JP2018090706A - 多孔性化学蓄熱複合体及びその製造方法並びに化学蓄熱装置 - Google Patents

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敦 阪井
泰美 高橋
Yasumi Takahashi
泰美 高橋
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Toyo Yano
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Abstract

【課題】繰返し使用でも蓄熱及び放熱特性が低下せず、蓄熱及び放熱反応性の良い多孔性化学蓄熱複合体及びそれらの製造方法、さらに、蓄熱と放熱を繰り返しても化学蓄熱材の熱を効率良く取り出すことができる化学蓄熱装置を提供する。
【解決手段】芳香環を含有する架橋性モノマーの多孔性重合体担体のマクロ孔に化学蓄熱材を担持し、前記重合体担体は前記化学蓄熱材に反応媒体を供給可能なメソ孔及び/又はミクロ孔を有する多孔性化学蓄熱複合体、及びカーボン担体のマクロ孔に化学蓄熱材を担持し、前記担体は前記化学蓄熱材に反応媒体を供給可能なメソ孔及び/又はミクロ孔を有する多孔性化学蓄熱複合体。
【選択図】なし

Description

本発明は、多孔体担体に化学蓄熱材が担持されている多孔性化学蓄熱複合体及びその製造方法並びに化学蓄熱装置に関する。
エネルギーを高効率的に利用するために、排熱を利用した熱エネルギーの貯蔵・蓄熱技術の確立は社会的に要請されている。従来の蓄熱方法としては、蓄熱媒体を用いた顕熱又は潜熱を利用する方法がある。しかし、これらの欠点は蓄熱量が低い、保温のために断熱材が必要で長期の蓄熱保存には適していないことである。一方、化学蓄熱は蓄熱量が大きく、保温の必要もなく、長期間安定的に蓄熱が可能である。
化学蓄熱は、金属酸化物又は、金属塩などの化学蓄熱材と水蒸気などとの反応系で、吸水による放熱化学反応と脱水による吸熱化学反応が可逆的に起こる、可逆熱化学反応を利用して熱の貯蔵・放出を行う再生利用可能な技術である。
化学蓄熱材は、各種熱エネルギーの有効利用が図られるケミカルヒートポンプなどの化学蓄熱システムに用いられる。特に、排熱の有効利用を目指して、最近、化学蓄熱に関する研究開発が盛んに進められている。
しかし、粉体の化学蓄熱材を用いる従来方法においては、これらの蓄熱材を用いた水和・脱水反応を繰り返す時、小粒子蓄熱材の凝集や凝固の進行による反応性低下と、膨張・収縮による体積変化に伴い伝熱面との充填不良と伝熱阻害などの進行で繰返し利用が困難になるという諸問題があった。化学蓄熱システムにおいて最も重要なことは化学蓄熱材が常に安定的に動作し、繰返し使えることである。
このような問題を解決するための様々な技術が提案されている。例えば、生石灰の表面から内部にわたって0.1〜0.5マイクロメートル範囲の多数の気孔を持つ多孔質状の生石灰からなる化学蓄熱材の作製技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、10〜60%の内部空間に粉体の化学蓄熱材を担持した蓄熱カプセルを反応器に充填する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
また、粉体の化学蓄熱材と粘土鉱物のセピオライトとを混合、成型、焼成して得られる多孔質構造の化学蓄熱材成型体の作製技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
また、フェノール樹脂と化学蓄熱材粒子を混合、成型した後、混合材料の加熱、架橋反応を行い形成される化学蓄熱材粒子が担持された多孔質構造の化学蓄熱材成形体の作製技術が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
特開平1−225686号公報 特開昭62−213690号公報 特開2009−132844号公報 特開2011−162746号公報
しかしながら、特許文献1に記載のように、化学蓄熱材自体に気孔が形成された生石灰を用いた場合は、吸水による水和反応と脱水反応が繰り返される際に、化学蓄熱材は、体積膨張と収縮を繰り返して微粉化し、蓄熱システムとしての反応性が低下する問題があった。
また、特許文献2記載の構成では、カプセル化による熱伝導抵抗の増加及び伝熱経路の複雑化により、化学蓄熱材の熱を効率良く取り出したり、供給することができない問題があった。
また、特許文献3記載の粘土鉱物のセピオライトは、化学蓄熱材の吸水による水和反応と脱水反応が繰り返される際に、一部セメント化して固化するために蓄熱システムとしての反応性が低下する原因となる。
また、特許文献4記載のフェノール樹脂の加熱、架橋反応で形成される多孔質構造には、ミクロ孔、メソ孔及びマクロ孔の細孔分布の制御ができず、大きい孔径の形成が主で、化学蓄熱材粒子も大きくなってその化学蓄熱材粒子の表面積が少ないことから、化学蓄熱材の水和反応と脱水反応での蓄熱、放熱の反応性が低くなる。
本発明が解決しようとする1つの課題は、繰返し使用でも蓄熱及び放熱特性が低下せず、蓄熱及び放熱反応性の良い多孔性化学蓄熱複合体及びそれらの製造方法を提供することである。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、蓄熱と放熱を繰り返しても化学蓄熱材の熱を効率良く取り出すことができる化学蓄熱装置を提供することである。
本発明は、以下の多孔性化学蓄熱複合体及びその製造方法並びに化学蓄熱装置を提供するものである。
(1)
芳香環を含有する架橋性モノマーの多孔性重合体担体のマクロ孔に化学蓄熱材を担持し、前記重合体担体は前記化学蓄熱材に反応媒体を供給可能なメソ孔及び/又はミクロ孔を有する多孔性化学蓄熱複合体。
(2)
芳香環を含有する架橋性モノマーの多孔性重合体が、エチレン性不飽和二重結合を2以上含有する芳香族有機化合物の単独重合体もしくは共重合体である、(1)記載の多孔性化学蓄熱複合体。
(3)
化学蓄熱材が塩化カルシウム又はその水和物である(1)又は(2)記載の多孔性化学蓄熱複合体。
(4)
カーボン担体のマクロ孔に化学蓄熱材を担持し、前記担体は前記化学蓄熱材に反応媒体を供給可能なメソ孔及び/又はミクロ孔を有する多孔性化学蓄熱複合体。
(5)
化学蓄熱材が塩化カルシウム又はその水和物である(4)記載の多孔性化学蓄熱複合体。
(6)
前記担体の気孔率が50〜90%である、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の多孔性化学蓄熱複合体。
(7)
