルタ、Sobelフィルタ及びPrewittフィルタ等の一次微分フィルタや、ラプラシアンフィルタ等の二次微分フィルタ等のエッジ抽出フィルタにより、画像に含まれるエッジ部を抽出するよう構成されている。また、一次エッジ抽出部18aは、エッジ部として抽出した画素の位置情報(座標)を示すデータを、一次エッジ抽出データ(図5(b)及び図6(b)に示すデータ)として、記憶部24に記憶させるよう構成されている。なお、一次微分フィルタを用いる場合には、一方向に対する処理のみでエッジ領域を求めることから、例えばx方向(画素配列の左右方向)に対する処理と、y方向(画素配列の上下方向)に対する処理とをそれぞれ実行した後、これらの処理を論理合成(AND,NOR等)することで、エッジ部を抽出することが好ましい。一次エッジ抽出部18aにおけるエッジ抽出処理は、種々の公知のエッジ抽出処理を採用可能であるため、その詳細な説明を省略する。また、エッジ抽出フィルタは、上述した各種フィルタに限定されず、種々のフィルタを採用することが可能である。
マップ化処理部18bは、多値画像データを構成する画素のそれぞれについて、所定範囲内における複数の画素を統計対象として輝度のばらつきを算出し、この算出したばらつきを所定の閾値と比較することで、多値画像データを構成する画素の輝度のばらつきをマップ化するよう構成されている。また、マップ化処理部18bは、画素の輝度のばらつきをマップ化したマップデータを記憶部24に記憶させるよう構成されている。
本実施形態に係るマップ化処理部18bでは、輝度のばらつきを判定基準としたマップ化処理として、例えば、(1)輝度の分散値を判定基準として用いる第1のマップ化処理(図4及び図5参照)と、(2)所定の輝度を有する画素の個数(画素数)を判定基準として用いる第2のマップ化処理(図4及び図6参照)と、(3)輝度の分散値及び所定の輝度を有する画素数の双方を判定基準として用いる第3のマップ化処理(図示せず)の3パターンを実行可能に構成されている。以下、第1〜第3のマップ化処理について、それぞれ説明する。
まず、第1のマップ化処理について、説明する。第1のマップ化処理は、判定対象となる画素(図4中、符号Aが付された画素)を中心とした所定範囲内における複数の画素を統計対象として輝度の分散値を算出し、この算出された分散値が所定の閾値以上(又は未満)であるか否かを判定する処理を、多値画像データを構成する画素のそれぞれについて実行することで、多値画像データを構成する画素の輝度のばらつきをマップ化する処理である。なお、統計対象とする範囲や、閾値等は、任意に設定することが可能である。
図4に示す例を用いて更に詳細に説明すると、第1のマップ化処理では、まず、判定対象画素Aを中心とした9×9の範囲内における81個の画素を統計対象として、輝度の分散値を算出する。なお、分散値は、一般的に輝度のばらつきの指標として用いられている値であり、統計対象となる全画素の階調(輝度値)の「2乗平均」と「平均の2乗」の差で求めることができる。図4に示す例では、81画素の階調の「2乗平均」が「14713」で、「平均の2乗」が「8831」であり、それゆえ、その差は「5882」である。第1のマップ化処理では、次に、算出された分散値(「5882」)が閾値以上(又は未満)であるか否かを判定する。例えば、閾値を「4000」とし、分散値が4000以上の画素をエッジ部として判定することとした場合には、図4に示す例では分散値が閾値(4000)以上であるため、判定対象画素Aをエッジ部として判定する。そして、これらの処理を多値画像データを構成する全ての画素について実行することで、エッジ部と判定された画素(分散値が閾値以上の画素)と、それ以外の画素(分散値が閾値未満の画素)との分布を示すマップデータ(図5(c)に示すデータ)が生成される。なお、9×9を統計対象とすることができない画素(例えば、画像端の画素等)については、例えば、マップ化処理に使用するフィルタのサイズを画像端の画素等の処理時にのみ画像からはみ出さないように変更する方法や、画像外の画素を画像中の一番近い画素の値と同値として補完する方法等の従来公知の方法により、処理が実行される。
