JP2018088888A - Scn1a遺伝子の発現増強法 - Google Patents

Scn1a遺伝子の発現増強法 Download PDF

Info

Publication number
JP2018088888A
JP2018088888A JP2016236934A JP2016236934A JP2018088888A JP 2018088888 A JP2018088888 A JP 2018088888A JP 2016236934 A JP2016236934 A JP 2016236934A JP 2016236934 A JP2016236934 A JP 2016236934A JP 2018088888 A JP2018088888 A JP 2018088888A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
combination
rna
seq
grna
crrna
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2016236934A
Other languages
English (en)
Inventor
山川 和弘
Kazuhiro Yamakawa
和弘 山川
哲司 山形
Tetsuji Yamagata
哲司 山形
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
RIKEN Institute of Physical and Chemical Research
Original Assignee
RIKEN Institute of Physical and Chemical Research
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by RIKEN Institute of Physical and Chemical Research filed Critical RIKEN Institute of Physical and Chemical Research
Priority to JP2016236934A priority Critical patent/JP2018088888A/ja
Publication of JP2018088888A publication Critical patent/JP2018088888A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
  • Medicines Containing Material From Animals Or Micro-Organisms (AREA)

Abstract

【課題】SCN1A遺伝子の発現増強法、該方法において用いるSCN1A遺伝子の発現を増強するためのRNAまたはRNA発現ベクター、さらにSCN1A遺伝子の発現が増強された細胞および該細胞を含む細胞製剤の提供。
【解決手段】SCN1A遺伝子のプロモーター領域上に存在するCas9エンドヌクレアーゼ結合部位の少なくとも1箇所を標的とするgRNAまたはcrRNAを用いて、SCN1A遺伝子の発現を増強する方法、該方法において用いるRNA発現ベクター、SCN1A遺伝子の発現が増強された細胞および該細胞を含む細胞製剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、SCN1A遺伝子の発現増強法に関する。本発明は、SCN1A遺伝子の発現を増強するためのRNAまたはRNA発現ベクターにも関する。本発明はさらに、SCN1A遺伝子の発現が増強された細胞および該細胞を含む細胞製剤にも関する。
SCN1A遺伝子の発現量の低下は、てんかんや社会性行動異常の原因となることが知られている(非特許文献1〜3)。SCN1A遺伝子の発現量を向上させるためには、SCN1A遺伝子を細胞に導入することが考えられるが、200kDaを超えるタンパク質であり、遺伝子サイズが大きいために細胞に導入することが困難である。また、SCN1A遺伝子のプロモーター領域が解析されつつあるが数十キロbpに及ぶ巨大な領域であり、その制御機構はいまだ不明の部分が多い(非特許文献4)。
細胞内のゲノムDNAから遺伝子発現を増強する方法としてCRISPR−onシステムが開発されている(非特許文献5〜7)。
Ogiwara et al., J. Neuroscie., 27: 5903-5914, 2007 Ogiwara et al., Hum. Mol. Genet., 22: 4784-4804, 2013 Ito et al., Neurobiol. Dis., 49: 29-40, 2013 Nakayama T., et al., Hum. Mutat., 31(7): 820-829, 2010 Cheng et al., Cell Research, 23: 1163-1171, 2013 Mali et al., Science, 339 (6121): 823-826, 2013 Konermann et al., Nature, 517 (7536): 583-588, 2015
本発明は、SCN1A遺伝子の発現を特異的に増強する方法を提供する。本発明はまた、SCN1A遺伝子の発現を特異的に増強するためのRNAまたはRNA発現ベクターを提供する。本発明はさらに、SCN1A遺伝子の発現が増強された細胞および該細胞を含む細胞製剤を提供する。
本発明者らは、SCN1A遺伝子のプロモーター領域の複数の箇所を標的配列としてCRISPR−onシステムを用いた場合、SCN1A遺伝子の発現を顕著に増強させることができることを見出した。本発明者らはまた、配列番号1〜8のいずれか1以上、特に4つ以上を標的配列とする場合に、効果的にSCN1A遺伝子の発現を増強させることができることを見出した。
本発明によれば、例えば、以下の発明が提供される。
〔1〕SCN1A遺伝子のプロモーター領域上に存在するCas9エンドヌクレアーゼ結合部位の少なくとも1箇所を標的とするgRNAまたはcrRNAの組合せである、RNAの組合せ。
〔2〕SCN1A遺伝子のプロモーター領域上に存在するCas9エンドヌクレアーゼ結合部位の少なくとも4つを標的とする、gRNAまたはcrRNAの組合せである、上記〔1〕に記載のRNAの組合せ。
〔3〕上記〔1〕または〔2〕に記載のRNAの組合せであって、
[1]以下(1)〜(4)からなる群から選択される1つのRNA若しくは2〜4つのRNAの組合せ、
[2]以下(5)〜(8)からなる群から選択される1つのRNA若しくは2〜4つのRNAの組合せ、または
[3]以下(1)〜(8)からなる群から選択される2〜8つのRNAの組合せ:
(1)配列番号1で示される配列を標的とするgRNAまたはcrRNA、
(2)配列番号2で示される配列を標的とするgRNAまたはcrRNA、
(3)配列番号3で示される配列を標的とするgRNAまたはcrRNA、
(4)配列番号4で示される配列を標的とするgRNAまたはcrRNA、
(5)配列番号5で示される配列を標的とするgRNAまたはcrRNA、
(6)配列番号6で示される配列を標的とするgRNAまたはcrRNA、
(7)配列番号7で示される配列を標的とするgRNAまたはcrRNA、および
(8)配列番号8で示される配列を標的とするgRNAまたはcrRNA。
〔4〕[1]に記載のRNAの組合せである、上記〔3〕に記載のRNAの組合せ。
〔5〕(1)〜(4)に記載のすべてのgRNAを含むか、または(1)〜(4)に記載のすべてのcrRNAを含む、上記〔4〕に記載のRNAの組合せ。
〔6〕[2]に記載のRNAの組合せである、上記〔3〕に記載のRNAの組合せ。
〔7〕(5)〜(8)に記載のすべてのgRNAを含むか、または(5)〜(8)に記載のすべてのcrRNAを含む、上記〔5〕に記載のRNAの組合せ。
〔8〕[3]に記載のRNAの組合せであって、(1)〜(8)からなる群から選択される4つ以上のgRNAの組合せまたはcrRNAの組合せである、上記〔1〕に記載の組合せ。
〔9〕それぞれのRNAが、gRNAである、上記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載のRNAの組合せ。
〔10〕上記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載のRNAの組合せ、に含まれる各RNAをコードする核酸の組合せ。
〔11〕上記〔10〕に記載の核酸の組合せに含まれる核酸をそれぞれ発現可能に含む、RNA発現ベクター。
〔12〕上記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載のRNAまたはRNAの組合せを含む、医薬または組合せ医薬。
〔13〕上記〔11〕に記載のRNA発現ベクターを含む、医薬または組合せ医薬。
〔14〕上記〔1〕〜〔9〕に記載のRNAまたはRNAの組合せを安定発現する、真核細胞。
〔15〕上記〔14〕に記載の真核細胞を含む、細胞製剤。
図1は、ヒトSCN1A遺伝子の翻訳開始点およびその上流の領域を示す模式図である。ヒトSCN1A遺伝子の複数の転写産物と、設計したgRNAの標的配列の位置的関係が示されている。 図2は、マウスScn1a遺伝子の翻訳開始点およびその上流の領域を示す模式図である。マウスScn1a遺伝子の複数の転写産物と、設計したgRNAの標的配列の位置的関係が示されている。 図3は、CRISPR−onシステムを用いたヒトSCN1A遺伝子の転写産物の増加効果をヒト培養細胞(HEK293FT)における半定量RT-PCRにより示した図である。 図4は、CRISPR−onシステムを用いたマウスScn1a遺伝子の転写産物の増加効果をマウス培養細胞(Neuro2A)における半定量RT-PCRにより示した図である。 図5は、CRISPR−onシステムを用いたマウスScn1a遺伝子の転写産物の増加効果をノーザンブロット解析により示した図である。マウス培養細胞(Neuro2A)においてマウスScn1a遺伝子に対して4つのgRNAを組み合わせて用いて転写を活性化させると、当該遺伝子の転写産物(mRNA)全長の発現量を大幅に増加させることができた。
発明の具体的な説明
本明細書では、「CRISPR/Cas9システム」とは、真性細菌や古細菌が有する獲得免疫として発見されたClustered regularly interspaced short palindromic repeats/CRISPR-associated protein (CRISPR/Cas)システムをゲノム編集に転用したシステムである(Jinek, M., et al. (2012) Science 337, 816-821)。
具体的には、上記細菌のCRISPR領域と呼ばれるゲノム領域には、断片化された外来DNA(20bp)が取り込まれたカセットが複数リピートしており、各カセットには、異なる外来DNAが取り込まれている。
各カセットは、外来生物(例えば、ファージなど)のDNAが細胞内に取り込まれた場合にこれを断片化してCRISPR領域に組み込むことで生じると考えられる。