化学蓄熱材の担持率が50〜85質量%である、(1)〜(6)のいずれか1項に記載の多孔性化学蓄熱複合体。
(8)
溶媒、溶媒に溶解する化学蓄熱材、芳香環を含有する架橋性モノマーを含む反応混合物を相分離重合する工程を含む、多孔性重合体担体のマクロ孔に化学蓄熱材を担持し、前記重合体担体は前記化学蓄熱材に反応媒体を供給可能なメソ孔及び/又はミクロ孔を有する多孔性化学蓄熱複合体の製造方法。
(9)
(1)又は(4)記載の多孔性化学蓄熱複合体を含む、熱交換により、蓄熱及び放熱を繰り返し行う化学蓄熱装置。
本発明で得られる多孔性化学蓄熱複合体は、反応媒体(例えば水蒸気、アンモニア等)の化学蓄熱材への吸着反応と脱着反応が効率的に行われて、吸着・脱着が繰り返されでも化学蓄熱材の崩壊や凝集を防ぐことができて、放熱・蓄熱過程での反応性低下がないという格別顕著な技術的効果を奏する。繰り返し使用しても化学蓄熱材は常に安定的に動作し、高い放熱・蓄熱量及び高い放熱・蓄熱効率の維持が可能である、という化学蓄熱システムを提供できるという格別顕著な技術的効果を奏する。
多孔性化学蓄熱重合体複合体(1)の空気雰囲気下のTG/DTA測定結果を示す図である。 多孔性化学蓄熱重合体複合体(1)の窒素雰囲気下のTG/DTA測定結果を示す図である。 流動式比表面積自動測定による多孔性化学蓄熱重合体複合体(1)のBJHプロット及び脱吸着等温線を示す図である。 化学蓄熱材の塩化カルシウム水和物を除去した多孔性重合体(2)の水銀圧入法による細孔分布を示す図である。 多孔性化学蓄熱重合体複合体(1)のSEM表面観察写真を示す図である。 多孔性化学蓄熱重合体複合体(1)のSEM-EDS測定写真を示す図である。 多孔性化学蓄熱重合体複合体(1)のSEM-EDS測定写真を示す図である。 塩化カルシウム水和物を水洗除去した多孔性重合体(2)のSEM-EDS測定写真を示す図である。 多孔性化学蓄熱重合体複合体(1)の水蒸気作動型示差熱天秤TG/DTA測定を示す図である。 多孔性化学蓄熱カーボン複合体(3)の空気雰囲気下のTG/DTA測定結果を示す図である。 多孔性化学蓄熱カーボン複合体(3)の水銀圧入法による細孔分布を示す図である。 多孔性化学蓄熱重合体複合体(1)、不融化体及びカーボン複合体(3)のFT-IRスペクトル測定結果を示す図である。上段スペクトル:重合体複合体(1)、中段スペクトル:不融化体、下段スペクトル:カーボン複合体(3) 多孔性化学蓄熱重合体複合体(1)、不融化体及びカーボン複合体(3)のラマンスペクトル測定結果を示す図である。上段スペクトル:重合体複合体(1)、中段スペクトル:不融化体、下段スペクトル:カーボン複合体(3) 多孔性化学蓄熱カーボン複合体(3)のSEM及びSEM-EDS測定写真を示す図である。 多孔性化学蓄熱カーボン複合体(3)の水蒸気作動型示差熱天秤TG/DTA測定結果を示す図である。 多孔性化学蓄熱カーボン複合体(担持率45質量%)の水蒸気作動型示差熱天秤TG/DTAによる吸脱着繰返し試験で得られた吸脱着水量測定結果を示す図である。 多孔性重合体(4)の水銀圧入法による細孔分布を示す図である。 化学蓄熱材を担持した複合体(5)のSEM表面観察写真を示す図である。 化学蓄熱材を担持した複合体(5)の水蒸気作動型示差熱天秤TG/DTA測定結果を示す図である。 多孔性カーボン(6)の水銀圧入法による細孔分布を示す図である。 化学蓄熱材を担持した複合体(7)のSEM表面観察及びSEM-EDS測定写真を示す図である。 化学蓄熱材を担持した複合体(7)の水蒸気作動型示差熱天秤TG/DTA測定結果を示す図である。
本発明の多孔性化学蓄熱複合体は、担体と化学蓄熱材とを必須要素として構成される。この担体としては、いずれも多孔性である必要はあるが、(1)芳香環を含有する架橋性モノマーの重合体、または(2)カーボン(炭素)の二つが包含される。本発明においてカーボンとは、炭素自体を意味する。上記(1)の様な、炭素だけでなく水素などの異種元素を含む、重合体の様な有機化合物は、本発明のカーボンの定義には含まれない。
多孔性化学蓄熱複合体は、マクロ孔と、ミクロ孔及び/又はメソ孔を有し、マクロ孔には化学蓄熱材が担持され、ミクロ孔及び/又はメソ孔はマクロ孔と連通し、反応媒体をマクロ孔の化学蓄熱材に供給する供給路として機能する。
反応媒体としては、例えば、水/水蒸気、アンモニア、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどが挙げられ、取り扱いの容易さや価格の観点から、好ましくは水/水蒸気、アンモニアが挙げられ、臭気が無い等の観点から、より好ましくは水/水蒸気が挙げられる。
多孔性化学蓄熱複合体の細孔であるマクロ孔、メソ孔及びミクロ孔は、いずれも、化学蓄熱材の安定的な担持場所、及び/又は、繰り返しの蓄・放熱反応が行える反応場及び/又は、前記の反応に伴う水蒸気の流路となり得る。マクロ孔、メソ孔及びミクロ孔のどの細孔に、どの様な機能を持たせるようにしても良いが、化学蓄熱材を担持し、反応場で、水蒸気の流路としての機能をマクロ孔に、水蒸気の流路としての機能をミクロ孔及び/又はメソ孔にそれぞれ持たせるようにして、マクロ孔とミクロ孔及び/又はメソ孔はお互いにランダムに貫通する様に担体を形成することが、貫通孔が全ての反応場へ円滑に反応媒体を供給できるために好ましい。
化学蓄熱材の担体への担持は比較的孔径が大きいマクロ孔が容易であり、化学蓄熱材が担持されていないマクロ孔は、反応媒体の流路として機能し得るが、細孔の孔径が2ナノメートル以下のミクロ孔と、2ナノメートルから50ナノメートル程度までのメソ孔は、専ら蓄・放熱反応に伴う反応媒体の流路として機能させることが可能であり、蓄・放熱反応効率を向上することができることから好ましい。
化学蓄熱材は、全てがマクロ孔に担持されてもよいが、主としてマクロ孔に担持されていれば、一部がメソ孔及び/又はミクロ孔に担持されていてもよい。化学蓄熱材の一部がメソ孔及び/又はミクロ孔に担持されている場合、化学蓄熱材の担持に関わるメソ孔及び/又はミクロ孔は反応媒体の流路として機能しない場合があるが、化学蓄熱材を担持していないメソ孔及び/又はミクロ孔と更にマクロ孔により、全体として蓄・放熱反応に伴う反応媒体の流路として機能は維持できる。
本発明の多孔性化学蓄熱複合体において、化学蓄熱材を除く担体(多孔性の重合体又はカーボン)の気孔率は、蓄熱量を常により高くでき、かつ繰り返しの熱交換時における化学蓄熱材の状態変化が小さく安定性に優れることから、50〜90%であることが好ましい。ここで、気孔率は次のように定義される。
(但し、上記式中、dはかさ密度、pは真密度、d=乾燥重量/体積、である。)