次に、第2のマップ化処理について、説明する。第2のマップ化処理は、判定対象となる画素(図4中、符号Aが付された画素)を中心とした所定範囲内における複数の画素を統計対象として、所定の閾値以上(又は未満)の輝度を有する画素の個数を算出し、この算出された個数が所定の閾値以上(又は未満)であるか否かを判定する処理を、多値画像データを構成する画素のそれぞれについて実行することで、多値画像データを構成する画素の輝度のばらつきをマップ化する処理である。なお、統計対象とする範囲や、輝度の閾値及び個数の閾値等は、任意に設定することが可能である。
図4に示す例を用いて更に詳細に説明すると、第2のマップ化処理では、まず、判定対象画素Aを中心とした9×9の範囲内における81個の画素を統計対象として、所定の閾値以上(又は未満)の輝度を有する画素の個数を算出する。例えば、輝度の閾値を「50」とした場合には、図4に示す例では、当該閾値以上の輝度(階調)を有する画素の個数は「29」となる。以下、説明を簡単にするため、閾値以上の輝度(階調)を有する画素を、その色に関わらず、「黒画素」という。第2のマップ化処理では、次に、算出された個数(「29」)が所定の閾値以上(又は未満)であるか否かを判定する。例えば、個数の閾値を「16個以上」とし、周囲の黒画素が16個以上の画素をエッジ部として判定することとした場合には、図4に示す例では周囲の黒画素が閾値(16個)以上であるため、判定対象画素Aをエッジ部として判定する。そして、これらの処理を多値画像データを構成する全ての画素について実行することで、エッジ部と判定された画素(周囲の黒画素の個数が閾値以上の画素)と、それ以外の画素(周囲の黒画素の個数が閾値未満の画素)との分布を示すマップデータ(図6(c)に示すデータ)が生成される。なお、9×9を統計対象とできない画素(例えば、画像端の画素等)に対する処理については、上述した第1のマップ化処理と同様である。
次に、第3のマップ化処理について、説明する。第3のマップ化処理は、判定対象となる画素を中心とした所定範囲内における複数の画素を統計対象として、輝度の分散値と、所定の閾値以上(又は未満)の輝度を有する画素の個数とを算出し、これら算出された分散値及び個数の双方が所定の閾値以上(又は未満)であるか否かを判定する処理を、多値画像データを構成する画素のそれぞれについて実行することで、多値画像データを構成する画素の輝度のばらつきをマップ化する処理である。すなわち、上述した第1のマップ化処理により生成したマップデータと、上述した第2のマップ化処理により生成したマップデータとを論理合成(AND,NOR等)して、新たなマップデータを生成する処理である。なお、輝度の分散値を判定基準とした処理は、上述した第1のマップ化処理と同様であり、周囲の黒画素の個数を判定基準とした処理は、上述した第2のマップ化処理と同様であるため、これらの詳細な説明を省略する。
エッジ論理合成処理部18cは、一次エッジ抽出部18aによりエッジ部分が抽出された一次エッジ抽出データと、マップ化処理部18bによって生成された輝度のばらつきを示すマップデータとを論理合成することで、輝度のばらつきが反映された二次エッジ抽出データを生成するよう構成されている。具体的には、エッジ論理合成処理部18cは、図5及び図6に示すように、通常のエッジ抽出処理によってエッジ部が抽出された一次エッジ抽出データ(図5(b)及び図6(b)に示すデータ)と、第1〜第3のマップ化処理によって生成されたマップデータ(図5(c)及び図6(c)に示すデータ等)とを論理合成(AND,NOR等)して、隣接する画素間の輝度差と、輝度の空間分布特性(輝度の連続性や離散性等)及び色味の空間分布特性(色味の比率等)との双方を加味した二次エッジ抽出データ(図5(d)及び図6(d)に示すデータ)を生成するよう構成されている。このように、一次エッジ抽出データに輝度のばらつきを示すマップデータの情報を反映させることにより、単純な輝度差だけでなく、輝度の空間分布特性(輝度の連続性や離散性等)や、色味の空間分布特性(色味の比率等)をも考慮してエッジ部を特定することが可能となるため、エッジ部の誤検出を抑制し、エッジ部を正確に抽出することが可能となる。また、エッジ論理合成処理部18cは、生成した二次エッジ抽出データを、後述する4色分の多値画像データにおいて共通して使用されるエッジ抽出データとして、記憶部24に記憶させるよう構成されている。
