JP2018091745A - 瞬時値対称成分の計算方法、計算装置、及び計算プログラム - Google Patents

瞬時値対称成分の計算方法、計算装置、及び計算プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】現在の情報のみを用いて時間領域で対称成分を計算することができるようにする。
【解決手段】三相交流の各相の電圧瞬時値が用いられて実数部と当該実数部の位相が90°だけ進んだ成分である虚数部とからなる各相の複素ベクトルが求められ(S1)、これら各相の複素ベクトルがそれぞれ0°回転,240°遅れ回転,120°遅れ回転させられて各相の正相分対応回転ベクトルが計算される(S2)と共にそれぞれ0°回転,120°遅れ回転,240°遅れ回転させられて各相の逆相分対応回転ベクトルが計算され(S3)、各相の正相分対応回転ベクトルの実数部の和が3で割られて正相電圧が計算される(S4)と共に各相の逆相分対応回転ベクトルの実数部の和が3で割られて逆相電圧が計算される(S5)ようにした。
【選択図】図1

Description

本発明は、瞬時値対称成分の計算方法、計算装置、及び計算プログラムに関する。さらに詳述すると、本発明は、例えば電力系統に連系している交直変換器の制御へと応用して好適な技術に関する。
太陽光発電などの分散電源は交直変換器を介して電力系統に連系されているところ、交直変換器が連系する電力系統の状態は時々刻々と変化している。例えば、系統規模の小さな離島では需給アンバランスに起因して周波数変動が比較的大きくなったり、大規模系統であってもブランチ潮流の急峻な変化に起因して電圧の大きさや位相が大きく変化したりする場合がある。特に、後者では、PLL(Phase Locked Loop の略)において電圧位相の変化が過渡的な周波数変化として認識される。また、配電系統では多様な需要家機器の影響で電圧波形がひずんだりしている。このように多様な条件下で、交直変換器は電力系統の状態(具体的には、変換器連系地点の電圧位相や周波数)を把握し、変換器電流を適切に制御する必要がある。
電力系統の状態の把握にあたっては電圧波形の零クロス点を活用するなど様々な方法があるが、三相回路用の電圧位相検出方式には、通常、PLLをベースとしたものが多い。例えば、よく知られている乗算式PLL、正相電圧情報に基づいて計算することで異常電圧への対応を図る方法が挙げられる(非特許文献1)。
特に、直接接地系で欠相や地絡事故が発生した場合、異常な電圧不足や電圧不平衡が生じる場合があるため、PLLへの入力電圧も同じように異常な電圧になってしまう。この結果、電力系統状態の把握や変換器制御の結果に誤差をもたらすことになる(非特許文献1)。これに的確に対応するため、変換器連系点の正相電圧をできる限り高速かつ高精度に把握できることが必要とされる。
一方、正相電圧演算では位相を90°ずらす必要があるが、これを実現するには周波数が既知である必要があるだけでなく、大幅な周波数変化時には90°(=π/2)に対応させて時間をずらす(「Delay」と表記する)ときに、厳密にはこのDelay時間を時々刻々変える必要がある。例えば離島における比較的大きな周波数変動時や過渡的に周波数が変化する場合に電力系統状態を的確に把握するには、何らかの工夫が必要になると考えられる。この何らかの工夫として、正相電圧の高速かつ高精度な把握が挙げられる。
赤松昌彦ほか「電力系統事故時の異常電圧に対処したPLLおよび周波数検出方式」,電気学会論文誌B,第118巻9号,pp.955−961,1998年
しかしながら、非特許文献1では、正相電圧や逆相電圧を計算する論理や具体的な方法に関する記述が見当たらず、瞬時値対称成分の計算方法が明確ではない。
また、上述したような状況に限らず、電力系統の状態をできる限り高速かつ正確に認識可能であるほど例えば電圧位相や周波数のステップ変化或いは系統側外乱時の対応能力が向上するので、正相電圧の高速かつ高精度な把握は重要であるにも拘わらず、電圧や電流の瞬時値を用いて正相電圧や逆相電圧を計算する論理や具体的な方法が理論的に整理されているとは言えない。
そこで、本発明は、現在の情報(即ち、瞬時値データ)のみを用いて時間領域で対称成分を計算することができる瞬時値対称成分の計算方法、計算装置、及び計算プログラムを提供することを目的とする。
まず、対称座標法の関係式(ベクトル表現)と、この定義に基づいて計算する瞬時値の対称成分(即ち、零相,正相,及び逆相)の簡易的な計算式(時間領域における量)とのそれぞれについて整理すると以下のようになる。本発明で対象としている瞬時値対称成分とは、この時間領域における対称成分の量を指している。
対称座標法の関係式を以下の数式1に示す。
Figure 2018091745
ここに、 V0:三相交流の0相(零相)の電気量,
1:三相交流の1相(正相)の電気量,
2:三相交流の2相(逆相)の電気量,
a:三相交流のa相の電気量,
b:三相交流のb相の電気量,
c:三相交流のc相の電気量 をそれぞれ表す。
ただし、各Vの上にはベクトル表現であることを表す「・」が付いている。