各カセットは、CRISPR RNA(crRNA)をコードしている。crRNAは、プロトスペーサー配列と後述するtrans−crRNA(tracrRNA)と相補的な配列とを有する。プロトスペーサー配列は、20ヌクレオチド長であり、標的となるDNA配列と相補的な配列を有する。プロトスペーサー配列は、標的配列と100%の相補性を有している必要はなく、5’末端から6ヌクレオチドの領域ではミスマッチが許容される。crRNAは、相補的部分を介して別に転写されるtrans−crRNA(tracrRNA)と複合体を形成する。crRNAとtracrRNAとの複合体は、Cas9エンドヌクレアーゼとさらなる複合体を形成する。crRNA中のプロトスペーサー部分は、外来DNAと相補的にハイブリッド形成を行い、これによりCas9エンドヌクレアーゼを外来DNAの標的配列に先導する。外来DNAは標的配列の部位においてCas9エンドヌクレアーゼにより切断され、CRISPR/Cas9システムは、外来DNAから宿主を防御する。
このようにCRISPR/Cas9システムは、真性細菌や古細菌が新しい外来DNAに対する獲得免疫として機能することで発見されたものであるが、外来DNAからなるプロトスペーサーを設計することで、哺乳動物のゲノムを配列依存的に切断できること、およびそれにより、哺乳動物のゲノムを編集できることから、CRISPR/Cas9システムは、ゲノム編集システムとして急速に世界に広がったものである。
現在主に使用されているシステムは、化膿レンサ球菌(S. pyogenes)に由来する第2種のCRISPR/Cas9システムである。
本明細書では、「Cas9」とは、CRISPR/Cas9システムにおいて、ゲノムDNAなどのDNAを切断する活性を有するエンドヌクレアーゼを意味する。本明細書では、「Cas9」は、「Cas9エンドヌクレアーゼ」と同義であり、相互に互換的に用いられる。Cas9エンドヌクレアーゼは、上述の通りcrRNAの5’側から20bpのプロトスペーサーにより、標的配列と相補的にはハイブリッド形成し、Cas9エンドヌクレアーゼは、標的配列に導かれる。Cas9エンドヌクレアーゼは、2つのエンドヌクレアーゼドメイン(RuvC1様ヌクレアーゼドメインとHNH様ヌクレアーゼドメイン)を有し、これらがそれぞれ2本鎖DNAのそれぞれの鎖を切断し、結果として標的配列において2本鎖切断をDNAに導入する。CRISPR/Cas9システムは、エンドヌクレアーゼであるCas9を配列特異的に外来DNAに先導し、これにより外来DNAを分解することができる。
標的配列は、一般的に、その直後にprotospacer adjacent motif(PAM)を有することが知られている。PAM配列は、化膿レンサ球菌(S. pyogenes)の場合には、5’−NGG(ここでNは、A、T、GまたはCである)である。PAM配列は、Cas9エンドヌクレアーゼの種に依存して異なる。
本明細書では、「dCas9」とは、Cas9エンドヌクレアーゼが有する2つのエンドヌクレアーゼドメインのエンドヌクレアーゼ活性が不活化されたCas9である。エンドヌクレアーゼを不活化させるために10DAおよびH840Aに対応するアミノ酸変異がCas9に導入され得る。crRNAとtracrRNAによりdCas9は、ゲノムDNA上の標的配列に先導されるが、エンドヌクレアーゼ活性を有しないためにゲノムDNAを切断しない。
dCas9は、転写活性化タンパク質と連結させることで、転写活性化タンパク質を配列特異的にゲノムDNA上にリクルートさせることに用いることができる。
本明細書では、「crRNA」とは、CRISPR/Cas9システムにおけるcrRNAを意味し、プロトスペーサー部分と、tracrRNAとハイブリッド形成する部分とを有するRNAである。細菌ゲノム上のCRISPR領域からpre−crRNAとして産生され、RNaseIIIなどの働きにより成熟型crRNAにプロセッシングされる。crRNAは、Cas9エンドヌクレアーゼまたはdCas9を標的配列に先導するために、tracrRNAとの複合体形成を必要とする。crRNAのプロトスペーサー配列は、標的配列またはその相補鎖と相補的な配列を有する(ただし、1〜数塩基のミスマッチが許容される)。
本明細書では、「tracrRNA」とは、CRISPR/Cas9システムにおけるtracrRNAを意味し、crRNAとハイブリッド形成する。細菌ゲノム上のCRISPR領域からpre−trasrRNAとして転写され、RNaseIIIなどの働きにより成熟型tracrRNAにプロセッシングされる。
本明細書では、「gRNA」(ガイドRNA)とは、crRNAとtracrRNAとを連結させて得た単鎖RNAであり、単鎖ガイドRNA(sgRNA)と呼ばれることもある。gRNAは、生理的条件下でcrRNA部分とtracrRNA部分がハイブリッド形成してその連結部においてヘアピン構造を形成する。Cas9は、ヘアピン構造を形成したgRNAと複合体を形成できる。gRNAにおいては、連結させるcrRNAとtracrRNAとは、それぞれ全長であってもよいし、成熟型であってもよいし、成熟型の配列からさらに不要な配列(主に3’側)を除いた成熟型配列の部分配列であってもよいことが知られている(Jinek, M., et al. (2012) Science 337, 816-821)。gRNAは、分子中にcrRNAとtracrRNAとを有し、Cas9エンドヌクレアーゼまたはdCas9と結合することができるので、gRNA単独でCas9エンドヌクレアーゼまたはdCas9を標的配列に先導することができる。
本明細書では、「CRISPR−on」とは、エンドヌクレアーゼ活性を失活させたCas9(dCas9)と転写活性化タンパク質との融合タンパク質を用いて、配列特異的に転写活性化タンパク質をプロモーター領域に結合させ、これにより当該プロモーターにより駆動される遺伝子の発現を活性化させるシステムをいう。CRISPR−onシステムで用い得るdCas9融合タンパク質としては、特に限定されないが例えば、dCas9−VP48融合タンパク質、dCas9−VP64融合タンパク質、dCas9−VP96、dCas9−VP160融合タンパク質、dCas−VPR融合タンパク質が挙げられる。
本明細書では、「対象」とは、哺乳動物を意味し、特にヒトであり得る。
本明細書では、「処置」とは、「治療」と「予防」とを含む意味で用いられる。従って、本明細書において「ドラベ症候群を処置することに用いる医薬組成物」とは、ドラベ症候群を治療または予防することに用いる医薬組成物(例えば、ドラベ症候群の治療剤または予防剤)を意味する。
本明細書では、「治療」とは、疾患若しくは障害の治療、治癒、防止若しくは、寛解の改善、または、疾患若しくは障害の進行速度の低減を意味する。本明細書では、「予防」とは、疾患もしくは病態の発症の可能性を低下させる、または疾患もしくは病態の発症を遅らせることを意味する。
本明細書では、「SCN1A遺伝子」とは、電位依存性ナトリウムチャネルのαサブユニットの一つであるNav1.1をコードする遺伝子である。Nav1.1は、ヒトでは中枢神経系に発現することで知られる。SCNA1遺伝子の変異は、熱性痙攣+(Generalized Epilepsy with Febrile Seizures Plus: GEFS+)やドラベ症候群(以前は、「乳児重症ミオクロニーてんかん」とも呼ばれたがミオクロニーを示さない場合があることからこの呼び方はされなくなってきている)を含む幅広いてんかん患者において認められている。
Scn1aのナンセンス変異R1407Xを導入したノックインマウスを用いた研究からScn1a遺伝子がてんかんの原因となっていることを明らかにしている(Ogiwara et al., J. Neuroscie., 27: 5903-5914, 2007)。また、抑制性神経細胞のみでScn1aをヘテロノックアウトしたコンディショナルノックアウトマウスにおいて、非常に重篤なてんかん症状が生じることが明らかとなっている(Ogiwara et al., Hum. Mol. Genet., 22: 4784-4804, 2013)。また、Scn1a遺伝子変異が、社会性行動の低下を生じることが明らかとなっている(Ito et al., Neurobiol. Dis., 49: 29-40, 2013)。
本明細書では、用語「SCN1A遺伝子」には、ヒトSCN1A遺伝子に加えてマウスおよびその他の種のSCN1A遺伝子のオーソログが含まれる意味で用いられる。
本明細書では、「SCN1A遺伝子のプロモーター領域」とは、SCN1A遺伝子の転写活性化または抑制に関する領域を意味する。ヒトSCN1A遺伝子では、翻訳開始点の上流にエクソンA、エクソンB、エクソンCおよびエクソンDの4つの非コーディングエクソン(non-coding exons)の存在が知られている(Nakayama T., et al., Hum. Mutat., 31(7): 820-829, 2010)。
本明細書では、「組合せ」とは、2つ以上の異なる成分の組合せを意味する。組合せにおいて、成分は、別々の形態で含まれていてもよいし、混合されていてもよい。
本発明者らは、SCN1A遺伝子のプロモーター領域の複数の箇所を標的とするCRISPR−onのシステムによりSCN1A遺伝子の転写を活性化できることを明らかにした。特に、本発明者らは、SCN1A遺伝子のプロモーター領域の4つ以上の箇所を標的とするCRISPR−onのシステムによりSCN1A遺伝子の転写を活性化できることを明らかにした。このCRISPR−onシステムでは、dCas−転写活性化タンパク質融合タンパク質を共通のコンポーネントとして用いることができる。dCas−転写活性化タンパク質融合タンパク質は核移行シグナルを有し得る。そして、このCRISPR−onシステムでは、標的配列に対応したcrRNAまたはgRNAを標的配列の数だけ提供することにより、SCN1A遺伝子の転写を活性化できる。
したがって、本発明によれば、SCN1A遺伝子のプロモーター領域上に存在するCas9エンドヌクレアーゼ結合部位の少なくとも1箇所、2箇所、3箇所、または4箇所以上を標的とするgRNAまたはcrRNAの組合せである、RNAの組合せが提供される。Cas9エンドヌクレアーゼ結合部位は、上述の通り、PAM配列の直前にのみ存在し得るので、当業者であればCas9エンドヌクレアーゼが要求するPAM配列を考慮して、プロモーター領域の配列の中から決定することができる。
ヒトにおいて、SCN1A遺伝子のプロモーター領域のうち、特にエクソンAの上流−1〜−600の領域(以下、「プロモーター領域1」と呼ぶことがある)およびエクソンBの上流−1〜−600の領域(以下、「プロモーター領域2」と呼ぶことがある)上に存在するCas9エンドヌクレアーゼ結合部位が標的となり得る。したがって、本発明によれば、SCN1A遺伝子のプロモーター領域のエクソンAの上流−1〜−600の領域および/またはエクソンBの上流−1〜−600の領域上に存在する少なくとも1箇所、2箇所、3箇所、または4箇所以上のCas9エンドヌクレアーゼ結合部位を標的とするgRNAまたはcrRNAの組合せである、RNAの組合せが提供される。ここで、エクソンAは、SCN1A転写産物の例えばバリアント1(Genbank登録番号:NM_001165963.1)の1番目の塩基から開始する領域である。また、エクソンBは、SCN1A転写産物の例えばバリアント3(Genbank登録番号:NM_001165964.1
)の1番目の塩基から開始する領域である。