ここで、エッジ論理合成処理部18cにおける論理合成処理としては、例えば、画素単位で論理合成する方法と、隣接する複数の画素からなる画素群単位で論理合成する方法とを適宜採用することが可能である。画素単位で論理合成する方法としては、例えば、一次エッジ抽出データの各画素と、マップデータの各画素とを画素単位で比較し、両データにおいてエッジ部(又は非エッジ部)と判定された画素のみをエッジ部(又は非エッジ部)とする方法を採用可能である。また、画素群単位で論理合成する方法としては、例えば、一次エッジ抽出データ中の4近傍で接続している画素を1つの画素群(クラスタ)とし、画素群を構成する画素について一括で論理合成を行う方法を採用可能である。なお、本実施形態の説明において、4近傍で接続する画素からなる画素群とは、1つの中心画素と、その4近傍(左右上下)に位置する4つの周辺画素からなる画素群を意味している。また、一括で論理合成を行う方法としては、例えば、一次エッジ抽出データにおける画素群に対応するマップデータにおける画素群について、その平均値(第1のマップ化処理においては分散値の平均値、第2のマップ化処理においては画素数の平均値、第3のマップ化処理においては分散値及び/又は画素数の平均値)を算出し、該算出した平均値と予め定めた任意の閾値とを比較することで、画素群単位でエッジ部(又は非エッジ部)を判定する手法を採用可能である。上述の説明では、4近傍で接続している画素を1つの画素群とするものとして説明したが、これに限定されるものではなく、画素群は、任意の画素数及び画素配置からなる画素群とすることが可能である。
色分版処理部16は、入力部12を介して入力された多値画像データ又はラスター変換処理部14によってラスター変換された多値画像データを、シアン成分の多値画像データと、マゼンタ成分の多値画像データと、イエロー成分の多値画像データと、ブラック成分の多値画像データとに分版するよう構成されている。なお、色分版処理部16で実行する色分版処理は、種々の公知の処理手法を採用可能であるため、その詳細な説明を省略する。
階調変換処理部20は、色分版処理部16によって色分版された4色分の多値画像データに対して、エッジ抽出部18によって生成された二次エッジ抽出データを用いてそれぞれ階調変換処理を実行することで、各多値画像データを印刷用の二値画像データ(ビットマップデータ)にそれぞれ変換するよう構成されている。また、階調変換処理部20は、生成した印刷用の二値画像データを記憶部24に記憶させるよう構成されている。
ここで、本実施形態に係る階調変換処理部20では、エッジ抽出部18によりエッジ部分であると判定された部分に対する階調変換処理と、エッジ抽出部18により非エッジ部分(エッジ部分ではない部分)であると判定された部分に対する階調変換処理とを、それぞれ異なる条件下で実行するよう構成されている。具体的には、階調変換処理部20は、図7に示すように、エッジ抽出部18によりエッジ部分であると判定された部分を対象として、階調変換処理を実行するエッジ部量子化処理部20aと、エッジ抽出部18により非エッジ部分であると判定された部分を対象として、階調変換処理を実行する非エッジ部量子化処理部20bと、エッジ部量子化処理部20aにより処理された量子化データと、非エッジ部量子化処理部20bにより処理された量子化データとを論理合成(AND,NOR等)することで、印刷用の二値画像データを生成する量子化論理合成処理部20cとを備えている。