数式1における定数aは数式2Aによって表され、また、定数a2は数式2Bによって表される。ただし、jは虚数単位である。
Figure 2018091745
Figure 2018091745
また、瞬時値の対称成分の簡易的な計算式を以下の数式3に示す。
Figure 2018091745
ここに、 v0(t):三相交流の0相(零相)の電圧,
1(t):三相交流の1相(正相)の電圧,
2(t):三相交流の2相(逆相)の電圧,
a(t):三相交流のa相の電圧瞬時値,
b(t):三相交流のb相の電圧瞬時値,
c(t):三相交流のc相の電圧瞬時値,
t:電圧瞬時値が観測された時間(時刻) をそれぞれ表す。
数式3は、時間変化する観測波形の時間(時刻)tに対応する信号であって三相電圧の瞬時値として電気量を表すものであり、言い換えると、時間領域における量として電気量を表すものである。なお、数式3において、D120°は120°Delayを意味し、D240°は240°Delayを意味する。
数式1ではb相,c相のベクトルはa相ベクトルに対してそれぞれ120°,240°遅れているので、それぞれ120°,240°進ませることでb相,c相のベクトルはa相ベクトルと一致する。そして、これらの和を取り、3で割ったものはa相ベクトルと一致するがこれを正相分と呼んでいる(「電圧算定の考え方」と呼ぶ)。
数式3では、b相,c相のベクトルはa相ベクトルに対してそれぞれ120°,240°遅れているが、時間領域では未来ではなく過去を考え、b相,c相をそれぞれ240°,120°の分だけDelayさせた各相の和を3で割って正相成分に対応させ、また、b相,c相をそれぞれ120°,240°の分だけDelayさせた各相の和を3で割って逆相成分に対応させる(「回転の考え方」と呼ぶ)。
周波数をf[Hz]として“度”ではなくて“時間(単位:秒(数式4中では[sec]と表現))”で数式3を表したものが以下の数式4である。
Figure 2018091745
前述の通り、大幅な周波数変化時には90°(=π/2)に対応させて時間をずらす(Delay)ときに、厳密にはこのDelay時間を時々刻々変える必要がある。このことは、数式4における(1/f)*(2/3)[sec]や(1/f)*(1/3)[sec]に該当する時間を厳密には変更すべきであることを意味する。
また、dq回転座標変換では以下の数式5のように回転させるが、vα(t)とvβ(t)とは、位相が90°ずれた関係にあり、時間領域の量であるがベクトルとして捉える。なお、数式5における変換行列(具体的には、回転行列)は、時間tを含む関数であるθの関数であり、つまり時間tの関数であるので、時間の経過に従って変化する。
Figure 2018091745
一方、対称座標法における定数a(数式2A)は120°に対応し、また、定数a2(数式2B)は240°に対応しており、各相のベクトルを回転させると正相分や逆相分が得られる。
以上を背景に、発明者は、対象とする量と位相が90°ずれた量とをベクトルとして扱い、このベクトルを0°,120°,240°で回転させるように考えれば対称成分の計算が理に適って行われるとの考えに至った。
本発明は上記の発明者独自の新たな考え方に基づくものであり、本発明の瞬時値対称成分の計算方法は、三相交流の各相の電圧瞬時値が用いられて実数部と当該実数部の位相が90°だけ進んだ成分である虚数部とからなる各相の複素ベクトルが求められ、これら各相の複素ベクトルがそれぞれ0°回転,240°遅れ回転,120°遅れ回転させられて各相の正相分対応回転ベクトルが計算され、これら各相の正相分対応回転ベクトルの実数部の和が3で割られて正相電圧が計算されるようにしている。
本発明の瞬時値対称成分の計算装置は、三相交流の各相の電圧瞬時値を用いて実数部と当該実数部の位相が90°だけ進んだ成分である虚数部とからなる各相の複素ベクトルを求める手段と、各相の複素ベクトルをそれぞれ0°回転,240°遅れ回転,120°遅れ回転させて各相の正相分対応回転ベクトルを計算する手段と、各相の正相分対応回転ベクトルの実数部の和を3で割って正相電圧を計算する手段とを有するようにしている。
本発明の瞬時値対称成分の計算プログラムは、三相交流の各相の電圧瞬時値を用いて実数部と当該実数部の位相が90°だけ進んだ成分である虚数部とからなる各相の複素ベクトルを求める処理と、各相の複素ベクトルをそれぞれ0°回転,240°遅れ回転,120°遅れ回転させて各相の正相分対応回転ベクトルを計算する処理と、各相の正相分対応回転ベクトルの実数部の和を3で割って正相電圧を計算する処理とをコンピュータに行わせるようにしている。
したがって、これらの瞬時値対称成分の計算方法、計算装置、及び計算プログラムによると、現在の情報のみを用いて時間領域で瞬時値の正相電圧が計算される。