本発明によればまた、SCN1A遺伝子のプロモーター領域1上に存在するCas9エンドヌクレアーゼ結合部位の少なくとも1箇所、2箇所、3箇所、または4箇所以上を標的とするgRNAまたはcrRNAの組合せである、RNAの組合せが提供される。
本発明によればさらに、SCN1A遺伝子のプロモーター領域2上に存在するCas9エンドヌクレアーゼ結合部位の少なくとも1箇所、2箇所、3箇所、または4箇所以上を標的とするgRNAまたはcrRNAの組合せである、RNAの組合せが提供される。
本発明では、プロモーター領域1のうち、配列番号1〜4で示される配列のいずれか1、2、3または4つを標的配列とするgRNAの組合せおよびcrRNAの組合せが提供される。本発明ではまた、プロモーター領域2のうち、配列番号5〜8で示される配列のいずれか1、2、3または4つを標的配列とするgRNAおよびcrRNAが提供される。本発明ではさらにまた、プロモーター領域のうち、配列番号1〜8で示される配列のいずれか1、2、3、4、5、6、7、または8つを標的配列とするgRNAおよびcrRNAが提供される。
本発明によれば、
以下、[1A]〜[3A]のいずれかのRNAまたはRNAの組合せが提供される:
[1A]以下(1A)〜(4A)からなる群から選択される1つのRNA若しくは2〜4つのRNAの組合せ(特に4つのRNAの組合せ)、
[2A]以下(5A)〜(8A)からなる群から選択される1つのRNA若しくは2〜4つのRNAの組合せ(特に4つのRNAの組合せ)、または
[3A]以下(1A)〜(8A)からなる群から選択される2〜8つのRNAの組合せ(特に4つ以上のRNAの組合せ):
(1A)配列番号1で示される配列を標的とするgRNA、
(2A)配列番号2で示される配列を標的とするgRNA、
(3A)配列番号3で示される配列を標的とするgRNA、
(4A)配列番号4で示される配列を標的とするgRNA、
(5A)配列番号5で示される配列を標的とするgRNA、
(6A)配列番号6で示される配列を標的とするgRNA、
(7A)配列番号7で示される配列を標的とするgRNA、および
(8A)配列番号8で示される配列を標的とするgRNA。
本発明によれば、
以下、[1B]〜[3B]のいずれかのRNAまたはRNAの組合せが提供される:
[1B]以下(1B)〜(4B)からなる群から選択される1つのRNA若しくは2〜4つのRNAの組合せ(特に4つのRNAの組合せ)、
[2B]以下(5B)〜(8B)からなる群から選択される1つのRNA若しくは2〜4つのRNAの組合せ(特に4つのRNAの組合せ)、または
[3B]以下(1B)〜(8B)からなる群から選択される2〜8つのRNAの組合せ(特に4つ以上のRNAの組合せ):
(1B)配列番号1で示される配列を標的とするcrRNA、
(2B)配列番号2で示される配列を標的とするcrRNA、
(3B)配列番号3で示される配列を標的とするcrRNA、
(4B)配列番号4で示される配列を標的とするcrRNA、
(5B)配列番号5で示される配列を標的とするcrRNA、
(6B)配列番号6で示される配列を標的とするcrRNA、
(7B)配列番号7で示される配列を標的とするcrRNA、および
(8B)配列番号8で示される配列を標的とするcrRNA。
以下、[1B’]〜[3B’]のいずれかのRNAまたはRNAの組合せが提供される:
[1B’]以下(1B)〜(4B)からなる群から選択される1つのRNA若しくは2〜4つのRNAの組合せ(特に4つのRNAの組合せ)とtracrRNAをコードする核酸との組合せ、
[2B’]以下(5B)〜(8B)からなる群から選択される1つのRNA若しくは2〜4つのRNAの組合せ(特に4つのRNAの組合せ)とtracrRNAをコードする核酸との組合せ、または
[3B’]以下(1B)〜(8B)からなる群から選択される2〜8つのRNAの組合せ(特に4つ以上のRNAの組合せ)とtracrRNAをコードする核酸との組合せ:
(1B)配列番号1で示される配列を標的とするcrRNA、
(2B)配列番号2で示される配列を標的とするcrRNA、
(3B)配列番号3で示される配列を標的とするcrRNA、
(4B)配列番号4で示される配列を標的とするcrRNA、
(5B)配列番号5で示される配列を標的とするcrRNA、
(6B)配列番号6で示される配列を標的とするcrRNA、
(7B)配列番号7で示される配列を標的とするcrRNA、および
(8B)配列番号8で示される配列を標的とするcrRNA。
本発明では、gRNAおよびcrRNAは、その5’末端に標的配列またはその相補鎖に相補的なRNA配列を有し得る。gRNAおよびcrRNAが有する標的配列またはその相補鎖に相補的なRNA配列は、標的配列またはその相補鎖の配列に基づいて設計することができる。
本発明では、本発明のgRNAおよびcrRNAをコードする核酸が提供される。本発明ではまた、本発明の複数のgRNAそれぞれをコードする核酸の組合せおよび複数のcrRNAそれぞれをコードする核酸の組合せが提供される。ここで、核酸の組合せは、複数のgRNAのそれぞれをコードする核酸の組合せを意味する。
すなわち、本発明によれば、SCN1A遺伝子のプロモーター領域上に存在するCas9エンドヌクレアーゼ結合部位の少なくとも1箇所、2箇所、3箇所、または4箇所以上を標的とするgRNAそれぞれをコードする核酸の組合せまたはcrRNAそれぞれをコードする核酸の組合せである、核酸の組合せが提供される。
本発明によれば、SCN1A遺伝子のプロモーター領域1および/またはプロモーター領域2上に存在するCas9エンドヌクレアーゼ結合部位の少なくとも1箇所、2箇所、3箇所、または4箇所以上を標的とするgRNAそれぞれをコードする核酸の組合せまたはcrRNAそれぞれをコードする核酸の組合せである、核酸の組合せが提供される。
本発明によればまた、SCN1A遺伝子のプロモーター領域1上に存在するCas9エンドヌクレアーゼ結合部位の少なくとも1箇所、2箇所、3箇所、または4箇所以上を標的とするgRNAそれぞれをコードする核酸の組合せまたはcrRNAそれぞれをコードする核酸の組合せである、核酸の組合せが提供される。
本発明によればさらに、SCN1A遺伝子のプロモーター領域2上に存在するCas9エンドヌクレアーゼ結合部位の少なくとも1箇所、2箇所、3箇所、または4箇所以上を標的とするgRNAそれぞれをコードする核酸の組合せまたはcrRNAそれぞれをコードする核酸の組合せである、核酸の組合せが提供される。
本発明によれば、
以下、[1A]〜[3A]のいずれかのRNAそれぞれをコードする核酸または核酸の組合せが提供される:
[1A]以下(1A)〜(4A)からなる群から選択される1つのRNA若しくは2〜4つのRNAの組合せ(特に4つのRNAの組合せ)、
[2A]以下(5A)〜(8A)からなる群から選択される1つのRNA若しくは2〜4つのRNAの組合せ(特に4つのRNAの組合せ)、または
[3A]以下(1A)〜(8A)からなる群から選択される2〜8つのRNAの組合せ(特に4つ以上のRNAの組合せ):
(1A)配列番号1で示される配列を標的とするgRNA、
(2A)配列番号2で示される配列を標的とするgRNA、
(3A)配列番号3で示される配列を標的とするgRNA、
(4A)配列番号4で示される配列を標的とするgRNA、
(5A)配列番号5で示される配列を標的とするgRNA、
(6A)配列番号6で示される配列を標的とするgRNA、
(7A)配列番号7で示される配列を標的とするgRNA、および
(8A)配列番号8で示される配列を標的とするgRNA。
本発明によれば、
以下、[1B]〜[3B]のいずれかのRNAそれぞれをコードする核酸または核酸の組合せが提供される:
[1B]以下(1B)〜(4B)からなる群から選択される1つのRNA若しくは2〜4つのRNAの組合せ(特に4つのRNAの組合せ)、
[2B]以下(5B)〜(8B)からなる群から選択される1つのRNA若しくは2〜4つのRNAの組合せ(特に4つのRNAの組合せ)、または
[3B]以下(1B)〜(8B)からなる群から選択される2〜8つのRNAの組合せ(特に4つ以上のRNAの組合せ):
(1B)配列番号1で示される配列を標的とするcrRNA、
(2B)配列番号2で示される配列を標的とするcrRNA、
(3B)配列番号3で示される配列を標的とするcrRNA、
(4B)配列番号4で示される配列を標的とするcrRNA、
(5B)配列番号5で示される配列を標的とするcrRNA、
(6B)配列番号6で示される配列を標的とするcrRNA、
(7B)配列番号7で示される配列を標的とするcrRNA、および
(8B)配列番号8で示される配列を標的とするcrRNA。
以下、[1B’]〜[3B’]のいずれかのRNAそれぞれをコードする核酸の組合せが提供される:
[1B’]以下(1B)〜(4B)からなる群から選択される1つのRNA若しくは2〜4つのRNAの組合せ(特に4つのRNAの組合せ)とtracrRNAをコードする核酸との組合せ、
[2B’]以下(5B)〜(8B)からなる群から選択される1つのRNA若しくは2〜4つのRNAの組合せ(特に4つのRNAの組合せ)とtracrRNAをコードする核酸との組合せ、または
[3B’]以下(1B)〜(8B)からなる群から選択される2〜8つのRNAの組合せ(特に4つ以上のRNAの組合せ)とtracrRNAをコードする核酸との組合せ:
(1B)配列番号1で示される配列を標的とするcrRNA、
(2B)配列番号2で示される配列を標的とするcrRNA、
(3B)配列番号3で示される配列を標的とするcrRNA、
(4B)配列番号4で示される配列を標的とするcrRNA、
(5B)配列番号5で示される配列を標的とするcrRNA、
(6B)配列番号6で示される配列を標的とするcrRNA、
(7B)配列番号7で示される配列を標的とするcrRNA、および
(8B)配列番号8で示される配列を標的とするcrRNA。
本発明によれば、本発明のRNAまたはRNAの組合せを細胞に発現させる、RNA発現ベクターが提供される。RNA発現ベクター上では、gRNAまたはcrRNAをコードする核酸が、RNA発現プロモーターに作動可能に連結されている。RNA発現プロモーターとしては、特に限定されないが例えば、RNAポリメラーゼIIIのプロモーターを用いることができ、例えば、U6プロモーターを用いることができる。
本発明のRNA発現ベクターは、1つのRNA発現ベクター上に複数の核酸が発現可能に組み込まれ、本発明のRNAの組合せを発現できるベクターとすることができる。
ある態様では、複数のRNA発現ベクターは、複数のRNA発現ベクターの組合せであり、当該複数のRNA発現ベクターを組み合わせることにより、本発明のRNAの組合せを発現できるベクターの組合せであってもよい。この態様では、各RNA発現ベクターがそれぞれ異なる1つのRNAを発現するものであってもよい。
例えば、上記[1A]に定義されたRNAの組合せは、1つのRNA発現ベクター上に組み込まれていてもよいし、複数のRNA発現ベクター上に組み込まれていてもよいし、それぞれのRNAが別のRNA発現ベクター上に組み込まれていてもよい。
例えば、上記[2A]に定義されたRNAの組合せは、1つのRNA発現ベクター上に組み込まれていてもよいし、複数のRNA発現ベクター上に離れて組み込まれていてもよいし、それぞれのRNAが別のRNA発現ベクター上に組み込まれていてもよい。