ここで、異なる条件としては、例えば、誤差拡散法により二値化する際の閾値を、エッジ部と非エッジ部とで異なる値とすることが挙げられる。例えば、エッジ部を誤差拡散法により二値化する際の閾値を、非エッジ部を誤差拡散法により二値化する際の閾値よりも低く設定した場合には、本来エッジ部となるべき画素の「0」値化(消失)を抑制することが可能となるため、エッジ部を鮮明に再現することが可能となる。なお、異なる閾値を用いて誤差拡散法で階調変換処理(二値化処理)する例以外にも、例えば、エッジ部をディザ法(例えば組織的ディザ法)で処理し、非エッジ部を誤差拡散法で処理する等、エッジ部と非エッジ部とで異なる手法により階調変換処理するようにしても良い。本実施形態に係る階調変換処理部20では、このように、エッジ部と非エッジ部とを互いに独立して階調変換処理可能としたことにより、エッジ部と非エッジ部とのそれぞれについて、最適な条件の下で階調変換処理を実行することが可能となるため、非エッジ部の画像の流麗さとエッジ部の画像の鮮明さを両立させた二値画像データを生成することが可能となる。
次に、本実施形態に係る画像処理装置を用いた画像処理方法について、図8及び図9を用いて説明する。なお、以下で説明する画像処理方法は、画像処理装置1の記憶部24に格納された画像処理プログラムによって実行処理される。
本実施形態に係る画像処理方法では、図8に示すように、まず、他の情報処理端末や記憶媒体等から入稿画像データ(元画像データ)の入力を受け付け、この入稿画像データが多値画像データではない場合には、ラスター変換処理部14にて多値画像データに変換する(S1)。
続いて、本実施形態に係る画像処理方法では、入力部12を介して入力された多値画像データ又はラスター変換処理部14によってラスター変換された多値画像データについて、エッジ抽出処理を実行する(エッジ抽出工程)。具体的には、まず、多値画像データに対し、一次微分フィルタ又は二次微分フィルタを用いてエッジ抽出処理を実行する(一次エッジ抽出工程S2)。また、その前後又は一次エッジ抽出工程と並行して、多値画像データを構成する画素のそれぞれについて、所定範囲内における複数の画素を統計対象として輝度のばらつきを算出し、この算出したばらつきを所定の閾値と比較することで、多値画像データを構成する画素の輝度のばらつきをマップ化する(マップ化処理工程S3)。そして、これら一次エッジ抽出工程及びマップ化処理工程が完了した後に、一次エッジ抽出工程によりエッジ部分が抽出された一次エッジ抽出データと、マップ化処理工程によって生成された輝度のばらつきを示すマップデータとを論理合成することで、輝度のばらつきが反映された二次エッジ抽出データを生成する(エッジ論理合成処理工程S4)。
ここで、マップ化処理工程(S3)について、図9を用いて詳述する。マップ化処理工程は、上述した第1のマップ化処理、第2のマップ化処理及び第3のマップ化処理のいずれかの処理を実行する工程である。具体的には、まず、判定対象となる画素を中心とした所定範囲内における複数の画素を統計対象として、輝度の分散値若しくは/及び所定の閾値以上(又は未満)の輝度を有する画素の個数(第1のマップ化処理の場合には輝度の分散値、第2のマップ化処理の場合には所定輝度以上の画素数、第3のマップ化処理の場合には輝度の分散値と所定輝度以上の画素数の双方)を算出する(S3−1)。続いて、算出された分散値又は/及び所定輝度以上の画素数が所定の閾値以上(又は未満)であるか否かを判定する(S3−2)。そして、当該判定によって所定の閾値以上であると判定された画素については、エッジ部を構成する画素と判定し(S3−3)、所定の閾値未満であると判定された画素については、非エッジ部を構成する画素(エッジ部を構成しない画素)と判定する(S3−3’)。その後、未処理の画素が存在する場合には、未処理画素へ移行して上記S3−1〜S3−3,S3−3’の処理を実行する(S3−4,S3−5)。そして、多値画像データを構成する全ての画素について処理が完了した場合には、第1〜第3のマップ化処理のいずれかによってエッジ部又は非エッジ部と判定された画素の分布情報(位置情報)を、画素の輝度のばらつきをマップ化したマップデータとして、記憶部24に保存する(S3−4,S3−6)。以上のS3−1〜S3−6の工程により、マップ化処理工程が実行される。