担体の気孔率が50%以上であると、化学蓄熱材の担持量が少なくなることで蓄・放熱反応効率の低下することも無くしかも化学蓄熱材が崩壊や凝集を生じ、蓄・放熱反応効率の低下することもないので好ましい。
本発明の多孔性化学蓄熱複合体においては、好適には、化学蓄熱材は主にマクロ孔に担持されている。その化学蓄熱材としては、例えば、カルシウムの化合物、マグネシウムの化合物、活性炭、シリカゲル、ゼオライトなどが挙げられ、具体的には、カルシウムの化合物としては、CaClなどのハロゲン化カルシウム、CaO、Ca(OH)等が挙げられ、マグネシウムの化合物としては、MgClなどのハロゲン化マグネシウム、MgO、Mg(OH)等が挙げられる。中でも、カルシウムの化合物又は、マグネシウムの化合物が、より大きな蓄熱量を有し、繰り返し定量的な反応を生起し、化学蓄熱材の状態変化も小さく、高温での焼成においても分解や変質せずに、低価格であるので好ましい。
本発明の好ましい1つの実施形態に用いる化学蓄熱材としては、塩化カルシウム2水和物(CaCl・2HO)が挙げられる。塩化カルシウム2水和物はさらに水和することで塩化カルシウム4水和物になり、その水和に伴って放熱する。そして、塩化カルシウム4水和物は脱水することで塩化カルシウム2水和物になり、その脱水に伴って吸熱による蓄熱をする。すなわち、化学蓄熱材の塩化カルシウムは式(1)に示すような反応で蓄熱・放熱を可逆的に繰り返しできる。
式(1)に蓄熱量Q又は、放熱量Qを併せて示すと、式(2)及び(3)に示す反応となる。
本発明の多孔性化学蓄熱複合体において、化学蓄熱材の担持率は50〜85質量%であることが、蓄熱及び放熱の効率を高め蓄熱量をより高くできることから好ましい。化学蓄熱材の担持率は、以下のように定義することができる。
化学蓄熱材の担持量は、上記式(2)及び式(3)に示したように蓄熱量又は、放熱量と比例することから、担持量が50質量%以上であると、多孔性化学蓄熱複合体の蓄熱及び放熱効率をより高めることができ経済的である。担持量が85質量%以下であると、多孔体の割合が少なくなり、細孔(特にマクロ孔)の孔径が大きくなったり、繰り返し蓄熱反応及び放熱反応に伴って化学蓄熱材が崩壊や凝集を生じることも少なくなり、蓄・放熱反応効率が低下することも無くなり好ましい。
本発明の多孔性化学蓄熱複合体における担体は、上記した様に、多孔性である必要はあるが、(1)芳香環を含有する架橋性モノマーの重合体、または(2)カーボンのいずれかである。担体がカーボンである多孔性化学蓄熱複合体は、カーボン担体のマクロ孔に化学蓄熱材を担持し、その担体に前記化学蓄熱材に反応媒体を供給可能なメソ孔及び/又はミクロ孔を有する多孔性化学蓄熱複合体であれば、その製造方法は特に制限されるものではない。しかしながら、上記(1)の重合体担体は、焼成することで容易に炭化させることが可能であるため、上記重合体担体を焼成してカーボン担体とすることが、作業上は簡便であり好ましい。
担体を焼成してその細孔に、化学蓄熱材を入れても良いし、焼成温度で分解や変質をしない化学蓄熱材ならば、担体にそれを入れてから焼成することも出来る。
カーボン担体のマクロ孔に化学蓄熱材を担持し、その担体に前記化学蓄熱材に反応媒体を供給可能なメソ孔及び/又はミクロ孔を有する多孔性化学蓄熱複合体は、芳香環を含有する架橋性モノマーの多孔性重合体担体のマクロ孔に、上記焼成において分解や変質しない化学蓄熱材を担持し、前記重合体担体は前記化学蓄熱材に反応媒体を供給可能なメソ孔及び/又はミクロ孔を有する多孔性化学蓄熱複合体を焼成することで、簡便に得ることが出来る。こうすることで、重合体多孔体の細孔プロファイルを残したままの、カーボン担体に変換が出来る。
ちなみに、芳香環を含有する架橋性モノマーの多孔性重合体担体のマクロ孔に化学蓄熱材を担持し、前記重合体担体は前記化学蓄熱材に反応媒体を供給可能なメソ孔及び/又はミクロ孔を有する多孔性化学蓄熱複合体と、カーボン担体のマクロ孔に化学蓄熱材を担持し、前記担体は前記化学蓄熱材に反応媒体を供給可能なメソ孔及び/又はミクロ孔を有する多孔性化学蓄熱複合体とは、求められる使用条件や耐熱性の観点から、同じ化学蓄熱装置においても、使い分けることが好ましい。
多孔性化学蓄熱複合体の担体が重合体では耐熱性が充分でないことから、主に200℃以下の低温排熱を利用した蓄熱・放熱に利用することが好ましい。重合体多孔体は200℃を越えると酸化反応、有機物の分解反応などが生じるため、その多孔性化学蓄熱複合体の膨張・収縮による体積及び寸法変化に伴い伝熱面との接続不良と伝熱阻害などの諸問題が出てくる可能性があると考えられる。一方、カーボン多孔体は、200℃を超える温度に晒されても酸化反応や分解反応の対象となる有機物自体が存在しないから、耐熱性が高く、主に200℃以上の高温排熱を利用した蓄熱・放熱に利用することが出来る。
本発明の芳香環を含有する架橋性モノマーの多孔性重合体担体のマクロ孔に化学蓄熱材を担持し、前記重合体担体は前記化学蓄熱材に反応媒体を供給可能なメソ孔及び/又はミクロ孔を有する多孔性化学蓄熱複合体を製造で用いることが出来る架橋性モノマーとしては、特に制限はないが重合開始剤の存在下又は非存在下で重合するものであり、重合制御が容易で入手が容易なことから、ビニル基を有するものが好ましい。このような架橋性モノマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を2以上含有する芳香族有機化合物、ブタジエン、ジビニルシクロヘキサン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の多官能性モノマーが挙げられ、エチレン性不飽和二重結合を2以上含有する芳香族有機化合物が好ましい。エチレン性不飽和二重結合を2以上含有する芳香族有機化合物としては、1,3−ジビニルベンゼン、1,4−ジビニルベンゼン、1,3−ジプロペニルベンゼン、1,4−ジプロペニルベンゼン、ジブテニルベンゼン、ジペンテニルベンゼン、ジヘキセニルベンゼン、ジビニルナフタレン等が挙げられ、1,3−ジビニルベンゼン、1,4−ジビニルベンゼン、1,3−ジプロペニルベンゼン及び1,4−ジプロペニルベンゼンが炭化の歩留まりが高いことから、好ましい。これらの架橋性モノマーは単独で、又は2種類以上を混合して用いることもできる。
本発明の多孔性重合体は、1種又は2種以上の架橋性モノマーのホモポリマーもしくは共重合体であってもよく、1種又は2種以上の架橋性モノマーと1種又は2種以上の単官能性モノマーの共重合体であってもよい。しかしながら、上記した理由から、架橋性モノマーは、多孔性重合体を構成するモノマーの50〜100モル%、好ましくは70〜100モル%、より好ましくは80〜100モル%、さらに好ましくは90〜100モル%、特に好ましくは95〜100モル%である。