例えば、上記[3A]に定義されたRNAの組合せは、1つのRNA発現ベクター上に組み込まれていてもよいし、複数のRNA発現ベクター上に離れて組み込まれていてもよいし、それぞれのRNAが別のRNA発現ベクター上に組み込まれていてもよい。上記[3A]に定義されたRNAの組合せは、crRNAは一つのRNA発現ベクター上に組み込まれ、tracrRNAは別のRNA発現ベクター上に組み込まれていてもよい。
本発明によれば、例えば、RNA発現ベクターは、SCN1A遺伝子のプロモーター領域上に存在するCas9エンドヌクレアーゼ結合部位の少なくとも1箇所、2箇所、3箇所、または4箇所以上を標的とするgRNAそれぞれをコードする核酸の組合せまたはcrRNAそれぞれをコードする核酸の組合せである、核酸の組合せを含む。
本発明によればまた、RNA発現ベクターは、例えば、SCN1A遺伝子のプロモーター領域1および/またはプロモーター領域2上に存在するCas9エンドヌクレアーゼ結合部位の少なくとも1箇所、2箇所、3箇所、または4箇所以上を標的とするgRNAそれぞれをコードする核酸の組合せまたはcrRNAそれぞれをコードする核酸の組合せである、核酸の組合せを含む。
本発明によればまた、RNA発現ベクターは、例えば、SCN1A遺伝子のプロモーター領域1上に存在するCas9エンドヌクレアーゼ結合部位の少なくとも1箇所、2箇所、3箇所、または4箇所以上を標的とするgRNAそれぞれをコードする核酸の組合せまたはcrRNAそれぞれをコードする核酸の組合せである核酸の組合せを含む。核酸は、真核細胞内で発現可能にRNA発現ベクターに含まれている。
本発明によればさらに、RNA発現ベクターは、例えば、SCN1A遺伝子のプロモーター領域2上に存在するCas9エンドヌクレアーゼ結合部位の少なくとも1箇所、2箇所、3箇所、または4箇所以上を標的とするgRNAそれぞれをコードする核酸の組合せまたはcrRNAそれぞれをコードする核酸の組合せである核酸の組合せを含む。核酸は、真核細胞内で発現可能にRNA発現ベクターに含まれている。
本発明によれば、下記[4A]〜[6A]のいずれかに記載のRNA発現ベクターが提供される:
[4A]以下(1A)〜(4A)からなる群から選択される1つのRNA発現ベクターもしくは2以上のRNA発現ベクターの組合せ(特に4つのRNA発現ベクターの組合せ)、
[5A]以下(5A)〜(8A)からなる群から選択される1つのRNA発現ベクターもしくは2以上のRNA発現ベクターの組合せ(特に4つのRNA発現ベクターの組合せ)、または
[6A]以下(1A)〜(8A)からなる群から選択される2〜8つのRNA発現ベクターの組合せ(特に4つ以上のRNA発現ベクターの組合せ):
(1A)配列番号1で示される配列を標的とするgRNAを発現可能にコードする遺伝子を含むRNA発現ベクター、
(2A)配列番号2で示される配列を標的とするgRNAを発現可能にコードする遺伝子を含むRNA発現ベクター、
(3A)配列番号3で示される配列を標的とするgRNAを発現可能にコードする遺伝子を含むRNA発現ベクター、
(4A)配列番号4で示される配列を標的とするgRNAを発現可能にコードする遺伝子を含むRNA発現ベクター、
(5A)配列番号5で示される配列を標的とするgRNAを発現可能にコードする遺伝子を含むRNA発現ベクター、
(6A)配列番号6で示される配列を標的とするgRNAを発現可能にコードする遺伝子を含むRNA発現ベクター、
(7A)配列番号7で示される配列を標的とするgRNAを発現可能にコードする遺伝子を含むRNA発現ベクター、および
(8A)配列番号8で示される配列を標的とするgRNAを発現可能にコードする遺伝子を含むRNA発現ベクター。
本発明によれば、下記[4B]〜[6B]のいずれかに記載のRNA発現ベクターまたはRNA発現ベクターの組合せが提供される:
[4B]以下(1B)〜(4B)からなる群から選択される1つのRNA発現ベクターもしくは2以上のRNA発現ベクターの組合せ(特に4つのRNA発現ベクターの組合せ)、
[5B]以下(5B)〜(8B)からなる群から選択される1つのRNA発現ベクターもしくは2以上のRNA発現ベクターの組合せ(特に4つのRNA発現ベクターの組合せ)、または
[6B]以下(1B)〜(8B)からなる群から選択される2〜8つのRNA発現ベクターの組合せ(特に4つ以上のRNA発現ベクターの組合せ):
(1B)配列番号1で示される配列を標的とするcrRNAを発現可能にコードする遺伝子を含むRNA発現ベクター、
(2B)配列番号2で示される配列を標的とするcrRNAを発現可能にコードする遺伝子を含むRNA発現ベクター、
(3B)配列番号3で示される配列を標的とするcrRNAを発現可能にコードする遺伝子を含むRNA発現ベクター、
(4B)配列番号4で示される配列を標的とするcrRNAを発現可能にコードする遺伝子を含むRNA発現ベクター、
(5B)配列番号5で示される配列を標的とするcrRNAを発現可能にコードする遺伝子を含むRNA発現ベクター、
(6B)配列番号6で示される配列を標的とするcrRNAを発現可能にコードする遺伝子を含むRNA発現ベクター、
(7B)配列番号7で示される配列を標的とするcrRNAを発現可能にコードする遺伝子を含むRNA発現ベクター、および
(8B)配列番号8で示される配列を標的とするcrRNAを発現可能にコードする遺伝子を含むRNA発現ベクター。
本発明によれば、下記[4C]〜[6C]のいずれかに記載のRNA発現ベクターまたはRNA発現ベクターの組合せが提供される:
[4C]以下(1C)〜(4C)からなる群から選択される1つのRNA発現ベクターもしくは2以上のRNA発現ベクターの組合せ(特に4つのRNA発現ベクターの組合せ)、
[5C]以下(5C)〜(8C)からなる群から選択される1つのRNA発現ベクターもしくは2以上のRNA発現ベクターの組合せ(特に4つのRNA発現ベクターの組合せ)、または
[6C]以下(1C)〜(8C)からなる群から選択される2〜8つのRNA発現ベクターの組合せ(特に4つ以上のRNA発現ベクターの組合せ):
(1C)配列番号1で示される配列を標的とするcrRNAとtracrRNAとを発現可能にコードする遺伝子を含むRNA発現ベクター、
(2C)配列番号2で示される配列を標的とするcrRNAとtracrRNAとを発現可能にコードする遺伝子を含むRNA発現ベクター、
(3C)配列番号3で示される配列を標的とするcrRNAとtracrRNAとを発現可能にコードする遺伝子を含むRNA発現ベクター、
(4C)配列番号4で示される配列を標的とするcrRNAとtracrRNAとを発現可能にコードする遺伝子を含むRNA発現ベクター、
(5C)配列番号5で示される配列を標的とするcrRNAとtracrRNAとを発現可能にコードする遺伝子を含むRNA発現ベクター、
(6C)配列番号6で示される配列を標的とするcrRNAとtracrRNAとを発現可能にコードする遺伝子を含むRNA発現ベクター、
(7C)配列番号7で示される配列を標的とするcrRNAとtracrRNAとを発現可能にコードする遺伝子を含むRNA発現ベクター、および
(8C)配列番号8で示される配列を標的とするcrRNAとtracrRNAとを発現可能にコードする遺伝子を含むRNA発現ベクター。
本発明によれば、下記[4D]〜[6D]のいずれかに記載のRNA発現ベクターまたはRNA発現ベクターの組合せとtracrRNAを発現する発現ベクターとの組合せが提供される:
[4D]以下(1D)〜(4D)からなる群から選択される1つのRNA発現ベクターもしくは2以上のRNA発現ベクターの組合せ(特に4つのRNA発現ベクターの組合せ)、
[5D]以下(5D)〜(8D)からなる群から選択される1つのRNA発現ベクターもしくは2以上のRNA発現ベクターの組合せ(特に4つのRNA発現ベクターの組合せ)、または
[6D]以下(1D)〜(8D)からなる群から選択される2〜8つのRNA発現ベクターの組合せ(特に4つ以上のRNA発現ベクターの組合せ):
(1D)配列番号1で示される配列を標的とするcrRNAを発現可能にコードする遺伝子を含むRNA発現ベクター、
(2D)配列番号2で示される配列を標的とするcrRNAを発現可能にコードする遺伝子を含むRNA発現ベクター、
(3D)配列番号3で示される配列を標的とするcrRNAを発現可能にコードする遺伝子を含むRNA発現ベクター、
(4D)配列番号4で示される配列を標的とするcrRNAを発現可能にコードする遺伝子を含むRNA発現ベクター、
(5D)配列番号5で示される配列を標的とするcrRNAを発現可能にコードする遺伝子を含むRNA発現ベクター、
(6D)配列番号6で示される配列を標的とするcrRNAを発現可能にコードする遺伝子を含むRNA発現ベクター、
(7D)配列番号7で示される配列を標的とするcrRNAを発現可能にコードする遺伝子を含むRNA発現ベクター、および
(8D)配列番号8で示される配列を標的とするcrRNAを発現可能にコードする遺伝子を含むRNA発現ベクター。
本発明によれば、RNA発現ベクターは、例えば、プラスミドベクターまたはウイルスベクターとすることができる。ウイルスベクターとしては、レンチウイルスベクター、麻疹ウイルスベクター、センダイウイルスベクターなどの様々な遺伝子導入可能なベクターを用いることができる。当業者であれば、適宜ベクターを選択して、本発明のgRNAおよびcrRNAを発現するベクターを構築することができる。
本発明によれば、本発明のgRNAもしくはgRNAの組合せまたはcrRNAもしくはcrRNAの組合せを含む、組合せ医薬が提供される。本発明では、組合せ医薬は、複数のgRNAまたはcrRNAそれぞれを別々の形態で含む医薬、すなわち、医薬組成物の組合せであってもよいし、複数のgRNAまたはcrRNAが混合された形態で含む1つの医薬、すなわち医薬組成物であってもよい。
本発明では、本発明のRNA発現ベクターを含む医薬または組合せ医薬が提供される。本発明では、組合せ医薬は、gRNAまたはcrRNAそれぞれを発現する複数のRNA発現ベクターを別々の形態で含む医薬、すなわち、医薬組成物の組合せであってもよいし、複数のgRNAまたはcrRNAそれぞれを発現する複数のRNA発現ベクターが混合された形態で含む1つの医薬、すなわち医薬組成物であってもよい。
本発明では、医薬組成物は、製薬的に許容できる賦形剤、担体または希釈剤などをさらに含んでなり得る。
「製薬的に許容可能な」とは、医薬業界で通常使用される意味を有し、場合により、ヒトに投与された場合にアレルギー反応または同様の有害反応を生じさせない分子的実体物質または組成物等の使用が可能であることを表す。典型的に、そのような組成物は、注射剤として、液体溶液または懸濁液として調製され、 注射前の液体中での溶解または懸濁に好適な固体剤形を調製することもできる。調製物は乳化することもできる。