また、本実施形態に係る画像処理方法では、エッジ抽出工程の前後又はこれと並行して、色分版処理部16にて、入力部12を介して入力された多値画像データ又はラスター変換処理部14によってラスター変換された多値画像データを、シアン成分の多値画像データと、マゼンタ成分の多値画像データと、イエロー成分の多値画像データと、ブラック成分の多値画像データとに分版する(S4)。
続いて、本実施形態に係る画像処理方法では、図8に示すように、エッジ論理合成処理工程によって生成された共通の二次エッジ抽出データに基づき、4色の多値画像データについてそれぞれ階調変換処理を実行することで、各多値画像データを二値画像データに変換する(階調変換処理工程)。具体的には、二次エッジ抽出データにおいてエッジ部とされている画素に対する階調変換処理(量子化処理)を実行すると共に(エッジ部量子化処理工程S6)、その前後又はこれと並行して、二次エッジ抽出データにおいて非エッジ部とされている画素に対する階調変換処理(量子化処理)を実行する(非エッジ部量子化処理工程S7)。なお、エッジ部に対する階調変換処理と、非エッジ部に対する階調変換処理とは、それぞれ適した処理条件が異なることから、本実施形態に係る画像処理方法では、これらの処理はそれぞれ異なる条件下(例えば、それぞれの処理に適した異なる閾値や二値化手法)で実行される。そして、これらエッジ部量子化処理及び非エッジ部量子化処理が完了した後に、エッジ部量子化処理により処理された量子化データと、非エッジ部量子化処理により処理された量子化データとを論理合成することで、印刷用の二値画像データを生成する(量子化論理合成処理工程S8)。
最後に、本実施形態に係る画像処理方法では、以上のS1〜S8の工程によって生成された印刷用の二値画像データを記憶部24に保存し(S9)、デジタル印刷装置100に二値画像データを提供するために必要な種々の処理(例えば面付け処理等)を実行した後、デジタル印刷装置100のプリントヘッド制御部104へ出力する(S10)。
以上説明したとおり、本実施形態に係る画像処理装置1は、多値画像データをデジタル印刷装置100で使用可能な二値画像データに変換する画像処理装置1であって、多値画像データに対して、エッジ抽出処理を実行するエッジ抽出部18と、エッジ抽出部18によりエッジ抽出処理が実行された多値画像データに対して階調変換処理を実行することで、多値画像データを二値画像データに変換する階調変換処理部20とを備え、エッジ抽出部18が、多値画像データに対し、一次微分フィルタ又は二次微分フィルタを用いてエッジ抽出処理を実行する一次エッジ抽出部18aと、多値画像データを構成する画素のそれぞれについて、所定範囲内における複数の画素を統計対象として輝度のばらつきを算出し、算出したばらつきを所定の閾値と比較することで、多値画像データを構成する画素の輝度のばらつきをマップ化するマップ化処理部18bと、一次エッジ抽出部18aによりエッジ部分が抽出された一次エッジ抽出データと、マップ化処理部18bによって生成された輝度のばらつきを示すマップデータとを論理合成することで、輝度のばらつきが反映された二次エッジ抽出データを生成するエッジ論理合成処理部18cとを備えている。
このように構成された本実施形態に係る画像処理装置1によれば、通常のエッジ抽出処理によってエッジ部が抽出された一次エッジ抽出データに、輝度のばらつきを示すマップデータの情報を反映させることにより、単純な輝度差だけでなく、輝度の空間分布特性(輝度の連続性や離散性等)や色味の空間分布特性(色味の比率等)をも考慮してエッジ部を特定することが可能となるため、高精度なエッジ抽出を実現することが可能である。すなわち、本実施形態に係る画像処理装置1では、隣接する画素との輝度差が大きい画素を直ちに「エッジ部」とするのではなく、あくまでも「エッジ部」の候補として留めておき、これら「エッジ部」の候補のうち、その周辺に異なった(あるいは離散した)輝度や色味がある程度存在する画素のみを「エッジ部」として特定することが可能となるため、特に図5(b)と図5(d)とを比較することで明らかなとおり、エッジ部の誤検出を抑制し、エッジ部を正確に抽出することが可能となる。また、本実施形態に係る画像処理装置1によれば、例えば同程度の輝度を有する異なる色の境についても、エッジ部として抽出することが可能となる。