単官能性モノマーとしては、スチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のグリコールエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド等のN−アルキル置換(メタ)アクリルアミド類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、ジエチルアミノエチルアクリレート、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、ジエチルアミノエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。
本明細書において、本発明の多孔性化学蓄熱複合体の担体が重合体多孔体の場合、「多孔性化学蓄熱重合体複合体」又は「重合体複合体」と記載することがある。また、担体がカーボン多孔体の場合、「多孔性化学蓄熱カーボン複合体」又は「カーボン複合体」と記載することがある。
本発明の多孔性化学蓄熱重合体複合体(1)は、例えば化学蓄熱材と重合時に相分離を誘発する溶剤とを混合した後、それに引き続き架橋性モノマーと重合開始剤を混合して重合性組成物を調製し、これを加熱重合することにより相分離重合過程を経て、化学蓄熱材が担持されている多孔性化学蓄熱重合体複合体を製造することができる。重合開始剤に代えて紫外線、電子線などの照射により重合反応を行ってもよい。
本発明で用いることが出来る重合時に相分離を誘発する溶剤としては、架橋性モノマーと化学蓄熱材からなる重合性組成物とともに均一な組成物が得られ、重合反応した重合体と相溶しないものであれば制限はない。このような相分離誘発溶剤は、重合にともなう相分離過程に関与し、得られる多孔性化学蓄熱複合体の微細構造、特にその比表面積、細孔径、細孔体積、気孔率などに影響を与え得る。
相分離誘発溶剤としては、単一溶剤であっても混合溶剤であっても良く、混合溶剤の場合には、その構成成分単独では重合性組成物と相溶しないものであってもよい。このような溶剤としては、例えば、酢酸エチル、デカン酸メチル、ラウリル酸メチル、アジピン酸イソブチルなどの脂肪酸のアルキルエステル類、アセトン、2−ブタノン、イソブチルメチルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性極性溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1,1−ジメチル−1−エタノール、ヘキサノール、デカノールなどのアルコール類、及び、水などの溶剤が挙げられるこのような溶剤の中でも、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性極性溶剤や、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1,1−ジメチル−1−エタノールなどの高極性のアルコール類が、前記の化学蓄熱材と相溶しやすく、また、架橋性モノマーを含む重合性組成物と相溶しやすいため、好ましく用いられる。
重合性組成物には、重合速度や重合度、さらには高分子の多孔構造などを調整するために重合開始剤を添加しても良い。
重合開始剤としては、重合組成物を重合させることが可能なものであれば、特に制限はなく、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤などが使用できる。例えば、2,2‘−アソビスブチロニトリル、2,2‘−アソビスシクロヘキサンカルボニトリル、1,1‘−アソビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2‘−アソビスシ(2−メチルブチロニトリル)、2,2‘−アソビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2‘−アソビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2‘−アソビスイソ酪酸ジメチル、2,2‘−アソビス(2−メチルプロピオンアミドキシム)、2,2‘−アソビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)、2,2‘−アソビス(2,4,4−トリメチルペンタン)などのアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ−t−ブチル、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどの過酸化物系開始剤が挙げられる。また、活性エネルギー線の作用により機能する重合開始剤として、p−t−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−
メチル−1−フェニルプロパン−1−オンなどのアセトフェノン類、ベンゾフェノン、4,4‘−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなどのケトン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのベンジルケタール類、N−アジドドスルフォニルフェニルマレイミドなどのアジド類が挙げられる。また、マレイミド系化合物などの紫外線重合開始剤、テトラエチルチイラムジスルフィドなどのジスルフィド系開始剤、2,2,6,6、−テトラメチルピペリジン−1−オキシルなどのニトロキシド開始剤、4,4’−ジ−t−ブチル−2,2‘−ビピリジン銅錯体−トリクロロ酢酸メチル複合体、ベンジルジエチルジチオカルバメートなどのリビングラジカル重合開始剤を用いることもできる。
重合反応は熱重合法、及び、紫外線や電子線などの照射により行う活性エネルギー線重合法など公知慣用の方法でよい。例えば、前記した熱重合開始剤とともに40〜100℃、好ましくは60〜80℃で10分〜72時間、好ましくは6〜12時間重合反応させることにより、化学蓄熱材を担持した多孔性重合体を製造することができる。また、各種水銀ランプやメタルハライドランプを用いても上記多孔性重合体を製造することができる。