本発明の瞬時値対称成分の計算方法は、さらに、各相の複素ベクトルがそれぞれ0°回転,120°遅れ回転,240°遅れ回転させられて各相の逆相分対応回転ベクトルが計算され、これら各相の逆相分対応回転ベクトルの実数部の和が3で割られて逆相電圧が計算されるようにしても良く、本発明の瞬時値対称成分の計算装置は、各相の複素ベクトルをそれぞれ0°回転,120°遅れ回転,240°遅れ回転させて各相の逆相分対応回転ベクトルを計算する手段と、各相の逆相分対応回転ベクトルの実数部の和を3で割って逆相電圧を計算する手段とを更に有するようにしても良く、本発明の瞬時値対称成分の計算プログラムは、各相の複素ベクトルをそれぞれ0°回転,120°遅れ回転,240°遅れ回転させて各相の逆相分対応回転ベクトルを計算する処理と、各相の逆相分対応回転ベクトルの実数部の和を3で割って逆相電圧を計算する処理とを更にコンピュータに行わせるようにしても良い。これらの場合には、現在の情報のみを用いて時間領域で瞬時値の正相電圧に加えて逆相電圧が計算される。
本発明の瞬時値対称成分の計算方法、計算装置、及び計算プログラムによれば、現在の情報のみを用いて時間領域で瞬時値の正相電圧を計算することができるので、電力系統の状態を高速かつ正確に認識することが可能になる。
本発明の瞬時値対称成分の計算方法、計算装置、及び計算プログラムは、さらに各相の逆相分対応回転ベクトルを計算して逆相電圧も計算するようにした場合には、現在の情報のみを用いて時間領域で瞬時値の正相電圧に加えて逆相電圧も計算することができるので、瞬時値対称成分の計算手法としての有用性を一層向上させることが可能になる。
本発明の瞬時値対称成分の計算方法,瞬時値対称成分の計算プログラムの実施形態の一例を示すフローチャートである。 実施形態の瞬時値対称成分の計算方法を瞬時値対称成分の計算プログラムを用いて実施する場合の当該プログラムによって実現される瞬時値対称成分の計算装置の機能ブロック図である。 各相の電圧瞬時値(図中では例としてa相のva(t))の位相を90°シフトさせるブロックを示す図である。 実施例1における各相の電圧瞬時値波形を示す図である。 実施例1におけるa相の複素ベクトルの実数部波形と虚数部波形とを示す図である。 実施例1におけるa相の正相分対応回転ベクトルの実数部波形と虚数部波形とを示す図である。 実施例1における正相電圧の実数部波形と虚数部波形とを示す図である。 実施例2における故障発生前後での各相の電圧瞬時値波形を示す図である。 実施例2における簡易手法による計算によって得られた零相電圧,正相電圧,及び逆相電圧の波形を示す図である。 実施例2における本発明の手法による計算によって得られた正相電圧及び逆相電圧並びに零相電圧の波形を示す図である。 実施例2における簡易手法による計算によって得られた正相電圧の波形と本発明の手法による計算によって得られた正相電圧の波形との比較を示す図である。
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
図1乃至図3に、本発明の瞬時値対称成分の計算方法、計算装置、及び計算プログラムの実施形態の一例を示す。
本実施形態の瞬時値対称成分の計算方法は、三相交流電力系統における三相交流の各相の電圧瞬時値が用いられて実数部と当該実数部の位相が90°だけ進んだ成分である虚数部とからなる各相の複素ベクトルが求められ(S1)、これら各相の複素ベクトルがそれぞれ0°回転,240°遅れ回転(Delay),120°遅れ回転(Delay)させられて各相の正相分対応回転ベクトルが計算される(S2)と共にそれぞれ0°回転,120°遅れ回転(Delay),240°遅れ回転(Delay)させられて各相の逆相分対応回転ベクトルが計算され(S3)、各相の正相分対応回転ベクトルの実数部の和が3で割られて正相電圧が計算される(S4)と共に各相の逆相分対応回転ベクトルの実数部の和が3で割られて逆相電圧が計算される(S5)ようにしている(図1参照)。
また、本実施形態の瞬時値対称成分の計算装置(10)は、三相交流電力系統における三相交流の各相の電圧瞬時値を用いて実数部と当該実数部の位相が90°だけ進んだ成分である虚数部とからなる各相の複素ベクトルを求める手段(11a)と、各相の複素ベクトルをそれぞれ0°回転,240°遅れ回転(Delay),120°遅れ回転(Delay)させて各相の正相分対応回転ベクトルを計算する手段(11b)と、各相の複素ベクトルをそれぞれ0°回転,120°遅れ回転(Delay),240°遅れ回転(Delay)させて各相の逆相分対応回転ベクトルを計算する手段(11c)と、各相の正相分対応回転ベクトルの実数部の和を3で割って正相電圧を計算する手段(11d)と、各相の逆相分対応回転ベクトルの実数部の和を3で割って逆相電圧を計算する手段(11e)とを有するようにしている。
上記瞬時値対称成分の計算方法及び瞬時値対称成分の計算装置は、瞬時値対称成分の計算プログラムがコンピュータ上で実行されることによっても実施・実現され得る。ここでは、瞬時値対称成分の計算プログラムがコンピュータ上で実行されることによって瞬時値対称成分の計算方法が実施されると共に瞬時値対称成分の計算装置が実現される場合を説明する。
本実施形態の瞬時値対称成分の計算プログラム17を実行するためのコンピュータ10(本実施形態では、瞬時値対称成分の計算装置10でもある)の全体構成を図2に示す。
このコンピュータ10(瞬時値対称成分の計算装置10)は制御部11,記憶部12,入力部13,表示部14,及びメモリ15を備え、これらが相互にバス等の信号回線によって接続されている。