賦形剤、担体または希釈剤としては、例えば、任意の溶媒、分散媒、ビヒクル、コーティング、希釈剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張(isotonic)および吸収遅延剤、バッファー、担体溶液、懸濁液、コロイド、などが含まれる。リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸塩のバッファー;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10アミノ酸残基未満)ポリペプチド;タンパク質(例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン);疎水性ポリマー(例えばポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリシン);グルコース、マンノース又はデキストランを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;マンニトール又はソルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の塩形成対イオン;及び/又は非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシアルキレン系)といった例も挙げられる。医薬活性物質のためのそのような媒体および物質の使用は当技術分野で周知である。任意の慣用の媒体または物質が活性成分と不適合である場合を除き、治療用組成物でのその使用が想定される。補助活性成分を組成物に組み入れることもできる。
本発明の医薬組成物は、製剤に使用される各種の界面活性剤を使用してもよい。界面活性剤の種類は特に限定されず、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、または両性界面活性剤等が挙げられ、中でもノニオン系界面活性剤が好ましい。ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル、またはポリオキシエチレンモノアリールエーテル等のポリオキシアルキレン系ノニオン界面活性剤;多価アルコール(例えばソルビタン、ソルビトール)の高級脂肪酸エステル;および多価アルコールの高級脂肪酸エステルにエチレンオキシドを重合付加させたもの;等が挙げられる。
本発明の組合せ医薬は、dCas9と転写活性化タンパク質との融合タンパク質またはdCas9と転写活性化タンパク質との融合タンパク質の発現ベクターを、別々の形態で、または混合した形態で、さらに含んでいてもよい。本発明の組合せ医薬は、crRNAが前記融合タンパク質と複合体を形成するために、tracrRNAまたはtracrRNAの発現ベクターを、別々の形態で、または混合した形態で、さらに含んでいてもよい。
本発明のRNAの組合せは、dCas9と転写活性化タンパク質との融合タンパク質と組み合わされて提供されてもよい。したがって、本発明では、本発明のRNAの組合せとdCas9と転写活性化タンパク質との融合タンパク質との組合せが提供される。
本発明のDNAの組合せおよびRNA発現ベクターの組合せは、dCas9と転写活性化タンパク質との融合タンパク質をコードする核酸または該核酸を発現する発現ベクターと組み合わされて提供されてもよい。したがって、本発明では、本発明のDNAの組合せまたはRNA発現ベクターの組合せと、dCas9と転写活性化タンパク質との融合タンパク質をコードする核酸または該核酸を発現する発現ベクターとの組合せが提供される。
本発明のRNAの組合せ、DNAの組合せ、およびRNA発現ベクターは、これらを含むCRISPR−onシステムとして提供されてもよい。CRISPR−onシステムは、例えば、本発明のRNAの組合せ、DNAの組合せ、およびRNA発現ベクターに加えて、dCas9と転写活性化タンパク質との融合タンパク質を含み得る。
SCN1A遺伝子の発現量は、当業者に周知の発現量測定法により決定することができる。例えば、遺伝子発現は、定量的PCR法、ノーザンブロット法、抗SCN1Aタンパク質抗体を用いたELISA、ウェスタンブロット法、免疫組織学染色などの様々な方法により確認することができる。SCN1A遺伝子の発現量が増加したか否かは、SCN1A遺伝子導入前後でその発現量を比較することにより決定することができ、所望により、SCN1A遺伝子を発現することが知られる細胞(例えば、健常者の細胞)と比較して決定してもよい。
本発明では、本発明のgRNAまたはgRNAの組合せは、dCas9と転写活性化タンパク質との融合タンパク質と組み合わせて細胞内に導入されると、gRNAと前記融合タンパク質との複合体を形成する。形成された複合体は、細胞内のゲノムDNA上の標的配列に導かれ、SCN1A遺伝子の転写を活性化する。
本発明では、本発明のcrRNAまたはcrRNAの組合せは、tracrRNAおよびdCas9と転写活性化タンパク質との融合タンパク質と組み合わせて細胞内に導入されると、crRNAとtracrRNAと融合タンパク質との複合体を形成する。形成された複合体は、細胞内のゲノムDNA上の標的配列に導かれ、SCN1A遺伝子の転写を活性化する。
本発明では、本発明のDNAまたはDNAの組合せは、例えば、本発明のgRNAまたはcrRNAを得るために、または、本発明のDNAまたはDNAの組合せを増幅させるために用いられ得る。例えば、本発明のDNAまたはDNAの組合せは、適切なプロモーターと作動可能に連結し、本発明のgRNAまたはcrRNAを試験管内で、または細胞内で産生させることに用いることができる。例えば、本発明のDNAまたはDNAの組合せは、大腸菌内で増幅する複製起点を有するプラスミドにクローニングされ、大腸菌内で増幅され得る。また、本発明のDNAまたはDNAの組合せは、PCRにより増幅され得る。
本発明では、本発明のgRNAの発現ベクターは、dCas9と転写活性化タンパク質との融合タンパク質を発現する発現ベクターと組み合わせて用いることができる。本発明のcrRNAの発現ベクターは、tracrRNAのRNA発現ベクターおよびdCas9と転写活性化タンパク質との融合タンパク質を発現する発現ベクターと組み合わせて用いることができる。
細胞内のゲノムDNAを切断するためには、発現ベクターを細胞内に導入することができる。発現ベクターの細胞内への導入は、当業者であれば周知の技術により実施することができる。例えば、プラスミドベクターは、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法およびショットガン法などの方法により細胞に導入することができる。また、哺乳動物個体に導入する場合には、該哺乳動物に感染するウイルスベクターを用いて静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、腹腔内投与、脳室内投与などの様々な投与法で投与することができる。細胞内に導入された発現ベクターは、細胞内で本発明のgRNAやcrRNAおよびtrarRNAを発現し、また、融合タンパク質を発現する発現ベクターは融合タンパク質を発現し、細胞内でゲノムの標的配列に結合してSCN1A遺伝子の転写を活性化する。
本発明では、本発明のRNAまたはRNAの組合せを安定的に発現する真核細胞(特にヒト神経細胞、好ましくはヒト抑制性神経細胞、より好ましくはパルブアルブミン陽性抑制性神経細胞)および該細胞を含む細胞製剤が提供される。本発明の真核細胞および細胞製剤において、真核細胞は、dCas9と転写活性化タンパク質との融合タンパク質をさらに安定発現していてもよい。RNAを真核細胞に安定的に発現させる方法は当業者に周知である。ここで、細胞製剤とは、細胞を治療上の有効成分とする医薬組成物を意味する。
本発明によれば、
以下、[1A]〜[3A]のいずれかのRNAまたはRNAの組合せを安定発現する真核細胞(特にヒト神経細胞、好ましくはヒト抑制性神経細胞、より好ましくはパルブアルブミン陽性抑制性神経細胞)および該真核細胞を含む細胞製剤が提供される{ここで、真核細胞は、dCas9と転写活性化タンパク質との融合タンパク質をさらに安定発現していてもよい}:
[1A]以下(1A)〜(4A)からなる群から選択される1つのRNA若しくは2〜4つのRNAの組合せ(特に4つのRNAの組合せ)、
[2A]以下(5A)〜(8A)からなる群から選択される1つのRNA若しくは2〜4つのRNAの組合せ(特に4つのRNAの組合せ)、または
[3A]以下(1A)〜(8A)からなる群から選択される2〜8つのRNAの組合せ(特に4つ以上のRNAの組合せ):
(1A)配列番号1で示される配列を標的とするgRNA、
(2A)配列番号2で示される配列を標的とするgRNA、
(3A)配列番号3で示される配列を標的とするgRNA、
(4A)配列番号4で示される配列を標的とするgRNA、
(5A)配列番号5で示される配列を標的とするgRNA、
(6A)配列番号6で示される配列を標的とするgRNA、
(7A)配列番号7で示される配列を標的とするgRNA、および
(8A)配列番号8で示される配列を標的とするgRNA。
本発明によれば、
以下、[1B]〜[3B]のいずれかのRNAまたはRNAの組合せを安定発現する真核細胞(特にヒト神経細胞、好ましくはヒト抑制性神経細胞、より好ましくはパルブアルブミン陽性抑制性神経細胞)および該真核細胞を含む細胞製剤が提供される{ここで、真核細胞は、dCas9と転写活性化タンパク質との融合タンパク質をさらに安定発現していてもよい}:
[1B]以下(1B)〜(4B)からなる群から選択される1つのRNA若しくは2〜4つのRNAの組合せ(特に4つのRNAの組合せ)、
[2B]以下(5B)〜(8B)からなる群から選択される1つのRNA若しくは2〜4つのRNAの組合せ(特に4つのRNAの組合せ)、または
[3B]以下(1B)〜(8B)からなる群から選択される2〜8つのRNAの組合せ(特に4つ以上のRNAの組合せ):
(1B)配列番号1で示される配列を標的とするcrRNA、
(2B)配列番号2で示される配列を標的とするcrRNA、
(3B)配列番号3で示される配列を標的とするcrRNA、
(4B)配列番号4で示される配列を標的とするcrRNA、
(5B)配列番号5で示される配列を標的とするcrRNA、
(6B)配列番号6で示される配列を標的とするcrRNA、
(7B)配列番号7で示される配列を標的とするcrRNA、および
(8B)配列番号8で示される配列を標的とするcrRNA。
以下、[1B’]〜[3B’]のいずれかのRNAまたはRNAの組合せを安定発現する真核細胞(特にヒト神経細胞、好ましくはヒト抑制性神経細胞、より好ましくはパルブアルブミン陽性抑制性神経細胞)および該真核細胞を含む細胞製剤が提供される{ここで、真核細胞は、dCas9と転写活性化タンパク質との融合タンパク質をさらに安定発現していてもよい}:
[1B’]以下(1B)〜(4B)からなる群から選択される1つのRNA若しくは2〜4つのRNAの組合せ(特に4つのRNAの組合せ)とtracrRNAをコードする核酸との組合せ、
[2B’]以下(5B)〜(8B)からなる群から選択される1つのRNA若しくは2〜4つのRNAの組合せ(特に4つのRNAの組合せ)とtracrRNAをコードする核酸との組合せ、または
[3B’]以下(1B)〜(8B)からなる群から選択される2〜8つのRNAの組合せ(特に4つ以上のRNAの組合せ)とtracrRNAをコードする核酸との組合せ:
(1B)配列番号1で示される配列を標的とするcrRNA、
(2B)配列番号2で示される配列を標的とするcrRNA、
(3B)配列番号3で示される配列を標的とするcrRNA、
(4B)配列番号4で示される配列を標的とするcrRNA、
(5B)配列番号5で示される配列を標的とするcrRNA、