架橋性モノマーと化学蓄熱材を含む重合性組成物を重合させた後、溶剤を除去する方法に特に制限はないが、溶剤が揮発性の高い溶剤の場合は、常圧又は減圧により乾燥させることにより行うことができる。溶剤が揮発性の低い溶剤の場合は、重合反応後の重合物を揮発性の高い溶剤に接触させて溶剤交換を行った後、常圧又は減圧により乾燥させることにより行うことができる。また、溶剤を除去する際に、重合物のうちに未重合で残存した成分を除去する目的で、その未重合物が溶解する溶剤を用いて、洗浄、抽出を行うことも有効である。例えば、抽出操作には、ソックスレー抽出器を用いて行うこともできる。
本発明の多孔性化学蓄熱複合体は、重合体複合体又はカーボン複合体を包含するが、重合体複合体からの、カーボン複合体を製造する方法としては、例えば、当該重合体複合体の一段階での焼成でも良いが、それ以外には、好適な製造方法として、電気炉を用いた不融化工程と続きの焼成工程からなる製造方法が挙げられる。
不融化工程は空気気流中において200〜300℃の低温で加熱し、後続の焼成工程(850℃以上)における多孔性重合体複合体表面の融着を防止するために行う。このときの空気流速度は特に制限されるものではないが、0.1〜1.0mL/分が望ましい。 また、不融化工程の加熱処理は特に制限されるものではないが、1〜10時間実行することが望ましい。不融化工程後の焼成工程で、多孔体試料は炉芯管内部に入れて窒素気流速度は特に制限されるものではないが、1.0〜5.0mL/分で行うのが望ましい。
焼成が充分に行われていないと、カーボン担体の一部に重合体担体部分が混在している状態となり、特に200℃を超える高温排熱を利用した蓄熱・放熱に利用した場合の繰り返し熱交換時における信頼性が低下するので、この様な複合体を化学蓄熱に用いる場合には、高温排熱には使用しないか、一部に重合体担体部分を含めて全体を完全にカーボン担体としてから高温排熱に使用することが好ましい。
焼成工程における加熱温度や加熱時間は、いずれも特に制限されるものではないが、850〜1000℃が望ましく、加熱時間は30分〜2時間が望ましい。この時、炉芯管は特に制限されるものではないが、円筒型の石英管を用いることが望ましい。電気炉は特に制限されるものではないが、焼成条件を精密に制御するために、装置側の温度を測定するための熱電対と炉芯管内部の温度を測定するための熱電対の両方を設置し、前記炉芯管内部の温度を測定するための熱電対を電気炉の制御端子に接続する仕組みが望ましい。
以下に、本発明の好ましい実施形態に関してより詳細に説明する。
図6−1、図6−2は、多孔性化学蓄熱重合体複合体(1)のSEM-EDS測定を行った観察写真を示す図である。図6−1、図6−2のSEMで観察されたように白く見える多孔性重合体Aの形状はジビニルベンゼンのランダム相分離重合で出来た球状の重合体が連続的に繋がってスポンジ状の多孔体に成長した構造体であり、黒く見える数マイクロメートル孔径を持つ細孔のマクロ孔Bが多く形成されている。さらに、図5のSEM表面観察の50,000倍から150,000倍のSEM像写真で示すように、その数マイクロメートル孔径のマクロ孔Bの壁になっている球状の重合体は、数ナノメートル細孔のミクロ孔と数十ナノメートル細孔のメソ孔を多く持っている。また、それらのマイクロメートルサイズ細孔のマクロ孔と数ナノメートル細孔のミクロ孔と数十ナノメートル細孔のメソ孔は互いに開通していると考えられる。
そして、化学蓄熱材として用いた塩化カルシウムのカルシウム元素又は塩素元素のマッピング像で示すように、数マイクロメートルの孔径からなるマクロ孔Bの中にカルシウム元素又は塩素元素が多く観測されて、本発明の多孔性化学蓄熱重合体複合体(1)において、化学蓄熱材の塩化カルシウムは多孔体のマクロ細孔中に良好に担持されていると考えられる。
この実施形態に用いる化学蓄熱材としては、例えば塩化カルシウム2水和物(CaCl・2HO)が用いられる。
例えば塩化カルシウム2水和物のような化学蓄熱材は数マイクロメートルの孔径からなるマクロ孔Bの中に担持されていることで、蓄熱反応及び放熱反応を繰り返しても化学蓄熱材の崩壊や凝集を効果的に防ぐことが出来、また、化学蓄熱材を用いた水和・脱水反応を繰り返す時、小粒子蓄熱材の膨張・収縮による体積変化に伴い伝熱面との充填不良と伝熱阻害などを防ぐことが出来、本発明の多孔性化学蓄熱複合体は繰り返し蓄・放熱反応に安定的に使用することができる。
そして、上記細孔のマクロ孔の孔径は特に制限されないが、50nm〜200μm、好ましくは100nm〜200μm、より好ましくは200nm〜100μmである。上記した範囲であれば、細孔の孔径が小さすぎると、化学蓄熱材の担持が不利になる又は、少量の担持になって蓄・放熱の反応効率が低下することも無く、しかも、担持された化学蓄熱材が大きくなり、その表面積が低くなり、蓄・放熱反応効率が低下することも無いので好ましい。
本発明の化学蓄熱装置は、従来の多孔性化学蓄熱複合体に代えて、上記本発明の多孔性化学蓄熱複合体を用いることで、容易に得ることが出来る。
反応媒体貯蔵部と化学蓄熱反応部を有し、これらは反応媒体の蒸気が流動可能な配管により接続され、前記配管には蒸気の供給を遮断することが可能なバルブが備えられる。化学蓄熱反応部には、化学蓄熱材が備えられている。蓄熱モードでは、反応媒体を吸着/吸収した化学蓄熱材(例えば水和したCaCl)が外部からの余剰熱等の熱エネルギーを吸収して反応媒体を脱着(吸熱反応)し、発生したガス状の反応媒体が配管を通り反応媒体貯蔵部の容器に入り、そこで凝縮液化する。一方、熱出力モードでは、反応媒体貯蔵部内のガス状の反応媒体が配管を通り化学蓄熱反応部の容器に入り、そこで化学蓄熱材(例えば非水和CaCl)が反応媒体を吸収/吸着して発熱反応を起こさせることが出来る。上記した通り、熱交換が繰り返し行われることにより、従来に比べて高い効率で、熱を再生可能エネルギーとして活用することが出来る。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例中、用いた機器類及び測定方法については下記のとおりである。
1.電気炉:アサヒ理化社製(温度コントローラー AGC-1P型)、石英チューブ型、
0〜1200℃、AC 100V、Max 15A(1500W)
2.流動式比表面積自動測定(窒素ガス吸脱着測定法)装置:日本ベル社製、
Belsorp-mini II
3.細孔分布測定装置:島津製作所社製、オートポア9520形(水銀圧入法)
4.TG/DTA測定装置:日立ハイテクサイエンス社製、EXSTER TG/DTA6300
5.SEM表面観測装置:日本電子社製、JSM-7500TFE、加速電圧 0.5kV、1kV(GBモード)
6.顕微ラマン分光装置:堀場製作所製、LabRAM HR-800
7.FT-IR:日本分光製、FT/IR 6300
8.水蒸気作動型示差熱天秤TG/DTA装置:株式会社リガク製、TG-DTA/HUM-1
実施例1:多孔性化学蓄熱重合体複合体(1)の合成