制御部11は、記憶部12に記憶されている瞬時値対称成分の計算プログラム17に従ってコンピュータ10全体の制御並びに瞬時値対称成分の計算に係る演算を行うものであり、例えばCPU(中央演算処理装置)である。
記憶部12は、少なくともデータやプログラムを記憶可能な装置であり、例えばハードディスクである。
入力部13は、少なくとも作業者の命令や種々の情報を制御部11に与えるためのインターフェイス(即ち、情報入力の仕組み)であり、例えばキーボードやマウスである。なお、例えばキーボードとマウスとの両方のように複数種類のインターフェイスを入力部13として有するようにしても良い。
表示部14は、制御部11の制御によって文字や図形或いは画像等の描画・表示を行うものであり、例えばディスプレイである。
メモリ15は、制御部11が種々の制御や演算を実行する際の作業領域であるメモリ空間となるものであり、例えばRAM(Random Access Memory の略)である。
そして、コンピュータ10(以下、「瞬時値対称成分の計算装置10」と呼ぶ)の制御部11には、瞬時値対称成分の計算プログラム17が実行されることにより、三相交流電力系統における三相交流の各相の電圧瞬時値を用いて実数部と当該実数部の位相が90°だけ進んだ成分である虚数部とからなる各相の複素ベクトルを求める処理(S1)を行う複素ベクトル作成部11aと、各相の複素ベクトルをそれぞれ0°回転,240°遅れ回転(Delay),120°遅れ回転(Delay)させて各相の正相分対応回転ベクトルを計算する処理(S2)を行う正相分対応回転部11bと、各相の複素ベクトルをそれぞれ0°回転,120°遅れ回転(Delay),240°遅れ回転(Delay)させて各相の逆相分対応回転ベクトルを計算する処理(S3)を行う逆相分対応回転部11cと、各相の正相分対応回転ベクトルの実数部の和を3で割って正相電圧を計算する処理(S4)を行う正相電圧計算部11dと、各相の逆相分対応回転ベクトルの実数部の和を3で割って逆相電圧を計算する処理(S5)を行う逆相電圧計算部11eとが構成される。
そして、本発明の瞬時値対称成分の計算方法の実施にあたっては、言い換えると、本発明に係る瞬時値対称成分の計算プログラム17の処理としては、まず、制御部11の複素ベクトル作成部11aにより、三相交流電力系統における三相交流の各相の電圧瞬時値が用いられて実数部と当該実数部の位相が90°だけ進んだ成分である虚数部とからなる各相の複素ベクトルの作成が行われる(S1)。
具体的には、時間の進行に伴って時間変化する波形表現によって時間領域における量として表される、三相交流電力系統における三相(a相,b相,c相)交流の各相の観測波形の時間(時刻)tに対応する信号である、a相の電圧瞬時値va(t),b相の電圧瞬時値vb(t),及びc相の電圧瞬時値vc(t)が用いられる。
そして、これらa相の電圧瞬時値va(t),b相の電圧瞬時値vb(t),及びc相の電圧瞬時値vc(t)から、積分により、実数部(言い換えると、現在時点の値に対応する値)と当該実数部の位相が90°だけ進んだ成分である虚数部(言い換えると、位相が90°だけ進んだ時点の値に対応する値)とから成る複素ベクトル(即ち、複素平面において規定されるベクトル)が三相のそれぞれについて作成される。
S1の処理としての、電圧瞬時値va(t)の位相を90°シフトさせるブロックを図3に示す。図3において、Sはラプラス演算子、Tは一次遅れ時定数(単位:秒)、ωeは角周波数(単位:rad/秒)、jは虚数単位をそれぞれ表す。なお、図3では三相電圧のうち例としてa相の電圧瞬時値va(t)に対する処理を表すブロックを示しているが、b相の電圧瞬時値vb(t)やc相の電圧瞬時値vc(t)に対しても処理内容は同様である。
図3に示すブロックが用いられることにより、Delayのようにむだ時間要素を必要とすることなく、位相が90°だけ進んだ成分が得られる。図3に示すブロックは、単相回路用の電圧位相検出回路(参考として、宜保直樹「単相変換器用q軸電圧フィードバック型電圧位相検出方式の開発」,平成28年電気学会全国大会,6−281,pp.478−479,2016年)を三層回路用に応用したものである。
図3に示すブロックにおける角周波数ωeの値は、具体的に例えば、あくまで一例として挙げると、電圧位相検出回路で得られる周波数fがフィードバックされて ωe=2πf によって与えられる。
図3に示すブロックで表される処理として、具体的には、三相電圧のうちのa相について、v'a(t)及び当該v'a(t)の90°進み成分jv'a(t)が以下の数式6によって計算される。
Figure 2018091745
また、三相電圧のうちの、b相についてはv'b(t)及び当該v'b(t)の90°進み成分jv'b(t)が数式7によって計算され、c相についてはv'c(t)及び当該v'c(t)の90°進み成分jv'c(t)が数式8によって計算される。
Figure 2018091745
Figure 2018091745