(6B)配列番号6で示される配列を標的とするcrRNA、
(7B)配列番号7で示される配列を標的とするcrRNA、および
(8B)配列番号8で示される配列を標的とするcrRNA。
本発明では、SCN1A遺伝子の発現を増加させる方法であって、SCN1A遺伝子のプロモーター領域上に存在するCas9エンドヌクレアーゼ結合部位の少なくとも1箇所、2箇所、3箇所、または4箇所以上を標的とするgRNAまたはcrRNAを用いて、SCN1A遺伝子の転写を活性化することを含む、方法が提供される。
本発明では、その必要のある対象において疾患を処置する方法であって、SCN1A遺伝子のプロモーター領域上に存在するCas9エンドヌクレアーゼ結合部位の少なくとも1箇所、2箇所、3箇所、または4箇所以上を標的とするgRNAまたはcrRNAを用いて、SCN1A遺伝子の転写を活性化することを含む、方法が提供される。
本発明の医薬組成物、組合せ医薬、処置する方法において、ある態様では、対象は、疾患は、SCN1A遺伝子の低下を原因とする疾患であり得、SCN1A遺伝子の低下を原因とする疾患を有する対象とし得る。本発明の医薬組成物、組合せ医薬、処置する方法において、ある態様では、処置される疾患は、てんかんであり得る。ある態様では、処置される疾患はドラベ症候群であり得る。ある態様では、処置される疾患は、熱性痙攣+であり得る。ある態様では、処置される疾患は、自閉症などの社会性行動異常であり得る。
本発明のある態様では、本発明の医薬、組合せ医薬および細胞製剤は、てんかんを処置することに用いるための、ドラベ症候群を処置することに用いるための、熱性痙攣+を処置することに用いるための、または自閉症などの社会性行動異常を処置することにもちいるための、SCN1A遺伝子の活性および/または発現の低下を原因とする疾患を処置することに用いるための、医薬、組合せ医薬および細胞製剤であり得る。
本発明では、てんかんを処置することに用いるための、ドラベ症候群を処置することに用いるための、熱性痙攣+を処置することに用いるための、または自閉症などの社会性行動異常を処置することにもちいるための、SCN1A遺伝子の活性および/または発現の低下を原因とする疾患を処置することに用いるための、医薬、組合せ医薬および細胞製剤の製造のための、本発明のRNAもしくはRNAの組合せ、DNAもしくはDNAの組合せ、または発現ベクターの使用が提供される。
実施例1:gRNAの設計と作製
本実施例では、Scn1a遺伝子のプロモーター領域を標的とするgRNAを設計し、作製した。
ヒトゲノム配列はUCSC Genome BrowserよりGRCh37/hg19データセットの配列を使用した。マウスScn1a遺伝子のプロモーター領域の配列は、C57BL/6J系統のゲノムDNA配列を使用した。本実施例では、プロモーター領域のうち、主要な翻訳開始点の上流約600bpから850bpの領域内に存在する5’−NGG−3’(CAS9タンパクのProto-spacer Adjacent Motif(PAM)配列)の5’−側20bpからgRNAの標的配列を選択した。具体的には、ヒトは4箇所(hSC1U1〜4,hSC1D1〜4)、マウスは5個所(mSC1U1〜5,mSC1D1〜5)の計18箇所のgRNA配列を設計した。選択した配列の標的特異性は、ヒトまたは、マウスのゲノム配列中で他の領域に完全一致しない配列であることをNCBIの塩基配列データベースとBLASTプログラムによる相同性検索で確認した。さらに、原則的に連続した17bp以上の相同な塩基配列がなく、相同性のある部分配列の数が少なく、相同な部分配列が17bp以下でも3’−側の末端に位置しない配列を選択した。
ヒトおよびマウスのSCN1A遺伝子のプロモーター中でgRNAを設計した部位を大きく分けて上流プロモーターおよび下流プロモーターと命名し、以下説明に用いた(図1および2参照)。設計されたgRNAの標的配列のプロモーター上での位置、名称および配列番号との対応は図1および2、表1および2、並びに化1〜4の通りであった。
上記化学式において、転写開始点を1とした。
次にプラスミドDNAを調製した。gRNA発現ベクターは、U6プロモーターでgRNAを発現するベクター(MLM3636, addgene: Plasmmid #43860)をAddgene社より入手した。Maeder ML et al., Nat Methods., 10(10):977-93, 2013の作製法と同様に、ベクターの制限酵素BsmBIの切断部位に相補的な4塩基の突出末端を付加した20塩基の標的配列とその相補鎖を合成して2本鎖のDNA断片を作製し、DNA Ligation kit Ver2.1(タカラバイオ社)を使用して制限酵素BsmBIで切断したMLM3636ベクターに組み込んだ。dCAS9−VPR遺伝子は、CMVプロモーターによる発現ベクター(SP-dCas9-VPR, addgene: Plasmid #63798)をAddgene社より入手した。gRNA発現ベクターとdCAS9−VPR遺伝子発現ベクターのプラスミドDNAは、キアゲン社のHispeed Plasmid Midi Kitを使用して精製した。なお、dCAS9は、野生型CAS9が有する2つのDNAエンドヌクレアーゼドメインの酵素機能がいずれも破壊され、DNAを切断できない変異体である。
実施例2:遺伝子発現の評価
本実施例では、作製したプラスミドを用いて遺伝子発現の制御を行った。
細胞培養と遺伝子導入
ウシ胎児血清(FBS)10%を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を使用して、HEK293FT細胞(ヒト)またはNeuro2a細胞(マウス)を、37℃、二酸化炭素濃度5%の条件下で培養した。プラスミドDNAを導入するため、培養した細胞は、6wellプレートでHEK293FT細胞は5×104個/mL、Neuro2a細胞は1×105個/mLの密度で播種して、およそ80%の密度まで増殖させた。プラスミドDNAの導入は、Lipofectamin LTX(ライフテクノロジーズ社)を使用して行った。1well当たり、gRANプラスミドを500ng(gRNAが1種であれば、500ng、5種であれば、各100ngを使用した。)とdCAS9−VPRプラスミドDNAを2000ngを使用した。遺伝子導入開始後、12時間で培地を新しいFBS10%を含むDMEM培地に交換し、48時間後まで培養した。
細胞および脳組織からのRNAの精製と定量
培養細胞とマウスの脳組織から全RNAを回収するためにRNAiso Plus(タカラバイオ社)を使用した。6wellプレートで培養した細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄して、1well当たり400μLのRNAiso Plusで細胞からRNAを回収した。マウス脳の場合、4週齢のC57BL/6J系統マウスを麻酔して脳を取り出し、2mlのRNAiso Plus(タカラバイオ社)を加えて、ガラス製ダウンス型ホモジナイザーで組織を破砕してRNAを回収した。
RT−PCRによる転写産物の検出
遺伝子の転写産物量を比較するために、タカラバイオ社のPrimeScriptTM RT reagent Kit with gDNA Eraser (Perfect Real Time)を使用して培養細胞から全RNAを精製し、常法を用いて全RNAからmRNAをPCRで増幅した。用いたプライマーセットは以下の通りであった。
(各遺伝子検出に用いたプライマーセット)
ヒトSCN1A遺伝子の増幅に使用したプライマーは、
hSCN1A_F: 5'-TGGGGAGTGGATAGAGACCA-3'(配列番号23)
hSCN1A_R: 5'-GAAAGAGATTCAGGACCACTAGG-3'(配列番号24)
β−アクチン遺伝子の増幅に使用したプライマーは、
hACTB_F: 5'-CATGTACGTTGCTATCCAGGC-3'(配列番号25)
hACTB_R: 5'-CTCCTTAATGTCACGCACGAT-3'(配列番号26)
マウスScn1a遺伝子の増幅に使用したプライマーは、
mScn1A_F: 5'-AGCCTATCCCTCGACCTGGA-3'(配列番号27)
mScn1A_R: 5'-CTGGTCATCCGTTTCCACCA-3'(配列番号28)
マウスG3pdh遺伝子の増幅に使用したプライマーは、
mG3pdh-F: 5'-TCAAGAAGGTGGTGAAGCAG-3'(配列番号29)
mG3pdh-R: 5'-ATTGTGAGGGAGATGCTCAG-3’(配列番号30)
ヒトのSCN1A遺伝子とβ−アクチン遺伝子の増幅は、98℃,5分を1回、98℃,15秒、55℃,5秒、72℃,30秒を25回または、30回の温度サイクルで行った。
マウスのScn1a遺伝子とG3pdh遺伝子のPCR法では、98℃,5分を1回、98℃,15秒、56℃,5秒、72℃,20秒の温度サイクルを27回または、30回行った。
ノーザンハイブリダイゼーションによる転写産物の検出
精製した全RNAをホルムアルデヒド変性1%アガロースゲルで電気泳動した後、ナイロン膜に転写した。泳動した1レーン当たりの全RNA量は、培養細胞では5μg、マウスの脳組織から精製した全RNAは20μgを使用した。RNAプローブの標識とハイブリダイゼーション、および転写産物の検出は、ロシュ・ライフサイエンス社のDIGノーザンスタータキットの方法に従った。プローブには、マウスScn1a遺伝子の3’側非翻訳領域の615塩基の配列(mScn1a 3'UTR615;配列番号31)を用いた。プローブは、PCRで増幅したDNA断片をpBluescriptベクターでクローン化し、T7プロモーターを利用してジゴキシゲニンRNA標識法で調製した。
結果は、図3〜5に示される通りであった。
図3に示されるように、導入したgRNAの総量は同じであったにも関わらず、1種類のgRNAによりも4種のgRNAの組合せにおいてSCN1Aの遺伝子発現が向上した。この傾向は、上流プロモーターおよび下流プロモーターのいずれでも共通して観察された。
図4に示されるように、導入したgRNAの総量は同じであったにも関わらず1種類のgRNAによりも5種のgRNAの組合せにおいてScn1aの遺伝子発現が向上した。この傾向は、上流プロモーターおよび下流プロモーターのいずれでも共通して観察された。
このように、ヒトSCN1A遺伝子においてもマウスScn1a遺伝子においても、このプロモーターを標的とする場合には、それぞれ4種のgRNAの組合せおよび5種のgRNAの組合せで顕著な遺伝子の発現増強が見られた。
さらに図5では、このようにして発現増強された遺伝子を、脳組織の内在性遺伝子発現と比較されている。図5の矢印で示された8kb超のバンドがマウスScn1a遺伝子から転写されたmRNAのバンドである。
図5に示されるように、陰性対照(N.C.)ではほとんど発現が観察されないのに対して、上流プロモーターの4つのgRNAの組合せ(マウス)および5つのgRNAの組合せ(マウス)により発現を亢進させると、発現量が大幅に亢進した。この結果から、ヒトSCN1A遺伝子においてもマウスScn1a遺伝子においても、このプロモーターを標的とする場合には、それぞれ4種のgRNAの組合せおよび5種のgRNAの組合せで、SCN1A遺伝子発現の大幅な増強・上昇を達成することに成功した。