重合反応フラスコにCaCl2・2H2Oを39.1gとエタノール40.0gを入れて超音波より溶解させた後、ジメチルホルムアミド(DMF)を10.0g加えて、更に超音波より溶解させた。引き続き、溶解した溶液にジビニルベンゼン(DVB)を26.0g(0.2mol)と重合触媒のアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.80g(4.9mmol)を加えて溶解させた後、室温下で10分間窒素置換した。窒素置換した混合溶液を用いてアルゴン(Ar)気流下、70℃の反応浴槽に入れて重合反応開始した。約15分後から反応液の固形化が開始して重合反応は順調に進行した。6時間後、反応を終了して反応浴槽を下げてから空冷却を行った。
次に、脱溶剤のため、冷却トラップ付きのデシケータ式の真空乾燥器に上記の重合混合物を入れて、真空下、70℃で15時間の乾燥を行った。
引き続き、脱溶剤した重合物を反応容器から取り出して酢酸エチルより固形粉状の重合物の洗浄を行った。洗浄した固形粉状の重合物は桐山ロートでろ過分離した。
ろ過分離した重合物の固形粉状は冷却トラップ付きのデシケータ式の真空乾燥器に入れて真空下、60℃で6時間の乾燥を行い、白色の多孔体に担持率60質量%相当の化学蓄熱材が担持されている多孔性化学蓄熱重合体複合体(1)を52.7g得た。
また、得られた多孔性化学蓄熱重合体複合体(1)の一部を用いて水洗浄より担持されている塩化カルシウム水和物を除去した多孔性重合体(2)を得た。
そして、得られた多孔性化学蓄熱重合体複合体(1)及び多孔性重合体(2)を用いて、各種分析及び熱物性の評価を行った。
ここで、化学蓄熱材の担持率は、以下のように定義した。
蓄熱材の担持率(質量%)=[担持した化学蓄熱材量(g)/蓄熱複合体量(g)]×100
空気及び窒素雰囲気下で、本発明の多孔性化学蓄熱重合体複合体(1)のTG/DTA測定結果、両方とも220℃付近まで塩化カルシウム水和物の脱水に伴う減量が観測された後、空気雰囲気では350℃付近から、窒素雰囲気では400℃付近から有機物の多孔性重合体の分解に伴う減量が観測された(図1,2)。
図3と表1で示したように本発明で作製された多孔性化学蓄熱重合体複合体(1)は、平均細孔径が3.31nmと最大細孔分布が1.22nmの結果から、細孔径が数ナノメートルから数十ナノメートルのミクロ孔及びメソ孔が多く存在すると考えられる。
本発明の多孔性化学蓄熱重合体複合体(1)を用いて、水洗浄より担持されている塩化カルシウム水和物を除去した多孔性重合体(2)の水銀圧入法による細孔分布を測定して表2及び図4に示した。結果、多孔性化学蓄熱重合体複合体(1)は細孔径が数マイクロメートルから数十マイクロメートルのマクロ孔で分布されて、気孔率83%から多くの空隙を持っていると考えられる。
ここで、気孔率は次の式で定義される。
気孔率(%)=1−d/p、dはかさ密度、pは真密度、d=乾燥重量/体積
図5にSEM測定より本発明の多孔性化学蓄熱重合体複合体(1)の表面観察を行った結果を示す。多孔性重合体の形状はジビニルベンゼンのランダム相分離重合で球状の重合体が連続的に繋がって多孔体に成長した構造体であると考えられる。3,500倍のSEM像から、多孔体の細孔径はマイクロメートルサイズのマクロ孔であり、そのマイクロメートル細孔の壁になっている球状の重合体は、数ナノメートルのミクロ孔と数十ナノメートルのメソ孔を多く持っている(15,000倍のSEM像)ことが分かった。また、それらのマイクロメートルサイズのマクロ孔と数ナノメートルのミクロ孔と数十ナノメートルのメソ孔は互いに開通しているものと考えられる。そして、その数マイクロメートル以上の孔径を持つマクロ孔中には化学蓄熱材の塩化カルシウムが担持されていると考えられて、SEM-EDS測定より確認を行った。
多孔性化学蓄熱重合体複合体(1)を用いて2視野のSEM-EDS測定を行い、結果を図6−1、図6−2に示した。重合体複合体(1)のSEM形状と炭素元素のマッピング像とは一致して、炭素元素のないマクロ孔の箇所とカルシウム元素又は塩素元素のマッピング像は一致している。本発明の多孔性化学蓄熱重合体複合体(1)において、化学蓄熱材の塩化カルシウムは多孔体の細孔中に良好に担持されていると考えられる。
水洗浄より担持されている化学蓄熱材の塩化カルシウム水和物を除去した多孔性重合体(2)の元素マッピング測定を行い、その結果を図7に示す。炭素原子はSEM形状と一致したが、カルシウム元素及び塩素元素は検出されなかった。
本発明の多孔性化学蓄熱重合体複合体(1)を用いて温熱取り出し試験を行い重合体複合体(1)の蓄熱密度及び放熱速度を測定した。測定条件で、装置のエネルギー校正はIn、Sn、Pbの融解熱を用いて実施した。試料量は10mgを用いて、前処理として窒素気流下、室温から毎分10℃昇温で120℃まで加温して60分保持した後、80℃まで降温した。引き続き、35℃飽和水蒸気(水蒸気分圧5.6kPa/窒素バランス)を用いて80℃で60分間水蒸気吸着の温熱取り出しを行った。その後、再び120℃で水蒸気脱着と80℃で水蒸気吸着の温熱取り出しを行った。
結果、本発明の多孔性化学蓄熱重合体複合体(1)1kg当たりの蓄熱密度は265kJであり、吸着速度は18.6g水/分であり、約4分程度で温熱取り出し出来る早い速度であった(図8)。
実施例2:多孔性化学蓄熱カーボン複合体(3)の合成
先ず、焼成前処理として不融化工程を実施した。電気焼成炉に石英管を設置した後、白色の重合体複合体(1)4.5201gを石英管に入れた。圧縮空気を0.1L/min流しながら加熱を開始した。室温から毎分5℃で250℃まで昇温した後、250℃で2時間保持した。2時間の加熱運転停止後、室温まで自然冷却して黄色の不融化体3.9210gが得られた。
引き続き、前記で作製した不融化体3.5560gを石英管に入れて、窒素を毎分1.0L流しながら本焼成工程を行った。室温から毎分5℃で900℃まで昇温した後、900℃で1時間保持した。1時間の加熱運転停止後、室温まで自然冷却して黒色の多孔性化学蓄熱カーボン複合体(3)が2.1620g得られた。得られた多孔性化学蓄熱炭素複合体(3)の塩化カルシウム担持率は79質量%程度と考えられる。
そして、得られた多孔性化学蓄熱カーボン複合体(3)を用いて、各種分析及び熱物性の評価を行った。
空気雰囲気下で、本発明の多孔性化学蓄熱カーボン複合体(3)のTG/DTA測定結果、150℃付近まで塩化カルシウム水和物の脱水に伴う減量が観測されて、焼成後のカーボン複合体(3)に化学蓄熱材の塩化カルシウムが良好に担持されていると考えられる(図9)。