なお、数式6乃至数式8においても、図3と同様に、Sはラプラス演算子、Tは一次遅れ時定数(単位:秒)、ωeは角周波数(単位:rad/秒)、jは虚数単位をそれぞれ表す。
図3に示すブロックで表される処理(言い換えると、数式6乃至数式8による計算)によれば、Delayなどで過去の情報を用いることなく、積分によって現時点の情報でベクトル化が実現される。ただし、このままでは状態量に直流量が重畳している場合があるため、一次遅れを用いたリセット回路で直流分がカットされるようにしている。
なお、一次遅れ時定数Tは、特定の値に限定されるものではなく、直流成分を低減することができる値に適宜設定される。一次遅れ時定数Tは、具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、0.01〜0.05[秒]程度の範囲で適当な値に設定され得る。
本実施形態では、S1の処理における入力としてのa相,b相,及びc相の電圧瞬時値の行列を数式9のように表す。
Figure 2018091745
また、図3に示すブロック(即ち、数式6乃至数式8)が適用されて実数部と当該実数部の位相が90°だけ進んだ成分である虚数部とから成る各相の複素ベクトルとして作成される、S1の処理の出力としての行列を数式10のように表す。
Figure 2018091745
数式10において、虚数部は実数部の量が90°進んだ成分であることを意味しており、これを記号として虚数単位jを用いて「j実数部の変数」として表している。
本実施形態では具体的には、外部機器から瞬時値対称成分の計算装置10へと、a相,b相,及びc相の電圧瞬時値va(t),vb(t),及びvc(t)が入力されると共に角周波数ωeが与えられる。なお、具体的には例えば、あくまで一例として挙げると、角周波数ωeとしては電圧位相検出回路から出力される信号(具体的には、周波数の値)が利用されて計算され得る。
そして、複素ベクトル作成部11aにより、a相,b相,及びc相の電圧瞬時値va(t),vb(t),及びvc(t)並びに角周波数ωeが用いられて、図3に示すブロックで表される処理(即ち、数式6乃至数式8による計算)により、実数部と当該実数部の位相が90°だけ進んだ成分である虚数部とから成る複素ベクトルが各相について作成される。
そして、複素ベクトル作成部11aにより、作成されたa相,b相,及びc相の複素ベクトルがメモリ15に記憶させられる。
次に、制御部11の正相分対応回転部11bにより、S1の処理で作成された各相の複素ベクトルが用いられて正相分に対応させるための回転が行われて各相の正相分対応回転ベクトルが計算される(S2)。
具体的には、S1の処理によって求められたa相の複素ベクトルが0°回転させられ(数式11A)、また、b相の複素ベクトルが240°遅れ回転(Delay)させられ(数式11B)、さらに、c相の複素ベクトルが120°遅れ回転(Delay)させられる(数式11C)。なお、この処理は、上述した「回転の考え方」における正相成分に関する考えと同様の考えに基づいている。
Figure 2018091745
Figure 2018091745
Figure 2018091745
数式11A乃至数式11Cにおいて、虚数部は実数部の量が90°進んだ成分であることを意味しており、これを記号として虚数単位jを用いて「j実数部の変数」として表している。
数式11A乃至数式11Cとして挙げた行列で表される、a相,b相,及びc相の複素ベクトルがそれぞれ0°,240°,及び120°回転させられたベクトル(言い換えると、各相の複素ベクトルをそれぞれ[0°],[240°遅れ],[120°遅れ]という固定値の回転行列を用いて回転して得られる瞬時値)のことを「正相分対応回転ベクトル」と呼ぶ。
本実施形態では、正相分対応回転部11bにより、S1の処理においてメモリ15に記憶されたa相,b相,及びc相の複素ベクトルが読み込まれ、数式11A乃至数式11Cによって各相について正相分対応回転ベクトルが計算される。
そして、正相分対応回転部11bにより、計算されたa相,b相,及びc相の正相分対応回転ベクトルがメモリ15に記憶させられる。
次に、制御部11の逆相分対応回転部11cにより、S1の処理で作成された各相の複素ベクトルが用いられて逆相分に対応させるための回転が行われて各相の逆相分対応回転ベクトルが計算される(S3)。
具体的には、S1の処理によって求められたa相の複素ベクトルが0°回転させられ(数式12A)、また、b相の複素ベクトルが120°遅れ回転(Delay)させられ(数式12B)、さらに、c相の複素ベクトルが240°遅れ回転(Delay)させられる(数式12C)。なお、この処理は、上述した「回転の考え方」における逆相成分に関する考えと同様の考えに基づいている。
Figure 2018091745
Figure 2018091745
Figure 2018091745
数式12A乃至数式12Cにおいて、虚数部は実数部の量が90°進んだ成分であることを意味しており、これを記号として虚数単位jを用いて「j実数部の変数」として表している。