Claims (15)

  1. SCN1A遺伝子のプロモーター領域上に存在するCas9エンドヌクレアーゼ結合部位の少なくとも1箇所を標的とするgRNAまたはcrRNAの組合せである、RNAの組合せ。
  2. SCN1A遺伝子のプロモーター領域上に存在するCas9エンドヌクレアーゼ結合部位の少なくとも4つを標的とする、gRNAまたはcrRNAの組合せである、請求項1に記載のRNAの組合せ。
  3. 請求項1または2に記載のRNAの組合せであって、
    [1]以下(1)〜(4)からなる群から選択される1つのRNA若しくは2〜4つのRNAの組合せ、
    [2]以下(5)〜(8)からなる群から選択される1つのRNA若しくは2〜4つのRNAの組合せ、または
    [3]以下(1)〜(8)からなる群から選択される2〜8つのRNAの組合せ:
    (1)配列番号1で示される配列を標的とするgRNAまたはcrRNA、
    (2)配列番号2で示される配列を標的とするgRNAまたはcrRNA、
    (3)配列番号3で示される配列を標的とするgRNAまたはcrRNA、
    (4)配列番号4で示される配列を標的とするgRNAまたはcrRNA、
    (5)配列番号5で示される配列を標的とするgRNAまたはcrRNA、
    (6)配列番号6で示される配列を標的とするgRNAまたはcrRNA、
    (7)配列番号7で示される配列を標的とするgRNAまたはcrRNA、および
    (8)配列番号8で示される配列を標的とするgRNAまたはcrRNA。
  4. [1]に記載のRNAの組合せである、請求項3に記載のRNAの組合せ。
  5. (1)〜(4)に記載のすべてのgRNAを含むか、または(1)〜(4)に記載のすべてのcrRNAを含む、請求項4に記載のRNAの組合せ。
  6. [2]に記載のRNAの組合せである、請求項3に記載のRNAの組合せ。
  7. (5)〜(8)に記載のすべてのgRNAを含むか、または(5)〜(8)に記載のすべてのcrRNAを含む、請求項5に記載のRNAの組合せ。
  8. [3]に記載のRNAの組合せであって、(1)〜(8)からなる群から選択される4つ以上のgRNAの組合せまたはcrRNAの組合せである、請求項1に記載の組合せ。
  9. それぞれのRNAが、gRNAである、請求項1〜8のいずれか一項に記載のRNAの組合せ。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載のRNAの組合せ、に含まれる各RNAをコードする核酸の組合せ。
  11. 請求項10に記載の核酸の組合せに含まれる核酸をそれぞれ発現可能に含む、RNA発現ベクター。
  12. 請求項1〜9のいずれか一項に記載のRNAまたはRNAの組合せを含む、医薬または組合せ医薬。
  13. 請求項11に記載のRNA発現ベクターを含む、医薬または組合せ医薬。
  14. 請求項1〜9のいずれか一項に記載のRNAまたはRNAの組合せを安定発現する、真核細胞。
  15. 請求項14に記載の真核細胞を含む、細胞製剤。
JP2016236934A 2016-12-06 2016-12-06 Scn1a遺伝子の発現増強法 Withdrawn JP2018088888A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016236934A JP2018088888A (ja) 2016-12-06 2016-12-06 Scn1a遺伝子の発現増強法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016236934A JP2018088888A (ja) 2016-12-06 2016-12-06 Scn1a遺伝子の発現増強法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2018088888A true JP2018088888A (ja) 2018-06-14