また、本実施形態に係る画像処理装置1は、上述のとおり、階調変換処理部20が、エッジ抽出部18によりエッジ部分であると判定された部分に対する階調変換処理と、エッジ抽出部18により非エッジ部分であると判定された部分に対する階調変換処理とを、それぞれ異なる条件下で実行するよう構成されている。このように構成された本実施形態に係る画像処理装置1によれば、エッジ部と非エッジ部とを互いに独立して階調変換処理可能としたことにより、エッジ部と非エッジ部とのそれぞれについて、最適な条件の下で階調変換処理を実行することが可能となるため、図10(b)と図10(c)とを比較することで明らかなとおり、非エッジ部の画像の流麗さとエッジ部の画像の鮮明さを両立させた二値画像データを生成することが可能となる。なお、図10(a)は、多値画像データである元画像を示しており、図10(b)は、元画像データの全体を従来の誤差拡散法により階調変換した二値画像データを示しており、図10(c)は、本実施形態に係る画像処理装置1により階調変換した二値画像データを示している。
特に、本実施形態に係る画像処理装置1は、上述のとおり、エッジ部に対する階調変換処理と、非エッジ部に対する階調変換処理とを別々に実行した後に、これらの処理で得られた量子化データを合成して、二値画像データを生成するよう構成されている。このように構成された画像処理装置1によれば、非エッジ部に対して行った量子化の影響(誤差拡散等)がエッジ部に及ぶことが無く、また、エッジ部に対して行った量子化の影響(誤差拡散等)が非エッジ部に及ぶことも無いため、エッジ部と非エッジ部との間における色味や輝度の相互干渉を排することが可能となる。そして、このように、エッジ部と非エッジ部との間における色味や輝度の相互干渉を排することにより、マルチトーン処理時に考慮すべき小さい文字部の色等の再現性が量子化後も維持可能となる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に記載の範囲には限定されない。上記各実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、マップ化処理部18bにおけるマップ化処理として、第1〜第3のマップ化処理を例示したが、これらに限定されるものではなく、多値画像データを構成する画素の輝度のばらつきをマップ化することが可能な処理であれば、種々の処理方法を採用することが可能である。
また、上述した実施形態では、色分版前の多値画像データについてエッジ抽出処理を実行し、これで得られた二次エッジ抽出データを分版後の各色の多値画像データの階調変換処理において共通して用いるものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、色分版を行った後の各色の多値画像データのそれぞれについて、エッジ抽出処理を実行し、それぞれ得られた二次エッジ抽出データを用いて、各色の多値画像データについて階調変換処理を行う構成としても良い。
さらに、上述した実施形態では、階調変換処理において、二次エッジ抽出データにおいてエッジ部と判定された画素を対象としたエッジ部量子化処理と、二次エッジ抽出データにおいて非エッジ部と判定された画素を対象とした非エッジ部量子化処理とを別々に実行し、これらの処理で得られた量子化データを論理合成することで、二値画像データを生成するものとしたが、これに限定されるものではない。例えば、画素配列に沿って走査する過程において、処理対象となる画素毎に二次エッジ抽出データを参照してエッジ部であるか非エッジ部であるかを判定し、その判定結果に応じてエッジ部量子化処理と非エッジ部量子化処理とのいずれか一方を選択して実行するとしても良い。この場合には、誤差拡散法の演算処理が若干複雑になるものの、2つの量子化データを論理合成する処理が不要となるという利点がある。
上記のような変形例が本発明の範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。