数式12A乃至数式12Cとして挙げた行列で表される、a相,b相,及びc相の複素ベクトルがそれぞれ0°,120°,及び240°回転させられたベクトル(言い換えると、各相の複素ベクトルをそれぞれ[0°],[120°遅れ],[240°遅れ]という固定値の回転行列を用いて回転して得られる瞬時値)のことを「逆相分対応回転ベクトル」と呼ぶ。
本実施形態では、逆相分対応回転部11cにより、S1の処理においてメモリ15に記憶されたa相,b相,及びc相の複素ベクトルが読み込まれ、数式12A乃至数式12Cによって各相について逆相分対応回転ベクトルが計算される。
そして、逆相分対応回転部11cにより、計算されたa相,b相,及びc相の逆相分対応回転ベクトルがメモリ15に記憶させられる。
次に、制御部11の正相電圧計算部11dにより、S2の処理で計算された各相の正相分対応回転ベクトルが用いられて正相電圧の計算が行われる(S4)。
具体的には、S2の処理によって求められたa相,b相,及びc相の正相分対応回転ベクトルが用いられて、各ベクトルの実数部の和が3で割られて正相電圧vpos(t)が計算される(数式13)。なお、この処理は、上述した「電圧算定の考え方」と同様の考えに基づいている。
Figure 2018091745
数式13に関し、vpos(t)は瞬時値の正相成分の量であり、jvpos(t)はvpos(t)が90°進んだ成分である。
そして、数式13について、数式5に関連して「vα(t)とvβ(t)とは、位相が90°ずれた関係にあ(る)」と上述したように、vpos(t)とjvpos(t)との関係も位相が90°ずれた関係であることを意味しており、必要で重要な量は正相電圧としての vpos(t)、つまり実数部であり、虚数部 jvpos(t) は理論展開上で出てきているものである。
本実施形態では、正相電圧計算部11dにより、S2の処理においてメモリ15に記憶されたa相,b相,及びc相の正相分対応回転ベクトルが読み込まれ、数式13によって正相電圧(実数部)vpos(t)が計算される。
そして、正相電圧計算部11dにより、計算された正相電圧vpos(t)がメモリ15に記憶させられる。
次に、制御部11の逆相電圧計算部11eにより、S3の処理で計算された各相の逆相分対応回転ベクトルが用いられて逆相電圧の計算が行われる(S5)。
具体的には、S3の処理によって求められたa相,b相,及びc相の逆相分対応回転ベクトルが用いられて、各ベクトルの実数部の和が3で割られて逆相電圧vneg(t)が計算される(数式14)。なお、この処理は、上述した「電圧算定の考え方」と同様の考えに基づいている。
Figure 2018091745
数式14に関し、vneg(t)は瞬時値の逆相成分の量であり、jvneg(t)はvneg(t)が90°進んだ成分である。
そして、数式14について、数式5に関連して「vα(t)とvβ(t)とは、位相が90°ずれた関係にあ(る)」と上述したように、vneg(t)とjvneg(t)との関係も位相が90°ずれた関係であることを意味しており、必要で重要な量は逆相電圧としての vneg(t)、つまり実数部であり、虚数部 jvneg(t) は理論展開上で出てきているものである。
本実施形態では、逆相電圧計算部11eにより、S3の処理においてメモリ15に記憶されたa相,b相,及びc相の逆相分対応回転ベクトルが読み込まれ、数式14によって逆相電圧(実数部)vneg(t)が計算される。
そして、逆相電圧計算部11eにより、計算された逆相電圧vneg(t)がメモリ15に記憶させられる。
そして、瞬時値対称成分の計算装置10から外部機器などへと正相電圧vpos(t)及び逆相電圧vneg(t)の値が必要に応じて出力され、制御部11はS1の処理において入力された各相の電圧瞬時値や角周波数に関する処理を終了する。
以上のように構成された瞬時値対称成分の計算方法、計算装置、及び計算プログラムによれば、現在の情報(具体的には、三相交流の各相の電圧瞬時値va(t),vb(t),及びvc(t)並びに角周波数ωe)のみを用いて時間領域で瞬時値の正相電圧vpos(t)及び逆相電圧vneg(t)を計算することができるので、電力系統の状態を高速かつ正確に認識することが可能になる。
以上のように構成された瞬時値対称成分の計算方法、計算装置、及び計算プログラムによれば、さらに、例えば1線地絡のような系統故障などの不平衡事故時でも対称成分を高速・高精度に計算することができ、且つ、周波数が大幅に変化した場合でもその変化に的確に対応して対称成分を高速・高精度に計算することができるので、多様な状況下において電力系統の状態を高速かつ正確に認識することが可能になる。
また、以上のように構成された瞬時値対称成分の計算方法は、数式的にもシンプルで分かり易く理論的な見通しがあることから説明力を備えており、延いては瞬時値対称成分の計算手法としての信頼性の向上が可能である。
なお、上述の実施形態は本発明を実施する際の好適な形態の一例ではあるものの本発明の実施の形態が上述のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において本発明は種々変形実施可能である。