Family

ID=62564453

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016236934A Withdrawn JP2018088888A (ja) 2016-12-06 2016-12-06 Scn1a遺伝子の発現増強法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2018088888A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2019224864A1 (ja) * 2018-05-21 2019-11-28 国立研究開発法人理化学研究所 Scn1a遺伝子の発現増強法とそれによるドラベ症候群の治療法
WO2020243651A1 (en) * 2019-05-29 2020-12-03 Encoded Therapeutics, Inc. Compositions and methods for selective gene regulation
CN112575033A (zh) * 2020-12-24 2021-03-30 南京启真基因工程有限公司 Crispr系统及其在构建scn1a基因突变的癫痫性脑病克隆猪核供体细胞中的应用
CN112680453A (zh) * 2021-01-26 2021-04-20 南京启真基因工程有限公司 Crispr系统及其在构建stxbp1突变的癫痫性脑病克隆猪核供体细胞中的应用

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2019224864A1 (ja) * 2018-05-21 2019-11-28 国立研究開発法人理化学研究所 Scn1a遺伝子の発現増強法とそれによるドラベ症候群の治療法
WO2020243651A1 (en) * 2019-05-29 2020-12-03 Encoded Therapeutics, Inc. Compositions and methods for selective gene regulation
JP2022535749A (ja) * 2019-05-29 2022-08-10 エンコーデッド セラピューティクス, インコーポレイテッド 選択的遺伝子調節のための組成物および方法
JP7432621B2 (ja) 2019-05-29 2024-02-16 エンコーデッド セラピューティクス, インコーポレイテッド 選択的遺伝子調節のための組成物および方法
CN112575033A (zh) * 2020-12-24 2021-03-30 南京启真基因工程有限公司 Crispr系统及其在构建scn1a基因突变的癫痫性脑病克隆猪核供体细胞中的应用
CN112575033B (zh) * 2020-12-24 2023-03-10 南京启真基因工程有限公司 Crispr系统及其在构建scn1a基因突变的癫痫性脑病克隆猪核供体细胞中的应用
CN112680453A (zh) * 2021-01-26 2021-04-20 南京启真基因工程有限公司 Crispr系统及其在构建stxbp1突变的癫痫性脑病克隆猪核供体细胞中的应用

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US20230235325A1 (en) Compositions and Methods for Treating Huntington's Disease and Related Disorders
EP3359677B1 (en) Compositions and methods for treating fragile x syndrome and related syndromes
JP6929791B2 (ja) エピゲノム編集のための組成物および方法
AU2022202558A1 (en) Compositions and methods for the treatment of hemoglobinopathies
US11427824B2 (en) Compositions and methods for the treatment of myotonic dystrophy
WO2019224864A1 (ja) Scn1a遺伝子の発現増強法とそれによるドラベ症候群の治療法
AU2017379073B2 (en) Compositions and methods for treating alpha-1 antitrypsin deficiency
JP2018088888A (ja) Scn1a遺伝子の発現増強法
CN112996913B (zh) 寡聚核酸分子及其应用
US20220265852A1 (en) Allele-specific inactivation of mutant htt via gene editing at coding region single nucleotide polymorphisms
CA3222964A1 (en) Methods of treating asthma with solute carrier family 27 member 3 (slc27a3) inhibitors
RU2812491C2 (ru) Композиции и способы лечения гемоглобинопатий
CA3191030A1 (en) Treatment of sepsis with pcsk9 and ldlr modulators
CA3167756A1 (en) Treatment of ophthalmic conditions with son of sevenless 2 (sos2) inhibitors
CA3181178A1 (en) Kelch domain containing 7b (klhdc7b) variants and uses thereof
CA3210480A1 (en) Treatment of inflammation with glucocorticoids and angiopoietin-like 7 (angptl7) inhibitors
WO2021133874A1 (en) Compositions and methods for hemoglobin production

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20191114

A761 Written withdrawal of application

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761

Effective date: 20201019

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20201019