多孔性化学蓄熱カーボン複合体(3)の水銀圧入法による細孔分布を測定して表3及び図10に示した。結果、本発明のカーボン複合体(3)は、細孔径が数マイクロメートルのマクロ孔を中心に数十マイクロメートルのマクロ孔までの分布を示していて、気孔率59%の空隙を持っていると考えられる。そして、前記の多孔性化学蓄熱重合体複合体(1)と同様に流動式比表面積自動測定より多孔性化学蓄熱カーボン複合体(3)においても、ミクロ孔及びメソ孔の存在は確認された。
重合体複合体(1)及び不融化体のFT-IRスペクトルでは2920cm-1付近にCH伸縮振動に基つくピークと1660cm-1付近にカルボニル基由来と推定されるピークが観測されるが、焼成後のカーボン複合体(3)のFT-IRスペクトルでは2920cm-1付近及び1660cm-1付近のピークはなくなって、焼成工程による炭化反応が良好に進行したと考えられる(図11)。
ラマン測定結果、焼成後のカーボン複合体(3)のスペクトルでは1580cm-1のGバンドと1360cm-1付近のDバンドが観測されて、上記FT-IR測定結果と同様に焼成工程による炭化反応は良好に進行したと考えられる(図12)。
本発明の多孔性化学蓄熱カーボン複合体(3)のSEM測定による表面観察では、マイクロメートルサイズのマクロ孔の細孔径を多く持っている多孔体であることが分かった。
また、カーボン複合体(3)を用いたSEM-EDS測定結果、カーボン複合体(3)のSEM像で黒く見えるマクロ孔の箇所を含めたマッピング像からカルシウム元素又は塩素元素は全体的に良く分布されている(図13)。本発明の多孔性化学蓄熱カーボン複合体(3)において、化学蓄熱材の塩化カルシウムは多孔体の細孔(マクロ孔)中に良好に充填されていると考えられる。
本発明の多孔性化学蓄熱カーボン複合体(3)を用いて温熱取り出し試験を行いカーボン複合体(3)の蓄熱密度及び放熱速度を測定した。測定条件で、装置のエネルギー校正はIn、Sn、Pbの融解熱を用いて実施した。試料量は10mgを用いて、前処理としてドライ窒素気流下、室温から毎分5℃昇温で120℃まで加温して60分保持した後、80℃まで降温した。引き続き、35℃飽和水蒸気(水蒸気分圧5.6kPa/窒素バランス)を用いて80℃で60分間水蒸気吸着の温熱取り出しを行った。その後、再び120℃で水蒸気脱着と80℃で水蒸気吸着の温熱取り出しを行った。
結果、本発明の多孔性化学蓄熱カーボン複合体(3)1kgのドライ試料当たりの蓄熱密度は784kJで高い蓄熱密度を示し、吸着速度は18.6mg水/分であり、約13分程度で温熱取り出し出来る速度であった(図14)。
担持率45%の多孔性化学蓄熱カーボン複合体を用いて吸脱着繰返し試験を行い、本発明の多孔性化学蓄熱カーボン複合体の水蒸気吸脱着繰返し安定性を測定した。測定条件で、試料量は10mgを用いて、前処理の乾燥条件としてドライ窒素気流下、室温から毎分10℃昇温で120℃まで加温して60分保持した後、80℃まで降温して冷却を行った。測定条件としては、35℃飽和水蒸気(水蒸気分圧5.6kPa/窒素バランス)を用いて80℃で60分間水蒸気吸着試験を行った後、ドライ窒素雰囲気下、120℃で水蒸気脱着試験を行った。昇温と降温は毎分10℃にて実施し、水蒸気吸着試験と脱着試験を10回繰り返した。
本発明の多孔性化学蓄熱カーボン複合体の水蒸気吸脱着繰返し試験結果、80℃における初期の吸着水量の増大する傾向は水蒸気吸脱着により担持した塩化カルシウム塩のコンディショニングが出来たものと考えられ、それ以後の吸着水量はほぼ一定値を示し、また、120℃における脱着水量は全範囲でほぼ一定値を示して、水蒸気吸脱着繰返しでの安定性は良好であると考えられる(図15)。
比較例1:多孔性重合体(4)の合成後、化学蓄熱材を担持した複合体(5)の作製
100mlのナスフラスコにポリスチレン1.3gとジメチルフォルムアミド16mlを加えて、室温で超音波より溶解させた。完全溶解確認後、AIBNを0.4gとジビニルベンゼンを13.0g加えて攪拌させて溶解した。引き続き、室温下で上記の混合溶液に窒素で30分間バブリングを行った後、アルゴン気流下の反応温度70℃で重合反応を開始した。約10分後から重合反応の進行より反応液が濁り、徐々に全体が白く固体化した。7時間後、反応を終了して室温で自然冷却した。上記重合反応の重合した白色固形物を反応容器から粉砕して取り出し、ソックスレー用ろ過缶に上記粉砕の重合物を入れる抽出溶剤としてTHFを用いて還流しながら6時間ソックスレー抽出により洗浄を行った。抽出終了後、室温まで自然冷却してソックスレー洗浄した白色の重合物を冷却トラップ付きのデシケータ式の真空乾燥器に入れ、真空下、50℃で15時間乾燥して白色固体の多孔性重合体(4)を9.33g得た。
続いての化学蓄熱材を担持した複合体(5)作製時の担持方法としては、多孔性重合体(4)の細孔に塩化カルシウム蓄熱材を溶液状態にして入れることで担持した。得られた多孔性重合体(4)に担持するための塩化カルシウム蓄熱材溶液の調製は、塩化カルシウム6水和物30gとエタノール20g及び界面活性剤DMH−40(日本乳化剤株式会社製)0.05gを混合攪拌して行った。調製した塩化カルシウム蓄熱材溶液に上記で作製した多孔性重合体(4)2gを投入して時々攪拌しつつ1時間程度浸漬した。次に60℃恒温槽で一晩乾燥した後、110℃でさらに1時間乾燥した。引き続き、純水で洗浄、ろ過した後、110℃恒温槽で2時間乾燥して化学蓄熱材の塩化カルシウムを担持した複合体(5)を作製した。その担持率は18.4質量%と低い担持率を示した。
また、多孔性重合体(4)を真空引きした後、塩化カルシウム蓄熱材溶液を担持する方法を用いても化学蓄熱材塩化カルシウムの担持率は改善されなかった。
そして、得られた多孔性重合体(4)及び化学蓄熱材を担持した複合体(5)を用いて、各種分析及び熱物性の評価を行った。
多孔性重合体(4)の水銀圧入法による細孔分布を測定して表4及び図16に示した。結果、多孔性重合体(4)は細孔径が数マイクロメートルを中心とするマクロ孔で分布されて、気孔率67%であった。
そして、SEM測定による多孔性重合体(4)の表面観察では、前記の実施例1で説明した多孔性化学蓄熱重合体複合体(1)のSEM表面観察結果と同様に、球状の重合体が連続的に繋がって多孔体に成長した構造体であり、多孔体の細孔径はマイクロメートルサイズのマクロ孔と数ナノメートルのミクロ孔及び数十ナノメートルのメソ孔が観測された。