例えば、上述の実施形態では正相分対応回転ベクトルの計算(S2)及び正相電圧の計算(S4)に加えて逆相分対応回転ベクトルを計算(S3)した上で逆相電圧が計算される(S5)ようにしているが、逆相分対応回転ベクトルの計算(S3)や逆相電圧の計算(S5)は本発明としては必須の処理ではなく、本発明の計算手法の応用のされ方(言い換えると、出力の利用のされ方)によっては、正相分対応回転ベクトルが計算されて正相電圧が計算される一方で逆相分対応回転ベクトルは計算されないと共に逆相電圧は計算されないようにしても良い。
本発明の瞬時値対称成分の計算方法の妥当性を検証するために行った、定常時を対象とした解析例を図4乃至図7を用いて説明する。
本実施例では、「XTAP」(野田琢ほか「電力系統瞬時値解析プログラムの開発(その1)」,電力中央研究所報告,研究報告:H06002,2007年)が用いられて解析が行われた。
本実施例では、時間(時刻)tにおける三相交流(周波数:60 Hz)のa相,b相,及びc相の電圧瞬時値va(t),vb(t),及びvc(t)として図4に示す波形が用いられた。なお、図4の単位は pu である。
まず、図4に示す波形の電圧瞬時値が用いられて図3に示すブロック(即ち、数式6乃至数式8)が適用されて実数部v'a(t),v'b(t),及びv'c(t)とこれら実数部それぞれの90°進み成分を虚数部jv'a(t),jv'b(t),及びjv'c(t)とする複素ベクトルがa相,b相,及びc相について作成された。例として、a相の複素ベクトル[v'a(t),jv'a(t)]について図5に示す状態量の波形が得られた。なお、図5乃至図7において、「Re[ ]」は[ ]内の実数部であることを表し、「Im[ ]」は[ ]内の虚数部であることを表す。
図5から、a相の複素ベクトルの実数部は図4のva(t)と同じ波形になっていること、及び、虚数部は実数部と比較して位相が90°(=π/2)だけ進んだ波形になっていることが確認された。
なお、b相の複素ベクトルについての状態量の波形はa相の図5と比較して位相が120°(=2π/3)ずれた波形であり、c相の複素ベクトルについての状態量の波形はa相の図5と比較して位相が240°(=4π/3)ずれた波形であった。
次に、a相,b相,及びc相の複素ベクトルが用いられて数式11A乃至数式11Cによって各相について正相分対応回転ベクトルが計算された。例として、a相の正相分対応回転ベクトル[v''a(t),jv''a(t)]について図6に示す状態量の波形が得られた。
図6から、a相の正相分対応回転ベクトルの実数部は図4のva(t)と同じ波形になっていること、及び、虚数部は実数部と比較して位相が90°(=π/2)だけ進んだ波形になっていることが確認された。
なお、b相の正相分対応回転ベクトルについての状態量の波形はa相の図6と比較して位相が120°(=2π/3)ずれた波形であり、c相の正相分対応回転ベクトルについての状態量の波形はa相の図6と比較して位相が240°(=4π/3)ずれた波形であった。
続いて、a相,b相,及びc相の複素ベクトルが用いられて数式12A乃至数式12Cによって各相について逆相分対応回転ベクトルが計算された。
そして、a相,b相,及びc相の正相分対応回転ベクトルが用いられて数式13によって正相電圧が計算され、また、a相,b相,及びc相の逆相分対応回転ベクトルが用いられて数式14によって逆相電圧が計算された。例として、正相電圧[vpos(t),jvpos(t)]について図7に示す状態量の波形が得られた。
図7から、正相電圧の実数部は図4のva(t)と同じ波形になっていること、及び、虚数部は実数部と比較して位相が90°(=π/2)だけ進んだ波形になっていることが確認された。
なお、逆相電圧の波形は正相電圧の図7と比較して位相が120°(=2π/3)ずれた波形であった。
以上の結果から、本発明による、定常時における瞬時値対称成分の計算が妥当であることが確認された。
本発明の瞬時値対称成分の計算方法の妥当性を検証するために行った、故障時を対象とした解析例を図8乃至図11を用いて説明する。
本実施例では、電源,抵抗,及びインダクタンスから成る単純な開回路(尚、三相交流(周波数:60 Hz)の各相で電圧低下を把握し易い直接接地系とし、電源側を接地させた)を対象として、外乱として1線地絡(具体的には、b相)の不平衡事故を発生させ、前記「XTAP」が用いられて解析が行われた。
b相での不平衡事故の発生前後での時間(時刻)tにおける三相交流のa相,b相,及びc相の電圧瞬時値va(t),vb(t),及びvc(t)について図8(単位:pu)に示す波形が得られた。なお、横軸の経過時間0.4秒においてb相で不平衡事故を発生させた。
本実施例では、本発明の優位性の検証として、数式4による瞬時値対称成分の計算結果と本発明による瞬時値対称成分の計算結果とが比較された。数式4が用いられる計算のことを「簡易手法による計算」と呼ぶ。
まず、図8に示す波形の電圧瞬時値が用いられて簡易手法による計算(即ち、数式4)によって零相電圧v0(t),正相電圧v1(t),及び逆相電圧v2(t)が計算され、各相の電圧について図9に示す状態量の波形が得られた。なお、図9中では、零相電圧は「vzero(t)」,正相電圧は「vpos(t)」,及び逆相電圧は「vneg(t)」とそれぞれ表記されている。
図9から、Delayによるむだ時間の影響により、1線地絡故障発生の時間0.4秒から若干の時間経過後に逆相電圧vneg(t)が変化していることが確認された。図9から、また、1線地絡故障発生前の正相電圧vpos(t)は±1 pu のピークtoピーク波形であるが、1線地絡故障中は約±0.67 pu(=2/3 pu)程度に低下し、逆相電圧vneg(t)と零相電圧vzero(t)とは0.33 pu(=1/3 pu)程度となっていて分かり易い結果になっていることが確認された。
次に、図8に示す波形の電圧瞬時値が用いられて本発明の手法による計算によって正相電圧vpos(t)及び逆相電圧vneg(t)が計算されると共に零相電圧vzero(t)が計算され、各相の電圧について図10に示す状態量の波形が得られた。
図10から、1線地絡故障発生(即ち、時間0.4秒)前後でむだ時間の影響があるような様相は無いことが確認された。
また、簡易手法による計算によって得られた正相電圧と本発明の手法による計算によって得られた正相電圧とを重ねてプロットすることによって図11に示す結果が得られた。なお、図11中では、簡易手法による計算によって得られた正相電圧は「Simple vpos(t)」と表記され、本発明の手法による計算によって得られた正相電圧は「Developed vpos(t)」と表記されている。
図11から、両者の波形は、不平衡事故発生(即ち、時間0.4秒)後の2サイクル程度の時間でほぼ一致するようになることが確認された。このことから、電圧や電流の瞬時値を用いて対称成分を計算する論理がこれまで不明であったのに対し、本発明の手法は数式的にもシンプルで分かり易く且つ図11で確認されたように2サイクル程度で両者の波形がほぼ一致する結果が得られており、本発明の瞬時値対称成分の計算方法は妥当性を備えていることが確認された。
本発明に係る瞬時値対称成分の計算技術は、現在の情報を用いて三相回路における時間領域での瞬時値の対称成分の計算を行うことができるので、例えば、あくまで一例として挙げると、電圧・電流の高精度な計算が必要とされる分野、具体的には高精度な電圧検出方式や保護リレーなどの分野で利用価値が高い。
10 瞬時値対称成分の計算装置
11 制御部
11a 複素ベクトル作成部
11b 正相分対応回転部
11c 逆相分対応回転部
11d 正相電圧計算部
11e 逆相電圧計算部
17 瞬時値対称成分の計算プログラム

Claims (6)

  1. 三相交流の各相の電圧瞬時値が用いられて実数部と当該実数部の位相が90°だけ進んだ成分である虚数部とからなる前記各相の複素ベクトルが求められ、これら各相の複素ベクトルがそれぞれ0°回転,240°遅れ回転,120°遅れ回転させられて前記各相の正相分対応回転ベクトルが計算され、これら各相の正相分対応回転ベクトルの実数部の和が3で割られて正相電圧が計算されることを特徴とする瞬時値対称成分の計算方法。
  2. さらに、前記各相の前記複素ベクトルがそれぞれ0°回転,120°遅れ回転,240°遅れ回転させられて前記各相の逆相分対応回転ベクトルが計算され、これら各相の逆相分対応回転ベクトルの実数部の和が3で割られて逆相電圧が計算されることを特徴とする請求項1記載の瞬時値対称成分の計算方法。
  3. 三相交流の各相の電圧瞬時値を用いて実数部と当該実数部の位相が90°だけ進んだ成分である虚数部とからなる前記各相の複素ベクトルを求める手段と、前記各相の前記複素ベクトルをそれぞれ0°回転,240°遅れ回転,120°遅れ回転させて前記各相の正相分対応回転ベクトルを計算する手段と、前記各相の前記正相分対応回転ベクトルの実数部の和を3で割って正相電圧を計算する手段とを有することを特徴とする瞬時値対称成分の計算装置。
  4. 前記各相の前記複素ベクトルをそれぞれ0°回転,120°遅れ回転,240°遅れ回転させて前記各相の逆相分対応回転ベクトルを計算する手段と、前記各相の前記逆相分対応回転ベクトルの実数部の和を3で割って逆相電圧を計算する手段とを更に有することを特徴とする請求項3記載の瞬時値対称成分の計算装置。
  5. 三相交流の各相の電圧瞬時値を用いて実数部と当該実数部の位相が90°だけ進んだ成分である虚数部とからなる前記各相の複素ベクトルを求める処理と、前記各相の前記複素ベクトルをそれぞれ0°回転,240°遅れ回転,120°遅れ回転させて前記各相の正相分対応回転ベクトルを計算する処理と、前記各相の前記正相分対応回転ベクトルの実数部の和を3で割って正相電圧を計算する処理とをコンピュータに行わせることを特徴とする瞬時値対称成分の計算プログラム。
  6. 前記各相の前記複素ベクトルをそれぞれ0°回転,120°遅れ回転,240°遅れ回転させて前記各相の逆相分対応回転ベクトルを計算する処理と、前記各相の前記逆相分対応回転ベクトルの実数部の和を3で割って逆相電圧を計算する処理とを更にコンピュータに行わせることを特徴とする請求項5記載の瞬時値対称成分の計算プログラム。
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