化学蓄熱材を担持した複合体(5)のSEM測定による表面観察を行った結果、マイクロメートルサイズのマクロ孔の多くがその細孔の入り口付近で、化学蓄熱材の塩化カルシウムで塞がれている様子が観測された。それは多孔性重合体(4)の表面と担持する塩化カルシウム蓄熱材溶液との極性の差、又は濡れ性などの問題からであり、塩化カルシウムが良好に担持されなかったと考えられる。そして、SEM-EDS測定による元素マッピング結果、カルシウム元素又は塩素元素は表面の広い範囲において僅かに分布されていることが観測されて、SEM測定結果と同様に化学蓄熱材の塩化カルシウムは多孔体の細孔に担持されていないことを支持する(図17)。
化学蓄熱材を担持した複合体(5)を用いて温熱取り出し試験を行い重合体複合体(5)の蓄熱密度及び放熱速度の測定を試みた。測定条件で、装置のエネルギー校正はIn、Sn、Pbの融解熱を用いて実施した。試料量は10mgを用いて、前処理としてドライ窒素気流下、室温から毎分10℃昇温で120℃まで加温して60分保持した後、80℃まで降温した。引き続き、35℃飽和水蒸気(水蒸気分圧5.6kPa/窒素バランス)を用いて80℃で水蒸気吸着の温熱取り出し試験を行った。
結果、化学蓄熱材を担持した複合体(5)は水蒸気との反応による重量増加又は、DTA発熱などの計測が出来なかった(図18)。それは多孔性重合体(4)に塩化カルシウムの担持が良好にされず、温熱取り出しが出来る化学蓄熱複合体になってないからと考えられる。
比較例2::多孔性カーボン(6)の合成後、化学蓄熱材を担持した複合体(7)の作製
焼成前処理として不融化工程を実施するために電気焼成炉に石英管を設置した後、白色の多孔性重合体(4)5.250gを石英管に入れた。圧縮空気を0.1 L/min流しながら加熱を開始した。室温から毎分5℃で250℃まで昇温した後、250℃で2時間保持した。2時間の加熱運転停止後、室温まで自然冷却して黄色の不融化体5.366gが得られた。
引き続き、前記で作製した不融化体5.366gを石英管に入れて、窒素を毎分1.0L流しながら本焼成工程を行った。室温から毎分5℃で900℃まで昇温した後、900℃で1時間保持した。1時間の加熱運転停止後、室温まで自然冷却して黒色の多孔性カーボン(6)が1.680g得られた。
次に、化学蓄熱材を担持した複合体(7)作製時の担持方法としては、多孔性カーボン(6)の細孔に塩化カルシウム蓄熱材を溶液状態にして入れることで担持した。得られた多孔性カーボン(6)に担持するための塩化カルシウム蓄熱材溶液の調製は、塩化カルシウム6水和物30gとエタノール20g及び界面活性剤DMH−40(日本乳化剤株式会社製)0.05gを混合攪拌して行った。調製した塩化カルシウム蓄熱材溶液に上記で作製した多孔性カーボン(6)2gを投入して時々攪拌しつつ1時間程度浸漬した。次に60℃恒温槽で一晩乾燥した後、110℃でさらに1時間乾燥した。引き続き、純水で洗浄、ろ過した後、110℃恒温槽で2時間乾燥して化学蓄熱材の塩化カルシウムを担持した複合体(7)を作製した。その担持率は44.9質量%を示した。
また、多孔性カーボン(6)を真空引きした後、塩化カルシウム蓄熱材溶液を担持する方法を用いても化学蓄熱材塩化カルシウムの担持率は改善されなかった。
そして、得られた多孔性カーボン(6)及び化学蓄熱材を担持した複合体(7)を用いて、各種分析及び熱物性の評価を行った。
多孔性カーボン(6)の水銀圧入法による細孔分布を測定して表5及び図19に示した。結果、多孔性カーボン(6)の細孔径は数マイクロメートルとさらに大きい数十マイクロメートルのマクロ孔で分布されて、その気孔率66%であった。
化学蓄熱材を担持した複合体(7)のSEM測定による表面観察及びSEM-EDS測定結果(図20)、表面にマイクロメートルサイズのマクロ孔の細孔径を多く持っている多孔体であり、マクロ孔の細孔を中心に元素マッピング像からカルシウム元素又は塩素元素が多く分布されている。化学蓄熱材を担持した複合体(7)において、化学蓄熱材の塩化カルシウムは多孔体の細孔中に良好に担持されていると考えられる。
化学蓄熱材を担持した複合体(7)を用いて温熱取り出し試験を行いカーボン複合体(7)の蓄熱密度及び放熱速度の測定を試みた。測定条件で、装置のエネルギー校正はIn、Sn、Pbの融解熱を用いて実施した。試料量は10mgを用いて、前処理としてドライ窒素気流下、室温から毎分10℃昇温で120℃まで加温して60分保持した後、80℃まで降温した。引き続き、35℃飽和水蒸気(水蒸気分圧5.6kPa/窒素バランス)を用いて80℃で水蒸気吸着の温熱取り出し試験を行った。
結果、化学蓄熱材を担持した複合体(7)1kgのドライ試料当たりの蓄熱密度は347kJを示し、吸着速度としては約10分程度で温熱取り出し出来る速度であった(図21)。
以上説明したように、本発明の多孔体に化学蓄熱材を担持した多孔性化学蓄熱複合体は、高い蓄熱量及び蓄熱反応効率と形状安定性を有する良好な蓄熱材で、水和・脱水反応を繰り返し使用しても蓄・放熱の性能低下がなく、常に安定的に動作し、繰返し使うことが出来る。

Claims (9)

  1. 芳香環を含有する架橋性モノマーの多孔性重合体担体のマクロ孔に化学蓄熱材を担持し、前記重合体担体は前記化学蓄熱材に反応媒体を供給可能なメソ孔及び/又はミクロ孔を有する多孔性化学蓄熱複合体。
  2. 芳香環を含有する架橋性モノマーの多孔性重合体が、エチレン性不飽和二重結合を2以上含有する芳香族有機化合物の単独重合体もしくは共重合体である、請求項1記載の多孔性化学蓄熱複合体。
  3. 化学蓄熱材が塩化カルシウム又はその水和物である請求項1又は2記載の多孔性化学蓄熱複合体。
  4. カーボン担体のマクロ孔に化学蓄熱材を担持し、前記担体は前記化学蓄熱材に反応媒体を供給可能なメソ孔及び/又はミクロ孔を有する多孔性化学蓄熱複合体。
  5. 化学蓄熱材が塩化カルシウム又はその水和物である請求項4記載の多孔性化学蓄熱複合体。
  6. 前記担体の気孔率が50〜90%である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の多孔性化学蓄熱複合体。
  7. 化学蓄熱材の担持率が50〜85質量%である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の多孔性化学蓄熱複合体。
  8. 溶媒、溶媒に溶解する化学蓄熱材、芳香環を含有する架橋性モノマーを含む反応混合物を相分離重合する工程を含む、多孔性重合体担体のマクロ孔に化学蓄熱材を担持し、前記重合体担体は前記化学蓄熱材に反応媒体を供給可能なメソ孔及び/又はミクロ孔を有する多孔性化学蓄熱複合体の製造方法。
  9. 請求項1又は4記載の多孔性化学蓄熱複合体を含む、熱交換により、蓄熱及び放熱を繰り返し行う化学蓄熱装置。
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